JP3914800B2 - イミド(メタ)アクリレートを用いた感光性樹脂組成物及び感光性カバーレイフィルム - Google Patents
イミド(メタ)アクリレートを用いた感光性樹脂組成物及び感光性カバーレイフィルム Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、イミド(メタ)アクリレート化合物を含む感光性樹脂組成物及びそれを用いて作製される感光性カバーレイフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
感光性フィルムの用途としては、銅箔をエッチングして銅回路を形成する際に用いるレジストフィルムとしての用途と、回路の絶縁保護フィルム(カバーレイフィルム)としての用途がある。
前者のレジストフィルムは、プリント配線板などの銅の回路を形成するために用いられ、エッチングレジストの役割を果たした後にプリント配線板などから剥離される。
一方で、後者の絶縁保護フィルム(カバーレイフィルム)は、感光性カバーレイフィルムとも呼ばれ、プリント配線板などの回路の上に感光性樹脂組成物を含む層を積層し、マスクパターンを載せ露光・現像することにより所定の位置に穴あけを行うことができる感光性フィルムとしての役割を果たした後、熱硬化させるとプリント配線板上に積層された状態で存在し、プリント配線板の回路を電気的に外界から絶縁する保護フィルムとしての役割を果たす。
感光性カバーレイフィルムは、フレキシブルプリント配線板やパソコンのハードディスク装置のヘッド部分などに用いられ、銅貼積層板(CCL)を用いて形成されたフレキシブルプリント配線板の銅回路パターンの絶縁保護及び耐屈曲性の向上を目的に使用される。
絶縁保護フィルムを兼ねた感光性カバーレイフィルムとしては、アクリル系やエポキシ系ポリマーを主成分とする感光性カバーレイフィルムが使用されているが、硬化後のフィルムの耐熱性、耐薬品性、耐屈曲性および難燃性に劣るという問題がある。
さらに近年、エポキシ変性ポリイミドを用いた感光性カバーレイフィルム(特開2001−335619)が知られているが、十分な耐熱性、耐薬品性、耐屈曲性を有するが熱圧着時の流動性に劣るため、CCLと貼り合せるためには高い圧力でプレス加工する必要があり、実用的ではなかった。
このように、カバーレイフィルムの熱圧着時の流動性、硬化後のフィルムの難燃性や耐熱性、耐薬品性、耐屈曲性などの両立が要求される感光性カバーレイフィルムに使用できる材料の選択の幅が限られていた。
そこで、可溶性イミド及びイミド(メタ)アクリレート化合物を含有する感光性樹脂組成物からなる感光性カバーレイフィルムを用いることにより、カバーレイフィルムの熱圧着時の流動性を高め、かつ硬化後のフィルムの難燃性や耐熱性、耐薬品性、耐屈曲性を向上させることを目的とした。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、可溶性ポリイミド及びイミド(メタ)アクリレート化合物を主成分として用いることにより、硬化後のカバーレイフィルムが優れた耐熱性及び耐屈曲性を有することを特徴とする感光性樹脂組成物及び感光性カバーレイフィルムに関する。
【0004】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の目的は、以下の構成をとることにより達成される。
(1)(A)可溶性ポリイミド、(B)イミド(メタ)アクリレート化合物を含有する感光性樹脂組成物であり、(B)成分が、下記一般式(1)
【0005】
【化5】
(ただし、R1、R2およびR3は水素またはメチル基、Xは下記群(1):化7で示す有機基、aは0以上の整数を示す)
もしくは下記一般式(2):化6
【0006】
【化6】
(ただし、R1、R2およびR3は水素またはメチル基で、Yは下記群(2)で示す有機基、bは0以上の整数を示す)
から選ばれるイミド(メタ)アクリレート化合物である感光性樹脂組成物。
【0007】
【化7】
(ただし、R4はアルキル基、アルキルエーテル基、アリール基、アリルエーテル基、水酸基、カルボキシル基、又はハロゲンで、cは1〜4の整数を示す)
【0008】
【化8】
(ただし、R5及びZは2価の有機基を、R 5 ’は−CH 2 −又は−(CO)O−C m H 2m −O(CO)−(mは1以上の整数)を、nは0〜5の整数を示す)
(2)前記(1)記載の感光性樹脂組成物が、さらに(C)イミド環を含まない(メタ)アクリル系化合物を含有する感光性樹脂組成物。
(3)(A)、(B)及び(C)成分の合計量100重量%に対し、(A)成分を30〜70重量%、(B)成分を5〜60重量%、(C)成分を1〜50重量%含有する前記(1)又は(2)記載の感光性樹脂組成物。
(4)前記(1)〜(3)いずれか一項記載の感光性樹脂組成物が、さらに(D)光反応開始剤及び/又は増感剤を含有する感光性樹脂組成物。
(5)前記(1)〜(4)いずれか一項記載の感光性樹脂組成物から作製される感光性カバーレイフィルム。
【0009】
本発明における感光性カバーレイフィルムを用いることにより、これをカバーレイフィルムとして被覆したフレキシブルプリント配線板に、難燃性、耐熱性、耐屈曲性、電気絶縁性、耐薬品性を付与することができる。
なお、可溶性ポリイミドとは、テトラヒドロフラン100gに、20℃において1.0g以上溶解するものを可溶性ポリイミドといい、さらに望ましくは、テトラヒドロフラン100gに20℃で5g以上、より望ましくは10g以上溶解するものがよい。溶解性が低すぎると、所望の厚みの感光性フィルムの作製が困難になるおそれがある。
【0010】
可溶性ポリイミドは、例えば以下の製法により作製される。
【0011】
本発明に用いられる可溶性ポリイミドは、その前駆体であるポリアミド酸から得ることができるが、ポリアミド酸は、有機溶剤中ジアミンと酸二無水物と反応させることにより得られる。アルゴン、窒素等の不活性雰囲気中において、ジアミンを有機溶媒中に溶解あるいは、スラリー状に拡散させ、酸二無水物を有機溶媒に溶解、スラリー状に拡散させた状態、あるいは固体の状態で添加する。
【0012】
この場合のジアミンと酸二無水物が実質上等モルであれば、酸成分1種・ジアミン成分1種のポリアミド酸になるが、2種以上の酸二無水物成分及び2種以上のジアミン成分を用い、ジアミン成分全量と酸ニ無水物成分全量のモル比を実質上等モルに調整してポリアミド酸共重合体を任意に得ることもできる。
例えば、ジアミン成分−1及びジアミン成分−2を有機極性溶媒中に先に加えておき、ついで酸二無水物成分を加えて、ポリアミド酸重合体の溶液としてもよい。また、ジアミン成分−1を有機極性溶媒中に先に加えておき、酸二無水物成分を加え、しばらく攪拌してからジアミン成分−2を加え、ポリアミド酸重合体の溶液としてもよい。もしくは、酸二無水物成分を有機極性溶媒中に先に加えておき、ジアミン成分−1を加え、しばらく攪拌してからジアミン成分−2を加え、さらにしばらく攪拌してからジアミン成分−3を加えて、ポリアミド酸重合体の溶液としてもよい。
【0013】
この時の反応温度は、−20℃〜90℃が望ましい。反応時間は30分から24時間程度である。
【0014】
ここで、ポリアミド酸の平均分子量は5000〜300000であることが望ましい。平均分子量が5000未満では、できあがったポリイミド組成物の分子量も低くなり、そのポリイミド組成物をそのまま用いても樹脂が脆くなる傾向にある。一方、300000を越えるとポリアミド酸ワニスの粘度が高くなる傾向にあり、取扱いが困難となる場合がある。
【0015】
また、このポリイミド樹脂に各種の有機添加剤、或は無機のフィラー類、或いは各種の強化材を複合することも可能である。
【0016】
ここでポリアミド酸の生成反応に使用する有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどをあげることができ、これらを単独または混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミド酸を溶解するものであれば特に限定されない。後述するポリイミドの好ましい製法においては、ポリアミド酸を合成し、その後、このポリアミド酸の溶液を減圧下に加熱して、溶媒の除去とイミド化を同時に行うので、ポリアミド酸を溶解し、なるべく沸点の低いものを選択することが、工程上有利である。
【0017】
次に、ポリアミド酸をイミド化する工程について説明する。
【0018】
ポリアミド酸がイミド化する際には、水を生成する。この生成した水は、ポリアミド酸を容易に加水分解し分子量の低下を引き起こす。この水を除去しながらイミド化する方法として、
1)トルエン・キシレン等の共沸溶媒を加え共沸により除去する方法、
2)無水酢酸等の脂肪族酸二無水物とトリエチルアミン・ピリジン・ピコリン・イソキノリン等の3級アミンを加える化学的イミド化法、
3)減圧下に加熱イミド化する方法
がある。いずれの方法でもよいが、イミド化により生成する水を減圧下に加熱し、積極的に系外に除去することにより加水分解を抑え、分子量低下を避けることができるという点から3)の方法が最も望ましい。3)の方法では、用いた原料の酸二無水物中に、加水分解により開環したテトラカルボン酸或いは、酸二無水物の片方が加水開環したもの等が混入し、ポリアミド酸の重合反応が停止し低分子量のポリアミド酸となった場合でも、続くイミド化時の減圧下の加熱により、開環した酸二無水物が再び、閉環して酸二無水物となり、イミド化中に、系内に残っているアミンと反応し、イミド化反応前のポリアミド酸の分子量よりもポリイミドの分子量が大きくなることが期待できる。
【0019】
イミド化の加熱条件は、イミド化が効率よく行われ、しかも水が効率よく除かれる100℃以上、望ましくは120℃以上であることが望ましい。最高温度は、用いるポリイミドの熱分解温度以下に設定することが望ましく、通常、250〜350℃程度でイミド化は、ほぼ完了するため、最高温度をこの程度にすることもできる。
【0020】
減圧する圧力の条件は、圧力が小さいほうが好ましいが、上記加熱条件でイミド化時に生成する水が効率よく除去される圧力であればよい。具体的には、減圧加熱する圧力は0.09MPa〜0.0001MPaであり、望ましくは、0.08MPa〜0.0001MPa、さらに望ましくは、0.07MPa〜0.0001MPaである。
【0021】
このポリイミドに用いられる酸二無水物は、カルボン酸二無水物であれば特に限定されないが、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3‘,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物や、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
【0022】
このポリイミドに用いられる酸二無水物は、芳香環を1〜4個有する酸二無水物または脂環式の酸二無水物を用いることが、耐熱性の点から好ましい。特に、有機溶媒への溶解性の高いポリイミドを得るためにさらに好ましくは、下記一般式(3):化9
【0023】
【化9】
(式中R6は、―、−CH2−、−C(CH3)2−,−C(CF3)2−,−O−,−CO−,−SO2、−SO2−、もしくは2価の有機基を、R7は−O−もしくは−COO−を示す。)
の構造で表される化合物から選ばれる、芳香環を2個以上有する酸二無水物を一部用いることが望ましい。さらに好ましくは、芳香環を4個以上有する酸二無水物を一部用いることが望ましい。
【0024】
上記の酸二無水物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0025】
次に、このポリイミドに用いられるジアミンは、ジアミンであれば特に限定されないが、耐熱性と可溶性のバランスをとることができる点から、下記一般式(4):化10
【0026】
【化10】
(式中、R8は、−,−CH2−、−C(CH3)2−,−C(CF3)2−,−O−,−CO−,−COO−,−SO2−を、R9は水酸基またはカルボキシル基、R10は水素、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン、メトキシ基,C1〜C5のアルキル基を、dは0,1,2,3,4を、eおよびfは、0,1,2,3,4を示す。)
で表される、1分子中に水酸基またはカルボキシル基を1個以上有する芳香族系ジアミンを原料の一部に用いることが好ましい。とくに、一般式(4)中のR13が水酸基もしくはカルボキシル基であるジアミンを用いると、イミドのアルカリ水溶液への溶解性を上げることができる。これらのジアミン化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
また、上記一般式(4)で表されるジアミンは、得られるポリイミドの可溶性が高くなるという点から、全ジアミン中5〜95モル%用いることが好ましい。さらに望ましくは、全アミン中10〜70モル%である。
【0028】
また、フィルムの弾性率を下げることができるという点から、ジアミンの一部として下記の一般式(5):化11
【0029】
【化11】
(R11は炭素数1〜12の炭化水素基、フェニル基、メトキシ基を示し、gは1〜5の整数であり、hは1〜20の整数である。)
で表されるシリコンジアミンを用いることが好ましい。
【0030】
また、上記一般式(5)で表されるシリコンジアミンは、フィルムの弾性率を下げるために、全ジアミン中、5〜50モル%用いることが好ましい。5モル%より少ないと添加する効果が不十分であり、50モル%より多いと、フィルムが柔らかくなりすぎて弾性率が低くなりすぎたり、熱膨張係数が大きくなったりする傾向がある。
【0031】
ポリアミド酸溶液を減圧下で加熱乾燥して直接イミド化する具体的な方法について説明する。
減圧下、加熱乾燥できるなら方法は問わないが、バッチ式の方法として、真空オーブン、連続式の方法として、例えば減圧装置の付随した押出し機により実施できる。押出し機は、2軸或いは3軸押出し機が好ましい。これらの方式は、生産量により選択される。ここでいう「減圧装置の付随した押出し機」とは、熱可塑樹脂の加熱および溶融押出しを行う、一般的な例えば2軸或いは3軸溶融押出し機に、減圧して溶媒を除去する装置を付随させた装置であり、従来の溶融押出し機に付設することもできるし、新たに減圧機能を組み込んだ装置を作成することもできる。この装置により、ポリアミド酸溶液が、押出し機により混練されながら、ポリアミド酸はイミド化され、溶媒とイミド化時に生成した水は除去され、最終的には生成した可溶性ポリイミドが残る。
また、前記可溶性ポリイミドに水酸基および/またはカルボキシル基を導入すると、アルカリに対する溶解性が向上する傾向があり、アルカリ溶液を現像液として用いることができるため好ましい。
【0032】
水酸基および/またはカルボキシル基を有するポリイミドは、水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンを一部含むジアミン成分と、酸二無水物成分とを重合反応させることにより、得ることができる。水酸基及び/またはカルボキシル基を有するジアミンとしては、水酸基及び/またはカルボキシル基を有していれば特に限定されることはない。
【0033】
さらに反応性・硬化性を付与するためには、水酸基および/またはカルボキシル基を導入した可溶性ポリイミドに、これと反応可能なエポキシ基を有する化合物と反応させることにより、後述の各種の官能基を導入し、変性ポリイミドとすることができる。ここでいうエポキシ基を有する化合物は、さらに光重合性および/または熱重合性官能基として、エポキシ基、炭素間三重結合、炭素間二重結合から選ばれる官能基を二つ以上有することが好ましい。このような光重合性および/または熱重合性官能基を導入することにより、得られる組成物に良好な硬化性や接着性を付与することができる。
以下、水酸基および/またはカルボキシル基を有するポリイミドに官能基を導入する方法について説明する。具体的に、変性ポリイミドとは、下記一般式(6):化12
【0034】
【化12】
(ただし、式中iは0以上の整数、jは1以上の整数、kは1または2の整数、R12は4価の有機基、R13は2価の有機基、R14は3価もしくは4価の有機基、R15は下記群(3):化13で表される有機基)で表されるポリイミドを示す。
【0035】
【化13】
(式中R16は、エポキシ基、炭素間三重結合、または炭素間二重結合からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の官能基を有する1価の有機基)
前述の水酸基あるいはカルボキシル基を有する変性ポリイミドを有機溶媒に溶かし、エポキシ基を有する化合物と反応させることにより変性ポリイミドが得られる。前記エポキシ基を有する化合物は、エポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂、エポキシ基以外にさらに炭素間三重結合、炭素間二重結合から選ばれる官能基を二つ以上有する化合物が好ましい。
【0036】
エポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂とは、エポキシ基を分子内に2個以上持っていれば特に限定されないが、以下のように例示することができる。
例えば、エピコート828(油化シェル社製)等のビスフェノール型エポキシ樹脂、180S65(油化シェル社製)等のオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、157S70(油化シェル社製)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、1032H60(油化シェル社製)等のトリスヒドロキシフェニルメタンノボラック型エポキシ樹脂、ESN375等のナフタレンアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン1031S(油化シェル社製)、YGD414S(東都化成)、トリスヒドロキシフェニルメタンEPPN502H(日本化薬)、特殊ビスフェノールVG3101L(三井化学)、特殊ナフトールNC7000(日本化薬)、TETRAD−X、TETRAD−C(三菱瓦斯化学社製)等のグリシジルアミン型樹脂などがあげられる。
【0037】
エポキシ基と炭素間二重結合を有する化合物とは、エポキシ基と二重結合を同一分子内に持っていれば特に限定されないが、アリルグリシジルエーテル・グリシジルアクリレート・グリシジルメタクレート・グリシジルビニルエーテル等を例示することができる。
【0038】
エポキシ基と炭素間三重結合を有する化合物とは、エポキシ基と三重結合を同一分子内に持っていれば特に限定されないが、プロパギルグリシジルエーテル・グリシジルプロピオレート・エチニルグリシジルエーテル等を例示することができる。
【0039】
反応に用いられる溶媒は、エポキシ基と反応せず、水酸基および/あるいはカルボキシル基を有するポリイミドを溶解するものであれば特に限定されない。例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン等、キシレン、トルエンのような芳香族炭化水素が使用可能である。これらを単独または混合物として使用することができる。後に、溶媒の除去を行うので、水酸基あるいはカルボキシ基を有する熱可塑性ポリイミドを溶解し、なるべく沸点の低いものを選択することが、工程上有利である。
反応温度は、エポキシ基と水酸基・カルボキシル基と反応する40℃以上130℃以下の温度で行うことが望ましい。特にエポキシ基と二重結合あるいは、エポキシ基と三重結合を有する化合物については、二重結合・三重結合が熱により架橋・重合しない程度の温度で反応させることが望ましい。具体的には、40℃以上100℃以下、さらに望ましくは、50℃以上80℃以下である。反応時間は、1時間程度から15時間程度である。
このようにして、変性ポリイミドの溶液を得ることができる。銅箔との接着性や現像性を上げるために、この変性ポリイミド溶液に、適宜、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シアナートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂を混ぜてもよい。
上記のように調製された可溶性ポリイミド、または変性ポリイミド、すなわち(A)成分は、(A)、(B)、(C)成分の合計量を基準として30〜70重量%用いることが好ましく、さらに好ましくは40〜60重量%、より好ましくは45〜60重量%用いることが望ましい。30%より少ないと硬化後のカバーレイフィルムの難燃性の実現が難しく、さらに機械特性が悪くなる傾向があり、70%より多いとカバーレイフィルムの現像性が悪くなる傾向がある。
次に、(B)成分について説明する。イミド(メタ)アクリレート化合物を用いることにより、硬化後の感光性カバーレイフィルムに難燃性、半田耐熱性、耐屈曲性を付与することができる。
イミド環を含む(メタ)アクリレート化合物であれば限定されないが、硬化後の耐薬品性および耐熱性の点から特に、下記群(1):化14
【0040】
【化14】
(ただし、R1、R2およびR3は水素またはメチル基、Xは下記群(1):化16で示す有機基、aは0以上の整数を示す)
もしくは下記一般式(2):化15
【0041】
【化15】
(ただし、R1、R2およびR3は水素またはメチル基で、Yは下記群(2):化17で示す有機基、bは0以上の整数を示す)
から選ばれるイミド(メタ)アクリレート化合物から選ばれる少なくとも1種類以上のイミド(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。
【0042】
【化16】
(ただし、R4は1価の有機基で、cは1〜4の整数を示す)
【0043】
【化17】
(ただし、R5及びZは2価の有機基を、nは0〜5の整数を示す)
化16で示される有機基R4は1価の有機基であれば限定されないが、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルキルエーテル基、アリール基、アリルエーテル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲンが好ましい。さらに好ましくは、水素、メチル基、メトキシ基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲンである。
化17で示される有機基R5は2価の有機基であれば限定されないが、とくに−,−CH2−、−C(CH3)2−,−C(CF3)2−,−O−,−CO−,−SO2−,−(CO)O−CmH2m−O(CO)−(mは1以上の整数)などが好ましい。また、有機基Zは2価の有機基であれば限定されないが、とくに−O−,−COO−などの2価の有機基であることが好ましい。
【0044】
本発明で用いる(B)成分:イミド(メタ)アクリレート化合物は、もしくは下記一般式(7):化18
【0045】
【化18】
(ただし、R1、R2およびR3は水素またはメチル基、Xは前記群(1):化16で示す有機基、aは0以上の整数を示す)
もしくは
【0046】
【化19】
(ただし、R2およびR3は水素またはメチル基で、Yは上記群(2):化17で示す有機基、bは0以上の整数を示す)
で表されるイミドアルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とを反応させることにより合成できる。この反応はエステル化反応であり、一般式(7)及び/または一般式(8)で表されるイミドアルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモル比を1:2〜1:10、好ましくは1:3〜1:6、特に好ましくは1:4〜1:5になるように仕込む。反応に有機溶媒を使用する場合は、出発原料である一般式(7)及び/または一般式(8)のイミドアルコールと反応生成物である一般式(1)及び/または一般式(2)のイミド(メタ)アクリレートの両方を溶解することができる有機溶媒を用いることが好ましく、一般に極性有機溶媒が好ましい。例えば、スルホラン、N,N―ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N―メチルー2−ピロリドン、N,N−ジメチルプロピレン尿素などが挙げられる。溶解性、反応性の点から特にスルホランを用いることが好ましい。
【0047】
また、このような極性溶媒に水と共沸混合物を作りやすい沸点30℃〜150℃の有機溶媒を併用することもできる。このような有機溶媒としてベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン,へキサン、シクロヘキサン、イソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、四塩化炭素、トリクロロエチレンなどの有機溶媒が挙げられる。
【0048】
上記の一般式(7)及び/または一般式(8)で表されるイミドアルコールとアクリル酸又はメタアクリル酸との反応温度は、50℃〜200℃、好ましくは100℃〜180℃、より好ましくは120℃〜150℃である。反応時間は、3時間〜20時間、好ましくは4時間〜10時間、より好ましくは5時間〜6時間である。
【0049】
イミドアルコールとアクリル酸又はメタアクリル酸との反応は、触媒を用いることによって促進することができる。触媒として例えば、硫酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化亜鉛、リン酸、酸化アンチモン、チタン酸エステル、メトキシフェノールなどの公知のエステル触媒が挙げられる。触媒の使用量は、イミドアルコール100重量%に対して0.01重量%〜30重量%、好ましくは0.02重量%〜20重量%、より好ましくは0.1重量%〜10重量%である。
【0050】
反応終了後、反応溶液に反応生成物に対する貧溶媒、例えばテトラヒドロフラン、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどを、生成する沈殿物を濾別、洗浄、乾燥することによって、反応性生物であるイミド(メタ)アクリレートを粉状物質として得ることができる。
【0051】
また、出発原料であるイミドアルコールは、対応するジカルボン酸無水和物もしくはテトラカルボン酸無水和物とモノエタノールアミンを有機溶媒中で反応させることにより得ることができる。ジカルボン酸無水和物とモノエタノールアミンのモル比は、1:1〜1:5、好ましくは1:1〜1:2.5、より好ましくは1:1〜1:1.5である。テトラカルボン酸無水和物とモノエタノールアミンのモル比は、1:2〜1:10、好ましくは1:2〜1:5、より好ましくは1:2〜1:3である。
【0052】
このイミドアルコールを合成する際に用いる有機溶媒としては、ジカルボン酸無水和物もしくはテトラカルボン酸無水和物とモノエタノールアミンのいずれをも溶解しうる極性有機溶媒が好ましい。例えば、スルホラン、N,N―ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N―メチルー2−ピロリドン、N,N−ジメチルプロピレン尿素などが挙げられる。溶解性、反応性の点から特にスルホランを用いることが好ましい。また、このような極性溶媒に水と共沸混合物を作りやすい沸点30℃〜150℃の有機溶媒を併用することもできる。このような有機溶媒としてベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン,へキサン、シクロヘキサン、イソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、四塩化炭素、トリクロロエチレンなどの有機溶媒が挙げられる。
【0053】
上記のジカルボン酸無水和物もしくはテトラカルボン酸無水和物とモノエタノールアミンとの反応温度は、50℃〜200℃、好ましくは100℃〜180℃、より好ましくは140℃〜160℃である。反応時間は、2時間〜20時間、好ましくは4時間〜10時間、より好ましくは5時間〜7時間である。
ジカルボン酸無水和物もしくはテトラカルボン酸無水和物とモノエタノールアミンとの反応は、触媒を用いることによって促進することができる。触媒として例えば、硫酸、p−トルエンスルホン酸、塩化亜鉛、リン酸、酸化アンチモン、チタン酸エステル、メトキシフェノールなどの公知のエステル触媒が挙げられる。触媒の使用量は、ジカルボン酸無水和物もしくはテトラカルボン酸無水和物100重量%に対して0.01重量%〜30重量%、好ましくは0.05重量%〜20重量%、より好ましくは0.1重量%〜10重量%である。
上記のようにして得られたイミド(メタ)アクリレート化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上の化合物を用いてもよい。
また、市販されているイミド(メタ)アクリレート化合物としては、アロニックスTO-1429(東亞合成(株)製)などが例示できるがこれらに限定されない。
(B)成分は、(A)、(B)及び(C)成分の合計量100重量%に対し、5〜60重量%含有することが好ましい。さらに好ましくは、5〜40重量%、より好ましくは5〜30重量%である。5重量%未満であると硬化後のフィルムの難燃性が低下する傾向があり、60重量%を越えるとカバーレイフィルムのベタツキがひどくなったり解像度が悪くなったりする傾向にあり傾向がある。
次に、(C)成分であるイミド環を含まない(メタ)アクリル系化合物について説明する。
【0054】
分子内にイミド環を含まない(メタ)アクリル系化合物であれば特に限定はないが、エチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクレート、ネオペンチルグリコールジメタクレート、ポリプロピレングリコールジメタクレート、2,2−ビス[4−(メタクロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、ポリエチレングリコールジクリレート、イソシアヌル酸トリアクリレート、イソシアヌル酸ジアクリレート、グリシジルメタクレート、グリシジルアリルエーテル、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリル1,3,5−ベンゼンカルボキシレート、トリアリルアミン、トリアリルシトレート、トリアリルフォスフェート、ジアリルアミン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジスルフィド、ジアリルエーテル、ザリルシアルレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、等が好ましいが、これらに限定されない。架橋密度を向上するためには、特に炭素間二重結合を2個以上有する多官能の(メタ)アクリル系化合物を用いることが望ましい。
また、(C)成分としては、1分子中に芳香環および/または複素環を1個以上有する化合物であることが、カバーレイフィルムに、熱圧着時の流動性を付与し、高い解像度を付与することができるという点から好ましい。
【0055】
特に、1分子中に芳香環および/または複素環を1個以上有し、かつ炭素間二重結合を1個以上有する(メタ)アクリル系化合物としては、以下のようなものが例示できる。
【0056】
例えば、アロニックスM-210、M-211B(東亞合成製)、NKエステルABE-300、A-BPE-4、A-BPE-10、A-BPE-20、A-BPE-30、BPE-100、BPE-200(新中村化学製)等のビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート、アロニックスM-208(東亞合成製)等のビスフェノールF EO変性(n=2〜20)ジ(メタ)アクリレート、デナコールアクリレートDA-250(ナガセ化成製)、ビスコート#540(大阪有機化学工業製)等のビスフェノールA PO変性(n=2〜20)ジ(メタ)アクリレート、デナコールアクリレートDA-721(ナガセ化成製)等のフタル酸PO変性ジアクリレート、をあげることができる。さらに、芳香環は含まないが、アロニックスM-215(東亞合成製)等のイソシアヌル酸 EO 変性ジアクリレートやアロニックスM-315(東亞合成製)、NKエステルA-9300(新中村化学製)等のイソシアヌル酸 EO 変性トリアクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
(C)成分は、(A)、(B)、(C)の合計100重量%に対し1〜50重量%配合されることが好ましい。1重量%より少ないと圧着可能温度が高く、かつ解像度が悪くなる傾向にあり、50重量%より多いとBステージ状態のフィルムにベタツキが見られ、熱圧着時に樹脂がしみ出しやすくなり、さらに硬化物が脆くなりすぎる傾向にある。好ましくは、1〜40重量%の範囲であり、さらに望ましくは、5〜10重量%である。
さらに本発明の組成物は、リン、ハロゲン及びシロキサン部位からなる群から選ばれる少なくとも1種類以上の原子および/または部位が共有結合している化合物を含有していてもよい。このような化合物を用いることにより、硬化後の感光性カバーレイフィルムに難燃性や耐熱性を付与することができる。
リン系化合物の場合、難燃性を効果的に付与できる点から、そのリン含量は5.0%以上であることが好ましく、さらに好ましくは7.0%以上である。含ハロゲン化合物である場合、難燃性を効果的に付与できる点から、ハロゲン含量は15%以上であることが好ましく、さらに好ましくは20%以上である。ハロゲンとしては、特に塩素または臭素を用いたものが一般的に用いられる。また、シロキサン部位を含む化合物を含有させる場合、耐熱性よび難燃性を効果的に付与できる点から、芳香環を高比率で含有するオルガノシロキサン化合物であることが好ましい。
リン系化合物を用いる場合、リン系化合物として、ホスフィン、ホスフィンオキサイド、リン酸エステル(縮合リン酸エステルも含む)、亜リン酸エステルなどのリン化合物、などが挙げられるが、(A)成分である可溶性ポリイミドとの相溶性の面からホスフィンオキサイド、またはリン酸エステル(縮合リン酸エステルも含む)であることが好ましい。本リン系化合物のリン含量は5.0重量%、さらに好ましくは7.0%以上であることが好ましい。
さらには、難燃性を付与でき、かつ耐加水分解性に優れるという点から、芳香環を1つ以上有するリン酸エステルであることが望ましく、さらに好ましくは芳香環を2つ以上有するリン酸エステルであることが望ましい。このようなリン酸エステル化合物は、アルカリ水溶液に溶解するため、感光性カバーレイフィルムの材料として用いた場合、アルカリ水溶液で現像することができる。
このようなリン系化合物としては以下のものを挙げることができる。
例えば、TPP(トリフェニルホスフェート)、TCP(トリクレジルホスフェート)、TXP(トリキシレニルホスフェート)、CDP(クレジルジフェニルホスフェート)、PX−110(クレジル2,6-キシレニルホスフェート)(いずれも大八化学製)等のリン酸エステル、CR−733S(レゾシノ−ルジホスフェート)、CR−741、CR−747、PX−200)(いずれも大八化学製)等の非ハロゲン系縮合リン酸エステル、ビスコートV3PA(大阪有機化学工業製)、MR−260(大八化学製)などのリン酸(メタ)アクリレート、亜リン酸トリフェニルエステル等の亜リン酸エステル等が挙げられる。
耐加水分解性という点からは、リン系化合物は加圧加湿条件下で加水分しやすい傾向があるが、縮合リン酸エステルを用いると難燃性の付与と耐加水分解性の両方を実現することが可能となる。また、含臭素化合物とリン系化合物を併用すると相乗効果により、少ない難燃剤の添加量で硬化後の感光性カバーレイフィルムの難燃性を実現することができる。
また、含ハロゲン化合物を含有させる場合、難燃性の向上という点からそのハロゲン含量は望ましくは30重量%以上、さらに望ましくは40重量%以上、最も望ましくは50%以上であることが好ましい。
また、硬化性反応基を持ち耐熱性と難燃性を同時に付与できるという点から芳香環を1個以上有する(メタ)アクリル系化合物から選択される少なくとも1種類以上の化合物を含有することが好ましい。
含ハロゲン化合物として、塩素を含む有機化合物や臭素を含む有機化合物などが挙げられるが、難燃性の付与という面から、含臭素化合物であることが好ましく、以下のようなものが例示できる。
例えばニューフロンティアBR−30、BR−30M、BR−31、BR−42M(第一工業製薬製)等の臭素系モノマー、ピロガードSR−245(第一工業製薬製)等の臭素化芳香族トリアジン、ピロガードSR−250、SR−400A(第一工業製薬製)等の臭素化芳香族ポリマー、ピロガードSR−990A(第一工業製薬製)等の臭素化芳香族化合物等が挙げられる。
また、(D)成分は1分子中にハロゲン原子を有するリン系化合物であってもよく、このような化合物としては、CLP(トリス(2-クロロエチル)ホスフェート)、TMCPP(トリス(クロロプロピル)ホスフェート)、CRP(トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート)、CR−900(トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート)(いずれも大八化学製)などの含ハロゲンリン酸エステルなどが挙げられる。
また、含ハロゲン化合物を用いる場合には、三酸化アンチモン及び/又は五酸化アンチモンを添加すると、プラスチックの熱分解開始温度域で、酸化アンチモンが難燃剤からハロゲン原子を引き抜いてハロゲン化アンチモンを生成するため、相乗的に難燃性を上げることができる。その添加量は、(A)、(B)及び(C)の合計量100重量%に対し0.1〜10重量%であることが好ましく、更に好ましくは1〜6重量%であることが好ましい。
更に、シロキサン部位を有する化合物を用いる場合、難燃性を付与するというから芳香環を高比率で含有するオルガノポリシロキサン化合物であることが好ましく、フェニル基を全有機置換基のうち10%以上、更に望ましくは20%以上、より好ましくは25%以上含有するオルガノポリシロキサン化合物であることが好ましい。フェニル基の含有率が高ければ高いほど難燃の効果が高くなり望ましい。
フェニル基の含有率の低いオルガノポリシロキサン化合物を含有させる場合、(A)可溶性ポリイミドや(B)イミド(メタ)アクリレート化合物、(C)(メタ)アクリル系化合物への分散性や相溶性が悪い傾向にあり、感光性樹脂をフィルム化した場合に、屈折率の異なる複数成分が相分離した透明性の低いフィルムか、不透明なフィルムしか得られない傾向にある。また、このようなフェニル基の含有率の低いオルガノポリシロキサン化合物を用いる場合、添加する量を多くしないと十分な難燃効果が得られにくいが、添加量を多くすると作製される硬化後の感光性カバーレイフィルムの機械強度などの物性が大幅に低下してしまう傾向がある。なお、主鎖に分岐構造を有するオルガノポリシロキサン化合物であってもよい。さらに末端官能基として(メタ)アクリル基もしくはビニル基を有するオルガノポリシロキサン化合物であってもよい。このような化合物を用いることにより、硬化後のフィルムの難燃性や耐熱性を向上させることができる。
芳香環を高比率で含有するオルガノポリシロキサン化合物としては以下のようなものが例示できる。
例えば信越シリコーン(株)製のKF50−100S、KF54、KF56、HIVAC F4、HIVAC F5、X−22−1824B、KR211、KR311、GE東芝シリコーン(株)製のXC99−B5664、TSL9706、東レ・ダウ・コーニング(株)製のトレフィルE−601などが挙げられ、単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
本オルガノポリシロキサン化合物は、(A)、(B)及び(C)成分の合計量100重量%に対し、5〜50重量%用いることが好ましい。さらに好ましくは5〜40重量%、特に好ましくは10〜40重量%である。(D)成分が5重量%より少ないと硬化後のカバーレイフィルムに難燃性を付与することが難しくなる傾向があり、50重量%より多いと硬化後のカバーレイフィルムの機械特性が悪くなる傾向がある。
さらに本発明の組成物には、露光現像により所望のパターンを描けるようにするために(E)成分、光反応開始剤を配合することが好ましい。
【0058】
光により、g線程度の長波長の光によりラジカルを発生する化合物の一例として、下記一般式(9)、一般式(10):化20、
【0059】
【化20】
(式中、R17,R18及びR19は、C6H5−,C6H4(CH3)−,C6H2(CH3)3−,(CH3)3C−,C6H3Cl2−を、R20,R21及びR22は、C6H5−,メトキシ基,エトキシ基,C6H4(CH3)−,C6H2(CH3)3−を表す。
で表されるアシルフォスフィンオキシド化合物が挙げられる。これにより発生したラジカルは、炭素間二重結合を有する反応性基(ビニル・アクロイル・メタクロイル・アリル等)と反応し架橋・重合を促進する。
【0060】
一般式(9)で表されるアシルフォスフィンオキシドが2個のラジカルを発生するのに対し、特に一般式(10)で表されるアシルフォスフィンオキシドは、α開裂により4個のラジカルを発生するためより好ましい。
【0061】
ポリイミド樹脂の側鎖に付けたエポキシ基、炭素間二重結合、三重結合を硬化させるためには、以上のようなラジカル発生剤の替わりに、光カチオン発生剤を用いてもよい。例えば、ジメトキシアントラキノンスルフォン酸のジフェニルヨードニウム塩等のジフェニルヨードニウム塩類・トリフェニルスルフォニウム塩類・ピリリニウム塩類、トリフェニルオニウム塩類・ジアゾニウム塩類等を例示することができる。この際、カチオン硬化性の高い脂環式エポキシやビニルエーテル化合物を混合することが好ましい。
【0062】
もしくは、側鎖に付けたエポキシ基、炭素間二重結合、三重結合を硬化させるために、光塩基発生剤を用いてもよい。例えば、ニトロベンジルアルコールやジニトロベンジルアルコールとイソシアナートの反応により得られるウレタン化合物、或いはニトロ−1−フェニルエチルアルコールやジニトロ−1−フェニルエチルアルコールとイソシアナートの反応により得られるウレタン化合物、ジメトキシ−2−フェニル−2−プロパノールとイソシアナートの反応により得られるウレタン化合物等が例示できる。
【0063】
本発明の組成物には、実用に供しうる感光感度を達成するため、増感剤を配合することが望ましい。増感剤の好ましい例としては、ミヒラケトン、ビス−4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾフェノン、カンファーキノン、ベンジル、4,4’−ジメチルアミノベンジル、3,5−ビス(ジエチルアミノベンジリデン)−N−メチル−4−ピペリドン、3,5−ビス(ジメチルアミノベンジリデン)−N−メチル−4−ピペリドン、3,5−ビス(ジエチルアミノベンジリデン)−N−エチル−4−ピペリドン、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン、4−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)−3,3−ジメチル−3H−インドール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
また、ラジカル開始剤として種々のパーオキサイドを前記増感剤と組み合わせて用いることができる。特に3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンとの組み合わせが特に好ましい。
【0065】
光反応開始剤および増感剤の総重量は、前記(A)、(B)及び(C)成分の合計重量を基準として0.001〜10重量部配合することが好ましく、0.01〜10重量部とすることが、さらに好ましい。0.001〜10重量部の範囲を逸脱すると、増感効果が得られなかったり、現像性に好ましくない影響を及ぼしたりする場合がある。なお、光反応開始剤および増感剤として、1種類の化合物を用いても良いし、数種類を混合して用いてもよい。
【0066】
次に感光性カバーレイフィルムの作製方法について説明する。本発明の感光性カバーレイフィルムを製造するに際しては、まず、(A)、(B)、(C)及び(D)成分を有機溶剤に均一に溶解する。ここで用いる有機溶媒は、感光性樹脂組成物を溶解する溶媒であればよく、例えば、ジオキソラン、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、メチルアルコール、エチルアルコールなどのアルコール系溶媒などが用いられる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。後に、溶媒の除去を行うので、(A)、(B)、(C)及び(D)成分を溶解し、なるべく沸点の低いものを選択することが、工程上有利である。
ついで、溶液状となった感光性樹脂組成物を支持体フィルム上に均一に塗布した後、加熱および/もしくは熱風吹き付けにより溶媒を除去して乾燥し、感光性カバーレイフィルムとする。通常、感光性カバーレイフィルムは、感光性組成物を半硬化状態(Bステージ)で保ったものであり、熱プレスもしくはラミネート加工時には流動性を持ち、フレキシブルプリント配線版の回路の凸凹に追従して密着し、露光時の光架橋反応、プレス加工時の熱およびプレス後に施す加熱キュアにより硬化が完了するように設計される。
感光性カバーレイフィルムの作製において溶媒を除去・乾燥する時の乾燥温度は、(B)成分及び(C)成分などに含まれるアクリル基などの硬化性基が反応してしまわない程度の温度が好ましく、120℃以下が好ましく、さらに望ましくは100℃以下である。乾燥時間は溶媒が除去されるのに十分な時間があればよいが、なるべく短い時間の方が工程上有利である。具体的には、
・80〜120℃の温度で短時間(2〜3分間程度)乾燥する方法と、
2) 45℃5分間、65℃5分間、85℃5分間のように低温から徐々に温度を上げながら乾燥していく方法
がある。1)のように比較的高温で一気に乾燥させる方法は、感光性フィルム厚が小さい場合に適しており、短時間で乾燥できるため、長尺の感光性フィルムを作製する場合に有利である。ただし、感光性フィルム厚が50μm以上と大きい場合は、感光性樹脂組成物を溶解させている溶媒が蒸発除去されるのに時間がかかり、高温で乾燥させて表面が乾燥されていても、フィルム内部にはまだ溶媒が残留しており、基板などへのラミネート時に樹脂が染み出したり、ラミネート・パターン露光・現像後に熱キュアする工程で、感光性フィルムが発泡してしまったりするという問題がある。そこで、感光性フィルム厚が比較的大きい場合は、乾燥時間はかかるが、2)のように徐々に乾燥温度を上げていく方法が好ましい。
また、乾燥が不十分であると、Bステージ状態の感光性フィルムにタック性(ベタツキ)が見られ、その上に保護フィルムを積層しても保護フィルム剥離時に、感光性樹脂成分の一部が保護フィルム面に粘着して転写されてしまったり、支持体フィルム剥離時に感光性樹脂成分の一部が支持体フィルム面に粘着して転写されてしまったりすることがある。
支持体フィルムの材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム、ポリイミドフィルムなど、通常市販されている各種のフィルムが使用可能であるが、これらに限定されるものではない。ある程度の耐熱性を有し、比較的安価に手に入ることから、支持体フィルムとしてはPETフィルムが多く用いられる。
支持体フィルムの感光性フィルムとの接合面については、密着性と剥離性を向上させるために表面処理されているものを用いてもよい。
また、支持体フィルムの厚みは5μm以上50μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは10μm以上30μm以下である。厚みが小さすぎるとシワになりやすく操作性が悪い傾向があり、また厚みが大きすぎると、長尺シートの感光性ドライフィルムレジストを作製した場合に全体の重量が重くなりすぎるという問題がある。
さらに、感光性樹脂組成物を支持体フィルムに塗布し乾燥して作製した感光性カバーレイフィルムの上には、保護フィルムを積層することが好ましい。空気中のゴミやチリが付着することを防ぎ、感光性カバーレイフィルムの乾燥による品質の劣化を防ぐことができる。
「支持体フィルム/感光性フィルム」の積層体(二層構造)の感光性フィルム上にさらに保護フィルムを積層し、三層構造からなる感光性カバーレイフィルムとしてもよい。保護フィルムは、感光性フィルム面に10℃〜50℃の温度でラミネートして積層することが好ましい。不必要に温度をかけると、保護フィルムが熱膨張して伸びてしまい、ラミネート後にシワになったりカールしてしまったりするという問題がある。
保護フィルムは使用時には剥離するため、保護フィルムと感光性フィルムとの接合面は、保管時には適度な密着性を有し、同時に剥離しやすさを兼ね備えていることが好ましい。
【0067】
保護フィルムの材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム、ポリエチレンフィルム(PEフィルム)、ポリエチレンビニルアルコールフィルム(EVAフィルム)、「ポリエチレンとエチレンビニルアルコールの共重合体フィルム」((以下(PE+EVA)共重合体フィルムと略す)、「PEフィルムと(PE+EVA)共重合体フィルムの貼り合せ体」、もしくは「(PE+EVA)共重合体とポリエチレンとの同時押し出し製法によるフィルム」(片面がPEフィルム面であり、もう片面が(PE+EVA)共重合体フィルム面であるフィルムとなる)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。PEフィルムは安価であり表面の滑り性がよいという長所がある。また、(PE+EVA)共重合体フィルムは、感光性フィルムへの適度な密着性と剥離性を同時に有するという特徴がある。
【0068】
「PEフィルムと(PE+EVA)共重合体フィルムの貼り合せ体」、もしくは「(PE+EVA)共重合体とポリエチレンとの同時押し出し製法によるフィルム」を保護フィルムとして用いる場合は、感光性フィルムとの接合面には(PE+EVA)共重合体フィルム面が接するようにし、支持体フィルムとの接触する側にはPEフィルム面が来るようにするという方法が好ましい。
【0069】
この保護フィルムを用いることにより、保護フィルム/感光性フィルム/支持体フィルムからなる三層構造シートをロール状に巻き取った場合に三層構造シートの表面の滑り性が良くなるという利点がある。また、保護フィルムに遮光性を持たせてもよく、その方法としては、感光性フィルムに含有される光開始反応剤および増感色素が吸収する範囲の波長の光をカットするような色にPEフィルムを着色する方法がとられる。
また、感光性フィルムの厚みは5μm以上75μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは10μm以上60μm以下、最も望ましくは10μm以上40μm以下である。感光性フィルムの厚みが小さすぎると、プリント配線板などの銅回路とベースフィルムとの凹凸を埋め込むことができず、また回路を形成したCCLと感光性フィルムの積層した後に表面の平坦性を保つことができないために屈曲性が悪くなるといった問題が発生する傾向がある。また、厚みが大きすぎると、微細なパターンを現像しにくく解像度が低下したり、硬化後のサンプルの反りが発生しやすかったりするという傾向がある。
本発明の感光性カバーレイフィルムは、保護フィルムを積層する前の二層構造シートの状態で保存するならば、感光性フィルム面が乾燥したり酸素に触れたりしないようにロール状に巻き取って保存してもよい。また、保護フィルムを積層して三層構造シートの状態であれば、ロール状に巻き取って保存してもよいし、ある適当な大きさにカットしてシート状のものを積み重ねた状態で保存してもよい。
感光性フィルムは、空気に長時間触れると、ゴミが付着しやすいといった問題のほか、空気中の酸素や水分により感光性フィルムの貯蔵安定性が極端に低下するので二層構造シートの状態で保存するよりは、保護フィルムを積層して三層構造シートの状態で保存する方が好ましい。
本発明にかかる三層構造シートからなる感光性カバーレイフィルムを用いてフレキシブルプリント配線板を作製するに際しては、保護フィルムを除去後、回路を形成した銅貼積層板(回路付き銅貼積層板)および感光性カバーレイフィルムを熱圧着(たとえば熱ラミネ−ト、プレス)して積層する。熱圧着するのに可能な下限温度のことを圧着可能温度と呼ぶ。この圧着可能温度の測定は、ポリイミドフィルム(鐘淵化学(株)製NPIフィルム、厚み25μm)および銅箔(三井金属(株)製の電解銅箔、厚み38μm)光沢面へBステージ状態の感光性カバーレイフィルムを熱ラミネ−トし、感光性カバーレイフィルムがポリイミドフィルム及び銅箔光沢面へ圧着できる下限温度を測定する。圧着できたかは、熱ラミネートした後、感光性カバーレイフィルムをポリイミドフィルム及び銅箔光沢面から剥離しようとしても剥離不可能であることにより確認する。圧着可能温度は50℃〜150℃であることが好ましい。
ここで、銅箔には光沢のある面(光沢面)と光沢のない面(粗面)がある。粗面は表面積が大きいために光沢面と比較して熱圧着は容易であり、銅箔光沢面へ感光性カバーレイフィルムを熱圧着できる温度であれば、銅箔粗面へも感光性カバーレイフィルムを熱圧着できる。
積層時の温度が高すぎると感光性反応部位が架橋してフィルムが硬化してしまい感光性カバーレイフィルムとしての機能を失ってしまうため、積層時の温度は低いほうが好ましい。具体的には、20℃から150℃であり、さらに好ましくは60℃から120℃であり、より好ましくは80℃から120℃である。温度が低すぎると、感光性カバーレイフィルムの流動性が悪くなるため、フレキシブルプリント配線板上の微細な回路を被覆することが難しく、また密着性が悪くなる傾向がある。
【0070】
このようにして「回路付きCCL/感光性フィルム/支持体フィルム」の順に積層された状態となる。支持体フィルムは積層が完了した時点で剥離してもよいし、露光が完了してから剥離してもよい。感光性カバーレイフィルムの保護という点からは、フォトマスクパターンをのせて露光してから支持体フィルムを剥離するほうが好ましい。
【0071】
次に、パターン露光・現像について説明する。「回路付きCCL/感光性フィルム/支持体フィルム」の積層体の支持体フィルムの上にフォトマスクパターンをのせて露光し、支持体フィルムを剥離してから現像することにより、所望の位置に穴をあけることができる。
【0072】
ここで露光に用いる光源としては、感光性カバーレイフィルムに含まれる光反応開始剤は、通常波長が450nm以下の光を吸収するため、照射する光は波長が300~430nmの光を有効に放射する光源を用いるとよい。
【0073】
また、現像液としては、塩基性を有する水溶液あるいは有機溶媒を用いることができる。塩基性化合物を溶解させる溶媒としては水でもよいし有機溶媒でもよい。ポリイミドの溶解性を改善するため、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール、N−メチルー2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N一ジメチルアセトアミド等の水溶性有機済媒を、さらに含有していてもよく、二種類以上の溶媒を混合したものでもよい。環境への影響を考えると、有機溶媒は用いないほうが好ましく、アルカリ水溶液を現像液として用いるのが最も好ましい・塩基性化合物としては、1種類を用いてもよいし、2種類以上の化合物を用いてもよい。塩基性化合物の濃度は、通常0.1〜10重量%とするが、フィルムへの影響などから、0.1〜5重量%とすることが好ましい。上記塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムイオンの、水酸化物または炭酸塩や、アミン化合物などが挙げられる。
【0074】
このようにして現像した後の感光性カバーレイフィルムは、加熱キュアすると、フィルムが硬化して回路の絶縁保護フィルムとなり、フレキシブルプリント配線板が作製される。
【0075】
本発明の感光性カバーレイフィルムは、(A)成分として可溶性ポリイミド、(B)成分としてイミド(メタ)アクリレート化合物、さらに(C)成分としてイミド環を含まない(メタ)アクリル系化合物、(D)成分として光反応開始剤および/または増感剤を含む感光性樹脂組成物から作製することにより、露光部の樹脂は硬化し、未露光部の樹脂はアルカリ水溶液によりすみやかに溶解除去されるため、短時間で良好な解像度を持つことを特徴とする。
また、(B)成分:イミド(メタ)アクリレート化合物を用いることにより、硬化後の感光性カバーレイフィルムに、難燃性、半田耐熱性、耐屈曲性及び耐薬品性を付与することができる。
【0076】
さらにポリイミドを主成分とすることにより、優れた電気絶縁性、耐熱性、機械特性を有するため、本発明の感光性カバーレイフィルムは、フレキシブルプリント配線板用感光性カバーレイのほか、パソコンのハードディスク装置のヘッド用の感光性カバーレイにも適する。
【0077】
【実施例】
以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例における三層構造シートからなる感光性カバーレイフィルム及びその評価は以下のように行った。
(1) 感光性カバーレイフィルムの作製
(A)可溶性ポリイミドをテトラヒドロフランおよびジオキソランの混合溶媒に固形分重量%(Sc)が30%になるように溶解させたワニスに、(B)イミド(メタ)アクリレート化合物、(C)イミド環を含まない(メタ)アクリル系化合物、(D)光反応開始剤を混合し、感光性樹脂組成物のワニスを調整する。この感光性樹脂組成物のワニスを支持体フィルム;PETフィルム(厚み25μm)上に、乾燥後の厚みが25μmになるように塗布し、100℃で2分乾燥して有機溶媒を除去する。この状態がBステージ状態の二層構造の感光性カバーレイフィルムである。
【0078】
続いて、保護フィルムとして「(EVA+PE)共重合体とポリエチレンとの同時押し出し製法によるフィルム」である、市販されている積水化学(株)製プロテクト(#6221F)フィルム(厚み50μm)を選び、プロテクトフィルムの(PE+EVA)共重合体フィルム面が感光性フィルム面と接するように、ラミネートして三層構造シートからなる感光性カバーレイフィルムを作製した。ラミネート条件は、ロール温度40℃、ニップ圧は50000Pa・mとした。
(2)感光性カバーレイフィルムの評価
得られた三層構造シートからなる感光性カバーレイフィルムについて半田耐熱性、難燃性、耐屈曲性及び現像性の4項目について評価を行った。
<半田耐熱性>
まず、電解銅箔(35μm)を5cm角にカットし10%硫酸水溶液で1分間ソフトエッチング(銅箔表面の防錆剤を除去する工程である)し、水洗い後、エタノール、アセトンで表面を洗ってから乾燥させる。次に4cm角にカットした三層構造シートの保護フィルムを剥離し、感光性フィルム面を先程の電解銅箔(ソフトエッチング後)の光沢面に重ねて、100℃、75000Pa・mでラミネートした。この積層体の感光性フィルム面に波長400nmの光を300mJ/cm2露光した後、180℃で2時間キュアして硬化させる。このサンプルを▲1▼常態(20℃/相対湿度40%の環境で24時間)、▲2▼吸湿(40℃/相対湿度85%の環境で48時間)調湿した後に、270℃以上の溶融半田に1分間ディップし、銅箔とカバーレイの界面に膨れが発生したり剥離したりしないか観察する。溶融半田の温度を徐々に上げていき、10℃ごとに新しいサンプルを30秒間ディップして何℃まで異常が発生しないか調べる。
<難燃性試験>
三層構造シートの保護フィルムを剥離後、感光性カバーレイフィルム面を25μm厚のポリイミドフィルム(鐘淵化学(株)製アピカルAH)に100℃、75000Pa・mでラミネート加工する。次に、波長400nmの光を600mJ/cm2だけ露光してから支持体フィルムを剥離し、180℃のオーブンで2時間加熱キュアを行う。
【0079】
このように作製した「ポリイミドフィルム/感光性カバーレイフィルム」積層体サンプルを寸法1.27cm幅×12.7cm長さにカットしたものを20本用意する。
【0080】
そのうちそのうち10本は▲1▼「23℃/50%相対湿度/48時間」で処理し、残りの10本は▲2▼「70℃で168時間」で処理した後無水塩化カルシウム入りデシケーターで4時間以上冷却する。
【0081】
これらのサンプルの上部をクランプで止めて垂直に固定し、サンプル下部にバーナーの炎を10秒間近づけて着火する。10秒間経過したらバーナーの炎を遠ざけて、サンプルの炎や燃焼が何秒後に消えるか測定する。各条件(▲1▼、▲2▼)につき、サンプルからバーナーの炎を遠ざけてから平均(10本の平均)で5秒以内に炎や燃焼が停止し、かつ各サンプルが最高で10秒以内に炎や燃焼が停止し自己消火するものが合格である。1本でも10秒以内に消火しないサンプルがあったり、炎がサンプル上部のクランプのところまで上昇して燃焼するものは不合格である。
<耐屈曲性>
三層構造シートの保護フィルムを剥離後、感光性フィルム面を25μm厚のポリイミドフィルム(鐘淵化学(株)製アピカルAH)に100℃、75000Pa・mでラミネート加工する。次に、波長400nmの光を300mJ/cm2だけ露光してから支持体フィルムを剥離し、180℃のオーブンで2時間加熱キュアを行う。
【0082】
このように作製した「ポリイミドフィルム/感光性カバーレイフィルム」積層体サンプルを2cm×10cmのサイズにカットする。
【0083】
これを▲1▼カバーレイフィルム面を外側に向けて180°に折り曲げる、▲2▼カバーレイフィルム面を内側にして180°に折り曲げる、いずれの場合でもカバーレイにクラック等の異常が生じないものを合格とした。1つでもクラックが生じるものは不合格とした。
<現像性>
三層構造シートの保護フィルムを剥離後、感光性フィルム面を電解銅箔35μmの光沢面に、100℃、20000Pa・mでラミネートした。この積層体の支持体フィルムの上に、100×100μm角の微細な穴を描いたマスクパターンをのせ、波長400nmの光を300mJ/cm2だけ露光する。このサンプルの支持体フィルムを剥離した後、スプレー現像機(サンハヤト(株)製エッチングマシーンES−655D)を用いて、1%の水酸化カリウムの水溶液(液温40℃)、スプレー圧0.85MPa、現像液への露出時間2分間の条件で現像した。現像によって形成したパターンは、次いで蒸留水により洗浄して、現像液を除去し、乾燥させる。光学顕微鏡で観察して100x100μm角の穴が現像できていれば、合格とした。
(実施例1)
ポリイミドの原料として、(2,2'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート)-3,3',4,4'-テトラカルボン酸無水物(以下、ESDAと示す)、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン(以下、BAPS−Mと示す)、シリコンジアミン、 [ビス(4-アミノ-3-カルボキシ)フェニル]メタン(以下、MBAAと示す)を用いた。溶媒として、N,N'-ジメチルホルムアミド(DMF)およびジオキソランを用いた。
(ポリイミド樹脂の合成)
攪拌機を設置した500 mlのセパラブルフラスコにESDA 17.3 g (0.030 mol)、DMF 30 gを入れて、攪拌機で攪拌して溶解させる。次に、和歌山精化製のジアミンMBAA 5.15 g (0.018 mol)をDMF 9 gに溶解して加え激しく攪拌する。溶液が均一になったらさらに、シリコンジアミンKF-8010(信越シリコーン製)7.47 g (0.009 mol)を加え激しく攪拌する。溶液が均一になったら最後に、BAPS-M 1.29 g (0.003 mol)を加えて1時間激しく攪拌する。このようにして得たポリアミド溶液をテフロン(R)コートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃、660Paの圧力で2時間減圧乾燥し、26.40 gの可溶性ポリイミドを得た。
【0084】
このポリイミドは、テトラヒドロフラン100g(20℃)に50g以上溶解したので、本発明で定義する可溶性ポリイミドに該当する。
(感光性カバーレイフィルムの作製)
こうして合成したポリイミド15gをジオキソラン35gに溶解させ、固形分重量%(Sc) = 30%のワニスを作製した。
以下に示す(a)〜(d)成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、(1)の方法でPETフィルム上に塗布し、保護フィルムを積層して、三層構造からなるBステージの感光性カバーレイフィルムを作製した。
【0085】
【化21】
この感光性カバーレイフィルムのポリイミドフィルム及び銅箔光沢面への圧着可能温度は120℃であった。半田耐熱性試験を行ったところ、常態条件では370℃、吸湿条件では360℃まで合格であった。また、難燃性性試験を行ったところ、平均4.5秒で消火し合格であった。さらに、耐屈曲性試験を行ったところ、クラックは全く生じず合格であった。現像性試験では100μm×100μm角の穴が現像できており、合格であった。
(実施例2)
(変性ポリイミドの合成)
実施例1で合成したポリイミド20.8g(0.020 mol)をジオキソラン80gに溶解し、4-メトキシフェノールを0.030gを添加し、60℃のオイルバスであたためながら溶解させた。この溶液にメタクリル酸グリシジル3.75 g(0.0264 mol)をジオキソラン5gに溶解して加え、さらに触媒としてトリエチルアミン0.01 gを添加し60℃で6時間加熱攪拌を行った。このようにして変性ポリイミドを合成した。
(感光性カバーレイフィルムの作製)
以下に示す成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、(1)の方法で三層構造からなる感光性カバーレイフィルムを作製した。
この感光性カバーレイフィルムのポリイミドフィルム及び銅箔光沢面への圧着可能温度は100℃であった。半田耐熱性試験を行ったところ、常態条件では360℃、吸湿条件では350℃まで合格であった。また、難燃性性試験を行ったところ、平均4.0秒で消火し合格であった。さらに、耐屈曲性試験を行ったところ、クラックは全く生じず合格であった。現像性試験では100μm×100μm角の穴が現像できており、合格であった。
(実施例3)
ポリイミドの原料として、3,3',4,4'-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物(以下、ODPAと示す)、ジアミンとして前記BAPS−M、シリコンジアミン、MBAAを用いた。溶媒として、N,N'-ジメチルホルムアミド(DMF)およびジオキソランを用いた。
(ポリイミド樹脂の合成)
攪拌機を設置した500 mlのセパラブルフラスコにODPA 9.31 g (0.030 mol)、DMF 30 gを入れて、攪拌機で攪拌して溶解させる。次に、和歌山精化製のジアミンMBAA 4.29 g (0.015 mol)をDMF 10 gに溶解して加え激しく攪拌する。溶液が均一になったらさらに、シリコンジアミンKF-8010(信越シリコーン製)7.47 g (0.009 mol)を加え激しく攪拌し、溶液が均一になったら最後に、BAPS-M 2.58 g (0.006 mol)を加えて1時間激しく攪拌する。このようにして得たポリアミド溶液をテフロン(R)コートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃、660Paの圧力で2時間減圧乾燥し、21.28 gの可溶性ポリイミドを得た。
【0086】
このポリイミドは、テトラヒドロフラン100g(20℃)に50g以上溶解したので、本発明で定義する可溶性ポリイミドに該当する。
(感光性カバーレイフィルムの作製)
こうして合成したポリイミド21gをジオキソラン49gに溶解させ、固形分重量%(Sc) = 30%のワニスを作製した。
以下に示す成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、(1)の方法で感光性カバーレイフィルムを作製した。
この感光性カバーレイフィルムのポリイミドフィルム及び銅箔光沢面への圧着可能温度は90℃であった。半田耐熱性試験を行ったところ、常態条件では360℃、吸湿条件では350℃まで合格であった。また、難燃性性試験を行ったところ、平均2.0秒で消火し合格であった。さらに、耐屈曲性試験を行ったところ、クラックは全く生じず合格であった。現像性試験では100μm×100μm角の穴が現像できており、合格であった。
(実施例4)
(N−(アクリロイロキシ)−4−メチルヘキサヒドロフタルイミドの合成)
100 mlフラスコにヒドロキシルアミン(50%水溶液)16 ml (0.26 mol)を仕込み、室温で攪拌しながら4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物33.4 g (0.2 mol)を滴下した。滴下終了後、徐々に加熱し、100℃で1時間反応させた。反応終了後、反応液に4N塩酸水溶液を添加し反応液を酸性にした。得られた反応混合物から目的物をクロロホルムで抽出し有機層を分離し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、有機層からクロロホルムを除去することにより無色透明の粘性液体であるN−ヒドロキシ−4−メチルヘキサヒドロフタルイミドを32.4 g(収率89%)得た。
【0087】
次に、100 mlフラスコにN−ヒドロキシ−4−メチルヘキサヒドロフタルイミド10.07 g (0.055 mol)、トリエチルアミン15 ml (0.11 mol)、1,2−ジクロロエタン50 mlを仕込み、室温で攪拌しながら窒素下で、アクリル酸クロリド7.2 ml (0.090 mol) をゆっくり滴下した。滴下後、室温で1時間反応させた後、反応混合物を水で洗浄し有機層を分離し、次いで有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。5%炭酸水素ナトリウム水溶液から分離した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機層から溶媒を除去することにより、濃黄色の粘性液体であるN−(アクリロイロキシ)−4−メチルヘキサヒドロフタルイミドを11.8 g得た。構造式を化22に示す。
【0088】
【化22】
(感光性カバーレイフィルムの作製)
実施例2において、(B)成分として上記のようにして合成したN−(アクリロイロキシ)−4−メチルヘキサヒドロフタルイミドを用いること以外は、実施例2と全く同じ方法で各成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、(1)の方法で感光性カバーレイフィルムを作製した。
【0089】
この感光性カバーレイフィルムのポリイミドフィルム及び銅箔光沢面への圧着可能温度は100℃であった。半田耐熱性試験を行ったところ、常態条件では360℃、吸湿条件では350℃まで合格であった。また、難燃性性試験を行ったところ、平均2.8秒で消火し合格であった。さらに、耐屈曲性試験を行ったところ、クラックは全く生じず合格であった。現像性試験では100μm×100μm角の穴が現像できており、合格であった。
(実施例5)
ポリイミドの原料として、3,3',4,4'-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物(以下、DSDAと示す)、ジアミンとして前記BAPS−M、シリコンジアミン、MBAAを用いた。溶媒として、N,N'-ジメチルホルムアミド(DMF)およびジオキソランを用いた。
(ポリイミド樹脂の合成)
攪拌機を設置した500 mlのセパラブルフラスコにDSDA 10.75 g (0.030 mol)、DMF 30 gを入れて、攪拌機で攪拌して溶解させる。次に、和歌山精化製のジアミンMBAA 4.29 g (0.015 mol)をDMF 10 gに溶解して加え激しく攪拌する。溶液が均一になったらさらに、シリコンジアミンKF-8010(信越シリコーン製)7.47 g (0.009 mol)を加え激しく攪拌し、溶液が均一になったら最後に、BAPS-M 2.58 g (0.006 mol)を加えて1時間激しく攪拌する。このようにして得たポリアミド溶液をテフロン(R)コートしたバットにとり、真空オーブンで200℃、660Paの圧力で2時間減圧乾燥し22.57 gの可溶性ポリイミドを得た。
【0090】
このポリイミドは、テトラヒドロフラン100g(20℃)に50g以上溶解したので、本発明で定義する可溶性ポリイミドに該当する。
(感光性カバーレイフィルムの作製)
こうして合成したポリイミド21gをジオキソラン49gに溶解させ、固形分重量%(Sc) = 30%のワニスを作製した。
以下に示す成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、(1)の方法で感光性カバーレイフィルムを作製した。
この感光性カバーレイフィルムのポリイミドフィルム及び銅箔光沢面への圧着可能温度は130℃であった。半田耐熱性試験を行ったところ、常態条件では360℃、吸湿条件では350℃まで合格であった。また、難燃性性試験を行ったところ、平均4.0秒で消火し合格であった。さらに、耐屈曲性試験を行ったところ、クラックは全く生じず合格であった。現像性試験では100μm×100μm角の穴が現像できており、合格であった。
(実施例6)
(N―アクリロイロキシエチルフタル酸イミドの合成)
100 mlフラスコに無水フタル酸14.81 g (0.10 mol) をジオキソラン30 gに溶解させて仕込み、室温で攪拌しながらアミノエタノール6.11 g (0.10 mol) を滴下した。滴下終了後、徐々に加熱し60℃で1時間反応させた。反応終了後、反応液に4N塩酸水溶液を添加して反応液を酸性にして、無色の固体であるN−ヒドロキシエチルフタル酸イミドを得た。
【0091】
100 mlフラスコにN−ヒドロキシエチルフタル酸イミドを 16.71 g (0 087 mol)、トリエチルアミン9 ml (0.066 mol)、1,2−ジクロロエタン50ミリリットルを仕込み、室温で攪拌しながら、窒素下で、アクリル酸クロリド7.9 ml (0.090 mol)を、ゆっくり滴下した。滴下後、室温で1時間反応させた後、反応混合物を水で洗浄し有機層を分離し、次いで有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。5%炭酸水素ナトリウム水溶液から分離した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機層から溶媒を除去することにより、濃黄色の粘性液体であるN―アクリロイロキシエチルフタル酸イミドを15.4 g得た。その構造式を化23に示す。
【0092】
【化23】
(感光性カバーレイフィルムの作製)
実施例2において、(B)成分として上記方法により合成したN―アクリロイロキシエチルフタル酸イミドを用いること以外は、実施例2と全く同じ方法で各成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、(1)の方法で感光性カバーレイフィルムを作製した。
【0093】
この感光性カバーレイフィルムのポリイミドフィルム及び銅箔光沢面への圧着可能温度は100℃であった。半田耐熱性試験を行ったところ、常態条件では360℃、吸湿条件では350℃まで合格であった。また、難燃性性試験を行ったところ、平均3.5秒で消火し合格であった。さらに、耐屈曲性試験を行ったところ、クラックは全く生じず合格であった。現像性試験では100μm×100μm角の穴が現像できており、合格であった。
(実施例7)
(N,N‘−ビス(アクリロイキシエチル)オキシジフタル酸イミドの合成)
100 mlフラスコに3,3',4,4'-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物(ODPA)31.0 g (0.1 mol) をジオキソラン30 gに溶解させて仕込み、室温で攪拌しながらアミノエタノール15.9 g (0.26 mol)を滴下した。滴下終了後、徐々に加熱し、100℃で1時間反応させた。反応終了後、反応液に4N塩酸水溶液を添加し反応液を酸性にした。得られた反応混合物から目的物をクロロホルムで抽出し有機層を分離し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、有機層からクロロホルムを除去することにより無色透明の粘性液体であるN,N‘−ビス(ヒドロキシエチル)オキシジフタル酸イミド 36.8 g(収率93%)を得た。
【0094】
次に、100 mlフラスコにN,N‘−ビス(ヒドロキシエチル)オキシジフタル酸イミド21.8 g (0.055 mol)、トリエチルアミン15 ml (0.11 mol)、1,2−ジクロロエタン50 mlを仕込み、室温で攪拌しながら窒素下で、アクリル酸クロリド14.4 ml (0.180 mol) をゆっくり滴下した。滴下後、室温で1時間反応させた後、反応混合物を水で洗浄し有機層を分離し、次いで有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。5%炭酸水素ナトリウム水溶液から分離した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機層から溶媒を除去することにより、濃黄色の粘性液体であるN,N‘−ビス(アクリロイキシエチル)オキシジフタル酸イミドを20.8 g得た。その構造式を化24に示す。
【0095】
【化24】
(感光性カバーレイフィルムの作製)
実施例2において、(B)成分として上記方法により合成したN,N‘−ビス(アクリロイキシエチル)オキシジフタル酸イミドを用いること以外は、実施例2と全く同じ方法で各成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、(1)の方法で感光性カバーレイフィルムを作製した。
【0096】
この感光性カバーレイフィルムのポリイミドフィルム及び銅箔光沢面への圧着可能温度は90℃であった。半田耐熱性試験を行ったところ、常態条件では360℃、吸湿条件では350℃まで合格であった。また、難燃性性試験を行ったところ、平均4.5秒で消火し合格であった。さらに、耐屈曲性試験を行ったところ、クラックは全く生じず合格であった。現像性試験では100μm×100μm角の穴が現像できており、合格であった。
(実施例8)
(N,N'-ビス(アクリロイロキシ)-ベンゾフェノン-3,4,3',4'-テトラカルボン酸イミドの合成)
100 mlフラスコにベンゾフェノン-3,4,3',4'-テトラカルボン酸無水物(BTDA)64.45 g (0.2 mol) をDMF30 gに溶解させて仕込み、室温で攪拌しながらヒドロキシルアミン(50%水溶液)16 ml (0.26 mol)を滴下した。滴下終了後、徐々に加熱し、100℃で1時間反応させた。反応終了後、反応液に4N塩酸水溶液を添加し反応液を酸性にした。得られた反応混合物から目的物をクロロホルムで抽出し有機層を分離し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、有機層からクロロホルムを除去することにより無色透明の粘性液体であるN,N'-ビス(ヒドロキシエチル))-ベンゾフェノン-3,4,3',4'-テトラカルボン酸イミドを65.51 g(収率93%)得た。
【0097】
次に、100 mlフラスコにN,N'-ビス(ヒドロキシエチル)-ベンゾフェノン-3,4,3',4'-テトラカルボン酸イミド35.22 g (0.10 mol)、トリエチルアミン30 ml (0.22 mol)、1,2−ジクロロエタン100 mlを仕込み、室温で攪拌しながら窒素下で、アクリル酸クロリド28.8 ml (0.360 mol) をゆっくり滴下した。滴下後、室温で1時間反応させた後、反応混合物を水で洗浄し有機層を分離し、次いで有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。5%炭酸水素ナトリウム水溶液から分離した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機層から溶媒を除去することにより、濃黄色の粘性液体であるN,N'-ビス(アクリロイロキシ)-ベンゾフェノン-3,4,3',4'-テトラカルボン酸イミドを35.66 g得た。その構造式を化25に示す。
【0098】
【化25】
実施例1において、(B)成分として上記方法により合成したN,N'-ビス(アクリロイロキシ)-ベンゾフェノン-3,4,3',4'-テトラカルボン酸イミドを用いること以外は、実施例1と全く同じ方法で各成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、(1)の方法で感光性カバーレイフィルムを作製した。
【0099】
この感光性カバーレイフィルムのポリイミドフィルム及び銅箔光沢面への圧着可能温度は110℃であった。半田耐熱性試験を行ったところ、常態条件では360℃、吸湿条件では350℃まで合格であった。また、難燃性性試験を行ったところ、平均4.5秒で消火し合格であった。さらに、耐屈曲性試験を行ったところ、クラックは全く生じず合格であった。現像性試験では100μm×100μm角の穴が現像できており、合格であった。
【0100】
【比較例1】
下記のようにして、可溶性ポリイミドは含有するがイミド(メタ)アクリレート化合物を用いない感光性カバーレイフィルムを作製した。
(ポリイミド樹脂の合成)
攪拌機を設置した2000 mlのセパラブルフラスコにBAPS-M 43.05 g (0. 1mol)及びDMF 300 gを入れて、攪拌機で攪拌して溶解させる。次に、 この溶液を激しく攪拌しながらESDA 115.30 g (0.20 mol) を一気に加え 、さらに激しく攪拌する。溶液が均一になったら、ジアミノ安息香酸15.20 g (0.1 mol) をDMF 150 gに溶かし上記溶液に加えて、1時間激しく攪 拌する。このようにして得たポリアミド溶液をテフロン(R)コートした バットにとり、真空オーブンで、200℃、660Paの圧力で2時間減圧乾 燥し、160 gのカルボキシ基を有する可溶性ポリイミドを得た。
このポリイミドは、テトラヒドロフラン100g(20℃)に50g以上溶解したので、本発明で定義する可溶性ポリイミドに該当する。
(変性ポリイミドの合成)
上記で合成したポリイミド33.0gをジオキソラン66.0gに溶解し、4-メトキシフェノールを0.33g添加した。この溶液にアリルグリシジルエーテル2.85 g(0.025 mol)をジオキソラン25 gに溶解して加えた。70℃で6時間加熱攪拌を行ってポリイミドを変性し、固形分重量% (Sc) = 30 %の変性ポリイミドのワニスとした。
(感光性カバーレイフィルムの作製)
以下に示す成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、下記の方法で感光性カバーレイフィルムを作製した。
上記の成分を混合して作製した感光性樹脂組成物の溶液をPETフィルム上に塗布し、45℃で5分乾燥し、PETフィルムを剥離したフィルムをピン枠にて固定し、65℃5分80℃30分乾燥して、25μm厚みの感光性カバーレイフィルムを得た。
上記で得た感光性カバーレイフィルムを電解銅箔及びポリイミドフィルムに積層する条件は、「電解銅箔もしくはポリイミドフィルム/感光性カバーレイフィルム/50μm厚みテフロン(R)シート(剥離紙)」の順に積層して、120℃、1000MPa・mの条件で熱プレス加工を行った(実施例中の感光性カバーレイフィルムのラミネート条件75000Pa・mと比較して1000倍以上の高圧である)。熱プレス加工後は(2)の方法で感光性カバーレイフィルムの評価を行った。
この感光性カバーレイフィルムの半田耐熱性試験を行ったところ、常態条件では370℃、吸湿条件では350℃まで合格であった。また、難燃性性試験を行ったところ、平均2.5秒で消火し合格であった。さらに、耐屈曲性試験を行ったところ、クラックは全く生じず合格であった。しかし、現像性試験では100μm×100μm角の穴が現像できておらず、不合格であった。
【0101】
このように可溶性ポリイミドは含有するがイミド(メタ)アクリレート化合物を用いない感光性カバーレイフィルムは、電解銅箔もしくはポリイミドフィルムへ圧着させるのに必要な熱プレス加工時の圧力が非常に高く、さらに現像性に劣る。
【0102】
【比較例2】
実施例1の(A)成分:可溶性ポリイミドの替わりに、メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸=55/8/15/22の共重合割合(重量基準)で合成した共重合重合体を用いること以外は、実施例1と全く同じ方法で各成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、(1)の方法で感光性カバーレイフィルムを作製した。
【0103】
この感光性カバーレイフィルムのポリイミドフィルム及び銅箔光沢面への圧着可能温度は80℃であった。半田耐熱性試験を行ったところ、常態条件では320℃、吸湿条件では310℃まで合格であった。また、難燃性試験を行ったところ、炎は10秒以内に消火せず、クランプの位置まで大きな炎を上げて燃え。不合格であった。 さらに、耐屈曲性試験を行ったところ、クラックは全く生じず合格であった。現像性試験では100μm×100μm角の穴が現像できており、合格であった。
【0104】
このように、可溶性ポリイミドでない重合体を用いた感光性フィルムは、難燃性に劣る。
【0105】
【比較例3】
下記の各成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、可溶性ポリイミド及びイミド(メタ)アクリレート化合物を用いない感光性カバーレイフィルムを(1)の方法で作製した。
主成分として
この感光性カバーレイフィルムのポリイミドフィルム及び銅箔光沢面への圧着可能温度は100℃であった。半田耐熱性試験を行ったところ、常態条件では270℃、吸湿条件では250℃まで合格であった。また、難燃性性試験を行ったところ、炎は10秒以内に消火せず、クランプの位置まで大きな炎を上げて燃え。不合格であった。 さらに、耐屈曲性試験を行ったところ、カバーレイフィルム面を外側にして折り曲げた場合も、内側に折り曲げた場合にもカバーレイフィルムにクラックが生じ、不合格であった。現像性試験では100μm×100μm角の穴が現像できており、合格であった。
【0106】
このように可溶性イミド及びイミドアクリレートを用いない感光性カバーレイフィルムは、硬化後のフィルムの耐熱性、難燃性及び耐屈曲性に劣る。
【0107】
【比較例4】
実施例3において、(A)としてメチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸=55/8/15/22の共重合割合(重量基準)で合成した共重合重合体を用いること以外は、実施例3と全く同じ方法で各成分を混合して感光性樹脂組成物を調整し、(1)の方法で感光性カバーレイフィルムを作製した。
【0108】
この感光性カバーレイフィルムのポリイミドフィルム及び銅箔光沢面への圧着可能温度は80℃であった。半田耐熱性試験を行ったところ、常態条件では280℃、吸湿条件では270℃まで合格であった。また、難燃性性試験を行ったところ、炎は10秒以内に消火せず、クランプの位置まで大きな炎を上げて燃え。不合格であった。 さらに、耐屈曲性試験を行ったところ、クラックは全く生じず合格であった。現像性試験では100μm×100μm角の穴が現像できており、合格であった。
【0109】
このように、ポリイミド樹脂でない共重合体を用いた感光性フィルムは、耐熱性及び難燃性に劣る。
【0110】
【発明の効果】
上記に示したように本発明による感光性カバーレイフィルムは、硬化後の耐屈曲性や耐熱性を有する。特には、可溶性ポリイミドとイミド(メタ)アクリレート化合物を主成分として用い、光反応開始剤および/または増感剤を必須成分とする。これにより、優れた耐熱性、難燃性及び耐屈曲性を有する。したがって、フィルム状のフォトレジストおよび絶縁保護フィルム永久フォトレジストとして、フレキシブルプリント配線板やパソコンのハードディスク装置のヘッド部分に使用される感光性カバーレイフィルムにも好適に用い得る。
Claims (5)
- (A)テトラヒドロフラン100gに、20℃において1.0g以上溶解する、可溶性ポリイミド、(B)イミド(メタ)アクリレート化合物を含有する感光性樹脂組成物であり、
(B)成分が、下記一般式(1)
もしくは下記一般式(2)
から選ばれるイミド(メタ)アクリレート化合物である感光性樹脂組成物。
- さらに(C)イミド環を含まない(メタ)アクリル系化合物を含有する請求項1記載の感光性樹脂組成物。
- (A)、(B)及び(C)成分の合計量100重量%に対し、(A)成分を30〜70重量%、(B)成分を5〜60重量%、(C)成分を1〜50重量%含有する請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
- さらに(D)光反応開始剤及び/又は増感剤を含有する請求項1〜3いずれか一項記載の感光性樹脂組成物。
- 請求項1〜4いずれか一項記載の感光性樹脂組成物から作製される感光性カバーレイフィルム。
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