JP3904338B2 - 合成マイカ粉体、その製造方法及び該粉体を含有する化粧料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、新規合成マイカ粉体及びその製造方法並びに該合成マイカ粉体を含有する化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成マイカは、塗料、樹脂、化粧料等の原料として使用されている。化粧料用の合成マイカ粉体及び合成マイカを配合した化粧料については、特公平6−99279号公報、特公平7−115858号公報に開示されている。
【0003】
合成マイカ、セリサイト及び白雲母等は、鱗片状の粒子であるため伸展性に優れ、しかも皮膚への付着性が良いため、化粧料の体質顔料として重要な原料となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の雲母粉は、伸展性、付着性の良さから化粧料の体質顔料として使用されているが、必ずしも吸油量が高くなく、そのためファンデーションにした場合、満足のいく仕上がり感が得られないという点で、未だ充分満足すべきものではなかった。
【0005】
この発明は、吸油量が高いため仕上がり感が良いだけでなく、伸展性及び付着性に優れ、しかも光沢が低く、成型し易い合成マイカ粉体、その製法及び該粉体を含有する化粧料を提供することを目的とする。
【0006】
上記のような性質を兼備した合成マイカ粉体があれば、フアンデーションに配合するときに高配合でき、吸油量が高いため仕上がり感が良くなると共に、光沢がでず、良く伸びるといった従来にない優れた性質を有する化粧料が得られる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
合成フッ素金雲母粉は、伸展性、付着性に優れるが、光沢が高く、成型しにくく、その吸油量は、約0.7〜1.0ミリリットル/gである。一方、合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉は、光沢が低く、成型し易いが、伸展性、付着性に劣り、その吸油量は、約0.5〜0.7ミリリットル/gと合成フッ素金雲母粉よりも小さい。
【0008】
本発明者等は、前記目的を達成するため、鋭意研究を行った結果、驚くべきことに、合成フッ素金雲母粉よりも吸油量が小さい合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉を混合し熱処理したにもかかわらず、合成フッ素金雲母粉単体よりも吸油量が1割以上大きいものが得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
即ち本発明の合成マイカ粉体は、合成フッ素金雲母粉と合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉とを一緒に900〜1200℃で熱処理した合成マイカ粉体であって、吸油量測定試験における吸油量が、合成フッ素金雲母粉よりも1割以上大きいことを特徴とする。
【0010】
本発明の合成マイカ粉体の製法は、合成フッ素金雲母粉と合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉とを混合後、900〜1200℃で熱処理することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の化粧料は、上記合成マイカ粉体を配合したことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
本発明の合成マイカ粉体は、合成フッ素金雲母粉と合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉とを混合し熱処理することによって、吸油量を高めると共に、伸展性、付着性に優れ、光沢が低く、成型し易いマイカ粉体としたものである。
【0014】
合成フッ素金雲母粉と合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉との混合割合は、広範囲に変化させることができ、目的とする性質、用途等に応じて、適宜選択すれば良い。
【0015】
一般には、合成フッ素金雲母粉と合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉との混合割合は、1対9〜9対1、好ましくは3対7〜7対3とするのが良い。
【0016】
本発明の合成マイカ粉体の合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉は、その面形状が多角板状様及び/又は六角板状様であるのが好ましい。面形状が多角板状様及び/又は六角板状様であるため、マイカ粉同士の滑り性が良くなり、伸展性がより向上すると考えられる。
【0017】
本発明の製造方法は、合成フッ素金雲母粉と合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉とを混合後、900〜1200℃で熱処理することを特徴とする。
【0018】
混合後に熱処理しないで、それぞれ単独で熱処理して混合したのでは、本発明の合成マイカ粉体は得られない。
【0019】
その理由は明確ではないが、合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉を単独で900〜1200℃で熱処理すると再結晶化が起こり、合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉同士が凝集し、焼結する現象が起きるためと考えられる。
【0020】
合成フッ素金雲母粉と合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉とを混合することによって、合成フッ素金雲母粉が合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉の凝集、焼結を防止すると考えられる。そのため、比表面積の増大化により、吸油量が高くなると思われる。
【0021】
更に混合し熱処理することによって、合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉のその面形状が、多角板状様及び/又は略六角板状様のマイカ粉に形成されるものと考えられる。
【0022】
面形状が多角板状様及び/又は略六角板状様であると、雲母粉同士の滑り性が良くなり、伸展性がより向上し、更に合成フッ素雲母粉同士の凝集を妨げるため比表面積が大きくなり、吸油量が大きくなると考えられる。
【0023】
熱処理温度が、900℃未満であると、合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉は再結晶化しにくく、合成フッ素金雲母粉との空隙ができにくく、比表面積も小さくなり、吸油量が低くなる。
【0024】
熱処理温度が、1200℃を越えると合成マイカ粉体の焼結が起こり、比表面積が小さくなるので、吸油量が低下すると共に伸展性が不良となる。
【0025】
本発明の原料合成フッ素金雲母粉及び合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉は、溶融合成法によって合成したフッ素金雲母及び合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉を、公知の粉砕機によって微粉化すれば良い。
【0026】
合成フッ素金雲母粉は、レーザー回折式メジィアン径が、5〜50ミクロンであるのが好ましい。50ミクロンを越えると光沢が高くなり、5ミクロン未満であると、伸展性、付着性が劣るようになる。
【0027】
合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉は、レーザー回折式メジィアン径が、1〜20ミクロンであるのが好ましい。20ミクロンを越えると伸展性、付着性が劣り、更に比表面積も小さくなるため吸油量も低くなる。
【0028】
本発明に使用する合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉は、固体間反応により製造したものやタルクとケイフッ化物によるインターカレーション法により製造したものでも良い。
【0029】
本発明は、合成フッ素金雲母粉と合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉とを混合後、熱処理するものであるが、混合方法は、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、リボン型ミキサー等の公知の混合機を使用すれば良い。
【0030】
タンクに水を入れ、この中に合成フッ素金雲母粉と合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉とを入れて固形分濃度10%程度とし、攪拌して混合すれば、均一に混合できるので、更に好ましい。
【0031】
上記方法では、攪拌後脱水し、乾燥、解砕後熱処理を行う。熱処理前に酸処理を行うと、酸溶解成分が除去でき、目的とする合成マイカ粉体中の酸成分を2%以下とすることができる。
【0032】
酸処理は、タンク内に水と合成フッ素金雲母粉と合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉を、固形分濃度10%程度になるように入れて、例えば塩酸、硫酸等の無機酸及び/又はクエン酸等の有機酸を加えて行えば良い。その後、水洗浄を行い、脱水し、乾燥、解砕後熱処理を行う。
【0033】
本発明の合成マイカ粉体の化粧料への配合量は、化粧料全量中の1〜100重量%未満である。
【0034】
次に、実施例、比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0035】
【実施例】
まず、本発明に係る合成フッ素金雲母粉と合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉からなる粉体を製造した実施例を挙げる。実施例及び比較例で得た合成マイカ粉体の物性値は、以下の方法によって測定した。
【0036】
1.吸油量試験における吸油量
ガラス板の上に製品(試料)3.0gをのせ、ビュレットで流動パラフィンを試料上に滴下して金属へらで練り合わせ、混合物がパテ状ペーストになったときの滴下油量をもって吸油量とした。
【0037】
2.粒径
(株)堀場製作所製レーザー回折式粒度分布測定器(LA500)にて製品を測定し、その測定結果のメジィアン径(50%重量径)を粒径とした。
【0038】
3.光沢
白のボール紙に両面テープを貼り付け、更にその上にセロテープを貼り、これに製品を塗布し、日本電色工業(株)製デジタル携帯用光沢計「VG−2PD」にて入射角60°/受光角60°で測定した。尚、化粧料に適した光沢値は、3.5〜4.5である。
【0039】
4.成型性
製品6.3gと流動パラフイン0.7gを秤り取り、これを乳鉢に入れ、乳棒で混合した。更に、この混合品6.0gを25mmφの金型に入れ、204kg/cm2(全圧1000kg)の圧力で1分間成型した。この成型試料を針入硬度計にて針入硬度を測定し、この値を成型性とした。数値が小さい程硬度が高いこと即ち成型性が良いことを表す。尚、化粧料に適した成型性の値は、35〜50である。
【0040】
5.伸展性、付着性
専門パネル5名により、下記1〜5の5段階の官能評価を、伸展性及び付着性の項目毎に行った。
【0041】
1・……悪い
2・……やや悪い
3・……普通
4・……やや良い
5・……良い
【0042】
結果は、5名の5段階評価の平均値を、下記のようにして表した。
◎・……4.5〜5.0
○・……3.5〜4.4
□・……2.5〜3.4
△・……1.5〜2.4
×・……1.0〜1.4
【0043】
実施例1
合成フッ素金雲母粉A(粒径:20.47μm)50gと合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉K(粒径:9.33μm)50gを水1リットルに分散させ、攪拌して均一混合した。均一混合後、クエン酸5gを加えて酸処理を行い、その後、水洗し、脱水、乾燥、解砕後1000℃で3時間熱処理を行った。更に、この混合熱処理品を水洗した後、脱水、乾燥、解砕し、本発明品(実施例1)を得た。
【0044】
実施例2
熱処理温度を1100℃とする以外は、実施例1と同様にして、本発明品(実施例2)を得た。
【0045】
実施例3
合成フッ素金雲母粉B(粒径:40.23μm)を使用する以外は、実施例1と同様にして、本発明品(実施例3)を得た。
【0046】
実施例4
熱処理温度を950℃とする以外は、実施例3と同様にして、本発明品(実施例4)を得た。
【0047】
実施例5
合成フッ素金雲母粉C(粒径:12.60μm)を使用する以外は、実施例1と同様な方法によって、本発明品(実施例5)を得た。
【0048】
実施例6
熱処理温度を1150℃とする以外は、実施例5と同様にして、本発明品(実施例6)を得た。
【0049】
実施例7
合成フッ素金雲母粉A(粒径:20.47μm)70gと合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉K(粒径:9.33μm)30gを水1リットルに分散させる以外は、実施例1と同様にして、本発明品(実施例7)を得た。
【0050】
実施例8
合成フッ素金雲母粉A(粒径:20.47μm)30gと合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉K(粒径:9.33μm)70gを水1リットルに分散させる以外は、実施例1と同様にして、本発明品(実施例8)を得た。
【0051】
実施例9
合成フッ素金雲母粉C(粒径:12.60μm)67gと合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉K(粒径:9.33μm)33gを水1リットルに分散させる以外は、実施例1と同様にして、本発明品(実施例9)を得た。
【0052】
実施例10
合成フッ素金雲母粉C(粒径:12.60μm)33gと合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉K(粒径:9.33μm)67gを水1リットルに分散させる以外は、実施例1と同様にして、本発明品(実施例10)を得た。
【0053】
上記実施例で使用した合成フッ素雲母粉の物性は、次表1の通りであった。
【0054】
【表1】
測定不能:針貫通のため数値が得られなかった。
【0055】
次に、実施例1〜10で得た合成マイカ粉体の物性を、次表2及び次表3に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
上記表1、表2及び表3の記載から明らかなように、本発明の合成マイカ粉体は、いずれの原料合成フッ素雲母粉よりも吸油量が1割以上大きく、しかも原料合成フッ素雲母粉は、いずれも吸油量以外の複数の項目でも不満足な物性を示すが、本発明の合成マイカ粉体は、全て全項目で満足な物性を示す。
【0059】
比較例1
1000℃で3時間予め熱処理した合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉K(粒径:9.33μm)と1000℃で3時間予め熱処理した合成フッ素金雲母粉A(粒径:20.47μm)とを同重量混合し、水中に投入して攪拌した(固形分濃度10%)。その後、脱水、乾燥、解砕し、本発明によらない雲母粉(比較例1)を得た。
【0060】
比較例2
熱処理温度を1250℃とする以外は、実施例1と同様にして、本発明によらない雲母粉(比較例2)を得た。
【0061】
比較例3
熱処理温度を850℃とする以外は、実施例1と同様にして、本発明によらない雲母粉(比較例3)を得た。
【0062】
上記、比較例1〜3で得た雲母粉の物性を測定した。結果を、次表4に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
上記結果から明らかなように、本発明の原料フッ素雲母粉をそれぞれ別々に熱処理し、これを均一に混合したのでは、吸油量が原料合成フッ素金雲母粉よりも小さくなるだけでなく、全ての物性に全く不満足な合成マイカ粉となる。
【0065】
また、熱処理温度が900℃未満であると、吸油量が小さくなり、1200℃を越えると、伸展性、付着性が悪化し、光沢、成型性も不満足となる。
【0066】
実施例11(パウダーファンデーション)
下記成分から、常法の処方に従って、本発明のパウダーファンデーションXを製造した。尚、成分量の数字は、重量%を表す。
【0067】
(1)実施例1で得た合成マイカ粉体 61.4
(2)タルク 20.0
(3)酸化チタン 7.0
(4)赤色酸化鉄 0.5
(5)黄色酸化鉄 1.0
(6)黒色酸化鉄 0.1
(7)流動パラフィン 7.0
(8)シリコンオイル 2.0
(9)ソルビタンセスキオレート 1.0
(10)防腐剤 適量
(11)香料 適量
【0068】
比較例4(パウダーファンデーション)
上記成分(1)の合成マイカ粉体の代わりに同重量の天然白雲母を使用する以外は、実施例11と同様にして、比較用パウダーファンデーションYを製造した。
【0069】
上記実施例11で得たパウダーファンデーションXと比較例4で得たパウダーファンデーションYとについて、前記伸展性、付着性の官能評価方法と同様にして、次表5に記載の評価項目について官能評価を行った。結果を次表5に示す。
【0070】
【表5】
【0071】
本発明のパウダーファンデーションXは、光沢が無く、成型し易く、付着性・伸展性に優れ、且つ仕上がり感が良い性質を示した。
【0072】
本発明の効果の原因は、合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉を合成フッ素金雲母粉と混合し900〜1200℃で熱処理することによって、合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉が合成フッ素金雲母粉を凝集、焼結させない作用が生じるためと考えられる。
【0073】
【発明の効果】
上記の結果として、本発明によれば、吸油量の値を原料合成フッ素雲母粉のいずれよりも遥かに大きくすることに成功しただけでなく、それぞれの合成フッ素雲母粉の有する伸展性及び付着性に優れる性質と、光沢が低く、成型し易いという性質を兼備した合成マイカ粉体を得ることに成功したものであり、それ故、極めて画期的な発明である。
【0074】
本発明の合成マイカ粉体は、このような優れた性質を併有しているので、ファンデーションに高配合できるほか、吸油量が高いため仕上がり感が良くなると共に、光沢が出ず、良く伸びるといったこの種従来の化粧料には全く見られない優れた性質を有する化粧料が得られる。
Claims (7)
- 合成フッ素金雲母粉と合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉とを混合し、900〜1200℃で熱処理した合成マイカ粉体であって、吸油量測定試験における吸油量が、合成フッ素金雲母粉よりも1割以上大きいことを特徴とする合成マイカ粉体。
- 前記合成フッ素金雲母粉と前記合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉との混合割合が、1対9〜9対1である請求項1に記載の合成マイカ粉体。
- 前記熱処理した合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉のその面形状が、多角板状様及び/又は六角板状様である請求項1又は2に記載の合成マイカ粉体。
- 合成フッ素金雲母粉と合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉とを混合後、900〜1200℃で熱処理することを特徴とし吸油量測定試験における吸油量が、合成フッ素金雲母粉よりも1割以上大きい合成マイカ粉体の製造方法。
- 前記合成フッ素金雲母粉のレーザー回折式メジィアン径が、5〜50ミクロンである請求項4に記載の合成マイカ粉体の製造方法。
- 前記合成フッ素カリウム四ケイ素雲母粉のレーザー回折式メジィアン径が、1〜20ミクロンである請求項4又は5に記載の合成マイカ粉体の製造方法。
- 前記請求項1〜3に記載の合成マイカ粉体を配合したことを特徴とする化粧料。
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