JP4591644B2 - オレフィン重合用触媒およびオレフィンの重合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の構造を有する遷移金属化合物と活性化助触媒からなる触媒をオレフィン存在下で用いることを特徴とするポリオレフィンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、オレフィン重合用触媒として、シクロペンタジエニル環を配位子として有する錯体とアルミノキサンを組み合わせたメタロセン触媒が、高い活性、狭い分子量分布、構造制御が可能等の理由で注目されている。例えば、特開平58−19309号公報などがある。また、最近、2座配位型のジイミンキレート型パラジウムおよびニッケル錯体を触媒成分として用いることで、これまでのメタロセン触媒で製造できるポリオレフィンとは構造の異なる、数多くの分岐の入った構造を有するポリオレフィンを製造できることが報告されている。例えば、WO96/23010号などがある。また、各種の配位性化合物、酸およびゼロ価ニッケル化合物を混合させることで得られる生成物をオレフィンの重合触媒として用いる重合方法が、特表平11−508635号に記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、工業的に価値のあるポリオレフィンを効率よく製造することが可能なオレフィン重合用触媒を提供すること、並びにそれを用いたポリオレフィンの製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を達成するため、鋭意検討の結果、特定の構造を有する化合物と遷移金属化合物との反応により得られる遷移金属錯体をオレフィン重合用触媒の構成成分として用い、これを特定の活性化助触媒と組み合わせることで、工業的に価値のあるポリオレフィンを効率よく製造できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明は、(A)下記一般式(1)
【0006】
【化2】
(Mは周期表第3族〜11族遷移金属原子を示し、R1〜R4は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、置換シリル基または周期表第15族,16族の原子を含む置換基を示し、R1〜R4は互いに同じでも異なっていてもよい。Xは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、周期表第15族,16族の原子を含む置換基またはハロゲンを示し、Lはπ電子、周期表第14族,15族,16族の原子を配位原子とする配位結合性化合物を示す。XとLは結合を有していてもよい。aは1〜6の整数を示し、aが2以上の場合、Xは互いに同じでも異なってもよい。bは0〜6の整数を示し、bが2以上の場合、Lは互いに同じでも異なってもよい。)
で示される構造を有する周期表第3族〜11族遷移金属化合物および(B)活性化助触媒を構成成分とするオレフィン重合用触媒、並びに(A)一般式(1)で示される周期表第3族〜11族遷移金属化合物、(B)活性化助触媒および(C)有機金属化合物を構成成分とするオレフィン重合用触媒、さらに上記オレフィン重合触媒の存在下、オレフィンを重合することを特徴とするオレフィンの重合方法に関するものである。
【0007】
以下に本発明を詳細に説明する。ただし、説明の中で具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0008】
本発明のオレフィン重合用触媒の成分として用いる(A)遷移金属化合物は、下記一般式(1)に示すような構造を有することを特徴とする。
【0009】
【化3】
一般式(1)中、Mは周期表第3族〜11族の遷移金属原子を示す。具体的には、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金等が挙げられる。好ましくはニッケル、パラジウムである。
【0010】
本発明のオレフィン重合用触媒である一般式(1)で示される化合物のR1〜R4は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、置換シリル基または周期表第15族,16族の原子を含む置換基を示す。炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アリル基、プレニル基、ベンジル基、シクロへキシル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、2−(2−ノルボルニル)フェニル基、2−ビフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2−トリメチルシリルフェニル基、1−ナフチル基、9−アントラセニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基等を挙げることができ、置換シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。周期表第15族,16族の原子を含む置換基の例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジメチルホスフィノ基、2−ジメチルアミノフェニル基、2−ジメチルホスフィノフェニル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、フェノキシ基、チオメチル基、2−メトキシフェニル基、2−チオメチルフェニル、p−トルエンスルホニルメチル基等を挙げることができる。特に好ましくは、炭素数1〜20の炭化水素基である。
【0011】
一般式(1)中のXは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、周期表第15族,16族の原子を含む置換基またはハロゲンを示す。炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ベンジル基、アリル基、フェニル基、置換フェニル基、1−ナフチル基等を好適なものとして挙げることができ、周期表第15族,16族の原子を含む置換基の具体例としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジフェニルアミド基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基等を挙げることができる。ハロゲンの例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素である。
【0012】
一般式(1)中のLはπ電子、周期表第14族,15族,16族の原子を配位原子とする配位結合性化合物を示す。具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、スチレン等のモノエン類、ブタジエン、イソプレン、1,5−シクロオクタジエン等のジエン類、フェニルイソシアニド、(2,6−ジメチルフェニル)イソシアニド、(2,6−ジイソプロピルフェニル)イソシアニド、(2−メチルフェニル)イソシアニド、(2−イソプロピルフェニル)イソシアニド、(2−エチル−6−イソプロピルフェニル)イソシアニド、{2−(2−ノルボルニル)フェニル}イソシアニド、(2−ビフェニル)イソシアニド、(2,4−ターフェニル)イソシアニド、{2,4−ジ−(1−ナフチル)}イソシアニド、(9−アントラセニル)イソシアニド、(2−トリメチルシリルフェニル)イソシアニド、(4−メチルフェニル)イソシアニド、(2,6−ジクロロフェニル)イソシアニド、(2,6−ジブロモフェニル)イソシアニド、(2,6−ジニトロフェニル)イソシアニド、(2−トリフルオロメチルフェニル)イソシアニド等のアリール基を有するイソシアニド類、tert−ブチルイソシアニド、イソプロピルイソシアニド、ブチルイソシアニド等の脂肪族基を有するイソシアニド類、トリメチルシリルイソシアニド、トリフェニルシリルイソシアニド、tert−ブチルジメチルシリルイソシアニド等のシリル基を有するイソシアニド類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン等のアミン類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、トリメチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスフィンオキサイド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフィド等を挙げることができる。特に、アリール基を有するイソシアニド類であることが、重合活性の向上の点において好ましい。
【0013】
XとLは結合を有していてもよく、例えば、π−アリル基を挙げることができる。
【0014】
一般式(1)中のaは1〜6の整数、bは0〜6の整数をそれぞれ示し、aおよびbがそれぞれ2以上の場合、XおよびLは各々互いに同じでも異なってもよい。なお、一般式(1)で示される化合物は、Xがハロゲンで、bが0の場合、ハロゲンを架橋とするダイマー構造となることもできる。
【0015】
本発明のオレフィン重合用触媒の構成成分である一般式(1)で示される化合物のうち、Mがニッケルであるものについては、例えば、対応するニッケル/イソシアニド錯体をハロゲン化アルキキルの存在下、反応させることにより合成することができる。また、既存の錯体合成反応で用いる方法をそのまま用いることが可能である。例えば、J.Am.Chem.Soc.1969年,91巻,7196頁.に記載されている方法を用いることができる。該反応によって生成した一般式(1)で示される化合物は、精製単離した後、重合触媒として使用できることは言うまでもないが、単離することなくin−situで重合反応に供することもできる。
【0016】
本発明のオレフィン重合用触媒の構成成分である一般式(1)で示される遷移金属化合物の具体的な例としては、次のような遷移金属錯体を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
【化4】
【化5】
【化6】
本発明において、(B)活性化助触媒とは、一般式(1)で示される周期表第3族〜11族遷移金属化合物(A)と作用もしくは反応することにより、オレフィンを重合することが可能な重合活性種を形成し得る化合物を示している。活性化助触媒は、重合活性種を形成した後、生成した重合活性種に対して弱く配位または相互作用するものの、該活性種と直接反応しない化合物を提供する化合物である。
【0018】
活性化助触媒(B)は、炭化水素溶媒に溶解させて用いる種類と、懸濁させて用いる種類に分類できる。本発明においてはそのどちらも使用できる。本発明で用いられる炭化水素溶媒に溶解させて用いる活性化助触媒(B)としては、近年、均一系オレフィン重合触媒系の助触媒成分として多く用いられているアルキルアルミノキサン、非配位性のアニオンを有するイオン化イオン性化合物、特開平8−198908号に記載されているカルボン酸化合物、特開平8−198909号に記載されているフェノール化合物、特開平9−110918号に記載されているジカルボン酸化合物等が挙げられる。
【0019】
本発明で用いられる活性化助触媒(B)がアルミノキサンである場合、その構造は下記一般式(2)および/または(3)
【0020】
【化7】
(式中、R5は各々同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜20の炭化水素基である。また、qは2〜60の整数である。)
で表される化合物であることが望ましい。なお、アルミノキサンには少量の有機金属化合物が含まれていてもよい。
【0021】
本発明で用いられる活性化助触媒(B)が非配位性のアニオンを有するイオン化イオン性化合物である場合、その構造は下記一般式(4)で表されるプロトン酸、一般式(5)で表されるイオン化イオン性化合物、一般式(6)で表されるルイス酸または一般式(7)で表されるルイス酸性化合物のいずれかの構造を有する化合物であることが望ましい。
【0022】
[HL1][B(Ar)4] (4)
[AL2 m][B(Ar)4] (5)
[D][B(Ar)4] (6)
B(Ar)3 (7)
(ここで、Hはプロトンであり、Bはホウ素原子またはアルミニウム原子である。L1はルイス塩基、L2はルイス塩基またはシクロペンタジエニル基である。Aはリチウム、ナトリウム、鉄または銀から選ばれる金属の陽イオンであり、Dはカルボニウムカチオンまたはトロピリウムカチオンである。Arは炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基である。mは0〜2の整数である。)
一般式(4)で表されるプロトン酸の具体例として、ジエチルオキソニウムテトラキス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、ジエチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラメチレンオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヒドロニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリN−ブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジエチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、ジメチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、テトラメチレンオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、ヒドロニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、トリ−n−ブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
一般式(5)で表されるイオン化イオン性化合物としては、具体的にはナトリウムテトラキス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等のリチウム塩、またはそのエーテル錯体、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等のフェロセニウム塩、シルバーテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、シルバーテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等の銀塩等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
一般式(6)で表されるルイス酸としては、具体的にはトリチルテトラキス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、トロピリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
一般式(7)で表されるルイス酸性化合物の具体的な例として、トリス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5−テトラフェニルフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラン、フェニルビス(パーフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)アルミニウム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本発明において、炭化水素溶媒に懸濁させて用いる活性化助触媒(B)としては、特開平5−301917号、特開平7−224106号、特開平10−139807号、特開平10−204114号、特開平10−231312号、特開平10−231313号、特開平10−182715号、特開平11−1509号等に記載されている粘土化合物、特願平10−56585号に記載されている電子移動を伴うトポタクティックな還元反応生成物、特開平8−48713号に記載されているスルフォン酸塩化合物、特開平8−157518号に記載されているアルミナ化合物、特開平8−291202号に記載されている無機酸化物、イオン交換樹脂等に一般式(4)、(5)、(6)が化学的に固定化されてなる固体成分を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本発明で用いられる活性化助触媒(B)が粘土化合物である場合、その粘土化合物はカチオン交換能を有するものが用いられる。また、本発明において用いられる粘土化合物は、予め酸、アルカリによる処理、塩類処理および有機化合物、無機化合物処理による複合体生成などの化学処理を行うことが好ましい。
【0028】
粘土化合物としては、天然に存在するカオリナイト、ディッカイト、ハロイサイト等のカオリン鉱物;モンモリロナイト、ヘクトライト、バイデライト、サポナイト、テニオライト、ソーコナイト等のスメクタイト族;白雲母、パラゴナイト、イライト等の雲母族;バーミキュライト族;マーガライト、クリントナイト等の脆雲母族;ドンバサイト、クッケアイト、クリノクロア等の縁泥石族;セピオライト・パリゴルスカイトなどや人工合成された粘土化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
化学処理に用いられる酸としては塩酸、硫酸、硝酸、酢酸等のブレンステッド酸が例示され、アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムが好ましく用いられる。塩類処理において用いられる化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化アンモニウム等のイオン性ハロゲン化物;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム等の硫酸塩;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム等のリン酸塩などの無機塩、および酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、シュウ酸カリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム等の有機酸塩などを挙げることができる。
【0030】
粘土化合物の有機複合体生成に用いられる有機化合物としては、オニウム塩やトリチルクロライド、トロピリウムブロマイド等の炭素カチオンを生成するような化合物、フェロセニウム塩等の金属錯体カチオンを生成する錯体化合物が例示される。無機複合体生成に用いられる無機化合物としては、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化クロム等の水酸化物陽イオンを生成する金属水酸化物等を挙げることができる。
【0031】
本発明において用いられる粘土化合物のうち特に好ましくは、粘土化合物中に存在する交換性カチオンである金属イオンを特定の有機カチオン成分と交換した粘土化合物−有機イオン複合体である変性粘土化合物である。この変性粘土化合物に導入される有機カチオンとして、具体的にはメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、デシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、ジアミルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、N,N−ジメチルドデシルアンモニウム、N,N−ジメチルオクタデシルアンモニウム、N,N−ジオクタデシルメチルアンモニウム、N,N−ジオレイルメチルアンモニウム等の脂肪族アンモニウムカチオン、アニリニウム、N−メチルアニリニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、N−エチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、ベンジルアンモニウム、トルイジニウム、ジベンジルアンモニウム、トリベンジルアンモニウム、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウム等の芳香族アンモニウムカチオン等のアンモニウムイオン、あるいはジメチルオキソニウム、ジエチルオキソニウム等のオキソニウムイオンなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明で用いられる活性化助触媒(B)が電子移動を伴うトポタクティックな還元反応生成物である場合、その反応生成物は一般式(8)
Er+ (k/r)(L3)h[Q]k- (8)
[式中、[Q]はホスト化合物であり、kは還元量であり、Er+はr価のゲストカチオンであり、L3はルイス塩基であり、hはルイス塩基量である。]
で表される化合物を例示することができる。
【0033】
ここで、[Q]としては、3次元構造を有するホスト化合物、2次元構造を有するホスト化合物、1次元構造を有するホスト化合物および分子性固体であるホスト化合物を例示することができる。
【0034】
3次元構造を有するホスト化合物としては、八硫化六モリブデン、五酸化二バナジウム、三酸化タングステン、二酸化チタン、二酸化バナジウム、二酸化クロム、二酸化マンガン、二酸化タングステン、二酸化ルテニウム、二酸化オスミウム、二酸化イリジウムを例示することができる。
【0035】
2次元構造を有するホスト化合物としては、二硫化チタン、二硫化ジルコニウム、二硫化ハフニウム、二硫化バナジウム、二硫化ニオブ、二硫化タンタル、二硫化クロム、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、二硫化レニウム、二硫化白金、二硫化スズ、二硫化鉛、三硫化リンマグネシウム、三硫化リンマンガン、タンタルスルフィドカーバイド、三酸化モリブデン、五酸化バナジウムゲル、グラファイト、ポリアセンを例示することができる。
【0036】
1次元構造を有するホスト化合物としては、三硫化チタン、三セレン化ニオブを例示することができる。
【0037】
分子性固体であるホスト化合物としては、テトラシアノキノジメタン、テトラチオフルバレンを例示することができる。
【0038】
さらに、[Q]としては、上記ホスト化合物を複数混合して用いることもできる。
【0039】
kは特に限定はないが、高い触媒活性でオレフィン重合体を製造することを目的に、好ましくは0<k≦3の範囲を用いることができる。さらに好ましくは0<k≦2の範囲を用いることができる。
【0040】
L3としては、Er+に配位可能なルイス塩基またはシクロペンタジエニル基を用いることができ、ルイス塩基としては、水、アミン化合物、窒素を含む複素環化合物、エチルエーテルもしくはn−ブチルエーテル等のエーテル類、ホルムアミド、N−メチルホルムアミドもしくはN−メチルアセトアミド等のアミド類、メチルアルコールもしくはエチルアルコール等のアルコール類、1,2−ブタンジオールもしくは1,3−ブタンジオール等のジオール類を例示することができるが、これらに限定されるものではない。これら2種以上を混合して用いることもできる。
【0041】
hは0≦h≦10の範囲を用いることができる。
【0042】
Er+としては、周期表第1族〜14族の原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含むカチオンを用いることができ、rは0<r≦10の範囲を用いることができるが、高い触媒活性でオレフィン重合体を製造することを目的に、好ましくは、一般式(9)または(10)
(R6)2R7NH+ (9)
[式中、(R6)2R7Nはアミン化合物であり、R6は各々独立して水素原子または炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基であり、R7は水素原子、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜50の芳香族炭化水素基である。]
(R8)+ (10)
[式中、(R8)+は炭素数1〜50のカルボニウムカチオンまたはトロピリウムカチオンである。]
で表されるカチオンからなる群より選ばれる少なくとも1種のカチオンを用いることができる。
【0043】
(R6)2R7Nで表されるアミン化合物としては、メチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、アリルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルオクタデシルアミン、N,N−ジオクタデシルメチルアミン、トリヘキシルアミン、トリイソオクチルアミン、トリドデシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン等の脂肪族アミン、アニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−アリルアニリン、o−トルイジン、p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチル−o−トルイジン、N−メチル−m−トルイジン、N−エチル−o−トルイジン等の芳香族アミンを例示することができる。
【0044】
一般式(10)で表されるカチオンとしては、トリフェニルメチルカチオン、トロピリウムカチオンを例示することができる。
【0045】
本発明のオレフィン重合用触媒の構成成分であり、遷移金属化合物および活性化助触媒と共に用いられる(C)有機金属化合物は、具体的にはメチルリチウム、n−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム化合物、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライド、イソプロピルマグネシウムクロライド、ベンジルマグネシウムクロライド、メチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムブロマイド、イソプロピルマグネシウムブロマイド、ベンジルマグネシウムブロマイドなどのグリニャール試薬、ジメチルマグネシウムなどのジアルキルマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛などのジアルキル亜鉛、トリメチルボラン、トリエチルボランなどのアルキルボラン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。好ましい有機金属化合物としては、下記一般式(11)で表される有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0046】
(R9)3Al (11)
(式中、R9は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、アミド基、アルコキシ基、炭化水素基を示し、そのうち少なくとも1つは炭化水素基である。)
特に好ましい化合物として、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウムを挙げることができる。
【0047】
本発明における(A)成分と(B)成分、および(C)成分の比に制限はないが、(B)成分が一般式(2)および/または(3)で表される化合物である場合、(A)成分と(B)成分の金属原子当たりのモル比は(A成分):(B成分)=100:1〜1:1000000の範囲にあり、特に1:1〜1:100000の範囲であることが好ましく、(A)成分と(C)成分の金属原子当たりのモル比が(A成分):(C成分)=100:1〜1:100000にあり、特に1:1〜1:10000の範囲であることが好ましい。(B)成分が一般式(4)、(5)、(6)または(7)で表される化合物である場合、(A)成分と(B)成分の金属原子当たりのモル比は(A成分):(B成分)=10:1〜1:1000の範囲にあり、特に3:1〜1:100の範囲であることが好ましく、(A)成分と(C)成分の金属原子当たりのモル比が(A成分):(C成分)=100:1〜1:100000にあり、特に1:1〜1:10000の範囲であることが好ましい。(B)成分が変性粘土化合物である場合、(A)成分と(B)成分の重量比は(A成分):(B成分)=10:1〜1:10000の範囲にあり、特に3:1〜1:10000の範囲であることが好ましく、(A)成分と(C)成分の金属原子当たりのモル比が(A成分):(C成分)=100:1〜1:100000にあり、特に1:1〜1:10000の範囲であることが好ましい。
【0048】
(A)成分、(B)成分、(C)成分からなるオレフィン重合用触媒を調製する方法に関して制限はなく、調製の方法として、各成分に関して不活性な溶媒中あるいは重合を行うモノマーを溶媒として用い、混合する方法などを挙げることができる。また、これらの成分を反応させる順番に関しても制限はなく、この処理を行う温度、処理時間も制限はない。また、各成分を2種以上用いてオレフィン重合用触媒を調製することも可能である。
【0049】
本発明においては、(A)一般式(1)で示される遷移金属化合物および(B)活性化助触媒からなるオレフィン重合用触媒を微粒子固体に担持して用いることもできる。この際に用いられる微粒子固体は無機担体あるいは有機担体であり、具体的にはSiO2、Al2O3、ZrO、B2O3、CaO、ZnO、MgCl2、CaCl2およびこれらを組み合わせたもの、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリスチレンなどのポリオレフィン、およびこれらのポリオレフィンとポリメタクリル酸エチル、ポリエステル、ポリイミドなどの極性ポリマーとの混合物、あるいは共重合組成を有しているものなどが挙げられる。微粒子固体の形状に制限はないが、粒子径が5〜200μm、細孔径が20〜100オングストロームであることが好ましい。
【0050】
本発明における触媒は、通常の重合方法、すなわちスラリー重合、気相重合、高圧重合、溶液重合、塊状重合のいずれにも使用できる。本発明において重合とは単独重合のみならず共重合も意味し、これら重合により得られるポリオレフィンは、単独重合体のみならず共重合体も含む意味で用いられる。
【0051】
本発明におけるオレフィンの重合は、気相でも液相でも行うことができ、特に気相にて行う場合には、粒子形状の整ったオレフィン重合体を効率よく安定的に生産することができる。また、重合を液相で行う場合、用いる溶媒は、一般に用いられている有機溶媒であればいずれでもよく、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられ、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、1−ヘキセンなどのオレフィンそれ自身を溶媒として用いることもできる。
【0052】
本発明において重合に供されるオレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン、スチレン、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、シクロペンタジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の共役および非共役ジエン、シクロブテン等の環状オレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸などのα,β−不飽和カルボン酸、およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステルなどの不飽和グリシジル等が挙げられ、さらに、エチレンとプロピレン、エチレンと1−ブテン、エチレンと1−ヘキセン、エチレンと1−オクテン、エチレンと酢酸ビニル、エチレンとメタクリル酸メチル、エチレンとプロピレンとスチレン、エチレンと1−ヘキセンとスチレン、エチレンとプロピレンとエチリデンノルボルネンのように、2種以上の成分を混合して重合することもできる。
【0053】
本発明の方法を用いてポリオレフィンを製造する上で、重合温度、重合時間、重合圧力、モノマー濃度などの重合条件について特に制限はないが、重合温度は−100〜300℃、重合時間は10秒〜20時間、重合圧力は常圧〜3000kg/cm2Gの範囲で行うことが好ましい。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて2段以上に分けて行うことも可能である。また、重合終了後に得られるポリオレフィンは、従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0054】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。重合は100mlガラス製耐圧容器中で、スターラーチップ攪拌下で行った。反応に用いた溶媒は、すべて予め公知の方法により精製、乾燥または脱酸素を行った。ポリマー物性は、示差走査熱量測定(DSC)により融点(Tm)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定(カラム温度:140℃、溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン)により分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0055】
実施例1
(錯体溶液の調製)
【0056】
【化8】
窒素雰囲気下、50mlのシュレンク管に、上式で表される錯体4.1mg(5.6μmol)を分取し、乾燥トルエン(28ml)に溶解させた。
【0057】
(重合評価)
窒素雰囲気下、100mlのガラス製オートクレーブに、トルエン45mlおよび上述の触媒溶液5ml(錯体1μmol)を加えた。次に、メチルアルミノキサンのトルエン溶液(東ソーファインテック(株)製 PMAO−S,2.85mol/lトルエン溶液)0.35ml(1mmol)を加え、1時間攪拌した。次に、オートクレーブにエチレンを導入し、エチレン分圧が1MPaとなるように設定し、室温で重合を開始した。30分間重合を行い、未反応のエチレンを脱圧除去し、メタノール5mlを加え、重合を停止した。オートクレーブの内容物を塩酸/メタノール溶液300ml中に加え、ポリマーを析出させた。その後、ポリマーをろ別、メタノール洗浄、真空乾燥を行った。ポリマーの収量は0.85gであった。ポリマーの物性値は、Tm=128.0℃、Mw=330000、Mw/Mn=4.3であった。
【0058】
【発明の効果】
本発明の遷移金属化合物を主触媒としたオレフィン重合用触媒は、オレフィン重合に対して極めて有効であり、本触媒をオレフィン重合用触媒として用いることで、工業的に有用なポリオレフィンを効率よく製造することが可能である。
Claims (4)
- (A)下記一般式(1)
[D][B(Ar)4] (6)
B(Ar)3 (7)
(ここで、Bはホウ素原子である。Dはカルボニウムカチオンまたはトロピリウムカチオンである。Arは炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基である。)
を構成成分とすることを特徴とするオレフィン重合用触媒。 - 一般式(1)において、Mがニッケルであることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用触媒。
- 請求項1又は2に記載の(A)遷移金属化合物及び(B)活性化助触媒、並びに(C)アルキルリチウム化合物、グリニャール試薬、ジアルキルマグネシウム、ジアルキル亜鉛、又はトリアルキルアルミニウムを構成成分とすることを特徴とするオレフィン重合用触媒。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒の存在下、オレフィンを重合することを特徴とするオレフィンの重合方法。
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