JP3903291B2 - 2,3,6,7,10,11−ヘキサアルコキシトリフェニレン類の製造法 - Google Patents

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  • Heterocyclic Carbon Compounds Containing A Hetero Ring Having Oxygen Or Sulfur (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2,3,6,7,10,11−ヘキサアルコキシトリフェニレン類の製造法に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
一般式
【0003】
【化3】
Figure 0003903291
【0004】
〔式中R1及びR2は、同一又は異なって炭素数1〜10の飽和炭化水素基を示す。或いはR1及びR2は、メチレン鎖又はヘテロ原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。〕
で表される2,3,6,7,10,11−ヘキサアルコキシトリフェニレン類は、ディスコチック液晶を始めとする機能性有機材料の原料として有用な化合物である。
【0005】
従来、上記一般式(1)の2,3,6,7,10,11−ヘキサアルコキシトリフェニレン類は、例えば一般式
【0006】
【化4】
Figure 0003903291
【0007】
〔式中R1及びR2は上記に同じ。〕
で表される1,2−ジアルコキシベンゼンを酸化的に三量化して製造されている。しかしながら、従来の方法には種々の欠点があり、工業的規模の製造法として不適当である。
【0008】
例えば、J.Phy.,40,C3−17(1979)には、70%硫酸中、一般式(2)の1,2−ジアルコキシベンゼンにクロラニルを作用させて一般式(1)の2,3,6,7,10,11−ヘキサアルコキシトリフェニレン類を製造する方法が開示されている。しかしながら、この方法は反応速度が小さく、70%程度の収率で目的物を得るためには10日以上の反応時間が必要である。また、大量の硫酸を必要とするため、大規模で取り扱うには困難を伴うこと、排水の中和に大量のアルカリが必要であること、その結果大量の硫酸塩の副生を伴うこと等、工業的にも環境問題の上からも問題の多い方法である。
【0009】
また、Synthesis,477(1994)には大過剰の70%硫酸中で一般式(2)の1,2−ジアルコキシベンゼンに無水塩化第二鉄を作用させる方法が記載されている。この方法では目的物の種類によっては90%程度の収率で得られる場合があるが、通常は40%前後の収率で得られるに止まり、しかも上記の方法と同様に大量の硫酸を必要とするため取扱いが困難であること、生成物の単離が煩雑であること、排水の中和に大量のアルカリが必要であり、大量の廃棄物の副生を避け得ないこと等、工業的に満足できるものではない。
【0010】
更には白金電極を用いて電解酸化する方法(Tetrahedron Lett.,32,7405(1991))、或いは三フッ化ホウ素・エーテル錯体の存在下、タリウムトリフロロアセテートで酸化する方法が示されている。しかしながらこれらの方法は特殊な装置を必要とするため、任意の規模で製造するのに不都合を生じること、極めて毒性の高い反応剤を必要とすること、更に必ずしも収率が高くないこと等、実用上満足できるものではない。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、一般式(1)の2,3,6,7,10,11−ヘキサアルコキシトリフェニレン類を高収率、高純度で得ることができ、しかも工業的にも実施し易く、簡便で実用的な方法を見い出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち本発明は、有機溶媒中で一般式(2)で表される1,2−ジアルコキシベンゼンとハロゲン化第二鉄とを反応させることを特徴とする一般式(1)で表される2,3,6,7,10,11−ヘキサアルコキシトリフェニレン類の製造法に係る。
【0013】
本発明によれば、安価で回収可能な有機溶媒中で、一般式(2)の1,2−ジアルコキシベンゼンを単にハロゲン化第二鉄と作用させるだけの温和な条件下で、且つ汎用的設備を使用するのみで高収率、高純度で、後処理も容易に一般式(1)の2,3,6,7,10,11−ヘキサアルコキシトリフェニレン類が製造され得る。本発明の方法によれば、目的物が如何なる種類であっても、80〜90%という安定した高収率で製造し得る。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の方法において、出発原料として用いられる一般式(2)の化合物は、具体的には1,2−ジメトキシベンゼン、1,2−ジエトキシベンゼン、1,2−ジ−n−プロポキシベンゼン、1,2−ジイソプロポキシベンゼン、1,2−ジ−n−ブトキシベンゼン、1,2−ジイソブトキシベンゼン、1,2−ジ−tert−ブトキシベンゼン、1,2−ジ−n−アミロキシベンゼン、1,2−ジイソアミロキシベンゼン、1,2−ジヘキシロキシベンゼン、1,2−ジヘプチロキシベンゼン、1,2−ジオクチロキシベンゼン、1,2−ジノニロキシベンゼン、1,2−ジデシロキシベンゼン、1,4−ベンゾジオキサン、1,3−ベンゾジオキソール等である。本発明では、これらを2種類以上混合して使用してもよい。また、これらの化合物は公知のピロカテコールを塩基性条件下で相当するハロゲン化アルキル又はジアルキル硫酸と反応させることにより容易に製造することができる(Monatsh.82,588(1951))。
【0015】
本発明で用いられるハロゲン化第二鉄としては、従来公知のものを広く使用でき、例えば塩化第二鉄、臭化第二鉄、沃化第二鉄、フッ化第二鉄の無水物又は水和物等を挙げることができる。本発明では、これらは1種単独で又は2種以上混合して使用される。その使用量は、特に限定されるものではないが、通常基質1モル当たり0.1〜10モル、好ましくは1〜4モルである。
【0016】
本発明で使用する有機溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限されず従来公知のものを広く使用でき、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等やこれらの混合溶媒が挙げられる。これらの中でも、殊にハロゲン化炭化水素及び芳香族炭化水素が好ましい。
【0017】
基質濃度は、通常1×10-5〜5モル/リットル、好ましくは1×10-2〜3モル/リットルである。
【0018】
反応温度及び反応時間は一般式(2)の1,2−ジアルコキシベンゼン及びハロゲン化第二鉄の反応性や用いる有機溶媒の種類により異なるが、通常−30℃〜使用する溶媒の沸点において5〜120時間の範囲で選択するのが好ましい。
【0019】
上記方法で製造される一般式(1)の2,3,6,7,10,11−ヘキサアルコキシトリフェニレン類は、慣用されている単離手段により反応混合物から容易に単離精製できる。例えば反応終了後、溶媒を濃縮して留去した後反応混合物を水に注いで一般式(1)の目的物を析出させ、これを単に濾過等で分離することにより単離することができる。更に精製が必要な場合は再結晶又は昇華等の通常の手段を採用してもよい。
【0020】
【実施例】
以下実施例を掲げて本発明をより一層明らかにする。
【0021】
実施例1
1,2−ジメトキシベンゼン400g(2.89モル)及び無水塩化第二鉄944g(5.76モル)をジクロロメタン4リットルに溶解し、室温で20時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を濃縮し、残渣を3リットルの水に投入して不溶物を濾取した。これをアセトニトリル1リットル中に加えてスラリーの状態で室温で5時間撹拌した。次にこれを吸引濾過し、濾別した結晶を40℃で12時間減圧乾燥すると、2,3,6,7,10,11−ヘキサメトキシトリフェニレンが淡紫色粉状物として361g(純度98.5%、収率91.7%、融点313〜314℃)得られた。
【0022】
IR(KBr):ν=1520,1518,1263,833,779cm-1
1H−NMR(CDCl3 ):δ=7.76(s,6H,Ar−H)、4.06(s,18H,CH3 )。
【0023】
実施例2
1,2−ジデシロキシベンゼン1117g(2.89モル)を用いて実施例1と同様の操作を行うと、2,3,6,7,10,11−ヘキサデシロキシトリフェニレンが淡紫色粉状物として920g(純度98.0%、収率82.0%)得られた。
【0024】
IR(KBr):ν=1610,1518,1263,837,798cm-1
1H−NMR(CDCl3 ):δ=8.21(s,6H,Ar−H)、4.15(m,12H,OCH2 )、1.88,1.57,1.31(m,96H,CH2 )。
【0025】
実施例3〜5
ジクロロメタンの代わりに表1に示す溶媒を用いる以外は実施例1と同様に反応及び後処理を行った。目的物の収率、純度を表1に示す。
【0026】
【表1】
Figure 0003903291
【0027】
実施例6〜7
無水塩化第二鉄の代わりに表2に示すハロゲン化第二鉄を用いる以外は実施例1と同様に反応及び後処理を行った。目的物の収率、純度を表2に示す。
【0028】
【表2】
Figure 0003903291
【0029】
実施例8
1,4−ベンゾジオキサン393g(2.89モル)を用いて実施例1と同様の操作を行うと、2,3,8,9,14,15−ヘキサヒドロトリフェニレノ[2,3−b:6,7−b’:10,11’−b’’]トリス[1,4]-ジオキシンが淡紫色粉状物として260g(純度91.0%、収率61.0%)得られた。
【0030】
IR(KBr):ν=1161,1508,1256cm-1
1H−NMR(CDCl3 ):δ=7.73(s,6H,Ar−H)、4.31(s,12H,CH2 )。

Claims (2)

  1. トリフルオロ酢酸、トリフリック酸、クロロスルホン酸及び濃硫酸からなる群から選ばれた酸の非存在下、有機溶媒中で一般式
    Figure 0003903291
    〔式中R1及びR2は、同一又は異なって炭素数1〜10の飽和炭化水素基を示す。或いはR1及びR2は、メチレン鎖又はヘテロ原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。〕で表される1,2−ジアルコキシベンゼンとハロゲン化第二鉄とを反応させることを特徴とする一般式
    Figure 0003903291
    〔式中R1及びR2は上記に同じ。〕で表される2,3,6,7,10,11−ヘキサアルコキシトリフェニレン類の製造法。
  2. 有機溶媒がハロゲン化炭化水素及び芳香族炭化水素なる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の製造法。
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