図1に示すように、本実施形態に係る車両は、動力源としてエンジン1とモータジェネレータ(車両の動力源としてのモータの機能と、エンジン1で駆動されて発電を行う発電機としての機能とを兼ね備えたもの)11とを有する、いわゆる低公害型車両あるいは環境対応型車両等と称されるものであって、エンジン1のクランクシャフトとモータジェネレータ11の回転軸とがベルトあるいはチェーン12で相互連結されている。また、この車両は、エンジン1の出力増大を図る手段として電動過給機5を有し、該過給機5は、主たる構成要素として、エンジン1の吸気通路2に配設された、例えば遠心式の圧縮機3と、該圧縮機3を回転駆動するモータ4とを有する。
ここで、上記圧縮機3の下流には、インタークーラ6と電動スロットル弁7とがこの順に吸気通路2に配設されている。また、圧縮機3の上流とインタークーラ6の下流とに亘ってバイパス通路(リリーフ通路あるいは再循環通路ともいう)9が設けられている。このバイパス通路9は、例えば低回転で電動過給機5の圧縮機3を通過するガスの流量が少ないときに、該電動過給機5の過給能力を確保するために、いったんインタークーラ6を出たガスを再び圧縮機3の上流に戻して、該圧縮機3を通過するガスの流量を確保するためのものである。なお、吸気通路2は、吸気マニホールド8を介してエンジン1に接続している。
一方、このエンジン1の電源システム14には上記電動過給機5のモータ4が接続されている他、上記モータジェネレータ11がインバータ13を介して、また12Vの鉛電池17がDC/DCコンバータ16を介してそれぞれ上記電源システム14に接続されている。そして、電動過給機5の駆動時、及びモータジェネレータ11の車両動力源としての駆動時には、上記電源システム14の、例えば42Vの蓄電装置15からそれぞれに電力供給が行われる。逆に、モータジェネレータ11がエンジン1により発電機として駆動されるときには、その発電電力は、インバータ13を経て上記電源システム14の蓄電装置15に供給され、該蓄電装置15の充電に用いられる。
また、前照灯やエアコン等の一般電装品、及び冷間始動時に用いられる補助スタータ18等へは、12V鉛電池17から電力供給が行われ、該鉛電池17へは、上記DC/DCコンバータ16により上記電源システム14の蓄電装置15の電力が12Vに降圧されて常時充当されている。
そして、このエンジン1のコントロールユニット50は、運転者によるアクセルペダル19の開度(踏込量)を検出するアクセル開度センサ20からの信号、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転センサ21からの信号、車両の現在位置と道路地図情報とから車両の走行予定路を設定するナビゲーションシステム30からの信号、電源システム14からの信号(蓄電装置15の状態−例えば蓄電量等−に関連する信号等)、電動過給機5のモータ4の温度を検出するモータ温度センサ(例えばサーミスタ等で構成される)22からの信号、吸気通路2におけるインタークーラ6を出た直後の吸気温度を検出する吸気温度センサ23からの信号、及び吸気通路2におけるスロットル弁7の直上流の吸気圧を検出する吸気圧センサ24からの信号等を入力し、その結果に応じて、電動過給機5のモータ4、モータジェネレータ11を車両動力源として駆動させるインバータ13、スロットル弁7を駆動するスロットルアクチュエータ25、補助スタータ18、バイパス通路9の開度(すなわち圧縮機3を通過する吸気の循環量)を調整するリリーフ弁10、及び自動変速機40等に各種の制御信号を出力して、エンジン1の出力制御や、モータジェネレータ11による発電制御(蓄電装置15の充電制御)等を実行する。
次に、本発明の特徴部分を構成する上記エンジン1の具体的制御動作のいくつかを図2以下を参照しながら説明する。まず、図2に例示したように、このエンジン1においては、全低負荷領域から全高回転領域に亘る領域が非過給領域Xに設定されている。この非過給領域Xでは、電動過給機5もモータジェネレータ(動力源として)11も駆動されず、エンジン1の自然吸気による出力のみが得られる。また、中回転高負荷領域は過給領域Yに設定されている。この過給領域Yでは、電動過給機5が駆動され、エンジン1の出力増大が図られる。そして、低回転高負荷領域はモータアシスト領域Zに設定されている。このモータアシスト領域Zでは、電動過給機5の駆動に加えて、モータジェネレータ11が車両動力源として駆動され(このように車両駆動源として機能するときのモータジェネレータ11を、以下、単に「モータ11」と記す)、エンジン1の出力トルクが助勢される。ただし、このモータアシスト領域Zでは、電動過給機5の駆動によるトルク増大分は、エンジン回転数の低下に伴って急激に少なくなり、逆に、モータ11の駆動によるトルク助勢分は、エンジン回転数の低下に伴って急激に多くなる。
このように、電動過給機5を有するエンジン1を備えた車両において、上記電動過給機5及びモータ11の駆動をエンジン1の運転状態(図例ではエンジン回転数とトルク)に応じて制御する場合に、低回転高負荷領域ではモータ11を駆動し、中回転高負荷領域では電動過給機5を駆動するようにしたから、例えば低回転高負荷領域で電動過給機5を駆動したときに発生するエンジン1のノッキングの問題や電動過給機5のサージングの問題等が回避される。また、モータ11を高負荷領域ではあるが低回転領域で駆動するから、該モータ11としては、高トルクではあるが低回転で駆動可能なものであればよく、その結果、出力の小さなモータで十分となって、該モータ11及び該モータ11に電力を供給する蓄電装置15を小型化でき、これらの車両への搭載性の向上や、車両のコスト及びサイズの縮小が図れる。
一方、電動過給機5を中回転高負荷領域で駆動するから、上記の低回転高負荷領域でのモータ11の駆動と合わせて、低回転領域から中回転領域にかけてのトルクは、これらのモータ11及び電動過給機5の駆動によって得られるアシストトルク及び過給トルクで確保することができる。その結果、図2に例示したように、自然吸気のみで得られるエンジン1の最大トルクの発生回転数(及び最大出力の発生回転数)を高回転領域にシフトすることが可能となり(換言すれば、高回転領域のトルクを非過給のエンジン1の出力のみで確保することが可能となり)、したがって、低中回転領域のみならず、高回転領域においても、十分な余裕トルク(エンジン1のトルクと走行抵抗との差に相当するトルク)が得られる。その結果、変速機40のギヤ比とファイナルギヤ比とから得られるトータルギヤ比を、あまり減速しなくてもよいギヤ比(値の小さなギヤ比)とすることが可能となり、同じ車速を得ようとしたときに、トータルギヤ比の値が小さい分、エンジン回転数も低くて済み、それゆえ、より低回転側の領域が使用頻度の高い領域となって、燃費が著しく向上する。
しかも、上記のエンジン1の最大トルク発生回転数(及び最大出力発生回転数)の高回転領域へのシフトは、例えば吸気弁の開時間を長くして充填効率を上げる(新気が排気を一掃して充填効率を向上させる)ことや、吸気通路2の長さを高回転時に慣性過給効果が得られるようにエンジン1の諸元を設計すること等で達成される。その結果、使用頻度の高い低中回転低負荷領域において、ポンピングロスの少ない、有効圧縮比が小さく、有効膨張比の大きい、熱効率のよいエンジン1の諸元が得られ、この点からも、より一層の燃費向上が図られる。
次に、上記のようにエンジン1の運転状態に応じて電動過給機5及びモータ11の駆動を切り換えるエンジン1の出力制御の具体的動作の1例を図3のフローチャートに従って説明する。
まずステップS11で、各種信号を入力した後、ステップS12で、アクセル開度αに基づいて目標トルクToを算出する。このとき、目標トルクToは、概ね、アクセル開度αが大きいほど大きな値に算出される。
次いで、ステップS13で、低中回転高負荷領域か否かを判定する。すなわち、図2を参照すれば、エンジン回転数Neと目標トルクToとで表されるエンジン1の運転状態が過給領域Yかあるいはモータアシスト領域Zにあることを判定するのである。その結果、NOの場合、つまり非過給領域Xにあるときは、ステップS14で、上記目標トルクToに基づいてスロットル開度TVOを算出する。このとき、スロットル開度TVOは、エンジン出力トルクが目標トルクToに一致する値に算出される。
そして、ステップS15で、上記スロットル開度TVOが得られるように、スロットル弁7を駆動制御する(以上、非過給領域X制御)。
一方、上記ステップS13でYESの場合は、ステップS16に進んで、スロットル開度を100%としたときに自然吸気のみの非過給状態で得られる最大エンジントルクTemaxを、エンジン回転数Neに基づいて算出する。このときの最大エンジントルクTemaxの算出には、例えば図4に例示したようなこのエンジン1のトルク特性(図2の非過給領域Xを定める境界線に相当する)が用いられる。
次いで、ステップS17で、目標トルクToから上記最大エンジントルクTemaxを減算することにより過給トルクTb(電動過給機5を駆動させることによりエンジン1の出力を増大させる分のトルク)を算出する。
次いで、ステップS18で、電動過給機5のサージングやエンジン1のノッキングが発生しない範囲内での最大過給トルクTbmaxを、エンジン回転数Neに基づいて算出する。このときの最大過給トルクTbmaxの算出には、例えば図5に例示したような特性が用いられる。すなわち、エンジン回転数Neが所定の回転数より小さくなっても、また別の所定の回転数より大きくなっても、いずれも最大過給トルクTbmaxは小さな値に算出される。これは、前者の場合は、エンジン回転数Neが小さくなるほど、電動過給機5のサージングやエンジン1のノッキングの問題が発生し易くなるから、それを抑制するためである。また、後者の場合は、図4に例示したように、エンジン回転数Neが中回転域を超えて大きくなるほど、最大エンジントルクTemaxが大きくなるから、それと相殺するためである。すなわち、このステップS18で算出された最大過給トルクTbmaxを、上記ステップS16で算出された最大エンジントルクTemaxに上乗せすることにより、図2の過給領域Yを定める境界線が得られる。
その場合に、図5に破線で示したように、蓄電装置15の蓄電量SOCが所定の蓄電量よりも小さいほど、最大過給トルクTbmaxは小さな値に算出される。これはおよそ次のような理由による。
つまり、図6を参照すると、電動過給機5及びモータ11に電力を供給する蓄電装置15の蓄電量SOCが十分にあるときは、モータ11の駆動も電動過給機5の駆動も十分となって、その結果、モータ11によるアシストトルクも電動過給機5による最大過給トルクTbmaxも十分に得られて、図中符号アで示したように、モータ11が非駆動状態の過給領域Yと、モータ11が駆動状態のモータアシスト領域Zとの間の移行時に、トルクが滑らかにつながって、不快なトルクショック等が乗員に発生しない。
ところが、蓄電装置15の蓄電量SOCが所定の蓄電量よりも小さくなると、モータ11の駆動が不十分となり、図中鎖線で示したように、該モータ11によるアシストトルクが低下して、モータアシスト領域Zの全トルクが不足気味となるから、過給領域Yとモータアシスト領域Zとの間の移行時に、トルクが滑らかにつながらず、不快なトルクショック等が乗員に発生してしまう。
そこで、蓄電装置15の蓄電量SOCが所定の蓄電量よりも小さいときは、上記両領域Y,Z間の(換言すれば、モータ11の駆動・非駆動の切換時の)トルク変動(トルク段差)を抑制するために、図中破線で示したように、蓄電装置15の蓄電量SOCが所定の蓄電量よりも小さいほど、電動過給機5による最大過給トルクTbmaxを小さな値とし(電動過給機5の駆動を抑制し)、もって過給領域Yの全トルクを低下させて、該過給領域Yとモータアシスト領域Zとの間の移行時にトルクが滑らかにつながるようにしたのである。これにより、トルクショックに起因する乗員の違和感・不快感が低減する。
なお、ここで、蓄電装置15の蓄電量SOCの低下により発生する上記トルク段差は、モータ11によるアシストトルクの低下に起因すると述べたが、これは、前述したように、モータアシスト領域Zでは、電動過給機5によるトルク増大分が相対的に少なく、モータ11によるトルク助勢分が相対的に多くなって、結果的に、全トルクに占めるモータ11のトルクの比率が大きい(モータ11のトルクの変動が大きく影響する)ことに由来する。
図3のフローチャートに戻り、次いで、ステップS19で、上記ステップS17で算出された過給トルクTbが、上記ステップS18で算出された最大過給トルクTbmaxより以下か否かを判定する。すなわち、ステップS12で算出された目標トルクToが、図5に例示したサージングやノッキングを起こさない範囲内で電動過給機5を駆動させるだけで、達成可能かどうかを判定するのである。
その結果、YESのとき、つまり目標トルクToが過給領域Y内にあるときは、ステップS20に進んで、上記過給トルクTbに基づいて、バイパス通路9上のリリーフ弁10の開度RVOを算出する。このとき、リリーフ弁開度RVOは、図7に例示したように、過給トルクTbが大きいほど大きな値に算出される。これにより、バイパス通路9をインタークーラ6の下流側から圧縮機3の上流側に循環するガスの流量が増え、大きな過給トルクTbを達成するために、電動過給機5の過給効果が十分発揮されることになる。また、図7に併せて例示したように、リリーフ弁開度RVOは、エンジン回転数Neが小さいほど大きな値に算出される。これによっても、バイパス通路9をインタークーラ6の下流側から圧縮機3の上流側に循環するガスの流量が増え、エンジン回転数Neが小さくても、上記圧縮機3を通過するガスの流量が確保されて、電動過給機5の過給効果が十分発揮されることになる。
そして、ステップS21で、上記リリーフ弁開度RVOが得られるように、リリーフ弁10を駆動制御する。
次いで、ステップS22で、過給トルクTbに基づいて、吸気通路2におけるスロットル弁7の直上流の目標吸気圧Pbを算出する。ただし、この場合は、上記ステップS13で高負荷判定されて、スロットル開度が100%(全開)とされるから(ステップS24参照)、上記目標吸気圧Pbは、スロットル弁7より下流側の、例えば吸気マニホールド8やサージタンク(図示せず)内の圧力であってもよい。
そして、このとき、目標吸気圧Pbは、図8に例示したように、過給トルクTbが大きいほど大きな値に算出される。しかも、その変化は2段とされて、過給トルクTbが所定のトルクより大きいときは、小さいときに比べて、目標吸気圧Pbの増加率が大きくされている。これは、過給トルクTbが大きくなるほど、ノッキング防止のために点火時期が遅角(リタード)され、その分エンジン1の出力が低下するから、それを補うために、目標吸気圧Pbをより大きくする(より大きく過給する)のである。
そして、ステップS23で、実過給圧が上記目標過給圧Pbとなるように電動過給機5のモータ4を駆動して、圧縮機3の回転数をフィードバック制御する。
次いで、ステップS24で、スロットル開度TVOを100%(全開)に設定し、ステップS15で、上記スロットル開度TVO(=100%)が得られるように、スロットル弁7を駆動制御する(以上、過給領域Y制御)。
一方、上記ステップS19でNOのとき、つまり目標トルクToが過給領域Yを逸脱してモータアシスト領域Z内にあるときは、上記ステップS20以下を実行する前に、ステップS25に進んで、過給トルクTbから最大過給トルクTbmaxを減算することによりモータトルクTm(モータ11を駆動させることによりエンジン1を助勢する分のトルク)を算出する。つまり、ステップS12で算出された目標トルクToが、図5に例示したサージングやノッキングを起こさない範囲内で電動過給機5を駆動させただけでは達成不可能であるから、その不足分をモータ11によるトルク助勢で補うのである。
そして、ステップS26で、上記モータトルクTmが得られるように、モータ11を駆動制御する。
次いで、ステップS27で、過給トルクTbの値を、図5に例示した最大過給トルクTbmaxの値にセットしたうえで、上記ステップS20〜S24及びステップS15を実行する(以上、モータアシスト領域Z制御)。
このようなエンジン1の出力制御を行うことにより、電動過給機5及びモータ11の駆動がエンジン1の運転状態に応じて制御され、その結果、前述したように、全低負荷領域から全高回転領域に亘る非過給領域Xでは、電動過給機5もモータ11も駆動されず、エンジン1の自然吸気による出力のみが得られ、中回転高負荷領域の過給領域Yでは、電動過給機5が駆動されて、エンジン1の出力増大が図られ、そして、低回転高負荷領域のモータアシスト領域Zでは、モータ11が駆動されて、エンジン1の出力トルクが助勢されるようになる。
なお、ここで、運転状態がどの領域からどの領域へ移行するかにより、制御の内容も状況に応じて変わることがある。例えば、非過給領域Xから過給領域Yへの移行時(図3のステップS13でそれまでNOと判定されていたのが今回初めてYESと判定され、かつステップS19でYESと判定されたとき)は、電動過給機5のみが駆動停止状態から回転駆動が開始される(ステップS23)。また過給領域Yからアシスト領域Zへの移行時(同じくステップS13でYESと判定され、かつステップS19でそれまでYESと判定されていたのが今回初めてNOと判定されたとき)は、モータ11のみが駆動停止状態から回転駆動が開始される(ステップS26)。一方、非過給領域Xからアシスト領域Zへの移行時(同じくステップS13でそれまでNOと判定されていたのが今回初めてYESと判定され、かつステップS19で直ちにNOと判定されたとき)は、電動過給機5とモータ11の両方が駆動停止状態から回転駆動が開始される(ステップS23及びS26)。
例えば、この最後のパターンにおいて、電動過給機5のほうがモータ11に比べて概して回転駆動の応答遅れの程度が大きいから、非過給領域Xからアシスト領域Zへの移行直後は、最初は、モータ11の駆動量を多くして、アシストトルクを目標値(ステップS25で算出される正規の値Tm)よりも大きくし、これにより、電動過給機5の応答遅れに起因する過給トルクTbの立上りの遅れを穴埋めして、アシスト領域Zでの目標トルクTo(全トルクの総和:Temax+Tbmax+Tm)を確実に達成するようにしてもよい。
これに対し、例えば、過給領域Yからアシスト領域Zへの移行時は、電動過給機5はすでに回転駆動されているから、応答遅れの程度は少なくなり、したがって、アシスト領域Zへの移行直後は、最初からモータ11の回転駆動量を目標通りに開始させることができる。
このように、電動過給機5の過給の応答遅れは、その回転駆動が停止している状態から駆動が開始されるときに大きく出現する。一方、電動過給機5が例えば所定の低回転(アイドル回転)で予回転していると、応答遅れは抑制される。また、電動過給機5の過給の応答遅れは、蓄電装置15の蓄電量SOCが少ないほど大きく影響される。これらの点についてはさらに後述する。
なお、以上説明した制御例では、モータアシスト領域Zでは、エンジン1に加えて電動過給機5とモータ11の両方が駆動されるようになっているが、これに代えて、あるいはこれと共に、エンジン1に加えてモータ11のみが駆動される第2のモータアシスト領域Z′を設けてもよい。そのような第2モータアシスト領域Z′は、好ましくは、上記第1モータアシスト領域Zに隣接して、最低回転側の高負荷領域に設定される。
次に、上記エンジン1の他の制御動作を図9のフローチャートに従って説明する。すなわち、このエンジン1では、電動過給機5及びモータ11への駆動電力の供給源は、電源システム14の蓄電装置15であるが、該蓄電装置15の蓄電量SOCには上限があるから、例えば過給領域Yやアシスト領域Zでの滞在時間が長くなって、過給機5やモータ11が長時間連続的に駆動されていると、上記蓄電量SOCが減り続けて(理由:モータジェネレータ11は、非過給領域Xにおいてエンジン1で発電機として駆動されて蓄電装置15を充電する。よって、過給領域Yやアシスト領域Zでの滞在時間が長くなると、それだけ非過給領域Xでの滞在時間が短くなり、モータジェネレータ11による発電及び蓄電装置15の充電の機会が少なくなる、というのが蓄電量SOCが減り続ける理由の1つである)、そのうち過給機5やモータ11の駆動力が低下し、ついには運転者の高出力要求・加速要求に対して過給不足・アシストトルク不足の問題が発生する。
そこで、上記電動過給機5及びモータ11に電力を供給する蓄電装置15の蓄電量SOCが所定の蓄電量よりも少なくなったときには、運転者の高出力要求頻度・加速要求頻度に応じて、同じ運転状態であってもより低速段で走行するように変速特性を補正するようにする。このように対策することにより、エンジン回転数Neが総じて上昇し、その結果、エンジン1の高回転領域の使用機会が増えて、運転者がエンジン1に対して要求する高出力が、電動過給機5やモータ11の駆動を抑制して、あるいは駆動をせずに、エンジン1の単独出力(自然吸気による出力)だけで確保されるようになる。したがって、蓄電装置15の蓄電量SOCが不足して、電動過給機5及びモータ11の駆動力が不足し、過給不足・アシストトルク不足の問題が顕著化しなくなる。また、高出力要求時以外は、蓄電装置15の蓄電(充電)のための発電量を増大することができる。
図9に示したフローチャートは、上記のような対策を実行するためのもので、まずステップS31で、各種信号を入力した後、ステップS32で、アクセル開度の今回値α(i)と前回値α(i−1)とからアクセル開度変化量Δαを算出する。
次いで、ステップS33で、上記アクセル開度変化量Δα毎に、そのアクセル開度変化の発生回数(発生頻度)を統計に取り、分布特性値を求める。本実施形態では、統計をポアソン分布に近似させて、その分散値を分布特性値λとしている。より具体的には、図10に例示したように、過去直近の所定時間(例えば数分〜数十分)内に発生したアクセルペダル19の踏込回数(踏込頻度)をその踏込量(アクセル開度変化量Δα)の大きさで区分けして統計をとり、図示したポアソン分布曲線の幅を分布特性値λとしている。つまり、分布特性値λが大きいほど、運転者の高出力要求・加速要求が大きいことになり、そのことは、電動過給機5やモータ11がより頻繁に駆動されたことを意味する。
次いで、ステップS34で、上記の分布特性値λに基づいて、上記自動変速機40の変速特性を同じ運転状態であってもより低速段で走行するように補正する際の変速特性補正量Sftを設定する。この補正量Sftは、図11に例示したように、分布特性値λが大きいほど、大きな値に設定される(すなわち補正の度合いが大きくされる)。ただし、分布特性値λが所定値以下のときは、補正量Sftはゼロとされて、自動変速機40の変速特性の補正は行われなくなる。
また、図11に併せて示したように、上記補正量Sftは、蓄電装置15の蓄電量SOCが少ないほど、また、エンジン回転数Neが低いほど、大きな値に設定され、しかも補正量Sftをゼロとする分布特性値λの所定値がより小さくされて補正量Sftはゼロとされ難くなる(すなわち補正の度合いが大きくされる)。
そして、ステップS35で、上記補正量Sftで自動変速機40の変速特性を補正する。
その場合に、上記自動変速機40が、いわゆる通常の有段の自動変速機(AT)であるときは、図12に例示したように、変速ライン(例えば2−3変速ライン)を高車速側に上記補正量Sftだけシフトする。こうすることにより、車両は、同じ運転状態であってもより低速段で走行するようになる。
また、上記自動変速機40が、いわゆる無段変速機(CVT)であるときは、図13に例示したように、変速ライン(アクセル開度α毎の変速ライン)を変速比の大側(減速側)に上記補正量Sftだけシフトする。こうすることによっても、車両は、同じ運転状態であってもより低速段で走行するようになる。
以上のように、ステップS33,S34及び図10、図11から明らかなように、運転者の加速要求・高出力要求の頻度λが大きいほど(換言すれば、過給領域Y及びアシスト領域Zでの延べの滞在時間が長いほど、あるいは、非過給領域Xにおいてモータジェネレータ11を発電機として駆動して蓄電装置15を充電する機会が少ないほど)、上記自動変速機40の変速特性を同じ運転状態であってもより低速段で走行するように補正するから、エンジン回転数Neが総じて上昇し、その結果、エンジン1の高回転領域の使用機会が増えて、運転者がエンジン1に対して要求する高出力が、電動過給機5やモータ11の駆動を抑制して、あるいは駆動をせずに、エンジン1の単独出力(前述の図3のステップS16で算出されるTemaxに相当)だけで確保されるようになる。
これを図14を参照してより詳しく説明すると、いま、エンジン回転数N1で、過給領域Yにあり、目標トルクが符号(カ)であるとする。目標トルク(カ)は、過給機5の目標通りの駆動で得られる過給トルクで達成されている。そのとき、蓄電装置15の蓄電量SOCが減り続けて、過給機5の駆動力が低下し、過給トルクが符号Tb′にまで低減し、過給領域Yで達成される全トルクが符号(キ)まで低下したとする。すると、エンジン1の全出力トルク(キ)と走行抵抗1との差である余裕トルクが少なくなり、運転者の高出力要求・加速要求に対して過給不足・トルク不足が発生する。
これを、同じ運転状態であってもより低速段で走行するように変速特性を補正すると、図中矢印で示したように、エンジン回転数がN2まで上昇し、その結果、エンジン1の高回転領域の使用機会が増えて、運転者がエンジン1に対して要求する高出力(符号ク)が、電動過給機5の駆動を抑制して(低減した過給トルクTb′だけで済む)、エンジン1の単独出力(Temax)だけで大部分のトルクが確保されるようになる。しかも、エンジン1の全出力トルク(ク)と走行抵抗2との差である余裕トルクが回復して、運転者の高出力要求・加速要求に良好に応えることができる。
加えて、ステップS34及び図11から明らかなように、蓄電装置15の蓄電量SOCが少ないほど(換言すれば、過給不足・アシストトルク不足の問題が起こり勝ちとなるほど)、自動変速機40の変速特性を、その補正の度合いを大きくして、補正するから、上記蓄電装置15の蓄電量SOCが不足していることの影響が顕著化し難くなる。
さらに、同じくステップS34及び図11から明らかなように、エンジン回転数Neが低いほど(換言すれば、モータジェネレータ11の発電能力・発電量が少ないほど)、自動変速機40の変速特性を、その補正の度合いを大きくして、補正するから、モータジェネレータ11の発電能力・発電量が高められて、蓄電装置15の蓄電量SOCが増え、電動過給機5及びモータ11への駆動電力の供給不足の問題が抑制される。
次に、上記エンジン1のさらに他の制御動作を図15及び図16のフローチャートに従って説明する。前述のように、本実施形態に係るこのエンジン1では、過給領域Yやアシスト領域Zが高回転側には設定されておらず、比較的低回転側に設定されている。それゆえ、エンジン1の運転状態が上記過給領域Yやアシスト領域Zから非過給領域Xへ脱したときにおいても、該エンジン1の運転状態は、やはり低回転側にあることが多くなり、その結果、回転数の低いエンジン1によってモータジェネレータ11が発電機として駆動されることになり、該モータジェネレータ11が非過給領域Xにいる間に行う発電能力・発電量が概して少なくなって、電源システム14の蓄電装置15が十分に充電されなくなる可能性がある。
図15及び図16に示したフローチャートは、そのような不具合に対処するためのもので、まずステップS41で、各種信号を入力したうえで、ステップS42で、蓄電装置15の消費電力の分布を正規分布に近似して、その分布特性値σ(例えば分散値)を演算する。これは、図17に例示したように、過去直近の所定時間(例えば数分〜数十分)内に発生した蓄電装置15の電力消費頻度(回数)を消費電力の大きさで区分けして統計をとるもので、図示した正規分布曲線の幅を分布特性値σとする。つまり、分布特性値σが大きいほど、蓄電装置15からの大電力消費が頻繁に行われたことになり、そのことは、電動過給機5や車両動力源としてのモータジェネレータ11がより頻繁に駆動されたことを意味する。
次いで、ステップS43で、上記の分布特性値σに基づいて、上記蓄電装置15の目標蓄電量を増大補正する際の第1増大補正係数K1を演算する。この第1増大補正係数K1は、図18に例示したように、分布特性値σが大きいほど、大きな値に設定される(すなわち増大補正の度合いが大きくされる)。ただし、分布特性値σが所定値以下のときは、係数K1はゼロとされて、増大補正は行われなくなる。
次いで、ステップS44で、エンジン回転数Neに基づいて、第2増大補正係数K2を演算する。この第2増大補正係数K2は、図19に例示したように、エンジン回転数Neが低いほど、大きな値に設定される(すなわち増大補正の度合いが大きくされる)。ただし、エンジン回転数Neが所定値以上のときは、係数K2はゼロとされて、増大補正は行われなくなる。
次のステップS45〜S50は、ステップS51で第3増大補正係数K3を演算するためのパラメータ、すなわち運転者の加速要求度Kaccを求めるステップである。まずステップS45で、ナビゲーションシステム30からの情報等に基づき、車両の走行予定路前方の走行環境情報を入手する。そして、ステップS46で、走行予定路前方が勾配路(特に登りの勾配路)や高速道路の入口ランプであるか否かを判定し、YESの場合は、ステップS47に進んで、加速要求度Kaccを最大値の1に設定する(登坂や合流のため加速要求度が高いと判断されるからである)。
一方、上記ステップS46でNOの場合は、ステップS48に進んで、走行予定路前方が渋滞中か否かを判定し、YESの場合は、ステップS49に進んで、加速要求度Kaccを最小値のゼロに設定する(減速又は停車のため加速要求度が低いと判断されるからである)。
これらに対し、上記ステップS48でNOの場合は、ステップS50に進んで、走行予定路前方の車両の平均加速度を、自車の最大加速度で除算した値を加速要求度Kaccとする。なお、この場合、走行予定路前方の車両の平均加速度としては、実際にただいま現在、走行予定路前方を走行する他車の平均加速度(現在値)を採用してもよいし、あるいは過去に自車がいまから走行しようとする走行予定路前方を走行したときの平均加速度(自車の実績値)を採用してもよい。
そして、いずれの場合も、ステップS51で、上記の加速要求度(近い将来における加速要求度)Kaccに基づいて、第3増大補正係数K3を演算する。この第3増大補正係数K3は、図20に例示したように、加速要求度Kaccが大きいほど、大きな値に設定される(すなわち増大補正の度合いが大きくされる)。ただし、加速要求度Kaccがゼロであっても、係数K3はゼロとされない。
次いで、ステップS52で、蓄電装置15の内部抵抗変化等から、該蓄電装置15の劣化度を検出したうえで、ステップS53で、上記の蓄電装置15の劣化度に基づいて、第4増大補正係数K4を演算する。この第4増大補正係数K4は、図21に例示したように、劣化度が大きいほど、大きな値に設定される(すなわち増大補正の度合いが大きくされる)。ただし、劣化度が所定値以下のときは、係数K4はゼロでない所定の最小値に固定される。
そして、最終的に、ステップS54で、図中の式に従い、蓄電装置15の目標蓄電量のベース値Qo(例えば最大蓄電量の80%等)を、上記各増大補正係数K1〜K4を用いて増大補正した値を、最終的な蓄電装置15の目標蓄電量Qに設定する。
そして、ステップS55で、エンジン1の運転状態が過給領域Y又はモータアシスト領域Zにあるか否かを判定し、その結果YESの場合は、ステップS56に進んで、前述の図3に基づくエンジン1の出力制御で述べた過給領域Y制御(電動過給機5の駆動)又はモータアシスト領域Z制御(モータ11の駆動)を実行する。一方、NOの場合(エンジン1の運転状態が非過給領域Xにある場合)は、ステップS57に進んで、蓄電装置15の蓄電量が上記の最終的な目標蓄電量Qになるようにモータジェネレータ11を発電機として駆動制御し、その後、ステップS58で、同じく前述の図3に基づくエンジン1の出力制御で述べた非過給領域X制御(自然吸気によるエンジン1制御)を実行する。
以上のように、ステップS43及び図18から明らかなように、電動過給機5の駆動、及びモータ11の駆動の頻度σが大きいほど(換言すれば、過給領域Y及びアシスト領域Zでの延べの滞在時間が長いほど、あるいは、非過給領域Xにおいてモータジェネレータ11を発電機として駆動して蓄電装置15を充電する機会が少ないほど)、上記蓄電装置15の目標蓄電量Qを増大補正するから、該蓄電装置15の蓄電量が増えて、電動過給機5及び車両動力源として駆動するモータジェネレータ11への電力不足の問題が未然に防止される。
加えて、ステップS44及び図19から明らかなように、モータジェネレータ11が非過給領域Xにおいて発電機として駆動されるときのエンジン回転数Neが低いほど(換言すれば、モータジェネレータ11の発電能力・発電量が少ないほど)、やはり上記蓄電装置15の目標蓄電量Qを増大補正するから、たとえ電動過給機5及びモータ11が、比較的低回転側の領域Y,Zで駆動されるようになっていても、やはり上記蓄電装置15の蓄電量が増えて、電動過給機5及びモータ11への電力不足の問題が未然に防止される。
しかも、ステップS51及び図20から明らかなように、近い将来にエンジン1に対してなされる加速要求度Kaccが大きいほど、蓄電装置15の目標蓄電量Qの増大補正の度合いを大きくするから、近い将来に駆動させることになる電動過給機5及びモータ11に電力を供給する上記蓄電装置15の蓄電量を予め十分多く確保しておくことができ、上記電動過給機5及びモータ11への電力不足の問題が確実に未然に防止できる。
さらに、ステップS53及び図21から明らかなように、蓄電装置15の劣化度が大きいほど、該蓄電装置15の目標蓄電量Qの増大補正の度合いを大きくするから、該蓄電装置15の容量不足を十分補って、電動過給機5及びモータ11への電力不足の問題が確実に抑制される。
次に、上記エンジン1のさらに他の制御動作を図22及び図23のフローチャートに従って説明する。このように、本実施形態に係るこのエンジン1では、電動過給機5の回転駆動により、モータ11に比べて大きなトルク増大が図れるが、前述したように、電動過給機5のほうがモータ11に比べて概して回転駆動の応答遅れの程度が大きいという問題がある。また、その電動過給機5の過給の応答遅れは、回転駆動が停止している状態から駆動が開始されるときに大きく現われ、例えば電動過給機5が所定の低回転(アイドル回転)で予回転していると、応答遅れは抑制される。また、電動過給機5の過給の応答遅れは、吸気通路2の圧力応答性にも大きく起因する。
そこで、電動過給機5による加速要求頻度の高い状態では、予め過給機5のモータ4を予回転させておき、これにより過給要求時の応答性を改善する。その場合に、予回転数は、加速要求頻度が高いほど高い値に設定する。また、蓄電装置15の蓄電量SOCが少ないときや、過給機5のモータ4の温度が高いとき等は、予回転数は、低い値に設定する。
予回転が必要な状況としては、例えば、走行環境の点からは、高速道路の入口ランプ(ナビゲーションシステム30の情報が利用できる)、登り勾配路(同じくナビゲーションシステム30の情報が利用できる。あるいは勾配センサを備えてもよい)、信号機の間隔が短くて発進・停止の頻度が多いとき(同じくナビゲーションシステム30の情報が利用できる。あるいは当該車両の周辺のインフラ情報を受信するインフラ情報受信手段−例えば専用アンテナ等で構成される−を備えてもよい)、等が挙げられ、また運転者の運転操作の点からは、例えば、追い越し準備をしているとき(走行中に、車速を落とす操作をせずに、ギヤを低速段にシフトダウンする操作をしたようなとき)、スポーツ走行時、空吹かし(停車中等に)しているとき、等が挙げられる。
電動過給機5の予回転の具体的な制御手法としては、例えば、スロットル弁7の上流の吸気圧を、上記予回転数によって、及びバイパス通路9上のリリーフ弁10の開度調整による過給空気循環量の制御によって、目標値に調整する。
ただし、走行環境や運転者の運転操作等から、電動過給機5の予回転が必要と判断しても、実際にはなかなか過給領域Yに移行せず、徒に電動過給機5を予回転させておくのは無駄であり、またモータ4も過熱するので、例えば、過給空気循環時間が長くなった場合や、吸入新気の温度が高い場合は、循環による温度上昇が大きいと判断して、スロットル弁7の上流の吸気温度に基づいて、上記予回転数及びリリーフ弁10の開度を小さい値に補正する。
以上のような予回転制御を行うことにより、吸気通路2における電動過給機5とスロットル弁7との間の容積分の圧力応答が改善され、また、過給領域Yやアシスト領域Zへの移行時に電動過給機5を目標回転数まで本回転するときの回転駆動の応答性が改善される。
また、電動過給機5を予回転してから、実際の加速時には目標回転数まで本回転するので、モータ4の起電力が2回に分散されて、蓄電装置15の急激な電圧降下が緩和できる。
図22及び図23に示したフローチャートは、上記のような予回転制御を実行するためのもので、まずステップS61で、各種信号を入力したうえで、ステップS62で、電動過給機5の予回転が必要か否かの判定を行う。この判定は、前述したように、走行環境の点からは、例えば、ナビゲーションシステム30からの信号等に基づいて、車両が高速道路の入口ランプに差し掛かっているときや、登り勾配路に差し掛かっているとき、あるいは信号機の間隔が短くて発進・停止の頻度が多い走行環境を走行しているとき等、つまり、車両が将来過給頻度の高い走行環境を走行することが予測されたときに、電動過給機5の予回転が必要であると判断する。
また、運転者の運転操作の点からは、例えば、運転者が追い越し準備をしているときや、スポーツ走行をしているとき、あるいは空吹かしをしているとき等、つまり、運転者が将来過給要求(加速要求)をすることが検知されたときに、電動過給機5の予回転が必要であると判断する。
次いで、ステップS63で、前述の図10に例示したポアソン分布特性値λに基づいて、予回転目標吸気圧Pbrvを算出する。この予回転目標吸気圧Pbrvは、図24に例示したように、分布特性値λが大きいほど、大きな値に算出される。ただし、分布特性値λが所定値以下のときは、予回転目標吸気圧Pbrvはゼロとされて、電動過給機5の予回転は行われなくなる。
次いで、ステップS64で、蓄電装置15の蓄電量SOCに基づいて、上記予回転目標吸気圧Pbrvに対する第1補正係数Krv1を演算する。この第1補正係数Krv1は、図25に例示したように、蓄電装置15の蓄電量SOCが多いほど、大きな値に設定される。ただし、蓄電量SOCが所定値以下のときは、第1補正係数Krv1はゼロとされて、電動過給機5の予回転は行われなくなる。蓄電量SOCのそれ以上の減少を回避するためである。
次いで、ステップS65で、電動過給機5のモータ4の温度に基づいて、第2補正係数Krv2を演算する。この第2補正係数Krv2は、図26に例示したように、モータ温度が所定値以上のときは、ゼロとされて、電動過給機5の予回転は行われなくなる。モータ4の過熱を防ぐためである。
次いで、ステップS66で、上記予回転目標吸気圧Pbrvに第1、第2の補正係数Krv1,Krv2を乗算することにより、電動過給機5の最終的な予回転目標吸気圧Pbrvoを算出する。
そして、ステップS67で、上記の最終予回転目標吸気圧Pbrvoを達成するように、モータ4の予回転数及びリリーフ弁10開度を設定し、次いで、ステップS68で、電動過給機5の予回転(及びリリーフ弁10の開度調整)を開始・実行する。
次いで、ステップS69で、エンジン1の運転状態が過給領域Yにあるか否かを判定し、YESの場合は、そのままステップS74に進んで、過給領域Y制御を行う(過給機5を正規の目標回転に向けて本回転する:図3におけるステップS23)。
一方、NOの場合、つまり非過給領域Xにある間は、ステップS70に進んで、吸気温度をモニターし、ステップS71で、その実吸気温度が所定の限界温度を超えて高いか否かを判定する。その結果、YESの場合は、ステップS73に進んで、予回転数及びリリーフ弁10開度を低減したうえで、ステップS68に戻って予回転を継続する。
これに対し、上記ステップS71でNOの場合は、ステップS72で、予回転をしている実時間が所定の限界時間を超えて長いか否かを判定する。その結果、YESの場合は、やはりステップS73に進んで、予回転数及びリリーフ弁10開度を低減したうえで、ステップS68に戻って予回転を継続する。
これに対し、上記ステップS71及びS72でいずれもNOの場合に限り、ステップS73をスキップして、ステップS68に戻って予回転を継続する。
以上のように、ステップS62から明らかなように、車両が将来過給頻度の高い走行環境を走行することが予測されたときは、車両がそのような走行環境に突入する前に(ステップS69でYESと判定される前に)、電動過給機5が予め所定の回転数で駆動されるから(ステップS68)、車両が上記走行環境に突入したときの上記電動過給機5のトルクの立上りの遅れが抑制され、電動過給機5の過給応答性が改善する。
また、同じく、ステップS62から明らかなように、運転者が将来過給要求をすることが検知されたときは、運転者がそのような過給要求をする前に(ステップS69でYESと判定される前に)、電動過給機5が予め所定の回転数で駆動されるから(ステップS68)、運転者が上記過給要求をしたときの上記電動過給機5のトルクの立上りの遅れが抑制され、これによっても電動過給機5の過給応答性が改善する。
以上説明した実施形態は、本発明を実施するための最良の形態ではあるが、特許請求の範囲を逸脱しない限り、なお種々の変更が可能なことはいうまでもない。例えば、モータジェネレータ11をエンジン1と自動変速機40との間に介設してもよく、また、モータジェネレータ11に代えて走行用モータと発電機とをそれぞれ別々に備えてもよい。さらに、図9に示した制御第2例において、自動変速機40の変速特性を同じ運転状態であってもより低速段で走行するように補正する方策として、変速ラインのシフトだけでなく、例えば、高速段の使用を禁止すること(シフトリミッタ)や、最終補正量Sftが所定値を超えて大きくなったときにOD(オーバードライブ)offすること等も好ましく採用し得る。