JP3900926B2 - オレフィン重合用触媒およびオレフィンの重合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、遷移金属化合物を用いたオレフィン重合用触媒およびオレフィンの重合方法に関するものである。詳しくは、炭素−金属結合構造を有する遷移金属化合物をオレフィン重合用触媒の構成成分として用いることにより、ポリオレフィンを効率よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、オレフィン重合用触媒として、シクロペンタジエニル環を配位子として有する錯体とアルミノキサンを組み合わせたメタロセン触媒が、高い活性、狭い分子量分布、構造制御が可能等の理由で注目されている。例えば、特開平58−19309号公報などがある。
【0003】
また、最近、2座配位型のジイミンキレート型ニッケル錯体を触媒成分として用いることで、これまでのメタロセン触媒で製造できるポリオレフィンとは構造の異なる、数多くの分岐の入った構造を有するポリオレフィンを製造できることが報告されている。例えば、WO96/23010号などがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、新規な炭素−金属結合構造を有する遷移金属化合物を用いたポリオレフィンを効率よく製造することが可能なオレフィン重合用触媒としての用途、およびそれを用いたポリオレフィンの製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を達成するため鋭意検討の結果、炭素−金属結合構造を有する遷移金属化合物をオレフィン重合用触媒の構成成分として用い、特定の活性化助触媒を組み合わせることで、工業的に価値のあるポリオレフィンを効率よく製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は(A)炭素−金属結合構造を有する遷移金属化合物および(B)活性化助触媒、あるいは(A)炭素−金属結合構造を有する遷移金属化合物、(B)活性化助触媒および(C)有機金属化合物を構成成分とするオレフィン重合用触媒、および上記オレフィン重合用触媒の存在下、オレフィンを重合することを特徴とするオレフィンの重合方法に関するものである。
【0006】
以下に本発明を詳細に説明する。ただし、説明の中で具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0007】
本発明のオレフィン重合用触媒の構成成分として用いられる遷移金属化合物は、下記一般式(1)で表される。即ち、
【0008】
【化2】
(Mは周期表第4族、8〜10族の遷移金属原子を示す。R1は水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、置換シリル基、または置換シリル基、周期表第15族,16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示す。R2およびR3〜R6は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、置換シリル基、または置換シリル基、周期表第15族,16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示し、R2およびR3〜R6は互いに同じでも異なっていてもよい。R1,R2およびR3〜R6のうち2個以上の置換基が互いに連結されて環を形成していてもよい。Xは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、周期表第15族,16族の原子を含む置換基、またはハロゲン原子を示し、aは1〜5の整数を示す。aが2以上の場合、Xは互いに同じでも異なっていてもよい。Lはπ電子、または周期表第14族,15族,16族の原子を配位原子とする配位結合性化合物を示し、bは0〜6の整数を示す。bが2以上の場合、Lは互いに同じでも異なっていてもよい。また、R6とLとが連結されていてもよい。cは1〜3の整数を示す。a+cは中心金属Mの酸化数を示す。)
で表される構造を有する遷移金属化合物である。
【0009】
一般式(1)中、R1は水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、置換シリル基、または置換シリル基、周期表第15族,16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示す。炭素数1〜30の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、ビニル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、アリル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、フェニル基、ヘプチル基、ベンジル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、オクチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、ノニル基、クミル基、2−イソプロピルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−エチル−6−メチルフェニル基、デシル基、ナフチル基、アダマンチル基、2−ターシャリーブチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2−メチル−6−イソプロピルフェニル基、ウンデシル基、2−エチル−6−イソプロピル基、2,6−ジエチル−4−メチルフェニル基、ドデシル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2−ビフェニル基、2−シクロへキシルフェニル基、トリデシル基、2,6−ジイソプロピル−4−メチルフェニル基、テトラデシル基、2,6−ジブチルフェニル基、1−アントラセニル基、ペンタデシル基、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェニル基、2−フェニル−6−イソプロピル基、ヘキサデシル基、2−ナフチルフェニル基、2−ターシャリーブチル−6−フェニルフェニル基、ヘプタデシル基、2−ターシャリーブチル−4−メチル−6−フェニルフェニル基、オクタデシル基、2,6−ジフェニルフェニル基、ノナデシル基、トリフェニルメチル基、4−メチル−2,6−ジフェニルフェニル基、アラキジル基、2,6−ジ−p−トリルフェニル基、ヘネイコサニル基、2,6−(p−トリル)−4−メチルフェニル基、ドコサニル基、2,6−ジフェニル−4−ターシャリーブチルフェニル基、トリコサニル基、2,6−(p−トリル)−4−イソプロピルフェニル基、テトラコサニル基、2,4,6−トリフェニルフェニル基、ペンタコサニル基、2,6−ジフェニル−4−(p−トリル)フェニル基、ヘキサコサニル基、2,6−(p−トリル)−4−ビフェニル基、ヘプタコサニル基、オクタコサニル基、ノナコサニル基、トリコタニル基、2,6−ビフェニルフェニル基等を挙げることができ、置換シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジメチル−ターシャリーブチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。置換シリル基、周期表15族,16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、トリメチルシリルメチル基、ジメチルフェニルシリルメチル基、2−ジメチルアミノフェニル基、2−ジエチルアミノフェニル基、2−ジイソプロピルアミノフェニル基、2−ピリジル基、6−メチル−2−ピリジル基、2−ピリジルフェニル基、2−イミダゾリル基、2−シアノフェニル基、2−ジメチルホスフィノフェニル基、2−ジフェニルホスフィノフェニル基、トリフェニルホスホラニリデンメチル基、2−メトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、2−イソプロポキシフェニル基、2−フェノキシフェニル基、2−チオメチルフェニル基、メチルスルホニルメチル基、p−トルエンスルホニルメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基、2−クロロ−1−メチルエチル基等を挙げることができる。R1として好ましくは、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、2−ビフェニル基、2−メチル−6−イソプロピル基を挙げることができる。
【0010】
一般式(1)中、R2およびR3〜R6は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、置換シリル基、または置換シリル基、周期表第15族・16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示す。炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、シクロブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、フェニル基、ヘプチル基、ベンジル基、p−トリル基、オクチル基、2,6−ジメチルフェニル基、ノニル基、クミル基、デシル基、アダマンチル基、1−ナフチル基、ウンデシル基、ドデシル基、2−ビフェニル基、トリデシル基、テトラデシル基、1−アントラセニル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、アラキジル基等が挙げられる。置換シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジメチル−ターシャリーブチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。置換シリル基、周期表15族,16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、トリメチルシリルメチル基、ジメチルフェニルシリルメチル基、2−ジメチルアミノフェニル基、2−ジエチルアミノフェニル基、2−ジイソプロピルアミノフェニル基、2−ピリジル基、6−メチル−2−ピリジル基、2−ピリジルフェニル基、2−イミダゾリル基、2−シアノフェニル基、2−ジメチルホスフィノフェニル基、2−ジフェニルホスフィノフェニル基、トリフェニルホスホラニリデンメチル基、2−メトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、2−イソプロポキシフェニル基、2−フェノキシフェニル基、2−チオメチルフェニル基、メチルスルホニルメチル基、p−トルエンスルホニルメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基、2−クロロ−1−メチルエチル基等を挙げることができる。
【0011】
R2およびR3〜R6として好ましくは、水素原子、メチル基、フェニル基、p−トリル基を挙げることができる。なお、R2およびR3〜R6は互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0012】
一般式(1)中、Mは周期表第4族、8〜10族の遷移金属原子を示す。具体的には、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金等が挙げられる。好ましくはニッケル、パラジウムである。
【0013】
一般式(1)中、Xは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、周期表第15族,16族の原子を含む置換基、またはハロゲン原子を示し、aは1〜5の整数を示す。aが2以上の場合、Xは互いに同じでも異なってもよい。炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、シクロブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、フェニル基、ヘプチル基、ベンジル基、p−トリル基、オクチル基、2,6−ジメチルフェニル基、ノニル基、クミル基、デシル基、アダマンチル基、1−ナフチル基、ウンデシル基、ドデシル基、2−ビフェニル基、トリデシル基、テトラデシル基、1−アントラセニル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、アラキジル基等を挙げることができ、置換シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジメチル−ターシャリーブチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。周期表第15族の原子を含む置換基の具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジメチルホスフィノ基、2−ジメチルアミノフェニル基、2−ジメチルホスフィノフェニル基等を挙げることができる。周期表第16族の原子を含む置換基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、フェノキシ基、チオメチル基、2−メトキシフェニル基、2−チオメチルフェニル、p−トルエンスルホニルメチル基等を挙げることができる。ハロゲン原子の例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができる。好ましくはハロゲン原子である。
【0014】
一般式(1)中、Lはπ電子、または周期表第14族,15族,16族の原子を配位原子とする配位結合性化合物を示し、bは0〜6の整数を示す。bが2以上の場合、Lは互いに同じでも異なっていてもよい。π電子、周期表第14族,15族,16族の原子を配位原子とする配位結合性化合物の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、1,5−シクロオクタジエン、π−アリル、2,6−ジメチルフェニルイソシアニド、2,6−ジエチルフェニルイソシアニド、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアニド、2−イソプロピルフェニルイソシアニド、2−ビフェニルイソシアニド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリメチルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリフェニルホスフィンオキサイド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフィド等を好適なものとして挙げることができる。XとLが互いに連結されていてもよく、またLとR6が互いに連結されていてもよい。
【0015】
本発明の一般式(1)で表される化合物の具体的な例としては、次のような遷移金属錯体を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
【化3】
上記例示中、Meはメチル基、iPrはイソプロピル基、tBuはターシャリーブチル基、nHexylはノルマルヘキシル基、Phはフェニル基を示す。
【0017】
本発明の一般式(1)で表される遷移金属化合物の製造方法は特に限定されるものではないが、次のような方法がある。一般式(1)で表される遷移金属化合物は、下式(A)
【0018】
【化4】
(式(A)において、R1〜R6は一般式(1)におけるR1〜R6と同じである。Yは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、置換シリル基、または置換シリル基、周期表第15族,16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
で表される配位子前駆体と遷移金属Mを含む原料錯体(ここでのMは一般式(1)中のMと同じである。)との反応により得られる。式(A)で表される配位子前駆体は、式(B)
【0019】
【化5】
(式(B)において、R2〜R6は一般式(1)におけるR2〜R6と同じである。Yは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、置換シリル基、または置換シリル基、周期表第15族,16族の原子もしくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
で表される配位子前駆体と遷移金属Mを含む原料錯体(ここでのMは一般式(1)中のMと同じである。)で表されるカルボニル化合物と一級アミン化合物との反応により得られる。原料であるカルボニル化合物および一級アミン化合物は市販あるいは文献公知の方法により入手することができる。カルボニル化合物と一級アミン化合物を溶媒に溶解し、1〜48時間還流条件下で反応させることにより、対応する配位子前駆体が得られる。溶媒としては、一般的に使用される溶媒を用いることができ、なかでもアルコール類、芳香族炭化水素類が好ましい。また、ギ酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸のような酸触媒の使用、モレキュラーシーブスなどの脱水試剤の使用、Dean−Starkトラップを用いて生成する水の除去を行うことにより、反応を効率的に進行させることができる。
【0020】
遷移金属Mを含む原料錯体の好ましい例としては、ジクロロニッケル(II)、ジブロモニッケル(II)、ジブロモ(1,2−ジメトキシエタン)ニッケル(II)、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル(II)、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、ジクロロバラジウム(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ジクロロ(テトラメチルエチレンジアミン)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ジブロモコバルト(II)、ジブロモ鉄(II)などがある。
【0021】
続いて、得られた配位子前駆体と原料錯体とを反応させることにより、一般式(1)で表される遷移金属化合物が得られる。具体的には、配位子前駆体を溶媒に溶解し、有機金属試薬等を用いてイミノ基のオルソ位を低温でメタル化したものと原料錯体との反応により対応する遷移金属化合物が得られる。溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが好ましく、有機金属試薬としては、ノルマルブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドなどが好ましい。また、原料錯体として低原子価の遷移金属化合物を用いた場合は、メタル化を行なうことなく、配位子前駆体と原料錯体との反応により、対応する遷移金属化合物が得られる。上述の配位子前駆体と原料錯体との反応生成物を単離することなく、一般式(1)で示される化合物に代えて用いることができる。
【0022】
本発明において、(B)活性化助触媒とは、一般式(1)で示される周期表第3〜11族遷移金属化合物(A)と作用もしくは反応することにより、オレフィンを重合することが可能な重合活性種を形成し得る化合物を示している。活性化助触媒は、重合活性種を形成した後、生成した重合活性種に対して弱く配位または相互作用するものの、該活性種と直接反応しない化合物を提供する化合物である。
【0023】
性化助触媒(B)は、炭化水素溶媒に可溶させて用いる種類と、懸濁させて用いる種類に分類できる。本発明においてはそのどちらも使用できる。
【0024】
本発明で用いられる炭化水素溶媒に可溶させて用いる活性化助触媒(B)としては、近年、均一系オレフィン重合触媒系の助触媒成分として多く用いられているアルキルアルミノキサン、非配位性のアニオンを有するイオン化イオン性化合物、一般式(1)中のLと錯形成し、MからLを解離させることができる化合物が挙げられる。
【0025】
本発明で用いられる活性化助触媒(B)がアルキルアルミノキサンである場合、その構造は下記一般式(2)および/または(3)
【0026】
【化6】
(式中、R7は各々同一でも異なっていてもよく、水素原子、または炭素数1〜20の炭化水素基である。また、qは2〜60の整数である。)
で表される化合物であることが望ましい。なお、アルキルアルミノキサンには少量の有機金属化合物が含まれていてもよい。
【0027】
本発明で用いられる活性化助触媒(B)が非配位性のアニオンを有するイオン化イオン性化合物である場合、その構造は下記一般式(4)で表されるプロトン酸、一般式(5)で表されるイオン化イオン性化合物、一般式(6)で表されるルイス酸または一般式(7)で表されるルイス酸性化合物のいずれかの構造を有する化合物であることが望ましい。
【0028】
[HL1][B(Ar)4] (4)
[AL2 m][B(Ar)4] (5)
[D][B(Ar)4] (6)
B(Ar)3 (7)
(ここで、Hはプロトンであり、Bはホウ素原子またはアルミニウム原子である。L1はルイス塩基、L2はルイス塩基またはシクロペンタジエニル基である。Aはリチウム、ナトリウム、鉄または銀から選ばれる金属の陽イオンであり、Dはカルボニウムカチオンまたはトロピリウムカチオンである。Arは炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基である。mは0〜2の整数である。)
一般式(4)で表されるプロトン酸の具体例として、ジエチルオキソニウムテトラキス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、ジエチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラメチレンオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヒドロニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリノルマルブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジエチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、ジメチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、テトラメチレンオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、ヒドロニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、トリノルマルブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
一般式(5)で表されるイオン化イオン性化合物としては、具体的にはナトリウムテトラキス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等のリチウム塩、またはそのエーテル錯体、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等のフェロセニウム塩、シルバーテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、シルバーテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等の銀塩等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
一般式(6)で表されるルイス酸としては、具体的にはトリチルテトラキス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、トロピリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
一般式(7)で表されるルイス酸性化合物の具体的な例として、トリス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5−テトラフェニルフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラン、フェニルビス(パーフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)アルミニウム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
一般式(1)中のLと錯形成し、MからLを解離させることができる化合物の具体例としては、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(0)、塩化銅(I)、塩化銀(I)、塩化亜鉛(II)、チタンテトラクロライド、チタンテトライソプロポキシドなどを挙げることができる。
【0033】
本発明において炭化水素溶媒に懸濁させて用いる活性化助触媒(B)としては、特開平5−301917号、特開平7−224106号、特開平10−139807号、特開平10−204114号、特開平10−231312号、特開平10−231313号、特開平10−182715号、特開平11−1509号等に記載されている粘土化合物、特願平10−56585号に記載されている電子移動を伴うトポタクティックな還元反応生成物、特開平8−48713号に記載されているスルフォン酸塩化合物、特開平8−157518号に記載されているアルミナ化合物、特開平8−291202号に記載されている無機酸化物、イオン交換樹脂等に一般式(4)、(5)、(6)が化学的に固定化されてなる固体成分を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明で用いられる活性化助触媒(B)が粘土化合物である場合、その粘土化合物はカチオン交換能を有するものが用いられる。また、本発明において用いられる粘土化合物は、予め酸、アルカリによる処理、塩類処理および有機化合物,無機化合物処理による複合体生成などの化学処理を行うことが好ましい。
【0035】
粘土化合物としては、天然に存在するカオリナイト、ディッカイト、ハロイサイト等のカオリン鉱物;モンモリロナイト、ヘクトライト、バイデライト、サポナイト、テニオライト、ソーコナイト等のスメクタイト族;白雲母、パラゴナイト、イライト等の雲母族;バーミキュライト族;マーガライト、クリントナイト等の脆雲母族;ドンバサイト、クッケアイト、クリノクロア等の縁泥石族;セピオライト・パリゴルスカイトなどや人工合成された粘土鉱物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
化学処理に用いられる酸としては塩酸、硫酸、硝酸、酢酸等のブレンステッド酸が例示され、アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムが好ましく用いられる。塩類処理において用いられる化合物としては塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化アンモニウム等のイオン性ハロゲン化物;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム等の硫酸塩;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム等のリン酸塩などの無機塩、および酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、シュウ酸カリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム等の有機酸塩などを挙げることができる。
【0037】
粘土化合物の有機複合体生成に用いられる有機化合物としては、オニウム塩やトリチルクロライド、トロピリウムブロマイド等の炭素カチオンを生成するような化合物、フェロセニウム塩等の金属錯体カチオンを生成する錯体化合物が例示される。無機複合体生成に用いられる無機化合物としては、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化クロム等の水酸化物陽イオンを生成する金属水酸化物等を挙げることができる。
【0038】
本発明において用いられる粘土化合物のうち特に好ましくは、粘土化合物中に存在する交換性カチオンである金属イオンを特定の有機カチオン成分と交換した粘土化合物−有機イオン複合体である変性粘土化合物である。この変性粘土化合物に導入される有機カチオンとして、具体的にはメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、デシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、ジアミルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、N,N−ジメチルドデシルアンモニウム、N,N−ジメチルオクタデシルアンモニウム、N,N−ジオクタデシルメチルアンモニウム、N,N−ジオレイルメチルアンモニウム等の脂肪族アンモニウムカチオン、アニリニウム、N−メチルアニリニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、N−エチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、ベンジルアンモニウム、トルイジニウム、ジベンジルアンモニウム、トリベンジルアンモニウム、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウム等の芳香族アンモニウムカチオン等のアンモニウムイオン、あるいはジメチルオキソニウム、ジエチルオキソニウム等のオキソニウムイオンなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明で用いられる活性化助触媒(B)が電子移動を伴うトポタクティックな還元反応生成物である場合、その反応生成物は一般式(8)
Er+ (k/r)(L3)h[Q]k- (8)
(式中、[Q]はホスト化合物であり、kは還元量であり、Er+はr価のゲストカチオンであり、L3はルイス塩基であり、hはルイス塩基量である。)
で表される化合物を例示することができる。
【0040】
ここで、[Q]としては、3次元構造を有するホスト化合物、2次元構造を有するホスト化合物、1次元構造を有するホスト化合物および分子性固体であるホスト化合物を例示することができる。
【0041】
3次元構造を有するホスト化合物としては、八硫化六モリブデン、五酸化二バナジウム、三酸化タングステン、二酸化チタン、二酸化バナジウム、二酸化クロム、二酸化マンガン、二酸化タングステン、二酸化ルテニウム、二酸化オスミウム、二酸化イリジウムを例示することができる。
【0042】
2次元構造を有するホスト化合物としては、二硫化チタン、二硫化ジルコニウム、二硫化ハフニウム、二硫化バナジウム、二硫化ニオブ、二硫化タンタル、二硫化クロム、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、二硫化レニウム、二硫化白金、二硫化スズ、二硫化鉛、三硫化リンマンガン、タンタルスルフィドカーバイド、三酸化モリブデン、五酸化バナジウムゲル、グラファイト、ポリアセンを例示することができる。
【0043】
1次元構造を有するホスト化合物としては、三硫化チタン、三セレン化ニオブを例示することができる。
【0044】
分子性固体であるホスト化合物としては、テトラシアノキノジメタン、テトラチオフルバレンを例示することができる。
【0045】
さらに、[Q]としては、上記ホスト化合物を複数混合して用いることもできる。
【0046】
kとしては特に限定はないが、高い触媒活性でオレフィン重合体を製造することを目的に、好ましくは0<k≦3の範囲を用いることができる。さらに好ましくは0<k≦2の範囲を用いることができる。
【0047】
L3としては、Er+に配位可能なルイス塩基またはシクロペンタジエニル基を用いることができ、ルイス塩基としては、水、アミン化合物、窒素を含む複素環化合物、エチルエーテルもしくはノルマルブチルエーテル等のエーテル類、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、もしくはN−メチルアセトアミド等のアミド類、メチルアルコールもしくはエチルアルコール等のアルコール類、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等のジオール類を例示することができるが、これらに限定されるものではない。これら二種以上を混合して用いることもできる。
【0048】
hとしては、0≦h≦10の範囲を用いることができる。
【0049】
Er+としては、周期表第1〜14族の原子からなる群より選ばれた少なくとも一種の原子を含むカチオンを用いることができ、rは0<r≦10の範囲を用いることができるが、高い触媒活性でオレフィン重合体を製造することを目的に、好ましくは一般式(9)または(10)
(R8)2R9NH+ (9)
[式中、(R8)2R9Nはアミン化合物であり、R8は各々独立して水素原子または炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基であり、R9は水素原子、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜50の芳香族炭化水素基である。]
(R10)+ (10)
[式中、(R10)+は炭素数1〜50のカルボニウムカチオンまたはトロピリウムカチオンである。]
で表されるカチオンからなる群より選ばれた少なくとも一種のカチオンを用いることができる。
【0050】
(R8)2R9Nで表されるアミン化合物としては、メチルアミン、エチルアミン、ノルマルプロピルアミン、イソプロピルアミン、ノルマルブチルアミン、イソブチルアミン、ターシャリーブチルアミン、アリルアミン、シクロペンチルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジオクタデシルメチルアミン、トリヘキシルアミン、トリイソオクチルアミン、トリオクチルアミン、トリドデシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂肪族アミン、アニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−アリルアニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチル−o−トルイジン、N−メチル−m−トルイジン、N−メチル−p−トルイジン、N−エチル−o−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン等の芳香族アミンを例示することができる。
【0051】
一般式(10)で表されるカチオンとしては、トリフェニルメチルカチオン、トロピリウムカチオンを例示することができる。
【0052】
本発明のオレフィン重合触媒の構成成分であり、遷移金属化合物および活性化助触媒と共に用いられる(C)有機金属化合物とは、具体的にはメチルリチウム、ノルマルブチルリチウムなどのアルキルリチウム化合物、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライド、イソプロピルマグネシウムクロライド、ベンジルマグネシウムクロライド、メチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムブロマイド、イソプロピルマグネシウムブロマイド、ベンジルマグネシウムブロマイドなどのグリニャール試薬、ジメチルマグネシウムなどのジアルキルマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛などのジアルキル亜鉛、トリメチルボラン、トリエチルボランなどのアルキルボラン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサンなどのアルキルアルミノキサンなどを挙げることができる。好ましい有機金属化合物としては、アルキルアルミノキサン、下記一般式(11)で表される有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0053】
(R11)3Al (11)
(式中、R11は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、アミド基、アルコキシ基、炭化水素基を示し、そのうち少なくとも1つは炭化水素基である。)特に好ましい化合物として、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウムを挙げることができる。
【0054】
本発明における(A)成分と(B)成分、および(C)成分の比に制限はないが、(B)成分が一般式(2)および/または(3)で表される場合、(A)成分と(B)成分の金属原子当たりのモル比は(A成分):(B成分)=100:1〜1:1000000の範囲にあり、特に1:1〜1:100000の範囲であることが好ましく、(A)成分と(C)成分の金属原子当たりのモル比が(A成分):(C成分)=100:1〜1:100000にあり、特に1:1〜1:10000の範囲であることが好ましい。(B)成分が一般式(4)、(5)、(6)または(7)で表される化合物で表される場合、(A)成分と(B)成分の金属原子当たりのモル比は(A成分):(B成分)=10:1〜1:1000の範囲にあり、特に3:1〜1:100の範囲であることが好ましく、(A)成分と(C)成分の金属原子当たりのモル比が(A成分):(C成分)=100:1〜1:100000にあり、特に1:1〜1:10000の範囲であることが好ましい。(B)成分が変性粘土化合物である場合、(A)成分と(B)成分の重量比は(A成分):(B成分)=10:1〜1:10000の範囲にあり、特に3:1〜1:10000の範囲であることが好ましく、(A)成分と(C)成分の金属原子当たりのモル比が(A成分):(C成分)=100:1〜1:100000にあり、特に1:1〜1:10000の範囲であることが好ましい。
【0055】
(A)成分、(B)成分、(C)成分からなるオレフィン重合用触媒を調製する方法に関して制限はなく、調製の方法として、各成分に関して不活性な溶媒中あるいは重合を行うモノマーを溶媒として用い、混合する方法などを挙げることができる。また、これらの成分を反応させる順番に関しても制限はなく、この処理を行う温度、処理時間も制限はない。また、各成分を二種以上用いてオレフィン重合用触媒を調製することも可能である。
【0056】
本発明においては、(A)一般式(1)で示される遷移金属化合物および(B)活性化助触媒からなるオレフィン重合用触媒を微粒子固体に担持して用いることもできる。この際に用いられる微粒子固体は無機担体あるいは有機担体であり、具体的にはSiO2、Al2O3、ZrO、B2O3、CaO、ZnO、MgCl2、CaCl2およびこれらを組み合わせたもの、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリスチレンなどのポリオレフィン、およびこれらのポリオレフィンとポリメタクリル酸アルキル、ポリエステル、ポリイミドなどの極性ポリマーの混合物、あるいは共重合組成を有しているものなどが挙げられる。微粒子担体の形状に制限はないが、粒子径が5〜200μm、細孔径は20〜100オングストロームであることが好ましい。
【0057】
本発明における触媒は、通常の重合方法、すなわちスラリー重合、気相重合、高圧重合、溶液重合、塊状重合のいずれにも使用できる。本発明において重合とは単独重合のみならず共重合も意味し、これら重合により得られるポリオレフィンは、単独重合体のみならず共重合体も含む意味で用いられる。
【0058】
本発明におけるオレフィンの重合は、気相でも液相でも行うことができ、特に気相にて行う場合には粒子形状の整ったオレフィン重合体を効率よく安定的に生産することができる。また、重合を液相で行う場合、用いる溶媒は、一般に用いられている有機溶媒であればいずれでもよく、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられ、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、1−ヘキセンなどのオレフィンそれ自身を溶媒として用いることもできる。
【0059】
本発明において重合に供されるオレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン、スチレン、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、シクロペンタジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の共役および非共役ジエン、シクロブテン等の環状オレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸などのα,β−不飽和カルボン酸、およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ノルマルブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ターシャリーブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ノルマルプロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ノルマルブチル、メタクリル酸イソブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステルなどの不飽和グリシジル等が挙げられ、さらにエチレンとプロピレン、エチレンと1−ブテン、エチレンと1−ヘキセン、エチレンと1−オクテン、エチレンと酢酸ビニル、エチレンとメタクリル酸メチル、エチレンとプロピレンとスチレン、エチレンと1−ヘキセンとスチレン、エチレンとプロピレンとエチリデンノルボルネンのように二種以上の成分を混合して重合することもできる。
【0060】
本発明の方法を用いてポリオレフィンを製造する上で、重合温度、重合時間、重合圧力、モノマー濃度などの重合条件について特に制限はないが、重合温度は−100〜300℃、重合時間は10秒〜48時間、重合圧力は常圧〜300MPaの範囲で行うことが好ましい。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて2段以上に分けて行うことも可能である。また、重合終了後に得られるポリオレフィンは、従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0061】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。反応はすべて不活性ガス雰囲気下で行い、反応に用いた溶媒はすべて予め公知の方法により精製、乾燥または脱酸素を行った。重合反応は100mlガラス製耐圧容器中で、スターラーチップ攪拌下で行った。ポリマー物性は、示差走査熱量(DSC)測定により融点(Tm)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定(カラム温度:140℃、溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン)により、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0062】
実施例1
N−(2,6−ジメチルフェニル)−2−ブロモアセトフェノンイミン(I−A)の合成
不活性ガス雰囲気下、Dean−Starkトラップ、ジムロート冷却管および3方コックを備えた3口フラスコに、乾燥トルエン(200ml)を導入し、そこにp−トルエンスルホン酸1水和物(5.6g、29.4mmol)、2−ブロモアセトフェノン(7.26ml、53.0mmol)、2,6−ジメチルアニリン(6.64ml、53.9mmol)を加え、還流条件下8時間反応を行った。室温まで冷却し、炭酸水素ナトリウム(10g)水溶液(200ml)に注ぎ20分間攪拌した。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮、減圧蒸留(0.1mmHg,125℃)を行うことにより、下式で示される化合物(I−A)が黄色オイルとして得られた(収量:2.45g、収率:15%)。
【0063】
【化7】
1H−NMR(δ,C6D6,400MHz);7.34(dd,1H,J=7.70Hz,1.47Hz,2or5−H(Ar))、7.30(dd,1H,J=8.06Hz,1.10Hz、2or5−H(Ar))、7.04(d,2H,J=7.33Hz,3,5−H(N−Ar))、6.97−6.93(m,2H,3,5−H(N−Ar) and 3or4−H(Ar))、6.73(dt,1H,J=7.33,1.83,3or4−H(Ar))、2.15(s,6H,2,6−Me(N−Ar))、1.78(s,3H,Me(C=N−Ar)
錯体(II−A)の合成
不活性ガス雰囲気下、シュレンク管(100ml)にビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)(0.55g、1.99mmol)を取り、乾燥ベンゼン(20ml)に懸濁させた。そこにジメチルフェニルホスフィン(0.30ml、2.13mmol)を加え、室温で1時間反応させた。ついで、別のシュレンク管(50ml)に調整しておいた配位子1a(0.60g、2.00mmol)の乾燥ベンゼン(2.0ml)溶液を加え、室温で12時間反応させた。反応溶液をろ過後、ろ液から溶媒を留去することにより、赤褐色オイルが得られた。このオイルをジエチルエーテル/ペンタンから再沈殿させることにより、下式で表される錯体(II−A)が赤褐色粉末として得られた(収量:0.44g、0.69mmol、収率:35%)。
【0064】
【化8】
1H−NMR(δ,C6D6,400MHz);7.52(d,4H,J=6.23Hz)、7.07−7.00(m,8H)、6.75(t,1H,J=7.31Hz)、6.63(t,1H,J=6.96Hz)、6.48(d,1H,J=7.69Hz)、2.29(s,6H,2,6−Me(N−Ar))、1.80(s,3H,Me(C=N−Ar)、1.18(s,12H,PMe2Ph)
錯体溶液の調製
不活性ガス雰囲気下、シュレンク管(100ml)に錯体(II−A)(0.115g,229μmol)を分取し、乾燥トルエン(22.9ml)に溶解した。
【0065】
重合評価
不活性ガス雰囲気下、100mlのガラス製耐圧容器に乾燥トルエン(36.5ml)および上述の錯体溶液(10ml、100μmol)を加えた。次に、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの炭化水素溶液(東ソーファインケム(株)製、(C6F5)3B/Isopar−E、0.079mol/l、2.52ml、200μmol)を加え、30分間攪拌した。次に、メチルアルミノキサンのトルエン溶液(東ソーファインケム(株)製、PMAO−S、2.85mol/l、0.35ml、1mmol)を加え、30分間攪拌した。続いて反応容器にエチレンを導入し、エチレン分圧が1.0MPaとなるように設定して重合を開始した。30分間反応後、未反応のエチレンを脱圧除去し、メタノール(5ml)を加えて重合を停止した。反応溶液から溶媒を留去した後、10%塩酸メタノール溶液(300ml)中に注ぎ、ポリマーを析出させた。その後、ポリマーをろ別、真空下乾燥を行った。蝋状のポリマーが得られ、収量は0.18g、活性は1.8g/mmolであった。ポリマーの物性値は、Tm=47℃、Mw=1300、Mw/Mn=1.9であった。
【0066】
実施例2
触媒溶液の調製
不活性ガス雰囲気下、シュレンク管(100ml)にテトラクロロビス(テトラヒドロフラン)チタン(IV)(0.25g、0.76mmol)を取り、乾燥テトラヒドロフラン(20ml)に懸濁させ、−78℃に冷却した。別のシュレンク管(100ml)にN−(2,6−ジメチルフェニル)−2−ブロモアセトフェノンイミン(I−A)(0.51g、1.69mmol)を取り、乾燥テトラヒドロフラン(40ml)に溶解させ、−78℃に冷却した。そこにノルマルブチルリチウム(1.59mol/l、ヘキサン溶液)を加え、1時間攪拌したものを前出のチタン錯体の溶液に加えた。室温まで自然昇温させながら12時間反応させた。溶媒を留去後、ベンゼンに溶解させ、ろ過を行い、ろ液から溶媒を留去することにより、黒褐色粉末が得られた(0.26g)。
【0067】
この生成物(28mg)を乾燥トルエン(495ml)に溶解した。次に、メチルアルミノキサンのトルエン溶液(東ソーファインケム(株)製、PMAO−S、2.85mol/l、4.39ml、12.5mmol)を加え、30分間攪拌した。
【0068】
重合評価
不活性ガス雰囲気下、2000mlのステンレス製耐圧容器に上述の触媒溶液(10ml、10μmol)を加え、温度を30℃に保った。続いて反応容器にエチレンを導入し、エチレン分圧が1.0MPaとなるように設定して重合を開始した。60分間反応後、未反応のエチレンを脱圧除去し、メタノール(5ml)を加えて重合を停止した。反応溶液から溶媒を留去した後、10%塩酸メタノール溶液(300ml)中に注ぎ、ポリマーを析出させた。その後、ポリマーをろ別、真空下乾燥を行った。収量は10.5gであった。ポリマーの物性値は、Tm=138.7℃であった。
【0069】
実施例3
触媒溶液の調製
不活性ガス雰囲気下、シュレンク管(100ml)に塩化ジルコニウム(IV)(0.35g、1.5mmol)を分取し、乾燥テトラヒドロフラン(20ml)に懸濁させ、−78℃に冷却した。別のシュレンク管(100ml)にN−(2,6−ジメチルフェニル)−2−ブロモアセトフェノンイミン(I−A)(0.90g、3.0mmol)を取り、乾燥テトラヒドロフラン(40ml)に溶解させ、−78℃に冷却した。そこにノルマルブチルリチウム(1.59mol/lヘキサン溶液、2ml)を加え、1時間攪拌したものを前出のジルコニウム錯体の溶液に加えた。室温まで自然昇温させながら12時間反応させた。溶媒を留去後、ベンゼンに溶解させ、ろ過を行い、ろ液から溶媒を留去することにより、黒褐色粉末が得られた(0.61g)。
【0070】
この生成物(30.3mg)を乾燥トルエン(495ml)に溶解した。次に、メチルアルミノキサンのトルエン溶液(東ソーファインケム(株)製、PMAO−S、2.85mol/l、4.39ml、12.5mmol)を加え、30分間攪拌した。
【0071】
重合評価
不活性ガス雰囲気下、2000mlのステンレス製耐圧容器に上述の触媒溶液(10ml、10μmol)を加え、温度を30℃に保った。続いて反応容器にエチレンを導入し、エチレン分圧が1.0MPaとなるように設定して重合を開始した。60分間反応後、未反応のエチレンを脱圧除去し、メタノール(5ml)を加えて重合を停止した。反応溶液から溶媒を留去した後、10%塩酸メタノール溶液(300ml)中に注ぎ、ポリマーを析出させた。その後、ポリマーをろ別、真空下乾燥を行った。収量は19.34gであった。ポリマーの物性値は、Tm=139.2℃であった。
【0072】
【発明の効果】
本発明の遷移金属化合物を主触媒としたオレフィン重合用触媒は、オレフィン重合に対して極めて有効であり、本触媒をオレフィン重合用触媒として用いることで、工業的に有用なポリオレフィンを効率よく製造することが可能である。
Claims (4)
- (A)下記一般式(1)
で表される構造を有する遷移金属化合物および(B)活性化助触媒を構成成分とするオレフィン重合用触媒。 - 一般式(1)において、Mがニッケル原子であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用触媒。
- (A)請求項1ないし2に記載の遷移金属化合物、(B)活性化助触媒および(C)有機金属化合物を構成成分とするオレフィン重合用触媒。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒の存在下、オレフィンを重合することを特徴とするオレフィンの重合方法。
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