JP3901543B2 - 感光性樹脂組成物及び感光性カバーレイフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分岐構造を有するシリコーン化合物を含む感光性樹脂組成物、それを用いて作製される難燃性の感光性カバーレイフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
感光性フィルムの用途としては、銅板をエッチングして銅回路を形成する際に用いるレジストフィルムとしての用途と、回路の絶縁保護フィルム(カバーレイフィルム)としての用途がある。
【0003】
レジストフィルムは、プリント配線板などの銅の回路を形成するために用いられ、エッチングレジストの役割を果たした後にプリント配線板などから剥離される。
【0004】
一方、絶縁保護フィルム(カバーレイフィルム)は、プリント配線板などの回路の上に感光性樹脂組成物を含む層を積層し、マスクパターンを載せ露光・現像により所定の位置に穴あけを行うことのできる感光性フィルムとして役割を果たした後、熱硬化させるとプリント配線板上に積層された状態で存在し、プリント配線板の回路を電気的に外界から絶縁する保護フィルムとしての役割を果たす。
【0005】
カバーレイフィルムはフレキシブルプリント配線板やパソコンのハードディスク装置のヘッド部分に用いられる。カバーレイフィルムは銅貼積層板(CCL)を用いて形成されたフレキシブルプリント配線板の銅回路パターンの絶縁保護及び耐屈曲性の向上を目的に使用される。
一方、フレキシブルプリント配線板やパソコンのハードディスク装置のヘッド部分は高温に長時間曝され燃焼を起こす虞があるので、高度の難燃性が要求される。従って、感光性フィルムを絶縁保護フィルム(カバーレイフィルム)として用いる場合、そのカバーレイフィルムには高度の難燃性が要求される。
【0006】
従来のカバーレイフィルムの主成分は、アクリル系やエポキシ系ポリマーであり、これらのカバーレイフィルムの耐熱性、耐薬品性、耐屈曲性及び難燃性に劣るという問題がある。
難燃性の改良に関しては、臭素系難燃剤を含む感光性樹脂組成物を硬化して作製されたカバーレイフィルムがある。しかし、ハロゲンを含む難燃剤は環境に悪い影響を与えるので、臭素系難燃剤に替えて、非ハロゲン系難燃剤の検討が進められている。非ハロゲン系難燃剤としては、窒素系、リン系、無機系化合物などが挙げられるが、一般に窒素系化合物は樹脂の硬化性への影響があり、リン系化合物は耐湿性低下などの影響があり、実用が困難な状況であり、電気絶縁性や耐加水分解性などが要求される感光性カバーレイフィルムに使用できる難燃材料の選択の幅が限られていた。
また、近年、シリコーン化合物が難燃剤として検討されているが、難燃効果を発揮できる樹脂の種類が非常に限られている。さらにシリコーン化合物単独の添加では大きな難燃効果を持つものは極めて少なく、比較的効果が認められたものでも厳しい難燃基準を満たすには多量に添加する必要があり、その結果プラスチックのその他の必要特性に悪影響が生じ、コスト的にも不利であるため実用的ではなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ハロゲン系難燃剤を用いることなく、カバーレイフィルムが難燃性を有することを特徴とする感光性樹脂組成物及び感光性カバーレイフィルムに関する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、(A)テトラヒドロフラン100gに、20℃において1.0g以上溶解する可溶性ポリイミド、(B)分岐構造を有するシリコーン化合物、(C)(メタ)アクリル系化合物を含有する感光性樹脂組成物である。第2の発明は、上記(B)分岐構造を有するシリコーン化合物が、構造単位として一般式(8)で示されるT単位及び/又は一般式(9)で示されるQ単位を持ち、上記T単位100モル%のうち、一般式(1)で表される単位が20モル%以上である
【0009】
【化4】
(式中Xは芳香族基を示す)
第1の発明に記載の感光性樹脂組成物である。
【0010】
第3の発明は、前記一般式(1)中のXが、フェニル基であることを特徴とする第2の発明に記載の感光性樹脂組成物である。
【0011】
第4の発明は、分岐構造を有するシリコーン化合物が、その末端基がビニル基及び/又は(メタ)アクリル基であるシリコーン化合物である第1〜第3の発明のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物である。
【0012】
第5の発明は、(A)、(B)及び(C)成分合計量100重量%に対し、(A)成分を30〜70重量%、(B)成分を1〜50重量%、(C)成分を10〜50重量%含有する第1〜第4の発明のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物である。
【0013】
第6の発明は、上記感光性樹脂組成物から作製される感光性カバーレイフィルムである。
本発明における感光性カバーレイフィルムの材料として(A)成分及び(B)成分を用いることにより、ハロゲン化合物を使用することなく、これを被覆したフレキシブルプリント配線板に、プラスチック材料の難燃性試験規格UL94V−0を満たすような難燃性、耐熱性、耐薬品性を付与することができる。
(A)可溶性ポリイミドについて説明する。
可溶性ポリイミドとは、テトラヒドロフラン100gに、20℃において1.0g以上溶解するものを可溶性ポリイミドといい、さらに望ましくは、テトラヒドロフラン100gに20℃で5g以上、より望ましくは10g以上溶解するものがよい。溶解性が低いと、所望の厚みの感光性フィルムの作製が困難になるおそれがある。
【0014】
可溶性ポリイミドは、例えば以下の製法により作製される。
【0015】
本発明に用いられる可溶性ポリイミドは、その前駆体であるポリアミド酸から得ることができるが、ポリアミド酸は、有機溶剤中ジアミンと酸二無水物と反応させることにより得られる。アルゴン、窒素等の不活性雰囲気中において、ジアミンを有機溶媒中に溶解あるいは、スラリー状に拡散させ、酸二無水物を有機溶媒に溶解、スラリー状に拡散させた状態、あるいは固体の状態で添加する。
【0016】
この場合のジアミンと酸二無水物が実質上等モルであれば、酸成分1種・ジアミン成分1種のポリアミド酸になるが、2種以上の酸二無水物成分及び2種以上のジアミン成分を用い、ジアミン成分全量と酸ニ無水物成分全量のモル比を実質上等モルに調整してポリアミド酸共重合体を任意に得ることもできる。
例えば、ジアミン成分−1及びジアミン成分−2を有機極性溶媒中に先に加えておき、ついで酸二無水物成分を加えて、ポリアミド酸重合体の溶液としてもよい。また、ジアミン成分−1を有機極性溶媒中に先に加えておき、酸二無水物成分を加え、しばらく攪拌してからジアミン成分−2を加え、ポリアミド酸重合体の溶液としてもよい。もしくは、酸二無水物成分を有機極性溶媒中に先に加えておき、ジアミン成分−1を加え、しばらく攪拌してからジアミン成分−2を加え、さらにしばらく攪拌してからジアミン成分−3を加えて、ポリアミド酸重合体の溶液としてもよい。
【0017】
この時の反応温度は、−20℃〜90℃が望ましい。反応時間は30分から24時間程度である。
【0018】
ここで、ポリアミド酸の平均分子量は5000〜300000であることが望ましい。平均分子量が5000未満では、できあがったポリイミド組成物の分子量も低くなり、そのポリイミド組成物をそのまま用いても樹脂が脆くなる傾向にある。一方、300000を越えるとポリアミド酸ワニスの粘度が高くなる傾向にあり、取扱いが困難となる場合がある。
【0019】
また、このポリイミド樹脂に各種の有機添加剤、或は無機のフィラー類、或いは各種の強化材を複合することも可能である。
【0020】
ここでポリアミド酸の生成反応に使用する有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどをあげることができ、これらを単独または混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミド酸を溶解するものであれば特に限定されない。後述するポリイミドの好ましい製法においては、ポリアミド酸を合成し、その後、このポリアミド酸の溶液を減圧下に加熱して、溶媒の除去とイミド化を同時に行うので、ポリアミド酸を溶解し、なるべく沸点の低いものを選択することが、工程上有利である。
【0021】
次に、ポリアミド酸をイミド化する工程について説明する。
【0022】
ポリアミド酸がイミド化する際には、水を生成する。この生成した水は、ポリアミド酸を容易に加水分解し分子量の低下を引き起こす。この水を除去しながらイミド化する方法として、
1)トルエン・キシレン等の共沸溶媒を加え共沸により除去する方法、
2)無水酢酸等の脂肪族酸二無水物とトリエチルアミン・ピリジン・ピコリン・イソキノリン等の3級アミンを加える化学的イミド化法、
3)減圧下に加熱イミド化する方法
がある。いずれの方法でもよいが、イミド化により生成する水を減圧下に加熱し、積極的に系外に除去することにより加水分解を抑え、分子量低下を避けることができるという点から3)の方法が最も望ましい。3)の方法では、用いた原料の酸二無水物中に、加水分解により開環したテトラカルボン酸或いは、酸二無水物の片方が加水開環したもの等が混入し、ポリアミド酸の重合反応が停止し低分子量のポリアミド酸となった場合でも、続くイミド化時の減圧下の加熱により、開環した酸二無水物が再び、閉環して酸二無水物となり、イミド化中に、系内に残っているアミンと反応し、イミド化反応前のポリアミド酸の分子量よりもポリイミドの分子量が大きくなることが期待できる。
【0023】
イミド化の加熱条件は、イミド化が効率よく行われ、しかも水が効率よく除かれる100℃以上、望ましくは120℃以上であることが望ましい。最高温度は、用いるポリイミドの熱分解温度以下に設定することが望ましく、通常、250〜350℃程度でイミド化は、ほぼ完了するため、最高温度をこの程度にすることもできる。
【0024】
減圧する圧力の条件は、圧力が小さいほうが好ましいが、上記加熱条件でイミド化時に生成する水が効率よく除去される圧力であればよい。具体的には、減圧加熱する圧力は0.09MPa〜0.0001MPaであり、望ましくは、0.08MPa〜0.0001MPa、さらに望ましくは、0.07MPa〜0.0001MPaである。
【0025】
このポリイミドに用いられる酸二無水物は、カルボン酸二無水物であれば特に限定されないが、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3‘,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物や、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
【0026】
このポリイミドに用いられる酸二無水物は、芳香環を1〜4個有する酸二無水物または脂環式の酸二無水物を用いることが、耐熱性の点から好ましい。特に、有機溶媒への溶解性の高いポリイミドを得るためにさらに好ましくは、下記一般式(2)
【0027】
【化5】
(式中R1は、−、−CH2−、−C(CH3)2−,−C(CF3)2−,−O−,−CO−,−SO2、−SO2−、もしくは2価の有機基を、R2は−O−もしくは−COO−を示す。)の構造で表される化合物から選ばれる、芳香環を2個以上有する酸二無水物を一部用いることが望ましい。さらに好ましくは、芳香環を4個以上有する酸二無水物を一部用いることが望ましい。
【0028】
上記の酸二無水物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
次に、このポリイミドに用いられるジアミンは、ジアミンであれば特に限定されないが、耐熱性と可溶性のバランスをとることができる点から、下記一般式(3)
【0030】
【化6】
(式中、R1は、−,−CH2−、−C(CH3)2−,−C(CF3)2−,−O−,−CO−,−COO−,−SO2−を、R2は水酸基またはカルボキシル基、R3は水素、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン、メトキシ基,C1〜C5のアルキル基を、aは0,1,2,3,4を、bおよびcは、0,1,2,3,4を示す。)で表される、1分子中に水酸基またはカルボキシル基を1個以上有する芳香族系ジアミンを原料の一部に用いることが好ましい。とくに、一般式(3)中のR3が水酸基もしくはカルボキシル基であるジアミンを用いると、イミドのアルカリ水溶液への溶解性を上げることができる。これらのジアミン化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
また、上記一般式(3)で表されるジアミンは、得られるポリイミドの可溶性が高くなるという点から、全ジアミン中5〜95モル%用いることが好ましい。さらに望ましくは、全アミン中10〜70モル%である。
【0032】
また、フィルムの弾性率を下げることができるという点から、ジアミンの一部として下記の一般式(4)
【0033】
【化7】
(R4は炭素数1〜12の炭化水素基、フェニル基、メトキシ基を示し、dは1〜5の整数であり、eは1〜20の整数である。)で表されるシリコンジアミンを用いることが好ましい。
【0034】
また、上記一般式(4)で表されるシリコンジアミンは、フィルムの弾性率を下げるために、全ジアミン中、5〜50モル%用いることが好ましい。5モル%より少ないと添加する効果が不十分であり、50モル%より多いと、フィルムが柔らかくなりすぎて弾性率が低くなりすぎたり、熱膨張係数が大きくなったりする傾向がある。
【0035】
ポリアミド酸溶液を減圧下で加熱乾燥して直接イミド化する具体的な方法について説明する。減圧下、加熱乾燥できるなら方法は問わないが、バッチ式の方法として、真空オーブン、連続式の方法として、例えば減圧装置の付随した押出し機により実施できる。押出し機は、2軸或いは3軸押出し機が好ましい。これらの方式は、生産量により選択される。ここでいう「減圧装置の付随した押出し機」とは、熱可塑樹脂の加熱および溶融押出しを行う、一般的な例えば2軸或いは3軸溶融押出し機に、減圧して溶媒を除去する装置を付随させた装置であり、従来の溶融押出し機に付設することもできるし、新たに減圧機能を組み込んだ装置を作成することもできる。この装置により、ポリアミド酸溶液が、押出し機により混練されながら、ポリアミド酸はイミド化され、溶媒とイミド化時に生成した水は除去され、最終的には生成した可溶性ポリイミドが残る。また、前記可溶性ポリイミドに水酸基および/またはカルボキシル基を導入すると、アルカリに対する溶解性が向上する傾向があり、アルカリ溶液を現像液として用いることができるため好ましい。水酸基および/またはカルボキシル基を有するポリイミドは、水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンを一部含むジアミン成分と、酸ニ無水物成分とを重合反応させることにより、得ることができる。水酸基及び/またはカルボキシル基を有するジアミンとしては、水酸基及び/またはカルボキシル基を有していれば特に限定されることはない。さらに反応性・硬化性を付与するためには、水酸基および/またはカルボキシル基を導入した可溶性ポリイミドに、これと反応可能なエポキシ基を有する化合物と反応させることにより、後述の各種の官能基を導入し、変性ポリイミドとすることができる。ここでいうエポキシ基を有する化合物は、さらに光重合性および/または熱重合性官能基として、エポキシ基、炭素間三重結合、炭素間二重結合から選ばれる官能基を二つ以上有することが好ましい。このような光重合性および/または熱重合性官能基を導入することにより、得られる組成物に良好な硬化性や接着性を付与することができる。以下、水酸基および/またはカルボキシル基を有するポリイミドに官能基を導入する方法について説明する。具体的に、変性ポリイミドとは、下記一般式(5)
【0036】
【化8】
(ただし、式中fは0以上の整数、gは1以上の整数、hは1または2の整数、R5は4価の有機基、R6は2価の有機基、R7は3価もしくは4価の有機基、R8は下記群(1)
【0037】
【化9】
(式中R9は、エポキシ基、炭素間三重結合、または炭素間二重結合からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の官能基を有する1価の有機基)で表される有機基)で表されるポリイミドを示す。
【0038】
前述の水酸基あるいはカルボキシル基を有する変性ポリイミドを有機溶媒に溶かし、エポキシ基を有する化合物と反応させることにより変性ポリイミドが得られる。前記エポキシ基を有する化合物は、エポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂、エポキシ基以外にさらに炭素間三重結合、炭素間二重結合から選ばれる官能基を二つ以上有する化合物が好ましい。
【0039】
エポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂とは、エポキシ基を分子内に2個以上持っていれば特に限定されないが、以下のように例示することができる。
例えば、エピコート828(油化シェル社製)等のビスフェノール型エポキシ樹脂、180S65(油化シェル社製)等のオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、157S70(油化シェル社製)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、1032H60(油化シェル社製)等のトリスヒドロキシフェニルメタンノボラック型エポキシ樹脂、ESN375等のナフタレンアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン1031S(油化シェル社製)、YGD414S(東都化成)、トリスヒドロキシフェニルメタンEPPN502H(日本化薬)、特殊ビスフェノールVG3101L(三井化学)、特殊ナフトールNC7000(日本化薬)、TETRAD−X、TETRAD−C(三菱瓦斯化学社製)等のグリシジルアミン型樹脂などがあげられる。
【0040】
エポキシ基と炭素間二重結合を有する化合物とは、エポキシ基と二重結合を同一分子内に持っていれば特に限定されないが、アリルグリシジルエーテル・グリシジルアクリレート・グリシジルメタクレート・グリシジルビニルエーテル等を例示することができる。
【0041】
エポキシ基と炭素間三重結合を有する化合物とは、エポキシ基と三重結合を同一分子内に持っていれば特に限定されないが、プロパギルグリシジルエーテル・グリシジルプロピオレート・エチニルグリシジルエーテル等を例示することができる。
【0042】
反応に用いられる溶媒は、エポキシ基と反応せず、水酸基および/あるいはカルボキシル基を有するポリイミドを溶解するものであれば特に限定されない。例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン等、キシレン、トルエンのような芳香族炭化水素が使用可能である。これらを単独または混合物として使用することができる。後に、溶媒の除去を行うので、水酸基あるいはカルボキシ基を有する熱可塑性ポリイミドを溶解し、なるべく沸点の低いものを選択することが、工程上有利である。
反応温度は、エポキシ基と水酸基・カルボキシル基と反応する40℃以上130℃以下の温度で行うことが望ましい。特にエポキシ基と二重結合あるいは、エポキシ基と三重結合を有する化合物については、二重結合・三重結合が熱により架橋・重合しない程度の温度で反応させることが望ましい。具体的には、40℃以上100℃以下、さらに望ましくは、50℃以上80℃以下である。反応時間は、1時間程度から15時間程度である。
このようにして、変性ポリイミドの溶液を得ることができる。銅箔との接着性や現像性を上げるために、この変性ポリイミド溶液に、適宜、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シアナートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂を混ぜてもよい。
上記のように調製された可溶性ポリイミド、または変性ポリイミド、すなわち(A)成分は、(A)、(B)、(C)成分の合計量を基準として30〜70重量%用いることが好ましく、さらに好ましくは40〜60重量%、より好ましくは45〜60重量%用いることが望ましい。30%より少ないと硬化後のカバーレイフィルムの難燃性の実現が難しく、さらに機械特性が悪くなる傾向があり、70%より多いとカバーレイフィルムの現像性が悪くなる傾向がある。
次に、分岐構造を有するシリコーン化合物、すなわち(B)成分について説明する。
シリコーン化合物とは、以下に示すM単位、D単位、T単位、Q単位の4種類のシロキサン単位のうち少なくともいずれかが重合してなるポリマーである。
【0043】
【化10】
M単位
(ただし、式中Yは有機基を示す)
【0044】
【化11】
D単位
(ただし、式中Yは有機基を示す)
【0045】
【化12】
T単位
(ただし、式中Yは有機基を示す)
【0046】
【化13】
Q単位
このうち、T単位及び/又はQ単位を1個以上含有すると分岐構造を持つシリコーン化合物となる。本発明に用いる(B)成分としては、一般式(8)で示されるT単位及び/又は、一般式(9)で示されるQ単位を含むシリコーン化合物であることを特徴とするが、中でもT単位を含むことが好ましい。これらの分岐単位を全体のシロキサン単位の20mol%以上含有することが好ましい。20mol%未満であると、(B)成分:シリコーン化合物の耐熱性が低下して難燃性の効果が下がり、また(B)成分:シリコーン化合物自体の粘度が低すぎてカバーレイフィルムを作製した場合にフィルム表面にシリコーン化合物がしみ出すという悪影響を及ぼす場合がある。さらに好ましくは30mol%以上、95mol%以下である。30mol%以上であると(B)成分:シリコーン化合物の耐熱性が一層上がり、これを含有したカバーレイフィルムの難燃性が大幅に向上する。しかし、95mol%を超えるとシリコーン主鎖の自由度が減少して、燃焼時の芳香族基の縮合が生じにくくなる場合があり、顕著な難燃性を発現しにくくなる場合がある。また、一般式(6)〜(9)中の有機基Yは、同じでも異なっていてもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などのアルキル基、シクロへキシル基などのシクロアルキル基、ビニル基、(メタ)アクリル基、アリル基などのアルケニル基、フェノール基、スチリル基、フェニル基、トリル基、ビフェニル基、ナフチル基などのアリール基、アルコキシ基、ポリエーテル基、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、またはこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した1価有機基などが挙げられる。本発明のシリコーン化合物(B)成分は、これらの有機基を1種類のみ含有していても2種類以上含有していてもよい。
【0047】
シリコーン化合物(B)成分は、含有する有機基の20mol%以上が芳香族基であることが特に好ましい。この範囲以下であると、燃焼時に芳香族基同士の縮合が起こりにくくなり難燃効果が低下する場合がある。さらに好ましくは40mol%以上、95mol%以下であり、より好ましくは60mol%以上、90mol%以下、最も好ましくは60mol%以上、85mol%以下である。85mol%以下40mol%以上であると燃焼時の芳香族基が一層効率的に縮合できると同時に、(A)成分:可溶性ポリイミドとの相溶性が良く分散性が改善され、極めて良好な難燃効果を発現できる。しかし、95mol%を超えると芳香族基同士の立体障害により、これらの縮合が生じにくくなることがあり、顕著な難燃効果を発現しにくくなる場合がある。
【0048】
シリコーン化合物(B)成分が含有する芳香族基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフタレン、またはこれらの誘導体であるが、シリコーン化合物の安全面からは、特にフェニル基が好ましい。本シリコーン化合物(B)成分中の有機基で、主鎖や分岐した側鎖に付いたもののうち、芳香族基以外の有機基としてはメチル基が好ましく、さらに末端基はメチル基、フェニル基、水酸基、アルコキシ基、ビニル基、(メタ)アクリル基のうちから選ばれる1種類または2種類以上の官能基であることが好ましい。これらの官能基を有する末端基の場合、可溶性ポリイミド(A)成分とシリコーン化合物(B)成分との混合時に樹脂組成物のゲル化が起こりにくく、均一に分散できるため、フィルムの外観を損なうことなく一層良好な難燃効果を持つことができる。とくに、本シリコーン化合物はビニル基、(メタ)アクリル基のうちから選ばれる1種類または2種類以上の官能基を末端基として含有することがより好ましい。(B)成分として末端基に反応性の炭素間不飽和結合を有するシリコーン化合物を用いることにより、光硬化及び熱硬化させる時に、本発明に使用する(メタ)アクリル系化合物(C)成分と共重合し、硬化後のカバーレイフィルムの難燃性及び耐熱性に寄与する同時に、現像処理中に露光後のフィルムからシリコーン化合物が溶出することを防止することができる。末端基に反応性の炭素間不飽和結合を持たないシリコーン化合物を用いた感光性カバーレイフィルムの場合、現像処理中にシリコーン化合物が現像液に溶出し、硬化後のフィルムの難燃性が低下してしまうことがある。また、上記シリコーン化合物の平均分子量(重量平均分子量)は、好ましくは400以上50000以下である。平均分子量が50000を超えるとシリコーン化合物自体の粘度が高すぎ、可溶性ポリイミド(A)成分や(メタ)アクリル系化合物との相溶性が悪くなり、均一に分散できないために難燃効果やフィルム形成能が劣る傾向がある。また、平均分子量が400未満のものは、入手しにくいほか、粘度が低すぎてフィルムからシリコーン化合物がしみ出したり、大量に配合しないと難燃効果を出しにくかったりする傾向がある。上記シリコーン化合物は、市販の製品を用いてもよいが、一般的な製造方法に従って製造することもできる。すなわち、シリコーン化合物の分子量およびシリコーン化合物を構成するM単位、D単位、T単位及びQ単位の割合に応じて、適量のトリオルガノモノクロロシラン、ジオルガノジクロロシラン、モノオルガノトリクロロシラン及びテトラクロロシラン、あるいはそれらの部分的加水分解縮合物を有機溶媒中に溶解し、水を添加して反応させることによって縮重合を終了させ、その後溶媒などを蒸留などで分離して合成する。原料の配合量を変えることにより、任意の分子量およびM単位、D単位、T単位及びQ単位の割合からなるシリコーン化合物を製造することができる。例えば、トリオルガノモノクロロシラン及びジオルガノジクロロシランの加水分解縮合物のみを、平衡化触媒や縮合触媒を用いて縮合反応により製造されるシリコーン化合物は、一般式(10)に示すような分岐構造のない直鎖状の構造となる。
【0049】
【化14】
また、モノオルガノトリクロロシラン及び/またはテトラクロロシランの加水分解縮合物を原料の一部に用い、さらにジオルガノジクロロシランの加水分解物と、平衡化触媒や縮合触媒を用いて縮合反応により製造されるシリコーン化合物は、例えば一般式(11)で示すように分岐構造を有する三次元構造(網目構造)となる。
【0050】
【化15】
さらに、ビニル基、(メタ)アクリル基のうちから選ばれる1種類または2種類以上の官能基を末端基として含有するシリコーン化合物は、ビニル基、(メタ)アクリル基のうちから選ばれる1種類または2種類以上の官能基を有するトリオルガノモノクロロシラン、ジオルガノジクロロシラン、モノオルガノトリクロロシラン、あるいはそれらの部分的加水分解縮合物を原料の一部に用いることにより製造される。シリコーン化合物を製造する際に用いる平衡化触媒や縮合触媒としては、硫酸、塩酸などの無機酸、及び有機スルホン酸、カルボン酸などの有機酸などからなる群から選択される少なくとも1種類の酸性触媒、好ましくは硫酸、塩酸及び有機スルホン酸、より好ましくは硫酸が用いられる。原料のオルガノシラン全体に対する酸性触媒の添加量は0.5重量%〜10重量%、好ましくは1重量%〜7重量%である。触媒は、微細なゲル状物資が副生することを防ぐため、2回以上に分け添加することが好ましい。すなわち、シロキサンに対し、初めに少量の上記酸性触媒を添加し、室温で1〜5時間攪拌し、主に縮合反応を行わせた後に、残りの酸性触媒を添加し、室温でさらに1〜10時間攪拌する。この場合、初めに添加する酸性触媒の量は。原料のオルガノシラン全体に対し、通常0.02重量%〜2重量%、好ましくは0.05重量%〜1重量%である。酸性触媒をすべて添加して1〜10時間撹拌した後、水を添加する。これはシロキサンの末端基にスルホニル基が結合しているため、これを水酸基に変換し、更に縮合させるためである。水の添加量は、酸性触媒に対して少なすぎても、多すぎても上記の反応が起こりにくくなるため、酸性触媒100重量部に対して20〜60重量部、好ましくは30〜50重量部である。水添加後さらに0.5〜3時間、室温で撹拌し、縮合反応を終了させる。廃酸を分離した後、残った酸性触媒の中和脱水を行う。中和剤はこの目的に合うものであれば特に限定されないが、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウムなどが好ましい。又、この時、硫酸ナトリウムなどの脱水剤を加えることも、その後の濾過精製には場合により有効である。分岐構造を持つ市販されているシリコーン化合物としては、例えば信越シリコーン(株)製のKF56、KR215、KR211、KR311、KR2621-1、X-40-2134、X-40-2135等が挙げられるが、これらに限定されない。1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。シリコーン化合物、即ち(B)成分は、(A)、(B)及び(C)成分の合計量100重量%に対し1〜50重量%含有することが望ましく、更に望ましくは5〜40重量%である。1重量%未満であると、硬化後の感光性カバーレイフィルムに難燃効果が不十分なことがあり、50重量%を超えると感光性樹脂化合物が分離してしまったり、フィルム形成能が損なわれたり、フィルムの外観に劣ったりするという問題がある。
【0051】
また、シリコーン化合物と無機水酸化物との併用で難燃性や自己消火性を向上させることができることが知られており、本発明の(B)成分に加えて無機水酸化物を配合してもよい。ただし、フィルムの透明性や表面の平滑性、電気絶縁性に悪影響を与えたりするため、配合量はシリコーン化合物に対し10重量%以下に抑えることが好ましい。
【0052】
さらに、本発明において、(B)成分とともに、ホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸アンモニウムもしくはポリリン酸アンモニウムから選ばれる1種類以上の化合物を併用してもよい。これらの化合物を用いることにより、Bステージ状態の感光性カバーレイフィルムに熱流動性を与えることができる。
【0053】
ホスファゼン化合物としては、耐熱性、耐加水分解性、難燃性、耐薬品性の点から、シクロホスファゼン化合物であることが好ましい。具体的には、ジフェノキシホスファゼン、フェノキシイソプロポキシホスファゼン、アミドホスファゼン等、商品名としては、SP-100、SPS-100、SPB-100、SPE-100、SPR-100L、SP-134(いずれも大塚化学製)等をあげることができ、これらは単独もしくは2種以上混合して用いられる。
また、側鎖にビニル基、アリル基、メタリル基、1−ブテニル基から選ばれる1種以上の反応性置換基を有するホスファゼン化合物であってもよい。具体的には、例えばビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ビス(2−メトキシ−4−アリルフェノキシ)ホスファゼン、フェノキシアリルホスファゼン等を挙げることができ、これらは単独で、もしくは2種以上混合して用いられる。
ホスファゼン化合物を用いると、硬化後の感光性カバーレイフィルムに難燃性を付与できると共に電気絶縁性にも優れており特に好ましい。
これらの化合物の配合量は、(B)成分に対して0〜200重量%が好ましく、0〜150重量%が好ましい。配合量が多すぎると、(A)成分と均一に分散しにくくなり、作製される感光性カバーレイフィルムの透明性が損なわれたり、硬化後の感光性カバーレイフィルムの機械特性や耐衝撃性が低下したりする。
次に(C)成分である(メタ)アクリル系化合物について説明する。
【0054】
(メタ)アクリル系化合物であれば特に限定はないが、エチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクレート、ネオペンチルグリコールジメタクレート、ポリプロピレングリコールジメタクレート、2,2−ビス[4−(メタクロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、ポリエチレングリコールジクリレート、イソシアヌル酸トリアクリレート、イソシアヌル酸ジアクリレート、グリシジルメタクレート、グリシジルアリルエーテル、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリル1,3,5−ベンゼンカルボキシレート、トリアリルアミン、トリアリルシトレート、トリアリルフォスフェート、ジアリルアミン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジスルフィド、ジアリルエーテル、ザリルシアルレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、等が好ましいが、これらに限定されない。
【0055】
架橋密度を向上するためには、特に炭素間二重結合を2個以上有する多官能の(メタ)アクリル系化合物を用いることが望ましい。
また、(C)成分としては1分子中に芳香環及び/又は複素環を1個以上有する化合物であることが、カバーレイフィルムに熱圧着時の流動性を付与し高い解像度を付与することができるという点から好ましい。
【0056】
1分子中に芳香環及び/又は複素環を1個以上有し、かつ炭素間二重結合を1個以上有する(メタ)アクリル系化合物を例示する。
【0057】
例えば、アロニックスM-210、M-211B(東亞合成製)、NKエステルABE-300、A-BPE-4、A-BPE-10、A-BPE-20、A-BPE-30、BPE-100、BPE-200(新中村化学製)等のビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート、アロニックスM-208(東亞合成製)等のビスフェノールF EO変性(n=2〜20)ジ(メタ)アクリレート、デナコールアクリレートDA-250(ナガセ化成製)、ビスコート#540(大阪有機化学工業製)等のビスフェノールA PO変性(n=2〜20)ジ(メタ)アクリレート、デナコールアクリレートDA-721(ナガセ化成製)等のフタル酸PO変性ジアクリレート、をあげることができる。さらに、芳香環は含まないが、アロニックスM-215(東亞合成製)等のイソシアヌル酸 EO 変性ジアクリレートやアロニックスM-315(東亞合成製)、NKエステルA-9300(新中村化学製)等のイソシアヌル酸 EO 変性トリアクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
(C)成分は、(A)、(B)及び(C)の合計量の1〜50重量%配合されることが好ましい。1重量%より少ないと圧着可能温度が高く、かつ解像度が悪くなる傾向にあり、50重量%より多いとBステージ状態のフィルムにベタツキが見られ、熱圧着時に樹脂がしみ出しやすくなり、さらに硬化物が脆くなりすぎる傾向にある。好ましくは、1〜40重量%の範囲であり、さらに望ましくは、5〜10重量%である。
【0059】
更に本発明の組成物には露光現像により所望のパターンを描けるようにするために(D)成分、光反応開始剤を配合することが好ましい。
【0060】
光により、g線程度の長波長の光によりラジカルを発生する化合物の一例として、下記一般式(12)、一般式(13)、
【0061】
【化16】
(式中、R10,R11及びR12は、C6H5−,C6H4(CH3)−,C6H2(CH3)3−,(CH3)3C−,C6H3Cl2−を、R13,R14及びR15は、C6H5−,メトキシ基,エトキシ基,C6H4(CH3)−,C6H2(CH3)3−を表す。)で表されるアシルフォスフィンオキシド化合物が挙げられる。これにより発生したラジカルは、炭素間二重結合を有する反応性基(ビニル・(メタ)アクリル・アリル等)と反応し架橋・重合を促進する。
【0062】
一般式(12)で表されるアシルフォスフィンオキシドが2個のラジカルを発生するのに対し、特に一般式(13)で表されるアシルフォスフィンオキシドは、α開裂により4個のラジカルを発生するためより好ましい。
【0063】
ポリイミド樹脂の側鎖に付けたエポキシ基、炭素間二重結合、三重結合を硬化させるためには、以上のようなラジカル発生剤の替わりに、光カチオン発生剤を用いてもよい。例えば、ジメトキシアントラキノンスルフォン酸のジフェニルヨードニウム塩等のジフェニルヨードニウム塩類・トリフェニルスルフォニウム塩類・ピリリニウム塩類、トリフェニルオニウム塩類・ジアゾニウム塩類等を例示することができる。この際、カチオン硬化性の高い脂環式エポキシやビニルエーテル化合物を混合することが好ましい。
【0064】
もしくは、側鎖に付けたエポキシ基、炭素間二重結合、三重結合を硬化させるために、光塩基発生剤を用いてもよい。例えば、ニトロベンジルアルコールやジニトロベンジルアルコールとイソシアナートの反応により得られるウレタン化合物、或いはニトロ−1−フェニルエチルアルコールやジニトロ−1−フェニルエチルアルコールとイソシアナートの反応により得られるウレタン化合物、ジメトキシ−2−フェニル−2−プロパノールとイソシアナートの反応により得られるウレタン化合物等が例示できる。
【0065】
本発明の組成物には、実用に供しうる感光感度を達成するため、増感剤を配合することが望ましい。増感剤の好ましい例としては、ミヒラケトン、ビス−4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾフェノン、カンファーキノン、ベンジル、4,4’−ジメチルアミノベンジル、3,5−ビス(ジエチルアミノベンジリデン)−N−メチル−4−ピペリドン、3,5−ビス(ジメチルアミノベンジリデン)−N−メチル−4−ピペリドン、3,5−ビス(ジエチルアミノベンジリデン)−N−エチル−4−ピペリドン、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン、4−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)−3,3−ジメチル−3H−インドール等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、ラジカル開始剤として種々のパーオキサイドを前記増感剤と組み合わせて用いることができる。特に3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンとの組み合わせが特に好ましい。
【0066】
光反応開始剤および増感剤の総重量は、前記(A)、(B)及び(C)成分の合計量100重量%に対し、0.001〜10重量%配合することが好ましく、0.01〜10重量%とすることが、さらに好ましい。0.001〜10重量部の範囲を逸脱すると、増感効果が得られなかったり、現像性に好ましくない影響を及ぼしたりする場合がある。なお、光反応開始剤および増感剤として、1種類の化合物を用いても良いし、数種類を混合して用いてもよい。
【0067】
次に感光性カバーレイフィルムの作製方法について説明する。
【0068】
本発明の感光性カバーレイフィルムを製造するに際しては、まず、(A)、(B)、(C)成分及び(D)成分を有機溶剤に均一に溶解する。
【0069】
用いる有機溶媒は、感光性樹脂組成物を溶解する溶媒であればよく、例えば、ジオキソラン、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メチルアルコール、エチルアルコールなどのアルコール系溶媒等が用いられる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。後に、溶媒の除去を行うので、(A)、(B)、(C)、(D)成分を溶解し、なるべく沸点の低いものを選択することが、工程上有利である。
ついで、溶液状となった感光性樹脂組成物を支持体フィルム上に均一に塗布した後、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶媒を除去して乾燥し、感光性カバーレイフィルムとする。
通常、感光性カバーレイフィルムは、感光性組成物を半硬化状態(Bステージ)で保ったものであり、熱プレスもしくはラミネート加工時には流動性を持ち、フレキシブルプリント配線版の回路の凸凹に追従して密着し、露光時の光架橋反応、プレス加工時の熱およびプレス後に施す加熱キュアにより硬化が完了するように設計される。
感光性カバーレイフィルムの作製において溶媒を除去・乾燥する時の乾燥温度は、(C)成分等に含まれるアクリル基などの硬化性基が反応してしまわない程度の温度が好ましく、120℃以下が好ましく、さらに望ましくは100℃以下である。乾燥時間は溶媒が除去されるのに十分な時間があればよいが、なるべく短い時間の方が工程上有利である。具体的には、
1)80〜120℃の温度で短時間(2〜3分間程度)乾燥する方法と 、2) 45℃5分間、65℃5分間、85℃5分間のように低温から徐々に温度を上げながら乾燥していく方法
がある。1)のように比較的高温で一気に乾燥させる方法は、感光性カバーレイフィルム厚が小さい場合に適しており、短時間で乾燥できるため、長尺の感光性カバーレイフィルムを作製する場合に生産性が向上できる。一方、感光性フィルム厚が50μm以上の場合は、感光性樹脂組成物を溶解させている溶媒が蒸発除去されるのに時間がかかり、高温で乾燥させて表面が乾燥されていても、フィルム内部にはまだ溶媒が残留しており、基板などへのラミネート時に樹脂が染み出したり、ラミネート・パターン露光・現像後に熱キュアする工程で、感光性カバーレイフィルムが発泡してしまったりするという問題がある。そこで、感光性カバーレイフィルム厚が比較的大きい場合は乾燥時間はかかるが、2)のように徐々に乾燥温度を上げていく方法が好ましい。
また、乾燥が不十分であると、Bステージ状態の感光性カバーレイフィルムにタック性(ベタツキ)が見られ、その上に保護フィルムを積層しても保護フィルム剥離時に、感光性樹脂成分の一部が保護フィルム面に粘着して転写されたり、支持体フィルム剥離時に感光性樹脂成分の一部が支持体フィルム面に粘着して転写されたりすることがある。
支持体フィルムの材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルムなど、通常市販されている各種のフィルムが使用可能であるが、これらに限定されるものではない。ある程度の耐熱性を有し、比較的安価に手に入ることから、支持体フィルムとしてはPETフィルムが多く用いられる。
支持体フィルムの感光性カバーレイフィルムとの接合面については、密着性と剥離性を向上させるために表面処理されているものを用いてもよい。
また、支持体フィルムの厚みは5μm以上50μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは10μm以上30μm以下である。厚みが小さすぎるとシワになりやすく操作性が悪い傾向があり、また厚みが大きすぎると、長尺の感光性カバーレイフィルムを作製した場合に全体の重量が重くなりすぎるという問題がある。
さらに、感光性樹脂組成物を支持体フィルムに塗布し乾燥して作製した感光性カバーレイフィルムの上には、保護フィルムを積層することが好ましい。空気中のゴミやチリが付着することを防ぎ、感光性カバーレイフィルムの乾燥による品質の劣化を防ぐことができる。
「支持体フィルム/感光性フィルム」の積層体(二層構造)の感光性カバーレイフィルム上にさらに保護フィルムを積層し、三層構造からなる感光性カバーレイフィルムとしてもよい。保護フィルムは、感光性カバーレイフィルム面に10℃〜50℃の温度でラミネートして積層することが好ましい。不必要に温度をかけると、保護フィルムが熱膨張して伸びてしまい、ラミネート後にシワになったりカールしてしまったりするという問題がある。
保護フィルムは使用時には剥離するため、保護フィルムと感光性カバーレイフィルムとの接合面は、保管時には適度な密着性を有し、同時に剥離しやすさを兼ね備えていることが好ましい。
【0070】
保護フィルムの材料としては、ポリエチレンフィルム(PEフィルム)、ポリエチレンビニルアルコールフィルム(EVAフィルム)、「ポリエチレンとエチレンビニルアルコールの共重合体フィルム」((以下(PE+EVA)共重合体フィルムと略す)、「PEフィルムと(PE+EVA)共重合体フィルムの貼り合せ体」、「(PE+EVA)共重合体とポリエチレンとの同時押し出し製法によるフィルム」(片面がPEフィルム面であり、もう片面が(PE+EVA)共重合体フィルム面であるフィルムとなる)、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。PEフィルムは安価であり表面の滑り性がよいという長所がある。また、(PE+EVA)共重合体フィルムは、感光性カバーレイフィルムへの適度な密着性と剥離性を同時に有するという特徴がある。
【0071】
「PEフィルムと(PE+EVA)共重合体フィルムの貼り合せ体」、もしくは「(PE+EVA)共重合体とポリエチレンとの同時押し出し製法によるフィルム」を保護フィルムとして用いる場合は、感光性カバーレイフィルムとの接合面には(PE+EVA)共重合体フィルム面が接するようにし、支持体フィルムとの接触する側にはPEフィルム面が来るようにするという方法が好ましい。
【0072】
この保護フィルムを用いることにより、保護フィルム/感光性カバーレイフィルム/支持体フィルムからなる三層構造シートをロール状に巻き取った場合に三層構造シートの表面の滑り性が良くなるという利点がある。また、保護フィルムに遮光性を持たせてもよく、その方法としては、感光性カバーレイフィルムに含有される光開始反応剤および増感色素が吸収する範囲の波長の光をカットするような色にPEフィルムを着色する方法がとられる。着色した保護フィルムを用いることにより、三層構造の感光性カバーレイフィルムの支持体フィルムと保護フィルムを容易に見分けられるようになり、保護フィルムの剥離作業性がより向上する。
また、感光性カバーレイフィルムの厚みは5μm以上75μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは10μm以上60μm以下、最も望ましくは10μm以上40μm以下である。感光性カバーレイフィルムの厚みが小さすぎると、プリント配線板などの銅回路とベースフィルムとの凹凸を埋め込むことができず、また回路を形成したCCLと感光性フィルムの積層した後に表面の平坦性を保つことができないために屈曲性が悪くなるといった問題が発生する傾向がある。また、厚みが大きすぎると、微細なパターンを現像しにくく解像度が低下したり、硬化後のサンプルの反りが発生しやすかったりするという傾向がある。
【0073】
本発明の感光性カバーレイフィルムは、保護フィルムを積層する前の二層構造シートの状態で保存するならば、感光性フィルム面が乾燥したり酸素に触れたりしないようにロール状に巻き取って保存してもよい。また、保護フィルムを積層して三層構造シートの状態であれば、ロール状に巻き取って保存してもよいし、ある適当な大きさにカットしてシート状のものを積み重ねた状態で保存してもよい。
感光性カバーレイフィルムは、空気に長時間触れると、ゴミが付着しやすいといった問題のほか、空気中の酸素や水分により感光性カバーレイフィルムの貯蔵安定性が極端に低下するので二層構造シートの状態で保存するよりは、保護フィルムを積層して三層構造シートの状態で保存する方が好ましい。
本発明に係る三層構造シートからなる感光性カバーレイフィルムを用いてフレキシブルプリント配線板を作製するに際しては、保護フィルムを除去後、回路を形成した銅貼積層板(回路付き銅貼積層板)および感光性カバーレイフィルムを熱圧着(たとえば熱ラミネ−ト、プレス)して積層する。
熱圧着するのに可能な下限温度のことを圧着可能温度と呼ぶ。この圧着可能温度の測定は、ポリイミドフィルム(鐘淵化学(株)製NPIフィルム、厚み25μm)および銅箔(三井金属(株)製の電解銅箔、厚み38μm)光沢面へBステージ状態の感光性カバーレイフィルムを熱ラミネ−トし、感光性カバーレイフィルムがポリイミドフィルム及び銅箔光沢面へ圧着できる下限温度を測定する。
圧着できたかは、熱ラミネートした後、感光性カバーレイフィルムをポリイミドフィルム及び銅箔光沢面から剥離しようとしても剥離不可能であることにより確認する。
圧着可能温度は50℃〜150℃であることが好ましい。
銅箔には光沢のある面(光沢面)と光沢のない面(粗面)がある。粗面は表面積が大きいために光沢面と比較して熱圧着は容易であるので、銅箔光沢面へ感光性カバーレイフィルムを熱圧着できる温度であれば、銅箔粗面へも感光性カバーレイフィルムを熱圧着できる。
積層時の温度が高すぎると感光性反応部位が架橋してフィルムが硬化し感光性カバーレイフィルムとしての機能を失ってしまうため、積層時の温度は低い方が好ましい。具体的には、20℃から150℃であり、さらに好ましくは60℃から120℃であり、より好ましくは80℃から120℃である。温度が低すぎると、感光性カバーレイフィルムの流動性が悪くなるため、フレキシブルプリント配線板上の微細な回路を被覆することが難しく、また密着性が悪くなる傾向がある。
【0074】
このようにして「回路付きCCL/感光性カバーレイフィルム/支持体フィルム」の順に積層された状態となる。支持体フィルムは積層が完了した時点で剥離してもよいし、露光が完了してから剥離してもよい。感光性カバーレイフィルムの保護という点からは、フォトマスクパターンをのせて露光してから支持体フィルムを剥離するほうが好ましい。
【0075】
次に、パターン露光・現像について説明する。「回路付きCCL/感光性カバーレイフィルム/支持体フィルム」の積層体の支持体フィルムの上にフォトマスクパターンをのせて露光し、支持体フィルムを剥離してから現像することにより、所望の位置に穴をあけることができる。
【0076】
露光に用いる光源としては、感光性カバーレイフィルムに含まれる光反応開始剤が、通常、450nm以下の波長の光を吸収するため、照射する光は波長が300~430nmの光を有効に放射する光源を用いるとよい。
【0077】
また、現像液としては、塩基性を有する水溶液又は有機溶媒を用いることができる。塩基性化合物を溶解させる溶媒としては水でもよいし有機溶媒でもよい。ポリイミドの溶解性を改善するため、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール、N−メチルー2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N一ジメチルアセトアミド等の水溶性有機済媒を、さらに含有していてもよく、二種類以上の溶媒を混合したものでもよい。環境への影響を考えると、有機溶媒は用いないほうが好ましく、アルカリ水溶液を現像液として用いるのが最も好ましい。
【0078】
塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムイオンの、水酸化物または炭酸塩や、アミン化合物などが挙げられ、これらのうち1種類を用いてもよいし、2種類以上の化合物を用いてもよい。
【0079】
塩基性化合物の濃度は、通常0.1〜10重量%であるがフィルムへの影響などを考慮すると0.1〜5重量%とすることが好ましい。
【0080】
このようにして現像した後の感光性カバーレイフィルムは、加熱キュアすると硬化して回路の絶縁保護フィルムとなり、フレキシブルプリント配線板が作製される。
【0081】
本発明の感光性カバーレイフィルムは、(A)成分として可溶性ポリイミド、(B)成分として主鎖に分岐構造を有するシリコーン化合物、さらに(C)成分として(メタ)アクリル系化合物、(D)成分として光反応開始剤および/または増感剤を含む感光性樹脂組成物から作製することにより、露光部の樹脂は硬化し、未露光部の樹脂はアルカリ水溶液によりすみやかに溶解除去されるため、短時間で良好な解像度を持つことを特徴とする。
特に(B)成分として分岐構造を有するシリコーン化合物を用いることにより、本発明の感光性カバーレイフィルムは、ハロゲン化合物を難燃剤として使用することなく、硬化後のフィルムの難燃性、耐熱性、耐薬品性を実現することができ、フレキシブルプリント配線板用の感光性カバーレイフィルムのほか、パソコンのハードディスク装置のヘッド用の感光性カバーレイフィルムにも適する。
【0082】
【実施例】
以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
三層構造シートからなる感光性カバーレイフィルムの作製及びその評価は以下のように行った。
(1) 感光性カバーレイフィルムの作製
(A)可溶性ポリイミドをテトラヒドロフランおよびジオキソランの混合溶媒に固形分重量%(Sc)が30%になるように溶解させたワニスに、(B)分岐構造を有するシリコーン化合物、(C)(メタ)アクリル系化合物、(D)光反応開始剤を混合し、感光性樹脂組成物のワニスを調整する。
【0083】
この感光性樹脂組成物のワニスを支持体フィルム;PETフィルム(厚み25μm)上に、乾燥後の厚みが25μmになるように塗布し、100℃で2分乾燥して有機溶媒を除去する。この状態がBステージ状態の二層構造の感光性カバーレイフィルムである。
【0084】
保護フィルムは、「(EVA+PE)共重合体とポリエチレンとの同時押し出し製法によるフィルム」(積水化学(株)製プロテクト(#6221F)フィルム(厚み50μm))を用いた。プロテクトフィルムの(EVA+PE)共重合体フィルム面が感光性フィルム面と接するように、ラミネートして三層構造シートからなる感光性カバーレイフィルムを作製した。ラミネート条件は、ロール温度40℃、ニップ圧は50000Pa・mとした。
(2)感光性カバーレイフィルムの評価
得られた三層構造シートからなる感光性カバーレイフィルムについて以下の項目について評価を行った。
<難燃性試験>
三層構造シートの保護フィルムを剥離後、感光性カバーレイフィルム面を25μm厚のポリイミドフィルム(鐘淵化学(株)製アピカルAH)に100℃、75000Pa・mでラミネート加工する。次に、波長400nmの光を600mJ/cm2だけ露光してから支持体フィルムを剥離し、180℃のオーブンで2時間加熱キュアを行う。
【0085】
このように作製した「ポリイミドフィルム/感光性カバーレイフィルム」積層体サンプルを寸法1.27cm幅×12.7cm長さ×25μm厚みにカットしたものを20本用意する。
【0086】
そのうち10本は▲1▼「23℃/50%相対湿度/48時間」で処理し、残りの10本は▲2▼「70℃で168時間」で処理した後無水塩化カルシウム入りデシケーターで4時間以上冷却する。
【0087】
これらのサンプルの上部をクランプで止めて垂直に固定し、サンプル下部にバーナーの炎を10秒間近づけて着火する。10秒間経過したらバーナーの炎を遠ざけてサンプルの炎や燃焼が何秒後に消えるか測定する。各条件(▲1▼、▲2▼)につき、サンプルからバーナーの炎を遠ざけてから平均(10本の平均)で5秒以内に炎や燃焼が停止し、かつ各サンプルが最高で10秒以内に炎や燃焼が停止し自己消火するものが合格である。1本でも10秒以内に消火しないサンプルがあったり、炎がサンプル上部のクランプのところまで上昇して燃焼するものは不合格である。
<半田耐熱性>
まず、電解銅箔(35μm)を5cm角にカットし10%硫酸水溶液で1分間ソフトエッチング(銅箔表面の防錆剤を除去する工程である)し、水洗い後、エタノール、アセトンで表面を洗ってから乾燥させる。次に4cm角にカットした三層構造シートの保護フィルムを剥離し、感光性フィルム面を上記の電解銅箔(ソフトエッチング後)の光沢面に重ねて、100℃、75000Pa・mでラミネートした。この積層体の感光性フィルム面に波長400nmの光を300mJ/cm2露光した後、180℃で2時間キュアして硬化させる。このサンプルを▲1▼常態(20℃/相対湿度40%の環境で24時間)、▲2▼吸湿(40℃/相対湿度85%の環境で48時間)調湿した後に、270℃以上の溶融半田に1分間ディップし、銅箔とカバーレイの界面に膨れが発生したり剥離したりしていないか観察する。溶融半田の温度を徐々に上げていき、10℃毎に30秒間ディップして何℃まで異常が発生しないか調べる。異常の発生しなかった最高温度を30秒ディップ可能温度とする。
<現像性>
三層構造シートの保護フィルムを剥離後、感光性カバーレイフィルム面を電解銅箔35μmの光沢面に、100℃、20000Pa・mでラミネートした。この積層体の支持体フィルムの上に、100x100μm角の微細な穴を描いたマスクパターンをのせ、波長400nmの光を300mJ/cm2だけ露光する。このサンプルの支持体フィルムを剥離した後、スプレー現像機(サンハヤト(株)製エッチングマシーンES−655D)を用いて、1%の水酸化カリウムの水溶液(液温40℃)、スプレー圧0.85MPa、現像液への露出時間2分間の条件で現像した。現像によって形成したパターンは、次いで蒸留水により洗浄して、現像液を除去し、乾燥させる。光学顕微鏡で観察して100x100μm角の穴が現像できていれば、合格とした。
(実施例1)
ポリイミドの原料として、(2,2'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート)-3,3',4,4'-テトラカルボン酸無水物(以下、ESDAと示す)、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン(以下、BAPS−Mと示す)、シリコンジアミン、 [ビス(4-アミノ-3-カルボキシ)フェニル]メタン(以下、MBAAと示す)を用いた。
【0088】
溶媒として、N,N'-ジメチルホルムアミド(DMF)およびジオキソランを用いた。
(ポリイミド樹脂の合成)
攪拌機を設置した500 mlのセパラブルフラスコにESDA 17.3 g (0.030 mol)、DMF 30 gを入れ、ESDAのDMFワニスを調製する。次に上記DMFワニスに、和歌山精化製のジアミンMBAA 5.15 g (0.018 mol)をDMF 9 gに溶解した溶液を添加し激しく攪拌する。溶液が均一になった後、シリコンジアミンKF-8010(信越シリコーン製)7.47 g (0.009 mol)を加え激しく攪拌する。溶液が均一になったら最後に、BAPS-M 1.29 g (0.003 mol)を加えて1時間激しく攪拌する。
【0089】
このようにして得たポリアミド溶液をテフロン(R)コートしたバットにとり真空オーブンで200℃、660Paの圧力で2時間減圧乾燥し26.40 gのポリイミドを得た。
このポリイミドは、テトラヒドロフラン100g(20℃)に50g以上溶解したので、本発明で定義する可溶性ポリイミドに該当する。
(感光性カバーレイフィルムの作製)
上記可溶性ポリイミド15gをジオキソラン35gに溶解させ、固形分重量%(Sc) = 30%のワニスを作製した。
以下に示す(a)〜(d)成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、(1)の方法でPETフィルム上に塗布し、保護フィルムを積層して、三層構造からなるBステージの感光性カバーレイフィルムを作製した。
この感光性カバーレイフィルムのポリイミドフィルム及び銅箔光沢面への圧着可能温度は100℃であった。
【0090】
この感光性カバーレイフィルムの難燃性試験を行ったところ、炎は平均4.0秒で消火し合格であった。
【0091】
さらに、半田耐熱性試験を行ったところ、常態条件では360℃、吸湿条件では350℃まで合格であった。
【0092】
また、現像性試験では100μm×100μm角の穴が現像できており、合格であった。
(実施例2)
(変性ポリイミドの合成)
実施例1で合成したポリイミド20.8g(0.020 mol)をジオキソラン80gに溶解し、4-メトキシフェノールを0.030gを添加し、60℃のオイルバスであたためながら溶解させた。この溶液にメタクリル酸グリシジル3.75 g(0.0264 mol)をジオキソラン5gに溶解して加え、さらに触媒としてトリエチルアミン0.01 gを添加し60℃で6時間加熱攪拌を行った。このようにして変性ポリイミドを合成した。
(感光性カバーレイフィルムの作製)
以下に示す成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、(1)の方法で三層構造からなる感光性カバーレイフィルムを作製した。
この感光性カバーレイフィルムのポリイミドフィルム及び銅箔光沢面への圧着可能温度は110℃であった。
【0093】
この感光性カバーレイフィルムの難燃性試験を行ったところ、炎は平均3.5秒で消火し合格であった。さらに、半田耐熱性試験を行ったところ、常態条件では360℃、吸湿条件では350℃まで合格であった。
【0094】
また、現像性試験では100μm×100μm角の穴が現像できており、合格であった。
(実施例3)
ポリイミドの原料として、3,3',4,4'-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物(以下、ODPAと示す)、ジアミンとして前記BAPS−M、シリコンジアミン、MBAAを用いた。溶媒として、N,N'-ジメチルホルムアミド(DMF)およびジオキソランを用いた。
(ポリイミド樹脂の合成)
攪拌機を設置した500 mlのセパラブルフラスコにODPA 9.31 g (0.030 mol)、DMF 30 gを入れ、攪拌機で攪拌して溶解させ、ODPAのDMFワニスを調製する。次に、和歌山精化製のジアミンMBAA 4.29 g (0.015 mol)をDMF 10 gに溶解して加え激しく攪拌する。溶液が均一になったらさらに、シリコンジアミンKF-8010(信越シリコーン製)7.47 g (0.009 mol)を加え激しく攪拌し、溶液が均一になったら最後に、BAPS-M 2.58 g (0.006 mol)を加えて1時間激しく攪拌する。このようにして得たポリアミド溶液をテフロン(R)コートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃、660Paの圧力で2時間減圧乾燥し、21.28 gの可溶性ポリイミドを得た。
【0095】
このポリイミドは、テトラヒドロフラン100g(20℃)に50g以上溶解したので、本発明で定義する可溶性ポリイミドに該当する。
(感光性カバーレイフィルムの作製)
こうして合成したポリイミド21gをジオキソラン49gに溶解させ、固形分重量%(Sc) = 30%のワニスを作製した。
以下に示す成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、(1)の方法で感光性カバーレイフィルムを作製した。
この感光性カバーレイフィルムのポリイミドフィルム及び銅箔光沢面への圧着可能温度は90℃であった。
【0096】
この感光性カバーレイフィルムの難燃性試験を行ったところ、炎は平均3.0秒で消火し合格であった。さらに、半田耐熱性試験を行ったところ、常態条件では360℃、吸湿条件では350℃まで合格であった。
【0097】
また、現像性試験では100μm×100μm角の穴が現像できており、合格であった。
(実施例4)
ポリイミドの原料として、3,3',4,4'-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物(以下、DSDAと示す)、ジアミンとして前記BAPS−M、シリコンジアミン、MBAAを用いた。溶媒として、N,N'-ジメチルホルムアミド(DMF)およびジオキソランを用いた。
(ポリイミド樹脂の合成)
攪拌機を設置した500 mlのセパラブルフラスコにDSDA 10.75 g (0.030 mol)、DMF 30 gを入れて、攪拌機で攪拌して溶解させる。次に、和歌山精化製のジアミンMBAA 4.29 g (0.015 mol)をDMF 10 gに溶解して加え激しく攪拌する。溶液が均一になったらさらに、シリコンジアミンKF-8010(信越シリコーン製)7.47 g (0.009 mol)を加え激しく攪拌し、溶液が均一になったら最後に、BAPS-M 2.58 g (0.006 mol)を加えて1時間激しく攪拌する。このようにして得たポリアミド溶液をテフロン(R)コートしたバットにとり、真空オーブンで200℃、660Paの圧力で2時間減圧乾燥し22.57 gの可溶性ポリイミドを得た。
【0098】
このポリイミドは、テトラヒドロフラン100g(20℃)に50g以上溶解したので、本発明で定義する可溶性ポリイミドに該当する。
(感光性カバーレイフィルムの作製)
こうして合成したポリイミド21gをジオキソラン49gに溶解させ、固形分重量%(Sc) = 30%のワニスを作製した。
以下に示す成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、(1)の方法で感光性カバーレイフィルムを作製した。
この感光性カバーレイフィルムのポリイミドフィルム及び銅箔光沢面への圧着可能温度は130℃であった。
【0099】
この感光性カバーレイフィルムの難燃性試験を行ったところ、炎は平均4.0秒で消火し合格であった。さらに、半田耐熱性試験を行ったところ、常態条件では360℃、吸湿条件では350℃まで合格であった。
【0100】
また、現像性試験では100μm×100μm角の穴が現像できており、合格であった。
(比較例1)
実施例1の(d)成分の替わりに、(p)分岐構造でないメチルフェニルシリコーン(信越化学工業(株)製HVAC F-5)(フェニル基含有率62.5%)を用いること以外は、実施例1と全く同じ方法で各成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、(1)の方法で感光性カバーレイフィルムを作製した。
【0101】
この感光性カバーレイフィルムのポリイミドフィルム及び銅箔光沢面への圧着可能温度は90℃であった。この感光性カバーレイフィルムの難燃性試験を行ったところ、炎は10秒以内に消火せず、クランプの位置まで大きな炎を上げて燃え。不合格であった。さらに、半田耐熱性試験を行ったところ、常態条件では360℃、吸湿条件では350℃まで合格であった。
また、現像性試験では100μm×100μm角の穴が現像できており、合格であった。100μm×100μm角の穴は現像できており、合格であった。
【0102】
このように、分岐構造を持たないシロキサンオリゴマーを使用すると、難燃性を実現することができない。
【0103】
【比較例2】
実施例1の(a)成分の替わりに、(q)メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸=55/8/15/22の共重合割合(重量基準)で合成した共重合重合体を用いること以外は、実施例1と全く同じ方法で各成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、(1)の方法で感光性カバーレイフィルムを作製した。
【0104】
この感光性カバーレイフィルムのポリイミドフィルム及び銅箔光沢面への圧着可能温度は80℃であった。この感光性カバーレイフィルムの難燃性試験を行ったところ、炎は10秒以内に消火せず、クランプの位置まで大きな炎を上げて燃え。不合格であった。
【0105】
このように、ポリイミド樹脂でない共重合体を用いた感光性フィルムは、ホスファゼン化合物を用いても難燃性に劣る。
【0106】
【比較例3】
実施例4の(m)成分の替わりに、(q)メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸=55/8/15/22の共重合割合(重量基準)で合成した共重合重合体を用いること以外は、実施例4と全く同じ方法で各成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、(1)の方法で感光性カバーレイフィルムを作製した。
【0107】
この感光性カバーレイフィルムのポリイミドフィルム及び銅箔光沢面への圧着可能温度は80℃であった。
この感光性カバーレイフィルムの難燃性試験を行ったところ、炎は10秒以内に消火せず、クランプの位置まで大きな炎を上げて燃え。不合格であった。
【0108】
このように、ポリイミド樹脂でない共重合体を用いた感光性フィルムは、ポリリン酸メラミンを用いても難燃性に劣る。
【0109】
【比較例4】
実施例1の(d)成分の替わりに(r)両末端アミノ基変性ジメチルシリコーン(信越シリコーン(株)製KF-8010)(フェニル含有率0%)を用いること以外は、実施例4と全く同じ方法で各成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、(1)の方法で感光性カバーレイフィルムを作製した。
この感光性カバーレイフィルムのポリイミドフィルム及び銅箔光沢面への圧着可能温度は80℃であった。
【0110】
この感光性カバーレイフィルムの難燃性試験を行ったところ、炎は平均9.0秒で消火し不合格であった。
【0111】
このように、主鎖に分岐構造を持たず、かつ芳香族基を持たないシリコーンを用いると難燃性を実現することができない。
【0112】
【発明の効果】
上記のように本発明による感光性カバーレイフィルムは、分岐構造を有しかつ末端基に炭素間不飽和結合を有するシリコーン化合物を用いることにより、ハロゲン化合物を用いることなく、プラスチック材料の難燃性規格UL94V−0を満たす難燃性を実現できた。特には、可溶性ポリイミドとシリコーン化合物を必須成分とする感光性カバーレイフィルムである。これにより、優れた難燃性、耐熱性を有する。したがって、フレキシブルプリント配線板やパソコンのハードディスク装置のヘッド部分に使用される感光性カバーレイフィルムにも好適に用い得る。
Claims (6)
- (A)テトラヒドロフラン100gに、20℃において1.0g以上溶解する可溶性ポリイミド、(B)分岐構造を有するシリコーン化合物、(C)(メタ)アクリル系化合物を含有する感光性樹脂組成物。
- 前記一般式(1)中のXが、フェニル基であることを特徴とする請求項2記載の感光性樹脂組成物。
- 分岐構造を有するシリコーン化合物が、その末端基がビニル基及び/又は(メタ)アクリル基であるシリコーン化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
- (A)、(B)及び(C)成分合計量100重量%に対し、(A)成分を30〜70重量%、(B)成分を1〜50重量%、(C)成分を10〜50重量%含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物から作製される感光性カバーレイフィルム。
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