本発明に係る印刷インキは、呈色性化合物と顕色剤と消色剤とを用いることにより発色・消色が可能になっている。なお、ビヒクルが消色剤として作用することもある。本発明の印刷インキの消去は、加熱または消去溶媒との接触によりなされる。
本発明の印刷インキにおいて、発色状態と消色状態との間の状態変化は以下のような原理でなされる。まず、印刷インキを加熱して消去する場合について説明する。室温においては、呈色性化合物および顕色剤の相と消色剤の相とが相分離した状態が平衡状態に近い。この場合、呈色性化合物と顕色剤とが互いに相互作用して発色状態になっている。この状態から、組成系を融点以上に加熱すると、顕色剤が流動状態の消色剤に優先的に溶解し、呈色性化合物との相互作用を失うため消色状態になる。溶融状態にある組成系を冷却することによって強制的に固化すると、消色剤は平衡溶解度を越えた量の顕色剤を取り込んで非晶質化し、室温で無色になる。非晶質の組成系は、相対的には非平衡な状態にあるが、ガラス転移点Tg以下の温度では十分長寿命であり、Tgが室温以上であるならば非晶質状態から容易に平衡状態に移ることはない。
印刷インキを消去溶媒に接触させる方法でも、加熱による方法とほぼ同様に以下のような原理で消去がなされる。すなわち、紙上の発色状態にある印刷インキを消去溶媒に接触させると、インキ成分中への消去溶媒の侵入により顕色剤および消色剤が比較的自由に動ける状態になる。この結果、顕色剤が消色剤と混合し、顕色剤と呈色性化合物との相互作用が失われて印刷インキは消色する。そして、紙から消去溶媒を除去すると、消色剤が平衡溶解度を超えた量の顕色剤を取り込んだ状態で非晶質化するため、印刷インキの消去状態が固定される。この消去状態は、室温において非常に安定である。
本発明で用いられる呈色性化合物としては、ロイコオーラミン、ジアリールフタリド、ポリアリールカルビノール、アシルオーラミン、アリールオーラミン、ローダミンBラクタム、インドリン、スピロピラン、フルオランなどの電子供与性有機物が挙げられる。
具体的な呈色性化合物として、クリスタルバイオレットラクトン(CVL)、マラカイトグリーンラクトン、2−アニリノ−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−3−メチルフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−N−プロピルアミノ)フルオラン、3−[4−(4−フェニルアミノフェニル)アミノフェニル]アミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、2−アニリノ−6−(N−メチル−N−イソブチルアミノ)−3−メチルフルオラン、2−アニリノ−6−(ジブチルアミノ)−3−メチルフルオラン、3−クロロ−6−(シクロヘキシルアミノ)フルオラン、2−クロロ−6−(ジエチルアミノ)フルオラン、7−(N,N−ジベンジルアミノ)−3−(N,N−ジエチルアミノ)フルオラン、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(4’−ニトロアニリノ)ラクタム、3−ジエチルアミノベンゾ[a]−フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−キシリジノフルオラン、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−ジエチルアミノ−7−クロロアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,6−ジメチルエトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、DEPM、ATP、ETAC、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、クリスタルバイオレットカルビノール、マラカイトグリーンカルビノール、N−(2,3−ジクロロフェニル)ロイコオーラミン、N−ベンゾイルオーラミン、ローダミンBラクタム、N−アセチルオーラミン、N−フェニルオーラミン、2−(フェニルイミノエタンジリデン)−3,3−ジメチルインドリン、N,3,3−トリメチルインドリノベンゾスピロピラン、8’−メトキシ−N,3,3−トリメチルインドリノベンゾスピロピラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−ベンジルオキシフルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジエチルアミノフルオラン、3,6−ジ−p−トルイジノ−4,5−ジメチルフルオラン、フェニルヒドラジド−γ−ラクタム、3−アミノ−5−メチルフルオランなどが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。呈色性化合物を適宜選択すれば多様な色の発色状態が得られることから、マルチカラー対応が可能である。
本発明で用いられる顕色剤としては、フェノール、フェノール金属塩、カルボン酸金属塩、ベンゾフェノン、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸、リン酸金属塩、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステル金属塩、亜リン酸、亜リン酸金属塩などの酸性化合物が挙げられる。具体的には、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,6−ジヒドロキシアセトフェノン、3,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,3,4−トリヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、4−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4−[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4,6−ビス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]−1,2,3−ベンゼントリオール)、メチレントリス−p−クレゾール、メチレンテトラキス−p−クレゾール、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンビス(3−メチルフェノール)、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−1,2−ベンゼンジオール、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、レゾルシンクロマンA、レゾルシンフラバンZ、4,4’,4”−エチリデントリスフェノール、4,4’−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2−メチルフェノール)、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸n−プロピル、没食子酸n−ブチル、没食子酸i−ブチル、没食子酸n−オクチル、没食子酸n−セチルなどが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
次に、本発明の第1および第2の消去可能な印刷インキの状態について説明する。ここで、従来より使用されている通常の印刷インキでは、色素分子が凝集した顔料成分が固体状態でビヒクル中に分散している。これに対して、本発明の第1の消去可能な印刷インキでは、互いに結合して発色した呈色性化合物と顕色剤とがマイクロカプセルに封入されて固体状態でビヒクル中に分散している。この場合、マイクロカプセル中の呈色性化合物および顕色剤は周囲のビヒクルから完全に隔離されている。また、本発明の第2の消去可能な印刷インキでは、互いに結合して発色した呈色性化合物と顕色剤とが高分子材料(バインダーポリマー)と混練されて固体状態でビヒクル中に分散している。この場合、バインダーポリマーと混練された呈色性化合物および顕色剤は周囲のビヒクルから完全に隔離されているわけではないが、物理的にはバインダーポリマーと一体化している。
上述したように、呈色性化合物および顕色剤のほかに消色剤を含有するかまたはビヒクルもしくは高分子材料が消色剤として作用する印刷インキは、加熱するかまたは消去溶媒を接触させることにより消去することができ、消色剤を含まない印刷インキは消去剤を含有する消去溶媒を接触させることにより消去することができる。本発明の第1および第2の消去可能な印刷インキでは、マイクロカプセルまたはバインダーポリマー中への消去溶媒の侵入により呈色性化合物および顕色剤が動きやすくなり、これらが消去剤と作用して相互作用しなくなるため消色する。この消去操作後においても、マイクロカプセルに封入されているかまたはバインダーポリマーと一体化に混練されている呈色性化合物および顕色剤はインキが印刷されていた画像領域から離れて周囲へ広がり再発色することはないので、良好な消去状態を得ることができる。
上記の印刷インキのうち、呈色性化合物および顕色剤をバインダーポリマーと混練したものは、呈色性化合物および顕色剤をマイクロカプセルで封入したものよりも、製造が容易であるという利点がある。たとえば、発色状態の呈色性化合物、顕色剤および消去剤を消去性のない樹脂と混練してもよいし、発色状態の呈色性化合物および顕色剤を消去性のない樹脂と混練した後にさらに消去性のある樹脂と混練りしてもよい。なお、消去性のない溶剤中において、発色状態の呈色性化合物および顕色剤の存在下で、消去性のない樹脂を重合させるようにしてもよい。
本発明において、呈色性化合物および顕色剤とともに混練される高分子材料(バインダーポリマー)としては、代表的にはポリスチレン、スチレンまたはその誘導体を含む共重合体、およびアクリル樹脂が用いられる。ポリスチレン、スチレンまたはその誘導体を含む共重合体としては、例えばポリスチレンホモポリマー、水素添加スチレン樹脂、スチレン−イソブチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元共重合体、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル三元共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン三元共重合体、アクリロニトリル−塩素化スチレン−スチレン三元共重合体、アクリロニトリル−EVA−スチレン三元共重合体、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−マレイン酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。アクリル樹脂としては、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリn−ブチルメタクリレート、ポリグリシジルメタクリレート、ポリ含フッ素アクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−ブチルメタクリレート共重合体、スチレン−エチルアクリレート共重合体などが挙げられる。その他、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪酸または脂環式炭化水素樹脂、芳香族石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどを用いることができる。以上のような高分子材料は単独で、または2種以上混合して用いることができる。ただし、アクリル系の樹脂は、酸性分が残留していると発色濃度を低下させるおそれがあるため、配合量を調整することが好ましい。
また、本発明においては、呈色性化合物および顕色剤とともに混練される高分子材料(バインダーポリマー)として、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、化学反応硬化性樹脂を用いることも有効である。これらの樹脂を用いた場合、消去操作後に呈色性化合物および顕色剤がバインダーポリマーから離れるのを抑制する効果が高いので、より良好な消去状態が得られる。
本発明で用いられる消色剤としては、代表的にはステロイド骨格のように球状に近く嵩高い分子骨格を有し、アルコール性ヒドロキシル基を有する化合物、たとえばステロール化合物が挙げられる。分子量が100未満の低分子化合物や、分子量が100以上であっても直鎖状の長鎖アルキル誘導体や平面状の芳香族化合物は適さない。ステロール化合物の具体例としては、コレステロール、スチグマステロール、プレグネノロン、メチルアンドロステンジオール、エストラジオール ベンゾエート、エピアンドロステン、ステノロン、β−シトステロール、プレグネノロン アセテート、β−コレスタロール、5,16−プレグナジエン−3β−オール−20−オン、5α−プレグネン−3β−オール−20−オン、5−プレグネン−3β,17−ジオール−20−オン 21−アセテート、5−プレグネン−3β,17−ジオール−20−オン 17−アセテート、5−プレグネン−3β,21−ジオール−20−オン 21−アセテート、5−プレグネン−3β,17−ジオール ジアセテート、ロコゲニン、チゴゲニン、エスミラゲニン、ヘコゲニン、ジオスゲニンおよびその誘導体が挙げられる。なお、これらの消色剤を用いた場合、原理的には発色状態と消色状態とを可逆的に繰り返すことができる。
消色剤としては、顕色剤との相溶性が非常に高い、コール酸、リトコール酸、テストステロンおよびコルチゾン、ならびにこれらの誘導体も挙げられる。具体例としては、コール酸、コール酸メチルエステル、コール酸ナトリウム、リトコール酸、リトコール酸メチルエステル、リトコール酸ナトリウム、ヒオデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸メチルエステル、テストステロン、メチルテストステロン、11α−ヒドロキシメチルテストステロン、ヒドロコルチゾン、コレステロールメチルカーボネート、α−コレスタノールが挙げられる。これらのうちでも特に2個以上のヒドロキシル基を有するものが好ましい。
消色剤として、呈色性化合物と顕色剤との相分離を抑制する作用を有するもの(相分離抑制剤)を、他の消色剤と組み合わせて用いることもできる。
たとえば、非晶質性が高い相分離抑制剤として環式糖アルコールが挙げられる。具体例としては、D−グルコース、D−マンノース、D−ガラクトース、D−フルクトース、L−ソルボース、L−ラムノース、L−フコース、D−リボデソース、α−D−グルコース=ペンタアセテート、アセトグルコース、ジアセトン−D−グルコース、D−グルクロン酸、D−ガラクツロン酸、D−グルコサミン、D−フルクトサミン、D−イソ糖酸、ビタミンC、エルトルビン酸、トレハロース、サッカロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトース、スタキオース、メチル=α−グルコピラノシド、サリシン、アミグダリン、オイキサンチン酸が挙げられる。これらのうち1種または2種以上を用いることができる。また、非晶質性が低い相分離抑制剤として、環式糖アルコール以外のヒドロキシル基を有する5員環以上の非芳香族環式化合物または環式糖アルコールの誘導体が挙げられる。具体例としては、脂環式1価アルコール、たとえばシクロドデカノール、ヘキサヒドロサリチル酸、メントール、イソメントール、ネオメントール、ネオイソメントール、カルボメントール、α−カルボメントール、ピペリトール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、1−p−メンテン−4−オール、イソプレゴール、ジヒドロカルベオール、カルベオール;脂環式多価アルコール、たとえば1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、フロログルシトール、クエルシトール、イノシトール、1,2−シクロドデカンジオール、キナ酸、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ピノールヒドラート、ベツリン;多環式アルコール誘導体、たとえばボルネオール、イソボルネオール、アダマンタノール、ノルボルネオール、フェンコール、ショウノウ、イソソルバイド;環式糖アルコールの誘導体、たとえば1,2:5,6−ジイソプロピリデン−D−マンニトールが挙げられる。これらのうち1種または2種以上を用いることができる。また、非晶質性が高い相分離抑制剤と非晶質性が低い相分離抑制剤とを併用することが好ましい。
消色剤は沸点が高く不揮発性であり、極性基を有する化合物であることが好ましく、ポリマー(またはオリゴマー)でもよい。たとえば、ポリマー消色剤として、デンプン(馬鈴薯デンプン、とうもろこしデンプンなど)、セルロース、セルロース誘導体などが好適である。これらのポリマー消色剤は、発色状態にある呈色性化合物および顕色剤がビヒクルから適切に分離されている状態では、ビヒクルの成分として用いることもできる。
本発明において、ビヒクルは(1)油、(2)溶剤、(3)可塑剤、(4)樹脂、(5)ワックスなどの成分を含有するものである。これらの成分の好適な特性は以下の通りである。
(1)油は酸価が低く、カルボン酸を含有せず、極性の低いものが好ましい。好適な油としては、あまに油(酸価2.0)、オイチシカ油(酸価2.0)、麻実油(酸価2.0)、サフラワー油(酸価1.0)、大豆油(酸価3.0)、トール油(酸価3.0)などが挙げられる。
(2)溶剤としては脂肪族系炭化水素が好ましく、消去溶媒となりうるものは好ましくない。高沸点炭化水素溶剤(たとえば商品名インキオイル、アイソパー)は特に有効である。高沸点炭化水素溶剤のうちでもジペンテン(またはリモネン)およびテトラリンは、消去性がなく、樹脂を溶解することなく良好な分散性を与え、かつ他の成分に対して良好な溶解性を示すので特に好ましい。その他の溶剤として、工業用ガソリン2号、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、0号ソルベンH(日本石油)などが挙げられる。一方、アルコール、グリコール、グリコール誘導体、ケトン、エステルなどは溶剤として適さない。なお、アルコールまたはグリコールは、少量であれば水に混合して用いることができる。
(3)可塑剤は酸価が低く透明で極性が高くないものが好ましい。エステル結合を有する可塑剤はそれほど好ましくないが、適量であれば混合してもよい。
(4)樹脂は酸価が低く、無着色であることが好ましい。好適な樹脂としては、ビニル樹脂、アルキド樹脂、環化ゴムなどが挙げられる。ビニル樹脂はモノオレフィン、ジオレフィンなどの不飽和炭化水素を原料とするものであり、酸価が低い。アルキド樹脂や環化ゴムは無色で良好な性質を示す。テルペン樹脂のような天然ポリマーは淡黄色を呈するものがあるので使用を避ける方がよい。従来、多くの印刷インクのビヒクルにはフェノール樹脂が用いられてきたが、フェノール樹脂は酸価が高いので好ましくない。同様に、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリエステルなどの樹脂も酸価が高いので好ましくない。
なお、ビヒクルの樹脂として、上述したデンプン、セルロース、セルロース誘導体など、消色剤として作用するポリマーを用いてもよい。
(5)ワックスは酸価が低く透明なものが好ましい。好適なワックスとしては、パラフィンワックス、ミクロクリスタリンワックス、地ろう、ポリエチレンワックス、ポリテトラフルオレンワックスなどが挙げられる。エステル結合を有するワックスは好ましくない。
本発明において、ビヒクルの成分である樹脂およびワックスの酸価を10以下と規定したのは、酸価が10を超える、すなわち酸性成分が多いと、酸性成分が顕色剤として作用するため、印刷インキの発色性能を阻害するおそれがあるためである。特に、マイクロカプセルやバインダーポリマーを用いていない印刷インキでは上記の酸価を条件を満たすことが重要になる。
一方、呈色性化合物および顕色剤をマイクロカプセルで封入するか高分子材料(バインダーポリマー)と混練し、呈色性化合物および顕色剤をビヒクルなどの他の成分から分離すれば、ビヒクル成分の酸価は特に限定されない。このようにマイクロカプセル化またはバインダーポリマーと混練すれば、残りの成分としてこれまで通常の印刷インキに使用されてきた種々の材料を用いることができるので、材料に対する制限が少ない。
本発明の印刷インキは、塗布した後、乾燥することにより紙の上に定着される。この際、乾燥温度は消色剤の融点より低い温度に設定される。本発明の印刷インキは、加熱または溶媒との接触により消去することができる。なお、消色剤を含まない印刷インキは、消色剤を含有する溶媒を用いて消去する。
本発明の印刷インキを加熱により消去する場合、消去温度はビヒクルの成分である樹脂の軟化点以上または消色剤の融点以上に設定される。
本発明の印刷インキを溶媒(消色剤を含む場合もある)に接触させて消去する場合、以下のような溶媒を用いることが好ましい。すなわち、(A)顕色剤と消色剤との間の水素結合の形成を助ける性質を有することが好ましく、さらに(B)樹脂(マイクロカプセル、バインダーポリマー、ビヒクル樹脂)との親和性が高く印刷インキの内部にまで浸透しやすい性質を有することが好ましい。上記の(A)および(B)の性質を満たす溶媒は単独で使用することができる。また、2種以上の溶媒を混合して上記の2つの性質を満たすようにしてもよい。
上記の(A)および(B)の両方の性質を有する溶媒(第一群)としては、エーテル、ケトン、エステルなどが挙げられる。具体例は、飽和エーテル、たとえばエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、イソペンチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチルイソペンチルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル;不飽和エーテル、たとえばエチルビニルエーテル、アリルエチルエーテル、ジアリルエーテル、エチルプロパルギルエーテル;二価アルコールのエーテル、たとえば2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン;環状エーテル、たとえばオキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキソラン、ジオキサン、トリオキサン;飽和ケトン、たとえばアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、イソプロピルメチルケトン、ブチルメチルケトン、エチルプロピルケトン、イソブチルメチルケトン、ピナコロン、メチルペンチルケトン、ブチルエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ヘキシルメチルケトン、イソヘキシルメチルケトン、へプチルメチルケトン、ジブチルケトン;不飽和ケトン、たとえばエチリデンアセトン、アリルアセトン、メシチルオキシド;環状ケトン、たとえばシクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン;エステル、たとえばギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸sec−アミル、酢酸ヘキシル、酢酸アリル、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、1,2−ジアセトキシエタン、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ペンチル、プロピオン酸イソペンチル、プロピオン酸sec−アミル、2−メトキシプロピルアセテート、2−エトキシプロピルアセテート、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸ペンチル、酪酸イソペンチル、酪酸sec−アミル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、イソ酪酸イソプロピル、イソ酪酸ブチル、イソ酪酸ペンチル、イソ酪酸イソペンチル、イソ酪酸sec−アミル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、吉草酸イソプロピル、吉草酸ブチル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、吉草酸イソプロピル、吉草酸ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸プロピル、ヘキサン酸イソプロピルなどである。上記以外の溶媒として、塩化メチレン、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、n−メチルピロリジノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ジメチルスルホキシドなどがある。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。混合溶媒を用いる場合、混合比は任意に設定できる。
上記(A)の性質を有するが、樹脂との親和性が低い溶媒(第二群)は、たとえば水、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンチルアルコール、2−ペンチルアルコール、3−ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリンなどである。
上記(A)の性質を持たないが、樹脂との親和性が高い溶媒(第三群)は、たとえばトルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジエチルベンゼン、メシチレン、キシレン、クレゾール、エチルフェノール、ジメトキシベンゼン、ジメトキシトルエン、ベンジルアルコール、トリルカルビノール、クミルアルコール、アセトフェノン、プロピオフェノン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロヘプタン、シクロオクタン、石油留分(石油エーテル、ベンジンなど)である。
上述したように第一群の溶媒は単独で良好に使用することができる。第二群の溶媒は、単独でも使用できるが、第一群の溶媒と混合してもよい。この場合、どちらの群の溶媒も消去能を持っているので任意の混合比で使用することができる。第二群の溶媒と第三群の溶媒との混合溶媒を用いる場合、十分な消去能が得られれば両者の混合比は特に限定されないが、第三群の溶媒を20〜80wt%とすることが好ましい。第三群の溶媒は第一群の溶媒と混合して用いてもよい。この場合、第三群の溶媒を90wt%以下とすればよい。また、第一群から第三群の溶媒を混合して用いてもよい。この場合、第三群の溶媒を80wt%以下とすることが好ましい。
本発明の印刷インキを消去する際には、印刷インキを溶媒に接触させた後、さらに加熱してもよい。また、加熱した後に印刷インキを溶媒に接触させてもよい。このような方法では、非常に良好な消去状態を得ることができる。
以下、本発明の実施例を説明する。
実施例1
呈色性化合物としてPSD184(日本曹達製)10重量部および顕色剤として没食子酸10重量部をアセトン中で混合し、乾燥させて発色させた。一方、油としてあまに油/トルエン(2/1)76重量部、樹脂としてポリビニルブチラール(酸価0)2重量部、ワックスとしてパラフィン(酸価0)2重量部を含有する新聞インキ用のビヒクルを調製した。発色した呈色性化合物および顕色剤とビヒクルを、ボールミルで1昼夜混合して印刷インキを調製した。
この印刷インクをフェルト紙の台に染み込ませ、凸版に押し付けた後、紙に転写してべた画像を形成し、乾燥した。このべた画像の反射濃度は1.2であった。この紙を、消色剤であるコール酸メチルのメチルエチルケトン飽和溶液に10秒間浸漬した後、乾燥させて画像を消去した。画像を消去した後の紙の反射濃度は0.07であった。
次に、ビヒクル樹脂としてポリビニルブチラールの代わりに、それぞれ種々の酸価を有するケトン樹脂、硬化ロジン、またはフェノール樹脂を用い、上記と同様にして印刷インキを調製し、発色時・消色時の反射濃度を調べた。これらの結果を表1にまとめて示す。表1からわかるように、消色時の反射濃度を低下させるためには、ビヒクル樹脂の酸価が低いことが好ましい。
また、ワックスとしてパラフィンの代わりに、それぞれ種々の酸価を有するモンタンろうを用い、上記と同様にして印刷インキを調製し、発色時・消色時の反射濃度を調べた。これらの結果を表2にまとめて示す。表2からわかるように、消色時の反射濃度を低下させるためには、ワックスの酸価が低いことが好ましい。
実施例2
呈色性化合物としてPSD184(日本曹達製)10重量部および顕色剤として没食子酸10重量部をアセトン中で混合し、乾燥させて発色させた。一方、油としてトルエン/ヘキサン30重量部、樹脂としてポリビニルブチラール(酸価0)30重量部、ワックスとしてパラフィン(酸価0)20重量部を含有するオフセットインキ用のビヒクルを調製した。発色した呈色性化合物および顕色剤とビヒクルを、ボールミルで1昼夜混合して印刷インキを調製した。
この印刷インクをフェルト紙の台に染み込ませ、凸版に押し付けた後、紙に転写してべた画像を形成し、乾燥した。このべた画像の反射濃度は1.5であった。この紙を、消色剤であるコール酸メチルのメチルエチルケトン飽和溶液に10秒間浸漬した後、乾燥させて画像を消去した。画像を消去した後の紙の反射濃度は0.06であった。
次に、ビヒクル樹脂としてポリビニルブチラールの代わりに、それぞれ種々の酸価を有するケトン樹脂、硬化ロジン、またはフェノール樹脂を用い、上記と同様にして印刷インキを調製し、発色時・消色時の反射濃度を調べた。これらの結果を表3にまとめて示す。表3からわかるように、消色時の反射濃度を低下させるためには、ビヒクル樹脂の酸価が低いことが好ましい。
また、ワックスとしてパラフィンの代わりに、それぞれ種々の酸価を有するモンタンろうを用い、上記と同様にして印刷インキを調製し、発色時・消色時の反射濃度を調べた。これらの結果を表4にまとめて示す。表4からわかるように、消色時の反射濃度を低下させるためには、ワックスの酸価が低いことが好ましい。
実施例3
呈色性化合物としてPSD184(日本曹達製)10重量部および顕色剤として没食子酸10重量部をアセトン中で混合し、乾燥させて発色させた。一方、油としてあまに油/トルエン(2/1)66重量部、樹脂としてポリビニルブチラール(酸価0)2重量部、ワックスとしてパラフィン(酸価0)2重量部、消色剤としてコール酸メチル66重量部を含有する新聞インキ用のビヒクルを調製した。発色した呈色性化合物および顕色剤とビヒクルを、ボールミルで1昼夜混合して印刷インキを調製した。
この印刷インクをフェルト紙の台に染み込ませ、凸版に押し付けた後、紙に転写してべた画像を形成し、乾燥した。このべた画像の反射濃度は1.2であった。この紙を、メチルエチルケトンに10秒間浸漬した後、乾燥させて画像を消去した。画像を消去した後の紙の反射濃度は0.07であった。
次に、ビヒクル樹脂としてポリビニルブチラールの代わりに、それぞれ種々の酸価を有するケトン樹脂、硬化ロジン、またはフェノール樹脂を用い、上記と同様にして印刷インキを調製し、発色時・消色時の反射濃度を調べた。これらの結果を表5にまとめて示す。表5からわかるように、消色時の反射濃度を低下させるためには、ビヒクル樹脂の酸価が低いことが好ましい。
また、ワックスとしてパラフィンの代わりに、それぞれ種々の酸価を有するモンタンろうを用い、上記と同様にして印刷インキを調製し、発色時・消色時の反射濃度を調べた。これらの結果を表6にまとめて示す。表6からわかるように、消色時の反射濃度を低下させるためには、ワックスの酸価が低いことが好ましい。
実施例4
呈色性化合物としてPSD184(日本曹達製)5重量部および顕色剤として没食子酸5重量部をアセトン中で混合し、乾燥させて発色させた。一方、油としてトルエン/ヘキサン30重量部、樹脂としてポリビニルブチラール(酸価0)30重量部、ワックスとしてパラフィン(酸価0)10重量部、消色剤としてコール酸メチル20重量部を含有するオフセットインキ用のビヒクルを調製した。発色した呈色性化合物および顕色剤とビヒクルを、ボールミルで1昼夜混合して印刷インキを調製した。
この印刷インクをフェルト紙の台に染み込ませ、凸版に押し付けた後、紙に転写してべた画像を形成し、乾燥した。このべた画像の反射濃度は1.5であった。この紙を、メチルエチルケトンに10秒間浸漬した後、乾燥させて画像を消去した。画像を消去した後の紙の反射濃度は0.06であった。
次に、ビヒクル樹脂としてポリビニルブチラールの代わりに、それぞれ種々の酸価を有するケトン樹脂、硬化ロジン、またはフェノール樹脂を用い、上記と同様にして印刷インキを調製し、発色時・消色時の反射濃度を調べた。これらの結果を表7にまとめて示す。表7からわかるように、消色時の反射濃度を低下させるためには、ビヒクル樹脂の酸価が低いことが好ましい。
また、ワックスとしてパラフィンの代わりに、それぞれ種々の酸価を有するモンタンろうを用い、上記と同様にして印刷インキを調製し、発色時・消色時の反射濃度を調べた。これらの結果を表8にまとめて示す。表8からわかるように、消色時の反射濃度を低下させるためには、ワックスの酸価が低いことが好ましい。
実施例5
呈色性化合物としてPSD184(日本曹達製)10重量部および顕色剤として没食子酸10重量部をアセトン中で混合し、乾燥させて発色させた。一方、油としてあまに油/トルエン(2/1)50重量部、樹脂として消色剤として作用するデンプン20重量部、ワックスとしてパラフィン(酸価0)10重量部を含有する新聞インキ用のビヒクルを調製した。発色した呈色性化合物および顕色剤とビヒクルを、ボールミルで1昼夜混合して印刷インキを調製した。
この印刷インクをフェルト紙の台に染み込ませ、凸版に押し付けた後、紙に転写してべた画像を形成し、乾燥した。このべた画像の反射濃度は1.2であった。この紙を、メチルエチルケトンに10秒間浸漬した後、乾燥させて画像を消去した。画像を消去した後の紙の反射濃度は0.09であった。
実施例6
呈色性化合物としてPSD184(日本曹達製)および顕色剤として没食子酸を重量比1:1の割合としてアセトン中で混合し、乾燥させて発色させた粉体を調製した。この粉体と消色剤としてコール酸を1:17の割合で混合してボールミルに入れ、アラビアゴム8wt%水溶液中で10μmオーダーまで粉砕して分散させた。40℃において、この分散液とゼラチン水溶液とを混合して1時間攪拌した後、水で希釈して攪拌した。つづいて、10wt%酢酸水溶液を添加してpHを3.9に調整し、さらに37%ホルマリンを添加してpHを7.0に調整した。この液を5℃に冷却して室温で3日間放置した後、遠心分離機で液中に生成した黒色マイクロカプセルを分離した。一方、油としてトルエン/ヘキサン30重量部、樹脂としてフェノール樹脂(酸価85)30重量部、ワックスとしてパラフィン(酸価0)20重量部を含有するオフセットインキ用のビヒクルを調製した。マイクロカプセル20重量部とビヒクル80重量部を、長時間にわたり攪拌混合して印刷インキを調製した。
この印刷インクをフェルト紙の台に染み込ませ、凸版に押し付けた後、紙に転写してべた画像を形成し、乾燥した。このべた画像の反射濃度は1.5であった。この紙を、メチルエチルケトンに10秒間浸漬した後、乾燥させて画像を消去した。画像を消去した後の紙の反射濃度は0.04であった。このように呈色性化合物および顕色剤をマイクロカプセル化した場合には、酸価の高いビヒクル樹脂を用いても、良好な消色状態が得られる。
また、マイクロカプセル10重量部と、油としてトルエン/ヘキサン30重量部、樹脂として変成ロジン(酸価8)30重量部、ワックスとしてパラフィン(酸価0)2重量部、および消色剤としてコール酸メチル28重量部を含有するビヒクル90重量部とを攪拌混合して印刷インキを調製した。
この印刷インクをフェルト紙の台に染み込ませ、凸版に押し付けた後、紙に転写してべた画像を形成し、乾燥した。このべた画像の反射濃度は1.2であった。この紙を、メチルエチルケトンに10秒間浸漬した後、乾燥させて画像を消去した。画像を消去した後の紙の反射濃度は0.09であった。
実施例7
呈色性化合物としてPSD184(日本曹達製)5重量部および顕色剤として没食子酸5重量部をアセトン中で混合し、乾燥させて発色させた。一方、油としてトルエン/ヘキサン30重量部、樹脂としてアルキド樹脂(軟化点129℃)30重量部、ワックスとしてパラフィン(酸価0)10重量部、消色剤としてコール酸(融点200℃)20重量部を含有するオフセットインキ用のビヒクルを調製した。発色した呈色性化合物および顕色剤とビヒクルを、ボールミルで1昼夜混合して印刷インキを調製した。
この印刷インクをフェルト紙の台に染み込ませ、凸版に押し付けた後、紙に転写してべた画像を形成し、乾燥した。このとき、乾燥温度を205℃にすると、反射濃度は0.2であり、消色状態になった。一方、乾燥温度を190℃にしたところ、べた画像の反射濃度は1.5であった。このように乾燥温度は消色剤の融点より低い必要がある。
この紙を180℃のホットスタンプに10秒間押し付けて画像を消去した。画像を消去した後の紙の反射濃度は0.06であった。しかし、ホットスタンプの温度を100℃にした場合には、画像は消去されず、反射濃度は1.5のままであった。
次に、呈色性化合物としてPSD184(日本曹達製)5重量部および顕色剤として没食子酸5重量部をアセトン中で混合し、乾燥させて発色させた。一方、油としてトルエン/ヘキサン30重量部、樹脂としてアルキド樹脂(軟化点200℃)30重量部、ワックスとしてパラフィン(酸価0)10重量部、消色剤としてコール酸メチル(融点150℃)20重量部を含有するオフセットインキ用のビヒクルを調製した。発色した呈色性化合物および顕色剤とビヒクルを、ボールミルで1昼夜混合して印刷インキを調製した。
この印刷インクをフェルト紙の台に染み込ませ、凸版に押し付けた後、紙に転写してべた画像を形成し、乾燥した。このべた画像の反射濃度は1.5であった。この紙を160℃のホットスタンプに10秒間押し付けて画像を消去した。画像を消去した後の紙の反射濃度は0.07であった。しかし、ホットスタンプの温度を140℃にした場合には、画像は消去されず、反射濃度は1.5のままであった。
以上のように本発明の印刷インキを加熱により消去する場合には、消去温度はビヒクル樹脂の軟化点以上または消色剤の融点以上に設定する必要がある。
実施例8
呈色性化合物としてPSD184(日本曹達製)および顕色剤として2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノンを等モルずつアセトン中で混合し、乾燥させて発色させた。この色素成分1重量部にポリスチレン1重量部を混合し、1kgの混合物を得た。この混合物をニーダーに入れ、70℃以下で混練し、顔料状の黒色の混練物を得た。この混練物を微粉砕機にかけて、粒径5μm以下に粉砕した。
一方、
油:あまに油/トルエン(2/1) 76重量部
樹脂:ポリビニルブチラール(酸価0) 2重量部
ワックス:パラフィン(酸価0) 2重量部
を含有する新聞インキ用のビヒクルを調製した。
上記で得た粉体20重量部をこのビヒクルに混合し、ボールミルで1昼夜混合して印刷インキを調製した。
この印刷インクをフェルト紙の台に染み込ませ、凸版に押し付けた後、紙に転写してべた画像を形成し、乾燥した。このべた画像の反射濃度は1.4であった。この紙を、消色剤であるコール酸メチルのメチルエチルケトン飽和溶液に10秒間浸漬した後、乾燥させて画像を消去した。画像を消去した後の紙の反射濃度は0.06であった。
以上のように本実施例では、呈色性化合物および顕色剤をバインダーポリマーと混練しておくことにより、通常の顔料と同様に扱える着色粉体を調製することができ、印刷インキの製造が容易になった。したがって、所望の印刷インキの特性に応じて、各成分の処方を変更することにより容易に対応できる。
次に、上記でビヒクル溶剤として用いたトルエンを下記表9に示す溶剤に変更し、上記と同様に印刷インキを調製して、発色時および消去時の反射濃度を測定した。この結果を表9に示す。
表9に示されるように、ビヒクル溶剤としてリモネン(ジペンテン)またはテトラリンを用いた場合、発色時の反射濃度が高いとともに消去時の反射濃度が低く、良好な発色・消色状態が得られる。なお、本実施例の印刷インキには消色剤が含まれていないので、ビヒクル溶剤としてアルコールを用いても発色時の反射濃度としてある程度の値が得られる。
実施例9
呈色性化合物としてPSD184(日本曹達製)および顕色剤として没食子酸を等モルずつ加熱溶融して発色させた。この色素成分と、ポリスチレンと、消色剤であるコール酸メチルとを重量比で1:5:10の割合で混合し、ニーダーに入れ、70℃以下で混練した。この混練物を微粉砕機にかけて、粒径5μm以下に粉砕した。
一方、
油:あまに油/トルエン(2/1) 76重量部
樹脂:ポリビニルブチラール(酸価0) 2重量部
ワックス:パラフィン(酸価0) 2重量部
を含有する新聞インキ用のビヒクルを調製した。
上記で得た粉体20重量部をこのビヒクルに混合し、ボールミルで1昼夜混合して印刷インキを調製した。
この印刷インクをフェルト紙の台に染み込ませ、凸版に押し付けた後、紙に転写してべた画像を形成し、乾燥した。このべた画像の反射濃度は1.3であった。この紙を、メチルエチルケトンに10秒間浸漬した後、乾燥させて画像を消去した。画像を消去した後の紙の反射濃度は0.08であった。
次に、上記でビヒクル溶剤として用いたトルエンを下記表10に示す溶剤に変更し、上記と同様に印刷インキを調製して、発色時および消去時の反射濃度を測定した。この結果を表10に示す。
表10に示されるように、ビヒクル溶剤としてリモネン(ジペンテン)またはテトラリンを用いた場合、発色時の反射濃度が高いとともに消去時の反射濃度が低く、良好な発色・消色状態が得られる。なお、本実施例の印刷インキの顔料相当成分には消色剤が含まれているので、ビヒクル溶剤としてアルコールを用いると発色時には低い反射濃度しか得られない。
実施例10
呈色性化合物としてPSD184(日本曹達製)および顕色剤として4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンを等モルずつ加熱溶融して発色させた。この色素成分と、エポキシ樹脂(エピクロルヒドリンとビスフェノールAからなるプレポリマーに硬化剤としてエチレンジアミンを直前に添加したもの)と、消色剤である馬鈴薯でんぷんとを重量比で1:1:1の割合で混合し、ホモジナイザーで10分間混練し、1日間放置して硬化を確認した後、微粉砕機にかけて、粒径5μm以下に粉砕した。
一方、
油:あまに油/トルエン(2/1) 76重量部
樹脂:ポリビニルブチラール(酸価0) 2重量部
ワックス:パラフィン(酸価0) 2重量部
を含有する新聞インキ用のビヒクルを調製した。
上記で得た粉体20重量部をこのビヒクルに混合し、ボールミルで1昼夜混合して印刷インキを調製した。
この印刷インクをフェルト紙の台に染み込ませ、凸版に押し付けた後、紙に転写してべた画像を形成し、乾燥した。このべた画像の反射濃度は1.2であった。この紙を、メチルエチルケトンに10秒間浸漬した後、乾燥させて画像を消去した。画像を消去した後の紙の反射濃度は0.07であった。
次に、上記でビヒクル溶剤として用いたトルエンを下記表11に示す溶剤に変更し、上記と同様に印刷インキを調製して、発色時および消去時の反射濃度を測定した。この結果を表11に示す。
表11に示されるように、ビヒクル溶剤としてリモネン(ジペンテン)またはテトラリンを用いた場合、発色時の反射濃度が高いとともに消去時の反射濃度が低く、良好な発色・消色状態が得られる。なお、本実施例の印刷インキの顔料相当成分には消色剤が含まれているので、ビヒクル溶剤としてアルコールを用いると発色時の反射濃度は低いが、実施例9ほど反射濃度が低くなるわけではない。
実施例11
呈色性化合物としてPSD184(日本曹達製)および顕色剤として2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノンを等モルずつアセトン中で混合し、乾燥させて発色させた。この色素成分と、エポキシ樹脂(エピクロルヒドリンとビスフェノールAからなるプレポリマーに硬化剤としてエチレンジアミンを直前に添加したもの)とを重量比で1:1の割合で混合し、ホモジナイザーで10分間混練し、1日間放置して硬化を確認した後、微粉砕機にかけて、粒径5μm以下に粉砕した。
一方、
油:あまに油/トルエン(2/1) 76重量部
樹脂:ポリビニルブチラール(酸価0) 2重量部
ワックス:パラフィン(酸価0) 2重量部
を含有する新聞インキ用のビヒクルを調製した。
上記で得た粉体20重量部をこのビヒクルに混合し、ボールミルで1昼夜混合して印刷インキを調製した。
この印刷インクをフェルト紙の台に染み込ませ、凸版に押し付けた後、紙に転写してべた画像を形成し、乾燥した。このべた画像の反射濃度は1.3であった。この紙を、メチルエチルケトンに10秒間浸漬した後、乾燥させて画像を消去した。画像を消去した後の紙の反射濃度は0.08であった。
以上のように呈色性化合物および顕色剤をバインダーポリマーと混練しておくことにより、通常の顔料と同様に扱える着色粉体を調製することができ、印刷インキの製造が容易になった。したがって、所望の印刷インキの特性に応じて、各成分の処方を変更することにより容易に対応できる。
次に、上記でビヒクル溶剤として用いたトルエンをリモネン(ジペンテン)に変更した場合、発色時の反射濃度は1.2、消去時の反射濃度は0.08となった。
同様にビヒクル溶剤をトルエンからテトラリンに変更した場合、発色時の反射濃度は1.5、消去時の反射濃度は0.05となった。
実施例12
呈色性化合物としてBlue63(山本化成製)および顕色剤として2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノンを等モルずつアセトン中で混合し、乾燥させて発色させた。この色素成分と、熱硬化型不飽和ポリエステル樹脂とを重量比で1:1の割合で混合し、ホモジナイザーで10分間混練し、120℃で6時間放置して硬化を確認した後、微粉砕機にかけて、粒径5μm以下に粉砕した。
一方、
油:あまに油/トルエン(2/1) 76重量部
樹脂:ポリビニルブチラール(酸価0) 2重量部
ワックス:パラフィン(酸価0) 2重量部
を含有する新聞インキ用のビヒクルを調製した。
上記で得た粉体20重量部をこのビヒクルに混合し、ボールミルで1昼夜混合して印刷インキを調製した。
この印刷インクをフェルト紙の台に染み込ませ、凸版に押し付けた後、紙に転写してべた画像を形成し、乾燥した。このべた画像の反射濃度は1.1であった。この紙を、消色剤であるコール酸のメチルエチルケトン飽和溶液に10秒間浸漬した後、乾燥させて画像を消去した。画像を消去した後の紙の反射濃度は0.05であった。
次に、上記でビヒクル溶剤として用いたトルエンをリモネン(ジペンテン)に変更した場合、発色時の反射濃度は1.0、消去時の反射濃度は0.07となった。
同様にビヒクル溶剤をトルエンからテトラリンに変更した場合、発色時の反射濃度は1.2、消去時の反射濃度は0.05となった。
以上のように呈色性化合物および顕色剤をバインダーポリマーと混練しておくことにより、通常の顔料と同様に扱える着色粉体を調製することができ、印刷インキの製造が容易になった。したがって、所望の印刷インキの特性に応じて、各成分の処方を変更することにより容易に対応できる。
実施例13
呈色性化合物としてPSD184(日本曹達製)および顕色剤として2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノンを等モルずつアセトン中で混合し、乾燥させて発色させた。この色素成分と、熱硬化型不飽和ポリエステル樹脂と、消色剤として馬鈴薯でんぷんとを重量比で1:5:10の割合で混合し、ホモジナイザーで10分間混練し、120℃で1日間放置して硬化を確認した後、微粉砕機にかけて、粒径5μm以下に粉砕した。
一方、
油:あまに油/トルエン(2/1) 76重量部
樹脂:ポリビニルブチラール(酸価0) 2重量部
ワックス:パラフィン(酸価0) 2重量部
を含有する新聞インキ用のビヒクルを調製した。
上記で得た粉体20重量部をこのビヒクルに混合し、ボールミルで1昼夜混合して印刷インキを調製した。
この印刷インクをフェルト紙の台に染み込ませ、凸版に押し付けた後、紙に転写してべた画像を形成し、乾燥した。このべた画像の反射濃度は1.0であった。この紙を、メチルエチルケトンに10秒間浸漬した後、乾燥させて画像を消去した。画像を消去した後の紙の反射濃度は0.05であった。
次に、上記でビヒクル溶剤として用いたトルエンをリモネン(ジペンテン)に変更した場合、発色時の反射濃度は1.1、消去時の反射濃度は0.02となった。
同様にビヒクル溶剤をトルエンからテトラリンに変更した場合、発色時の反射濃度は1.5、消去時の反射濃度は0.05となった。
以上のように呈色性化合物および顕色剤をバインダーポリマーと混練しておくことにより、通常の顔料と同様に扱える着色粉体を調製することができ、印刷インキの製造が容易になった。したがって、所望の印刷インキの特性に応じて、各成分の処方を変更することにより容易に対応できる。
実施例14
呈色性化合物としてPSD184(日本曹達製)および顕色剤として2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノンを等モルずつアセトン中で混合し、乾燥させて発色させた。この色素成分と、化学反応硬化型樹脂としてポリチオール(市販2液型エポキシ接着剤)と、消色剤として馬鈴薯でんぷんとを重量比で1:5:10の割合で混合し、ホモジナイザーで10分間混練し、3時間放置して硬化を確認した後、微粉砕機にかけて、粒径5μm以下に粉砕した。
一方、
油:あまに油/トルエン(2/1) 76重量部
樹脂:ポリビニルブチラール(酸価0) 2重量部
ワックス:パラフィン(酸価0) 2重量部
を含有する新聞インキ用のビヒクルを調製した。
上記で得た粉体20重量部をこのビヒクルに混合し、ボールミルで1昼夜混合して印刷インキを調製した。
この印刷インクをフェルト紙の台に染み込ませ、凸版に押し付けた後、紙に転写してべた画像を形成し、乾燥した。このべた画像の反射濃度は0.9であった。この紙を、メチルエチルケトンに10秒間浸漬した後、乾燥させて画像を消去した。画像を消去した後の紙の反射濃度は0.04であった。
以上のように呈色性化合物および顕色剤をバインダーポリマーと混練しておくことにより、通常の顔料と同様に扱える着色粉体を調製することができ、印刷インキの製造が容易になった。したがって、所望の印刷インキの特性に応じて、各成分の処方を変更することにより容易に対応できる。
実施例15
呈色性化合物としてPSD184(日本曹達製)および顕色剤として2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノンを等モルずつアセトン中で混合し、乾燥させて発色させた。この色素成分と、紫外線硬化型不飽和ポリエステルと、消色剤として馬鈴薯でんぷんとを重量比で1:5:10の割合で混合して紫外線硬化剤を1滴加え、窒素下においてホモジナイザーで10分間混練し、UVランプから紫外線を10分間照射し放置して硬化を確認した後、微粉砕機にかけて、粒径5μm以下に粉砕した。
一方、
油:あまに油/トルエン(2/1) 76重量部
樹脂:ポリビニルブチラール(酸価0) 2重量部
ワックス:パラフィン(酸価0) 2重量部
を含有する新聞インキ用のビヒクルを調製した。
上記で得た粉体20重量部をこのビヒクルに混合し、ボールミルで1昼夜混合して印刷インキを調製した。
この印刷インクをフェルト紙の台に染み込ませ、凸版に押し付けた後、紙に転写してべた画像を形成し、乾燥した。このべた画像の反射濃度は0.7であった。この紙を、メチルエチルケトンに10秒間浸漬した後、乾燥させて画像を消去した。画像を消去した後の紙の反射濃度は0.04であった。なお、UV照射により若干の退色があった。
以上のように呈色性化合物および顕色剤をバインダーポリマーと混練しておくことにより、通常の顔料と同様に扱える着色粉体を調製することができ、印刷インキの製造が容易になった。したがって、所望の印刷インキの特性に応じて、各成分の処方を変更することにより容易に対応できる。