JP4123881B2 - 遷移金属化合物、配位性化合物、オレフィン重合用触媒及びそれを用いたポリオレフィンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、遷移金属化合物、配位性化合物、遷移金属化合物を用いたオレフィン重合用触媒及びオレフィンの重合方法に関するものである。詳しくは、アザフェロセン又はホスファフェロセン構造を有する遷移金属化合物、その原料となる配位性化合物、及びその遷移金属化合物をオレフィン重合用触媒の構成成分として用いることにより、ポリオレフィンを効率よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、2座配位型の(N,N’−ジアリール)ジイミンキレート型ニッケル錯体を触媒成分として用いることで、これまでのメタロセン触媒で製造できるポリオレフィンとは構造の異なる、数多くの分岐の入った構造を有するポリオレフィンを製造できることが報告されている(例えば、特許文献1参照)。該ニッケルジイミン錯体の脱離基としてアセチルアセトナート基が有効であることも知られている(例えば、特許文献2参照)。しかし、これらジイミン型のニッケル錯体の場合、ポリマーを得るためにはイミン置換基は2,6−2置換アリール基であることが必須である。2,6−2置換アニリンの種類は限られていることから、生成するポリマーの分子量、融点等の物性も限られたものであった。また、N,N’−ジ(置換ピロール)ジイミンニッケル錯体もオレフィン重合用触媒成分として知られている(例えば、特許文献3及び特許文献4参照)。N−ピロールイミンはヒドラゾン構造であることから、イミン型錯体より安定性が増していることが期待されるが、この場合も、ポリマーを得るためには2,5−2置換ピロリル基であることが必須であり、1−アミノ−2,5−2置換ピロールは2,6−2置換アニリン以上に種類に限りがあり、入手性も問題があった。
【0003】
【特許文献1】
WO96/23010号公報
【特許文献2】
WO99/32226号公報
【特許文献3】
WO00/50470号公報
【特許文献4】
WO02/22694号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、新規なアザフェロセン又はホスファフェロセン構造を有する遷移金属化合物、ポリオレフィンを効率よく製造することが可能なオレフィン重合用触媒としての用途、及びそれを用いたポリオレフィンの製造方法を提供することにあり、さらにはより置換基の種類が豊富な重合用触媒を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を達成するため、鋭意検討の結果、アザフェロセン又はホスファフェロセン構造を有する遷移金属化合物、さらに詳しくはイミン上の置換基がアミン構造を有する遷移金属化合物を見出し、それ単独で、あるいは活性化助触媒を組み合わせることで、ポリオレフィンを効率よく製造できることを見出し、本発明を完成するに到った。すなわち、本発明は、アザフェロセン又はホスファフェロセン構造を有する遷移金属化合物、その原料となる配位性化合物、及びその遷移金属化合物を構成成分とするオレフィン重合用触媒を提供するものであり、さらに、前記オレフィン重合用触媒を用いてオレフィンの重合を行うことを特徴とするポリオレフィンの製造方法を提供するものである。
【0006】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明の遷移金属化合物は、下記一般式(1)で表される。即ち、
【0008】
【化3】
(ここで、Mは周期表3族〜12族より選ばれる遷移金属原子であり、Xは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素オキシ基、アセチルアセトナート基若しくは置換基を有するアセチルアセトナート基、炭素数1〜20の有機基を有するスルホネート基、又はB,Al,P,Sbより選ばれる元素を含む非配位性アニオンを示し、qが2以上の時、Xは互いに同じでも異なっていてもよい。Aは窒素原子又はリン原子を示す。R1は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、フェロセニル基、又は置換フェロセニル基を示し、R2及びR3は同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、又は窒素原子,酸素原子若しくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示す。R2とR3は結合して環を形成することもできる(ただし、1−ピロリル基は除く)。R4は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、又は窒素原子,酸素原子,ハロゲン原子若しくは硫黄原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mが2以上の時、R4は互いに同じでも異なっていてもよく、また隣接するR4同士が結合して環を形成することもできる。R5は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、又は窒素原子,リン原子,酸素原子,ハロゲン原子若しくは硫黄原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示し、nが2以上の時、R5は互いに同じでも異なっていてもよく、また隣接するR5同士が結合して環を形成することもできる。R4とR5が結合を有することもできる。Lは配位結合性化合物であり、π電子、カルボニル酸素、エーテル、ニトリル、アミン、ホスフィンを示し、Xとの結合を有することもできる。mは1〜3の整数を示し、nは1〜5の整数を示す。qは1〜3の整数を示し、rは0〜3の整数を示す。)
で表される遷移金属化合物である。
【0009】
一般式(1)中、Mは周期表3族〜12族より選ばれる遷移金属原子を示す。好ましくは周期表8族〜12族より選ばれる遷移金属原子であり、より好ましくはNi、Pdである。
【0010】
一般式(1)中、Xは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素オキシ基、アセチルアセトナート基若しくは置換基を有するアセチルアセトナート基、炭素数1〜20の有機基を有するスルホネート基、又はB,Al,P,Sbより選ばれる元素を含む非配位性アニオンを示し、好ましくはハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、アセチルアセトナート基若しくは置換基を有するアセチルアセトナート基、又はB,Al,P,Sbより選ばれる元素を含む非配位性アニオンである。qは1〜3の整数を示し、qが2以上の時、Xは互いに同じでも異なっていてもよい。Xのハロゲン原子の具体例は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくは塩素原子、臭素原子である。炭素数1〜20の炭化水素基の具体例は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ベンジル基、アリル基、フェニル基、o−トリル基等であり、炭素数1〜20の炭化水素オキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、フェノキシ基等を挙げることができる。置換基を有するアセチルアセトナート基の例は、1,1,1−トリフルオロアセチルアセトナート基、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトナート基、1−フェニルアセチルアセトナート基、3−メチルアセチルアセトナート基、3−フェニルアセチルアセトナート基等であり、炭素数1〜20の有機基を有するスルホネート基の例は、トリフルオロメタンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基等であり、B,Al,P,Sbより選ばれる元素を含む非配位性アニオンの具体例としては、テトラキス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ボレートアニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネートアニオン、SbF6アニオン、PF6アニオンを挙げることができる。
【0011】
一般式(1)中のAは窒素原子又はリン原子を示す。
【0012】
一般式(1)中のR1は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、フェロセニル基、又は置換フェロセニル基を示し、好ましくは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基である。炭素数1〜20の炭化水素基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ベンジル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、フェニル基である。ハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基の具体例として、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ジフルオロメチル基等が挙げられ、好ましくはトリフルオロメチル基である。置換フェロセニル基の具体例としては、メチルフェロセニル基、ジメチルフェロセニル基、tert−ブチルフェロセニル基等が挙げられる。
【0013】
一般式(1)中のR2及びR3は同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、又は窒素原子,酸素原子若しくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示す。炭素数1〜20の炭化水素基の具体例は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ベンジル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、1−ナフチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、フェニル基である。炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基の具体例は、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。窒素原子,酸素原子若しくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基の具体例は、2−(ジメチルアミノ)エチル基、2−(ジメチルアミノ)フェニル基、2−メトキシエチル基、2−メトキシフェニル基、2−クロロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、1−メチル−7−インドリル等である。R2とR3は結合して環を形成することもできるが、その場合の窒素を含む具体的な基は、ピロリジニル基、2−(メトキシメチル)ピロリジニル基、2−(ジメチルアミノ)ピロリジニル基、2,4−(ジメチル)ピロリジニル基、ピペリジニル基、4−メチルピペラジニル基、モルホリル基、インドリニル基、7−メチルインドリニル基、ピラゾリル基、5−メチルピラゾリル基、5−フェニルピラゾリル基、イミダゾリル基、5−メチルイミダゾリル基、ベンズ[d]イミダゾリル基、フタルイミド基等である。
【0014】
一般式(1)中のR4は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、又は窒素原子,酸素原子,ハロゲン原子若しくは硫黄原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示し、好ましくは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基である。炭素数1〜20の炭化水素基の具体例は、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、フェニル基、2−メチルフェニル基等であり、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。窒素原子,酸素原子,ハロゲン原子若しくは硫黄原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、クロロメチル基、メトキシメチル基、4−メトキシフェニル基、ジメチルアミノメチル基、ホルミル基、N−(2−メチルフェニル)イミノメチル基、N−(2−イソプロピルフェニル)イミノメチル基、メチルチオメチル基、フェニルチオメチル基等である。mは1〜3の整数であり、mが2以上の時、それぞれ互いに同じでも異なっていてもよく、また隣接するR4同士が結合して環を形成することもできる。
【0015】
一般式(1)中の(R5)nのnは1〜5の整数を示し、nが2以上の時、それぞれ互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、又は窒素原子,リン原子,酸素原子,ハロゲン原子若しくは硫黄原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示し、好ましくは炭素数1〜20の炭化水素基、又は窒素原子,酸素原子若しくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基である。R5の炭素数1〜20の炭化水素基の具体例は、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基等であり、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。窒素原子,リン原子,酸素原子,ハロゲン原子若しくは硫黄原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、3−(ジメチルアミノメチル)フェニル基、ジメチルアミノメチル基、ジフェニルアミノメチル基、フェニルメチルアミノメチル基、3−(ジフェニルホスフィノ)フェニル基、3−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェニル基、ジ(tert−ブチルホスフィノ)メチル基、4−メトキシフェニル基、3−(メトキシメチル)フェニル基、メトキシメチル基、1−(メトキシメチル)エチル基、フェノキシメチル基、(2−メチルフェノキシ)メチル基、4−フルオロフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2−(メチルチオ)フェニル基、フェニルチオメチル基等を好適に挙げることができる。
【0016】
一般式(1)中のLは、π電子、カルボニル酸素、エーテル、ニトリル、アミン、ホスフィンの配位結合性化合物であり、具体的にはエチレン、プロピレン、スチレン、アセトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルジフェニルアミン、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等である。rは0〜3の整数を示す。
【0017】
一般式(1)中のXとLは結合を有することができ、その場合の具体的な例としては、π−アリル基、1−メチル−π−アリル基、2−メチル−π−アリル基、1−フェニル−π−アリル基、2−メトキシカルボニル−π−アリル基、η3−ベンジル基等を挙げることができる。また、Lがカルボニル酸素の場合で、Xがアセチルアセトナート基若しくは置換基を有するアセチルアセトナート基の時は、Lはそれらの分子内的に配位したカルボニル酸素である。
【0018】
本発明のアザフェロセン又はホスファフェロセン配位子を有する遷移金属化合物の具体的な例として、次のような遷移金属錯体を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、本発明のアザフェロセン又はホスファフェロセン配位子を有する遷移金属化合物は面不斉を有するが、ラセミ体及び光学活性体のいずれかであることもできる。
【0019】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
本発明の一般式(1)で示されるアザフェロセン又はホスファフェロセン構造を有する遷移金属化合物の合成方法として、対応するアザフェロセン又はホスファフェロセン構造を有する配位性化合物を合成した後、その配位性化合物を用いて錯体を合成する方法が挙げられる。対応するアザフェロセン又はホスファフェロセン構造を有する配位性化合物は、以下の一般式(2)で示すことができる。
【0020】
【化9】
(ここで、Aは窒素原子又はリン原子を示す。R1は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、フェロセニル基、又は置換フェロセニル基を示し、R2及びR3は同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、又は窒素原子,酸素原子若しくはハロゲン原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示す。R2とR3は結合して環を形成することもできる(ただし、1−ピロリル基は除く)。R4は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、又は窒素原子,酸素原子,ハロゲン原子若しくは硫黄原子を含む炭素数1〜20炭化水素基を示す。mが2以上の時、R4は互いに同じでも異なっていてもよく、また隣接するR4同士が結合して環を形成することもできる。R5は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、又は窒素原子,リン原子,酸素原子,ハロゲン原子若しくは硫黄原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を示し、nが2以上の時、R5は互いに同じでも異なっていてもよく、また隣接するR5同士が結合して環を形成することもできる。R4とR5が結合を有することもできる。mは1〜3の整数を示し、nは1〜5の整数を示す。)
本発明の一般式(2)で示される配位性化合物の置換基R1〜R5は、遷移金属化合物である一般式(1)中の置換基R1〜R5と同一である。
【0021】
本発明の一般式(2)で示される配位性化合物の具体的な例として、次のような化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
本発明の一般式(2)で示される配位性化合物の内、Aが窒素原子であるものはアザフェロセン化合物を原料とし、ホルミル化あるいはアシル化、さらにヒドラゾニル化を経て合成することができる。該合成法を下式に示した。
【0023】
【化14】
上式において示されるアザフェロセン化合物は、例えば、G.C.Fuらによって開示されている方法(J.Org.Chem.,61巻,7230頁(1996年))あるいはK.K.Joshiらによって開示されている方法(J.Organomet.Chem.,I,471頁(1964年))に従って合成することができる。
【0024】
本発明の一般式(2)で示される配位性化合物(Aが窒素原子の場合)は、アザフェロセン化合物を原料として合成することができるが、例えばアザフェロセン化合物をn−ブチルリチウム等のリチオ化剤でリチオ化し、N,N−ジメチルホルムアミド、ベンゾニトリル、又はアセトニトリル等と反応させることにより、ホルミル基あるいはアセチル基等のカルボニル基を導入することができる。アザフェロセンのリチオ化の方法としては、例えば、V.N.Setkinaらによって開示されている方法(J.Organomet.Chem.,251巻,C41頁(1983年))を用いることができる。なお、このリチオ化の時に、(−)−スパルテインのようなキラルジアミンを存在させると一方の鏡像体が過剰に存在する、即ち光学活性なアザフェロセン体を合成することができる。あるいは、酸塩化物と塩化アルミニウムを用いるフリーデルクラフツアシル化によっても、カルボニル基を導入することができる。さらに、脂肪族ヒドラジン類、芳香族ヒドラジン類、あるいは1−アミノピラゾール等との脱水縮合反応によりヒドラゾニル化し、一般式(2)の配位性化合物を合成することができる。ヒドラゾニル化反応の条件としては、例えば、酢酸を触媒としてエタノール中で実施する方法、p−トルエンスルホン酸を触媒としてトルエン中で実施する方法を挙げることができる。
【0025】
本発明の一般式(2)で示される配位性化合物の内、Aがリン原子であるものはホスファフェロセン化合物を原料とし、ホルミル化あるいはアシル化、さらにヒドラゾニル化を経て合成することができる。該合成法を下式に示した。
【0026】
【化15】
上式において示されるホスファフェロセン化合物は、例えば、G.C.Fuらによって開示されている方法(J.Org.Chem.,62巻,4534頁(1997年))あるいはC.Ganterらによって開示されている方法(Organometallics,16巻,2862頁(1997年))に従って合成することができる。
【0027】
本発明の一般式(2)で示される配位性化合物(Aがリン原子の場合)は、ホスファフェロセン化合物を原料として合成することができるが、例えば、F.Matheyによって開示されている方法(J.Organomet.Chem.,139巻,77頁(1977年))に従ってアシル化することができ、またF.Matheyらによって開示されている方法(J.Am.Chem.Soc.,102巻,994頁(1980年)に従ってホルミル化することができる。さらに、脂肪族ヒドラジン類、芳香族ヒドラジン類、あるいは1−アミノピラゾール等との脱水縮合反応によりヒドラゾニル化し、一般式(2)の配位性化合物を合成することができる。ヒドラゾニル化反応の条件としては、例えば、酢酸を触媒としてエタノール中で実施する方法、p−トルエンスルホン酸を触媒としてトルエン中で実施する方法を挙げることができる。
【0028】
該アザフェロセン又はホスファフェロセン配位子を有する本発明の一般式(1)で示される遷移金属化合物を合成する方法として、既存の錯体合成反応で用いる方法をそのまま用いることが可能である。例えば、WO96/23010号、WO99/32226号、WO02/22694号、及びJ.Am.Chem.Soc.、1999年、121巻、8728頁に記載されている方法を用いることができる。
【0029】
なお、該アザフェロセン又はホスファフェロセン配位子を有する遷移金属化合物は、常法により単離した後、重合触媒に供することもできるし、単離することなく、in−situで調製し、そのまま重合触媒として供することもできる。
【0030】
また、一度合成したこれらの遷移金属化合物の脱離基は、さらに反応により変換することができる。例えば脱離基であるXがハロゲン若しくはアセチルアセトナート基で、Lがホウ素アニオン等の非配位性アニオンである場合は、対応するジハロゲン錯体若しくはビス(アセチルアセトナート)錯体を一度合成した後、ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチル・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等の非配位性アニオン前駆化合物を接触させることにより変換することができる。該反応生成物は、そのまま重合触媒としてあるいは単離精製後、重合触媒として使用することができる。
【0031】
本発明におけるオレフィン重合用触媒の構成成分の一つである活性化助触媒(B)とは、(A)該遷移金属化合物、又は該遷移金属化合物と有機金属化合物との反応生成物と作用若しくは反応することにより、オレフィンを重合することが可能な重合活性種を形成させる役割を持つ化合物を示している。活性化助触媒は、重合活性種を形成した後、生成した重合活性種に対して弱く配位又は相互作用するものの、該活性種と直接反応しない化合物を提供する化合物である。活性化助触媒の例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド等のハロゲン化アルキルアルミニウム、1,3−ジクロロ−1,3−ジエチルアルミノキサン、1,3−ジクロロ−1,3−ジイソプロピルアルミノキサン等のハロゲン化アルキルアルミノキサン、近年、均一系オレフィン重合用触媒の助触媒成分として多く用いられているアルキルアルミノキサンや、非配位性のアニオンを有するイオン化イオン性化合物、さらに、変性粘土化合物などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
例えば、活性化助触媒(B)がアルキルアルミノキサンである場合、その構造は下記一般式(3)及び/又は(4)
【0033】
【化16】
(式中、R6は各々同一でも異なっていてもよく、水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基である。また、sは2〜60の整数である。)
で表される化合物であることが望ましい。なお、アルキルアルミノキサンには少量の有機金属化合物が含まれていてもよい。
【0034】
活性化助触媒(B)が非配位性のアニオンを有するイオン化イオン性化合物である場合、その構造は下記一般式(5)で表されるプロトン酸、一般式(6)で表されるイオン化イオン性化合物、一般式(7)で表されるルイス酸、一般式(8)で表されるルイス酸性化合物、AgSbF6又はAgPF6のいずれかの構造を有する化合物であることが望ましい。
【0035】
[HL1][B(Ar)4] (5)
[EL2 u][B(Ar)4] (6)
[D][B(Ar)4] (7)
B(Ar)3 (8)
(ここで、Hはプロトンであり、Bはホウ素原子又はアルミニウム原子である。L1はルイス塩基、L2はルイス塩基又はシクロペンタジエニル基である。Eはリチウム、ナトリウム、鉄、又は銀から選ばれる金属の陽イオンであり、Dはカルボニウムカチオン又はトロピリウムカチオンである。Arは炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基である。uは0〜2の整数である。)
一般式(5)で表されるプロトン酸の具体例としては、ジエチルオキソニウムテトラキス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、ジエチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラメチレンオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヒドロニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ−n−ブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジエチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、ジメチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、テトラメチレンオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、ヒドロニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、トリ−n−ブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
一般式(6)で表されるイオン化イオン性化合物としては、具体的にはナトリウムテトラキス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等のリチウム塩、又はそのエーテル錯体、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等のフェロセニウム塩、シルバーテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、シルバーテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等の銀塩等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
一般式(7)で表されるルイス酸としては、具体的にはトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、トロピリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
一般式(8)で表されるルイス酸性化合物の具体的な例としては、トリス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5−テトラフェニルフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラン、フェニルビス(パーフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)アルミニウム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明のオレフィン重合用触媒の構成成分である活性化助触媒(B)が変性粘土化合物である場合、用いる粘土化合物はカチオン交換能を有するものが好ましい。また、本発明において用いられる粘土化合物は、酸,アルカリによる処理、塩類処理及び有機化合物,無機化合物処理による複合体生成などの化学処理を行うことが好ましい。
【0040】
粘土化合物としては、天然に存在するカオリナイト、ディッカイト、ハロイサイト等のカオリン鉱物、モンモリロナイト、ヘクトライト、バイデライト、サポナイト、テニオライト、ソーコナイト等のスメクタイト族、白雲母、パラゴナイト、イライト等の雲母族、バーミキュライト族、マーガライト、クリントナイト等の脆雲母族、ドンバサイト、クッケアイト、クリノクロア等の縁泥石族、セピオライト・パリゴルスカイトなどや、人工合成された粘土化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0041】
化学処理に用いられる酸としては塩酸、硫酸、硝酸、酢酸等のブレンステッド酸が例示され、アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムが好ましく用いられる。塩類処理において用いられる化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化アンモニウム等のイオン性ハロゲン化物;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム等の硫酸塩;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム等のリン酸塩などの無機塩及び酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、シュウ酸カリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム等の有機酸塩などを挙げることができる。
【0042】
粘土化合物の有機複合体生成に用いられる有機化合物としては、オニウム塩、トリチルクロライド、トロピリウムブロマイド等の炭素カチオンを生成するような化合物、フェロセニウム塩等の金属錯体カチオンを生成する錯体化合物が例示される。無機複合体生成に用いられる無機化合物としては、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化クロム等の水酸化物陽イオンを生成する金属水酸化物等を挙げることができる。
【0043】
本発明において用いられる変性粘土化合物の内特に好ましくは、粘土化合物中に存在する交換性カチオンである金属イオンを特定の有機カチオン成分で交換した粘土化合物−有機イオン複合体である変性粘土化合物である。この変性粘土化合物に導入される有機カチオンとして、具体的にはブチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、デシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、ジアミルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、N,N−ジメチルデシルアンモニウム等の脂肪族アンモニウムカチオン、アニリニウム、N−メチルアニリニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、N−エチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、ベンジルアンモニウム、トルイジニウム、ジベンジルアンモニウム、トリベンジルアンモニウム、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウム等の芳香族アンモニウムカチオン等のアンモニウムイオン、あるいはジメチルオキソニウム、ジエチルオキソニウム等のオキソニウムイオンなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本発明のオレフィン重合用触媒においては、(A)遷移金属化合物及び(B)活性化助触媒と共に(C)有機金属化合物を共存させることができる。該有機金属化合物は、重合系中に存在する触媒毒となる成分を不活性化する役割を持つと同時に、遷移金属化合物のアルキル体を形成させることが可能な化合物が好ましく、具体的にはメチルリチウム、n−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム化合物、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライド、イソプロピルマグネシウムクロライド、ベンジルマグネシウムクロライド、メチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムブロマイド、イソプロピルマグネシウムブロマイド、ベンジルマグネシウムブロマイドなどのグリニャール試薬、ジメチルマグネシウムなどのジアルキルマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛などのジアルキル亜鉛、トリメチルボラン、トリエチルボランなどのアルキルボラン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライドなどのハロゲン化アルキルアルミニウム、メチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、tert−ブチルアルミノキサンなどのアルキルアルミノキサンなどを挙げることができる。
【0045】
本発明における(A)成分、(B)成分及び(C)成分の比に制限はないが、(B)成分が一般式(3)及び/又は(4)で表される場合、(A)成分と(B)成分の金属原子当たりのモル比は(A成分):(B成分)=1:10〜1:10000の範囲にあることが好ましい。(B)成分が一般式(5)、(6)、(7)又は(8)で表される化合物である場合、(A)成分と(C)成分の金属原子当たりのモル比は(A成分):(C成分)=1:10〜1:10000の範囲にあり、特に1:50〜1:1000の範囲であることが好ましく、(A)成分と(B)成分の比が(A成分):(B成分)=0.5:1〜1:20にあり、特に1:1〜1:10の範囲であることが好ましい。(B)成分が変性粘土化合物である場合、(A)成分と(C)成分の金属原子当たりのモル比は(A成分):(C成分)=1:10〜1:10000の範囲にあり、特に1:50〜1:1000の範囲であることが好ましく、(A)成分と(B)成分の比が(A成分):(B成分)=1:1〜1:10000にあり、特に1:10〜1:1000の範囲であることが好ましい。
【0046】
本発明において重合に供されるオレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン、スチレン及びスチレン誘導体、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の共役及び非共役ジエン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等の環状オレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸などのα,β−不飽和カルボン酸、及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸(2−フェノキシエチル)、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジル等の不飽和グリシジルエステル、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、1−フェニルアクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリルが挙げられ、さらにエチレンとプロピレン、エチレンと1−ブテン、エチレンと1−ヘキセン、エチレンと1−オクテン、エチレンと酢酸ビニル、エチレンとアクリル酸メチル、エチレンとメタクリル酸メチル、エチレンとプロピレンとスチレン、エチレンと1−ヘキセンとスチレン、エチレンとプロピレンとエチリデンノルボルネンのように2種以上の成分を混合して重合することもできる。
【0047】
本発明におけるオレフィンの重合は、気相でも液相でも行うことができ、液相で行う場合、用いる溶媒は一般に用いられている有機溶媒であればいずれでもよく、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2,2,2−トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール等が挙げられ、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、1−ヘキセンなどのオレフィンそれ自身を溶媒として用いることもできる。
【0048】
本発明の方法を用いてポリオレフィンを製造する上で、重合温度、重合時間、重合圧力、モノマー濃度などの重合条件について特に制限はないが、重合温度は−10℃〜300℃、重合時間は10秒〜40時間、重合圧力は常圧〜3000kg/cm2Gの範囲で行うことが好ましい。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて2段以上に分けて行うことも可能である。また、重合終了後に得られるポリオレフィンは、従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0049】
【発明の効果】
本発明のアザフェロセン又はホスファフェロセン構造を有する遷移金属化合物は、合成が容易で、しかもイミン窒素上のアミノ基は各種の多様な置換基を有することができる。さらに、重合用触媒として、オレフィン重合に対して極めて有効であり、本触媒をオレフィン重合用触媒として用いることで、ポリオレフィンを効率よく製造することが可能である。さらに、本発明のアザフェロセン又はホスファフェロセン構造を有する遷移金属化合物は、オレフィン重合用触媒以外にもオレフィンと一酸化炭素からのポリケトンの合成用触媒や不斉合成用の触媒、例えば不斉シクロプロパン化用の触媒としても有効であると考えられる。
【0050】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0051】
遷移金属化合物の合成は、シュレンクテクニック若しくはドライボックスを用いて行い、すべての操作をアルゴン又は窒素雰囲気下で行った。遷移金属化合物の調製に用いた溶媒は、全て公知の方法で脱酸素、脱水を行ったものを用いた。重合反応は2lSUS製オートクレーブを用い、エチレンガスを連続的に供給しながら所定の時間、所定の温度で行った。重合に用いた溶媒は、公知の方法にて脱酸素、脱水を行ったものを用いた。エチレンガスは重合グレードをそのまま用いた。
【0052】
実施例1
錯体A−1の合成:
[配位性化合物の合成]
100mlのシュレンクフラスコを窒素置換し、塩化鉄(II)(255mg,2.01mmol)及びTHF(10ml)を加えた。一方、50mlのシュレンクフラスコを窒素置換し、1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエン(785mg,1.75mmol)及びTHF(20ml)を加えた。室温でn−BuLi(1.56Mヘキサン溶液、1.24ml、1.93mmol)を滴下し、5分間攪拌した。この溶液をキャヌラーを用いて、塩化鉄のTHFスラリー液に導入した。さらに、カリウムピロリド(216mg,2.05mmol)とTHF(10ml)からなる溶液をキャヌラーを用いてフィードした。室温で2時間攪拌した後、水(15ml)を加えクエンチした。ジクロロメタン(25ml)を加えて抽出し、有機相を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒:ジクロロメタン、酢酸エチル)、オレンジ色の固体である1’,2’,3’,4’,5’−ペンタフェニルアザフェロセン(868mg,1.53mmol)を得た。収率87%。
【0053】
1H−NMR(400MHz、CD2Cl2)δ=4.71(t、J=0.7Hz、2H)、5.44(t、J=0.7Hz、2H)、7.07−7.12(m、10H)、7.14−7.20(m、15H).
50mlのシュレンクフラスコを窒素置換し、1’,2’,3’,4’,5’−ペンタフェニルアザフェロセン(985mg,1.73mmol)及びTHF21mlを加えた。−50℃に冷却し、n−BuLi(1.59Mヘキサン溶液、2.35ml、3.74mmol)を滴下した。−50℃で3時間攪拌した後、N,N−ジメチルホルムアミド(284mg,3.89mmol)を加えた。徐々に昇温しながら40分間反応後、水を加えてクエンチした。エーテルで抽出し、有機相を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ジクロロメタン、エーテル)により精製した。オレンジ色固体(743mg,1.25mmol)を得た。収率72%。
【0054】
50mlのシュレンクフラスコを窒素置換し、上記で合成した2−ホルミルアザフェロセン(91.5mg,0.15mmol)及びエタノール(6ml)を加えた。さらに、N−メチル−N−フェニルヒドラジン(28mg,0.23mmol)及び酢酸(10mg)を添加した。室温で44時間攪拌した後、反応液を減圧濃縮した。残渣を少量のメタノールで洗浄し、減圧乾燥後、配位性化合物であるオレンジ固体(98.4mg,0.14mmol)を得た。収率83%。
【0055】
1H−NMR(270MHz、C6D6)δ=2.49(s、3H)、4.47(s、1H)、5.32(s、1H)、5.55(s、1H)、6.80−7.50(m、31H)
[錯体A−1の合成]
50mlのシュレンクフラスコを窒素置換し、上記の配位性化合物(50.7mg,0.072mmol)及び(DME)NiBr2(アルドリッチ社製、97%、22.6mg,0.071mmol)を加えた。攪拌下、ジクロロメタン(5ml)を加え、室温で2時間攪拌した。得られたワインレッド色反応液をろ過し、わずかに残っている黄色不溶物を除いた。さらにジクロロメタン(10ml)で抽出し、合わせた溶液を減圧濃縮した。得られた残渣をヘキサン(50ml)で洗浄し、固体を減圧乾燥し、赤黒色の固体(62.7mg,0.068mmol)を得た。収率96%。
【0056】
FAB−MASS(マトリックス;2−ニトロフェニルオクチルエーテル):m/z 838(M+−Br),699(M+−NiBr2)
【0057】
【化17】
実施例2
[錯体溶液の調製]
100mlのシュレンクフラスコを窒素置換し、実施例1で合成した錯体A−1(5.0mg,5.4μmol)及びトルエン(50ml)を加え、10分間攪拌した。
【0058】
[エチレン重合]
2lのSUS製オートクレーブに、ヘキサン(500ml)及び変性メチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム(株)製 MMAO,2.3ml、アルミニウム原子換算で5.4mmol)を加えた。10kg/cm2Gのエチレンを充填した後、上記で得られた錯体溶液を室温で窒素圧入し、10kg/cm2Gの圧力になるようにエチレンを連続的に供給しながら1時間重合を行った。エタノールを圧入して反応をクエンチし、脱圧した。反応液を減圧濃縮し、固体の重合物0.79gを得た(重合活性は0.15kg/Ni・mmol・h)。DSCによる融点を測定したが、明瞭なピークは観測されなかった。GPC(1,2,4−トリクロロベンゼン、140℃)測定の結果、Mw=0.79×103、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。
Claims (5)
- 下記一般式(1)
- 下記一般式(2)
- (A)請求項1に記載の遷移金属化合物を構成成分としてなるオレフィン重合用触媒。
- (A)請求項1に記載の遷移金属化合物及び(B)活性化助触媒を構成成分としてなるオレフィン重合用触媒。
- 請求項3乃至請求項4に記載のオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンの重合を行うことを特徴とするポリオレフィンの製造方法。
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