JP2004325616A - アルカリ水溶液で現像可能な感光性樹脂組成物及び感光性ドライフィルムレジスト、並びにその利用 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、アルカリ水溶液で現像可能で、良好なパターン形状が得られ、かつ耐熱性や電気絶縁性に優れた感光性樹脂組成物、感光性ドライフィルムレジスト、並びにこれらの利用方法を提供する。
【解決手段】(A)水酸基を含有するポリイミド樹脂に、炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性ポリイミド樹脂、(B)(メタ)アクリル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル系化合物、並びに(C)光反応開始剤及び/又は増感剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】(A)水酸基を含有するポリイミド樹脂に、炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性ポリイミド樹脂、(B)(メタ)アクリル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル系化合物、並びに(C)光反応開始剤及び/又は増感剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリ水溶液で現像可能で、良好なパターン形状が得られ、さらに製造工程の簡略化が可能な感光性樹脂組成物及び感光性ドライフィルムレジスト、並びにこれらの利用方法に関する。特に、(A)水酸基を含有するポリイミド樹脂に、炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性ポリイミド樹脂、(B)(メタ)アクリル系化合物、及び(C)光反応開始剤及び/又は増感剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物及び感光性ドライフィルムレジスト、並びにこれらの利用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の高機能化、小型化、軽量化に伴い、これら電子機器に用いられる電子部品に対しても、さらなる小型化、軽薄化が要求されている。そのため、プリント配線板上での半導体素子などの高密度実装や、配線の微細化、プリント配線板の多層化等を行うことにより、電子部品の高機能化や高性能化を図ることが求められている。また、配線の微細化に対応するためには、配線を保護するためにより高い電気絶縁性を有する絶縁材料が必要である。
【0003】
ところで、上記プリント配線板を作製する際には、種々の用途で感光性材料が用いられる。すなわち、プリント配線板の基板上へパターン化された回路(パターン回路)の形成や、プリント配線板表面やパターン回路を保護するための保護層の形成、多層のプリント配線板の層間絶縁層の形成等に、感光性材料が使用されている。このような用途に用いられる感光性材料として、液状の感光性材料や、フィルム状の感光性材料がある。このうち、フィルム状の感光性材料は、液状の感光性材料に比べて、膜厚の均一性や作業性に優れているといった利点を備えている。そのため、パターン回路の形成に用いるパターン回路用レジストフィルム、上記保護層の形成に用いる感光性カバーレイフィルム、上記層間絶縁層の形成に用いる感光性ドライフィルムレジスト等、その用途に応じて、種々のフィルム状感光性材料が用いられている。
【0004】
上記感光性カバーレイフィルムや感光性ドライフィルムレジスト(以下、両者を感光性ドライフィルムレジストと総称する)として、ポリイミド樹脂を含有してなるもの(例えば、特許文献1参照)、アクリル系樹脂を含有してなるもの、エポキシ樹脂を含有してなるもの等種々提案されているが、特に、絶縁性とともに耐熱性の高い感光性ポリイミドが注目されている。
【0005】
一方、近年環境問題等から、従来の有機溶剤を用いる現像に代わって、アルカリ水溶液を用いる現像が要求されてきている。アルカリ現像を実現させる方法として、ポリアミド酸のカルボキシル基にナフトキノンジアジドを導入した感光性ポリイミド前駆体(例えば、特許文献2参照)、光重合性のアクリロイル基をエステル結合で導入したポリアミド酸の側鎖にさらにカルボキシル基を導入した感光性ポリイミド前駆体(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。しかしこれらは、イミド化するためのポストベークに250℃以上の高温加熱を必要とし、基板部品に熱ダメージを与えるため、部品製造が制限されることもある。また、イミド化時に閉環による脱水反応が起こり、それによる体積収縮に伴う膜厚の損失および寸法安定性が悪いといった問題があった。
【0006】
また、既にイミド化されている感光性ポリイミドとして、感光基と親水性基をポリイミド側鎖に導入した感光性ポリイミド(例えば、特許文献4参照)も提案されているが、電気絶縁性や耐薬品性、耐加水分解性が低下したりする等の課題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−335619号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平6−258835号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平10−95848号公報
【0010】
【特許文献4】
特開2000−147768号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高温でのポストベークを必要とせず、アルカリ水溶液で現像可能で、良好なパターン形状が得られ、硬化膜特性に優れる感光性樹脂組成物及び感光性ドライフィルムレジスト、並びにこれらの利用方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、(A)感光性ポリイミド樹脂、(B)(メタ)アクリル系化合物、及び(C)光反応開始剤及び/又は増感剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物を用いることにより、所定の目的が達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち本発明の第1は、(A)水酸基を含有するポリイミド樹脂に、炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性ポリイミド樹脂、(B)(メタ)アクリル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル系化合物、並びに(C)光反応開始剤及び/又は増感剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物に関する。
【0014】
好ましい実施態様は、上記(A)成分が、アミノ基含有フェノール誘導体を、原料の一部として用いた感光性ポリイミド樹脂であって、上記アミノ基含有フェノール誘導体は、2以上のフェノール化合物が、原子又は原子団を介して鎖状に結合しており、かつ両端のフェノール化合物が、ベンゼン環の水素原子の1つがアミノ基で置換されている化合物であることを特徴とする、上記の感光性樹脂組成物に関する。
【0015】
さらに好ましい実施態様は、上記感光性ポリイミド樹脂の原料の一部として用いられる上記アミノ基含有フェノール誘導体が、一般式(1):
【0016】
【化4】
(式中、R1及びR2は、各々同一であっても異なっていても良いが、水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシ基、又は−COOR3(R3は炭素数1〜9のアルキル基を示す。)であり、Xは、−O−、−S−、−SO2−、−C(CH3)2−、−CH2−、−C(CH3)(C2H5)−、又は−C(CF3)2−である。m及びnは、各々m+n=4を満たす0以上の整数であり、p及びqは、各々p+q=4を満たす0以上の整数である。rは0〜10の整数である。)
で表される化合物であることを特徴とする、上記の感光性樹脂組成物に関する。
【0017】
さらに好ましい実施態様は、上記(A)成分が、次の一般式(2):
【0018】
【化5】
(式中、R1及びR2は、各々同一であっても異なっていても良いが、水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシ基、又は−COOR3(R3は炭素数1〜9のアルキル基を示す。)であり、Xは、−O−、−S−、−SO2−、−C(CH3)2−、−CH2−、−C(CH3)(C2H5)−、又は−C(CF3)2−であり、R4は4価の芳香族テトラカルボン酸二無水和物の残基である。R5は同一であっても異なっていてもよいが、下記群:
【0019】
【化6】
(式中、R6は、炭素−炭素二重結合を有する1価の有機基である。)から選択される化合物を示す。ただし、R5に−OH基は少なくとも1個以上含まれるものとし、更にR6を有する基も少なくとも1個以上含まれるものとする。m及びnは、各々m+n=4を満たす0以上の整数、p及びqは、各々p+q=4を満たす0以上の整数、rは0〜10の整数である。)
で表される繰り返し単位を少なくとも1つ以上含む感光性ポリイミド樹脂であることを特徴とする、上記の感光性樹脂組成物に関する。
【0020】
さらに好ましい実施態様は、上記(A)成分である感光性ポリイミド樹脂の重量平均分子量が、5000以上、200000以下であることを特徴とする、上記いずれかに記載の感光性樹脂組成物に関する。
【0021】
さらに好ましい実施態様は、上記(A)成分である感光性ポリイミド樹脂のフェノール性水酸基1個あたりの重量平均分子量が、10000以下であることを特徴とする、上記いずれかに記載の感光性樹脂組成物に関する。
【0022】
さらに好ましい実施態様は、上記(B)成分が、1分子内に少なくとも1つ以上のエポキシ基及び1つ以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリル系化合物を含有することを特徴とする、上記いずれかに記載の感光性樹脂組成物に関する。
【0023】
さらに好ましい実施態様は、上記(B)成分が、1分子内に少なくとも2つ以上の水酸基を有するエポキシ(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする、上記いずれかに記載の感光性樹脂組成物に関する。
【0024】
本発明の第2は、上記いずれかに記載の感光性樹脂組成物から作製される感光性ドライフィルムレジストに関する。
【0025】
好ましい実施態様は、現像液として、40℃、1重量%の水酸化ナトリウムを用いるとともに、現像手段としてスプレー現像機を用いた場合に、スプレー圧0.85MPaの条件下での溶解時間が、180秒以下となっていることを特徴とする、上記の感光性ドライフィルムレジストに関する。
【0026】
本発明の第3は、上記いずれかに記載の感光性ドライフィルムレジストを絶縁保護フィルムとして用いるプリント基板に関する。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、(A)水酸基を含有するポリイミド樹脂に、炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性ポリイミド樹脂、(B)(メタ)アクリル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル系化合物、並びに(C)光反応開始剤及び/又は増感剤を含有してなるものであるが、必要に応じて、後述するように(D)その他の成分が含有されていても良い。例えば、感光性ドライフィルムレジストに接着性、難燃性、耐熱性、耐屈曲性等の諸物性を付与するような成分を含有することができる。なお、本発明に係る感光性ドライフィルムレジストは、本発明に係る感光性樹脂組成物から作製されるものである。
【0028】
以下、各成分について詳細に説明する。
【0029】
<(A)感光性ポリイミド樹脂>
本発明に係る感光性樹脂組成物において、(A)成分に感光性ポリイミド樹脂を用いることにより、得られる感光性ドライフィルムレジストに、耐熱性、耐屈曲性、優れた機械特性、電気絶縁性、耐薬品性を付与することができる。特に、水酸基を含有するポリイミド樹脂を用いることにより、水系現像が可能となる。さらに、(A)成分は、ポリイミド樹脂中の水酸基に炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて得られることを特徴とする。
【0030】
本発明の感光性ポリイミド樹脂は、共有結合により感光性基を導入しているため、露光部の硬化性が優れる。更に、既にイミド化されているため、高温でのポストベークを必要とせず、またイミド化時に閉環による脱水反応に伴う体積収縮が少ないため、優れた解像度が得られる。
【0031】
本発明の感光性ポリイミド樹脂は、一般式(2):
【0032】
【化7】
(式中、R1及びR2は、各々同一であっても異なっていても良いが、水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシ基、又は−COOR3(R3は炭素数1〜9のアルキル基を示す。)であり、Xは、−O−、−S−、−SO2−、−C(CH3)2−、−CH2−、−C(CH3)(C2H5)−、又は−C(CF3)2−であり、R4は4価の芳香族テトラカルボン酸二無水和物の残基である。R5は同一であっても異なっていてもよいが、下記群:
【0033】
【化8】
(式中、R6は、炭素−炭素二重結合を有する1価の有機基である。)から選択される化合物を示す。ただし、R5に−OH基は少なくとも1個以上含まれるものとし、更にR6を有する基も少なくとも1個以上含まれるものとする。m及びnは、各々m+n=4を満たす0以上の整数、p及びqは、各々p+q=4を満たす0以上の整数、rは0〜10の整数である。)
で表される繰り返し単位を少なくとも1つ以上含む感光性ポリイミド樹脂であることを特徴とする。
【0034】
(A)成分の感光性ポリイミド樹脂は、分子中にフェノール性水酸基を少なくとも1個以上、および炭素−炭素二重結合を有する感光性基を少なくとも1個以上含んでいるため、アルカリ水溶液への溶解性、および硬化性を向上させることができる。
【0035】
上記感光性ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、5000〜200000であることが好ましく、10000〜100000であることがより好ましい。重量平均分子量が5000未満であると、本発明の感光性樹脂組成物を用いて作成された感光性ドライフィルムレジストにベタツキが生じやすく、さらに硬化後のフィルムの耐屈曲性に劣るという傾向があり、一方、重量平均分子量が200000より大きいと感光性ポリイミド樹脂の溶液の粘度が高くなりすぎ取扱いが難しくなる傾向があり、また作成された感光性ドライフィルムレジストの現像性が低下するという問題がある。なお、重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、例えば、東ソー社製HLC8220GPCにより測定することが可能である。
【0036】
また、上記感光性ポリイミド樹脂のフェノール性水酸基1個あたりの重量平均分子量(以下、酸当量という)は、10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましく、3000以下であることが最も好ましい。上記酸当量が10000を超えると、本発明の感光性樹脂組成物を用いて作成された感光性ドライフィルムレジストの水系現像が困難になる傾向がある。なお、上記感光性ポリイミド樹脂の酸当量は、該感光性ポリイミド樹脂の組成より計算して求めることが可能である。
【0037】
<感光性ポリイミド樹脂の製造方法>
以下、感光性ポリイミド樹脂の製造方法を説明するために、ポリアミド酸の合成方法、ポリアミド酸を脱水閉環してイミド化する方法、さらに、得られた水酸基を含有するポリイミド樹脂に炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて感光性を付与する方法について詳細に説明する。
【0038】
<ポリアミド酸の合成>
上記水酸基を含有するポリイミド樹脂は、その前駆体であるポリアミド酸から得ることができる。このポリアミド酸は、有機溶媒中でジアミンと酸二無水物とを反応させることにより得られる。具体的には、アルゴン、窒素等の不活性雰囲気中において、ジアミンを有機溶媒中に溶解させる、またはスラリー状に拡散させて、ジアミン溶液とする。また、酸二無水物は、有機溶媒に溶解させる、またはスラリー状に拡散させた状態とした後、あるいは固体の状態で、上記ジアミン溶液中に添加すればよい。
【0039】
水酸基を含有するポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸を合成するために用いられるジアミンとしては、特に限定されるものではないが、アルカリ水溶液での現像性の点から、1分子中に1つ以上の水酸基を有するジアミンを原料の少なくとも一部として用いることが好ましい。また、耐熱性や耐薬品性の点から、1分子中に1つ以上の芳香環を有する芳香族系ジアミンを原料の少なくとも一部として用いることが好ましい。特に、1分子中に1つ以上の水酸基を有する芳香族系ジアミンを原料の一部として用いれば、得られる感光性ドライフィルムレジストに、耐熱性とアルカリ水溶液での現像性を付与することができる点から、好ましい。
【0040】
1分子中に1つ以上の水酸基を有する芳香族系ジアミンとしては、2以上のフェノール化合物が、原子又は原子団を介して鎖状に結合しており、かつ両端のフェノール化合物が、ベンゼン環の水素原子の1つがアミノ基で置換されている化合物であることを特徴とする、アミノ基含有フェノール誘導体が挙げられる。
【0041】
特に、次の一般式(1):
【0042】
【化9】
(式中、R1及びR2は、各々同一であっても異なっていても良いが、水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシ基、又は−COOR3(R3は炭素数1〜9のアルキル基を示す。)であり、Xは、−O−、−S−、−SO2−、−C(CH3)2−、−CH2−、−C(CH3)(C2H5)−、又は−C(CF3)2−である。m及びnは、各々m+n=4を満たす0以上の整数であり、p及びqは、各々p+q=4を満たす0以上の整数である。rは0〜10の整数である。)
で表されるアミノ基含有フェノール誘導体をポリイミド樹脂の原料の一部として用いることが好ましい。
【0043】
本発明のアミノ基含有フェノール誘導体としては、アミノ基を含有するフェノール誘導体であれば特に限定されないが、例えば2,2’−ジアミノビスフェノールA、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(群栄化学(株)製、商品名bis−AP−AF)、ビス(2−ヒドロキシ−3−アミノ−5−メチルフェニル)メタン、2,6−ジ{(2−ヒドロキシ−3−アミノ−5−メチルフェニル)メチル}−4−メチルフェノール、2,6−ジ{(2−ヒドロキシ−3−アミノ−5−メチルフェニル)メチル}−4−ヒドロキシ安息香酸プロピル等の化合物を挙げることができる。
【0044】
特に好ましいアミノ基含有フェノール誘導体の構造式の一部を以下に示す。これらのジアミンを感光性ポリイミド樹脂の原料の一部として使用することで、得られる水酸基を含有するポリイミド樹脂の酸当量が低くなり、アルカリ水溶液への現像性を向上させることができる。
【0045】
【化10】
上記水酸基を有するジアミン以外に、他のジアミンを感光性ポリイミド樹脂の原料の一部として同時に用いてもよい。例えば、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、シロキサン構造の両末端にアミノ基を含有する反応性シリコーン(以下、シリコンジアミンと称する)、[ビス(4−アミノ−3−カルボキシ)フェニル]メタンなどを挙げることができる。特に、フィルムの弾性率を下げることができるという点から、シリコンジアミンを使用することが好ましい。上記ジアミンは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0046】
また、ポリアミド酸を合成するために用いられる酸二無水物としては、カルボン酸二無水物であれば特に限定されないが、耐熱性を向上させる点から、芳香環を1〜4個有する酸二無水物または脂環式の酸二無水物を用いることが好ましい。また、有機溶媒への溶解性が高いポリイミド樹脂を得るためには、芳香環を2個以上有する酸二無水物を少なくとも一部用いることが好ましく、芳香環を4個以上有する酸二無水物を少なくとも一部として用いることがより好ましい。
【0047】
上記の酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエ−ト)−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。上記酸二無水物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0048】
上記酸二無水物のうち、合成の容易さ、得られるポリイミド樹脂の有機溶媒への溶解性の観点から、2,2’−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエ−ト−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物等の芳香環を2個以上有する酸二無水物を一部用いることが好ましい。
【0049】
上記ジアミンと酸二無水物とを用いてポリアミド酸を合成する場合、上記ジアミンと酸二無水物とを、それぞれ少なくとも1種類ずつ用いて反応を行えばよい。すなわち、例えば、アミノ基含有フェノール誘導体(水酸基を含有するジアミン)を少なくとも一部として含むジアミン成分と、上記酸二無水物とを用いて、上述したように、有機溶媒中で重合反応を行うことにより、水酸基を分子鎖中に1つ以上含有するポリアミド酸を得ることができる。
【0050】
このとき、1種のジアミンと1種の酸二無水物が実質上等モルであれば、酸二無水物成分1種及びジアミン成分1種のポリアミド酸になる。また、2種以上の酸二無水物成分及び2種以上のジアミン成分を用いる場合、複数のジアミン成分全量のモル比と複数の酸二無水物成分全量のモル比とを、実質上等モルに調整しておけば、ポリアミド酸共重合体を任意に得ることもできる。
【0051】
上記ジアミンと酸二無水物の反応(ポリアミド酸の合成反応)の温度条件は、特に限定されないが、80℃以下であることが好ましく、より好ましくは0〜50℃がよい。80℃を超えると、ポリアミド酸が分解する恐れがあり、逆に0℃以下だと、重合反応の進行が遅くなる。また、反応時間は10分〜20時間の範囲で任意に設定すればよい。
【0052】
さらに、上記ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒としては、有機極性溶媒であれば特に限定されるものではない。しかしながら、上記ジアミンと酸二無水物との反応が進行するにつれてポリアミド酸が生成し、反応液の粘度が上昇する。また、後述するように、ポリアミド酸を合成して得られるポリアミド酸溶液を、減圧下で加熱して、有機溶媒の除去とイミド化を同時に行うことができる。そのため、上記有機溶媒としては、ポリアミド酸を溶解でき、かつ、なるべく沸点の低いものを選択することが工程上有利である。
【0053】
具体的には、ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドンやN−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒等を挙げることができる。
【0054】
<ポリアミド酸のイミド化>
次に、上記ポリアミド酸を用いて、ポリイミド樹脂を得るために、上記ポリアミド酸をイミド化する方法について説明する。イミド化は、ポリアミド酸を脱水閉環することによって行われる。この脱水閉環は、共沸溶媒を用いた共沸法、熱的手法または化学的手法によって行うことができる。
【0055】
共沸溶媒を用いた共沸法は、ポリアミド酸溶液にトルエン・キシレン等の水と共沸する溶媒を加え、170〜200℃に昇温して、脱水閉環により生成してくる水を積極的に系外へ除去しながら、1時間〜5時間程度反応させればよい。反応終了後、メタノール等のアルコール溶媒中にて沈殿させ、必要に応じてアルコール溶媒にて洗浄を行ったのち、乾燥を行ってポリイミド樹脂を得ることができる。
【0056】
熱的手法による脱水閉環は、ポリアミド酸溶液を加熱して行えばよい。あるいは、ガラス板、金属板、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のフィルム状支持体に、ポリアミド酸溶液を流延または塗布した後、80℃〜300℃の範囲内で熱処理を行えばよい。さらに、フッ素系樹脂によるコーティング等の離型処理を施した容器に直接ポリアミド酸溶液を入れ、減圧下で加熱乾燥することによって、ポリアミド酸の脱水閉環を行うこともできる。このような熱的手法によるポリアミド酸の脱水閉環により、ポリイミド樹脂を得ることができる。
【0057】
なお、上記各処理の加熱時間は、脱水閉環を行うポリアミド酸溶液の処理量や加熱温度により異なるが、一般的には、処理温度が最高温度に達してから1分〜5時間の範囲で行うことが好ましい。
【0058】
一方、化学的手法による脱水閉環は、上記ポリアミド酸溶液に、脱水剤と、必要に応じて触媒として、触媒量の第3級アミンとを加えて、イミド化を行えばよい。イミド化の温度は20℃〜150℃であることが好ましい。150℃を上回ると分子量の低下が起こる場合があり、20℃より低い場合はイミド化に時間がかかりすぎる場合がある。
【0059】
脱水閉環剤および/または触媒を使用した化学的手法にて用いた上記脱水剤としては、一般的には、無水酢酸、無水プロピオン酸等の酸無水物が用いられる。また、上記第3級アミンとしては、ピリジン、イソキノリン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、イミダゾ−ル、ピコリン等を用いればよい。
【0060】
なお、本発明のイミドはフェノール性水酸基を有するため、脱水剤として加える酸無水物と水酸基との反応が考えられるため、用いる酸無水物は化学量論的にイミド化に必要な最低限の量にすることが好ましい。
【0061】
<ポリイミド樹脂中の水酸基への感光性基の導入>
上記のような処方によって得られた水酸基を含有するポリイミド樹脂に、さらに感光性を付与するために、炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させることが好ましい。炭素−炭素二重結合を有する化合物は、ポリイミド樹脂中のフェノール性水酸基と反応するものであれば特に限定されないが、炭素−炭素二重結合を有するエポキシ化合物、(メタ)アクリル酸無水物、及び臭化アリル等のハロゲン化アリルが挙げられる。
【0062】
炭素−炭素二重結合を有するエポキシ化合物を反応させる場合は、不活性溶媒中、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基存在下、水酸基を含有するポリイミド樹脂と、炭素−炭素二重結合を有するエポキシ化合物を反応させることが例示され、目的とする感光性ポリイミド樹脂を得ることができる。
【0063】
上記反応温度は、エポキシ基と水酸基が反応する、40℃以上、130℃以下の温度で行うことが好ましい。特に炭素−炭素二重結合が熱により重合等の反応を起こさない程度の温度で反応させることが望ましい。具体的に、より好ましくは40℃以上、100℃以下、さらに好ましくは50℃以上、80℃以下である。反応時間は、適宜選択できるが、一般的には1時間程度から20時間程度である。
【0064】
上記反応により得られる反応溶液は、その目的に応じ、反応終了後の溶液状態のままで用いても良いし、メタノール等のアルコール溶媒中にて沈殿させ、必要に応じてアルコール溶媒にて洗浄を行ってもよい。
【0065】
上記炭素−炭素二重結合を有するエポキシ化合物は、エポキシ基と前記炭素−炭素二重結合を同一分子内に有するものであれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルビニルエーテル等を具体的に例示することができる。中でも、安価で容易に入手でき、また良好な反応性を有する点から、メタクリル酸グリシジルが特に好ましい。
【0066】
(メタ)アクリル酸無水物を反応させる場合は、不活性溶媒中、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基存在下、ポリイミド樹脂中の水酸基を、(メタ)アクリル酸無水物と縮合させることが例示され、目的とする感光性ポリイミド樹脂を得ることができる。
【0067】
上記反応温度は、ポリイミド樹脂中の水酸基のアシル化が可能な0℃以上、100℃以下の温度で行うことが好ましい。特に炭素−炭素二重結合が熱により重合等の反応を起こさない程度の温度で反応させることが望ましい。具体的に、より好ましくは10℃以上、100℃以下、さらに好ましくは20℃以上、80℃以下である。反応時間は、適宜選択できるが、一般的には1時間程度から20時間程度である。
【0068】
上記反応により得られる反応溶液は、反応によって生成する(メタ)アクリル酸を除去するために、メタノール等のアルコール溶媒中にて沈殿させ、必要に応じてアルコール溶媒にて洗浄を行うことが好ましい。
【0069】
ハロゲン化アリルを反応させる場合は、不活性溶媒中、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基存在下、水酸基を含有するポリイミド樹脂と、ハロゲン化アリルを反応させることが例示され、目的とする感光性ポリイミド樹脂を得ることができる。
【0070】
上記反応温度は、反応可能な0℃以上、100℃以下の温度で行うことが好ましい。特に炭素−炭素二重結合が熱により重合等の反応を起こさない程度の温度で反応させることが望ましい。具体的に、より好ましくは0℃以上、80℃以下、さらに好ましくは20℃以上、50℃以下である。反応時間は、適宜選択できるが、一般的には1時間程度から20時間程度である。
【0071】
上記反応により得られる反応溶液は、メタノール等のアルコール溶媒中にて沈殿させ、必要に応じてアルコール溶媒にて洗浄を行うことが好ましい。
【0072】
いずれの反応においても、感光性基を導入した後も、アルカリ水溶液への現像性を維持するために、ポリイミド樹脂中の水酸基をすべて反応させるのではなく、水酸基が残るように、反応させる炭素−炭素二重結合を有する化合物の当量数を調整することが好ましい。具体的には、反応後の感光性ポリイミド樹脂の酸当量が10000以下になるように調整するのが好ましい。
【0073】
また、反応中に炭素−炭素二重結合が重合を起こすことを防止するために、重合禁止剤を加えることが好ましい。重合禁止剤としては、p−メトキシフェノール等のハイドロキノン誘導体、フェノチアジン、N−ニトロヒドロキシルアミン塩類を例示することができる。
【0074】
以上により、水酸基を含有するポリイミド樹脂に、炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性ポリイミド樹脂を製造することができる。
【0075】
次に(B)成分である(メタ)アクリル系化合物について説明する。感光性樹脂組成物に(B)成分を含有することにより、作製される感光性ドライフィルムレジストの熱加工時での粘弾性を下げ、熱ラミネート時の流動性を付与することができる。すなわち、比較的低温での熱ラミネートが可能となり、回路の凹凸を埋め込むことができる。
【0076】
<(B)(メタ)アクリル系化合物>
本発明において(メタ)アクリル系化合物とは、(メタ)アクリル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる化合物を示す。なお、本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルを指すものとする。
【0077】
上記(メタ)アクリル系化合物は、1種類のみを用いてもよく、また、2種類以上を組み合わせてもよい。本発明における感光性樹脂組成物に含有される(メタ)アクリル系化合物の総重量は、(A)成分:感光性ポリイミド樹脂100重量部に対して、1〜100重量部の範囲内で用いることが好ましく、1〜80重量部の範囲内で用いることがより好ましく、1〜50重量部の範囲内で用いることがさらに好ましい。
【0078】
(A)成分である感光性ポリイミド樹脂100重量部に対して、(B)成分として100重量部を超える(メタ)アクリル系化合物を用いた場合、得られる感光性ドライフィルムレジストの耐熱性が低下し、ラミネート処理時に、(メタ)アクリル系化合物がしみ出してしまう可能性がある。
【0079】
本発明の感光性樹脂組成物には、(B)成分として、とくに1分子中に少なくとも1つ以上のエポキシ基及び1つ以上の(メタ)アクリル基を含有する(メタ)アクリル系化合物を含有することが好ましい。このような(メタ)アクリル系化合物を用いることにより、得られる感光性ドライフィルムレジストの耐加水分解性及び銅箔への接着強度を向上させることが可能となる。
【0080】
1分子中に少なくとも1つ以上のエポキシ基及び1つ以上の(メタ)アクリル基を含有する(メタ)アクリル系化合物しては、特に限定されないが、例えば、グリシジルメタクリレート等のグリシジル化合物、NKオリゴEA−1010,EA−6310(新中村化学製)等のエポキシアクリレートを挙げることができる。
【0081】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、(B)成分として、1分子中に少なくとも2つ以上の水酸基を含有するエポキシ(メタ)アクリレートを含有することが好ましく、さらには1分子中に少なくとも4つ以上の水酸基を含有するエポキシ(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。このようなエポキシ(メタ)アクリレートを用いることにより、得られる感光性ドライフィルムレジストのアルカリ水溶液への溶解性が向上し、現像時間の短縮化が実現できる。
【0082】
1分子中に少なくとも2つ以上の水酸基を含有するエポキシ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、リポキシSP−2600(昭和高分子製)、NKオリゴEA−1020、 EA−6340(新中村化学製)、カラヤッドR−280、 R−190(日本化薬製)、Ebecryl600、Ebecryl3700(ダイセルUCB)等のビスフェノールAタイプのエポキシアクリレート、Ebecryl3200、 Ebecryl3500、Ebecryl3701、Ebecryl3703(ダイセルUCB)等の変性ビスフェノールAタイプのエポキシアクリレート、NKオリゴEA−6320、EA−6340(新中村化学製)等のフェノールノボラックエポキシアクリレート、カラヤッドR−167、 MAX−2104(日本化薬製)、デナコールアクリレートDA−212(ナガセ化成)等の変性1,6−へキサンジオールジアクリレート、デナコールアクリレートDA−721(ナガセ化成製)等の変性フタル酸ジアクリレート、NKオリゴEA−1020(新中村化学製)等のクレゾールノボラックエポキシアクリレート等を挙げることができる。
【0083】
本発明に用いる感光性樹脂組成物には、(B)成分として、上記のエポキシ(メタ)アクリレート、1分子中に少なくとも1つ以上のエポキシ基及び1つ以上の(メタ)アクリル基を含有する(メタ)アクリル系化合物のほかに、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、それ以外の(メタ)アクリル化合物を用いることができる。
【0084】
ポリエステル(メタ)アクリレートを用いることにより、作製される感光性ドライフィルムレジストに柔軟性を付与することができる。ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、アロニックスM−5300、M−6100、M−7100(東亞合成製)等を挙げることができる。
【0085】
ウレタン(メタ)アクリレートを用いることにより、作製される感光性ドライフィルムレジストに柔軟性を付与することができる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、アロニックスM−1100、M−1310(東亞合成製)、カラヤッドUX−4101(日本化薬製)等を挙げることができる。
【0086】
イミド(メタ)アクリレートを用いることにより、作製される感光性ドライフィルムレジストを貼り合わせる基材(例えば、ポリイミドフィルム、銅箔等)への密着性を向上させることができる。イミド(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、アロニックスTO−1534、TO−1429、TO−1428(東亞合成製)を挙げることができる。
【0087】
さらに、上記に示した以外の(メタ)アクリル化合物としては、特に限定されないが、光照射による架橋密度を向上するためには、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する多官能の(メタ)アクリル化合物を用いることが望ましい。また、得られる感光性ドライフィルムレジストに耐熱性を付与するために、1分子中に芳香環及び/又は複素環を少なくとも1つ有する化合物を用いることが好ましい。
【0088】
1分子中に芳香環及び/又は複素環を少なくとも1つ有し、かつ炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ有する(メタ)アクリル化合物としては、特に限定されないが、例えば、アロニックスM−210、M−211B(東亞合成製)、NKエステルABE−300、A−BPE−4、A−BPE−10、A−BPE−20、A−BPE−30、BPE−100、BPE−200(新中村化学製)等のビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート、アロニックスM−208(東亞合成製)等のビスフェノールF EO変性(n=2〜20)ジ(メタ)アクリレート、デナコールアクリレートDA−250(ナガセ化成製)、ビスコート#540(大阪有機化学工業製)等のビスフェノールA PO変性(n=2〜20)ジ(メタ)アクリレート、デナコールアクリレートDA−721(ナガセ化成製)等のフタル酸PO変性ジアクリレート等を挙げることができる。さらに、芳香環は含まないが、アロニックスM−215(東亞合成製)等のイソシアヌル酸EO変性ジアクリレートやアロニックスM−315(東亞合成製)、NKエステルA−9300(新中村化学製)等のイソシアヌル酸EO 変性トリアクリレートなどを挙げることができる。なお、上記EO変性とは、エチレンオキサイド変性部位を有することを示し、PO変性とは、プロピレンオキサイド変性部位を有することを示す。
【0089】
上記(メタ)アクリル系化合物のうち、1分子内のエチレンオキサイド変性(EO変性)部位の繰り返し単位(―(CH2CH2O)−)の数、または、1分子内のプロピレンオキサイド変性(PO変性)部位の繰り返し単位(―(CH(CH3)CH2O)−)の数が10以上である(メタ)アクリル系化合物を用いることが特に好ましい。上記の繰り返し単位を10以上有することにより、作製される感光性ドライフィルムレジストにラミネート処理時の熱流動性を付与することができ、さらにアルカリ水溶液への溶解性を向上することもできる。
【0090】
上記のようなEO変性部位の繰り返し単位、または、PO変性部位の繰り返し単位の数を10以上有してなる(メタ)アクリル化合物としては、特に限定されないが、例えば、NKエステルA−BPE−10、A−BPE−20、A−BPE−30、BPE−100、BPE−200(新中村化学製)等のビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF EO変性(n=10〜20)ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA PO変性(n=10〜20)ジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0091】
このようなEO変性部位の繰り返し単位、または、PO変性部位の繰り返し単位の数を10以上有してなる(メタ)アクリル化合物は、本発明の感光性樹脂組成物に含有されるすべての(メタ)アクリル系化合物の総重量に対して、少なくとも10重量部含有されていることが好ましく、少なくとも20重量部以上含有されていることがより好ましい。
【0092】
<(C)光反応開始剤・増感剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、(C)成分として、光反応開始剤及び/又は増感剤を含有する。光反応開始剤及び/又は増感剤を添加してなる感光性ドライフィルムレジストを露光した場合に、露光領域にて架橋反応や重合反応を促進することができる。これにより、露光領域と未露光領域とで、感光性ドライフィルムレジストのアルカリ水溶液への溶解性を十分に異なるようにすることができ、それゆえに、感光性ドライフィルムレジスト上にパターンを好適に現像することが可能になる。
【0093】
上記光反応開始剤としては、ラジカル発生剤、光カチオン発生剤、光塩基発生剤、光酸発生剤等を挙げることができる。
【0094】
上記ラジカル発生剤としては、特に限定されないが、g線程度の長波長の光によりラジカルを発生するものが好ましく、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンなどのケトン化合物、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド化合物、ビス(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等のチタノセン化合物を挙げることができる。とくに、感度の高いホスフィンオキサイド化合物やチタノセン化合物を用いることが好ましい。
【0095】
また、上記光カチオン発生剤としては、例えば、ジメトキシアントラキノンスルフォン酸のジフェニルヨードニウム塩等のジフェニルヨードニウム塩類、トリフェニルスルフォニウム塩類、ピリリニウム塩類、トリフェニルオニウム塩類、ジアゾニウム塩類等を挙げることができる。なお上記塩類の他、カチオン硬化性の高い脂環式エポキシやビニルエーテル化合物を混合することが好ましい。
【0096】
さらに、上記光塩基発生剤としては、ニトロベンジルアルコールやジニトロベンジルアルコールとイソシアナートの反応により得られるベンジルアルコール−ウレタン化合物、ニトロ−1−フェニルエチルアルコールやジニトロ−1−フェニルエチルアルコールとイソシアナートの反応により得られるフェニルアルコール−ウレタン化合物、ジメトキシ−2−フェニル−2−プロパノールとイソシアナートの反応により得られるプロパノ−ル−ウレタン化合物等を挙げることができる。
【0097】
また、光酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルフォニウム塩、オニウム塩等のスルホン酸を発生させる化合物、ナフトキノンジアジド等のカルボン酸を発生させる化合物を挙げることができる。あるいは、ジアゾニウム塩や、ビス(トリクロロメチル)トリアジン類等の化合物は、光の照射によりスルホン基を生成させることができるので、これらの化合物も好ましく用いることができる。
【0098】
一方、上記増感剤としては、特に限定されないが、ミヒラケトン、ビス−4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン、4−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン等を挙げることができる。
【0099】
上記光反応開始剤及び/又は増感剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0100】
上記光反応開始剤及び/又は増感剤の使用量は、上記(A)感光性ポリイミド樹脂及び(B)(メタ)アクリル系化合物の総重量100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内であることが好ましく、0.01〜10重量部の範囲内であることがより好ましい。上記光反応開始剤及び/又は増感剤の使用量が感光性ポリイミド樹脂と(メタ)アクリル系化合物との総重量100重量部に対して、0.001重量部未満であると、あるいは10重量部を超えると、増感効果が得られず、現像性に対して悪い影響を及ぼす可能性がある。
【0101】
また、ラジカル発生剤と増感剤とを組み合わせて用いることもできる。特に、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のパーオキサイドと3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンとの組み合わせが好ましい。
【0102】
<(D)その他の成分>
本発明の感光性樹脂組成物には、上記(A)感光性ポリイミド樹脂、(B)(メタ)アクリル系化合物、並びに(C)光反応開始剤及び/又は増感剤以外に、(D)その他の成分が含有されていてもよい。その他の成分としては、エポキシ樹脂、難燃剤、硬化促進剤及び/又は硬化剤を挙げることができる。
【0103】
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂を用いることにより、作製される感光性ドライフィルムレジストに銅箔やポリイミドフィルム等への接着性を向上することができる。
【0104】
上記エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、製品名エピコート828、834、1001、1002、1003、1004、1005、1007、1010、1100L(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、製品名ESCN−220L、220F、220H、220HH、180H65(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、製品名EPPN−502H(日本化薬(株)製)等のトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、製品名ESN−375等のナフタレンアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、製品名ESN−185(新日鐵化学(株))等のノボラック型エポキシ樹脂、製品名YX4000H等のビフェノール型エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0105】
また、上記の他、ビスフェノールAグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ノボラックグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、芳香族型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等であってもよい。
【0106】
上記エポキシ樹脂のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いればよい。なお、上記エポキシ樹脂は、(A)成分100重量部に対し、必要に応じて1〜100重量部の範囲内で用いることが好ましく、1〜50重量部の範囲内で用いることがより好ましく、2〜30重量部の範囲内で用いることが特に好ましい。上記エポキシ樹脂が1重量部未満であると、得られる感光性ドライフィルムレジストの接着性が低下する傾向があり、一方、100重量部を超えると耐熱性及び耐屈曲性の低下を引き起こす可能性がある。
【0107】
<難燃剤>
本発明の感光性樹脂組成物には、硬化後の感光性ドライフィルムレジストに難燃性を付与するために、難燃剤を含有してもよい。上記難燃剤としては、特に限定されないが、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスフィンオキシド等のリン系化合物、リン−窒素二重結合をもつホスファゼン化合物、含臭素(メタ)アクリル化合物等の含臭素有機化合物、芳香族環の含有率が高いシリコーン化合物を挙げることができる。これら難燃剤のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
上記難燃剤の使用量は、上記(A)成分である感光性ポリイミド樹脂及び(B)成分である(メタ)アクリル系化合物の総重量100重量部に対し、1〜100重量部の範囲内とすることが好ましく、1〜50重量部の範囲内とすることがより好ましく、1〜40重量部の範囲内とすることが特に好ましい。
【0109】
上記難燃剤が、感光性ポリイミド樹脂及び(メタ)アクリル系化合物の総重量100重量部に対して1重量部未満であると、十分な難燃効果が得られない場合がある。一方、100重量部を超えると、後述するBステージ状態の感光性ドライフィルムレジストにベタツキが見られたり、熱圧着時に樹脂がしみ出しやすくなったりする場合があり、さらに硬化物の物性に悪影響を与える場合があるために好ましくない。
【0110】
<硬化促進剤及び/又は硬化剤>
感光性樹脂組成物の材料としてエポキシ樹脂を用いた場合、作製される感光性ドライフィルムレジストの硬化を効率良く行うために、感光性樹脂組成物に硬化促進剤及び/又は硬化剤を添加してもよい。このような硬化促進剤及び/又は硬化剤としては特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂の硬化を効率良く行うためには、イミダゾ−ル系化合物、酸無水物、第3級アミン類、ヒドラジン類、芳香族アミン類、フェノール類、トリフェニルホスフィン類、有機過酸化物などを挙げることができる。これらの硬化促進剤及び/又は硬化剤のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いればよい。
【0111】
上記硬化促進剤及び/又は硬化剤の使用量は、(A)成分である感光性ポリイミド樹脂100重量部に対し0.1〜20重量部の範囲内であることが好ましく、1〜20重量部の範囲内であることがより好ましく、0.5〜15重量部の範囲内であることが特に好ましい。上記硬化促進剤及び/又は硬化剤が感光性ポリイミド樹脂100重量部に対して0.1重量部未満であると、エポキシ樹脂の硬化が十分に行われず、逆に20重量部を超えると耐熱性の低下を引き起こす可能性がある。
【0112】
<感光性樹脂組成物の調製方法と感光性ドライフィルムレジストの製造方法>続いて、感光性樹脂組成物の調製方法及び感光性ドライフィルムレジストの作製方法について説明する。感光性ドライフィルムレジストは、感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を支持体フィルム上に均一に塗布・乾燥して作製される。
【0113】
<感光性樹脂組成物の調製方法>
まず、本発明の感光性樹脂組成物の調製方法について説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)感光性ポリイミド樹脂、(B)(メタ)アクリル系化合物、(C)光反応開始剤及び/又は増感剤、並びに必要に応じて(D)その他の成分をある割合で混合したものであり、それを有機溶媒に均一に溶解させた溶液を感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液という。この有機溶媒としては、感光性樹脂組成物に含有される成分を溶解することができる有機溶媒であれば、特に限定されるものではない。上記有機溶媒としては、例えば、ジオキソラン、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール系溶媒等を挙げることができる。これらの有機溶媒は1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、後の工程にて、上記有機溶媒の除去を行うので、上記感光性樹脂組成物に含有される成分を溶解し、できるだけ沸点の低いものを選択することが、製造工程上有利である。
【0114】
<感光性ドライフィルムレジストの製造方法>
続いて、上記の感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を支持体フィルム上に均一に塗布した後、加熱及び/又は熱風吹き付けを行う。これによって、上記有機溶媒を除去し、感光性樹脂組成物がフィルム状となった感光性ドライフィルムレジストを得る。このように形成された感光性ドライフィルムレジストは、感光性樹脂組成物を半硬化状態(Bステージとも言う。)で保ったものである。それゆえ、熱ラミネート処理等の熱圧着処理を行う場合には適度な流動性を持ち、プリント配線板のパターン回路の埋め込みを好適に行うことができる。また、パターン回路を埋め込んだ後、露光処理、熱圧着処理、加熱キュアを行うことによって、完全に硬化させることができる。
【0115】
上記加熱及び/又は熱風吹き付けを行うことによって、感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を乾燥する時の温度は、感光性樹脂組成物に含有される(メタ)アクリル基、エポキシ基などの硬化性基が反応しない程度の温度であればよい。具体的には、120℃以下であることが好ましく、100℃以下であることが特に望ましい。また、乾燥時間は有機溶媒を除去することが可能な範囲内で、より短い時間とすることが好ましい。
【0116】
上記支持体フィルムの材料としては、得に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルムなど、通常市販されている各種のフィルムが使用可能である。上記支持体フィルムのうち、ある程度の耐熱性を有し、比較的安価に手に入る点から、PETフィルムが多く用いられる。なお、支持体フィルムの感光性ドライフィルムレジストとの接合面については、密着性と剥離性を向上させるために表面処理されているものを用いてもよい。
【0117】
また、支持体フィルムの厚みは、特に制限されないが、5〜50μmの範囲内であることが好ましく、10〜30μmの範囲内であることがより好ましい。支持体フィルムの厚みが5μm未満であると、支持体フィルムにしわが生じて、操作性が低下する傾向がある。また、支持体フィルムの厚みが50μmを超えると、感光性ドライフィルムレジストを巻き取り難くなるという問題が生じる。
【0118】
さらに、感光性樹脂組成物を支持体フィルムに塗布し乾燥して作製した感光性ドライフィルムレジストの上には、保護フィルムを積層することが好ましい。空気中のゴミやチリが付着することを防ぎ感光性ドライフィルムレジストの乾燥による品質の劣化を防ぐことができる。
【0119】
従って、保護フィルムは、感光性ドライフィルムレジスト面に10℃〜50℃の温度でラミネートして積層することが好ましい。なお、ラミネート処理時の温度が50℃よりも高くなると、保護フィルムの熱膨張を招き、ラミネート処理後の保護フィルムにしわやカールが生じる場合がある。
【0120】
上記保護フィルムは使用時には剥離するため、保護フィルムと感光性ドライフィルムレジストとの接合面は、保管時には適度な密着性を有し、かつ剥離性に優れていることが好ましい。
【0121】
保護フィルムの材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンフィルム(PEフィルム)、ポリエチレンビニルアルコールフィルム(EVAフィルム)、「ポリエチレンとエチレンビニルアルコールの共重合体フィルム」(以下(PE+EVA)共重合体フィルムと略す)、「PEフィルムと(PE+EVA)共重合体フィルムの貼り合せ体」、もしくは「(PE+EVA)共重合体とポリエチレンとの同時押し出し製法によるフィルム」(片面がPEフィルム面であり、もう片面が(PE+EVA)共重合体フィルム面であるフィルムとなる)等を挙げることができる。
【0122】
上記PEフィルムは安価であり、表面の滑り性に優れているという長所がある。また、(PE+EVA)共重合体フィルムは、感光性ドライフィルムレジストへの適度な密着性と剥離性とを備えている。このような保護フィルムを用いることにより、保護フィルム、感光性ドライフィルムレジスト、支持体フィルムの3層を有する三層構造シートをロール状に巻き取った場合に、その表面の滑り性を向上することができる。
【0123】
<プリント配線板の作製>
本発明にかかる感光性ドライフィルムレジストを絶縁保護層として形成してなるプリント配線板を作製する手法について、説明する。プリント配線板として、パターン回路が形成されてなる銅箔(以下、回路付きCCLとも言う。)を用いる場合を例に挙げて説明するが、多層のプリント配線板を形成する場合にも、同様の手法により層間絶縁層を形成することができる。
【0124】
まず、上記にて説明した保護フィルム、感光性ドライフィルムレジスト、支持体フィルムを有してなる三層構造シートから保護フィルムを剥離する。以下では、保護フィルムが剥離されたものを支持体フィルム付き感光性ドライフィルムレジストと記載する。そして、感光性ドライフィルムレジストと回路付きCCLとが対向するように、該回路付きCCLを、支持体フィルム付き感光性ドライフィルムレジストにて覆い、熱圧着によって貼り合せる。この熱圧着による貼り合わせは、熱プレス処理、ラミネート処理(熱ラミネート処理)、熱ロールラミネート処理等によって行えばよく、特に限定されるものではない。
【0125】
上記貼り合わせを、熱ラミネート処理、熱ロールラミネート処理(以下、ラミネート処理と記載)によって行う場合、処理温度は、ラミネート処理が可能である下限の温度(以下、圧着可能温度)以上であればよい。具体的には、上記圧着可能温度は、50〜150℃の範囲内であることが好ましく、60〜120℃の範囲内であることがより好ましく、特に80〜120℃の範囲内であることが好ましい。
【0126】
上記処理温度が150℃を超えると、ラミネート処理時に、感光性ドライフィルムレジストに含まれる感光性反応基の架橋反応が生じ、感光性ドライフィルムレジストの硬化が進行する場合がある。一方、上記処理温度が50℃未満であると、感光性ドライフィルムレジストの流動性が低く、パターン回路を埋め込むことが困難となる。さらに、銅回路付きCCLの銅回路や該銅回路付きCCLのベースフィルムとの接着性が低下する場合がある。
【0127】
上記の熱圧着処理によって、回路付きCCL上に感光性ドライフィルムレジストが積層され、さらに支持体フィルムが積層されたサンプルが得られる。次いで、この貼り合わせサンプルについてパターン露光及び現像を行う。パターン露光及び現像に際しては、上記貼り合わせサンプルの支持体フィルム上にフォトマスクパターンを配置し、該フォトマスクを介して露光処理を行う。その後、支持体フィルムを剥離して現像処理を行うことにより、フォトマスクパターンに応じた穴(ビア)が形成される。
【0128】
なお、上記支持体フィルムは、露光処理後に剥離しているが、回路付きCCL上に支持体フィルム付き感光性ドライフィルムレジストが貼り合わせられた後に、すなわち、露光処理を行う前に剥離してもよい。感光性ドライフィルムレジストを保護する点からは、露光処理が完了した後に剥離することが好ましい。
【0129】
ここで露光に用いる光源としては、300〜430nmの光を有効に放射する光源が好ましい。この理由は、感光性ドライフィルムレジストに含有される光反応開始剤が、通常450nm以下の光を吸収して機能するためである。
【0130】
また、上記現像処理に用いる現像液としては、塩基性化合物が溶解した塩基性溶液を用いればよい。塩基性化合物を溶解させる溶媒としては、上記塩基性化合物を溶解することができる溶媒であれば特に限定されないが、環境問題等の観点から、水を使用することが特に好ましい。
【0131】
上記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩や、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アミン化合物等を挙げることができる。上記塩基性化合物は1種を用いてもよいし、2種以上の化合物を用いてもよい。
【0132】
上記塩基性溶液に含有される塩基性化合物の濃度は、0.1〜10重量%の範囲内であることが好ましいが、感光性ドライフィルムレジストの耐アルカリ性の点から、0.1〜5重量%の範囲内とすることがより好ましい。
【0133】
なお、現像処理の方法としては、特に限定されないが、塩基性溶液中に現像サンプルを入れて攪拌する方法や、現像液をスプレー状にして現像サンプルに噴射する方法等が挙げられる。
【0134】
本発明においては、特に、液温40℃に調整した1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を現像液に用い、スプレー現像機を用いて行う現像処理が好ましい。ここで、スプレー現像機とは、現像液をスプレー状にしてサンプルに噴射する装置であれば特に限定されない。
【0135】
ここで、感光性ドライフィルムレジストのパターンが描けるまでの現像時間は、パターンが描ける時間であればよいが、180秒以下の時間で現像できることが好ましく、90秒以下の時間で現像できることがより好ましく、60秒以下の時間で現像できることが最も好ましい。現像時間が180秒を超えると生産性の点から好ましくない。
【0136】
ここで、現像時間の目安として、Bステージ(半硬化)状態の感光性ドライフィルムレジストの溶解時間を測定する方法がある。具体的には、感光性ドライフィルムレジストを銅箔光沢面に貼り合わせたサンプルを、未露光の状態で、1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液(液温40℃)を現像液として、スプレー圧0.85MPaで、スプレー現像処理を行うという方法である。このスプレー現像処理により、感光性ドライフィルムレジストが180秒以下の時間で溶解して除去されることが好ましい。感光性ドライフィルムレジストが溶解除去されるまでの時間が180秒を超えると、作業性が低下する。
【0137】
上記のように露光・現像処理が施された後、感光性ドライフィルムレジストに対して、加熱キュアを行うことにより、感光性ドライフィルムレジストが完全に硬化する。これにより、硬化した感光性ドライフィルムレジストは、プリント配線板の絶縁保護膜となる。
【0138】
また、多層のプリント配線板を形成する場合には、プリント配線板の保護層を層間絶縁層とし、該層間絶縁層上に、さらにスパッタリングや鍍金、もしくは銅箔との貼り合わせ等を行った後、パターン回路を形成し、上記のように感光性ドライフィルムレジストをラミネートすればよい。これにより、多層のプリント配線板を作製することができる。
【0139】
なお、本実施の形態では、感光性ドライフィルムレジストを、プリント配線板の絶縁保護材料または層間絶縁材料として用いる場合について説明したが、上記の用途以外に用いることも可能である。
【0140】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。感光性樹脂組成物の調製及び感光性ドライフィルムレジストの具体的な製造例、及びその物性の評価は次のようにして行った。
【0141】
<感光性ドライフィルムレジストの製造例>
(1)感光性樹脂組成物の調製
ジオキソランに対して、(A)感光性ポリイミド樹脂を溶解させ、その固形分重量%(Sc)=30%として、感光性ポリイミド樹脂のワニスを調製した。この感光性ポリイミド樹脂のワニスに対して、(B)(メタ)アクリル系化合物、(C)光反応開始剤及び/又は増感剤、並びに必要に応じて(D)その他の成分を混合・攪拌し、感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を調製した。
【0142】
(2)感光性ドライフィルムレジストの作製
上記の溶液状の感光性樹脂組成物を、乾燥後の厚み(感光性ドライフィルムレジストの厚み)が20〜25μmになるように支持体フィルムに塗布した。支持体フィルムとしては、PETフィルム(東レ(株)製ルミラー、厚み25μm)を用いた。その後、支持体フィルム上の塗布層を100℃・2分間の条件で乾燥することによって、ジオキソランを除去した。これにより、感光性ドライフィルムレジスト/PETフィルム(支持体フィルム)からなる2層構造シートを得た。なお、感光性ドライフィルムレジスト層はBステージ状態にある。
【0143】
続いて、上記2層構造シートにおける感光性ドライフィルムレジスト層の上に、ポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製、GF−1、厚み40μm)をロール温度20℃、75000Pa・mの条件でロールラミネートして、保護フィルム/感光性ドライフィルムレジスト/PETフィルムの三層を有する3層構造シートを得た。
【0144】
<感光性ドライフィルムレジストの物性の評価>
上記のようにして製造された感光性ドライフィルムレジストについて、次に示す各項目の物性について評価を行った。具体的には、▲1▼アルカリ水溶解性試験、▲2▼現像性、▲3▼耐熱性、▲4▼電気絶縁性についての評価を行った。
【0145】
<アルカリ水溶解性試験>
まず、電解銅箔(三井金属(株)製、厚み38μm)を10重量%硫酸水溶液で1分間ソフトエッチング(銅箔表面の防錆剤を除去する工程である)し、水洗い後、エタノール、アセトンで表面を洗ってから乾燥させる。感光性ドライフィルムレレジストの保護フィルムを剥離後、前記電解銅箔(ソフトエッチング後)の光沢面に、100℃、75000Pa・mの条件でラミネートした。次いで、PETフィルムを剥離した後、スプレー現像機(サンハヤト(株)製エッチングマシーンES−655D)を用いて、1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(液温40℃)、スプレー圧0.85MPa、現像時間30〜240秒間の条件で現像処理を行った。現像後のサンプルは、蒸留水により洗浄して、現像液を除去し、乾燥させた。
【0146】
感光性ドライフィルムレジストが貼り合わされた銅箔光沢面から、感光性ドライフィルムレジストが完全に除去されるのに必要な最短の現像時間をBステージ状態の溶解時間とした。この感光性ドライフィルムレジストのBステージ状態での溶解時間が180秒以下のものを合格とし、180秒を超えるものを不合格とした。
【0147】
<現像性>
上記と同じ方法で、感光性ドライフィルムレジストの保護フィルムを剥離後、電解銅箔(ソフトエッチング後)の光沢面に、100℃、75000Pa・mの条件でラミネートした。この積層体のPETフィルムの上に、100×100μm角及び200×200μm角の微細な四角を描いたマスクパターンをのせ、波長400nmの光を300mJ/cm2だけ露光した。このサンプルのPETフィルムを剥離した後、スプレー現像機(サンハヤト(株)製エッチングマシーンES−655D)を用いて、1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(液温40℃)、スプレー圧0.85MPa、現像時間30秒間〜180秒間の条件で現像した。現像によって形成したパターンは、次いで蒸留水により洗浄して、現像液を除去し、乾燥させた。光学顕微鏡で観察して少なくとも200×200μm角の四角が現像できていれば、合格とした。
【0148】
<耐熱性(半田耐熱性)>
銅箔(三井金属(株)製の電解銅箔、厚み35μm)を5cm角にカットし10重量%硫酸水溶液で1分間ソフトエッチングし、水洗い後、エタノール、アセトンで表面を洗ってから乾燥させた。次に4cm角にカットした感光性ドライフィルムレジストの保護フィルムを剥離し、上記電解銅箔(ソフトエッチング後)の光沢面に重ねて、100℃、75000Pa・mの条件でラミネートした。この貼り合わせサンプルの感光性ドライフィルムレジスト面に波長400nmの光を300mJ/cm2露光した後、180℃で2時間キュアして硬化させた。このサンプルを▲1▼常態(20℃/相対湿度40%の環境で24時間)、▲2▼吸湿(40℃/相対湿度85%の環境で48時間)調湿した後に、270℃以上の溶融半田に30秒間ディップし、銅箔と感光性ドライフィルムレジストの界面に膨れが発生したり剥離したりしていないか観察した。溶融半田の温度を徐々に上げていき、10℃毎に30秒間ずつディップして何℃まで異常が発生しないか調べた。異常の発生しなかった最高温度を30秒ディップ可能温度とした。30秒ディップ可能温度が300℃以上であれば合格とした。
【0149】
<電気絶縁性>
銅箔付きポリイミドフィルム(新日鐵化学(株)製、商品名エスパネックス、ポリイミドフィルムの厚み25μm、銅箔の厚み18μm)の銅箔面、レジストフィルム(旭化成(株)製、サンフォート)を用いて、ライン/スペース=50/50μmの櫛型パターンを形成して、回路付きCCLを得た。保護フィルムを剥離した感光性ドライフィルムレジストを、この回路付きCCLの櫛型パターン部分の上を被覆するように重ねて、100℃、75000Pa・mの条件でラミネートした。この貼り合わせサンプルの感光性ドライフィルムレジスト面に波長400nmの光を300mJ/cm2露光した後、PETフィルムを剥離し、180℃で2時間キュアして硬化させた。
【0150】
このサンプルを温度85℃/相対湿度85%の条件の恒温恒湿器(エスペック製、製品名プラチナスPR―2K)の中に入れ、櫛型パターンの端子間に100Vの電圧を印加し続け、30分間おきに線間絶縁抵抗を測定した。印加時間が500時間の時点での抵抗値が1.0×108Ω以上であれば合格とした。500時間未満で回路が短絡してしまうものは不合格とした。
【0151】
感光性ポリイミド樹脂の原料としては、以下の市販品を使用した。原料として、(2,2’−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエ−ト)−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物(和歌山精化(株)製、以下ESDAとも言う。)、シリコンジアミン(信越化学(株)製、製品名KF−8010)、以下に示す2,2’−ジアミノビスフェノールA(群栄化学(株)製、製品名DAM−1):
【0152】
【化11】
以下に示すアミノ基含有フェノール誘導体(群栄化学(株)製、製品名DAM−R1):
【0153】
【化12】
以下に示す2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以下、bis−AP−AFと示す。):
【0154】
【化13】
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン(以下、BAPS−Mと示す。)、メタクリル酸グリシジル(和光純薬製)、トリエチルアミン(和光純薬製)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩(製品名Q−1301、和光純薬製)を用いた。
【0155】
また、感光性ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、東ソー社製HLC8220GPCを使用して、サイズ排除クロマトグラフィーにより、ポリエチレンオキシド換算で算出した。
【0156】
(実施例1)
<(A)感光性ポリイミド樹脂(a)の合成>
攪拌機を設置した500mlのセパラブルフラスコに群栄化学製のジアミンDAM−1を69.7g (0.27mol)、DMF100gを入れ、DAM−1のDMF溶液を調製した。次に上記DMF溶液に、シリコンジアミンKF−8010(信越シリコーン製)24.9g (0.03mol)を添加し、激しく攪拌した。溶液が均一になった後、さらに、ESDA173g (0.30mol)をDMF300gに溶解させた溶液を加えて約1時間激しく攪拌した。このようにして得たポリアミド酸溶液をフッ素系樹脂でコートしたバットにとり真空オーブンで200℃、660Paの圧力で2時間減圧乾燥し、241.0gの水酸基を含有するポリイミドを得た。
【0157】
得られた水酸基を含有するポリイミド100gを、DMF200gに溶解させ、メタクリル酸グリシジル15.1g(0.11mol)、トリエチルアミン1.0g (0.01mol)、重合禁止剤として、Q−1301を0.1g加え、80℃で5時間攪拌を行った。この溶液をメタノール1000mlに投入し、析出した樹脂分をミキサーで粉砕後、メタノールで洗浄、乾燥して、113.4gの感光性ポリイミド樹脂を得た。このポリイミドの酸当量は1132、重量平均分子量は35000であった。
【0158】
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
上記で合成した感光性ポリイミド樹脂(a) 15gをジオキソラン35gに溶解させ、固形分重量%(Sc) =30%のワニスを作製した。
【0159】
以下に示す成分を混合して感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を調製し、Bステージ状態の感光性ドライフィルムレジストを作製した。
(A)感光性ポリイミド樹脂
上記感光性ポリイミド樹脂(a)(固形分で換算)・・・・・50重量部
(B)(メタ)アクリル系化合物
・ビスフェノールA EO変性(エチレンオキサイド変性部位の繰り返し単位;m+n≒4)ジアクリレート(東亞合成(株)製、製品名アロニックスM−211B)・・・・・40重量部
・ビスフェノールA EO変性(エチレンオキサイド変性部位の繰り返し単位m+n≒30)ジアクリレート(新中村化学工業(株)製、製品名NKエステルA−BPE−30)・・・・・10重量部
(C)光反応開始剤
ビス(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6’−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、製品名イルガキュア784)・・・・・1重量部
【0160】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性の評価は、次のようになった。
アルカリ溶解性試験:40秒で合格。
現像性:100×100μm角の穴及び200×200μm角の穴が現像できており合格。
耐熱性:常態、吸湿ともに、30秒ディップ可能温度はそれぞれ320℃であり合格。
電気絶縁性:7.13×108Ωで合格。
【0161】
(実施例2)
<(A)感光性ポリイミド樹脂(b)の合成>
実施例1で合成した水酸基を含有するポリイミド100gを、DMF100gに溶解させ、メタクリル酸無水物16.9g(0.11mol)、トリエチルアミン1.0g (0.01mol)を加え、室温で3時間、50℃で約1時間加熱攪拌した。この溶液をメタノール1000mlに投入し、析出した樹脂分をミキサーで粉砕後、メタノールで洗浄、乾燥して、115.9gの感光性ポリイミド樹脂を得た。このポリイミドの酸当量は1058、重量平均分子量は34000であった。
【0162】
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
上記で合成した感光性ポリイミド(b)15gをジオキソラン35gに溶解させ、固形分重量%(Sc) = 30%のワニスを作製した。
【0163】
以下に示す成分を混合して感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を調製し、Bステージ状態の感光性ドライフィルムレジストを作製した。
(A)感光性ポリイミド樹脂
上記感光性ポリイミド樹脂(b)(固形分で換算)・・・・・50重量部
(B)(メタ)アクリル系化合物
・ビスフェノールA EO変性(エチレンオキサイド変性部位の繰り返し単位;m+n≒4)ジアクリレート(東亞合成(株)製、製品名アロニックスM−211B)・・・・・40重量部
・ビスフェノールA EO変性(エチレンオキサイド変性部位の繰り返し単位m+n≒30)ジアクリレート(新中村化学工業(株)製、製品名NKエステルA−BPE−30)・・・・・10重量部
(C)光反応開始剤
ビス(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6’−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、製品名イルガキュア784)・・・・・1重量部
【0164】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性の評価は、次のようになった。
アルカリ溶解性試験:40秒で合格。
現像性:100×100μm角の穴及び200×200μm角の穴が現像できており合格。
耐熱性:常態、吸湿ともに、30秒ディップ可能温度はそれぞれ320℃であり合格。
電気絶縁性:7.55×108Ωで合格。
【0165】
(実施例3)
<(A)感光性ポリイミド樹脂(c)の合成>
攪拌機を設置した500mlのセパラブルフラスコにDAM−R1を185g (0.27mol)、DMF100gを入れ、DAM−R1のDMF溶液を調製した。次に上記DMF溶液に、シリコンジアミンKF−8010(信越シリコーン製)24.9g (0.03mol) を加え激しく攪拌した。溶液が均一になった後、ESDA173g (0.30mol)をDMF300gに溶解した溶液を添加し、約1時間激しく攪拌した。このようにして得たポリアミド酸溶液をフッ素系樹脂でコートしたバットにとり真空オーブンで200℃、660Paの圧力で2時間減圧乾燥し、345gの水酸基を含有するポリイミドを得た。
【0166】
得られた水酸基を含有するポリイミド139.8gを、DMF200gに溶解させ、メタクリル酸グリシジル15.1g(0.11mol)、トリエチルアミン1.0g (0.01mol)、重合禁止剤として、Q−1301を0.1g加え、80℃で5時間攪拌を行った。この溶液をメタノール1000mlに投入し、析出した樹脂分をミキサーで粉砕後、メタノールで洗浄、乾燥して、145.4gの感光性ポリイミド樹脂を得た。このポリイミドの酸当量は1510、重量平均分子量は28000であった。
【0167】
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
上記で合成した感光性ポリイミド(c)樹脂7.5g、及び実施例1で合成した感光性ポリイミド(a)樹脂7.5gをジオキソラン35gに溶解させ、固形分重量%(Sc)= 30%のワニスを作製した。
【0168】
次に、以下に示す成分を混合して感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を調製し、Bステージ状態の感光性ドライフィルムレジストを作製した。
(A)感光性ポリイミド樹脂
上記感光性ポリイミド樹脂(a)(固形分で換算)・・・・・30重量部
上記感光性ポリイミド樹脂(c)(固形分で換算)・・・・・30重量部
(B)(メタ)アクリル系化合物
・ビスフェノールA EO変性(エチレンオキサイド変性部位の繰り返し単位m+n≒30)ジアクリレート(新中村化学工業(株)製、製品名NKエステルA−BPE−30)・・・・・20重量部
・ビスフェノールA EO変性(エチレンオキサイド変性部位の繰り返し単位m+n≒10)ジアクリレート(新中村化学工業(株)製、製品名NKエステルA−BPE−10)・・・・・20重量部
(C)光反応開始剤
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、製品名イルガキュア819)・・・・・1重量部
【0169】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性の評価は、次のようになった。
アルカリ溶解性試験:60秒で合格。
現像性:200×200μm角の穴が現像できており合格。
耐熱性:常態、吸湿ともに、30秒ディップ可能温度はそれぞれ340℃であり合格。
電気絶縁性:1.71×108Ωで合格。
【0170】
(実施例4)
<(A)感光性ポリイミド樹脂(d)の合成>
攪拌機を設置した500mlのセパラブルフラスコにジアミンbis−AP−AFを76.9g (0.21mol)、DMF100gを入れ、bis−AP−AFのDMF溶液を調製した。次に上記DMF溶液に、シリコンジアミンKF−8010(信越シリコーン製)74.7g (0.09mol)を加えて激しく攪拌した。溶液が均一になった後、ESDA173g (0.30mol)、DMF300gに溶解した溶液を添加し、約1時間激しく攪拌した。このようにして得たポリアミド酸溶液をフッ素系樹脂でコートしたバットにとり真空オーブンで200℃、660Paの圧力で2時間減圧乾燥し、285.6gの水酸基を含有するポリイミドを得た。
【0171】
得られた水酸基を含有するポリイミド111.4gを、DMF200gに溶解させ、メタクリル酸グリシジル15.1g(0.11mol)、トリエチルアミン1.0g (0.01mol)、重合禁止剤として、Q−1301を0.1g加え、80℃で5時間攪拌を行った。この溶液をメタノール1000mlに投入し、析出した樹脂分をミキサーで粉砕後、メタノールで洗浄、乾燥して、120.1gの感光性ポリイミド樹脂を得た。このポリイミドの酸当量は1240、重量平均分子量は43000であった。
【0172】
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
上記で合成した感光性ポリイミド樹脂(d)15gをジオキソラン35gに溶解させ、固形分重量%(Sc) = 30%のワニスを作製した。
【0173】
以下に示す成分を混合して感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を調製し、Bステージ状態の感光性ドライフィルムレジストを作製した。
(A)感光性ポリイミド
上記感光性ポリイミド(d)(固形分で換算)・・・・・60重量部
(B)(メタ)アクリル系化合物
・グリシジルメタクリレート・・・・・5重量部
・エポキシアクリレート(新中村化学工業(株)製、製品名NKオリゴEA−1010)・・・・・25重量部
・ビスフェノールA EO変性(エチレンオキサイド変性部位の繰り返し単位m+n≒30)ジアクリレート(新中村化学工業(株)製、製品名NKエステルA−BPE−30)・・・・・10重量部
(C)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、製品名イルガキュア819)・・・・・1重量部
(D)その他の成分
硬化剤として、
4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(DDS)・・・・・3重量部
【0174】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性の評価は、次のようになった。
アルカリ溶解性試験:40秒で合格。
現像性:100×100μm角の穴及び200×200μm角の穴が現像できており合格。
耐熱性:常態、吸湿ともに、30秒ディップ可能温度はそれぞれ320℃であり合格。
電気絶縁性:1.75×109Ωで合格。
【0175】
(実施例5)
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
以下に示す成分を混合して感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を調製し、Bステージ状態の感光性ドライフィルムレジストを作製した。
(A)感光性ポリイミド樹脂
実施例4で合成した感光性ポリイミド(d)(固形分で換算)・・・・・40重量部
(B)(メタ)アクリル系化合物
・エポキシアクリレート(新中村化学工業(株)製、製品名NKオリゴEA−1010)・・・・・10重量部
・ビスフェノールAタイプのエポキシアクリレート(ダイセルUCB(株)製、製品名Ebecryl3700)・・・・・30重量部
・ビスフェノールA EO変性(エチレンオキサイド変性部位の繰り返し単位m+n≒30)ジアクリレート(新中村化学工業(株)製、製品名NKエステルA−BPE−30)・・・・・10重量部
(C)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、製品名イルガキュア819)・・・・・3重量部
(D)その他の成分
エポキシ樹脂として、
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、製品名エピコート828)・・・・・10重量部
硬化剤として、
・4,4’−ジアミノジフェニルメタン(DDM)・・・・・1重量部
【0176】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性の評価は、次のようになった。
アルカリ溶解性試験:50秒で合格。
現像性:100×100μm角の穴及び200×200μm角の穴が現像できており合格。
耐熱性:常態、吸湿ともに、30秒ディップ可能温度はそれぞれ330℃であり合格。
電気絶縁性:3.21×109Ωで合格。
【0177】
(比較例1)
<ベースポリマーの合成>
上記(A)成分の感光性ポリイミド樹脂の代わりに使用する感光性樹脂組成物の中で含有重量の最も大きいポリマー成分をベースポリマーと称する。
【0178】
(ポリイミド樹脂の合成)
攪拌機を設置した500mlのセパラブルフラスコにESDA173g (0.30mol)、DMF300gを入れ、ESDAのDMFワニスを調製した。次に上記DMFワニスに、BAPS−M86.5g (0.20mol)をDMF100gに溶解した溶液を添加し、激しく攪拌した。溶液が均一になった後、シリコンジアミンKF−8010(信越シリコーン製)83.5g (0.10mol)を加え1時間激しく攪拌した。
【0179】
このようにして得たポリアミド酸溶液をフッ素系樹脂でコートしたバットにとり真空オーブンで200℃、660Paの圧力で2時間減圧乾燥し、315gのポリイミドを得た。
【0180】
このポリイミドは、イミド樹脂中に水酸基を有さず、感光性基も導入されていない。
【0181】
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
上記で合成したポリイミド15gをジオキソラン35gに溶解させ、固形分重量%(Sc)= 30%のワニスを作製した。
【0182】
実施例1の(A)成分の代わりに上記で合成したポリイミドをベースポリマーとして用いること以外は、全く同様の条件で感光性ドライフィルムレジストを作製した。
【0183】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性の評価は、次のようになった。
アルカリ溶解性試験:180秒間現像処理を行っても、感光性ドライフィルムレジストの厚みが現像前の25μmから現像後に22μmに減少するだけで、感光性ドライフィルムレジストがサンプル全面に溶け残っており不合格。
現像性:100×100μm角の穴、200×200μm角の穴がともに現像できておらず不合格。
耐熱性:常態、吸湿ともに、30秒ディップ可能温度はそれぞれ320℃であり合格。
電気絶縁性:2.88×1010Ωであり合格。
【0184】
このように、水酸基を含有しないポリイミドをベースポリマーとして用いると、耐熱性や電気絶縁性は良好であったが、アルカリ溶解性及び現像性が悪かった。
【0185】
(比較例2)
<ベースポリマーの合成>
原料として、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、及びメタクリル酸のモノマーを用いた。これらのモノマー成分を、公知の方法を用いて共重合し、カルボキシル基含有共重合体を得た。この時の各モノマー成分の重合比は、メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート/2−エチルへキシルアクリレート/メタクリル酸=60/10/10/20(重量基準)とした。
【0186】
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
実施例5の(A)成分の代わりに上記で合成したアクリル系共重合体をベースポリマーとして用いること以外は、実施例5と全く同様の条件で感光性ドライフィルムレジストを作製した。
【0187】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性の評価は、次のようになった。
アルカリ溶解性試験:30秒間で合格。
現像性:100×100μm角の穴、200×200μm角の穴がともに現像できており合格。
耐熱性:30秒ディップ可能温度は常態で270℃、吸湿で250℃であり、不合格。
電気絶縁性:印加時間220時間経過後に回路が短絡し、不合格。
【0188】
このように、芳香環を有さない構造のモノマーから合成されるアクリル系共重合体をベースポリマーとして用いると、アルカリ溶解性及び現像性は良好であるが、耐熱性や電気絶縁性が劣る結果となった。
【0189】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る感光性樹脂組成物、及びそれから作製される感光性ドライフィルムレジストは、水酸基を含有するポリイミド樹脂に、炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性ポリイミド樹脂、(メタ)アクリル系化合物、並びに光反応開始剤及び/又は増感剤を含有することを特徴としているので、塩基性水溶液での現像性が良好であり、かつ電気絶縁性に優れたものとなっている。さらに、感光性ポリイミド樹脂の水酸基当量を制御することにより、アルカリ水溶液で短時間に溶解可能な感光性ドライフィルムレジストを提供することができる。
【0190】
したがって、本発明は、FPC等のプリント配線板を製造する産業、例えば電子部品用の樹脂材料を製造する樹脂産業分野に好適に用いることができるだけではなく、このようなプリント配線板を用いる電子機器の産業分野に好適に用いることができるという効果を奏する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリ水溶液で現像可能で、良好なパターン形状が得られ、さらに製造工程の簡略化が可能な感光性樹脂組成物及び感光性ドライフィルムレジスト、並びにこれらの利用方法に関する。特に、(A)水酸基を含有するポリイミド樹脂に、炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性ポリイミド樹脂、(B)(メタ)アクリル系化合物、及び(C)光反応開始剤及び/又は増感剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物及び感光性ドライフィルムレジスト、並びにこれらの利用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の高機能化、小型化、軽量化に伴い、これら電子機器に用いられる電子部品に対しても、さらなる小型化、軽薄化が要求されている。そのため、プリント配線板上での半導体素子などの高密度実装や、配線の微細化、プリント配線板の多層化等を行うことにより、電子部品の高機能化や高性能化を図ることが求められている。また、配線の微細化に対応するためには、配線を保護するためにより高い電気絶縁性を有する絶縁材料が必要である。
【0003】
ところで、上記プリント配線板を作製する際には、種々の用途で感光性材料が用いられる。すなわち、プリント配線板の基板上へパターン化された回路(パターン回路)の形成や、プリント配線板表面やパターン回路を保護するための保護層の形成、多層のプリント配線板の層間絶縁層の形成等に、感光性材料が使用されている。このような用途に用いられる感光性材料として、液状の感光性材料や、フィルム状の感光性材料がある。このうち、フィルム状の感光性材料は、液状の感光性材料に比べて、膜厚の均一性や作業性に優れているといった利点を備えている。そのため、パターン回路の形成に用いるパターン回路用レジストフィルム、上記保護層の形成に用いる感光性カバーレイフィルム、上記層間絶縁層の形成に用いる感光性ドライフィルムレジスト等、その用途に応じて、種々のフィルム状感光性材料が用いられている。
【0004】
上記感光性カバーレイフィルムや感光性ドライフィルムレジスト(以下、両者を感光性ドライフィルムレジストと総称する)として、ポリイミド樹脂を含有してなるもの(例えば、特許文献1参照)、アクリル系樹脂を含有してなるもの、エポキシ樹脂を含有してなるもの等種々提案されているが、特に、絶縁性とともに耐熱性の高い感光性ポリイミドが注目されている。
【0005】
一方、近年環境問題等から、従来の有機溶剤を用いる現像に代わって、アルカリ水溶液を用いる現像が要求されてきている。アルカリ現像を実現させる方法として、ポリアミド酸のカルボキシル基にナフトキノンジアジドを導入した感光性ポリイミド前駆体(例えば、特許文献2参照)、光重合性のアクリロイル基をエステル結合で導入したポリアミド酸の側鎖にさらにカルボキシル基を導入した感光性ポリイミド前駆体(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。しかしこれらは、イミド化するためのポストベークに250℃以上の高温加熱を必要とし、基板部品に熱ダメージを与えるため、部品製造が制限されることもある。また、イミド化時に閉環による脱水反応が起こり、それによる体積収縮に伴う膜厚の損失および寸法安定性が悪いといった問題があった。
【0006】
また、既にイミド化されている感光性ポリイミドとして、感光基と親水性基をポリイミド側鎖に導入した感光性ポリイミド(例えば、特許文献4参照)も提案されているが、電気絶縁性や耐薬品性、耐加水分解性が低下したりする等の課題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−335619号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平6−258835号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平10−95848号公報
【0010】
【特許文献4】
特開2000−147768号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高温でのポストベークを必要とせず、アルカリ水溶液で現像可能で、良好なパターン形状が得られ、硬化膜特性に優れる感光性樹脂組成物及び感光性ドライフィルムレジスト、並びにこれらの利用方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、(A)感光性ポリイミド樹脂、(B)(メタ)アクリル系化合物、及び(C)光反応開始剤及び/又は増感剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物を用いることにより、所定の目的が達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち本発明の第1は、(A)水酸基を含有するポリイミド樹脂に、炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性ポリイミド樹脂、(B)(メタ)アクリル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル系化合物、並びに(C)光反応開始剤及び/又は増感剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物に関する。
【0014】
好ましい実施態様は、上記(A)成分が、アミノ基含有フェノール誘導体を、原料の一部として用いた感光性ポリイミド樹脂であって、上記アミノ基含有フェノール誘導体は、2以上のフェノール化合物が、原子又は原子団を介して鎖状に結合しており、かつ両端のフェノール化合物が、ベンゼン環の水素原子の1つがアミノ基で置換されている化合物であることを特徴とする、上記の感光性樹脂組成物に関する。
【0015】
さらに好ましい実施態様は、上記感光性ポリイミド樹脂の原料の一部として用いられる上記アミノ基含有フェノール誘導体が、一般式(1):
【0016】
【化4】
(式中、R1及びR2は、各々同一であっても異なっていても良いが、水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシ基、又は−COOR3(R3は炭素数1〜9のアルキル基を示す。)であり、Xは、−O−、−S−、−SO2−、−C(CH3)2−、−CH2−、−C(CH3)(C2H5)−、又は−C(CF3)2−である。m及びnは、各々m+n=4を満たす0以上の整数であり、p及びqは、各々p+q=4を満たす0以上の整数である。rは0〜10の整数である。)
で表される化合物であることを特徴とする、上記の感光性樹脂組成物に関する。
【0017】
さらに好ましい実施態様は、上記(A)成分が、次の一般式(2):
【0018】
【化5】
(式中、R1及びR2は、各々同一であっても異なっていても良いが、水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシ基、又は−COOR3(R3は炭素数1〜9のアルキル基を示す。)であり、Xは、−O−、−S−、−SO2−、−C(CH3)2−、−CH2−、−C(CH3)(C2H5)−、又は−C(CF3)2−であり、R4は4価の芳香族テトラカルボン酸二無水和物の残基である。R5は同一であっても異なっていてもよいが、下記群:
【0019】
【化6】
(式中、R6は、炭素−炭素二重結合を有する1価の有機基である。)から選択される化合物を示す。ただし、R5に−OH基は少なくとも1個以上含まれるものとし、更にR6を有する基も少なくとも1個以上含まれるものとする。m及びnは、各々m+n=4を満たす0以上の整数、p及びqは、各々p+q=4を満たす0以上の整数、rは0〜10の整数である。)
で表される繰り返し単位を少なくとも1つ以上含む感光性ポリイミド樹脂であることを特徴とする、上記の感光性樹脂組成物に関する。
【0020】
さらに好ましい実施態様は、上記(A)成分である感光性ポリイミド樹脂の重量平均分子量が、5000以上、200000以下であることを特徴とする、上記いずれかに記載の感光性樹脂組成物に関する。
【0021】
さらに好ましい実施態様は、上記(A)成分である感光性ポリイミド樹脂のフェノール性水酸基1個あたりの重量平均分子量が、10000以下であることを特徴とする、上記いずれかに記載の感光性樹脂組成物に関する。
【0022】
さらに好ましい実施態様は、上記(B)成分が、1分子内に少なくとも1つ以上のエポキシ基及び1つ以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリル系化合物を含有することを特徴とする、上記いずれかに記載の感光性樹脂組成物に関する。
【0023】
さらに好ましい実施態様は、上記(B)成分が、1分子内に少なくとも2つ以上の水酸基を有するエポキシ(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする、上記いずれかに記載の感光性樹脂組成物に関する。
【0024】
本発明の第2は、上記いずれかに記載の感光性樹脂組成物から作製される感光性ドライフィルムレジストに関する。
【0025】
好ましい実施態様は、現像液として、40℃、1重量%の水酸化ナトリウムを用いるとともに、現像手段としてスプレー現像機を用いた場合に、スプレー圧0.85MPaの条件下での溶解時間が、180秒以下となっていることを特徴とする、上記の感光性ドライフィルムレジストに関する。
【0026】
本発明の第3は、上記いずれかに記載の感光性ドライフィルムレジストを絶縁保護フィルムとして用いるプリント基板に関する。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、(A)水酸基を含有するポリイミド樹脂に、炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性ポリイミド樹脂、(B)(メタ)アクリル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル系化合物、並びに(C)光反応開始剤及び/又は増感剤を含有してなるものであるが、必要に応じて、後述するように(D)その他の成分が含有されていても良い。例えば、感光性ドライフィルムレジストに接着性、難燃性、耐熱性、耐屈曲性等の諸物性を付与するような成分を含有することができる。なお、本発明に係る感光性ドライフィルムレジストは、本発明に係る感光性樹脂組成物から作製されるものである。
【0028】
以下、各成分について詳細に説明する。
【0029】
<(A)感光性ポリイミド樹脂>
本発明に係る感光性樹脂組成物において、(A)成分に感光性ポリイミド樹脂を用いることにより、得られる感光性ドライフィルムレジストに、耐熱性、耐屈曲性、優れた機械特性、電気絶縁性、耐薬品性を付与することができる。特に、水酸基を含有するポリイミド樹脂を用いることにより、水系現像が可能となる。さらに、(A)成分は、ポリイミド樹脂中の水酸基に炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて得られることを特徴とする。
【0030】
本発明の感光性ポリイミド樹脂は、共有結合により感光性基を導入しているため、露光部の硬化性が優れる。更に、既にイミド化されているため、高温でのポストベークを必要とせず、またイミド化時に閉環による脱水反応に伴う体積収縮が少ないため、優れた解像度が得られる。
【0031】
本発明の感光性ポリイミド樹脂は、一般式(2):
【0032】
【化7】
(式中、R1及びR2は、各々同一であっても異なっていても良いが、水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシ基、又は−COOR3(R3は炭素数1〜9のアルキル基を示す。)であり、Xは、−O−、−S−、−SO2−、−C(CH3)2−、−CH2−、−C(CH3)(C2H5)−、又は−C(CF3)2−であり、R4は4価の芳香族テトラカルボン酸二無水和物の残基である。R5は同一であっても異なっていてもよいが、下記群:
【0033】
【化8】
(式中、R6は、炭素−炭素二重結合を有する1価の有機基である。)から選択される化合物を示す。ただし、R5に−OH基は少なくとも1個以上含まれるものとし、更にR6を有する基も少なくとも1個以上含まれるものとする。m及びnは、各々m+n=4を満たす0以上の整数、p及びqは、各々p+q=4を満たす0以上の整数、rは0〜10の整数である。)
で表される繰り返し単位を少なくとも1つ以上含む感光性ポリイミド樹脂であることを特徴とする。
【0034】
(A)成分の感光性ポリイミド樹脂は、分子中にフェノール性水酸基を少なくとも1個以上、および炭素−炭素二重結合を有する感光性基を少なくとも1個以上含んでいるため、アルカリ水溶液への溶解性、および硬化性を向上させることができる。
【0035】
上記感光性ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、5000〜200000であることが好ましく、10000〜100000であることがより好ましい。重量平均分子量が5000未満であると、本発明の感光性樹脂組成物を用いて作成された感光性ドライフィルムレジストにベタツキが生じやすく、さらに硬化後のフィルムの耐屈曲性に劣るという傾向があり、一方、重量平均分子量が200000より大きいと感光性ポリイミド樹脂の溶液の粘度が高くなりすぎ取扱いが難しくなる傾向があり、また作成された感光性ドライフィルムレジストの現像性が低下するという問題がある。なお、重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、例えば、東ソー社製HLC8220GPCにより測定することが可能である。
【0036】
また、上記感光性ポリイミド樹脂のフェノール性水酸基1個あたりの重量平均分子量(以下、酸当量という)は、10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましく、3000以下であることが最も好ましい。上記酸当量が10000を超えると、本発明の感光性樹脂組成物を用いて作成された感光性ドライフィルムレジストの水系現像が困難になる傾向がある。なお、上記感光性ポリイミド樹脂の酸当量は、該感光性ポリイミド樹脂の組成より計算して求めることが可能である。
【0037】
<感光性ポリイミド樹脂の製造方法>
以下、感光性ポリイミド樹脂の製造方法を説明するために、ポリアミド酸の合成方法、ポリアミド酸を脱水閉環してイミド化する方法、さらに、得られた水酸基を含有するポリイミド樹脂に炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて感光性を付与する方法について詳細に説明する。
【0038】
<ポリアミド酸の合成>
上記水酸基を含有するポリイミド樹脂は、その前駆体であるポリアミド酸から得ることができる。このポリアミド酸は、有機溶媒中でジアミンと酸二無水物とを反応させることにより得られる。具体的には、アルゴン、窒素等の不活性雰囲気中において、ジアミンを有機溶媒中に溶解させる、またはスラリー状に拡散させて、ジアミン溶液とする。また、酸二無水物は、有機溶媒に溶解させる、またはスラリー状に拡散させた状態とした後、あるいは固体の状態で、上記ジアミン溶液中に添加すればよい。
【0039】
水酸基を含有するポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸を合成するために用いられるジアミンとしては、特に限定されるものではないが、アルカリ水溶液での現像性の点から、1分子中に1つ以上の水酸基を有するジアミンを原料の少なくとも一部として用いることが好ましい。また、耐熱性や耐薬品性の点から、1分子中に1つ以上の芳香環を有する芳香族系ジアミンを原料の少なくとも一部として用いることが好ましい。特に、1分子中に1つ以上の水酸基を有する芳香族系ジアミンを原料の一部として用いれば、得られる感光性ドライフィルムレジストに、耐熱性とアルカリ水溶液での現像性を付与することができる点から、好ましい。
【0040】
1分子中に1つ以上の水酸基を有する芳香族系ジアミンとしては、2以上のフェノール化合物が、原子又は原子団を介して鎖状に結合しており、かつ両端のフェノール化合物が、ベンゼン環の水素原子の1つがアミノ基で置換されている化合物であることを特徴とする、アミノ基含有フェノール誘導体が挙げられる。
【0041】
特に、次の一般式(1):
【0042】
【化9】
(式中、R1及びR2は、各々同一であっても異なっていても良いが、水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシ基、又は−COOR3(R3は炭素数1〜9のアルキル基を示す。)であり、Xは、−O−、−S−、−SO2−、−C(CH3)2−、−CH2−、−C(CH3)(C2H5)−、又は−C(CF3)2−である。m及びnは、各々m+n=4を満たす0以上の整数であり、p及びqは、各々p+q=4を満たす0以上の整数である。rは0〜10の整数である。)
で表されるアミノ基含有フェノール誘導体をポリイミド樹脂の原料の一部として用いることが好ましい。
【0043】
本発明のアミノ基含有フェノール誘導体としては、アミノ基を含有するフェノール誘導体であれば特に限定されないが、例えば2,2’−ジアミノビスフェノールA、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(群栄化学(株)製、商品名bis−AP−AF)、ビス(2−ヒドロキシ−3−アミノ−5−メチルフェニル)メタン、2,6−ジ{(2−ヒドロキシ−3−アミノ−5−メチルフェニル)メチル}−4−メチルフェノール、2,6−ジ{(2−ヒドロキシ−3−アミノ−5−メチルフェニル)メチル}−4−ヒドロキシ安息香酸プロピル等の化合物を挙げることができる。
【0044】
特に好ましいアミノ基含有フェノール誘導体の構造式の一部を以下に示す。これらのジアミンを感光性ポリイミド樹脂の原料の一部として使用することで、得られる水酸基を含有するポリイミド樹脂の酸当量が低くなり、アルカリ水溶液への現像性を向上させることができる。
【0045】
【化10】
上記水酸基を有するジアミン以外に、他のジアミンを感光性ポリイミド樹脂の原料の一部として同時に用いてもよい。例えば、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、シロキサン構造の両末端にアミノ基を含有する反応性シリコーン(以下、シリコンジアミンと称する)、[ビス(4−アミノ−3−カルボキシ)フェニル]メタンなどを挙げることができる。特に、フィルムの弾性率を下げることができるという点から、シリコンジアミンを使用することが好ましい。上記ジアミンは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0046】
また、ポリアミド酸を合成するために用いられる酸二無水物としては、カルボン酸二無水物であれば特に限定されないが、耐熱性を向上させる点から、芳香環を1〜4個有する酸二無水物または脂環式の酸二無水物を用いることが好ましい。また、有機溶媒への溶解性が高いポリイミド樹脂を得るためには、芳香環を2個以上有する酸二無水物を少なくとも一部用いることが好ましく、芳香環を4個以上有する酸二無水物を少なくとも一部として用いることがより好ましい。
【0047】
上記の酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエ−ト)−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。上記酸二無水物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0048】
上記酸二無水物のうち、合成の容易さ、得られるポリイミド樹脂の有機溶媒への溶解性の観点から、2,2’−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエ−ト−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物等の芳香環を2個以上有する酸二無水物を一部用いることが好ましい。
【0049】
上記ジアミンと酸二無水物とを用いてポリアミド酸を合成する場合、上記ジアミンと酸二無水物とを、それぞれ少なくとも1種類ずつ用いて反応を行えばよい。すなわち、例えば、アミノ基含有フェノール誘導体(水酸基を含有するジアミン)を少なくとも一部として含むジアミン成分と、上記酸二無水物とを用いて、上述したように、有機溶媒中で重合反応を行うことにより、水酸基を分子鎖中に1つ以上含有するポリアミド酸を得ることができる。
【0050】
このとき、1種のジアミンと1種の酸二無水物が実質上等モルであれば、酸二無水物成分1種及びジアミン成分1種のポリアミド酸になる。また、2種以上の酸二無水物成分及び2種以上のジアミン成分を用いる場合、複数のジアミン成分全量のモル比と複数の酸二無水物成分全量のモル比とを、実質上等モルに調整しておけば、ポリアミド酸共重合体を任意に得ることもできる。
【0051】
上記ジアミンと酸二無水物の反応(ポリアミド酸の合成反応)の温度条件は、特に限定されないが、80℃以下であることが好ましく、より好ましくは0〜50℃がよい。80℃を超えると、ポリアミド酸が分解する恐れがあり、逆に0℃以下だと、重合反応の進行が遅くなる。また、反応時間は10分〜20時間の範囲で任意に設定すればよい。
【0052】
さらに、上記ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒としては、有機極性溶媒であれば特に限定されるものではない。しかしながら、上記ジアミンと酸二無水物との反応が進行するにつれてポリアミド酸が生成し、反応液の粘度が上昇する。また、後述するように、ポリアミド酸を合成して得られるポリアミド酸溶液を、減圧下で加熱して、有機溶媒の除去とイミド化を同時に行うことができる。そのため、上記有機溶媒としては、ポリアミド酸を溶解でき、かつ、なるべく沸点の低いものを選択することが工程上有利である。
【0053】
具体的には、ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドンやN−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒等を挙げることができる。
【0054】
<ポリアミド酸のイミド化>
次に、上記ポリアミド酸を用いて、ポリイミド樹脂を得るために、上記ポリアミド酸をイミド化する方法について説明する。イミド化は、ポリアミド酸を脱水閉環することによって行われる。この脱水閉環は、共沸溶媒を用いた共沸法、熱的手法または化学的手法によって行うことができる。
【0055】
共沸溶媒を用いた共沸法は、ポリアミド酸溶液にトルエン・キシレン等の水と共沸する溶媒を加え、170〜200℃に昇温して、脱水閉環により生成してくる水を積極的に系外へ除去しながら、1時間〜5時間程度反応させればよい。反応終了後、メタノール等のアルコール溶媒中にて沈殿させ、必要に応じてアルコール溶媒にて洗浄を行ったのち、乾燥を行ってポリイミド樹脂を得ることができる。
【0056】
熱的手法による脱水閉環は、ポリアミド酸溶液を加熱して行えばよい。あるいは、ガラス板、金属板、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のフィルム状支持体に、ポリアミド酸溶液を流延または塗布した後、80℃〜300℃の範囲内で熱処理を行えばよい。さらに、フッ素系樹脂によるコーティング等の離型処理を施した容器に直接ポリアミド酸溶液を入れ、減圧下で加熱乾燥することによって、ポリアミド酸の脱水閉環を行うこともできる。このような熱的手法によるポリアミド酸の脱水閉環により、ポリイミド樹脂を得ることができる。
【0057】
なお、上記各処理の加熱時間は、脱水閉環を行うポリアミド酸溶液の処理量や加熱温度により異なるが、一般的には、処理温度が最高温度に達してから1分〜5時間の範囲で行うことが好ましい。
【0058】
一方、化学的手法による脱水閉環は、上記ポリアミド酸溶液に、脱水剤と、必要に応じて触媒として、触媒量の第3級アミンとを加えて、イミド化を行えばよい。イミド化の温度は20℃〜150℃であることが好ましい。150℃を上回ると分子量の低下が起こる場合があり、20℃より低い場合はイミド化に時間がかかりすぎる場合がある。
【0059】
脱水閉環剤および/または触媒を使用した化学的手法にて用いた上記脱水剤としては、一般的には、無水酢酸、無水プロピオン酸等の酸無水物が用いられる。また、上記第3級アミンとしては、ピリジン、イソキノリン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、イミダゾ−ル、ピコリン等を用いればよい。
【0060】
なお、本発明のイミドはフェノール性水酸基を有するため、脱水剤として加える酸無水物と水酸基との反応が考えられるため、用いる酸無水物は化学量論的にイミド化に必要な最低限の量にすることが好ましい。
【0061】
<ポリイミド樹脂中の水酸基への感光性基の導入>
上記のような処方によって得られた水酸基を含有するポリイミド樹脂に、さらに感光性を付与するために、炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させることが好ましい。炭素−炭素二重結合を有する化合物は、ポリイミド樹脂中のフェノール性水酸基と反応するものであれば特に限定されないが、炭素−炭素二重結合を有するエポキシ化合物、(メタ)アクリル酸無水物、及び臭化アリル等のハロゲン化アリルが挙げられる。
【0062】
炭素−炭素二重結合を有するエポキシ化合物を反応させる場合は、不活性溶媒中、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基存在下、水酸基を含有するポリイミド樹脂と、炭素−炭素二重結合を有するエポキシ化合物を反応させることが例示され、目的とする感光性ポリイミド樹脂を得ることができる。
【0063】
上記反応温度は、エポキシ基と水酸基が反応する、40℃以上、130℃以下の温度で行うことが好ましい。特に炭素−炭素二重結合が熱により重合等の反応を起こさない程度の温度で反応させることが望ましい。具体的に、より好ましくは40℃以上、100℃以下、さらに好ましくは50℃以上、80℃以下である。反応時間は、適宜選択できるが、一般的には1時間程度から20時間程度である。
【0064】
上記反応により得られる反応溶液は、その目的に応じ、反応終了後の溶液状態のままで用いても良いし、メタノール等のアルコール溶媒中にて沈殿させ、必要に応じてアルコール溶媒にて洗浄を行ってもよい。
【0065】
上記炭素−炭素二重結合を有するエポキシ化合物は、エポキシ基と前記炭素−炭素二重結合を同一分子内に有するものであれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルビニルエーテル等を具体的に例示することができる。中でも、安価で容易に入手でき、また良好な反応性を有する点から、メタクリル酸グリシジルが特に好ましい。
【0066】
(メタ)アクリル酸無水物を反応させる場合は、不活性溶媒中、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基存在下、ポリイミド樹脂中の水酸基を、(メタ)アクリル酸無水物と縮合させることが例示され、目的とする感光性ポリイミド樹脂を得ることができる。
【0067】
上記反応温度は、ポリイミド樹脂中の水酸基のアシル化が可能な0℃以上、100℃以下の温度で行うことが好ましい。特に炭素−炭素二重結合が熱により重合等の反応を起こさない程度の温度で反応させることが望ましい。具体的に、より好ましくは10℃以上、100℃以下、さらに好ましくは20℃以上、80℃以下である。反応時間は、適宜選択できるが、一般的には1時間程度から20時間程度である。
【0068】
上記反応により得られる反応溶液は、反応によって生成する(メタ)アクリル酸を除去するために、メタノール等のアルコール溶媒中にて沈殿させ、必要に応じてアルコール溶媒にて洗浄を行うことが好ましい。
【0069】
ハロゲン化アリルを反応させる場合は、不活性溶媒中、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基存在下、水酸基を含有するポリイミド樹脂と、ハロゲン化アリルを反応させることが例示され、目的とする感光性ポリイミド樹脂を得ることができる。
【0070】
上記反応温度は、反応可能な0℃以上、100℃以下の温度で行うことが好ましい。特に炭素−炭素二重結合が熱により重合等の反応を起こさない程度の温度で反応させることが望ましい。具体的に、より好ましくは0℃以上、80℃以下、さらに好ましくは20℃以上、50℃以下である。反応時間は、適宜選択できるが、一般的には1時間程度から20時間程度である。
【0071】
上記反応により得られる反応溶液は、メタノール等のアルコール溶媒中にて沈殿させ、必要に応じてアルコール溶媒にて洗浄を行うことが好ましい。
【0072】
いずれの反応においても、感光性基を導入した後も、アルカリ水溶液への現像性を維持するために、ポリイミド樹脂中の水酸基をすべて反応させるのではなく、水酸基が残るように、反応させる炭素−炭素二重結合を有する化合物の当量数を調整することが好ましい。具体的には、反応後の感光性ポリイミド樹脂の酸当量が10000以下になるように調整するのが好ましい。
【0073】
また、反応中に炭素−炭素二重結合が重合を起こすことを防止するために、重合禁止剤を加えることが好ましい。重合禁止剤としては、p−メトキシフェノール等のハイドロキノン誘導体、フェノチアジン、N−ニトロヒドロキシルアミン塩類を例示することができる。
【0074】
以上により、水酸基を含有するポリイミド樹脂に、炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性ポリイミド樹脂を製造することができる。
【0075】
次に(B)成分である(メタ)アクリル系化合物について説明する。感光性樹脂組成物に(B)成分を含有することにより、作製される感光性ドライフィルムレジストの熱加工時での粘弾性を下げ、熱ラミネート時の流動性を付与することができる。すなわち、比較的低温での熱ラミネートが可能となり、回路の凹凸を埋め込むことができる。
【0076】
<(B)(メタ)アクリル系化合物>
本発明において(メタ)アクリル系化合物とは、(メタ)アクリル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる化合物を示す。なお、本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルを指すものとする。
【0077】
上記(メタ)アクリル系化合物は、1種類のみを用いてもよく、また、2種類以上を組み合わせてもよい。本発明における感光性樹脂組成物に含有される(メタ)アクリル系化合物の総重量は、(A)成分:感光性ポリイミド樹脂100重量部に対して、1〜100重量部の範囲内で用いることが好ましく、1〜80重量部の範囲内で用いることがより好ましく、1〜50重量部の範囲内で用いることがさらに好ましい。
【0078】
(A)成分である感光性ポリイミド樹脂100重量部に対して、(B)成分として100重量部を超える(メタ)アクリル系化合物を用いた場合、得られる感光性ドライフィルムレジストの耐熱性が低下し、ラミネート処理時に、(メタ)アクリル系化合物がしみ出してしまう可能性がある。
【0079】
本発明の感光性樹脂組成物には、(B)成分として、とくに1分子中に少なくとも1つ以上のエポキシ基及び1つ以上の(メタ)アクリル基を含有する(メタ)アクリル系化合物を含有することが好ましい。このような(メタ)アクリル系化合物を用いることにより、得られる感光性ドライフィルムレジストの耐加水分解性及び銅箔への接着強度を向上させることが可能となる。
【0080】
1分子中に少なくとも1つ以上のエポキシ基及び1つ以上の(メタ)アクリル基を含有する(メタ)アクリル系化合物しては、特に限定されないが、例えば、グリシジルメタクリレート等のグリシジル化合物、NKオリゴEA−1010,EA−6310(新中村化学製)等のエポキシアクリレートを挙げることができる。
【0081】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、(B)成分として、1分子中に少なくとも2つ以上の水酸基を含有するエポキシ(メタ)アクリレートを含有することが好ましく、さらには1分子中に少なくとも4つ以上の水酸基を含有するエポキシ(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。このようなエポキシ(メタ)アクリレートを用いることにより、得られる感光性ドライフィルムレジストのアルカリ水溶液への溶解性が向上し、現像時間の短縮化が実現できる。
【0082】
1分子中に少なくとも2つ以上の水酸基を含有するエポキシ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、リポキシSP−2600(昭和高分子製)、NKオリゴEA−1020、 EA−6340(新中村化学製)、カラヤッドR−280、 R−190(日本化薬製)、Ebecryl600、Ebecryl3700(ダイセルUCB)等のビスフェノールAタイプのエポキシアクリレート、Ebecryl3200、 Ebecryl3500、Ebecryl3701、Ebecryl3703(ダイセルUCB)等の変性ビスフェノールAタイプのエポキシアクリレート、NKオリゴEA−6320、EA−6340(新中村化学製)等のフェノールノボラックエポキシアクリレート、カラヤッドR−167、 MAX−2104(日本化薬製)、デナコールアクリレートDA−212(ナガセ化成)等の変性1,6−へキサンジオールジアクリレート、デナコールアクリレートDA−721(ナガセ化成製)等の変性フタル酸ジアクリレート、NKオリゴEA−1020(新中村化学製)等のクレゾールノボラックエポキシアクリレート等を挙げることができる。
【0083】
本発明に用いる感光性樹脂組成物には、(B)成分として、上記のエポキシ(メタ)アクリレート、1分子中に少なくとも1つ以上のエポキシ基及び1つ以上の(メタ)アクリル基を含有する(メタ)アクリル系化合物のほかに、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、それ以外の(メタ)アクリル化合物を用いることができる。
【0084】
ポリエステル(メタ)アクリレートを用いることにより、作製される感光性ドライフィルムレジストに柔軟性を付与することができる。ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、アロニックスM−5300、M−6100、M−7100(東亞合成製)等を挙げることができる。
【0085】
ウレタン(メタ)アクリレートを用いることにより、作製される感光性ドライフィルムレジストに柔軟性を付与することができる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、アロニックスM−1100、M−1310(東亞合成製)、カラヤッドUX−4101(日本化薬製)等を挙げることができる。
【0086】
イミド(メタ)アクリレートを用いることにより、作製される感光性ドライフィルムレジストを貼り合わせる基材(例えば、ポリイミドフィルム、銅箔等)への密着性を向上させることができる。イミド(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、アロニックスTO−1534、TO−1429、TO−1428(東亞合成製)を挙げることができる。
【0087】
さらに、上記に示した以外の(メタ)アクリル化合物としては、特に限定されないが、光照射による架橋密度を向上するためには、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する多官能の(メタ)アクリル化合物を用いることが望ましい。また、得られる感光性ドライフィルムレジストに耐熱性を付与するために、1分子中に芳香環及び/又は複素環を少なくとも1つ有する化合物を用いることが好ましい。
【0088】
1分子中に芳香環及び/又は複素環を少なくとも1つ有し、かつ炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ有する(メタ)アクリル化合物としては、特に限定されないが、例えば、アロニックスM−210、M−211B(東亞合成製)、NKエステルABE−300、A−BPE−4、A−BPE−10、A−BPE−20、A−BPE−30、BPE−100、BPE−200(新中村化学製)等のビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート、アロニックスM−208(東亞合成製)等のビスフェノールF EO変性(n=2〜20)ジ(メタ)アクリレート、デナコールアクリレートDA−250(ナガセ化成製)、ビスコート#540(大阪有機化学工業製)等のビスフェノールA PO変性(n=2〜20)ジ(メタ)アクリレート、デナコールアクリレートDA−721(ナガセ化成製)等のフタル酸PO変性ジアクリレート等を挙げることができる。さらに、芳香環は含まないが、アロニックスM−215(東亞合成製)等のイソシアヌル酸EO変性ジアクリレートやアロニックスM−315(東亞合成製)、NKエステルA−9300(新中村化学製)等のイソシアヌル酸EO 変性トリアクリレートなどを挙げることができる。なお、上記EO変性とは、エチレンオキサイド変性部位を有することを示し、PO変性とは、プロピレンオキサイド変性部位を有することを示す。
【0089】
上記(メタ)アクリル系化合物のうち、1分子内のエチレンオキサイド変性(EO変性)部位の繰り返し単位(―(CH2CH2O)−)の数、または、1分子内のプロピレンオキサイド変性(PO変性)部位の繰り返し単位(―(CH(CH3)CH2O)−)の数が10以上である(メタ)アクリル系化合物を用いることが特に好ましい。上記の繰り返し単位を10以上有することにより、作製される感光性ドライフィルムレジストにラミネート処理時の熱流動性を付与することができ、さらにアルカリ水溶液への溶解性を向上することもできる。
【0090】
上記のようなEO変性部位の繰り返し単位、または、PO変性部位の繰り返し単位の数を10以上有してなる(メタ)アクリル化合物としては、特に限定されないが、例えば、NKエステルA−BPE−10、A−BPE−20、A−BPE−30、BPE−100、BPE−200(新中村化学製)等のビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF EO変性(n=10〜20)ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA PO変性(n=10〜20)ジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0091】
このようなEO変性部位の繰り返し単位、または、PO変性部位の繰り返し単位の数を10以上有してなる(メタ)アクリル化合物は、本発明の感光性樹脂組成物に含有されるすべての(メタ)アクリル系化合物の総重量に対して、少なくとも10重量部含有されていることが好ましく、少なくとも20重量部以上含有されていることがより好ましい。
【0092】
<(C)光反応開始剤・増感剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、(C)成分として、光反応開始剤及び/又は増感剤を含有する。光反応開始剤及び/又は増感剤を添加してなる感光性ドライフィルムレジストを露光した場合に、露光領域にて架橋反応や重合反応を促進することができる。これにより、露光領域と未露光領域とで、感光性ドライフィルムレジストのアルカリ水溶液への溶解性を十分に異なるようにすることができ、それゆえに、感光性ドライフィルムレジスト上にパターンを好適に現像することが可能になる。
【0093】
上記光反応開始剤としては、ラジカル発生剤、光カチオン発生剤、光塩基発生剤、光酸発生剤等を挙げることができる。
【0094】
上記ラジカル発生剤としては、特に限定されないが、g線程度の長波長の光によりラジカルを発生するものが好ましく、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンなどのケトン化合物、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド化合物、ビス(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等のチタノセン化合物を挙げることができる。とくに、感度の高いホスフィンオキサイド化合物やチタノセン化合物を用いることが好ましい。
【0095】
また、上記光カチオン発生剤としては、例えば、ジメトキシアントラキノンスルフォン酸のジフェニルヨードニウム塩等のジフェニルヨードニウム塩類、トリフェニルスルフォニウム塩類、ピリリニウム塩類、トリフェニルオニウム塩類、ジアゾニウム塩類等を挙げることができる。なお上記塩類の他、カチオン硬化性の高い脂環式エポキシやビニルエーテル化合物を混合することが好ましい。
【0096】
さらに、上記光塩基発生剤としては、ニトロベンジルアルコールやジニトロベンジルアルコールとイソシアナートの反応により得られるベンジルアルコール−ウレタン化合物、ニトロ−1−フェニルエチルアルコールやジニトロ−1−フェニルエチルアルコールとイソシアナートの反応により得られるフェニルアルコール−ウレタン化合物、ジメトキシ−2−フェニル−2−プロパノールとイソシアナートの反応により得られるプロパノ−ル−ウレタン化合物等を挙げることができる。
【0097】
また、光酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルフォニウム塩、オニウム塩等のスルホン酸を発生させる化合物、ナフトキノンジアジド等のカルボン酸を発生させる化合物を挙げることができる。あるいは、ジアゾニウム塩や、ビス(トリクロロメチル)トリアジン類等の化合物は、光の照射によりスルホン基を生成させることができるので、これらの化合物も好ましく用いることができる。
【0098】
一方、上記増感剤としては、特に限定されないが、ミヒラケトン、ビス−4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン、4−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン等を挙げることができる。
【0099】
上記光反応開始剤及び/又は増感剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0100】
上記光反応開始剤及び/又は増感剤の使用量は、上記(A)感光性ポリイミド樹脂及び(B)(メタ)アクリル系化合物の総重量100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内であることが好ましく、0.01〜10重量部の範囲内であることがより好ましい。上記光反応開始剤及び/又は増感剤の使用量が感光性ポリイミド樹脂と(メタ)アクリル系化合物との総重量100重量部に対して、0.001重量部未満であると、あるいは10重量部を超えると、増感効果が得られず、現像性に対して悪い影響を及ぼす可能性がある。
【0101】
また、ラジカル発生剤と増感剤とを組み合わせて用いることもできる。特に、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のパーオキサイドと3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンとの組み合わせが好ましい。
【0102】
<(D)その他の成分>
本発明の感光性樹脂組成物には、上記(A)感光性ポリイミド樹脂、(B)(メタ)アクリル系化合物、並びに(C)光反応開始剤及び/又は増感剤以外に、(D)その他の成分が含有されていてもよい。その他の成分としては、エポキシ樹脂、難燃剤、硬化促進剤及び/又は硬化剤を挙げることができる。
【0103】
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂を用いることにより、作製される感光性ドライフィルムレジストに銅箔やポリイミドフィルム等への接着性を向上することができる。
【0104】
上記エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、製品名エピコート828、834、1001、1002、1003、1004、1005、1007、1010、1100L(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、製品名ESCN−220L、220F、220H、220HH、180H65(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、製品名EPPN−502H(日本化薬(株)製)等のトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、製品名ESN−375等のナフタレンアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、製品名ESN−185(新日鐵化学(株))等のノボラック型エポキシ樹脂、製品名YX4000H等のビフェノール型エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0105】
また、上記の他、ビスフェノールAグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ノボラックグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、芳香族型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等であってもよい。
【0106】
上記エポキシ樹脂のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いればよい。なお、上記エポキシ樹脂は、(A)成分100重量部に対し、必要に応じて1〜100重量部の範囲内で用いることが好ましく、1〜50重量部の範囲内で用いることがより好ましく、2〜30重量部の範囲内で用いることが特に好ましい。上記エポキシ樹脂が1重量部未満であると、得られる感光性ドライフィルムレジストの接着性が低下する傾向があり、一方、100重量部を超えると耐熱性及び耐屈曲性の低下を引き起こす可能性がある。
【0107】
<難燃剤>
本発明の感光性樹脂組成物には、硬化後の感光性ドライフィルムレジストに難燃性を付与するために、難燃剤を含有してもよい。上記難燃剤としては、特に限定されないが、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスフィンオキシド等のリン系化合物、リン−窒素二重結合をもつホスファゼン化合物、含臭素(メタ)アクリル化合物等の含臭素有機化合物、芳香族環の含有率が高いシリコーン化合物を挙げることができる。これら難燃剤のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
上記難燃剤の使用量は、上記(A)成分である感光性ポリイミド樹脂及び(B)成分である(メタ)アクリル系化合物の総重量100重量部に対し、1〜100重量部の範囲内とすることが好ましく、1〜50重量部の範囲内とすることがより好ましく、1〜40重量部の範囲内とすることが特に好ましい。
【0109】
上記難燃剤が、感光性ポリイミド樹脂及び(メタ)アクリル系化合物の総重量100重量部に対して1重量部未満であると、十分な難燃効果が得られない場合がある。一方、100重量部を超えると、後述するBステージ状態の感光性ドライフィルムレジストにベタツキが見られたり、熱圧着時に樹脂がしみ出しやすくなったりする場合があり、さらに硬化物の物性に悪影響を与える場合があるために好ましくない。
【0110】
<硬化促進剤及び/又は硬化剤>
感光性樹脂組成物の材料としてエポキシ樹脂を用いた場合、作製される感光性ドライフィルムレジストの硬化を効率良く行うために、感光性樹脂組成物に硬化促進剤及び/又は硬化剤を添加してもよい。このような硬化促進剤及び/又は硬化剤としては特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂の硬化を効率良く行うためには、イミダゾ−ル系化合物、酸無水物、第3級アミン類、ヒドラジン類、芳香族アミン類、フェノール類、トリフェニルホスフィン類、有機過酸化物などを挙げることができる。これらの硬化促進剤及び/又は硬化剤のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いればよい。
【0111】
上記硬化促進剤及び/又は硬化剤の使用量は、(A)成分である感光性ポリイミド樹脂100重量部に対し0.1〜20重量部の範囲内であることが好ましく、1〜20重量部の範囲内であることがより好ましく、0.5〜15重量部の範囲内であることが特に好ましい。上記硬化促進剤及び/又は硬化剤が感光性ポリイミド樹脂100重量部に対して0.1重量部未満であると、エポキシ樹脂の硬化が十分に行われず、逆に20重量部を超えると耐熱性の低下を引き起こす可能性がある。
【0112】
<感光性樹脂組成物の調製方法と感光性ドライフィルムレジストの製造方法>続いて、感光性樹脂組成物の調製方法及び感光性ドライフィルムレジストの作製方法について説明する。感光性ドライフィルムレジストは、感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を支持体フィルム上に均一に塗布・乾燥して作製される。
【0113】
<感光性樹脂組成物の調製方法>
まず、本発明の感光性樹脂組成物の調製方法について説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)感光性ポリイミド樹脂、(B)(メタ)アクリル系化合物、(C)光反応開始剤及び/又は増感剤、並びに必要に応じて(D)その他の成分をある割合で混合したものであり、それを有機溶媒に均一に溶解させた溶液を感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液という。この有機溶媒としては、感光性樹脂組成物に含有される成分を溶解することができる有機溶媒であれば、特に限定されるものではない。上記有機溶媒としては、例えば、ジオキソラン、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール系溶媒等を挙げることができる。これらの有機溶媒は1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、後の工程にて、上記有機溶媒の除去を行うので、上記感光性樹脂組成物に含有される成分を溶解し、できるだけ沸点の低いものを選択することが、製造工程上有利である。
【0114】
<感光性ドライフィルムレジストの製造方法>
続いて、上記の感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を支持体フィルム上に均一に塗布した後、加熱及び/又は熱風吹き付けを行う。これによって、上記有機溶媒を除去し、感光性樹脂組成物がフィルム状となった感光性ドライフィルムレジストを得る。このように形成された感光性ドライフィルムレジストは、感光性樹脂組成物を半硬化状態(Bステージとも言う。)で保ったものである。それゆえ、熱ラミネート処理等の熱圧着処理を行う場合には適度な流動性を持ち、プリント配線板のパターン回路の埋め込みを好適に行うことができる。また、パターン回路を埋め込んだ後、露光処理、熱圧着処理、加熱キュアを行うことによって、完全に硬化させることができる。
【0115】
上記加熱及び/又は熱風吹き付けを行うことによって、感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を乾燥する時の温度は、感光性樹脂組成物に含有される(メタ)アクリル基、エポキシ基などの硬化性基が反応しない程度の温度であればよい。具体的には、120℃以下であることが好ましく、100℃以下であることが特に望ましい。また、乾燥時間は有機溶媒を除去することが可能な範囲内で、より短い時間とすることが好ましい。
【0116】
上記支持体フィルムの材料としては、得に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルムなど、通常市販されている各種のフィルムが使用可能である。上記支持体フィルムのうち、ある程度の耐熱性を有し、比較的安価に手に入る点から、PETフィルムが多く用いられる。なお、支持体フィルムの感光性ドライフィルムレジストとの接合面については、密着性と剥離性を向上させるために表面処理されているものを用いてもよい。
【0117】
また、支持体フィルムの厚みは、特に制限されないが、5〜50μmの範囲内であることが好ましく、10〜30μmの範囲内であることがより好ましい。支持体フィルムの厚みが5μm未満であると、支持体フィルムにしわが生じて、操作性が低下する傾向がある。また、支持体フィルムの厚みが50μmを超えると、感光性ドライフィルムレジストを巻き取り難くなるという問題が生じる。
【0118】
さらに、感光性樹脂組成物を支持体フィルムに塗布し乾燥して作製した感光性ドライフィルムレジストの上には、保護フィルムを積層することが好ましい。空気中のゴミやチリが付着することを防ぎ感光性ドライフィルムレジストの乾燥による品質の劣化を防ぐことができる。
【0119】
従って、保護フィルムは、感光性ドライフィルムレジスト面に10℃〜50℃の温度でラミネートして積層することが好ましい。なお、ラミネート処理時の温度が50℃よりも高くなると、保護フィルムの熱膨張を招き、ラミネート処理後の保護フィルムにしわやカールが生じる場合がある。
【0120】
上記保護フィルムは使用時には剥離するため、保護フィルムと感光性ドライフィルムレジストとの接合面は、保管時には適度な密着性を有し、かつ剥離性に優れていることが好ましい。
【0121】
保護フィルムの材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンフィルム(PEフィルム)、ポリエチレンビニルアルコールフィルム(EVAフィルム)、「ポリエチレンとエチレンビニルアルコールの共重合体フィルム」(以下(PE+EVA)共重合体フィルムと略す)、「PEフィルムと(PE+EVA)共重合体フィルムの貼り合せ体」、もしくは「(PE+EVA)共重合体とポリエチレンとの同時押し出し製法によるフィルム」(片面がPEフィルム面であり、もう片面が(PE+EVA)共重合体フィルム面であるフィルムとなる)等を挙げることができる。
【0122】
上記PEフィルムは安価であり、表面の滑り性に優れているという長所がある。また、(PE+EVA)共重合体フィルムは、感光性ドライフィルムレジストへの適度な密着性と剥離性とを備えている。このような保護フィルムを用いることにより、保護フィルム、感光性ドライフィルムレジスト、支持体フィルムの3層を有する三層構造シートをロール状に巻き取った場合に、その表面の滑り性を向上することができる。
【0123】
<プリント配線板の作製>
本発明にかかる感光性ドライフィルムレジストを絶縁保護層として形成してなるプリント配線板を作製する手法について、説明する。プリント配線板として、パターン回路が形成されてなる銅箔(以下、回路付きCCLとも言う。)を用いる場合を例に挙げて説明するが、多層のプリント配線板を形成する場合にも、同様の手法により層間絶縁層を形成することができる。
【0124】
まず、上記にて説明した保護フィルム、感光性ドライフィルムレジスト、支持体フィルムを有してなる三層構造シートから保護フィルムを剥離する。以下では、保護フィルムが剥離されたものを支持体フィルム付き感光性ドライフィルムレジストと記載する。そして、感光性ドライフィルムレジストと回路付きCCLとが対向するように、該回路付きCCLを、支持体フィルム付き感光性ドライフィルムレジストにて覆い、熱圧着によって貼り合せる。この熱圧着による貼り合わせは、熱プレス処理、ラミネート処理(熱ラミネート処理)、熱ロールラミネート処理等によって行えばよく、特に限定されるものではない。
【0125】
上記貼り合わせを、熱ラミネート処理、熱ロールラミネート処理(以下、ラミネート処理と記載)によって行う場合、処理温度は、ラミネート処理が可能である下限の温度(以下、圧着可能温度)以上であればよい。具体的には、上記圧着可能温度は、50〜150℃の範囲内であることが好ましく、60〜120℃の範囲内であることがより好ましく、特に80〜120℃の範囲内であることが好ましい。
【0126】
上記処理温度が150℃を超えると、ラミネート処理時に、感光性ドライフィルムレジストに含まれる感光性反応基の架橋反応が生じ、感光性ドライフィルムレジストの硬化が進行する場合がある。一方、上記処理温度が50℃未満であると、感光性ドライフィルムレジストの流動性が低く、パターン回路を埋め込むことが困難となる。さらに、銅回路付きCCLの銅回路や該銅回路付きCCLのベースフィルムとの接着性が低下する場合がある。
【0127】
上記の熱圧着処理によって、回路付きCCL上に感光性ドライフィルムレジストが積層され、さらに支持体フィルムが積層されたサンプルが得られる。次いで、この貼り合わせサンプルについてパターン露光及び現像を行う。パターン露光及び現像に際しては、上記貼り合わせサンプルの支持体フィルム上にフォトマスクパターンを配置し、該フォトマスクを介して露光処理を行う。その後、支持体フィルムを剥離して現像処理を行うことにより、フォトマスクパターンに応じた穴(ビア)が形成される。
【0128】
なお、上記支持体フィルムは、露光処理後に剥離しているが、回路付きCCL上に支持体フィルム付き感光性ドライフィルムレジストが貼り合わせられた後に、すなわち、露光処理を行う前に剥離してもよい。感光性ドライフィルムレジストを保護する点からは、露光処理が完了した後に剥離することが好ましい。
【0129】
ここで露光に用いる光源としては、300〜430nmの光を有効に放射する光源が好ましい。この理由は、感光性ドライフィルムレジストに含有される光反応開始剤が、通常450nm以下の光を吸収して機能するためである。
【0130】
また、上記現像処理に用いる現像液としては、塩基性化合物が溶解した塩基性溶液を用いればよい。塩基性化合物を溶解させる溶媒としては、上記塩基性化合物を溶解することができる溶媒であれば特に限定されないが、環境問題等の観点から、水を使用することが特に好ましい。
【0131】
上記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩や、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アミン化合物等を挙げることができる。上記塩基性化合物は1種を用いてもよいし、2種以上の化合物を用いてもよい。
【0132】
上記塩基性溶液に含有される塩基性化合物の濃度は、0.1〜10重量%の範囲内であることが好ましいが、感光性ドライフィルムレジストの耐アルカリ性の点から、0.1〜5重量%の範囲内とすることがより好ましい。
【0133】
なお、現像処理の方法としては、特に限定されないが、塩基性溶液中に現像サンプルを入れて攪拌する方法や、現像液をスプレー状にして現像サンプルに噴射する方法等が挙げられる。
【0134】
本発明においては、特に、液温40℃に調整した1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を現像液に用い、スプレー現像機を用いて行う現像処理が好ましい。ここで、スプレー現像機とは、現像液をスプレー状にしてサンプルに噴射する装置であれば特に限定されない。
【0135】
ここで、感光性ドライフィルムレジストのパターンが描けるまでの現像時間は、パターンが描ける時間であればよいが、180秒以下の時間で現像できることが好ましく、90秒以下の時間で現像できることがより好ましく、60秒以下の時間で現像できることが最も好ましい。現像時間が180秒を超えると生産性の点から好ましくない。
【0136】
ここで、現像時間の目安として、Bステージ(半硬化)状態の感光性ドライフィルムレジストの溶解時間を測定する方法がある。具体的には、感光性ドライフィルムレジストを銅箔光沢面に貼り合わせたサンプルを、未露光の状態で、1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液(液温40℃)を現像液として、スプレー圧0.85MPaで、スプレー現像処理を行うという方法である。このスプレー現像処理により、感光性ドライフィルムレジストが180秒以下の時間で溶解して除去されることが好ましい。感光性ドライフィルムレジストが溶解除去されるまでの時間が180秒を超えると、作業性が低下する。
【0137】
上記のように露光・現像処理が施された後、感光性ドライフィルムレジストに対して、加熱キュアを行うことにより、感光性ドライフィルムレジストが完全に硬化する。これにより、硬化した感光性ドライフィルムレジストは、プリント配線板の絶縁保護膜となる。
【0138】
また、多層のプリント配線板を形成する場合には、プリント配線板の保護層を層間絶縁層とし、該層間絶縁層上に、さらにスパッタリングや鍍金、もしくは銅箔との貼り合わせ等を行った後、パターン回路を形成し、上記のように感光性ドライフィルムレジストをラミネートすればよい。これにより、多層のプリント配線板を作製することができる。
【0139】
なお、本実施の形態では、感光性ドライフィルムレジストを、プリント配線板の絶縁保護材料または層間絶縁材料として用いる場合について説明したが、上記の用途以外に用いることも可能である。
【0140】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。感光性樹脂組成物の調製及び感光性ドライフィルムレジストの具体的な製造例、及びその物性の評価は次のようにして行った。
【0141】
<感光性ドライフィルムレジストの製造例>
(1)感光性樹脂組成物の調製
ジオキソランに対して、(A)感光性ポリイミド樹脂を溶解させ、その固形分重量%(Sc)=30%として、感光性ポリイミド樹脂のワニスを調製した。この感光性ポリイミド樹脂のワニスに対して、(B)(メタ)アクリル系化合物、(C)光反応開始剤及び/又は増感剤、並びに必要に応じて(D)その他の成分を混合・攪拌し、感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を調製した。
【0142】
(2)感光性ドライフィルムレジストの作製
上記の溶液状の感光性樹脂組成物を、乾燥後の厚み(感光性ドライフィルムレジストの厚み)が20〜25μmになるように支持体フィルムに塗布した。支持体フィルムとしては、PETフィルム(東レ(株)製ルミラー、厚み25μm)を用いた。その後、支持体フィルム上の塗布層を100℃・2分間の条件で乾燥することによって、ジオキソランを除去した。これにより、感光性ドライフィルムレジスト/PETフィルム(支持体フィルム)からなる2層構造シートを得た。なお、感光性ドライフィルムレジスト層はBステージ状態にある。
【0143】
続いて、上記2層構造シートにおける感光性ドライフィルムレジスト層の上に、ポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製、GF−1、厚み40μm)をロール温度20℃、75000Pa・mの条件でロールラミネートして、保護フィルム/感光性ドライフィルムレジスト/PETフィルムの三層を有する3層構造シートを得た。
【0144】
<感光性ドライフィルムレジストの物性の評価>
上記のようにして製造された感光性ドライフィルムレジストについて、次に示す各項目の物性について評価を行った。具体的には、▲1▼アルカリ水溶解性試験、▲2▼現像性、▲3▼耐熱性、▲4▼電気絶縁性についての評価を行った。
【0145】
<アルカリ水溶解性試験>
まず、電解銅箔(三井金属(株)製、厚み38μm)を10重量%硫酸水溶液で1分間ソフトエッチング(銅箔表面の防錆剤を除去する工程である)し、水洗い後、エタノール、アセトンで表面を洗ってから乾燥させる。感光性ドライフィルムレレジストの保護フィルムを剥離後、前記電解銅箔(ソフトエッチング後)の光沢面に、100℃、75000Pa・mの条件でラミネートした。次いで、PETフィルムを剥離した後、スプレー現像機(サンハヤト(株)製エッチングマシーンES−655D)を用いて、1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(液温40℃)、スプレー圧0.85MPa、現像時間30〜240秒間の条件で現像処理を行った。現像後のサンプルは、蒸留水により洗浄して、現像液を除去し、乾燥させた。
【0146】
感光性ドライフィルムレジストが貼り合わされた銅箔光沢面から、感光性ドライフィルムレジストが完全に除去されるのに必要な最短の現像時間をBステージ状態の溶解時間とした。この感光性ドライフィルムレジストのBステージ状態での溶解時間が180秒以下のものを合格とし、180秒を超えるものを不合格とした。
【0147】
<現像性>
上記と同じ方法で、感光性ドライフィルムレジストの保護フィルムを剥離後、電解銅箔(ソフトエッチング後)の光沢面に、100℃、75000Pa・mの条件でラミネートした。この積層体のPETフィルムの上に、100×100μm角及び200×200μm角の微細な四角を描いたマスクパターンをのせ、波長400nmの光を300mJ/cm2だけ露光した。このサンプルのPETフィルムを剥離した後、スプレー現像機(サンハヤト(株)製エッチングマシーンES−655D)を用いて、1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(液温40℃)、スプレー圧0.85MPa、現像時間30秒間〜180秒間の条件で現像した。現像によって形成したパターンは、次いで蒸留水により洗浄して、現像液を除去し、乾燥させた。光学顕微鏡で観察して少なくとも200×200μm角の四角が現像できていれば、合格とした。
【0148】
<耐熱性(半田耐熱性)>
銅箔(三井金属(株)製の電解銅箔、厚み35μm)を5cm角にカットし10重量%硫酸水溶液で1分間ソフトエッチングし、水洗い後、エタノール、アセトンで表面を洗ってから乾燥させた。次に4cm角にカットした感光性ドライフィルムレジストの保護フィルムを剥離し、上記電解銅箔(ソフトエッチング後)の光沢面に重ねて、100℃、75000Pa・mの条件でラミネートした。この貼り合わせサンプルの感光性ドライフィルムレジスト面に波長400nmの光を300mJ/cm2露光した後、180℃で2時間キュアして硬化させた。このサンプルを▲1▼常態(20℃/相対湿度40%の環境で24時間)、▲2▼吸湿(40℃/相対湿度85%の環境で48時間)調湿した後に、270℃以上の溶融半田に30秒間ディップし、銅箔と感光性ドライフィルムレジストの界面に膨れが発生したり剥離したりしていないか観察した。溶融半田の温度を徐々に上げていき、10℃毎に30秒間ずつディップして何℃まで異常が発生しないか調べた。異常の発生しなかった最高温度を30秒ディップ可能温度とした。30秒ディップ可能温度が300℃以上であれば合格とした。
【0149】
<電気絶縁性>
銅箔付きポリイミドフィルム(新日鐵化学(株)製、商品名エスパネックス、ポリイミドフィルムの厚み25μm、銅箔の厚み18μm)の銅箔面、レジストフィルム(旭化成(株)製、サンフォート)を用いて、ライン/スペース=50/50μmの櫛型パターンを形成して、回路付きCCLを得た。保護フィルムを剥離した感光性ドライフィルムレジストを、この回路付きCCLの櫛型パターン部分の上を被覆するように重ねて、100℃、75000Pa・mの条件でラミネートした。この貼り合わせサンプルの感光性ドライフィルムレジスト面に波長400nmの光を300mJ/cm2露光した後、PETフィルムを剥離し、180℃で2時間キュアして硬化させた。
【0150】
このサンプルを温度85℃/相対湿度85%の条件の恒温恒湿器(エスペック製、製品名プラチナスPR―2K)の中に入れ、櫛型パターンの端子間に100Vの電圧を印加し続け、30分間おきに線間絶縁抵抗を測定した。印加時間が500時間の時点での抵抗値が1.0×108Ω以上であれば合格とした。500時間未満で回路が短絡してしまうものは不合格とした。
【0151】
感光性ポリイミド樹脂の原料としては、以下の市販品を使用した。原料として、(2,2’−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエ−ト)−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物(和歌山精化(株)製、以下ESDAとも言う。)、シリコンジアミン(信越化学(株)製、製品名KF−8010)、以下に示す2,2’−ジアミノビスフェノールA(群栄化学(株)製、製品名DAM−1):
【0152】
【化11】
以下に示すアミノ基含有フェノール誘導体(群栄化学(株)製、製品名DAM−R1):
【0153】
【化12】
以下に示す2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以下、bis−AP−AFと示す。):
【0154】
【化13】
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン(以下、BAPS−Mと示す。)、メタクリル酸グリシジル(和光純薬製)、トリエチルアミン(和光純薬製)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩(製品名Q−1301、和光純薬製)を用いた。
【0155】
また、感光性ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、東ソー社製HLC8220GPCを使用して、サイズ排除クロマトグラフィーにより、ポリエチレンオキシド換算で算出した。
【0156】
(実施例1)
<(A)感光性ポリイミド樹脂(a)の合成>
攪拌機を設置した500mlのセパラブルフラスコに群栄化学製のジアミンDAM−1を69.7g (0.27mol)、DMF100gを入れ、DAM−1のDMF溶液を調製した。次に上記DMF溶液に、シリコンジアミンKF−8010(信越シリコーン製)24.9g (0.03mol)を添加し、激しく攪拌した。溶液が均一になった後、さらに、ESDA173g (0.30mol)をDMF300gに溶解させた溶液を加えて約1時間激しく攪拌した。このようにして得たポリアミド酸溶液をフッ素系樹脂でコートしたバットにとり真空オーブンで200℃、660Paの圧力で2時間減圧乾燥し、241.0gの水酸基を含有するポリイミドを得た。
【0157】
得られた水酸基を含有するポリイミド100gを、DMF200gに溶解させ、メタクリル酸グリシジル15.1g(0.11mol)、トリエチルアミン1.0g (0.01mol)、重合禁止剤として、Q−1301を0.1g加え、80℃で5時間攪拌を行った。この溶液をメタノール1000mlに投入し、析出した樹脂分をミキサーで粉砕後、メタノールで洗浄、乾燥して、113.4gの感光性ポリイミド樹脂を得た。このポリイミドの酸当量は1132、重量平均分子量は35000であった。
【0158】
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
上記で合成した感光性ポリイミド樹脂(a) 15gをジオキソラン35gに溶解させ、固形分重量%(Sc) =30%のワニスを作製した。
【0159】
以下に示す成分を混合して感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を調製し、Bステージ状態の感光性ドライフィルムレジストを作製した。
(A)感光性ポリイミド樹脂
上記感光性ポリイミド樹脂(a)(固形分で換算)・・・・・50重量部
(B)(メタ)アクリル系化合物
・ビスフェノールA EO変性(エチレンオキサイド変性部位の繰り返し単位;m+n≒4)ジアクリレート(東亞合成(株)製、製品名アロニックスM−211B)・・・・・40重量部
・ビスフェノールA EO変性(エチレンオキサイド変性部位の繰り返し単位m+n≒30)ジアクリレート(新中村化学工業(株)製、製品名NKエステルA−BPE−30)・・・・・10重量部
(C)光反応開始剤
ビス(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6’−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、製品名イルガキュア784)・・・・・1重量部
【0160】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性の評価は、次のようになった。
アルカリ溶解性試験:40秒で合格。
現像性:100×100μm角の穴及び200×200μm角の穴が現像できており合格。
耐熱性:常態、吸湿ともに、30秒ディップ可能温度はそれぞれ320℃であり合格。
電気絶縁性:7.13×108Ωで合格。
【0161】
(実施例2)
<(A)感光性ポリイミド樹脂(b)の合成>
実施例1で合成した水酸基を含有するポリイミド100gを、DMF100gに溶解させ、メタクリル酸無水物16.9g(0.11mol)、トリエチルアミン1.0g (0.01mol)を加え、室温で3時間、50℃で約1時間加熱攪拌した。この溶液をメタノール1000mlに投入し、析出した樹脂分をミキサーで粉砕後、メタノールで洗浄、乾燥して、115.9gの感光性ポリイミド樹脂を得た。このポリイミドの酸当量は1058、重量平均分子量は34000であった。
【0162】
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
上記で合成した感光性ポリイミド(b)15gをジオキソラン35gに溶解させ、固形分重量%(Sc) = 30%のワニスを作製した。
【0163】
以下に示す成分を混合して感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を調製し、Bステージ状態の感光性ドライフィルムレジストを作製した。
(A)感光性ポリイミド樹脂
上記感光性ポリイミド樹脂(b)(固形分で換算)・・・・・50重量部
(B)(メタ)アクリル系化合物
・ビスフェノールA EO変性(エチレンオキサイド変性部位の繰り返し単位;m+n≒4)ジアクリレート(東亞合成(株)製、製品名アロニックスM−211B)・・・・・40重量部
・ビスフェノールA EO変性(エチレンオキサイド変性部位の繰り返し単位m+n≒30)ジアクリレート(新中村化学工業(株)製、製品名NKエステルA−BPE−30)・・・・・10重量部
(C)光反応開始剤
ビス(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6’−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、製品名イルガキュア784)・・・・・1重量部
【0164】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性の評価は、次のようになった。
アルカリ溶解性試験:40秒で合格。
現像性:100×100μm角の穴及び200×200μm角の穴が現像できており合格。
耐熱性:常態、吸湿ともに、30秒ディップ可能温度はそれぞれ320℃であり合格。
電気絶縁性:7.55×108Ωで合格。
【0165】
(実施例3)
<(A)感光性ポリイミド樹脂(c)の合成>
攪拌機を設置した500mlのセパラブルフラスコにDAM−R1を185g (0.27mol)、DMF100gを入れ、DAM−R1のDMF溶液を調製した。次に上記DMF溶液に、シリコンジアミンKF−8010(信越シリコーン製)24.9g (0.03mol) を加え激しく攪拌した。溶液が均一になった後、ESDA173g (0.30mol)をDMF300gに溶解した溶液を添加し、約1時間激しく攪拌した。このようにして得たポリアミド酸溶液をフッ素系樹脂でコートしたバットにとり真空オーブンで200℃、660Paの圧力で2時間減圧乾燥し、345gの水酸基を含有するポリイミドを得た。
【0166】
得られた水酸基を含有するポリイミド139.8gを、DMF200gに溶解させ、メタクリル酸グリシジル15.1g(0.11mol)、トリエチルアミン1.0g (0.01mol)、重合禁止剤として、Q−1301を0.1g加え、80℃で5時間攪拌を行った。この溶液をメタノール1000mlに投入し、析出した樹脂分をミキサーで粉砕後、メタノールで洗浄、乾燥して、145.4gの感光性ポリイミド樹脂を得た。このポリイミドの酸当量は1510、重量平均分子量は28000であった。
【0167】
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
上記で合成した感光性ポリイミド(c)樹脂7.5g、及び実施例1で合成した感光性ポリイミド(a)樹脂7.5gをジオキソラン35gに溶解させ、固形分重量%(Sc)= 30%のワニスを作製した。
【0168】
次に、以下に示す成分を混合して感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を調製し、Bステージ状態の感光性ドライフィルムレジストを作製した。
(A)感光性ポリイミド樹脂
上記感光性ポリイミド樹脂(a)(固形分で換算)・・・・・30重量部
上記感光性ポリイミド樹脂(c)(固形分で換算)・・・・・30重量部
(B)(メタ)アクリル系化合物
・ビスフェノールA EO変性(エチレンオキサイド変性部位の繰り返し単位m+n≒30)ジアクリレート(新中村化学工業(株)製、製品名NKエステルA−BPE−30)・・・・・20重量部
・ビスフェノールA EO変性(エチレンオキサイド変性部位の繰り返し単位m+n≒10)ジアクリレート(新中村化学工業(株)製、製品名NKエステルA−BPE−10)・・・・・20重量部
(C)光反応開始剤
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、製品名イルガキュア819)・・・・・1重量部
【0169】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性の評価は、次のようになった。
アルカリ溶解性試験:60秒で合格。
現像性:200×200μm角の穴が現像できており合格。
耐熱性:常態、吸湿ともに、30秒ディップ可能温度はそれぞれ340℃であり合格。
電気絶縁性:1.71×108Ωで合格。
【0170】
(実施例4)
<(A)感光性ポリイミド樹脂(d)の合成>
攪拌機を設置した500mlのセパラブルフラスコにジアミンbis−AP−AFを76.9g (0.21mol)、DMF100gを入れ、bis−AP−AFのDMF溶液を調製した。次に上記DMF溶液に、シリコンジアミンKF−8010(信越シリコーン製)74.7g (0.09mol)を加えて激しく攪拌した。溶液が均一になった後、ESDA173g (0.30mol)、DMF300gに溶解した溶液を添加し、約1時間激しく攪拌した。このようにして得たポリアミド酸溶液をフッ素系樹脂でコートしたバットにとり真空オーブンで200℃、660Paの圧力で2時間減圧乾燥し、285.6gの水酸基を含有するポリイミドを得た。
【0171】
得られた水酸基を含有するポリイミド111.4gを、DMF200gに溶解させ、メタクリル酸グリシジル15.1g(0.11mol)、トリエチルアミン1.0g (0.01mol)、重合禁止剤として、Q−1301を0.1g加え、80℃で5時間攪拌を行った。この溶液をメタノール1000mlに投入し、析出した樹脂分をミキサーで粉砕後、メタノールで洗浄、乾燥して、120.1gの感光性ポリイミド樹脂を得た。このポリイミドの酸当量は1240、重量平均分子量は43000であった。
【0172】
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
上記で合成した感光性ポリイミド樹脂(d)15gをジオキソラン35gに溶解させ、固形分重量%(Sc) = 30%のワニスを作製した。
【0173】
以下に示す成分を混合して感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を調製し、Bステージ状態の感光性ドライフィルムレジストを作製した。
(A)感光性ポリイミド
上記感光性ポリイミド(d)(固形分で換算)・・・・・60重量部
(B)(メタ)アクリル系化合物
・グリシジルメタクリレート・・・・・5重量部
・エポキシアクリレート(新中村化学工業(株)製、製品名NKオリゴEA−1010)・・・・・25重量部
・ビスフェノールA EO変性(エチレンオキサイド変性部位の繰り返し単位m+n≒30)ジアクリレート(新中村化学工業(株)製、製品名NKエステルA−BPE−30)・・・・・10重量部
(C)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、製品名イルガキュア819)・・・・・1重量部
(D)その他の成分
硬化剤として、
4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(DDS)・・・・・3重量部
【0174】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性の評価は、次のようになった。
アルカリ溶解性試験:40秒で合格。
現像性:100×100μm角の穴及び200×200μm角の穴が現像できており合格。
耐熱性:常態、吸湿ともに、30秒ディップ可能温度はそれぞれ320℃であり合格。
電気絶縁性:1.75×109Ωで合格。
【0175】
(実施例5)
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
以下に示す成分を混合して感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を調製し、Bステージ状態の感光性ドライフィルムレジストを作製した。
(A)感光性ポリイミド樹脂
実施例4で合成した感光性ポリイミド(d)(固形分で換算)・・・・・40重量部
(B)(メタ)アクリル系化合物
・エポキシアクリレート(新中村化学工業(株)製、製品名NKオリゴEA−1010)・・・・・10重量部
・ビスフェノールAタイプのエポキシアクリレート(ダイセルUCB(株)製、製品名Ebecryl3700)・・・・・30重量部
・ビスフェノールA EO変性(エチレンオキサイド変性部位の繰り返し単位m+n≒30)ジアクリレート(新中村化学工業(株)製、製品名NKエステルA−BPE−30)・・・・・10重量部
(C)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、製品名イルガキュア819)・・・・・3重量部
(D)その他の成分
エポキシ樹脂として、
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、製品名エピコート828)・・・・・10重量部
硬化剤として、
・4,4’−ジアミノジフェニルメタン(DDM)・・・・・1重量部
【0176】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性の評価は、次のようになった。
アルカリ溶解性試験:50秒で合格。
現像性:100×100μm角の穴及び200×200μm角の穴が現像できており合格。
耐熱性:常態、吸湿ともに、30秒ディップ可能温度はそれぞれ330℃であり合格。
電気絶縁性:3.21×109Ωで合格。
【0177】
(比較例1)
<ベースポリマーの合成>
上記(A)成分の感光性ポリイミド樹脂の代わりに使用する感光性樹脂組成物の中で含有重量の最も大きいポリマー成分をベースポリマーと称する。
【0178】
(ポリイミド樹脂の合成)
攪拌機を設置した500mlのセパラブルフラスコにESDA173g (0.30mol)、DMF300gを入れ、ESDAのDMFワニスを調製した。次に上記DMFワニスに、BAPS−M86.5g (0.20mol)をDMF100gに溶解した溶液を添加し、激しく攪拌した。溶液が均一になった後、シリコンジアミンKF−8010(信越シリコーン製)83.5g (0.10mol)を加え1時間激しく攪拌した。
【0179】
このようにして得たポリアミド酸溶液をフッ素系樹脂でコートしたバットにとり真空オーブンで200℃、660Paの圧力で2時間減圧乾燥し、315gのポリイミドを得た。
【0180】
このポリイミドは、イミド樹脂中に水酸基を有さず、感光性基も導入されていない。
【0181】
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
上記で合成したポリイミド15gをジオキソラン35gに溶解させ、固形分重量%(Sc)= 30%のワニスを作製した。
【0182】
実施例1の(A)成分の代わりに上記で合成したポリイミドをベースポリマーとして用いること以外は、全く同様の条件で感光性ドライフィルムレジストを作製した。
【0183】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性の評価は、次のようになった。
アルカリ溶解性試験:180秒間現像処理を行っても、感光性ドライフィルムレジストの厚みが現像前の25μmから現像後に22μmに減少するだけで、感光性ドライフィルムレジストがサンプル全面に溶け残っており不合格。
現像性:100×100μm角の穴、200×200μm角の穴がともに現像できておらず不合格。
耐熱性:常態、吸湿ともに、30秒ディップ可能温度はそれぞれ320℃であり合格。
電気絶縁性:2.88×1010Ωであり合格。
【0184】
このように、水酸基を含有しないポリイミドをベースポリマーとして用いると、耐熱性や電気絶縁性は良好であったが、アルカリ溶解性及び現像性が悪かった。
【0185】
(比較例2)
<ベースポリマーの合成>
原料として、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、及びメタクリル酸のモノマーを用いた。これらのモノマー成分を、公知の方法を用いて共重合し、カルボキシル基含有共重合体を得た。この時の各モノマー成分の重合比は、メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート/2−エチルへキシルアクリレート/メタクリル酸=60/10/10/20(重量基準)とした。
【0186】
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
実施例5の(A)成分の代わりに上記で合成したアクリル系共重合体をベースポリマーとして用いること以外は、実施例5と全く同様の条件で感光性ドライフィルムレジストを作製した。
【0187】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性の評価は、次のようになった。
アルカリ溶解性試験:30秒間で合格。
現像性:100×100μm角の穴、200×200μm角の穴がともに現像できており合格。
耐熱性:30秒ディップ可能温度は常態で270℃、吸湿で250℃であり、不合格。
電気絶縁性:印加時間220時間経過後に回路が短絡し、不合格。
【0188】
このように、芳香環を有さない構造のモノマーから合成されるアクリル系共重合体をベースポリマーとして用いると、アルカリ溶解性及び現像性は良好であるが、耐熱性や電気絶縁性が劣る結果となった。
【0189】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る感光性樹脂組成物、及びそれから作製される感光性ドライフィルムレジストは、水酸基を含有するポリイミド樹脂に、炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性ポリイミド樹脂、(メタ)アクリル系化合物、並びに光反応開始剤及び/又は増感剤を含有することを特徴としているので、塩基性水溶液での現像性が良好であり、かつ電気絶縁性に優れたものとなっている。さらに、感光性ポリイミド樹脂の水酸基当量を制御することにより、アルカリ水溶液で短時間に溶解可能な感光性ドライフィルムレジストを提供することができる。
【0190】
したがって、本発明は、FPC等のプリント配線板を製造する産業、例えば電子部品用の樹脂材料を製造する樹脂産業分野に好適に用いることができるだけではなく、このようなプリント配線板を用いる電子機器の産業分野に好適に用いることができるという効果を奏する。
Claims (11)
- (A)水酸基を含有するポリイミド樹脂に、炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性ポリイミド樹脂、(B)(メタ)アクリル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル系化合物、並びに(C)光反応開始剤及び/又は増感剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
- 上記(A)成分が、アミノ基含有フェノール誘導体を、原料の一部として用いた感光性ポリイミド樹脂であって、上記アミノ基含有フェノール誘導体は、2以上のフェノール化合物が、原子又は原子団を介して鎖状に結合しており、かつ両端のフェノール化合物が、ベンゼン環の水素原子の1つがアミノ基で置換されている化合物であることを特徴とする、請求項1記載の感光性樹脂組成物。
- 上記感光性ポリイミド樹脂の原料の一部として用いられる上記アミノ基含有フェノール誘導体が、一般式(1):
で表される化合物であることを特徴とする、請求項2記載の感光性樹脂組成物。 - 上記(A)成分が、次の一般式(2):
で表される繰り返し単位を少なくとも1つ以上含む感光性ポリイミド樹脂であることを特徴とする、請求項1記載の感光性樹脂組成物。 - 上記(A)成分である感光性ポリイミド樹脂の重量平均分子量が、5000以上、200000以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
- 上記(A)成分である感光性ポリイミド樹脂のフェノール性水酸基1個あたりの重量平均分子量が、10000以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
- 上記(B)成分が、1分子内に少なくとも1つ以上のエポキシ基及び1つ以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリル系化合物を含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
- 上記(B)成分が、1分子内に少なくとも2つ以上の水酸基を有するエポキシ(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物から作製される感光性ドライフィルムレジスト。
- 現像液として、40℃、1重量%の水酸化ナトリウムを用いるとともに、現像手段としてスプレー現像機を用いた場合に、スプレー圧0.85MPaの条件下での溶解時間が、180秒以下となっていることを特徴とする、請求項9記載の感光性ドライフィルムレジスト。
- 請求項9又は10記載の感光性ドライフィルムレジストを絶縁保護フィルムとして用いるプリント基板。
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