次に、この発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.第3実施例:
D.第4実施例:
E.変形例:
A.第1実施例:
図1は、本発明の実施例としての車両の構成を示す概略図である。この車両900は、駆動源としてエンジン100を有している。このエンジン100は、シリンダ180と、シリンダ180内を上下に摺動するピストン190とを有している。シリンダ180には、吸入空気が流入する吸気ポート133と、排気ガスが流出する排気ポート135とが設けられている。
吸気ポート133には吸入空気を導く吸気通路12が接続されており、排気ポート135には排気ガスが通過する排気通路16が接続されている。排気通路16の下流には、排気ガスに含まれる大気汚染物質を浄化するための触媒26と、過給器50のタービン52とが設けられている。排気通路16内を通過する排気ガスはタービン52を回転させた後、大気に放出される。また、吸気通路12には、過給器50のコンプレッサ54が設けられている。コンプレッサ54は、タービンシャフト56を介してタービン52に接続されており、排気ガスによってタービン52が回転するとコンプレッサ54も回転する。その結果、コンプレッサ54は、エアクリーナ20から吸い込んだ空気を加圧した後、吸気ポート133に向かって圧送する。
コンプレッサ54で加圧すると空気温度が上昇するので、吸入空気を冷却するために、コンプレッサ54の下流側にはインタークーラ62が設けられている。また、吸気通路12内にはサージタンク60や、スロットル弁22も設けられている。サージタンク60は、燃焼室が空気を吸い込んだときに生じる圧力波を緩和させる作用を有しており、またスロットル弁22は電動アクチュエータ24によって適切な開度に設定されて、吸入空気量を調整する機能を有している。また、吸気通路12には、コンプレッサ54の上流側と下流側とを結ぶバイパス流路13が設けられている。バイパス流路13内にはエアバイパスバルブ17が設けられている。エアバイパスバルブ17は、電動アクチュエータ15によって適切な開度に設定されて、コンプレッサ54の下流側の圧力が急上昇することを抑制する機能を有している。
また、エンジン100は、バッテリ154を有している。このバッテリ154には、過給機電子駆動ユニット(EDU)160が接続されている。過給機電子駆動ユニット160には、過給器50の電動機70が接続されている。この電動機70は、過給器50のタービンシャフト56の回転をアシストするために利用される。電動機70は、タービンシャフト56に固定された永久磁石72と、永久磁石72を囲むように配置されたコイル74と、を有している。永久磁石72が固定されているタービンシャフト56はロータ(回転子)として機能し、コイル74はステータ(固定子)として機能する。
過給機電子駆動ユニット160は、バッテリ154の電力を電動機70に供給することによって、電動機70を駆動する。電動機70の駆動によって、タービンシャフト56の回転速度を高めることができる。これにより、コンプレッサ54の回転速度も高まるので、吸気ポート133に供給される空気圧(過給圧)を上昇させることができる。なお、このような電動機70を駆動する過給機電子駆動ユニット160としては、種々の電子回路を採用することができる。
また、エンジン100は、エンジン電子制御ユニット30(以下「EECU30」とも呼ぶ)を有している。エンジン100の動作は、EECU30によって制御される。EECU30は、CPU(中央演算処理装置)とメモリ(RAM、ROM)と、タイマと、種々の信号を処理するためのA/DコンバータとD/Aコンバータと、を有している。CPUは、プログラムを実行することによって、エンジン100を制御するための種々の機能を実現する。なお、過給機電子駆動ユニット160の動作は、EECU30によって制御される。
また、エンジン100は、位置センサ210と、車速センサ220と、アクセルセンサ230と、ブレーキセンサ240と、ステアリングセンサ250と、距離センサ260と、混雑度センサ270と、を有している。EECU30は、これらのセンサ210〜270からの信号に基づいて過給機電子駆動ユニット160を制御することによってプレアシストを実行する。プレアシストとは、ユーザによる加速要求の発行前に電動機70を駆動させることによって過給圧を高める処理である。
位置センサ210は、車両900の現在位置を検出するセンサである。位置センサ210としては、例えば、GPS(Global Positioning System)を採用可能である。車速センサ220は、車両900の速度を検出するセンサである。アクセルセンサ230は、アクセルペダル(図示省略)の踏み込み量を検出するセンサである。ブレーキセンサ240は、ブレーキペダル(図示省略)の踏み込み量を検出するセンサである。ステアリングセンサ250は、ステアリングホイール(図示省略)の操舵角を検出するセンサである。距離センサ260は、車両900の前方の障害物(例えば、車両900の前方を走行中の別の車両)との距離を検出するセンサである。距離センサ260としては、例えば、電波や光線等を利用したレーダ装置を採用可能である。混雑度センサ270は、車両900が走行中の道路の混雑度を検出するセンサである。混雑度センサ270としては、例えば、VICS(Vehicle Information and Communication System)を採用可能である。VICSでは、道路の混雑度が3段階(「順調」「混雑」「渋滞」)で表される。
また、EECU30のROMには、プレアシストを実行するための可能性評価モジュール300と、プレアシスト実行モジュール310とが格納されている。これらのモジュールは、いずれも、CPUによって実行されるプログラムである。なお、ROMには、エンジン100制御用の他のモジュール(プログラム)やデータも格納されているが、図示が省略されている。
図2は、プレアシストの手順を示すフローチャートである。最初のステップS100では、可能性評価モジュール300(図1)が、確率fpを評価する。図3は、プレアシスト実行の様子を示す概略図である。ステップS100(図2)では、まず、可能性評価モジュール300は、図3に示す各パラメータ値P10〜P80を取得する。自車位置P10は、車両900の現在位置(例えば、緯度と経度)であり、位置センサ210(図1)から取得される。車速P20は、車両900の移動速度であり、車速センサ220から取得される。アクセル操作量P30は、アクセルペダルの踏み込み量であり、アクセルセンサ230から取得される。アクセル速度P35は、アクセル操作量P30の増大する速度であり、アクセル操作量P30の単位時間当たりの変化量から算出される。ブレーキ操作量P40は、ブレーキペダルの踏み込み量であり、ブレーキセンサ240から取得される。ブレーキ速度P45は、ブレーキ操作量P40の増大する速度であり、ブレーキ操作量P40の単位時間当たりの変化量から算出される。ステアリング操作量P50は、ステアリングホイールの操舵角であり、ステアリングセンサ250から取得される。操舵角速度P55は、ステアリング操作量P50がゼロから離れる速度(角速度)であり、ステアリング操作量P50の単位時間当たりの変化量から算出される。車間距離P60は、車両900の前方を走行中の車両(前車)との距離であり、距離センサ260から取得される。前車との速度差P70は、前車と自車(車両900)との速度差であり、車間距離P60の単位時間当たりの変化量から算出される。混雑度P80は、混雑度センサ270から取得される。
次に、可能性評価モジュール300は、取得したパラメータ値P10〜P80を用いて、確率fpを評価する。確率fpとは、現時点からの所定の時間内にユーザによる加速要求が発行される確率を意味している。所定の時間は、プレアシストを実行する場合に電動機70の駆動が持続される時間に設定されている。電動機70の連続駆動時間が過剰に長いと、電動機70が劣化するおそれがある。そこで、本実施例では、プレアシストを実行する場合には、設定された持続時間の間のみ、電動機70が駆動される。そこで、確率fpとして、現時点からの持続時間内に加速要求が発行される確率を採用している。なお、後述するように、実際の持続時間は、確率に応じた可変値である。そこで、本実施例では、持続時間が値を取り得る範囲の内の最短時間(例えば、数秒程度)を用いて、確率fpの評価が行われる。なお、確率fpは、ユーザによる加速要求が発行される可能性の高さを示す指標値であればよく、実験的に得られる確率とは一致していなくてもよい。また、確率fpの評価のための所定時間は、持続時間と一致していなくてもよい。ただし、確率fpの精度が過剰に低くなることを抑制するためには、所定時間として、プレアシスト(電動機70の駆動)の持続可能な時間を採用することが好ましい。
本実施例では、確率fpは、以下の式(F1)に従って算出される。
fp = kp * kv * ka * kb * ks * kd * kr * kj ...(F1)
後述するように、各パラメータ確率kp、kv、ka、kb、ks、kd、kr、kjは、それぞれ、車両900の動作状態に関するパラメータ値P10〜P80(図3)に基づいて決定される確率を表している。また、各パラメータ確率kp〜kjは、それぞれ、0以上1以下の範囲の値に設定される。また、この式F1では、確率fpは、各パラメータ確率kp〜kjを乗じた値に設定される。従って、確率fpも、0以上1以下の範囲の値となる。なお、各パラメータ確率kp〜kjの詳細については、後述する。
確率fpが決定されたら、可能性評価モジュール300は、次のステップS110(図2)で、プレアシストを開始するか否かを判定する。確率fpが所定の閾値PLよりも小さい場合には、可能性評価モジュール300は、現時点ではプレアシストを開始しないと判断し、プレアシスト実行モジュール310に対するプレアシスト実行命令を発行せずに、ステップS100に戻る。これにより、プレアシストの実行が保留される。そして、可能性評価モジュール300は、確率fpが閾値PL以上となるまで、確率fpを評価する処理(ステップS100、S110)を繰り返し実行する。なお、プレアシスト実行モジュール310によるプレアシストの実行を保留する方法としては、任意の方法を採用できる。例えば、可能性評価モジュール300が、保留命令をプレアシスト実行モジュール310に対して発行してもよい。
確率fpが閾値PL以上である場合には、可能性評価モジュール300は、プレアシストを開始すると判断する。そして、次のステップS120で、可能性評価モジュール300は、プレアシストを開始すべき命令をプレアシスト実行モジュール310に対して発行する。この際、可能性評価モジュール300は、決定された確率fpを、プレアシスト実行モジュール310に提供する。
プレアシスト実行モジュール310は、受け取った確率fpに基づいて、回転速度と持続時間とを決定する。図3のグラフG1は、確率fpと回転速度RVと持続時間Dとの対応関係を示している。グラフG1に示すように、持続時間Dは、確率fpが低いほど長い値に設定される。この理由は、確率fpが低い場合に電動機70の駆動時間(持続時間D)を長くすれば、プレアシストを開始したにも拘わらずにユーザによる加速要求が発行されること無く持続時間Dが経過することを抑制することができるからである。ただし、持続時間Dを長くすると、電動機70による発熱量も増大する。そこで、電動機70の劣化を抑制するために、回転速度RVは、持続時間Dが長いほど、すなわち、確率fpが低いほど、低い値に設定される。なお、これらの対応関係は、予め、EECU30(図1)のROMに格納されている。
プレアシスト実行モジュール310は、回転速度RVと持続時間Dとを決定したら、ユーザがアクセルペダル(図示省略)を踏み込まなくても、電動機70を駆動する。この際、プレアシスト実行モジュール310は、電動機70を、決定された持続時間Dの間だけ、決定された回転速度RVで駆動する。このような駆動は、プレアシスト実行モジュール310が過給機電子駆動ユニット160(図1)を制御することによって行われる。過給機電子駆動ユニット160は、プレアシスト実行モジュール310の指示に従って、回転速度RVを実現するための電力を、持続時間Dの間だけ電動機70に供給する。その結果、電動機70は、持続時間Dの間、回転速度RVで駆動される。これにより、持続時間Dの間は過給圧が高い値に維持される。
この持続時間Dの間にユーザがアクセルペダルを踏み込んだと仮定する。この持続時間Dの間は、過給圧が既に高められているので、エンジン100の出力はアクセルペダルの踏み込みに応じて素早く上昇する。その結果、ユーザの加速要求に対する内燃機関の応答速度の低下を抑制することができる。また、この場合には、タービン52(図1)が排気ガスによって駆動され、これによってコンプレッサ54も駆動される。その結果、プレアシスト実行モジュール310が電動機70の駆動を停止した後も、排気ガスのエネルギによって駆動されるコンプレッサ54が、過給圧を高める。
一方、持続時間Dの間にユーザがアクセルペダルを踏み込まなかったと仮定する。この場合には、過給器50の駆動速度は高められるが、エンジン100に対する燃料の供給量は増やされない。従って、エンジン100の出力がユーザの意図に反して高められることは抑制される。
持続時間Dが経過したら、プレアシスト実行モジュール310は、電動機70の駆動を停止し、プレアシストを終了する。そして、処理は、再びステップS100に移行する。以後、ステップS100〜S120の処理が繰り返し実行される。なお、ユーザがアクセルペダルを強く踏み込んでいる場合のように、過給器50の実際の回転速度(すなわち電動機70の実際の回転速度)が、プレアシストの開始時点で、既に、プレアシスト用の回転速度RV以上である場合がある。この場合には、プレアシスト実行モジュール310は、プレアシストを実行せずに処理を終了することが好ましい。ここで、電動機70に回転速度センサ(図示せず)を設け、さらに、プレアシスト実行モジュール310が、この回転速度センサから実際の回転速度を取得すればよい。
なお、プレアシスト実行の後は、可能性評価モジュール300は、電動機70の温度が十分に冷えた後に(例えば、電動機70の温度が所定温度まで下がった後に)、図2の処理を再開することが好ましい。
自車位置確率kp:
次に、各パラメータ確率kp〜kjについて説明する。図4は、自車位置確率kpを示す説明図である。自車位置確率kpは、自車位置P10のカテゴリに応じた確率を表している。図4(A)は、地図MAPを示している。この地図MAPには、5つの道路R1〜R5が示されている。これらの道路の内、第1道路R1〜第4道路R4は一般道であり、第5道路R5は高速道路である。また、これらの道路R1〜R5は、複数の領域に分割されている。各領域は、複数のカテゴリに分類されている。図4(A)では、各領域にカテゴリを示すハッチングが付され、また、各領域にカテゴリID(角括弧[]で囲まれた数字)が示されている。図4(B)は、識別番号IDと、カテゴリ名と、自車位置確率kpと、ハッチングと、の対応関係を示す表である。なお、通常部分(ID=99)には、ハッチングは付されていない。
第1のカテゴリは「交差点直後(ID=1)」である。地図MAP上では、道路R3、R4のうちの交差点を通過した直後の部分領域が「交差点直後」に分類されている。信号待ちで停止していた車両は、しばしば、交差点を通過した後に巡航速度まで加速する。従って、このような「交差点直後」の領域では、ユーザによる加速要求が発行される可能性が比較的高いと推定される。従って、「交差点直後」の自車位置確率kpが比較的高い値「0.8」に設定されている。なお、本実施例では、一般道では車両が道路の左側を走行することとしている。従って「交差点直後」の領域は、道路のうちの交差点を通過した後の左側部分に設定されている。
第2のカテゴリは「細街路(ID=2)」である。地図MAP上では、比較的細い道路R1、R2が「細街路」に分類されている。このような細い道路では、安全のために加速要求が発行されない場合が多い。従って、「細街路」の自車位置確率kpが比較的低い値「0.3」に設定されている。
第3のカテゴリは「急カーブ(ID=3)」である。地図MAP上では、第4道路R4の急カーブを形成する部分領域が「急カーブ」に分類されている。急カーブでは、安全のために加速要求が発行されない場合が多い。従って、「急カーブ」の自車位置確率kpが比較的低い値「0.2」に設定されている。
第4のカテゴリは「上り坂(ID=4)」である。地図MAP上では、第4道路R4の上り坂を形成する部分領域が「上り坂」に分類されている。上り坂では、速度を維持するために加速要求が発行される場合が多い。従って「上り坂」の自車位置確率kpが比較的高い値「0.9」に設定されている。
第5のカテゴリは「下り坂(ID=5)」である。地図MAP上では、第4道路R4の下り坂を形成する部分領域が「下り坂」に分類されている。下り坂では、速度が過剰に速くなることを抑制するために加速要求が発行されない場合が多い。従って「下り坂」の自車位置確率kpが比較的低い値「0.2」に設定されている。
第6のカテゴリは、「高速道路合流地点付近(ID=6)」である。地図MAP上では、高速道路R5の合流地点付近の部分領域が「高速道路合流地点付近」に分類されている。このような合流地点付近では、高速道路に合流する車両が、しばしば、巡航速度まで加速する。従って、「高速道路合流地点付近」の自車位置確率kpが比較的高い値「0.9」に設定されている。
最後のカテゴリは「通常部分(ID=99)」である。地図MAP上では、上述の6つのカテゴリのいずれにも分類されなかった残りの領域が「通常部分」に分類される。この「通常部分」の自車位置確率kpは、中間的な値「0.5」に設定されている。
以上のように、自車位置確率kpは自車位置P10のカテゴリに基づいて決定されるので、自車位置確率kpは、車両900が走行中の地点の種類に応じた精度のよい確率(加速要求が発行される確率)を表すことが可能である。また第1実施例では、自車位置確率kpが高いほど確率fpも高い値に決定されるので、確率fpの精度を高めることが可能となる。なお、カテゴリと自車位置確率kpとしては、図4の例に限らず任意のカテゴリと確率とを採用可能である。
車速確率kv:
図5は、車速確率kvと車速P20との対応関係を示すグラフである。横軸は車速P20を示し、縦軸は車速確率kvを示している。図5中の第1車速確率kv1は、一般道路における係数を表し、第2車速確率kv2は、高速道路における係数を表している。
車速P20が一般道での法定最高速度vn以下の範囲では、車速P20が速いほど第1車速確率kv1が小さな値に設定される。この理由は、車速P20が速いほど、ユーザによる加速要求が発行される可能性が小さいからである。そして、法定最高速度vnで第1車速確率kv1は最小となり、車速P20が法定最高速度vn以上の範囲では、第1車速確率kv1は最小値に維持される。これは、法定最高速度vnを超えてさらに加速する可能性が小さいからである。第2車速確率kv2についても同様である。ただし、第2車速確率kv2は、一般道での法定最高速度vnの代わりに、高速道路での法定最高速度vhに基づいて設定されている。
可能性評価モジュール300は、これらの車速確率kv1、kv2を、自車位置P10に応じて使い分ける。EECU30のROMには、図4(A)の地図MAPのような、一般道路と高速道路とを識別する道路地図が予め格納されている(図示省略)。可能性評価モジュール300は、この道路地図を参照することによって、自車位置P10が一般道路上なのか、高速道路上なのかを判別する。
以上のように、車速確率kvは、車速P20に基づいて決定されるので、車速確率kvは、車速P20に応じた精度のよい確率(加速要求が発行される確率)を表すことが可能である。また第1実施例では、車速確率kvが高いほど確率fpも高い値に決定されるので、確率fpの精度を高めることが可能となる。また、第1実施例では、一般道路と高速道路とで異なる車速確率kvが利用されるので、道路の種類に応じたより精度の高い確率fpの評価が可能となる。ただし、道路の種類に拘わらずに共通の車速確率kvを利用してもよい。
なお、車速確率kvと車速P20との対応関係としては、車速P20が速いほど車速確率kvが小さくなる任意の関係を採用可能である。例えば、車速P20の変化に対して車速確率kvがステップ状に変化してもよい。ここで、ある入力値Xの変化に対してある出力値Yがステップ状に変化するとは、入力値Xの一部の範囲で出力値Yが一定値である場合と、入力値Xの変化に対して出力値Yが不連続的に変化する場合とを含む広い概念を意味している。「ステップ状に変化する」の意味は、後述する他の対応関係についても同じである。また、車速確率kvの最小値がゼロであってもよく、最大値が1より小さくてもよい。また、いずれの場合も、車速P20が法定最高速度以上の範囲では、車速確率kvが最小値に維持されることが好ましい。
アクセル操作確率ka:
図6、図7は、アクセル操作確率kaを説明するグラフである。アクセル操作確率kaは、アクセル量確率ka1とアクセル速度確率ka2とを乗じた値に設定される(ka = ka1 * ka2)。
図6は、アクセル量確率ka1とアクセル踏み込み量(アクセル操作量P30)との対応関係を示すグラフである。横軸がアクセル操作量P30を示し、縦軸がアクセル量確率ka1を示している。アクセル量確率ka1は、アクセル操作量P30が大きいほど、小さな値に設定される。この理由は、アクセル操作量P30が大きいほど、アクセルがさらに踏み込まれる可能性が小さいからである。なお、ユーザがアクセルペダルから足を離した場合にアクセル操作量P30はゼロになり、アクセルペダルを踏むユーザの力が強いほど、アクセル操作量P30は大きくなる。
図7は、アクセル速度確率ka2とアクセル速度P35との対応関係を示すグラフである。横軸はアクセル速度P35を示し、縦軸はアクセル速度確率ka2を示している。アクセル速度P35とは、アクセル操作量P30の増大する速度を意味している。例えば、アクセル速度P35がゼロであることは、アクセル操作量P30が一定値に維持されることを意味する。アクセル速度P35がゼロより大きいことは、アクセル操作量P30が増大していることを意味する。ユーザがアクセルペダルを踏む力を強める時に、アクセル速度P35はゼロよりも大きな値となる。逆に、アクセル速度P35がゼロよりも小さいことは、アクセル操作量P30が減少していることを意味する。
ここで、アクセル速度確率ka2とアクセル速度P35との対応関係は、アクセル速度P35が正値である場合のアクセル速度確率ka2が、アクセル速度P35が負値である場合のアクセル速度確率ka2よりも大きくなるように、設定されている。この理由は、アクセルペダルを踏む力を強めているユーザがその力をさらに強める可能性は高いが、逆に、アクセルペダルを踏む力を弱めているユーザがその力を強める可能性は低いからである。
アクセル操作確率kaは、以上のようなアクセル量確率ka1とアクセル速度確率ka2とを乗じた値に設定される。その結果、アクセル操作量P30が小さく、かつ、アクセル操作量P30が増大しようとしている場合にアクセル操作確率kaは大きな値に設定される。逆に、アクセル操作量P30が減少しようとしている場合にアクセル操作確率kaは小さい値に設定される。その結果、アクセル操作確率kaは、アクセル操作量P30に応じた精度のよい確率(加速要求が発行される確率)を表すことが可能である。また第1実施例では、アクセル操作確率kaが高いほど確率fpも高い値に決定されるので、確率fpの精度を高めることが可能となる。
なお、アクセル量確率ka1とアクセル操作量P30との対応関係としては、アクセル操作量P30が大きいほどアクセル量確率ka1が小さな値に設定される任意の関係を採用可能である。例えば、アクセル操作量P30の変化に対してアクセル量確率ka1がステップ状に変化してもよい。また、アクセル量確率ka1の最小値がゼロであってもよく、最大値が1より小さくてもよい。
また、アクセル速度確率ka2とアクセル速度P35との対応関係としては、アクセル速度P35が小さいほどアクセル速度確率ka2が小さな値に設定される任意の関係を採用可能である。例えば、アクセル速度P35の変化に対してアクセル速度確率ka2がステップ状に変化してもよい。また、アクセル速度確率ka2の最小値がゼロであってもよく、最大値が1より小さくてもよい。
ブレーキ操作確率kb:
図8、図9は、ブレーキ操作確率kbを説明するグラフである。ブレーキ操作確率kbは、ブレーキ量確率kb1とブレーキ速度確率kb2とを乗じた値に設定される(kb = kb1 * kb2)。
図8は、ブレーキ量確率kb1とブレーキ踏み込み量(ブレーキ操作量P40)との対応関係を示すグラフである。横軸がブレーキ操作量P40を示し、縦軸がブレーキ量確率kb1を示している。ブレーキ量確率kb1は、ブレーキ操作量P40が大きいほど、小さな値に設定される。この理由は、ブレーキ操作量P40が大きいほど、アクセルがさらに踏み込まれる可能性が小さいからである。また、図8の例では、ブレーキ操作量P40が所定の閾値Bth以上の場合には、ブレーキ量確率kb1がゼロに設定されている。この理由は、ブレーキ操作量P40が比較的大きい場合には、アクセルがさらに踏み込まれる可能性がほぼゼロだからである。なお、ユーザがブレーキペダルから足を離した場合にブレーキ操作量P40はゼロになり、ブレーキペダルを踏むユーザの力が強いほど、ブレーキ操作量P40は大きくなる。
図9は、ブレーキ速度確率kb2とブレーキ速度P45との対応関係を示すグラフである。横軸はブレーキ速度P45を示し、縦軸はブレーキ速度確率kb2を示している。ブレーキ速度P45とは、ブレーキ操作量P40の増大する速度を意味している。例えば、ブレーキ速度P45がゼロであることは、ブレーキ操作量P40が一定値に維持されることを意味する。ブレーキ速度P45がゼロより大きいことは、ブレーキ操作量P40が増大していることを意味する。ユーザがブレーキペダルを踏む力を強める時に、ブレーキ速度P45はゼロよりも大きな値となる。逆に、ブレーキ速度P45がゼロよりも小さいことは、ブレーキ操作量P40が減少していることを意味する。
ここで、ブレーキ速度P45がゼロ以上の範囲では、ブレーキ速度確率kb2がゼロに設定される。この理由は、ブレーキペダルを踏む力を強めているユーザが、アクセルペダルを踏む力を強める可能性がほぼゼロだからである。また、ブレーキ速度P45のゼロ以下の範囲内では、ブレーキ速度P45が小さいほどブレーキ速度確率kb2が大きな値に設定される。この理由は、ブレーキペダルを踏む力を弱める速度が速いほど(ブレーキ速度P45が小さいほど)、ユーザによる加速要求が発行される可能性が高いからである。
ブレーキ操作確率kbは、以上のようなブレーキ量確率kb1とブレーキ速度確率kb2とを乗じた値に設定される。その結果、ブレーキ操作量P40が小さく、かつ、ブレーキ操作量P40が減少しようとしている場合にブレーキ操作確率kbは大きな値に設定される。逆に、ブレーキ操作量P40が増大しようとしている場合にブレーキ操作確率kbは小さい値に設定される。その結果、ブレーキ操作確率kbは、ブレーキ操作量P40に応じた精度のよい確率(加速要求が発行される確率)を表すことが可能である。また第1実施例では、ブレーキ操作確率kbが高いほど確率fpも高い値に決定されるので、確率fpの精度を高めることが可能となる。
なお、ブレーキ量確率kb1とブレーキ操作量P40との対応関係としては、ブレーキ操作量P40が大きいほどブレーキ量確率kb1が小さな値に設定される任意の関係を採用可能である。例えば、ブレーキ操作量P40の変化に対してブレーキ量確率kb1がステップ状に変化してもよい。また、ブレーキ量確率kb1の最小値がゼロより大きくてもよく、最大値が1より小さくてもよい。
また、ブレーキ速度確率kb2とブレーキ速度P45との対応関係としては、ブレーキ速度P45が大きいほどブレーキ速度確率kb2が小さな値に設定される任意の対応関係を採用可能である。例えば、ブレーキ速度P45の変化に対してブレーキ速度確率kb2がステップ状に変化してもよい。また、ブレーキ速度確率kb2の最小値がゼロより大きくてもよく、最大値が1より小さくてもよい。なお、ブレーキ速度P45が正値である場合には、ブレーキ速度確率kb2がゼロであることが好ましい。
ステアリング操作確率ks:
図10、図11は、ステアリング操作確率ksを説明するグラフである。ステアリング操作確率ksは、ステアリング角確率ks1とステアリング速度確率ks2とを乗じた値に設定される(ks = ks1 * ks2)。
図10は、ステアリング角確率ks1と操舵角(ステアリング操作量P50)との対応関係を示すグラフである。横軸がステアリング操作量P50を示し、縦軸がステアリング角確率ks1を示している。ここで、ステアリング操作量P50は、直進方向をゼロとしたときの角度を意味している。また、ステアリング操作量P50が正値であることは、ステアリングが右方向に操作されたことを意味し、逆に、ステアリング操作量P50が負値であることは、ステアリングが左方向に操作されたことを意味している。
ステアリング角確率ks1は、ステアリング操作量P50がゼロから離れるほど小さな値に設定される。この理由は、車両900の進行方向の変化が大きいほど(すなわち、車両900の曲がる程度が大きいほど)、ユーザによる加速要求が発行される可能性が小さいからである。そして、ステアリング操作量P50の絶対値が所定の閾値ANth以上の範囲では、ステアリング角確率ks1はゼロに維持される。この理由は、車両900の進行方向が大きく変更される場合には、ユーザによる加速要求が発行される可能性がほぼゼロだからである。
図11は、ステアリング速度確率ks2と操舵角速度P55との対応関係を示すグラフである。操舵角速度P55とは、ステアリング操作量P50がゼロから離れる速度(角速度)を意味している。例えば、操舵角速度P55がゼロであることは、ステアリング操作量P50が一定値に維持されることを意味する。ユーザがステアリングを直進方向に戻す時に、操舵角速度P55はゼロよりも小さい値となる。逆に、ユーザが直進方向から遠ざかる方向にステアリングを回す時に、操舵角速度P55はゼロよりも大きい値となる。
ここで、ステアリング速度確率ks2は、操舵角速度P55がゼロから離れるほど小さな値に設定される。この理由は、ステアリング操作量P50の変化が大きいほど(ユーザによるステアリングの回転の速度が速いほど)、ユーザによる加速要求が発行される可能性が小さいからである。ただし、ステアリング速度確率ks2が同じ場合の操舵角速度P55は、操舵角速度P55の負の範囲での値の方が、正の範囲での値よりもゼロから遠い。すなわち、操舵角速度P55の負の範囲のうちの少なくとも一部においては、正の範囲と比べて、操舵角速度P55の絶対値が同じ場合のステアリング速度確率ks2がより大きな値に設定される。この理由は、ステアリングが直進方向に戻される場合には、直進方向から遠ざかる方向にステアリングが回される場合と比べて、ユーザによる加速要求が発行される可能性が高いからである。
ステアリング操作確率ksは、以上のようなステアリング角確率ks1とステアリング速度確率ks2とを乗じた値に設定される。その結果、ステアリング操作量P50が直進方向(ゼロ)に近い場合と、ステアリング操作量P50が直進方向(ゼロ)に近づこうとしている場合とに、ステアリング操作確率ksが大きな値に設定される。その結果、ステアリング操作確率ksは、ステアリング操作量P50に応じた精度のよい確率(加速要求が発行される確率)を表すことが可能である。また第1実施例では、ステアリング操作確率ksが高いほど確率fpも高い値に決定されるので、確率fpの精度を高めることが可能となる。
なお、ステアリング角確率ks1とステアリング操作量P50との対応関係としては、ステアリング操作量P50が直進方向(ゼロ)から遠いほどステアリング角確率ks1が小さな値に設定される任意の関係を採用可能である。例えば、ステアリング操作量P50の変化に対してステアリング角確率ks1がステップ状に変化してもよい。また、ステアリング角確率ks1の最小値がゼロより大きくてもよく、最大値が1より小さくてもよい。
また、ステアリング速度確率ks2と操舵角速度P55との対応関係としては、操舵角速度P55がゼロに近いほどステアリング速度確率ks2が大きな値に設定される任意の関係を採用可能である。例えば、操舵角速度P55の変化に対してステアリング速度確率ks2がステップ状に変化してもよい。また、ステアリング速度確率ks2の最大値が1より小さくてもよく、最小値がゼロより大きくてもよい。いずれの場合も、ステアリング速度確率ks2が同じ場合の操舵角速度P55は、操舵角速度P55の負の範囲での値の方が、正の範囲での値よりもゼロから遠いことが好ましい。
車間距離確率kd:
図12は、車間距離確率kdと車間距離P60との対応関係を示すグラフである。横軸は車間距離P60を示し、縦軸は車間距離確率kdを示している。車間距離確率kdは、車間距離P60が長いほど大きな値に設定される。この理由は、車間距離P60が長いほど、ユーザによる加速要求が発行される可能性が高いからである。その結果、車間距離確率kdは、車間距離P60に応じた精度のよい確率(加速要求が発行される確率)を表すことが可能である。また第1実施例では、車間距離確率kdが高いほど確率fpも高い値に決定されるので、確率fpの精度を高めることが可能となる。
なお、車間距離確率kdと車間距離P60との対応関係としては、車間距離P60が長いほど車間距離確率kdが大きな値に設定される任意の関係を採用可能である。例えば、車間距離P60の変化に対して車間距離確率kdがステップ状に変化してもよい。また、車間距離確率kdの最小値がゼロより大きくてもよく、最大値が1より小さくてもよい。
前車速度差確率kr:
図13は、前車速度差確率krと前車との速度差P70との対応関係を示すグラフである。横軸は速度差P70を示し、縦軸は前車速度差確率krを示している。ここで、速度差P70は、車両900から見た前車の相対的な速度を意味している。例えば、前車の速度が車両900の車速P20よりも速い場合には、速度差P70が正値となる。ここで、速度差P70がゼロ以下の範囲では、前車速度差確率krはゼロに設定される。この理由は、前車よりも速い速度で走行中にユーザによる加速要求が発行される可能性はほぼゼロだからである。また、速度差P70がゼロ以上の範囲では、速度差P70が大きいほど前車速度差確率krが大きな値に設定される。この理由は、速度差P70が大きいほど、ユーザによる加速要求が発行される可能性が高いからである。以上の結果、前車速度差確率krは、速度差P70に応じた精度のよい確率(加速要求が発行される確率)を表すことが可能である。また第1実施例では、前車速度差確率krが高いほど確率fpも高い値に決定されるので、確率fpの精度を高めることが可能となる。
なお、前車速度差確率krと速度差P70との対応関係としては、速度差P70が大きいほど前車速度差確率krが大きな値に設定される任意の関係を採用可能である。例えば、速度差P70の変化に対して前車速度差確率krがステップ状に変化してもよい。また、前車速度差確率krの最小値がゼロよりも大きくてもよく、最大値が1よりも小さくてもよい。いずれの場合も、速度差P70が負値である場合には、前車速度差確率krがゼロに設定されることが好ましい。
混雑度確率kj:
図14は、混雑度確率kjと混雑度P80との対応関係を示すグラフである。横軸は混雑度P80を示し、縦軸は混雑度確率kjを示す。混雑度確率kjは、混雑度P80が高いほど小さな値に設定される。この理由は、混雑度が高いほど、ユーザによる加速要求が発行される可能性が低いからである。その結果、混雑度確率kjは、混雑度P80に応じた精度のよい確率(加速要求が発行される確率)を表すことが可能である。また第1実施例では、混雑度確率kjが高いほど確率fpも高い値に決定されるので、確率fpの精度を高めることが可能となる。
なお、VICSでは、道路の区間と混雑度とを関連付ける情報が提供される。そこで、可能性評価モジュール300は、このVICS情報を、自車位置P10に応じて利用する。EECU30のROMには、図4(A)の地図MAPのような道路地図が予め格納されている(図示省略)。可能性評価モジュール300は、この道路地図とVICS情報とを参照することによって、自車位置P10における混雑度を取得する。
なお、混雑度確率kjと混雑度P80との対応関係としては、混雑度P80が高いほど混雑度確率kjが小さな値に設定される任意の関係を採用可能である。例えば、混雑度P80の変化に対して混雑度確率kjがステップ状に変化してもよい。また、混雑度確率kjの最小値がゼロであってもよく、最大値が1より小さくてもよい。
以上のように、第1実施例では、上述の各パラメータ確率kp〜kjを乗じることによって確率fpが算出され(図2:S100)、算出された確率fpに基づいてプレアシストの駆動速度と持続時間とが決定されている(S120)。その結果、車両900の動作状況に応じて適切に電動機70(過給器50)を事前に駆動することができる。さらに、第1実施例では、確率fpに基づいてプレアシストの要否が判定される(S110)。従って、車両900の動作状況に応じた適切な要否判定が可能である。なお、各パラメータ値P10〜P80と各パラメータ確率kp〜kjとの対応関係(図4〜図14)は、予め、EECU30(図1)のROMに格納されている。また、各パラメータ確率kp〜kjの具体的な値については、実験に基づいて決定すればよい。
なお、確率fpの算出方法としては、上述のパラメータ確率kp〜kjの全てを乗じる方法に限らず、各パラメータ値P10〜P80(図3)から確率fpを算出する任意の方法を採用可能である。例えば、各パラメータ値P10〜P80と確率fpとの対応関係を定めるマップを用いてもよい。また、確率fpとしては、各パラメータ値P10〜P80の全てを用いるものに限らず、任意の一部のみを用いて算出される値を採用してもよい。いずれの場合も、確率fpの高さと各パラメータ値P10〜P80との関係としては、図4〜図14で説明した関係を採用することが好ましい。
なお、上述の各パラメータ値P10〜P80のうちの、車間距離P60と速度差P70と混雑度P80とは、他のパラメータ値とは異なり、自車と他車との関係を示すパラメータ値である。従って、これらのパラメータ値P60、P70、P80のうちの少なくとも一部を用いて確率fpを算出すれば、確率fpを他車との関係を考慮した精度のよい値に設定することが可能となる。その結果、他車との関係を考慮した適切なプレアシストの実行が可能となる。
B.第2実施例:
図15は、第2実施例におけるプレアシストの手順を示すフローチャートである。図2に示す第1実施例との差違は、各パラメータ確率kp〜kjの学習処理(ステップS130〜S160)が追加されている点だけである。図16は、プレアシスト実行の様子を示す概略図である。図3に示す第1実施例との差違は、学習モジュール320が追加されている点だけである。この学習モジュール320は、他のモジュール300、310と同様に、EECU30(図1)のCPUによって実行されるプログラムであり、ROMに予め格納されている。装置の構成は、図1に示す第1実施例と同じである。
図15のステップS100〜S120の処理は、図2の各ステップS100〜S120とそれぞれ同じである。
ステップS110でプレアシストを開始しないと判断された場合には、次のステップS150で、学習モジュール320は、プレアシストの実行が保留された状態でユーザによる加速要求が発行されたか否かを判定する。プレアシストの保留中に、アクセルペダル踏み込み量(アクセル操作量P30)が増加した場合に、学習モジュール320は、加速要求が発行されたと判定する(S150:Yes)。加速要求が発行されないと判定された場合には(S150:No)、確率fpによる判定結果(S110)が正しいので、学習モジュール320は、各パラメータ確率kp〜kjの修正をせずに処理を終了する。その後、処理はステップS100に戻る。この場合、ステップS100、S110、S150の処理が、繰り返し実行される。
確率fpが低いことに起因してプレアシストは不要と判定されたにも拘わらずに加速要求が発行された場合には(ステップS150:Yes)、学習モジュール320は、次のステップS160に移行し、各パラメータ確率kp〜kjの内の値(確率)が小さな一部のパラメータ確率を修正する。パラメータ確率の修正が完了したら、学習モジュール320はステップS160の処理を終了する。その後、処理は、ステップS100に戻る。
図17は、パラメータ確率修正の一例を示す説明図である。図17には、車間距離確率kdが修正される場合が示されている。図17のグラフは、図12と同様の車間距離確率kdと車間距離P60との対応関係を示している。第1グラフkdaは修正前のグラフを示し、第2グラフkdbは修正後のグラフを示している。また、車間距離D1は、図15のステップS100、S110でプレアシストを開始しないと判断されたときの車間距離P60である。
学習モジュール320は、車間距離確率kdをより大きな値に修正する。この際、学習モジュール320は、車間距離P60が値を取り得る範囲の内の、プレアシストが不要と判定された時点での値(車間距離D1)を含む一部の範囲RG1における車間距離確率kdを増大させる。この修正により、次回の判定時には(ステップS100、S110)、車間距離P60が同じ車間距離D1であったとしても、車間距離確率kdは、修正前の確率kd1よりも大きな修正後確率kd2に設定される。その結果、車間距離確率kdの修正後には、より適切にプレアシストの要否判定を行うことができる。また、より適切に持続時間Dと回転速度RVとを決定することができる。
なお、複数のパラメータ確率kp〜kj(パラメータ確率ka1、ka2、kb1、kb2、ks1、ks2を含む)の内のステップS160で修正されるパラメータ確率としては、ステップS100、S110でプレアシストが不要と判定されたときの確率が比較的小さい任意の一部のパラメータ確率を採用可能である。例えば、学習モジュール320が、確率が所定の閾値(例えば、0.2)以下であるパラメータ確率を選択して修正してもよい。また、学習モジュール320が、確率の小さい順番が所定の順番(例えば、3番目)よりも前のパラメータ確率を選択して修正してもよい。
また、図17では、車間距離確率kdを修正する場合について説明したが、他のパラメータ確率の修正も同様に行われ得る。いずれの場合も、学習モジュール320は、パラメータ確率を、より大きな値に修正する。この際、確率の算出に利用されるパラメータ値(例えば、パラメータ値P10〜P80)の全範囲の内の、プレアシストを開始しないと判断されたときの値を含む少なくとも一部の範囲において、パラメータ確率を高めることが好ましい。このような範囲としては、任意の範囲を採用可能である。さらに、パラメータ値の変化に対する確率の変化の傾向が、修正前後で同じであることが好ましい。例えば、図17に示すように、車間距離確率kdは、修正後であっても、車間距離P60が小さいほど小さな値に設定されることが好ましい。
また、図4に示す自車位置確率kpのように、自車位置P10が複数の範囲(この例ではカテゴリ)に区分され、範囲毎に自車位置確率kpが設定される場合がある。この場合には、プレアシストを開始しないと判断されたときの値を含む範囲に対応付けられた確率を、より高い値に修正すればよい。
なお、いずれの場合も、確率を過剰に上げないように、上限を設けておくことが好ましい。また、このような上限は、確率の算出に利用されるパラメータ値に応じた可変値であってもよい。例えば、車間距離P60がゼロである場合の車間距離確率kdの上限はゼロであることが好ましい。
以上、ステップS110でプレアシストを実行しないと判断された場合について説明したが、プレアシストを実行すると判断された場合には、次のステップS120で、プレアシスト実行モジュール310によってプレアシストが実行される。その後、処理はステップS130に移行する。このステップS130では、学習モジュール320(図16)は、プレアシストの実行中(持続時間Dの間)にユーザによる加速要求が発行されたか否かを判定する。持続時間Dの間にアクセルペダルの踏み込み量(アクセル操作量P30)が増加した場合に、学習モジュール320は、加速要求が発行されたと判定する(S130:Yes)。この場合には、確率fpによる判定結果(S110)が正しいので、学習モジュール320は、各パラメータ確率kp〜kjの修正をせずに処理を終了する。その後、処理はステップS100に戻る。
プレアシストが実行されたにも拘わらず持続時間Dの間にユーザによる加速要求が発行されなかった場合には(S130:No)、学習モジュール320は、次のステップS140に移行し、全パラメータ確率kp〜kjの値(確率)をより小さな値に修正する。この修正は、確率をより大きな値に修正する処理(S160)とは逆の方法に従って行われる。この際、確率の算出に利用されるパラメータ値の全範囲の内の、プレアシストを開始すると判断されたときの値を含む少なくとも一部の範囲において、確率がより低い値に修正されることが好ましい。パラメータ確率の修正が完了したら、学習モジュール320はステップS140の処理を終了する。その後、処理は、ステップS100に戻る。
このように、全てのパラメータ確率kp〜kjが修正される理由は以下の通りである。プレアシストが実行された場合には、全てのパラメータ確率kp〜kjが高い値に設定されているので、どのパラメータ確率が不適切であるかの判断が難しいからである。ここで、全てのパラメータ確率kp〜kjを小さい値に修正すれば、その後、過剰に小さいパラメータ確率は、ステップS160で大きな値に再修正される。その結果、全てのパラメータ確率kp〜kjが適切な値に修正される。
以上のように、第2実施例では、実際にユーザによる加速要求が発行されたか否かに基づいて各パラメータ確率kp〜kjが修正される。その結果、プレアシストを実行すべきか否かの判定の精度を向上させることが可能となる。また、より適切な駆動速度と持続時間とを用いて電動機70(過給器50)を事前に駆動することができる。なお、図15の手順において、ステップS130、S140を省略してもよい。この場合も、ステップS150、S160によって、ユーザの望む値と比べて過剰に低いパラメータ確率がより大きな値に修正されるので、プレアシストが実行されていない状態でユーザによる加速要求が発行されることを抑制できる。ただし、図15のようにS130、S140を利用すれば、ユーザの望む値と比べて過剰に高いパラメータ確率がより小さな値に修正される。その結果、プレアシストが実行されたにも拘わらずユーザによる加速要求が発行されないことを抑制できる。
なお、本実施例では、各パラメータ値P10〜P80と各パラメータ確率kp〜kjとの対応関係(図4〜図14)が修正される。従って、これらの対応関係は、EECU30(図1)の書き込み可能なメモリ(例えば、RAM)に格納される。この際、書き込み可能なメモリとして不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリ)を採用すれば、EECU30の電源が切れた場合に更新された対応関係が消えることを防止できる。
C.第3実施例:
図18は、第3実施例におけるプレアシストの手順を示すフローチャートである。図15に示す第2実施例との差違は3点ある。第1の差違は、プレアシストの要否判定に、確率fpの代わりにプレアシスト地点が利用されている点である(ステップS100a、S110a)。第2の差違は、パラメータ確率を修正するステップS140、S160の代わりに、プレアシスト地点の削除と追加をするステップS142、S162が設けられている点である。第3の差異は、プレアシストの回転速度RVと持続時間Dとして、所定の値が利用される点である(ステップS120a)。また、図19は、プレアシスト実行の様子を示す概略図である。図16に示す第2実施例とは異なり、可能性評価モジュール300は、進行方向P5と自車位置P10とを用いて、プレアシストの要否判定を行う。他のパラメータ値P20〜P80は、プレアシストの要否判定には利用されない。ここで、進行方向P5は、車両900(図1)の進行方向である。可能性評価モジュール300は、自車位置P10の変化に基づいて、この進行方向P5を算出する。学習モジュール320は、進行方向P5と自車位置P10とアクセル操作量P30とを用いて、プレアシスト地点の削除と追加とを行う。この際、可能性評価モジュール300によって算出された進行方向P5が利用される。装置の構成は、図1に示す第1実施例と同じである。ただし、各センサ210〜270の内の、利用されないパラメータ値P20、P40〜P80の取得にのみ利用されるセンサ(例えば、距離センサ260や混雑度センサ270)を省略してもよい。
図20は、プレアシスト地点PAPを示す説明図である。図20には地図MAPaが示されている。この地図MAPaには、予め、1以上のプレアシスト地点PAPが設定されている。プレアシスト地点PAPは、地理的な位置に加えて進行方向を定める情報である。これらのプレアシスト地点PAPは、プレアシストを実行すべき地点、すなわち、ユーザによる加速要求が発行される可能性が高い地点の手前に設定されている。このような地点としては、任意の地点を採用可能であり、例えば、交差点直後や、高速道路合流地点付近を採用可能である。車両900が、このプレアシスト地点PAPの位置を、そのプレアシスト地点PAPの方向に走行する際に、プレアシストが実行される。なお、この地図MAPaは、後述するように修正される。従って、地図MAPaは、EECU30(図1)の書き込み可能なメモリ(例えば、RAM)に格納される。この際、書き込み可能なメモリとして、不揮発性メモリを用いることが好ましい。なお、このようなメモリ(例えば、RAM)の内のプレアシスト地点PAPを格納する部分は「プレアシスト地点記憶部」に相当する。
最初のステップS100a(図18)では、可能性評価モジュール300は、車両900が、プレアシストを実行すべき地点(プレアシスト地点PAP)を走行中であるか否かを判定する。
図20の上部には、地図MAPa内の第1部分領域AR1の拡大図が示されている。この第1部分領域AR1には、道路R11が配置されている。この道路R11には、第1プレアシスト地点PAP1が設定されている。この第1プレアシスト地点PAP1の方向は、道路R11上の車両の進行方向と同じである。また、図中にはプレアシスト位置範囲PAPR1とプレアシスト角度範囲PAAR1とが示されている。プレアシスト位置範囲PAR1は、第1プレアシスト地点PAP1の位置を含む位置範囲であり、位置の近接判定用の範囲である。プレアシスト角度範囲PAAR1は、第1プレアシスト地点PAP1の方向を含む角度範囲であり、方向の近接判定用の範囲である。これらの範囲PAPR1、PAAR1は、第1プレアシスト地点PAP1に応じて予め設定された範囲である。
可能性評価モジュール300は、自車位置P10が位置範囲PAPR1内にあり、かつ、進行方向P5が角度範囲PAAR1内にある場合に、車両900がプレアシストを実行すべき地点(第1プレアシスト地点PAP1)を走行中であると判定する。この場合には、次のステップS110aで、可能性評価モジュール300は、プレアシストを開始すると判断する。換言すれば、可能性評価モジュール300は、位置と方向とが、自車位置P10と進行方向P5とに近接したプレアシスト地点PAP(以下「近接プレアシスト地点」とも呼ぶ)が検出された場合に、プレアシストを実行すると判定する。
プレアシストを実行すると判断された場合には(S110a:Yes)、次のステップS120aで、可能性評価モジュール300は、プレアシストを開始すべき命令をプレアシスト実行モジュール310に対して発行する。すると、プレアシスト実行モジュール310は、電動機70を、所定の持続時間Daの間だけ、所定の回転速度RVaで駆動する。このような駆動は、上述の第1実施例(図2:S120)と同様に、プレアシスト実行モジュール310が過給機電子駆動ユニット160(図1)を制御することによって行われる。また、このようなプレアシストの実行によって、第1実施例と同様に、ユーザの加速要求に対する内燃機関の応答速度の低下を抑制することができる。また、持続時間Daの間にユーザがアクセルペダルを踏み込まなかったとしても、エンジン100に対する燃料の供給量は増やされないので、エンジン100の出力がユーザの意図に反して高められることは抑制される。
なお、持続時間Daと回転速度RVaとのそれぞれは、電動機70が過剰に劣化しないように、実験的に予め設定すればよい。
次のステップS130では、学習モジュール320(図19)は、プレアシストの実行中(持続時間Daの間)にユーザによる加速要求が発行されたか否かを判定する。持続時間Daの間にアクセルペダルの踏み込み量(アクセル操作量P30)が増加した場合に、学習モジュール320は、加速要求が発行されたと判定する。この場合には、プレアシスト地点PAPによる判定結果(S110a)が正しいので、学習モジュール320は、プレアシスト地点PAPを削除せずに処理を終了する。その後、処理はステップS100aに戻る。
プレアシストが実行されたにも拘わらず持続時間Daの間にユーザによる加速要求が発行されなかった場合には(S130:No)、学習モジュール320は、次のステップS142に移行し、プレアシスト地点PAPを削除するための処理を実行する。図21は、プレアシスト地点PAP削除の概要を示す説明図である。図21には地図MAPaが示されている。図21の上部には、地図MAPa内の第2部分領域AR2の拡大図が示されている。この第2部分領域AR2には、道路R12が配置されている。この道路R12には、第2プレアシスト地点PAP2が設定されている。また、図中には車両900の軌跡CTが示されている。各軌跡CTに付された2重線BCTは、プレアシストが実行されていた部分を示している。また、図中の白丸印は、ユーザによる加速要求が発行された地点(以下「加速地点ONP」とも呼ぶ)を示している。図21の例では、車両900は、第2プレアシスト地点PAP2を、3回、通過している。そして、3回のうちの最初の1回だけ、プレアシストの実行中に加速要求が発行されたこととしている。
学習モジュール320は、プレアシスト地点PAP毎に、実行総数と、空振り数と、を数える。そして、学習モジュール320は、空振り数を実行総数で割ることにより、空振り率を算出する。ここで、実行総数とは、プレアシストが実行された総数である。空振り数とは、プレアシストの実行中に(持続時間Daの間に)ユーザによる加速要求が発行されなかった回数である。図21の例では、第2プレアシスト地点PAP2については、実行総数が「3」であり、空振り数が「2」であり、空振り率が「0.67」である。
学習モジュール320は、空振り率が所定値(例えば、0.5)よりも大きいプレアシスト地点PAPを削除する。例えば、図21の例では、第2プレアシスト地点PAP2が削除される。次に車両900が第2プレアシスト地点PAP2を通過する際には、プレアシストは実行されない。その結果、ユーザの望まない地点においてプレアシストが実行されることを抑制できる。学習モジュール320は、プレアシスト地点PAPを削除したら、処理を終了する。その後、処理は、ステップS100aに戻る。
なお、プレアシスト地点PAPを削除するための条件(以下「削除条件」とも呼ぶ)としては、空振り数が比較的多いことを示す任意の条件を採用可能である。例えば、空振り数の合計値が所定数(例えば、3回)よりも大きいことを、条件として採用してもよい。
ステップS142において、プレアシスト地点PAPが削除条件を満たしていない場合には、学習モジュール320は、プレアシスト地点PAPを削除せずに処理を終了する。その後、処理はステップS100aに戻る。
以上、ステップS110aでプレアシストを開始すると判断された場合について説明したが、プレアシストを開始しないと判断された場合(近接プレアシスト地点が検出されなかった場合)には、処理はステップS150に移行する。ステップS150では、学習モジュール320は、プレアシストの実行が保留された状態でユーザによる加速要求が発行されたか否かを判定する。プレアシストの保留中に、アクセルペダル踏み込み量(アクセル操作量P30)が増加したら、学習モジュール320は、加速要求が発行されたと判定する(S150:Yes)。加速要求が発行されないと判定された場合には(S150:No)、プレアシスト地点PAPによる判定結果(S110a)が正しいので、学習モジュール320は、プレアシスト地点PAPを追加せずに処理を終了する。その後、処理はステップS100aに戻る。この場合、ステップS100a、S110a、S150の処理が、繰り返し実行される。
プレアシストは不要と判定されたにも拘わらずに加速要求が発行された場合には(ステップS150:Yes)、学習モジュール320は、次のステップS162に移行し、プレアシスト地点PAPを新たに登録するための処理を実行する。図22は、プレアシスト地点PAP登録の概要を示す説明図である。図22には地図MAPaが示されている。図22の上部には、地図MAPa内の第3部分領域AR3の拡大図が示されている。この第3部分領域AR3には、道路R13が配置されている。この道路R13には、プレアシスト地点PAPは設定されていない(第3プレアシスト地点PAP3は後で設定される)。また、図中には車両900の軌跡CTと加速地点ONP1〜ONP3とが示されている。図22の例では、車両900は、第3プレアシスト地点PAP3を、3回、通過している。そして、3回のうちの3回とも、加速要求が発行されている。
学習モジュール320は、プレアシストの実行が保留された状態で加速要求が発行される毎に、加速地点を地図MAPaに追加する。すなわち、加速地点毎に、自車位置P10と進行方向P5とがEECU30のメモリ(例えば、RAM)に記録される。このメモリの内の加速地点を格納する部分は「加速地点記憶部」に相当する。
そして、学習モジュール320は、位置と方向との両方が互いに近い2以上の加速地点ONPから構成される加速地点グループを検出する。図22の例では、3つの加速地点ONP1〜ONP3から構成される加速地点グループONG1が検出されている。
次に、学習モジュール320は、追加された加速地点ONPを含む加速地点グループが、所定の追加条件を満たしているか否かを判定する。本実施例では、追加条件として、加速地点ONPの総数が所定閾数(例えば、3)以上であることが採用されている。追加条件が満たされている場合には、学習モジュール320は、加速地点グループに応じてプレアシスト地点PAPを地図MAPaに登録する。例えば、図22の例では、加速地点グループONG1が追加条件を満たしているので、学習モジュール320は、この加速地点グループONG1に応じて第3プレアシスト地点PAP3を登録している。その後、車両900がこの第3プレアシスト地点PAP3を通過する際には、プレアシストが実行される。その結果、ユーザの望む地点においてプレアシストを実行することができる。学習モジュール320は、プレアシスト地点PAPを登録したら、処理を終了する。その後、処理はステップS100に戻る。
この第3プレアシスト地点PAP3の方向は、加速地点グループONG1に含まれる加速地点ONP1〜ONP3の平均方向に設定される。また、第3プレアシスト地点PAP3の位置は、加速地点グループONG1に含まれる加速地点ONP1〜ONP3の重心地点ONCを基準として設定される。具体的には、重心地点ONCから、加速地点ONP1〜ONP3の平均方向とは逆の方向に所定距離SDだけ移動した地点が採用される。所定距離SDだけ移動した地点を採用する理由は、車両900が各加速地点ONP1〜ONP3を通過する前にプレアシストを開始するためである。所定距離SDとしては、車両900が、持続時間Daの間に各加速地点ONP1〜ONP3のうちの少なくとも一部に到達し得る任意の距離(例えば、15m)を採用可能である。
ステップS162において、追加された加速地点ONPを含む加速地点グループが追加条件を満たしていない場合には、学習モジュール320は、プレアシスト地点PAPを追加せずに処理を終了する。その後、処理はステップS100aに戻る。
以上のように、第3実施例では、プレアシスト地点PAPに基づいてプレアシストを実行するか否かの判定が行われる。その結果、車両900の動作状況(進行方向P5と自車位置P10)に応じて適切に電動機70(過給器50)を事前に駆動することができる。
また、第3実施例では、近接プレアシスト地点が検出されなかったことに起因してプレアシストの実行が保留された状態でユーザによる加速要求が発行された場合には、プレアシストが実行された状態で車両がこのような加速地点を通過するための新たなプレアシスト地点が追加される。その結果、プレアシストが実行されていない状態でユーザによる加速要求が発行されることを抑制できる。
また、第3実施例では、プレアシストの実行中にユーザによる加速要求が発行されなかった回数が多い場合に、プレアシスト地点が削除されるので、プレアシストが実行されたにも拘わらずユーザによる加速要求が発行されないことを抑制できる。ただし、このようなプレアシスト地点の削除処理を省略してもよい。
なお、自車位置P10がプレアシスト地点PAPの位置に近接していると判定されるための条件としては、自車位置P10がプレアシスト地点PAPの位置に近いことを示す任意の条件を採用可能である。例えば、プレアシスト地点PAPの位置と自車位置P10との距離が所定距離(例えば、3m)以下であることを条件として採用してもよい。また、プレアシスト地点PAPが位置する道路の区間であって、プレアシスト地点PAPの位置を中心とする所定距離(例えば、5m)の区間内に自車位置P10が位置することを条件として採用してもよい。
また、進行方向P5がプレアシスト地点PAPの方向に近接していると判定されるための条件としては、進行方向P5がプレアシスト地点PAPの方向に近いことを示す任意の条件を採用可能である。例えば、プレアシスト地点PAPの方向とのズレが所定角度(例えば、20度)以内であることを条件として採用してもよい。
なお、位置の条件と角度の条件とのそれぞれは、プレアシストの要否判定の精度が過剰に低くならないように、実験的に設定すればよい。
また、1以上の加速地点ONPが1つの加速地点グループを構成するための条件(以下「グループ条件」とも呼ぶ)としては、地理的位置と進行方向との両方が近いことを示す任意の条件を採用可能である。例えば、同じグループに含まれる任意の加速地点ONP間の地理的距離が5m以下であることをグループ条件として採用してもよい。また、同じグループに含まれる任意の加速地点ONP間の方向のズレが30度以下であることをグループ条件として採用してもよい。また、全ての加速地点ONPが同じ車線に含まれていることをグループ条件として採用してもよい。
また、ある加速地点グループに応じたプレアシスト地点PAPを追加するための条件(追加条件)としては、その加速地点グループに含まれる加速地点ONPの総数が多いことを示す任意の条件を採用可能である。
また、加速地点グループに応じて追加されるプレアシスト地点PAPの位置と方向としては、その加速地点グループに含まれる加速地点ONPの内の少なくとも一部を、プレアシストが実行された状態で車両900が通過し得るような任意の位置と方向とを採用可能である。例えば、追加されるプレアシスト地点PAPの位置として、加速地点グループに含まれる各加速地点ONPのうちの、進行方向(平均方向)の位置が最も後ろである加速地点ONPの位置を採用してもよい(図22の例では、第1加速地点ONP1)。また、こうして選択された加速地点ONPから、平均方向とは逆の方向に所定距離SDだけ移動した地点を採用してもよい。また、追加されるプレアシスト地点PAPの方向として、加速地点グループに含まれる各加速地点ONPが位置する道路(車線)の進行方向を採用してもよい。
なお、プレアシスト地点を追加するための条件としては、上述の条件(加速地点グループが追加条件を満たしていること)に限らず、他の種々の条件を採用可能である。例えば、学習モジュール320は、加速地点毎に見逃し率を算出し、この見逃し率が所定の閾値(例えば、0.5)以上である加速地点に応じてプレアシスト地点を追加してもよい。ここで、見逃し率とは、プレアシストを実行せずに通過した回数に対する加速要求が発行された回数の割合である。一般には、プレアシスト地点を追加する処理としては、加速地点の少なくとも一部をプレアシストが実行された状態で車両900が通過するためのプレアシスト地点を追加する任意の処理を採用可能である。
なお、第3実施例では、可能性評価モジュール300は、車両900の地理的位置と進行方向とに基づいてプレアシストを実行するか否かを判定する。具体的には、可能性評価モジュール300(可能性評価部)は、車両900の地理的位置と進行方向との両方が、いずれかのプレアシスト地点に近接していることを示す所定の近接条件が満たされている場合には、プレアシスト実行モジュール310(プレアシスト実行部)にプレアシストを実行させる(図18:S110a:Yes)。プレアシスト実行モジュール310は、可能性評価モジュール300の判定結果に従って、プレアシストを実行する。この際、プレアシスト実行モジュール310は、図18のステップS120aのように、回転速度と持続時間として所定の値を採用する。この代わりに、第1実施例と同様に、確率fpに基づく可変値が採用されてもよい。この場合には、第1実施例と同様に、可能性評価モジュール300が確率fpを算出すればよい。また、可能性評価モジュール300は、所定の近接条件が満たされていない場合には、プレアシスト実行モジュール310によるプレアシストの実行を保留する(図18:S110a:No)。
D.第4実施例:
図23は、第4実施例におけるプレアシストの手順を示すフローチャートである。図18に示す第3実施例との差違は、可能性評価モジュール300が、プレアシスト地点に加えて、第1実施例と同様の確率fpを利用して、プレアシストの要否判定を行う点である。図24は、プレアシスト実行の様子を示す概略図である。図19に示す第3実施例との差異は、2点ある。第1の差異は、可能性評価モジュール300が、図3の第1実施例と同様に、確率fpを評価するためにパラメータ値P5〜P80を利用する点である。第2の差異は、プレアシスト実行モジュール310が、図3の第1実施例と同様に、回転速度と持続時間とを確率fpに基づいて決定する点である。
図23の最初のステップS100bでは、可能性評価モジュール300は、近接プレアシスト地点の有無を判定する。この判定方法は、図18のステップS100aでの判定方法と同じである。近接プレアシスト地点が検出された場合には、可能性評価モジュール300は、さらに、確率fpを算出する。確率fpの算出方法は、図2のステップS100での算出方法と同じである。
次のステップS110bでは、可能性評価モジュール300は、プレアシストを開始するか否かを判定する。第4実施例では、近接プレアシスト地点が検出され、かつ、確率fpが所定の閾値PL以上である場合に、プレアシストを開始すると判定される。近接プレアシスト地点が検出されない場合(例えば、車両900が、いずれのプレアシスト地点PAPからも遠い場合)と、確率fpが閾値PLより小さい場合とには、可能性評価モジュール300は、現時点ではプレアシストを開始しないと判断する。
プレアシストを開始すると判断された場合には、次のステップS120で、電動機70が駆動される。このステップS120の処理は、図2のステップS120の処理と同じである。電動機70の駆動開始後のステップS130、S142の処理は、図18のステップS130、S142の処理と、それぞれ同じである。これにより、ユーザによる加速要求が発行される可能性が低いプレアシスト地点PAPが削除される。なお、ステップS130では、確率fpに基づいて決定された持続時間Dの間における加速要求の有無が判定される。
プレアシストを開始しないと判断された場合のステップS150、S162の処理は、図18のステップS150、S162の処理と、それぞれ同じである。ただし、ステップS162では、学習モジュール320は、近接プレアシスト地点が検出されなかったことに起因してプレアシストの実行が保留された場合に限って、加速地点を地図MAPaに追加する。これにより、ユーザによる加速要求が発行される可能性が高いプレアシスト地点PAPが追加される。
以上のように、第4実施例では、可能性評価モジュール300は、確率fpとプレアシスト地点PAPとの両方を用いてプレアシストの要否判定を行っているので、いずれか一方のみを用いて要否判定を行う場合と比べて、より適切に電動機70(過給器50)を事前に駆動することができる。また、第4実施例では、第3実施例と同様に、プレアシスト地点PAPの削除と登録とが行われるので、プレアシストを実行すべきか否かの判定の精度を向上させることが可能となる。また、第4実施例では、持続時間Dと回転速度RVとが、第1実施例と同様に確率fpに基づいて決定される。従って、プレアシストを開始したにも拘わらずにユーザによる加速要求が発行されること無く持続時間Dが経過することを抑制することができる。ただし、プレアシスト実行モジュール310が、回転速度と持続時間とのそれぞれとして、所定の値を採用することとしてもよい。
なお、第4実施例において、プレアシスト地点を修正する処理を省略してもよい。具体的には、図23のステップS130、S142、S150、S162を省略してもよい。
また、第4実施例において、さらに、第2実施例と同様に各パラメータ確率kp〜kjを修正してもよい。この場合には、図23のステップS150で「Yes」と判定された場合に、学習モジュール320が、図15のステップS160と同じ処理を実行すればよい。さらに、図23のステップS130で「No」と判定された場合に、学習モジュール320が、図15のステップS140と同じ処理を実行してもよい。ここで、さらに、プレアシスト地点を修正する処理を省略してもよい。具体的には、図23のステップS142、S162を省略してもよい。
E.変形例:
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
変形例1:
上述の各実施例において、加速要求が発行されたと判断するための条件としては、アクセル操作量P30が増加したことを示す任意の条件を採用可能である。例えば、アクセル操作量P30の増加量がゼロよりも大きい場合に、加速要求が発行されたと判断してもよい。また、アクセル操作量P30が所定の閾値以上まで増加した場合に、加速要求が発行されたと判断してもよい。また、アクセル操作量P30の増大速度(例えば、アクセル速度P35)が、所定の閾値以上である場合に、加速要求が発行されたと判断してもよい。
変形例2:
上述の各実施例において、持続時間Dと確率fpとの対応関係としては、確率fpが低いほど持続時間Dが長い値に決定される任意の関係を採用可能である。例えば、確率fpの変化に対して持続時間Dがステップ状に変化してもよい。また、持続時間Dを可変値とする場合には、持続時間Dが長いほど回転速度RVが小さな値に決定されることが好ましい。換言すれば、回転速度RVと確率fpとの対応関係としては、確率fpが低いほど回転速度RVが低い値に設定される任意の関係を採用可能である。ここで、確率fpの変化に対して回転速度RVがステップ状に変化してもよい。ここで、持続時間Dと回転速度RVとのうちの一方のみが確率fpに基づいて決定されることとしてもよい。この場合には、他方の値としては、所定の値を採用可能である。例えば、持続時間Dとして所定の時間を採用し、回転速度RVとして、確率fpに応じた可変値を採用してもよい。こうすれば、確率fpが低いにも拘わらずに、電動機70による発熱量が過剰に大きくなることを抑制できる。逆に、持続時間Dとして、確率fpに応じた可変値を採用し、回転速度RVとして所定の値を採用してもよい。こうすれば、ユーザによる加速要求が発行されること無くプレアシストが終了することを抑制できる。
また、上述の第1実施例と第2実施例とにおいて、プレアシスト実行モジュール310が、回転速度と持続時間とのそれぞれとして、所定の値を採用することとしてもよい。この場合も、プレアシストの要否判定は確率fpに基づいて行われるので、車両の動作状況に応じて適切に電動駆動過給機を事前に駆動させることができる。ここで、この要否判定がプレアシスト実行モジュール310によって実行されてもよい。
変形例3:
上記各実施例では、過給器50が、排気ガスによって駆動されるタービン52を有しているが、タービン52の無い過給機を採用してもよい。この場合も、過給機は電動機によって駆動される。
変形例4:
上記各実施例において、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、プレアシスト実行モジュール310(図1)の機能を、論理回路を有するハードウェア回路によって実現することとしてもよい。