JP4212211B2 - 可消色性画像の消色方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録紙上に形成された可消色性着色剤からなる画像を消色する消色方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピューター、プリンター、複写機、ファクシミリなどの普及により、紙による情報の出力が増加している。紙への出力を削減すべく「情報の電子化によるペーパーレス化」が叫ばれるものの、視認性の良さ、高い携帯性、ページめくりによる情報検索の手軽さ、などの特徴から、紙へのハードコピーの要望は絶えることがない。その結果、紙の原料となる天然資源の保護及びゴミ処理量の低減・二酸化炭素排出量の削減が解決すべき課題となるに至っている。「紙の再生・再利用」は、天然資源の保護及びゴミ処理量の低減・二酸化炭素排出量の削減の各局面において、極めて今日的な課題である。
【0003】
このような事情から、紙へ印刷・印字するための画像形成材料(各種印刷インキ、トナー、ジェットインクなど)を印刷・印字後に無色化する技術は、紙の再生・再利用を推進する上で極めて重要である。即ち、従来の紙の再生方法においては、回収紙を水で再解膠した後、いわゆる「脱墨工程」においてインク部分を浮遊分離する方法や漂白剤を用いて脱色する方法が用いられており、これらが、新規に製紙する場合に比べて工程経費を高くする要因となっている。
【0004】
従って、発色状態の呈色性化合物を無色の消色状態へ変えることのできる可消色性着色剤を用いた画像形成材料によって印刷された紙は、従来のような手間の掛かる脱墨工程を経ることなしに、再利用或いは再生することが可能になると期待される。
【0005】
近年、可消色性着色剤について種々検討が行われ、熱を加えることにより消色可能な可消色性着色剤が、例えば、特開平7−81236号公報や特開平10−88046号公報に開示されている。前者の公開公報には、ロイコ染料などの呈色性化合物と、顕色剤と、消色作用を有する有機リン酸化合物とを含有する可消色性着色剤が、又、後者の公開公報には、ロイコ染料などの呈色性化合物と顕色剤との組み合わせに対して、熱を加えることによって消色作用を示す消色剤としてコール酸、リトコール酸、テストステロン、コルチゾンなどのステロール化合物を使用する可消色性着色剤が開示されている。
【0006】
又、有機溶剤と接触させることにより消色可能な可消色性着色剤が、例えば特開平11−212295号公報に開示されている。この可消色性着色剤は、ロイコ染料などの呈色性化合物、顕色剤、及び、消色剤からなるものであり、消色剤として非晶質性の高い相分離抑制剤(例えば、環式糖アルコール)と非晶質性の低い相分離抑制剤(例えば、環式糖アルコール以外のヒドロキシル基を有する5員環以上の非芳香族環式化合物又は環式糖アルコールの誘導体)を合わせて用いることが特徴である。更に、特開平11−212296号公報には、有機溶剤と接触させることにより消色作用を示す消色剤として、動物、植物又は菌類から抽出される生分解可能なステロール化合物及び環式糖アルコール又はその誘導体が開示されている。
【0007】
又、記録紙に関しては、例えば特開平7−149039号広報には、再利用できるインクジェットプリンター用受像紙及びこの受像紙上にプリントされた画像の消色方法が開示されており、フッ素樹脂を主成分とする樹脂からなるインク受像層を少なくとも表面に含む受像紙上にプリントされた画像は、溶解剤、加熱又は光照射により、インクに含有される色素を溶解又は分解することにより容易に消色されると記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の可消色性着色剤及びその消色方法は、各々特長がある反面、発色性の良さと消色性の良さを両立することが容易でなかったり、印刷物或いは筆記具としての実使用条件における耐久性に乏しかったり、コストが高いなどの欠点があり、本格的実用化のためには一層の性能向上が望まれているのが実状である。
従って、本発明の目的は、発色性の良さと消色性の良さを両立することができ、実使用条件における画像の安定性及び耐久性が高く、ローコストな可消色性画像記録紙及び可消色性画像の消色方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的を達成するため、本発明は、表面に、消色剤が、分子として吸着又は含浸或いは微粒子として漉き混み又は塗工されている記録紙の上記表面に、マトリックス樹脂を含み、又は含まず、少なくとも顕色剤、及び、前記顕色剤との分子間相互作用により発色する呈色性化合物からなる可消色性着色剤を用いる印刷方法によって画像を形成した後、該画像に気体の消色助剤を作用させ、前記可消色性着色剤を溶解又は膨潤させることによって前記顕色剤又は前記消色剤の物質移動及び前記顕色剤と前記消色剤との分子間相互作用を起こさせることを特徴とする可消色性画像の消色方法を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に発明の好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
本発明の可消色性画像は、マトリックス樹脂を含み、又は含まず、少なくとも顕色剤、及び、前記顕色剤との分子間相互作用により発色する呈色性化合物からなる可消色性着色剤によって記録紙表面に形成される該記録紙の表面には、前記顕色剤と前記呈色性化合物との分子間相互作用よりも強く前記顕色剤と分子間相互作用する消色剤が、分子として吸着又は含浸、或いは、微粒子として漉き混み又は塗工されている該記録紙の表面と、画像形成過程にある前記着色剤との間に起こる顕色剤又は消色剤の物質移動及び分子間相互作用による消色が完結するよりも早く前記可消色性着色剤による画像形成を完結させる。可消色性画像記録紙の上に可消色性着色剤を用いて画像を形成する過程には、公知の種々の方式を応用することができる。
【0011】
例えば、乾式の方法としては、電子写真方式の複写機やプリンターに用いられるトナー型の可消色性着色剤を用いる静電写真方式、熱転写リボン・シート型の可消色性着色剤を用いる熱転写方式、固形の可消色性着色剤をクレヨンや色鉛筆の芯の形に加工して用いる固形筆記具方式などを挙げることができる。又、湿式の方法としては、可消色性着色剤を種々の印刷インキに加工して用いる孔版、スクリーン、凹版、凸版、及び平版印刷方式、可消色性着色剤をジェットインクに加工して用いるインクジェットプリンター方式、可消色性着色剤をインクとして種々の方式のペン体に充填して用いる液体筆記具方式などを挙げることができる。但し、いずれの方法を応用する場合であっても、前記可消色性画像記録紙の表面と、画像形成過程にある前記可消色性着色剤との間に起こる顕色剤又は消色剤の物質移動及び顕色剤と消色剤との分子間相互作用による消色が完結するよりも早く前記可消色性着色剤による画像形成を完結させる必要がある。
【0012】
以下、トナー型可消色性着色剤を用いる場合を例に取り詳細を説明する。
本発明で用いられるトナー型可消色性着色剤は、マトリックス樹脂を含む場合及び含まない場合を包含するが、以下では、先ず、マトリックス樹脂を含む場合について説明する。
トナー型可消色性着色剤に用いられるマトリックス樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の中から、以下の条件を満たすものを適宜選択して使用することができる。尚、以上の条件を全て同時に満足する必要はない。
(1)可消色性着色剤が画像形成材料として発色状態で使用される温度範囲において、呈色性化合物及び顕色剤を固溶化(溶解して分子分散させる)することができる樹脂。
(2)可消色性着色剤を消色状態とするために加熱処理した際、溶融し、消色剤を含んだ記録紙に浸透することができる樹脂。
(3)可消色性着色剤を消色状態とするために加熱処理した際、記録紙上の消色剤を分子として固溶化(溶解して分子分散させる)することができる樹脂。
(4)可消色性着色剤を消色状態とするために消色助剤処理した際、消色助剤に溶解し、消色剤を含んだ記録紙に浸透することができる樹脂。
(5)可消色性着色剤を消色状態とするために消色助剤処理した際、消色助剤によって膨潤し、記録紙上の消色剤を分子として固溶化(溶解して分子分散させる)することができる樹脂。
【0013】
具体的には、例えば、呈色性化合物としてロイコ色素、顕色剤としてフェノール化合物、消色剤としてステロール化合物又は環式糖アルコール又はその誘導体を用いる場合、次のような有機高分子化合物をマトリックス樹脂として好適に使用することができる。即ち、例えば、ケトン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリインデン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリビニルピリジン、ポリアセタール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリプロピオン酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルベンジルエーテル、ポリビニルメチルケトン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸ベンジル、ポリメタクリル酸シクロヘキシル、ポリメタクリル酸アミド、ポリメタクリロニトリル、ポリアセトアルデヒド、ポリクロラール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート類(ビスフェノール類+炭酸)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリ(ジエチレングリコール・ビスアリルカーボネート)類、6−ナイロン、6,6−ナイロン、12−ナイロン、6,12−ナイロン、ポリアスパラギン酸エチル、ポリグルタミン酸エチル、ポリリジン、ポリプロリン、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)、メチルセルロース、エチルセルロース、ベンジルセルロース、アセチルセルロース、セルローストリアセテート、セルローストリブチレート、アルキド樹脂(無水フタル酸+グリセリン)、脂肪酸変性アルキド樹脂(脂肪酸+無水フタル酸+グリセリン)、不飽和ポリエステル樹脂(無水マレイン酸+無水フタル酸+プロピレングリコール)、エポキシ樹脂(ビスフェノール類+エピクロルヒドリン)、エポキシ樹脂(クレゾールノボラック+エピクロルヒドリン)、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、フラン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂などの樹脂、ポリ(フェニルメチルシラン)などの有機ポリシラン、有機ポリゲルマン及びこれらの共重合・共重縮合体を好適に使用することができる。
【0014】
更に、例えば、呈色性化合物としてロイコ色素、顕色剤としてフェノール化合物、消色剤としてステロール化合物又は環式糖アルコール又はその誘導体を用いる場合には、マトリックス樹脂として、例えば、ポリスチレン、ポリスチレンとアクリル樹脂とのブレンドポリマー、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエステル、エポキシ樹脂などを特に好適に用いることができる。ここで、スチレン−アクリル系共重合体を構成するアクリル系モノマーとしては、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ブチル、N−(エトキシメチル)アクリルアミド、メタクリル酸エチレングリコール、メタクリル酸4−ヘキサフルオロブチルなどが挙げられる。
【0015】
これらのアクリレートモノマーは1種又は2種以上用いることができる。共重合体中のスチレンの割合は50重量%以上であることが好ましい。又、スチレン及びアクリル系モノマーの他に、ブタジエン、マレイン酸エステル、クロロプレンなどを共重合させても良いが、これらの成分は10重量%以下とすることが好ましい。ここで、ポリスチレンとアクリル樹脂とのブレンドポリマーをマトリックス樹脂として用いる場合、アクリル樹脂としては上記共重合の場合に例示したものを1種又は2種以上用いることができる。尚、ブタジエン、マレイン酸エステル、クロロプレンなどを10重量%以下の割合で含有する共重合体を用いても良い。マトリックス樹脂中のポリスチレンの割合は50重量%以上であることが好ましい。
【0016】
更に、カルボン酸と多価アルコールから合成されるポリエステルも使用可能である。カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、こはく酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ピロメリット酸、シトラコン酸、グルタコン酸、メサコン酸、イタコン酸、テラコン酸、フタル酸、イソフタル酸、ヘミメリト酸、メロファン酸、トリメシン酸、プレーニト酸、トリメリット酸、などが挙げられる。これらの内1種又は2種以上を用いることができる。多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルジオール、ヘキサメチレンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ペンタグリセロール、ペンタエリトリトール、シクロヘキサンジオール、シクロペンタンジオール、ピナコール、グリセリン、エーテル化ジフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、ベンゼントリオール、フロログルシノール、ベンゼンテトラオールなどが挙げられる。これらの内1種又は2種以上を用いることができる。又、2種類以上のポリエステルのブレンドポリマーを用いても良い。
【0017】
又、エピクロルヒドリンと多価のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物から合成されるエポキシ樹脂も使用できる。多価フェノール系化合物としては、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールS、エーテル化ジフェノール、カテコール、レゾルシン、ピロガロール、ベンゼントリオール、フロログルシノール、ベンゼンテトラオールなどが挙げられる。これらの内1種又は2種以上が用いられる。又、エポキシ樹脂に対して、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラニン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンなどを15重量%以下の割合でブレンドしても良い。
トナー型の可消色性着色剤で用いられる呈色性化合物としては、例えば、ロイコオーラミン類、ジアリールフタリド類、ポリアリールカルビノール類、アシルオーラミン類、アリールオーラミン類、ローダミンBラクタム類、インドリン類、スピロピラン類、フルオラン類などの有機化合物を挙げることができる。
【0018】
具体的な呈色性化合物として、例えば、クリスタルバイオレットラクトン(CVL)、マラカイトグリーンラクトン、2−アニリノ−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−3−メチルフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−N−プロピルアミノ)フルオラン、3−[4−(4−フェニルアミノフェニル)アミノフェニル]アミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、2−アニリノ−6−(N−メチル−N−イソブチルアミノ)−3−メチルフルオラン、2−アニリノ−6−(ジブチルアミノ)−3−メチルフルオラン、3−クロロ−6−(シクロヘキシルアミノ)フルオラン、2−クロロ−6−(ジエチルアミノ)フルオラン、7−(N,N−ジベンジルアミノ)−3−(N,N−ジエチルアミノ)フルオラン、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(4′−ニトロアニリノ)ラクタム、3−ジエチルアミノベンゾ[a]−フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−キシリジノフルオラン、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−ジエチルアミノ−7−クロロアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,6−ジメチルエトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、クリスタルバイオレットカルビノール、マラカイトグリーンカルビノール、N−(2,3−ジクロロフェニル)ロイコオーラミン、N−ベンゾイルオーラミン、ローダミンBラクタム、N−アセチルオーラミン、N−フェニルオーラミン、2−(フェニルイミノエタンジリデン)−3,3−ジメチルインドリン、N,3,3−トリメチルインドリノベンゾスピロピラン、8’−メトキシ−N,3,3−トリメチルインドリノベンゾスピロピラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−ベンジルオキシフルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジエチルアミノフルオラン、3,6−ジ−p−トルイジノ−4,5−ジメチルフルオラン、フェニルヒドラジド−γ−ラクタム、3−アミノ−5−メチルフルオランなどを好適に使用することができる。これらは単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。言うまでもなく、呈色性化合物を適宜選択すれば多様な色の発色状態が得られ、マルチカラー化が可能である。
【0019】
これらの呈色性化合物は、例えば、一例を以下に化学式で示すように、無色型と発色型の両形態をとることの可能な互変異性化合物である。
【0020】
【化1】
Figure 0004212211
【0021】
上記のような互変異性を表す化学式において、下側に示される分子内塩型の化学構造が「発色型」に対応することが知られている。そして、このようなイオン性分子内塩型の構造をプロトンの授受乃至水素結合の形成、或いは金属錯塩の形成によって安定化することによって、発色型を安定化することのできる化合物が、いわゆる顕色剤である。
【0022】
トナー型の可消色性着色剤で用いられる顕色剤としては、例えば、フェノール及びフェノール誘導体、フェノール誘導体の金属塩、カルボン酸誘導体の金属塩、サリチル酸及びサリチル酸金属塩、ベンゾフェノン及びベンゾフェノン誘導体、スルホン酸類、スルホン酸塩類、リン酸類、リン酸金属塩類、酸性リン酸エステル類、酸性リン酸エステル金属塩類、亜リン酸類、亜リン酸金属塩類、ハロゲン化亜鉛などを挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
顕色剤として用いることのできるフェノール誘導体の具体例を以下に化学式で例示する。
【0023】
【化2】
Figure 0004212211
【0024】
これらのフェノール誘導体は、例えば、次に化学式で示すように発色型の呈色化合物のカルボン酸残基と分子間で相互作用して水素結合を形成することによって、発色状態を安定化することができる。このような呈色化合物と顕色剤の分子間相互作用は、両者がともにマトリックス樹脂中に固溶化(溶解して分子分散)している場合であっても起こり得る。
【0025】
【化3】
Figure 0004212211
【0026】
上記化学式に例示されるようにマトリックス樹脂中で呈色性化合物と顕色剤とが分子間で相互作用し、呈色化合物が発色型になった状態で記録紙上で画像を形成する。トナーによる画像形成工程の最終段階は熱定着であるが、通常、この工程は極めて短時間に終了し、室温まで冷却されるため、マトリックス樹脂中の呈色性化合物は大部分が発色状態のまま定着される。即ち、可消色性画像記録紙の表面と、画像形成過程にある前記可消色性着色剤との間に起こる顕色剤又は消色剤の物質移動及び顕色剤と消色剤との分子間相互作用による消色が完結するよりも早く前記可消色性着色剤による画像形成が完結される。後に詳細に説明するように、本発明の可消色性画像の消色方法においては、顕色剤又は消色剤の物質移動、及び、顕色剤と消色剤との分子間相互作用が誘起されるような処理が行われる。このような処理が行われなければ、顕色剤又は消色剤の物質移動、及び、顕色剤と消色剤との分子間相互作用(化学平衡論的には呈色性化合物と顕色剤の相互作用よりも強い)は、速度論的制御によって事実上起こり得ず、顕色剤との分子間相互作用による呈色化合物の発色状態は安定に維持される。
【0027】
トナー型可消色性着色剤がマトリックス樹脂、呈色性化合物、及び、顕色剤から構成される場合、好ましい配合比は以下の通りである。
【0028】
マトリックス樹脂は、呈色性化合物1重量部に対して通常0.1乃至1000重量部、好ましくは0.5乃至100重量部、更に好ましくは1乃至20重量部の割合である。顕色剤は、呈色性化合物1重量部に対して通常0.1乃至10重量部、好ましくは1乃至2重量部の割合である。顕色剤が0.1重量部未満の場合には、呈色性化合物と顕色剤との相互作用による可消色性着色剤の発色が不充分になる。顕色剤が10重量部を超える場合には両者の相互作用を充分に減少させることが困難となる。
【0029】
本発明で用いられるトナー型可消色性着色剤は、通常、混合機により各成分を固体状態で混合、分散させて製造されるが、本発明ではその方法自体は特に限定されない。
【0030】
本発明で用いられるトナー型可消色性色素組成物が、マトリックス樹脂を含まない場合にも、使用される呈色性化合物及び顕色剤、並びに呈色性化合物に対する顕色剤の配合比はマトリックス樹脂を含む場合と同じである。
しかしながら、マトリックス樹脂の代わりに低分子可塑剤や滑剤を用いない場合には、呈色性化合物、顕色剤、及び消色剤の組み合わせ方に、次のような制限がある。即ち、呈色性化合物と顕色剤は固体状態で互いに固溶化し、アモルファス状になる組み合わせが好ましい。例えば、クリスタルバイオレット・ラクトンとサリチル酸亜鉛の組み合わせを挙げることができる。
【0031】
マトリックス樹脂の代わりに低分子可塑剤、低分子滑剤、低分子ワックスなどの低分子化合物を用いる場合、低分子化合物としては、以下の条件を満たすものを使用することができる。尚、以上の条件を全て同時に満足する必要はない。
(1)可消色性着色剤が画像形成材料として発色状態で使用される温度範囲において、呈色性化合物及び顕色剤を固溶化(溶解して分子分散させる)することができる低分子化合物。
(2)可消色性着色剤を消色状態とするために加熱処理した際、溶融し、消色剤を含んだ記録紙に浸透することができる低分子化合物。
(3)可消色性着色剤を消色状態とするために加熱処理した際、記録紙上の消色剤を分子として固溶化(溶解して分子分散させる)することができる低分子化合物。
(4)可消色性着色剤を消色状態とするために消色助剤処理した際、消色助剤に溶解し、消色剤を含んだ記録紙に浸透することができる低分子化合物。
(5)可消色性着色剤を消色状態とするために消色助剤処理した際、消色助剤によって膨潤し、記録紙上の消色剤を分子として固溶化(溶解して分子分散させる)することができる低分子化合物。
【0032】
具体的には、例えば、呈色性化合物としてロイコ色素、顕色剤としてフェノール化合物、消色剤としてステロール化合物又は環式糖アルコール又はその誘導体を用いて可消色性着色剤からなるクレヨンを作成する場合、低分子化合物(ワックス)として、例えば、1−ドコサノールを好適に使用することができる。
尚、本発明のトナー型可消色性色素組成物には、その機能を損なわない限りにおいて、マトリックス樹脂の有無に関わらず、必要に応じて、低分子化合物からなる可塑剤、ワックス、滑剤、離型剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電制御剤などの添加剤を適量、含有させることができる。
本発明で用いられる消色剤とは、呈色性化合物と顕色剤の分子間相互作用よりも強く、顕色剤との間で分子間相互作用する化合物であって、本発明の可消色性画像記録紙の少なくとも表面に、分子として吸着又は含浸、或いは、微粒子として漉き混み又は塗工されて安定に存在することのできる化合物である。
【0033】
消色剤と顕色剤の間に働き得る分子間相互作用としては、水素結合、イオン結合、疎水性結合、立体化学的な包接現象などを利用することができる。即ち、分子中に1個以上のアルコール性水酸基、遊離のカルボン酸基、カルボン酸塩残基、環式飽和炭化水素残基、などを有する化合物の中から、使用するマトリックス樹脂への溶解性及びその温度依存性を目安として、消色剤として利用可能なものを選択することができる。
【0034】
本発明で使用される消色剤の具体例を以下に示す。
(1)コール酸、リトコール酸、テストステロン及びコルチゾン、並びにこれらの誘導体。具体例としては、コール酸、コール酸メチルエステル、リトコール酸、リトコール酸メチルエステル、ヒドロキシコール酸、ヒドロキシコール酸メチルエステル、テストステロン、メチルテストステロン、11α−ヒドロキシメチルテストステロン、ヒドロコルチゾンが挙げられる。これらの内でも特に2個以上のヒドロキシル基を有するものが好ましい。
(2)1個以上のアルコール性水酸基を有する5員環以上の非芳香族系の環状化合物。尚、これらの化合物の融点は50℃以上であることが好ましい。具体例としては、脂環式1価アルコール(例えばシクロドデカノール)、脂環式2価アルコール(例えば1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロドデカンジオール)、糖類及びその誘導体(例えば、グルコース、サッカロース)、環状構造を有するアルコール類(例えば1,2:5,6−ジイソプロピリデン−D−マンニトール)が挙げられる。
【0035】
(3)上記のような1個以上のアルコール性水酸基を有する5員環以上の非芳香族系の環状化合物と、ステロール化合物との併用。ステロール化合物を単独で用いると、加熱処理によって消色した状態から冷却した際、消色剤が再び相分離して、発色状態が再現してしまうことがあり得るが、1個以上のアルコール性水酸基を有する5員環以上の非芳香族系の環状化合物を併用すると、これが界面活性剤的に作用して消色剤成分の相分離が抑制され、消色状態が安定化される。
【0036】
ステロール化合物の具体例としては、コレステロール、スチグマステロール、プレグネノロン、メチルアンドロステンジオール、エストラジオール・ベンゾエート、エピアンドロステン、ステノロン、β−シトステロール、プレグネノロン・アセテート、β−コレスタロール、5,16−プレグナジエン−3β−オール−20−オン、5α−プレグネン−3β−オール−20−オン、5−プレグネン−3β,17−ジオール−20−オン・21−アセテート、5−プレグネン−3β,17−ジオール−20−オン・17−アセテート、5−プレグネン−3β,21−ジオール−20−オン・21−アセテート、5−プレグネン−3β,17−ジオール・ジアセテート、ロコゲニン、チゴゲニン、エスミラゲニン、ヘコゲニン、ジオスゲニン及びその誘導体などが挙げられる。
【0037】
(4)環式糖アルコールと、環式糖アルコール以外のアルコール性水酸基を有する5員環以上の非芳香族環式化合物又は環式糖アルコールの誘導体との併用。
環式糖アルコールの具体例としては、D−グルコース、D−マンノース、D−ガラクトース、D−フルクトース、L−ソルボース、L−ラムノース、L−フコース、D−リボデソース、α−D−グルコース=ペンタアセテート、アセトグルコース、ジアセトン−D−グルコース、D−グルクロン酸、D−ガラクツロン酸、D−グルコサミン、D−フルクトサミン、D−イソ糖酸、ビタミンC、エルトルビン酸、トレハロース、サッカロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトース、スタキオース、メチル=α−グルコピラノシド、サリシン、アミグダリン、オイキサンチン酸が挙げることができる。
【0038】
環式糖アルコール以外のアルコール性水酸基を有する5員環以上の非芳香族環式化合物又は環式糖アルコールの誘導体の具体例としては、脂環式1価アルコール、例えば、シクロドデカノール、ヘキサヒドロサリチル酸、メントール、イソメントール、ネオメントール、ネオイソメントール、カルボメントール、α−カルボメントール、ピペリトール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、1−p−メンテン−4−オール、イソプレゴール、ジヒドロカルベオール、カルベオール;脂環式多価アルコール、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、フロログルシトール、クエルシトール、イノシトール、1,2−シクロドデカンジオール、キナ酸、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ピノールヒドラート、ベツリン;多環式アルコール誘導体、例えば、ボルネオール、イソボルネオール、アダマンタノール、ノルボルネオール、フェンコール、ショウノウ、イソソルバイド;環式糖アルコールの誘導体、例えば、1,2:5,6−ジイソプロピリデン−D−マンニトールを挙げることができる。
【0039】
(5)本発明で使用される消色剤の具体例としては、更に例えば、コーンスターチ、タピオカスターチなどのデンプン、疎水化デンプン、デキストリン、シクロデキストリンなどを好適に用いることができる。
本発明の可消色性画像記録紙の素材としては、通常の紙の他、有機高分子化合物からなる合成紙を適宜、使用することができる。
【0040】
本発明の可消色性画像記録紙としては、
分子状の消色剤を記録紙表面に吸着させたもの、
分子状の消色剤を記録紙表面に含浸させたもの、
微粒子状消色剤を可記録紙に漉き込んだもの、
微粒子状消色剤を可記録紙に塗工したもの、
及びこれらの形態を複合させたものを使用することができる。これらの形態は使用する消色剤の諸物性に合わせて、適宜選択することができる。
【0041】
分子状の消色剤を記録紙表面に吸着させる方法、分子状の消色剤を記録紙表面に含浸させる方法、微粒子状消色剤を記録紙に漉き込む方法、微粒子状消色剤を記録紙に塗工する方法、及びこれらの工程を複合させて実施する方法については、紙の加工方法及び製紙方法として公知の手法を、使用する紙の種類及び消色剤の種類に応じて、適宜利用することができる。
例えば、コール酸のように消色剤が有機溶剤に溶解する場合は、消色剤の溶液を紙に塗工、スプレー状に噴霧、或いは消色剤の溶液中に紙をくぐらせる方法、などによって、分子状の消色剤を記録紙表面に吸着させたものや分子状の消色剤を記録紙表面に含浸させたものを製造することができる。
【0042】
例えば、消色剤を溶解するための適当な溶剤がない場合、例えばデンプンを消色剤として使用する場合は、微粒子状消色剤を記録紙に漉き込む方法、或いは、微粒子状消色剤を結着剤及び分散剤とともに分散液として記録紙に塗工する方法などによって、微粒子状消色剤を可記録紙に漉き込んだものや微粒子状消色剤を可記録紙に塗工したものを製造することができる。
【0043】
微粒子状の消色剤を用いる場合、微粒子のサイズとしては、その形状を球で近似したときの平均直径が1nm乃至100μmであることが好ましい。微粒子状消色剤の平均直径を1nmよりも小さくすることは可能ではあるが容易ではなく、そのレベルまで微粒子化して用いても、効果は特に認められない。一方、微粒子状消色剤の平均直径が100μmを越えると、記録紙上に担持させることが困難になったり、画像形成のための基材としての記録紙の表面性状が損なわれれたりする。
【0044】
本発明の可消色性画像記録紙において、分子として吸着又は含浸、或いは、微粒子として漉き混み又は塗工されている消色剤の記録紙単位面積当たりの量は、記録紙上に画像を形成するために用いられる可消色性着色剤の中の顕色剤含有量最大値を基準にして設計することができる。記録紙の単位面積において、消色剤は、顕色剤1重量部に対して、通常、1乃至500重量部であることが好ましく、更に好ましくは10乃至200重量部の割合である。消色剤が1重量部未満では、可消色性着色剤の発色状態と消色状態との間の状態変化を起こさせることが困難になる。消色剤が500重量部を越えると、記録紙の表面に分子として吸着又は含浸、或いは、微粒子として漉き混み又は塗工することが困難になる。
本発明の可消色性画像記録紙の上で発色状態にある可消色性着色剤を消色状態にする、即ち消色するには、可消色性画像記録紙上の可消色性着色剤を加熱・溶融して消色する方法と、可消色性着色剤の一部又は全部を溶解又は膨潤させる液体又は気体の消色助剤に接触させて消色する方法がある。
【0045】
可消色性画像記録紙上の可消色性着色剤を加熱・溶融することによって、
消色剤が記録紙の表面から物質移動して溶融状態の可消色性着色剤中に溶け込み、分子分散されて存在するようになり、或いは、溶融状態の可消色性着色剤中から顕色剤分子が記録紙上の微粒子状消色剤の表面まで物質移動し、その結果、呈色性化合物と顕色剤の分子間相互作用よりも強く、消色剤と顕色剤との間で分子間相互作用を起こすこととなり、呈色化合物の発色状態は不安定化し、消色状態となる。消色剤の溶解度が温度に顕著に依存するような場合は、加熱を止めて室温に戻したときに消色剤の大部分が結晶として析出乃至ミクロ相分離し、発色状態が再現することもあり得るが、そのような不適切な消色剤を使用しない限り、上記のような消色状態は加熱を止めても継続する。
可消色性着色剤を消色するための加熱手段はどのような形態でも良く、例えば、サーマルプリンターヘッド(TPH)、サーマルバー、ホットスタンプ、ヒートローラーなどを用いることができる。又、赤外線ランプや熱風により加熱しても良い。本発明の可消色性画像記録紙を一度に大量に消色処理する際には、箱形温風乾燥機や送風式恒温機を好適に使用することができる。
【0046】
加熱によって可消色性着色剤を消色処理する際の加熱温度は可消色性着色剤が該組成物として混合溶融状態となる温度(「混合による融点降下」の現象によって可消色性着色剤構成成分単独の場合の融点乃至軟化点よりも低い温度である)以上である。加熱によって可消色性着色剤を消色処理する際の加熱温度の上限は、可消色性着色剤成分及び消色剤の熱分解開始温度の内、最も低い温度である。尚、呈色性化合物、顕色剤、消色剤、及びマトリックス樹脂の種類又は組み合わせによっては、加熱によって前記成分が熱分解したり、好ましくない副反応を起こして非消色性の化合物を形成したりすることがある。このような場合は、消色方法として、次に述べる消色助剤を用いる方法を適用することが好ましい。
【0047】
発色状態の可消色性着色剤の一部又は全部を溶解させる液体の消色助剤と接触させて消色を行う場合には、記録紙上で、分子分散した顕色剤と消色剤(分子分散又は微粒子として存在)とが、呈色性化合物と顕色剤の分子間相互作用よりも強く、消色剤と顕色剤との間で分子間相互作用を起こすこととなり、呈色化合物の発色状態は不安定化し、消色状態となる。この状態は液体の消色助剤を取り除いても継続する。このような消色の機構から明らかなように、室温よりも高温、例えば50℃乃至80℃でこの方法を実施することは極めて効果的である。
発色状態の可消色性着色剤を膨潤させる気体の消色助剤と接触させて消色を行う場合には、消色剤が記録紙の表面から膨潤状態の可消色性着色剤中に物質移動して溶け込み、分子分散されて存在するようになり、或いは、膨潤状態の可消色性着色剤中から顕色剤分子が記録紙上の微粒子状消色剤の表面まで物質移動し、その結果、呈色性化合物と顕色剤の分子間相互作用よりも強く、消色剤と顕色剤との間で分子間相互作用を起こすこととなり、呈色化合物の発色状態は不安定化し、消色状態となる。この状態は気体の消色助剤を取り除き、膨潤状態でなくした後も継続する。このような消色の機構から明らかなように、室温よりも高温、例えば50℃乃至80℃でこの方法を実施することは極めて効果的である。
【0048】
発色状態の可消色性着色剤を膨潤させる気体の消色助剤と接触させて消色を行う方法において消色助剤として用いられる気体は、マトリックス樹脂の有無に関わらず、可消色性着色剤の内部にまで浸透しやすく膨潤させる性質を有する必要がある。具体的にはエチレン、アセチレン、ジメチルエーテルなど常温常圧で気体の有機化合物、及び、ナフタレン、p−ジクロロベンゼンなど常温常圧で昇華して気体になる有機化合物を好適に使用することができる。
【0049】
発色状態の可消色性着色剤を膨潤させる液体の消色助剤と接触させて消色を行う方法において消色助剤として用いられる溶剤は、マトリックス樹脂の有無に関わらず、(A)顕色剤と消色剤との間の水素結合の形成を助ける性質を有することが好ましく、更に、マトリックス樹脂を含有する場合は、(B)マトリックス樹脂との親和性が高く可消色性着色剤の内部にまで浸透しやすい性質を有することが好ましい。上記の(A)の性質を満たす溶剤は単独で使用することができる。又、2種以上の溶剤を混合して上記の2つの性質を満たすようにしても良い。
【0050】
第1類の溶剤、即ち、上記の(A)及び(B)の両方の性質を有する溶剤としては、エーテル、ケトン、エステルなどが挙げられる。具体的には、例えば、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、イソペンチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチルイソペンチルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジヘキシルエーテルなどの飽和エーテル;エチルビニルエーテル、アリルエチルエーテル、ジアリルエーテル、エチルプロパルギルエーテルなどの不飽和エーテル;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンなどの2価アルコールのエーテル;オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキソラン、ジオキサン、トリオキサン、などの環状エーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、イソプロピルメチルケトン、ブチルメチルケトン、エチルプロピルケトン、イソブチルメチルケトン、ピナコロン、メチルペンチルケトン、ブチルエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ヘキシルメチルケトン、イソヘキシルメチルケトン、へプチルメチルケトン、ジブチルケトンなどの飽和ケトン;エチリデンアセトン、アリルアセトン、メシチルオキシドなどの不飽和ケトン;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノンなどの環状ケトン;ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸sec−アミル、酢酸ヘキシル、酢酸アリル、酢酸2−メトキシエチル、酢酸2−エトキシエチル、1,2−ジアセトキシエタン、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ペンチル、プロピオン酸イソペンチル、プロピオン酸sec−アミル、酢酸2−メトキシプロピル、酢酸2−エトキシプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸ペンチル、酪酸イソペンチル、酪酸sec−アミル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、イソ酪酸イソプロピル、イソ酪酸ブチル、イソ酪酸ペンチル、イソ酪酸イソペンチル、イソ酪酸sec−アミル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、吉草酸イソプロピル、吉草酸ブチル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、吉草酸イソプロピル、吉草酸ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸プロピル、ヘキサン酸イソプロピルなどのエステルなどである。上記以外の溶剤として、ジクロロメタン、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイソインドリノン、ジメチルスルホキシドなどがある。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。混合溶剤を用いる場合、混合比は任意に設定できる。
【0051】
第2類の溶剤、即ち、上記(A)の性質を有するが、マトリックス樹脂との親和性が低い溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、イソペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリンなどを挙げることができる。
第3類の溶剤、即ち、上記(A)の性質を持たないが、マトリックス樹脂との親和性が高い溶剤としては、例えば、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジエチルベンゼン、メシチレン、キシレン、クレゾール、エチルフェノール、ジメトキシベンゼン、ジメトキシトルエン、ベンジルアルコール、トリルカルビノール、クミルアルコール、アセトフェノン、プロピオフェノン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロヘプタン、シクロオクタン、石油留分(石油エーテル、ベンジンなど)などを挙げることができる。
【0052】
上述したように第1類の溶剤は単独で良好に使用することができる。第2類の溶剤は、単独でも使用できるが、第1類の溶剤と混合しても良い。この場合、いずれの類の溶剤も消色能を持っているので任意の混合比で使用することができる。第2類の溶剤と第3類の溶剤との混合溶剤を用いる場合、充分な消色能が得られれば両者の混合比は特に限定されないが、第3類の溶剤を20乃至80重量%とすることが好ましい。第3類の溶剤は第1類の溶剤と混合して用いても良い。この場合、第3類の溶剤を90重量%以下とすれば良い。又、第1類から第3類の溶剤を混合して用いても良い。この場合、第3類の溶剤を80重量%以下とすることが好ましい。
可消色性着色剤を効率的に消色するためには溶剤を予め加熱しておいても良い。この場合、溶剤の温度を40乃至150℃の範囲とすることが好ましい。又、溶剤による消色方法を用いる場合、溶剤に消色剤を添加しても良い。
【0053】
可消色性画像記録紙にトナー型、熱転写リボン・シート型、固形筆記具方式などの乾式の方法で画像を形成する場合には、文字通り溶媒を使用しないために問題とはなり得ないが、湿式の方法として、可消色性着色剤を種々の印刷インキに加工して用いる孔版、スクリーン、凹版、凸版、及び平版印刷方式、可消色性着色剤をジェットインクに加工して用いるインクジェットプリンター方式、可消色性着色剤をインクとして種々の方式のペン体に充填して用いる液体筆記具方式などを適用して画像を形成しようとする場合、可消色性着色剤が画像を形成する以前に消色してしまわないような溶媒、即ち、可消色性画像記録紙の表面と、画像形成過程にある前記可消色性着色剤との間に起こる顕色剤又は消色剤の物質移動及び分子間相互作用による消色が完結するよりも早く前記可消色性着色剤による画像形成を完結させるような溶媒を選択して使用しなければならない。ここで、湿式可消色性着色剤による画像形成の完結とは、実質的には、湿式可消色性着色剤中の溶剤の紙面への染み込み及び蒸発・気化によって、湿式可消色性着色剤が固体化することであると言うことができる。即ち、湿式可消色性着色剤中の溶剤の紙面への染み込み及び蒸発・気化によって、湿式可消色性着色剤が固体化していれば、可消色性画像記録紙の表面と、画像形成過程にある前記可消色性着色剤との間に顕色剤又は消色剤の物質移動は起こり得ない。
【0054】
湿式可消色性着色剤に用い得る溶剤の選定基準は次の通りである。
(1)消色剤が溶剤可溶性である場合、消色剤を溶解しない、
(2)顕色剤を全く溶解しない、
(3)マトリックス樹脂を溶解したり、膨潤させたりしない、
溶剤であること。
【0055】
これらの条件のいずれか一つでも満足しない場合、化学平衡論的には可消色性画像記録紙上に画像を形成することはできない。しかしながら、速度論的制御によって、可消色性画像記録紙の表面と、画像形成過程にある前記可消色性着色剤との間に起こる顕色剤又は消色剤の物質移動及び分子間相互作用による消色が完結するよりも早く前記可消色性着色剤による画像形成を完結させるようにすれば、画像形成は可能である。
【0056】
消色剤として、デンプンのように通常の有機溶剤に溶解しないものを用いれば、第1の条件を満たすことは容易である。しかしながら、前述のような顕色剤(フェノール誘導体などの有機化合物)を全く溶解しない溶媒の種類は非常に限定される。この限界を破るためには、マトリックス樹脂からなる微粒子中に呈色性化合物及び顕色剤を閉じこめた形の可消色性着色剤を、マトリックス樹脂を溶解したり、膨潤させたりしない溶剤と組み合わせて用いる手法が有効である。マトリックス樹脂からなる微粒子の表面から顕色剤が溶剤中に溶け出すことを完全に防ぐことはできなくても、マトリックス樹脂の層が障壁となって、顕色剤の溶出を低いレベルに留めることが可能である。具体的には、例えば、ポリスチレンのような親油性の高い樹脂をマトリックス樹脂として用い、消色剤としてデンプンを用いる場合、湿式可消色性着色剤の溶媒として、水、又は、水とアルコール性水酸基を有する有機溶剤の混合溶剤を好適に使用することができる。水と相溶性があるアルコール性水酸基を有する有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、イソペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリンなどを挙げることができる。
【0057】
湿式可消色性着色剤を塗工液、印刷インキ、ジェットインク、或いは、筆記具のインクとして使用するに当たっては、成膜性或いは印刷適正を付与するために、湿式可消色性着色剤の成分として結着剤を必要とする。尚、結着剤は通常、後述の分散剤と併用される。
【0058】
湿式可消色性着色剤の結着剤としては、公知のものの中から次に示す条件を満足するものを適宜選択して使用することができる。
(1)湿式可消色性着色剤中の微粒子状可消色性着色剤成分(マトリックス樹脂を含み、又は含まず、少なくとも呈色性化合物及び顕色剤からなる)を、発色状態を保ったまま分散し、成膜性或いは印刷適正を付与することのできる樹脂又は低分子化合物の溶液又はエマルジョンであること。
(2)画像を形成した後、可消色性着色剤を消色状態とするために加熱処理した際、溶融し、消色剤を含んだ記録紙に浸透することのできる樹脂又は低分子化合物であること。
【0059】
(3)画像を形成した後、可消色性着色剤を消色状態とするために加熱処理した際、記録紙上の消色剤を分子として固溶化(溶解して分子分散させる)することができる樹脂又は低分子化合物であること。
(4)画像を形成した後、可消色性着色剤を消色状態とするために消色助剤処理した際、消色助剤に溶解し、消色剤を含んだ記録紙に浸透することのできる樹脂又は低分子化合物であること。
(5)画像を形成した後、可消色性着色剤を消色状態とするために消色助剤処理した際、消色助剤によって膨潤し、記録紙上の消色剤を分子として固溶化(溶解して分子分散させる)することができる樹脂又は低分子化合物であること。
【0060】
具体例としては、マトリックス樹脂としてのポリスチレン、呈色性化合物としてのロイコ染料、及び顕色剤としての没食子酸n−プロピルからなる微粉末を湿式可消色性着色剤として用い、消色剤としてはデンプンを用いる場合、結着剤として、例えばアクリル酸或いはメタクリル酸エステル共重合体の水系エマルジョンを好適に使用することができる。
湿式可消色性着色剤を塗工液、印刷インキ、ジェットインク、或いは、筆記具のインクとして使用するに当たっては、分散安定性を付与するために、湿式可消色性着色剤の成分として、結着剤と合わせて、分散剤を使用することが好ましい。
【0061】
湿式可消色性着色剤の分散剤としては、公知のものの中から次に示す条件を満足するものを適宜選択して使用することができる。
(1)湿式可消色性着色剤中の微粒子状可消色性着色剤成分(マトリックス樹脂を含み、又は含まず、少なくとも呈色性化合物及び顕色剤からなる)を、発色状態を保ったまま分散し、分散安定性を付与することのできる樹脂又は低分子化合物の溶液又はエマルジョンであること。
(2)消色剤が溶剤可溶性である場合、消色剤を溶解しないこと。
(3)顕色剤を全く溶解しないこと。
(4)マトリックス樹脂を溶解したり、膨潤させたりしないこと。
(5)分散剤自身が消色剤として作用しないこと。
【0062】
具体例としては、マトリックス樹脂としてのポリスチレン、呈色性化合物としてのロイコ染料、及び顕色剤としての没食子酸n−プロピルからなる微粉末を湿式可消色性着色剤として用い、消色剤としてはデンプンを用い、結着剤としてはアクリル酸或いはメタクリル酸エステル共重合体の水系エマルジョンを用いる場合、例えば、末端に芳香族環基を有するポリエチレンオキシド誘導体などのノニオン系界面活性剤を好適に使用することができる。
【0063】
上記のような成分からなる湿式可消色性着色剤の成分組成比については、通常の湿式着色剤を製造する場合の組成比を援用すれば良く、特に制限はない。又、このような組成の湿式可消色性着色剤を製造するには、通常の塗工液、印刷インキ、ジェットインク、或いは、筆記具のインクの製造方法を援用することができる。
【0064】
【実施例】
以下に参考例及び実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
参考例1)
可消色性画像記録紙の参考例として、消色剤としてのデンプンを記録紙表面に塗工したものを以下のようにして製造した。
先ず、デンプンの塗工量を設定するため、予備実験として、後述の参考例4で作成した黒色のトナー型可消色性着色剤を市販の電子写真方式複写機及びレーサープリンターのトナーカートリッジに入れ、画像濃度設定を最高にして通常の紙の片面に全面黒色の画像を形成し、トナー型可消色性着色剤の付着量の最大値を見積もったところ、一例として、複写機の場合で10.9g/m2、レーザープリンターの場合で9.12g/m2であった。又、画像として文字を印字した場合の一例として、ゴシック体の「正」の字を12ポイントの大きさで1600文字、レーザープリンターでA4サイズの紙に印字した場合、トナー型可消色性着色剤の付着量はA4サイズの紙の片面全面に対する平均値として、1.13g/m2であった。従って、参考例4のトナー型可消色性着色剤は顕色剤を2重量%含有しているため、このトナー型可消色性着色剤を用いて画像を形成した場合の紙面への顕色剤の付着量は23mg/m2乃至218mg/m2であると計算される。この顕色剤量を考慮して、参考例1の可消色性画像記録紙への消色剤としてのデンプン塗工量を紙面片面当たり2.5g/m2と設定した。この値は、画像を形成しているトナー型可消色性着色剤中の顕色剤の1重量部に対して、画像が文字の場合で消色剤として約125重量部、黒ベタ画像の場合で同約11重量部に相当する。
【0065】
結着剤としてメタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−アクリル酸(アンモニウム塩)共重合体40重量部を含み、他にノニオン系分散剤2重量部、プロピレングリコール10重量部、及び、水48重量部を含む結着剤溶液へデンプン40重量部を3本ロールを用いて分散して、消色剤の塗工液を作成した。尚、デンプンとしては平均粒子径10μmのコーンスターチを用いた。
これをワイヤーコーターを用いて中性紙(66g/m2)の両面へデンプン分の塗工量が紙面片面当たり2.5g/m2になるよう調整して塗工し、揮発成分を完全に除去して、参考例1の可消色性画像記録紙を製造した。
この可消色性画像記録紙の反射濃度をマクベスの濃度計により測定したところ0.08であった。
【0066】
参考例2)
可消色性画像記録紙の参考例として、消色剤としてのコール酸を記録紙全体に含浸させたものを以下のようにして製造した。
コール酸の含浸量は、含浸させる紙の厚さを考慮して、参考例1のように微粒子型消色剤を表面に塗工する場合の4倍の10g/m2に設定した。
コール酸2重量部を加温したエタノール98重量部に溶解し、この溶液中に中性紙(66g/m2)をくぐらせるた後、乾燥することによって、参考例2の可消色性画像記録紙を製造した。
この可消色性画像記録紙の反射濃度をマクベスの濃度計により測定したところ0.08であった。
【0067】
参考例3)
可消色性画像記録紙の参考例として、消色剤としてのコール酸メチルを記録紙全体に含浸させたものを以下のようにして製造した。
コール酸メチルの含浸量は、含浸させる紙の厚さを考慮して、参考例1のように微粒子型消色剤を表面に塗工する場合の4倍の10g/m2に設定した。
コール酸メチル2重量部をメタノール98重量部に溶解し、この溶液中に中性紙(66g/m2)をくぐらせるた後、乾燥することによって、参考例3の可消色性画像記録紙を製造した。
この可消色性画像記録紙の反射濃度をマクベスの濃度計により測定したところ0.08であった。
【0068】
参考例4)
呈色性化合物として感熱色素PSD−184(日本曹達株式会社製)4重量部、顕色剤として没食子酸プロピル2重量部、マトリックス樹脂として93重量部のポリスチレン、及び、帯電制御剤としてLR−147(日本カーリット株式会社製)1重量部を予め混合し、ニーダーを用いて100℃を超えない温度で充分に混練した後、得られた混練物を2本ロールにて冷却しながら粉砕し、再度ニーダーで混練するという工程を繰り返し、黒色に発色した可消色性着色剤マスターバッチ得た。次いでこのマスターバッチを粉砕機により粉砕して平均粒径12μmの粉体を得た。この粉体100重量部に対して1重量部の疎水性シリカを添加して参考例4のトナー型可消色性着色剤を調製した。
【0069】
本発明の可消色性画像形成方法の参考例として、このトナー型可消色性着色剤を市販の電子写真方式複写機のトナーカートリッジに入れ、試験用画像(テストチャート)を参考例1の可消色性画像記録紙に転写し、熱定着して、参考例4の画像を得た。得られた画像は充分な画像濃度であり、通常の使用条件で高い耐久性を示した。ここで、トナー型可消色性着色剤の熱定着過程は、冷却完了まで含めて秒オーダーの速度で行われるため、可消色性画像記録紙表面と溶融状態のトナー型可消色性着色剤との間における消色剤又は顕色剤の物質移動及び消色剤と顕色剤との分子間相互作用は速度論的に抑制され、結果的に、充分な濃度の画像を形成することができる。
【0070】
参考例5)
参考例1の可消色性画像記録紙の代わりに参考例2の可消色性画像記録紙を用いた他は参考例4の場合と同様にして、参考例5の画像を得た。得られた画像は充分な画像濃度であり、通常の使用条件で高い耐久性を示した。
【0071】
参考例6)
参考例1の可消色性画像記録紙の代わりに参考例3の可消色性画像記録紙を用いた他は参考例4の場合と同様にして、参考例6の画像を得た。得られた画像は充分な画像濃度であり、通常の使用条件で高い耐久性を示した。
【0072】
参考例7)
加熱による可消色性画像の消色方法の参考例として、参考例4、参考例5、及び参考例6の画像が形成された参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々100枚を、各々束ねた状態で190℃に温度調節された送風式恒温器(ヤマト科学製DN83型)に入れ、同温度で12時間放置した後、取り出した。その結果、参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々100枚に形成された画像は全て消色され、肉眼では確認できなくなった。消色後の可消色性画像記録紙各々の反射濃度を測定したところ、全て0.08であった。即ち、参考例1、参考例2、及び参考例3いずれの可消色性画像記録紙、及び、参考例4、参考例5、及び参考例6いずれの可消色性画像も、優れた消色特性を発揮することが確認された。
【0073】
画像が消色された参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙を各々60℃で300時間放置したが、画像が再び現れることはなかった。その後、画像を消色した参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々に、別の画像を形成し、加熱によって消色するプロセスを9回繰り返した。その後に形成した10回目の画像は1回目の画像と同等の品質であった。更に、画像形成及び消色を50回まで繰り返した。その結果、基材としての紙は物理的に痛んだが、形成された画像の品質及び消色状態の品質は良好であった。即ち、加熱による可消色性画像の消色方法を適用した場合において、参考例1、参考例2、及び参考例3いずれの可消色性画像記録紙、及び、参考例4、参考例5、及び参考例6いずれの可消色性画像も、高いリサイクル性・消色性を発揮することが確認された。
【0074】
参考例8)
液体の消色助剤(溶剤)による可消色性画像の消色方法の実施例として、参考例4、参考例5、及び参考例6の画像が形成された参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々100枚を、例えばメチルイソブチルケトンに浸漬し、次いで乾燥させた。その結果、参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々100枚に形成された画像は全て消色され、肉眼では確認できなくなった。消色後の可消色性画像記録紙各々の反射濃度を測定したところ、全て0.08であった。即ち、参考例1、参考例2、及び参考例3いずれの可消色性画像記録紙も、優れた消色特性を発揮することが確認された。
【0075】
画像が消色された参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙を各々60℃で300時間放置したが、画像が再び現れることはなかった。その後、画像を消色した参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々に、別の画像を形成し、溶剤によって消色するプロセスを9回繰り返した。その後に形成した10回目の画像は1回目の画像と同等の品質であった。更に、画像形成及び消色を50回まで繰り返した。その結果、紙は物理的に痛んだが、形成された画像の品質及び消色状態の品質は良好であった。即ち、液体の消色助剤(溶剤)による可消色性画像の消色方法を適用した場合において、参考例1、参考例2、及び参考例3いずれの可消色性画像記録紙、及び、参考例4、参考例5、及び参考例6いずれの可消色性画像も、高いリサイクル性・消色性を発揮することが確認された。
【0076】
(実施例
気体の消色助剤による可消色性画像の消色方法の実施例として、参考例4、参考例5、及び参考例6の画像が形成された参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々100枚を、各々束ねた状態で箱形真空乾燥機(ヤマト科学製DP43型)へ入れ、一旦、0.1Paの減圧にした後、ジメチルエーテルガスを導入して大気圧に保って24時間放置した。次いでジメチルエーテルガスを排出し、通常の空気を導入した。その結果、参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々に形成された画像は全て消色され、肉眼では確認できなくなった。消色後の可消色性画像記録紙各々の反射濃度を測定したところ、全て0.08であった。即ち、参考例1、参考例2、及び参考例3いずれの可消色性画像記録紙も、優れた消色特性を発揮することが確認された。尚、可燃性ガスを取り扱うため、以上の操作は防災上の安全対策を充分に施して実施した。又、排出されたジメチルエーテルガスは冷却式トラップに捕集して回収し、再利用した。
【0077】
画像が消色された参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙を各々60℃で300時間放置したが、画像が再び現れることはなかった。その後、画像を消色した参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々に、別の画像を形成し、溶剤によって消色するプロセスを9回繰り返した。その後に形成した10回目の画像は1回目の画像と同等の品質であった。更に、画像形成及び消色を50回まで繰り返した。その結果、紙は物理的に痛んだが、形成された画像の品質及び消色状態の品質は良好であった。即ち、気体の消色助剤による可消色性画像の消色方法を適用した場合において、参考例1、参考例2、及び参考例3いずれの可消色性画像記録紙、及び、参考例4、参考例5、及び参考例6いずれの可消色性画像も、高いリサイクル性・消色性を発揮することが確認された。
【0078】
参考
呈色性化合物として感熱色素PSD−184(日本曹達株式会社製)2重量部、顕色剤として没食子酸プロピル1重量部、及び、ワックスとして1−ドコサノール(融点65乃至72℃)5重量部を混合し、3本ロールを用いて75℃以下で充分に混練して可消色性着色剤(マトリックス樹脂なし;黒色)を製造した。この可消色性着色剤を粉砕した後、金型に入れ、加圧成形して参考例9のクレヨンを作製した。
本発明の可消色性画像形成方法の参考例として、参考例9のクレヨンを用いて参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々(全て反射濃度0.08)に文字を手書きすることで参考例9の画像を形成した。
【0079】
参考10
本発明の可消色性画像消色方法の参考例として、参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々に形成された参考の画像をイソプロピルアルコールに浸漬した結果、いずれの場合も手書きした文字が消色され肉眼で確認できなくなった。消色後の参考例1、参考例2、及び参考の可消色性画像記録紙各々の反射濃度を測定したところ0.08であった。文字が消色された参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々を60℃で300時間放置したが、文字が再び現れることはなかった。又、文字が消色された参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々の文字が消色された部分に、再度参考例9のクレヨンで文字を手書きできることが確認された。
【0080】
参考11
呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン6重量部、顕色剤として没食子酸プロピル2重量部、及び、マトリックス樹脂として92重量部のポリスチレンを予め混合し、ニーダーを用いて100℃を超えない温度で充分に混練した後、得られた混練物を2本ロールにて冷却しながら粉砕し、再度ニーダーで混練するという工程を繰り返し、青色に発色した可消色性着色剤マスターバッチ得た。次いでこのマスターバッチを粉砕機により粉砕して平均粒径2μmの粉体を得た。この粉体40部を結着剤としてメタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−アクリル酸(アンモニウム塩)共重合体40重量部を含み、他にノニオン系分散剤2重量部、プロピレングリコール10重量部、及び、水48重量部を含む結着剤溶液へ、3本ロールを用いて分散し、参考11の水性可消色性着色剤を作成した。
【0081】
繊維束を樹脂で結着させてなるペン体を固定したペン体ホルダーを弁機構を介して先端に嵌着したアルミニウム円筒体からなり、マーキング時にペン先を紙面に押しつけて弁を開放させて筒内のインクをペン先に導出するタイプのマーキングペンのペン体を用意し、これに参考11の水性可消色性着色剤を充填し、本発明の可消色性画像形成方法の参考例として、参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々(全て反射濃度0.08)に文字を手書きすることで参考11の画像を形成した。
【0082】
参考12
本発明の可消色性画像消色方法の参考例として、参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々に形成された参考11の画像をメチルエチルケトンに浸漬した結果、いずれの場合も手書きした文字が消色され肉眼で確認できなくなった。消色後の参考例1、参考例2、及び参考の可消色性画像記録紙各々の反射濃度を測定したところ0.08であった。文字が消色された参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々を60℃で300時間放置したが、文字が再び現れることはなかった。又、文字が消色された参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々の文字が消色された部分に、再度参考11のペンで文字を手書きできることが確認された。
【0083】
参考13
呈色性化合物としてロイコ色素ODB−2(山本化成製)1重量部、顕色剤として2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン1重量部、マトリックス樹脂として分子量2,500のピロメリット酸/エチレングリコール系ポリエステル3重量部、及びパラフィン15重量部を混合し、ニーダーにより充分に混練した。この混練物をホットメルトコーターを用いて、厚さ4.5μmのPETシート上に約2μmの厚さに塗布して、熱転写型可消色性着色剤として参考13の熱転写シートを作製した。
【0084】
本発明の可消色性画像形成方法の参考例として、参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々(全て反射濃度0.08)の上に参考13の熱転写シートを重ねてサーマルプリンターにセットし、参考13の画像を印刷した。ここで、熱転写シートの溶融、転写、次いで固着までの過程は通常、ミリ秒オーダーの速度で行われるため、可消色性画像記録紙表面と溶融状態の熱転写型可消色性着色剤との間における消色剤又は顕色剤の物質移動及び消色剤と顕色剤との分子間相互作用は速度論的に抑制され、結果的に、充分な濃度の画像を形成することができる。
【0085】
参考14
加熱による可消色性画像の消色方法の参考例として、参考13の画像が形成された参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々100枚を、各々束ねた状態で190℃に温度調節された送風式恒温器(ヤマト科学製DN83型)に入れ、同温度で12時間放置した後、取り出した。その結果、参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々100枚に形成された画像は全て消色され、肉眼では確認できなくなった。消色後の可消色性画像記録紙各々の反射濃度を測定したところ、全て0.08であった。即ち、参考例1、参考例2、及び参考例3いずれの可消色性画像記録紙、及び、参考13のいずれの可消色性画像も、優れた消色特性を発揮することが確認された。
【0086】
画像が消色された参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙を各々60℃で300時間放置したが、画像が再び現れることはなかった。その後、画像を消色した参考例1、参考例2、及び参考例3の可消色性画像記録紙各々に、別の画像を形成し、加熱によって消色するプロセスを9回繰り返した。その後に形成した10回目の画像は1回目の画像と同等の品質であった。更に、画像形成及び消色を50回まで繰り返した。その結果、基材としての紙は物理的に痛んだが、形成された画像の品質及び消色状態の品質は良好であった。即ち、加熱による可消色性画像の消色方法を適用した場合において、参考例1、参考例2、及び参考例3いずれの可消色性画像記録紙、及び、参考例4、参考例5、及び参考例6いずれの可消色性画像も、高いリサイクル性・消色性を発揮することが確認された。
【0087】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の可消色性画像消色方法を用いれば、紙の上に安定な画像を形成し、形成された画像を優れた消色特性で消色し、可消色性画像記録紙を繰り返し再利用することができる。又、この消色状態は安定に維持でき、消色後の紙を有効に再使用することができる。

Claims (2)

  1. 表面に、消色剤が、分子として吸着又は含浸或いは微粒子として漉き混み又は塗工されている記録紙の上記表面に、マトリックス樹脂を含み、又は含まず、少なくとも顕色剤、及び、前記顕色剤との分子間相互作用により発色する呈色性化合物からなる可消色性着色剤を用いる印刷方法によって画像を形成した後、該画像気体の消色助剤を作用させ、前記可消色性着色剤を溶解又は膨潤させることによって前記顕色剤又は前記消色剤の物質移動及び前記顕色剤と前記消色剤との分子間相互作用を起こさせることを特徴とする可消色性画像の消色方法。
  2. 消色剤が、デンプン、コール酸又はコール酸メチルであり、消色助剤が、ジメチルエーテルである請求項1に記載の可消色性画像の消色方法。
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