JP3899649B2 - 炭素繊維の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は特に繊度の大きい炭素繊維を得るに適した炭素繊維の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維は、例えば、ポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を耐炎化し、ついで炭化することにより製造される。
【0003】
ポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を耐炎化する方法としては、図1に示すように、耐炎化炉1の両側にガイドロール2を配置し、繊維束3をジグザグ状に耐炎化炉内に通す方法が一般的である。
【0004】
耐炎化反応は発熱反応であるので、処理糸条が太くなるすなわち、処理する前駆体繊維束のフィラメント数が大きくなりすぎると、繊維束内部に蓄熱し処理温度に対し繊維束内部の温度が極端に高くなり暴走反応が発生しやすい。
【0005】
かかる繊維束内部での蓄熱を抑制する手段としては、繊維束を実質的に無撚の状態として略矩形に保つことが有効である。しかしそのような技術を用いた場合、繊維束の集束性が低くなることと、繊維束が太くなるに従い発生する毛羽も多くなることから、ガイドロールにさばけた単繊維の毛羽が巻きつき易く、糸切れを発生させるという問題があった。
【0006】
また、繊維束が太いと、耐炎化炉を出ても繊維束がなかなか冷えず、耐炎化反応での発生ガスすなわち耐炎化途中の繊維束の油剤分解物、もしくはポリアクリロニトリルの分解物等、いわゆるタール分がガイドロールに付着しやすく、ロール表面が粘着性を帯びるために、繊維束の単繊維の毛羽がさらに巻付きやすくなり、やがては糸切れを誘発するという問題もあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、総繊度の大きいポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を耐炎化するに際し、ロール上での巻き付き糸切れを抑制し、安定にプロセスを通過させ、生産性を向上させた炭素繊維製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の炭素繊維の製造方法は、前記課題を解決するために次の構成を有する。すなわち、総繊度30,000デニール以上のポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を実質的に撚りのない状態で温度200〜300℃の耐炎化炉によりガイドロールで折り返しながら耐炎化し、ついで炭化する炭素繊維の製造方法において、前記ガイドロールの径R(mm)と前駆体繊維束のフィラメント数F(本)の比R/Fを 1×10−3〜8×10−3とするとともに、前記ガイドロールを前記耐炎化炉の外側に配置し、前記ガイドロールに接触する直前の繊維を150℃以下の温度に冷却することを特徴とする炭素繊維の製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき、詳細に説明する。
【0010】
本発明において、耐炎化途中の繊維束は実質的に撚りのない状態に制御される。ここで実質的に撚りがない状態とは、通常、ガイドロール間で撚りが1m当たり0.1ターン以下であることを指す。
【0011】
ガイドロールは図1の様に耐炎化炉の両側に交互に配置され、ロールは、後述するガイドロール表面上に存在する繊維の温度を特定のものとするために、炉の外側にあるようにする。
【0012】
ロール径とは、耐炎化途中の前駆体繊維束がロールに添って作る円弧の直径を指す。すなわち、ロールに溝のない平ロールの場合はロールの最大径がロール径となるが、溝を有するロールの場合は溝底部の直径を指す。
【0013】
ロールの材質は、熱、張力により受けるひずみが少ないものであれば金属、コンポジット等、いずれを問わないが、価格、メンテナンス性を考慮すれば鉄に防錆メッキを施した物あるいはステンレスが好ましい。
【0014】
ロール径R(mm)は耐炎化処理する前駆体繊維束のフィラメント数F(本)に応じ、R/Fが1×10-3〜8×10-3、好ましくは1.5×10-3〜6×10-3、より好ましくは2×10-3〜4×10-3の範囲に制御される。
【0015】
R/Fが小さい場合、すなわちロール径Rがフィラメント数Fの割に小さいときは繊維の屈曲が多く、上下の繊維束間の距離が小さいため、毛羽がロールへ取られやすくなり、巻付きが発生しやすくなる。
【0016】
また、R/Fが大きい場合、すなわちロール径Rがフィラメント数Fの割に大きいときはロール自体の重量が大きくなるため、慣性モーメントが大きくなりスタート・ストップ時に繊維速度の変動にロール速度が追従できずにロール上で繊維がスリップし、毛羽糸切れによるトラブルが発生しやすく、また上下の繊維束の距離が大きいため耐炎化炉の設備が上下方向に大きくなり設備コストが高くなり、ひいては製造コストが高くなる。
【0017】
本発明では、ガイドロールに接触する直前の繊維束の温度を、150℃以下、好ましくは100℃以下とする。
【0018】
ガイドロールに接触する直前の繊維束の温度が150℃を超えると、繊維束において耐炎化反応がまだ続いているため、発生するポリアクリロニトリルの分解物、油剤の分解物ガスが、ロールに凝縮、転写されることがある。凝縮したガスは粘着性であり、このため、単糸毛羽がロールに取られ、やがて該毛羽が成長し、糸切れに至る問題がある。
【0019】
前記問題を解決するためには、耐炎化炉から出てきた繊維束を搬送ロールに達する前に150℃以下に冷却し、一旦耐炎化反応を終了もしくは抑制させればよく、具体的には、たとえば、耐炎化炉とロールの距離を大きく取る、ロールまでの間に繊維束が冷えるように繊維束の走行速度を設定する、耐炎化炉から出てきた繊維束に冷風を付与するなどの方法を取ることができる。
【0020】
耐炎化途中の繊維束の幅1mmあたりの繊度、いわゆる糸条密度は4,000デニール/mm〜10,000デニール/mm、好ましくは5,000デニール/mm〜8,000デニール/mmであることが望ましい。糸条密度が4,000デニール/mmより小さいと、ロールへの接触するフィラメント数が大きくなり、その分表面に現れる単繊維毛羽数も多くなることから、巻き付きの発生頻度が高くなる。一方、糸条密度が10,000デニール/mmを超えると繊維束の厚みむらが大きくなり、耐炎化反応の暴走が発生するおそれがあるので、耐炎化処理温度を下げる必要が生じ、生産性が下がる。
【0021】
耐炎化に際して、繊維束には30×10-5〜200×10-5N/デニール、好ましくは40×10-5〜170×10-5N/デニール、より好ましくは50×10-5〜150×10-5N/デニール、の張力を付与することが望ましい。かかる張力が、30×10-5N/デニールより小さいと、繊維にたるみが発生し単糸毛羽がロールに取られやすくなり、200×10-5N/デニールを超えると耐炎化途中の繊維束の一部が破断し始め、毛羽の巻き付きが促進されやすくなる。
【0022】
かかる張力は耐炎化炉での延伸比すなわち、耐炎化へ繊維束をフィードする速度と耐炎化炉出で繊維束を引き取る速度の比を変えることにより制御される。すなわち、耐炎化へ繊維束をフィードする速度を一定にし、耐炎化出で繊維束を引き取る速度を早くすれば張力をあげることができる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。
【0024】
実施例1
単繊維繊度1.5デニール、フィラメント数100,000、総繊度150,000デニールの実質的に無撚のポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を、溝幅25mmの溝ロールを介し糸条密度6,000デニール/mmの略矩形シート状に保ち、図1に示す様な熱風循環方式の耐炎化炉へ供給した。
【0025】
耐炎化炉のロール間距離は10mであり、ガイドロール直径200mm、耐炎化炉内から繊維束が出入りするスリットとガイドロールの距離は800mmとした。このときのR/Fは2×10-3であった。
【0026】
耐炎化の条件は、繊維束をフィードする速度3m/分、温度230℃とし、耐炎化時間は60分とした。耐炎化炉から出てきた直後の繊維の温度は220℃、ガイドロールに接触する直前の繊維温度は90℃であり、前駆体糸条のガイドロール表面での温度は85℃であった。
【0027】
この条件で耐炎化を3日間連続で運転したところ、ガイドロールへの単糸巻き付きはゼロであり、糸切れなく安定して走行した。
【0028】
上記耐炎化処理を行って得られた耐炎化繊維を、次いで不活性雰囲気中最高温度900℃、1400℃の2段階で炭化処理を行い、表面処理、サイジング付与を行い炭素繊維を得た。
【0029】
得られた炭素繊維は、毛羽が少なく、引張強度は3.9GPa、弾性率235GPaの優れたものであった。
【0030】
比較例1
ガイドロールをロール径80mmのものに変更した以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維を得た。このときのR/Fは0.8×10-3であった。
【0031】
耐炎化炉から出てきた繊維束のロール接触直前の温度は90℃であり、運転を始めて5時間でガイドロールに単糸の巻付きが発生した。そのまま放置したところ15分後には単糸の巻付きが成長し、糸切れが発生した。上記耐炎化繊維が巻き付くまでの間、不活性雰囲気中最高温度900℃、1400℃の2段階で炭化処理、ついで、表面処理、サイジング付与を行った炭素繊維は毛羽が多く、引張強度は2.9GPa、弾性率235GPaであった。
【0032】
比較例2
耐炎化炉内から繊維が出てくるスリットとロールの距離を150mmに変更した以外は実施例1と同様にして前駆体繊維束を耐炎化炉に供給した。
【0033】
耐炎化炉から出てきた繊維束のロール接触直前の温度は190℃であり、5時間運転した後、ロール表面がタールで粘着性を帯びていた。
【0034】
20時間後単糸巻き付きが発生し、このまま放置したところ、15分後に糸切れが発生した。
【0035】
前記耐炎化繊維が糸切れするまでの間、不活性雰囲気中最高温度900℃、1400℃の2段階で炭化処理を行い、表面処理、サイジング付与を行い炭素繊維を得た。得られた炭素繊維は比較例1同様毛羽が多く、引張強度は3.3GPa、弾性率235GPaであった。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、総繊度の大きい前駆体繊維束を、ガイドロール上での巻き付き糸切れを抑制し、安定にプロセスを通過させて耐炎化でき、総繊度の大きい炭素繊維を生産性良く製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】外側にガイドロールを配した耐炎化炉の概略図である。
【符号の説明】
1:耐炎化炉
2:ガイドロール
3:前駆体繊維束
Claims (3)
- 総繊度30,000デニール以上の、実質的に撚りのないポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を、ガイドロールで折り返しながら温度200〜300℃の耐炎化炉内で耐炎化し、ついで炭化する炭素繊維の製造方法において、前記ガイドロールの径R(mm)と前記前駆体繊維束のフィラメント数F(本)の比R/Fを1×10−3〜8×10−3とするとともに、前記ガイドロールを前記耐炎化炉の外側に配置し、前記ガイドロールに接触する直前の繊維を150℃以下の温度に冷却することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
- 耐炎化途中の繊維束は、幅1mmあたりの繊度が4,000〜10,000デニール/mmであることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維の製造方法。
- 耐炎化に際し、繊維束に30×10−5〜200×10−5N/デニールの張力を付与することを特徴とする請求項2に記載の炭素繊維の製造方法。
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JP07029798A JP3899649B2 (ja) | 1998-03-19 | 1998-03-19 | 炭素繊維の製造方法 |
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1998
- 1998-03-19 JP JP07029798A patent/JP3899649B2/ja not_active Expired - Fee Related
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