JP3901446B2 - 電気接続箱の電線切断部構造およびその電線切断方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気接続箱内に収容される布線シートに電線を配線した後に、この電線の任意箇所をパンチなどの切断工具およびダイスなどの受け工具を用いて切断するようにした、電気接続箱の電線切断部構造およびその電線切断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジャンクションブロックなどの電気接続箱では、バスバー回路間を接続する布線部分が何本もの曲がりくねった電線で構成されて布線シート上に配線されている。このため、それら多数の電線を布線するにあたって、1本づつ組み付けるのでは能率が悪いため、全体の配線を切断することなく一筆書きの要領で連続させて布線し、その後、その一筆書き布線された電線を所定箇所で切断することにより各回路に分割する方法がある。
【0003】
このような一筆書き布線を部分的に切断する場合、従来では図6に示すように、布線シート1の電線切断部位に予め電線切断穴2を形成しておき、布線された電線3はこの電線切断穴2の片面に差し渡し状態で配置されるようになっている。そして、図7に示すように、布線シート1を裏返してダイス4上に配線3を支持させた状態で、前記電線切断穴2内にパンチ4aを打ち込み、このパンチ4aの先端部で配線3を切断するようになっている。このとき、電線3の位置ずれを防止するため、パンチ4aの外周にストリッパ4bを挿入し、このストリッパ4bの下端と前記ダイス4との間で電線3を挟持するようになっている。
【0004】
そして、配線3を切断した後にダイス4,パンチ4a,ストリッパ4bを撤去することにより、切断された電線3は、図8に示すように、電線切断穴2の中央部分でパンチ4aの幅W1(図7参照)に対応する間隔δをもって分離されることになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる従来の電気接続箱の電線切断方法では、切断時に電線3を固定するためにストリッパ4bを用い、このストリッパ4bとダイス4との間に電線3を挟み込んで保持するようになっている。このため、電線切断穴2の内幅W2(図7参照)は、ストリッパ4bを挿入するに十分な幅をもって形成される。勿論、このストリッパ4bの幅W3(図7参照)は、これの中心部に配置されるパンチ4aの幅W1よりも必然的に大きくなっている。
【0006】
従って、切断された電線3は電線切断穴2の周辺から内方に突出されることになり、その突出量X1は、図7に示すように、ストリッパ4bの厚さaと、ストリッパ4bと電線切断穴2の周辺との隙間bとが合わさった量、つまり図9に示すようにX1=a+bとなって、電線切断穴2の周辺から突出する突出部分3aの突出量が大きくなってしまう。
【0007】
このため、図10に示すように、ジャンクションブロックの製造工程などで誤って前記突出部分3aに、これを電線切断穴2の内方への力が作用した場合、この突出部分3aは、同図中破線に示すように、電線切断穴2の内方に大きく折曲されてしまう。このとき、図10に示すように、布線シート1の前記電線3を布線した側とは反対面に、バスバーなどの他の回路5が存在する場合、折曲された前記突出部分3aの先端が、電線切断穴2の開口部2aを通してこの他の回路5に接近し、場合によっては両者がショートしてしまう恐れがある。
【0008】
そこで、本発明はかかる従来の課題を解決すべく成されたもので、電線切断穴の周囲を切断工具が通過できる程度に絞って、その絞った内周部分に対応する位置で電線を切断することにより、切断した電線の突出部分を短くするようにした電気接続箱の電線切断部構造およびその電線切断方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、電線を布線する布線シートの電線切断箇所に、電線を切断する切断工具およびこれの外周に嵌合する押え工具を一側面側から挿入する電線切断穴を形成し、この電線切断穴の他側面側に差し渡された電線を、前記押え工具と、これに対して電線の反対側に配置された受け工具とで挟み固定した状態で、前記切断工具を打ち込んで電線を切断するようにした電気接続箱の電線切断部構造において、前記電線切断穴の周囲から電線配置側に突出する周縁壁部を設け、その周縁壁部の先端部に、これの周囲を内方に延長して電線と前記押え工具との間に介在させ、その延長された内側開口幅を前記切断工具を通過させるに必要かつ最小限の寸法に形成した電線押え部を設けたことを特徴とする。
【0010】
この場合、電線切断穴の周囲を内方に延設した電線押え部の内側開口で電線が切断されるが、この電線押え部の内側開口幅は切断工具を通過させるに必要かつ最小限の寸法に形成されているため、電線は電線押え部の内側辺にほぼ対応する位置で切断されることになり、切断された電線の切断端部がこの電線押え部内側から大きく突出するのが防止される。
また、この場合、電線切断穴と電線が切断される電線押え部との間に、周縁壁部の突出分の距離が存在するため、電線押え部の内側で切断された電線の端部と電線切断穴の開口部とを大きく離隔することができる。
【0013】
請求項2の発明は、電線を布線する布線シートの電線切断箇所に、電線を切断する切断工具およびこれの外周に嵌合する押え工具を一側面側から挿入する電線切断穴が形成されており、この電線切断穴の他側面側に差し渡された電線を、前記押え工具と、これに対して電線の反対側に配置された受け工具とで挟み固定した状態で、前記切断工具を打ち込んで電線を切断するようにした電気接続箱の電線切断方法において、前記電線切断穴の周囲から電線配置側に突出する周縁壁部を設け、その周縁壁部の先端部に、これの周囲を内方に延長して、その延長された内側開口幅を前記切断工具を通過させるに必要かつ最小限の寸法に形成した電線押え部を設けておき、この電線押え部と前記受け工具との間に電線を挟んだ状態で、この電線押え部を前記押え工具で押圧して電線を固定し、次いで、前記切断工具を打ち込むことを特徴とする。
【0014】
この場合、請求項1の作用として述べたように、電線押え部の内側開口で電線が切断されるため、切断された電線の切断端部がこの電線押え部内側から大きく突出するのを防止できるのは勿論のこと、この電線切断方法では、押え工具で電線を押圧する際に、この電線が布線される布線シートと一体の前記電線押え部がこの電線に直接に当接して電線を固定するため、押え工具の押圧力を付加した場合に、電線と布線シートとの相対的なずれ防止機能が向上する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。図1から図5は本発明にかかる電気接続箱の電線切断部構造の一実施形態を示し、図1は電線切断部構造での電線の切断工程を示す要部断面図、図2は電線切断部構造の要部平面図、図3は電線切断部構造の要部断面図、図4は電線切断部構造が適用される電気接続箱の分解斜視図、図5は電線切断部構造が適用された布線シートの底面図である。
【0016】
本発明の電線切断部構造10は、図4に示すように、電気接続箱としてのジャンクションブロック20に内蔵されるバスバー21と一体の布線シート22に適用される。即ち、このジャンクションブロック20は、図4に示すように、前記バスバー21と、これの片面側(図中上面側)を覆うメインカバー23と、このバスバー21の他面側(図中下面側)を覆うアンダーカバー24とを備え、バスバー21を収容した状態でメインカバー23をアンダーカバー24に被せることにより、メインカバー23の側壁23aの内側に形成される図示省略した係合部が、アンダーカバー24の側壁24aの外側に形成したロック爪24bに係合するようになっている。
【0017】
前記メインカバー23の外側面(図中上面)には、ミニヒューズ25を差し込むヒューズキャビティ23bやリレーキャビティ23cなどの複数の部品接続用コネクタが設けられる。前記バスバー21の裏側には絶縁板21aを介してプラスチック製の前記布線シート22が配置され、この布線シート22には図5に示すように、電線26を連続して配線した一筆書き布線27が取り付けられる。この一筆書き布線27は布線シート22に取付けられた後、前記電線切断部構造10に対応した部分で切断される。なお、図4に示した一筆書き布線27は、図5に示す電線切断箇所Aで切断された状態が示されるが、実際はこの組付け段階では切断されること無く全体が連続した布線となる。
【0018】
前記電線切断部構造10は、図1に示すように、電線26を布線する布線シート22の電線切断箇所Aに、矩形状の電線切断穴11が形成されており、この電線切断穴11の他側面22b側に電線26が差し渡される。この電線切断穴11は、これの周囲から電線26の配置側に周縁壁部12が環状となって所定量h突出しており、前記電線26はこの周縁壁部12の先端部に跨って差し渡される。そして、前記電線切断箇所Aで電線26を切断する際には、電線切断穴11の一側面22a側から切断工具としてのパンチ30およびこれの外周に嵌合する押え工具としてのストリッパ31を挿入する一方、他側面22b側から受け工具としてのダイス32を配置するようになっている。なお、前記電線切断穴11は矩形状に限ることはなく、また前記周縁壁部12は、この電線切断穴11の形状に沿った形状とすればよい。
【0019】
ここで、本実施形態ではこのような電線切断部構造10にあって、前記電線切断穴11を電線26配置側で絞って縮幅するようになっている。つまり、図1に示すように、前記電線切断穴11の電線配置側(他側面22b側)となる周縁壁部12の先端部に、これの周囲を内方に延長して、電線26と前記ストリッパ31との間に介在させる電線押え部13を一体に形成し、この電線押え部13の内側開口13aの幅Wを、前記パンチ30を通過させるに必要かつ最小限の寸法に形成してある。
【0020】
そして、電線26の切断時は、前記電線押え部13と前記ダイス32との間に電線26を挟んだ状態で、この電線押え部13を電線切断穴11の内方から前記ストリッパ31で押圧して電線26を固定し、次いで、前記パンチ30を打ち込む。勿論、互いに嵌合されるこれらパンチ30とストリッパ31は、軸方向の相対移動が可能となっている。そして、パンチ30の打ち込みにより、このパンチ30は電線押え部13の内側開口13aを通過して、電線26をこのパンチ30とダイス32との間に挟み込む状態で切断することになり、このとき、電線26はパンチ30の幅W1(図1参照)をもって切断される。
【0021】
そして、電線26を切断した後は、前記パンチ30、前記ストリッパ31および前記ダイス32を撤去することにより、電線26の切断端部26aは、図2および図3に示すように、電線押え部13の内側開口13aを挟んで対向した状態で分離される。なお、図3は図4に対して上下を逆として示してある。
【0022】
以上の構成により本実施形態の電線切断部構造10では、電線切断穴11を絞った電線押え部13で電線26を押え、この状態で内側開口13a内に打ち込まれるパンチ30で電線26を切断するようになっている。このとき、電線押え部13の内側開口13a幅Wはパンチ30を通過させるに必要かつ最小限の寸法に形成されているため、電線26は電線押え部13の内側辺13b,13cにほぼ対応する位置で切断されることになり、切断された電線26がこの電線押え部13の内側から大きく突出するのが防止される。
【0023】
つまり、本実施形態では図2に示すように切断された電線26の切断端部26aの突出量X2には、従来のようにストリッパ31の厚さは関係しなくなり、図1に示すように、パンチ30と電線押え部13の内側開口13aとの間に形成される僅かの隙間bが加わるのみで、X2=bとなる。従って、この切断端部26aの突出量X2は前記隙間b分の僅かとなり、この切断端部26aが電線切断穴11内に倒れ込むのを防止、若しくは著しく少なくできるようになる。
【0024】
特に、本実施形態では図3に示すように、電線切断穴11の周囲に周縁壁部12が突出され、この周縁壁部12の先端部に前記電線押え部13が設けられるため、電線切断穴11の開口部11aと電線押え部13との間を大きく離隔して、この開口部11a側にバスバーなどの他の回路21が存在する場合にも、この他の回路21と電線26の切断端部26aとの間の距離Lを大きく稼ぐことができる。従って、例え大きな外力により切断端部26aが電線切断穴11内に折曲した場合にも、この切断端部26aが前記他の回路21にショートするのを確実に防止することができる。
【0025】
また、本実施形態ではストリッパ31で電線26を押圧する際に、この電線26が布線される布線シート22と一体の電線押え部13が、この電線26に直接に当接して電線26を固定するため、ストリッパ31の押圧力を付加した場合に、電線26が布線シート22に対して相対的にずれるのを防止する機能を高めることができる。このため、電線26を常に正確な位置で切断できるため、片方の切断端部26aが長くなってしまうなどの不具合を無くすことができる。
【0026】
【発明の効果】
請求項1に記載の本発明の電線切断部構造によれば、電線切断穴の電線配置側に突出する周縁壁部先端の周囲を内方に延長した電線押え部を、電線と押え工具との間に介在させるとともに、その電線押え部の内側開口幅を切断工具を通過させるに必要かつ最小限の寸法に形成したので、電線を電線押え部の内側辺にほぼ対応する位置で切断することができるため、切断された電線の切断端部がこの電線押え部内側から大きく突出するのを防止することができる。このため、この電線の切断端部が電線切断穴の内方に倒れ込むのを防止して、この切断端部が電線切断穴の反対側に配置される他の回路とショートするなどの不具合を無くすことができる。
また、本発明によれば、前記電線押え部を、前記電線切断穴の周囲から電線の配置側に所定量突出する周縁壁部の先端部に設けたので、電線切断穴の開口部と電線の切断端部が位置する電線押え部との間に、前記周縁壁部の突出分の距離が存在することになり、電線の切断端部と電線切断穴の開口部とを大きく離隔して、他の回路とのショート防止効果をより高めることができる。
【0028】
請求項2に記載の本発明の電気接続箱の電線切断方法は、布線シートの電線切断穴の周囲から電線配置側に突出した周縁壁部の先端部に内方に延長して形成した電線押え部の内側開口幅を、切断工具を通過させるに必要かつ最小限の寸法に形成し、電線の切断時に、この電線押え部と受け工具との間に電線を挟むとともに、この電線押え部を前記押え工具で押圧して電線を固定し、次いで、前記切断工具を打ち込むようにしたので、電線押え部の内側辺にほぼ対応する位置で切断することができるため、切断された電線の切断端部がこの電線押え部内側から大きく突出するのを防止できるのは勿論のこと、押え工具で電線を押圧する際に、この電線が布線される布線シートと一体の前記電線押え部がこの電線に直接に当接して電線を固定するため、押え工具の押圧力を付加した場合に、電線が布線シートに対して相対的にずれるのを防止して、電線を常に正確な位置で切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる電気接続箱の電線切断部構造の一実施形態を示す電線の切断工程の要部断面図である。
【図2】本発明にかかる電気接続箱の電線切断部構造の一実施形態を示す要部平面図である。
【図3】本発明にかかる電気接続箱の電線切断部構造の一実施形態を示す要部断面図である。
【図4】本発明にかかる電気接続箱の電線切断部構造が適用される電気接続箱の分解斜視図である。
【図5】本発明にかかる電気接続箱の電線切断部構造が適用された布線シートの底面図である。
【図6】従来の電気接続箱の電線切断部構造の電線が切断される前段階の斜視図である。
【図7】従来の電気接続箱の電線切断部構造の電線の切断工程の要部断面図である。
【図8】従来の電気接続箱の電線切断部構造の電線を切断した状態の斜視図である。
【図9】従来の電気接続箱の電線切断部構造の電線を切断した状態の平面図である。
【図10】従来の電気接続箱の電線切断部構造の電線を切断した状態の断面図である。
【符号の説明】
10 電線切断部構造
11 電線切断穴
12 周縁壁部
13 電線押え部
13a 内側開口
22 布線シート
26 電線
30 パンチ(切断工具)
31 ストリッパ(押え工具)
32 ダイス(受け工具)
Claims (2)
- 電線を布線する布線シートの電線切断箇所に、電線を切断する切断工具およびこれの外周に嵌合する押え工具を一側面側から挿入する電線切断穴を形成し、この電線切断穴の他側面側に差し渡された電線を、前記押え工具と、これに対して電線の反対側に配置された受け工具とで挟み固定した状態で、前記切断工具を打ち込んで電線を切断するようにした電気接続箱の電線切断部構造において、
前記電線切断穴の周囲から電線配置側に突出する周縁壁部を設け、その周縁壁部の先端部に、これの周囲を内方に延長して電線と前記押え工具との間に介在させ、その延長された内側開口幅を前記切断工具を通過させるに必要かつ最小限の寸法に形成した電線押え部を設けたことを特徴とする電気接続箱の電線切断部構造。 - 電線を布線する布線シートの電線切断箇所に、電線を切断する切断工具およびこれの外周に嵌合する押え工具を一側面側から挿入する電線切断穴が形成されており、この電線切断穴の他側面側に差し渡された電線を、前記押え工具と、これに対して電線の反対側に配置された受け工具とで挟み固定した状態で、前記切断工具を打ち込んで電線を切断するようにした電気接続箱の電線切断方法において、
前記電線切断穴の周囲から電線配置側に突出する周縁壁部を設け、その周縁壁部の先端部に、これの周囲を内方に延長して、その延長された内側開口幅を前記切断工具を通過させるに必要かつ最小限の寸法に形成した電線押え部を設けておき、この電線押え部と前記受け工具との間に電線を挟んだ状態で、この電線押え部を前記押え工具で押圧して電線を固定し、次いで、前記切断工具を打ち込むことを特徴とする電気接続箱の電線切断方法。
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