JP3903717B2 - テーパ穴加工方法およびテーパ穴加工用工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はテーパ穴の加工方法とテーパ穴加工用工具に関し、特に特殊な機構を付加することなしにマシニングセンタ等の既存の工作機械の機能をそのまま使って、奥部側が大径のいわゆる逆テーパ穴の加工を容易に行えるようにしたテーパ穴加工方法とテーパ穴加工用工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のテーパ穴の加工に関する技術としては、特開平7−148604号公報に記載されているような専用機を使っての加工方法のほか、実開平1−138605号公報、実公平7−13925号公報および特開平11−188548号公報等に記載されているようにマシニングセンタの主軸に特殊な機構を付加して行う加工方法が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
専用機を使って行う前者の加工方法では、テーパ穴加工専用の設備を準備する必要があることから、特に少量生産ラインにおいては設備投資および設備台数が増える結果となって好ましくない。他方、マシニングセンタを使用する後者の加工方法では、主軸もしくはツール保持具に刃物を二次元的に動かすための特殊な機構を付加するとともに、機械本体側でもいわゆるU軸駆動を行うための機構を具備する必要があり、結果として設備費の増大を招くことになる。
【0004】
また、従来のいずれの加工方法においても、旋削と同様に刃物(工具)としてスローアウェイチップ等を用いたいわゆるシングルポイント加工となっているため、加工時間が長いという不具合がある。
【0005】
本発明は以上のような課題に着目してなされたもので、専用機によらずに、また特殊な機構を付加することなしに、マシニングセンタに代表されるような既存の数値制御工作機械の能力をそのまま使って容易に逆テーパ穴の加工を行えるようにした加工方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、ワークに予め形成された下穴の奧部側が大径となるようにその下穴の全長にわたってテーパ状に加工するテーパ穴加工方法であって、加工すべきテーパ穴の軸方向長さよりも長く且つ工作機械の主軸軸線に対して所定角度傾斜した直線状で単一の切刃をもつ工具を上記工作機械の主軸に装着しておき、下穴内周面に上記切刃が接触することがないように工具を一旦下穴に挿入し、その状態で工具を回転させながら該工具にワークから抜き取る方向の送りを上記主軸とともに与えることでテーパ状の切削を開始する一方で、テーパ穴の内周面の軸方向長さ全長にわたって上記切刃が当接した状態をもって切削を終えることにより、上記下穴の全長と同じ長さのテーパ穴を形成することを特徴としている。
【0007】
この請求項1に記載の発明に用いられる工具としては、カッター単独で工具として構成されたもののほか、所定のツールホルダにカッターを装着したタイプのものでもよい。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載のテーパ穴加工方法に用いられる工具であって、この工具は、工作機械の主軸と同一軸線上に位置するように該主軸に装着されるツールホルダと、このツールホルダにその軸線に対し所定角度傾斜して着脱可能に装着されるカッターとを備えていて、上記カッターはシャンクの先端部にこのシャンクの軸線と平行な直線状の切刃が形成されたものであって、且つ切削加工時の送りはツールホルダとともに与えられるものであることを特徴としている。
【0009】
したがって、この請求項1,2に記載の発明では、工作機械の直交2軸の自由度を使って下穴に対する工具の挿入軌跡を制御して、下穴内周面に切刃が接触しないようその下穴に対し工具を挿入し、その状態で工具を回転させながら該工具にワークから抜き取る方向の送りを与えて切削すると、下穴の奥部側が大径となるような逆テーパ穴に加工される。
【0010】
請求項3に記載の発明は、加工すべきテーパ穴の軸方向長さよりも長く且つ先広がりでテーパ状の単一の切刃をシャンクの先端に有するカッターを工作機械の主軸に装着しておき、ワークに予め貫通形成された下穴に対して上記カッターを偏心させた状態で挿入し、そのカッターの切刃がワークの裏側に完全に抜け出た時点で上記下穴の軸心とカッターの軸心とを相互に一致させ、その状態でカッターを回転させながら該カッターにワークから抜き取る方向の送りを上記主軸とともに与えることでテーパ状の切削を開始する一方で、テーパ穴の内周面の軸方向長さ全長にわたって上記切刃が当接した状態をもって切削を終えることにより、上記下穴の全長と同じ長さのテーパ穴を形成することを特徴としている。
【0011】
この場合、ドリル加工等をもってワークに予め形成しておく下穴は、請求項4に記載の発明のように最も一般的なストレート形状のものであることが望ましい。また、カッターの切刃の最大直径は下穴の直径よりも予め小さく形成されていることは言うまでもない。
【0012】
したがって、この請求項3,4に記載の発明では、上記と同様に工作機械の直交2軸の自由度を使って下穴に対するカッターの挿入軌跡を制御して、下穴に対しカッターを偏心させた状態で挿入しつつ、そのカッターの切刃がワークの裏側に完全に抜け出た時点でカッターをその直径方向に移動させてその下穴の軸心とカッターの軸心とを相互に一致させる。そして、その状態でカッターを回転させながら該カッターにワークから抜き取る方向の送りを与えて切削すると、下穴の奥部側が大径となるような逆テーパ穴に加工される。
【0013】
逆テーパ穴の加工後には、請求項5に記載の発明のように、上記カッターを再びその加工されたテーパ穴に対して偏心させた状態として加工後のテーパ穴から抜き取ることにより、その加工後のテーパ穴と干渉しないようにしてカッターを抜き取ることができる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、奥部側が大径となるようにワークに予め貫通形成されたテーパ穴に仕上げ切削加工を施す方法であって、シャンクの先端部が略くの字状に折り曲げられていてその部分に上記テーパ穴の軸方向長さよりも長く且つ先広がりでテーパ状の単一の切刃を形成してなるカッターを工作機械の主軸に装着しておき、工作機械の同時2軸制御によりテーパ穴の傾斜角度に沿ってカッターの切刃をテーパ穴に対して斜めに挿入して、そのカッターの軸心とテーパ穴の軸心とを相互に一致させ、その後、上記カッターを回転させながら該カッターにワークから抜き取る方向の送りを上記主軸とともに与え、テーパ穴の内周面の軸方向長さ全長にわたって上記切刃が当接した状態をもって切削を終えることにより仕上げ切削加工を施すことを特徴としている。
【0015】
したがって、この請求項6に記載の発明では、カッターの略くの字状に折り曲げられた部分がテーパ穴と干渉しないように、工作機械の直交2軸を同時制御してテーパ穴の傾斜角度に沿ってカッターの切刃をテーパ穴に対して斜めに挿入する。そして、そのカッターの軸心とテーパ穴の軸心とが相互に一致したならば、カッターを回転させながら該カッターにワークから抜き取る方向の送りを与えることで逆テーパ穴形状に切削する。
【0016】
逆テーパ穴の仕上げ切削完了後には、請求項7に記載の発明のように、上記とは逆の手順で先ずカッターの切刃を仕上げ切削後のテーパ穴の切削面から離し、その後、加工後のテーパ穴の傾斜角度に沿ってカッターの切刃をテーパ穴から斜めに抜き取ることでその逆テーパ穴との干渉を回避する。
【0017】
請求項8に記載の発明は、ストレート穴形状の下穴が形成されている場合に、請求項5に記載のテーパ穴加工方法をもって先ず荒切削加工を施し、それに続いて請求項7に記載のテーパ穴加工方法をもって仕上げ切削加工を施すことを特徴としている。
【0018】
したがって、この請求項8に記載発明では、ストレート形状の下穴が予め形成されている場合に、荒切削加工と仕上げ切削加工の2工程をもって奥部側が大径のいわゆる逆テーパ穴を高精度に加工することができる。
【0019】
請求項9に記載の発明は、請求項6〜8のいずれかに記載のテーパ穴の仕上げ切削加工に際してその請求項6〜8のいずれかに記載のカッターに代えて用いられる工具であって、この工具は、工作機械の主軸と同一軸線上に位置するように該主軸に装着されるツールホルダと、このツールホルダにその軸線に対し所定角度傾斜して着脱可能に装着されるカッターとを備えていて、上記カッターは、シャンクの先端部にこのシャンクの軸線と平行な直線状の切刃が形成されたものであって、且つ切削切削加工時の送りはツールホルダとともに与えられるものであることを特徴としている。
【0020】
したがって、この請求項9に記載の発明では、請求項6〜8のいずれかに記載の発明を前提とした上で、工具そのものを請求項2に記載の発明の工具構成と同じとしたものであるから、工作機械の直交2軸の自由度を使って下穴に対する工具の挿入軌跡を制御して、下穴内周面に切刃が接触しないようその下穴に対し工具を挿入し、その状態で工具を回転させながら該工具にワークから抜き取る方向の送りを与えて切削すると、下穴の奥部側が大径となるような逆テーパ穴に加工される。
【0021】
【発明の効果】
請求項1,2に記載の発明によれば、マシニングセンタ等の汎用の数値制御工作機械をそのまま使っていわゆる逆テーパ穴の加工が可能となるため、従来のような専用機が必要となることもなければ主軸あるいは機械本体側に特殊な機構を付加する必要もなく、特に少量生産における設備投資および設備台数の面で著しく有利となるほか、いわゆるシングルポイントでの加工でななく直線刃の如き連続的な切刃をもって加工するので、きわめて短時間のうちに所期の加工を行うことができる効果がある。
【0022】
請求項3〜5に記載の発明によれば、工具としては特殊形状のカッターが必要となるものの、マシニングセンタ等の汎用の数値制御工作機械をそのまま使っていわゆる逆テーパ穴の加工が可能となるため、請求項1,2に記載の発明と全く同様の効果が得られる。
【0023】
また、請求項6,7に記載の発明によれば、工具として先端部が略くの字状に折り曲げられたカッターを用い、これを加工すべきテーパ穴に対して実質的に斜めに挿入して加工を行うことになるので、請求項3〜5に記載の発明と同等の効果に加えて、略くの字状に折り曲げられた部分の根元部の断面積として先端部の断面積とほぼ同等の断面積を確保でき、その結果としてカッターの剛性が高くなって工具振動によるびびり現象を抑制できることから、より高速での加工が可能となる効果がある。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、請求項5に記載のテーパ穴加工方法をもって荒切削加工を施し、それに続いて請求項7に記載のテーパ穴加工方法をもって仕上げ切削加工を施すようにしたことから、ストレート形状の下穴をもっていわゆる逆テーパ状のテーパ穴の加工をより高精度に行える効果がある。
【0025】
請求項9に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明と同様にマシニングセンタ等の汎用の数値制御工作機械をそのまま使っていわゆる逆テーパ穴の加工が可能となるため、従来のような専用機が必要となることもなければ主軸あるいは機械本体側に特殊な機構を付加する必要もなく、特に少量生産における設備投資および設備台数の面で著しく有利となるほか、いわゆるシングルポイントでの加工ではなく直線刃の如き連続的な切刃をもって加工するので、きわめて短時間のうちに所期の加工を行うことができる効果がある。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1〜5は本発明に係るテーパ穴加工方法の好ましい実施の形態を示す図であって、特に図1は荒切削工程で使用する工具の詳細を、図2は仕上げ切削工程で使用する工具の詳細を、図3,4は上記荒切削加工用の工具を用いた加工手順を、図5は図2の仕上げ切削加工用の工具を用いた加工手順をそれぞれ示している。
【0027】
図1に示す荒切削加工用の工具としてのカッター1は、ストレートシャンク2の先端であって且つそのストレートシャンク2の軸心O1から所定量オフセットした位置に小径な首部3を介して逆円錐台形状のボデー4を一体に形成したもので、ボデー4には加工すべきテーパ穴の傾斜形状に応じたいわゆる先広がり形状の直線刃の如き単一の切刃5が形成されている。そして、首部3の直径をaとすると、ボデー4の先端の刃先5a側での直径はその2倍の2aに設定されている。また、切刃5の長さL1は、図3に示すように予めワークWに形成されるストレート形状の下穴Hの長さMよりもわずかに大きく設定されているほか(L1>M)、ボデー4の先端部側での直径2aは上記下穴Hの直径Dよりもわずかに小さく形成されている(2a<D)。
【0028】
他方、図2に示す仕上げ切削加工用の工具としてのカッター6は、ストレートシャンク7の先端に略くの字状に折り曲げられたボデー8を一体に形成したもので、ボデー8には荒切削加工用のカッター1と同様に、加工すべきテーパ穴の形状に応じた先広がり形状の直線刃の如き単一の切刃9が形成されている。そして、ボデー8の先端である刃先9a側での直径をbとすると、ボデー8の根元部の直径dはその根元部における逃げ溝10の深さc分だけ小さく形成されている(d=b−c)。また、切刃9の長さL2は、図4に示すように荒切削加工後の逆テーパ穴T1の長さMよりもわずかに大きく設定されている(L2>M)。なお、ボデー8の外周面は同図(A)に示すように細かい多面形状に形成されている。
【0029】
上記荒切削加工用のカッター1を用いた加工手順を図3に基づいて説明すると、カッター1は少なくとも直交3軸のスライド自由度をもつ汎用の数値制御工作機械である例えばマシニングセンタの主軸に予め装着されるとともに、加工対象となる被削材たるワークWは上記マシニングセンタのワークテーブルに固定され、さらにそのワークWにはドリル加工等によりストレート形状の下穴Hが予め形成されている。
【0030】
先ず、図3の(A)に示すように、下穴Hとカッター1の先端のボデー4端面とを対向させつつ、マシニングセンタのスライド自由度(主軸の軸心方向のスライド自由度)を使ってそのカッター1のボデー4を下穴Hに挿入することができるように下穴Hの軸心O2に対してカッター1の軸心O1を偏心させた上、同図(B)に示すようにカッター1と下穴Hとが干渉しないように切刃5がワークWの裏側に完全に突出するまで下穴Hにカッター1を挿入する。この時、カッター1の刃先5aはマシニングセンタの主軸割り出し機能(オリエンテーション機能)により予め円周方向の所定位置すなわち定角停止位置に割り出されて位置決めされている。
【0031】
続いて、マシニングセンタのスライド自由度(主軸軸線に対し直交方向のスライド自由度)を使ってカッター1を同図(B)の状態から同図(C)に示すように直径方向に移動させて下穴Hの軸心O2とカッター1の軸心O1とを一致させ、その状態からカッター1を主軸ごと回転駆動させて、さらに切削送りとして下穴Hからカッター1を抜き取る方向に送りを与える。これにより、ワークWには荒切削加工として同図(D)に示すように奥部側が大径のいわゆる逆テーパ穴T1が形成される。
【0032】
逆テーパ穴T1の切削を終えたならば、同図(D)の状態からカッター1の切刃5をテーパ穴T1の内周面から離間させるべくマシニングセンタのスライド自由度を使って主軸をわずかに反送り方向に戻した上、主軸回転を停止させるとともにカッター1の切刃5を所定の定角停止位置に割り出し、さらにマシニングセンタのもう一方のスライド自由度を使ってカッター1を主軸ごとその直径方向に所定量だけ移動させて、図4の(A)に示すように逆テーパ穴T1の軸心O2に対してカッター1の軸心O1を再び偏心させる。そして、同図(B)に示すようにマシニングセンタのスライド自由度を使ってカッター1を主軸ごと後退移動させて、加工された逆テーパ穴T1の内周面と切刃5が干渉しないようにカッター1を逆テーパ穴T1からゆっくりと抜き取り、以上をもって逆テーパ穴T1の荒切削加工を完了する。
【0033】
なお、上記荒切削加工用のカッター1による逆テーパ穴T1の荒切削加工方法は、請求項1に記載の発明のほか請求項3,4,5に記載の発明にそれぞれ対応している。
【0034】
上記荒切削加工が終了したならば、続いて仕上げ切削加工用のカッター6を用いての仕上げ切削加工に移行する。
【0035】
この仕上げ切削加工に際しては、例えばマシニングセンタに付帯する自動工具交換機能を使って荒切削加工用のカッター1から仕上げ切削加工用のカッター6にツーリングチェンジを行った上、その刃先9aを上記と同様に定角停止位置に予め割り出して位置決めしておく。
【0036】
そして、先ず図5の(A)に示すように、先に荒切削加工が施された逆テーパ穴T1の小径側の口元部とカッター6のボデー8側先端面とを対向させつつ、マシニングセンタの2軸同時制御により、切刃9と逆テーパ穴T1の内周面との間の隙間を一定に保ちながらそのカッター6のボデー8を逆テーパ穴T1にその傾斜に沿って斜めに挿入し、同図(B)に示すように逆テーパ穴T1の軸心O2とカッター6(ストレートシャンク7)の軸心O1とが一致した時点でその移動を停止させる。
【0037】
続いて、上記逆テーパ穴T1の軸心O2とカッター6の軸心O1とが一致した状態から、カッター6を主軸ごと回転駆動させて、さらに切削送りとして逆テーパ穴T1からカッター6を抜き取る方向に送りを与える。これにより、ワークWの逆テーパ穴T1には先の荒切削加工に続いて同図(C)に示すように仕上げ切削加工が施されて所定の精度の逆テーパ穴T2に仕上げられる。
【0038】
逆テーパ穴2の仕上げ切削加工を終えたならば、同図(D)に示すようにカッター6の切刃9を逆テーパ穴2の内周面から離間させるべくマシニングセンタのスライド自由度を使って主軸をわずかに反送り方向に戻した上、主軸回転を停止させるとともにカッター6の切刃9を所定の定角停止位置に割り出す。そして、同図(E)に示すようにマシニングセンタの2軸同時制御により先のカッター挿入時とは逆の手順でカッター6を主軸ごと逆テーパ穴2の傾斜に沿って後退移動させて、加工された逆テーパ穴T2からゆっくりと抜き取り、以上をもって逆テーパ穴T2の仕上げ切削加工を完了する。
【0039】
なお、上記仕上げ切削加工用のカッター6による逆テーパ穴T2の仕上げ切削加工方法は、請求項1に記載の発明のほか請求項6,7に記載の発明にそれぞれ対応しており、また上記荒切削加工と仕上げ切削加工とを含む加工方法は請求項8に記載の発明に対応している。
【0040】
このように本実施の形態によれば、逆テーパ穴T1,T2の荒切削加工用のカッター1と仕上げ切削用のカッター6とを使い分けることにより、少なくとも直交3軸のスライド自由度を有するマシニングセンタ等の既存の汎用工作機械の能力をそのまま使っていわゆる逆テーパ穴T2の加工を容易に行うことができ、専用工作機械を必要とすることもなければ、既存の工作機械の改造等も必要としない。
【0041】
また、図2に示した仕上げ切削加工用のカッター6では、図1に示した荒切削加工用のカッター1と比べてその直径dの首部の断面積として刃先9a先端の断面積と同等の大きさを確保できることから、カッター6そのものの剛性が高くなって工具振動によるびびり現象を抑制でき、結果としてより高速での切削に対応できるようになるとともに、切削時間を短縮化できる利点がある。
【0042】
ここで、逆テーパ穴T2に要求される加工精度によっては図3,4に示した荒切削加工のみをもって加工を終えてもよく、また、鋳ぬき等によって下穴が逆テーパ穴T1の如きテーパ状に形成される場合には図5に示す仕上げ切削加工のみをもって加工を終えてもよいことは言うまでもない。
【0043】
図6〜図9は本発明の第2の実施の形態を示す図で、図2に示した仕上げ切削加工用の工具としてのカッター6に代えて、その工具をツールホルダ21とストレート形状のカッター30単体とを組み合わせたいわゆる組み立て型の工具20としたものである。
【0044】
図6,7のほか図8に示すように、ツールホルダ21は、ホルダ本体22とアダプタ23とを互いに同一軸線上に位置するように複数のボルト24にて結合したもので、ホルダ本体22には工作機械の主軸25とテーパ結合されるテーパシャンク部26が一体に形成されている。アダプタ23にはツールホルダ21自体の軸線に対して所定角度傾斜したカッター差し込み穴27が形成されており、このカッター差し込み穴27に対して後述するカッター30が差し込まれた上で2本のロックボルト28にて着脱可能にクランプされる。なお、ロックボルト28はアダプタ23に形成されたねじ穴29に螺合している。
【0045】
上記カッター30は、実質的に図2に示した仕上げ切削加工用のカッター6をストレート形状にしたものと理解することができ、図6,8のほか図9に示すように略円柱状をなす超硬合金製のストレートシャンク31の先端部にはこれと同径のボデー32が一体に設けられ、このボデー32に逃げ溝33を形成することによりそのボデー32の外周面上に位置する単一の切刃34が設けられている。そして、この切刃34はいわゆる直線刃の如き直線状のもので、ストレートシャンク31自体の軸心と平行に設定されているとともに、その有効長さL3は先に説明した荒切削加工後の逆テーパ穴T1の長さMよりもわずかに大きく設定されている。また、ストレートシャンク31の外周にはその前後二箇所に着座平坦部35が形成されており、図8に示すように上記着座平坦部35とツールホルダ21側のねじ穴29との位相を合致させながらカッター30をカッター差し込み穴27に差し込み、各着座平坦部35にロックボルト28が着座するまでそのロックボルト28を締め込むことによりカッター30がツールホルダ21に堅固に固定される。なお、カッター30の両端面には予めセンタ穴36が形成されている。
【0046】
したがって、本実施の形態の形態の仕上げ切削加工用の工具20によれば、ツールホルダ21の軸心に対してカッター30の軸心が所定角度だけ傾斜しており、その結果としてツールホルダ21の軸心に対しカッター30側の直線刃の如き切刃34が角度だけ傾斜していることにほかならないことから、ツールホルダ21のテーパシャンク部26を工作機械の主軸25に装着することにより、図5と全く同一の加工形態をもって逆テーパ穴T2の仕上げ切削加工を施すことができる。
【0047】
なお、本実施の形態は請求項1に記載のテーパ穴加工方法のほか、請求項2および請求項9に記載のテーパ穴加工用工具に対応している。
【0048】
また、図1,2に示した荒切削加工用および仕上げ切削加工用のカッター1,6の場合には全体が一体構造であることから、切刃5,9の部分に必要な高価な工具用母材をもって全体を所要形状に削り出す必要があるばかりでなく、ストレートシャンク2,7の軸心に対して切刃5,9の部分が略くの字状もしくは略への字状に屈曲した複雑な形状となっているために工具のコストアップが余儀なくされ、同時に切刃5,9の再研削も面倒なものとなる傾向にあるが、本実施の形態の工具20によればこれらの不具合も解消される。
【0049】
すなわち、本実施の形態の工具20では、ツールホルダ21とカッター30との組み合わせとしたために、ツールホルダ21,カッター30ともに丸棒状の材料から削り出すことが可能であり、しかもツールホルダ21の部分についてはカッター30ほど高価な材料を用いる必要がないため、工具20そのものの加工が容易であり、コストダウンを図ることができる。その上、図9に示したようにカッター30の両端面に予めセンタ穴36を形成しておくことによりカッター30単独での再研削が可能であり、例えば上記センタ穴36を使ってカッター30を工具研削盤に両持ち支持させ、その切刃34に対して砥石を真っ直ぐに当てることにより容易に研削することが可能となる。
【0050】
また、図3,4に示した荒切削加工に際して、下穴Hの大きさ等の条件次第では上記第2の実施の形態の工具20の構造をもって同様に荒切削加工を行うことももちろん可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のテーパ穴加工方法に用いられる荒切削加工用のカッターの一例を示す図で、(A)はその側面説明図、(B)は同図(A)のa方向矢視図。
【図2】本発明のテーパ穴加工方法に用いられる仕上げ切削加工用のカッターの一例を示す図で、(A)はその側面説明図、(B)は同図(A)のb方向矢視図。
【図3】図1に示したカッターを用いてのテーパ穴の荒切削加工方法を示す工程説明図。
【図4】図1に示したカッターを用いてのテーパ穴の荒切削加工方法を示す工程説明図。
【図5】図2に示したカッターを用いてのテーパ穴の仕上げ切削加工方法を示す工程説明図。
【図6】本発明の第2の実施の形態として仕上げ切削加工用の工具の詳細を示す要部断面説明図。
【図7】図6のツールホルダ単体での右側面図。
【図8】図6に示す工具についてその構成要素であるツールホルダとカッターとの関係を示す分解図。
【図9】図6,8に示すカッターの詳細を示す図で、(A)はその側面図、(B)は同図(A)の左側面図、(C)は同図(A)の右側面図。
【符号の説明】
1…荒切削加工用のカッター(荒切削加工用の工具)
2…ストレートシャンク
4…ボデー
5…切刃
6…仕上げ切削加工用のカッター(仕上げ切削加工用の工具)
7…ストレートシャンク
8…ボデー
9…切刃
20…仕上げ切削加工用の工具
21…ツールホルダ
22…ホルダ本体
23…アダプタ
25…主軸
26…テーパシャンク部
27…カッター差し込み穴
28…ロックボルト
30…カッター
31…ストレートシャンク
32…ボデー
34…切刃
36…センタ穴
H…下穴
T1…荒切削加工後の逆テーパ穴
T2…仕上げ切削加工後の逆テーパ穴
W…ワーク(被削材)
Claims (9)
- ワークに予め形成された下穴の奧部側が大径となるようにその下穴の全長にわたってテーパ状に加工するテーパ穴加工方法であって、
加工すべきテーパ穴の軸方向長さよりも長く且つ工作機械の主軸軸線に対して所定角度傾斜した直線状で単一の切刃をもつ工具を上記工作機械の主軸に装着しておき、
下穴内周面に上記切刃が接触することがないように工具を一旦下穴に挿入し、
その状態で工具を回転させながら該工具にワークから抜き取る方向の送りを上記主軸とともに与えることでテーパ状の切削を開始する一方で、テーパ穴の内周面の軸方向長さ全長にわたって上記切刃が当接した状態をもって切削を終えることにより、上記下穴の全長と同じ長さのテーパ穴を形成することを特徴とするテーパ穴加工方法。 - 請求項1に記載のテーパ穴加工方法に用いられる工具であって、
この工具は、工作機械の主軸と同一軸線上に位置するように該主軸に装着されるツールホルダと、このツールホルダにその軸線に対し所定角度傾斜して着脱可能に装着されるカッターとを備えていて、
上記カッターはシャンクの先端部にこのシャンクの軸線と平行な直線状の切刃が形成されたものであって、且つ切削加工時の送りはツールホルダとともに与えられるものであることを特徴とするテーパ穴加工用工具。 - 加工すべきテーパ穴の軸方向長さよりも長く且つ先広がりでテーパ状の単一の切刃をシャンクの先端に有するカッターを工作機械の主軸に装着しておき、
ワークに予め貫通形成された下穴に対して上記カッターを偏心させた状態で挿入し、
そのカッターの切刃がワークの裏側に完全に抜け出た時点で上記下穴の軸心とカッターの軸心とを相互に一致させ、
その状態でカッターを回転させながら該カッターにワークから抜き取る方向の送りを上記主軸とともに与えることでテーパ状の切削を開始する一方で、テーパ穴の内周面の軸方向長さ全長にわたって上記切刃が当接した状態をもって切削を終えることにより、上記下穴の全長と同じ長さのテーパ穴を形成することを特徴とするテーパ穴加工方法。 - ワークに予め形成されている下穴がストレート形状のものであることを特徴とする請求項3に記載のテーパ穴加工方法。
- テーパ穴の切削加工を終えたならば上記カッターを再びその加工されたテーパ穴に対して偏心させた状態として加工後のテーパ穴から抜き取ることを特徴とする請求項4に記載のテーパ穴加工方法。
- 奥部側が大径となるようにワークに予め貫通形成されたテーパ穴に仕上げ切削加工を施す方法であって、
シャンクの先端部が略くの字状に折り曲げられていてその部分に上記テーパ穴の軸方向長さよりも長く且つ先広がりでテーパ状の単一の切刃を形成してなるカッターを工作機械の主軸に装着しておき、
工作機械の同時2軸制御によりテーパ穴の傾斜角度に沿ってカッターの切刃をテーパ穴に対して斜めに挿入して、そのカッターの軸心とテーパ穴の軸心とを相互に一致させ、
その後、上記カッターを回転させながら該カッターにワークから抜き取る方向の送りを上記主軸とともに与え、テーパ穴の内周面の軸方向長さ全長にわたって上記切刃が当接した状態をもって切削を終えることにより仕上げ切削加工を施すことを特徴とするテーパ穴加工方法。 - テーパ穴の仕上げ切削加工を終えたならばカッターの切刃を仕上げ切削加工後のテーパ穴の切削面から離し、
工作機械の同時2軸制御によりテーパ穴の傾斜角度に沿ってカッターをテーパ穴から斜めに抜き取ることを特徴とする請求項6に記載のテーパ穴加工方法。 - 請求項5に記載のテーパ穴加工方法をもって荒切削加工を施し、それに続いて請求項7に記載のテーパ穴加工方法をもって仕上げ切削加工を施すことを特徴とするテーパ穴加工方法。
- 請求項6〜8のいずれかに記載のテーパ穴の仕上げ切削加工に際してその請求項6〜8のいずれかに記載のカッターに代えて用いられる工具であって、
この工具は、工作機械の主軸と同一軸線上に位置するように該主軸に装着されるツールホルダと、このツールホルダにその軸線に対し所定角度傾斜して着脱可能に装着されるカッターとを備えていて、
上記カッターは、シャンクの先端部にこのシャンクの軸線と平行な直線状の切刃が形成されたものであって、且つ切削加工時の送りはツールホルダとともに与えられるものであることを特徴とするテーパ穴加工用工具。
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