図1は、本発明に係る車両の自動運転装置の全体構成を示すブロック図である。図1を参照すると、この車両の自動運転装置は、自車両Vの周辺情報を検出する外部センサ1と、GPS[Global Positioning System] 受信部2と、内部センサ3と、地図データベース4と、記憶装置5と、ナビゲーションシステム6と、HMI [Human Machine Interface] 7と、種々のアクチュエータ8と、電子制御ユニット(ECU)10とを備えている。
図1において、外部センサ1は、自車両Vの周辺情報である外部状況を検出するための検出機器を示しており、この外部センサ1は、カメラ、レーダー [Radar] 、およびライダー [LIDER : Laser Imaging Detection and Ranging] のうち少なくとも一つを含んでいる。カメラは、例えば、図2において符号SAで示されるように、車両Vのフロントガラスの裏側に設けられており、このカメラSAによって車両Vの前方が撮影される。このカメラSAによる撮影情報は電子制御ユニット10へ送信される。一方、レーダーは、電波を利用して車両Vの外部の障害物を検出する装置である。このレーダーでは、レーダーから車両Vの周囲に発射された電波の反射波から車両Vの周囲の障害物を検出され、レーダーにより検出された障害物情報は電子制御ユニット10へ送信される。
ライダーは、レーザー光を利用して自車両Vが走行している道路や外部の障害物を検出する装置である。このライダーは、例えば、図2において符号SBで示されるように、車両Vの屋根上に設置される。このライダーSBでは、車両Vの全周囲に向けて順次照射されたレーザー光の反射光から、道路上および道路周辺の障害物までの距離が計測され、車両Vの全周囲における道路および障害物の存在が三次元画像の形で検出される。このライダーSBにより検出された道路および障害物の三次元画像はECU10へ送信される。
図1において、GPS受信部2では、3個以上のGPS衛星から信号が受信され、それにより自車両Vの絶対位置(例えば車両Vの緯度及び経度)が検出される。GPS受信部2により検出された自車両Vの絶対位置情報は電子制御ユニット10へ送信される。
図1において、内部センサ3は、自車両Vの走行状態を検出するための検出機器を示している。この内部センサ3は、車速センサ、加速度センサ、およびヨーレートセンサのうち少なくとも一つを含んでいる。車速センサは、車両Vの速度を検出する検出器である。加速度センサは、例えば、車両Vの前後方向の加速度を検出する検出器である。ヨーレートセンサは、車両Vの重心の鉛直軸周りの回転角速度を検出する検出器である。これら車速センサ、加速度センサ、およびヨーレートセンサにより検出された情報は電子制御ユニット10へ送信される。
図1において、地図データベース4は、一般に市販されている地図情報に関するデータベースを示しており、この地図データベース4は、例えば、車両に搭載されたHDD [Hard disk drive] 内に記憶されている。地図情報には、例えば、道路の位置情報、道路形状の情報(例えばカーブと直線部の種別、カーブの曲率等)、交差点及び分岐点の位置情報が含まれている。
図1において、記憶装置5には、ライダーSBにより検出された障害物の三次元画像およびライダーSBの検出結果に基づき作成された自動運転専用の道路地図が記憶されており、これら障害物の三次元画像および道路地図は常時、或いは定期的に更新される。なお、図1に示される実施例では、記憶装置5には、車両が、予め選択されている走行車線の真ん中を走行せしめられたときの障害物の三次元画像が記憶されている。
図1において、ナビゲーションシステム6は、車両Vの運転者によって設定された目的地まで、車両Vの運転者に対して案内を行う装置である。このナビゲーションシステム6では、GPS受信部2により測定された自車両Vの現在の位置情報と地図データベース4の地図情報とに基づいて、目的地に至るまでの目標ルートが演算される。この車両Vの目標ルートの情報が電子制御ユニット10へ送信される。
図1において、HMI7は、車両Vの乗員と車両の自動運転システムとの間で情報の出力および入力を行うためのインターフェイスを示しており、このHMI7は、例えば、乗員に画像情報を表示するためのディスプレイパネル、音声出力のためのスピーカ、および乗員が入力操作を行うための操作ボタン或いはタッチパネル等を備えている。HMI7において、乗員により自動走行を開始すべき入力操作がなされると、電子制御ユニット10に信号が送られて自動走行が開始され、また、乗員により自動走行を停止すべき入力操作がなされると、電子制御ユニット10に信号が送られて自動走行が停止される。
図1において、アクチュエータ8は、車両Vの走行制御を実行するために設けられており、このアクチュエータ8は、少なくとも、アクセルアクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、および操舵アクチュエータを含んでいる。アクセルアクチュエータは、電子制御ユニット10からの制御信号に応じて燃料噴射量を制御し、それにより自車両Vの駆動力を制御する。ブレーキアクチュエータは、電子制御ユニット10からの制御信号に応じてブレーキペダルの踏み込み量を制御し、それにより自車両Vの車輪に付与する制動力を制御する。操舵アクチュエータは、電子制御ユニット10からの制御信号に応じて電動パワーステアリングシステムの操舵アシストモータの駆動を制御し、それにより、自車両Vの操舵作用を制御する。
電子制御ユニット10は、双方向性バスによって相互に接続されたCPU [Central Processing Unit] 、ROM [Read Only Memory] 、RAM [Random Access Memory] 等を有する。なお、図1には、一つの電子制御ユニット10を用いた場合が示されているが、複数の電子制御ユニットを用いることもできる。図1に示されるように、電子制御ユニット10は、車両位置認識部11、外部状況認識部12、走行状態認識部13、走行計画生成部14、走行制御部15および記憶部16を有している。なお、図1に示されるように、ROM およびRAMが記憶部16を構成している。
さて、GPSを用いると、自車両Vの絶対位置(緯度及び経度)を認識することができ、従って、本発明による実施例では、自動走行が開始されたときの地図データベース4の地図上における最初の自車両Vの絶対位置が、GPS受信部2で受信した自車両Vの位置情報に基づき、車両位置認識部11において認識される。しかしながら、GPSを用いて得られた地図データベース4の道路上における自車両Vの位置は、道路上における自車両Vの実際の位置に対してかなりずれており、従って、GPSを用いて得られた自車両Vの位置に基づき、自動走行させるのは困難である。これに対し、記憶装置5に記憶されている自動運転専用の道路地図は正確であり、この記憶装置5に記憶されている自動運転専用の道路地図上における自車両Vの位置は、自車両Vの実際の位置とほぼ完全に一致する。
従って、本発明による実施例では、記憶装置5に記憶されている自動運転専用の道路地図上における自車両Vの位置に基づき、自動走行が行われている。
即ち、本発明による実施例では、車両位置認識部11において、GPS受信部2で受信した自車両Vの位置情報に基づき、自動走行が開始されたときの最初の自車両Vの絶対位置が認識されると、その後は、外部状況認識部12において、自車両Vの外部状況が認識され、この外部状況に基づいて、記憶装置5に記憶されている自動運転専用の道路地図上における自車両Vの正確な位置が認識される。この場合、外部状況認識部12では、外部センサ1の検出結果(例えばカメラ8の撮像情報、レーダーからの障害物情報、ライダーSBにより検出された障害物の三次元画像等)に基づいて、自車両Vの外部状況が認識される。なお、この外部状況には、自車両Vに対する走行車線の白線の位置、車両Vに対する車線中心の位置、道路幅、道路の形状(例えば走行車線の曲率、路面の勾配変化等)、車両Vの周辺の障害物の状況(例えば、固定障害物と移動障害物を区別する情報、車両Vに対する障害物の位置、車両Vに対する障害物の移動方向、車両Vに対する障害物の相対速度等)が含まれる。
もう少し詳しく説明すると、本発明による実施例では、自動走行が開始されたときの最初の自車両Vの絶対位置が、GPS受信部2で受信した自車両Vの位置情報に基づき認識されたときに、外部状況認識部12において、ライダーSBの検出結果に基づき記憶装置5に記憶されている外部の固定障害物の三次元画像と、ライダーSBにより検出された外部の固定障害物の現在の三次元画像とを比較することによって、記憶装置5に記憶されている道路地図上における現在の自車両Vの正確な位置が認識される。具体的に言うと、ライダーSBを用いて検出された外部の固定障害物の三次元画像を少しずつ、ずらしながらこの三次元画像が、記憶装置5に記憶されている外部の固定障害物の三次元画像上に重なる画像位置を見つけ出す。このときの三次元画像のずらした量が、記憶装置5に記憶されている道路地図上における自車両Vの走行車線の真ん中からのずれ量を表すことになり、従って、このずれ量から現在の自車両Vの正確な位置が認識できることになる。
なお、このように自車両Vの走行車線の真ん中からのずれ量が求まると、自車両Vの自動走行が開始されたときに、自車両Vが走行車線の真ん中を走行するように自車両Vの走行が制御される。車線の走行中、ライダーSBにより検出された外部の固定障害物の三次元画像が、記憶装置5に記憶されている外部の固定障害物の三次元画像上に重なる画像位置を見つけ出す作業は、継続して行われ、自車両Vが、運転者によって設定された目標ルートの走行車線の真ん中を走行するように、車両の走行が制御される。なお、この外部状況認識部12では、ライダーSBにより検出された外部の障害物(固定障害物および移動障害物)の三次元画像と、記憶装置5に記憶されている外部の固定障害物の三次元画像とを比較することにより、歩行者のような移動障害物の存在が認識される。
走行状態認識部13では、内部センサ3の検出結果(例えば車速センサからの車速情報、加速度センサからの加速度情報、ヨーレートセンサの回転角速度情報等)に基づいて、自車両Vの走行状態が認識される。自車両Vの走行状態には、例えば、車速、加速度および車両Vの重心の鉛直軸周りの回転角速度が含まれる。
上述したように、記憶装置5に記憶されている道路地図における自車両Vの位置は外部状況認識部12において認識され、走行計画生成部14では、この外部状況認識部12において認識された自車両Vの位置、外部状況認識部12において認識された自車両Vの外部状況(他車両の位置や進行方向等)および内部センサ3により検出された自車両Vの速度や加速度等に基づいて、運転者により設定された目標ルートに沿う自車両Vの走行計画が作成される、即ち、自車両Vの進路が決定される。この場合、進路は、法令を順守しつつ、安全にかつ最短時間で目的地に到達するように決定される。次に、この進路の決定の仕方について図3および図4を参照しつつ簡単に説明する。
図3および図4は、xy平面に直交する軸を時間軸tとした三次元空間を示している。
図3のxy平面は、記憶装置5に記憶されている道路地図上の地表面を表しており、図3においてRは、記憶装置5に記憶されている地図上の道路を表している。また、図3において、Vは道路R上を走行している自車両を示しており、xy平面におけるy軸方向が自車両Vの進行方向とされる。なお、図3における道路Rおよび自車両Vの位置は、実際の道路Rおよび実際の自車両Vの位置と一対一で完全に対応している。
走行計画生成部14では、図3においてPで示されるように、xyz軸からなる三次元空間内に自車両Vの今後の進路の軌跡が生成される。この軌跡の初期位置は現在の自車両Vの位置であり、このときの時刻tが零とされ(時刻t=0)、このときの自車両Vの位置が、記憶装置5に記憶されている道路地図の道路R上の位置(x(0)、y(0))とされる。また、自車両Vの走行状態は車速vと進行方向θで表され、時刻t=0における自車両Vの走行状態は、記憶装置5に記憶されている道路地図の道路R上において(v(0)、θ(0))とされる。このように本発明による実施例では、記憶装置5に記憶されている道路地図上において、自車両Vの位置と自車両Vの走行状態が、自車両Vの進行に伴い変化せしめられる。
さて、自車両Vが時刻t=0からΔt時間(0.1〜0.5秒)経過する間に行われる運転操作は、予め設定されている複数の操作の中から選択される。具体的な例を挙げる、車両の加速度については−10〜+30Km/h/secの範囲内で予め設定されている複数の値の中から選択され、操舵角速度については−7〜+7度/secの範囲で予め設定されている複数の値の中から選択される。この場合、一例を挙げると、車両の複数の加速度の値と複数の操舵角速度の値の全ての組み合わせについて、Δt時間後(t=Δt)の自車両Vの位置(x(1)、y(1))と自車両Vの走行状態(v(1)、θ(1))とが求められ、次いで更にΔt時間後、即ち2Δt時間後(t=2Δt)の自車両Vの位置(x(2)、y(2))と自車両Vの走行状態(v(2)、θ(2))が求められる。同様にして、nΔt時間後(t=nΔt)の自車両Vの位置(x(n)、y(n))と自車両Vの走行状態(v(n)、θ(n))が求められる。
走行計画生成部14では、車両の複数の加速度の値と複数の操舵角速度の値の組み合わせについて夫々求められた自車両Aの位置(x、y)を結ぶことによって複数の進路の軌跡が生成される。図3のPは、このようにして得られた軌跡のうちの代表的な一つの軌跡を示している。複数の進路の軌跡が生成されると、これらの軌跡の中から、例えば、法令を順守しつつ、安全にかつ最短時間で目的地に到達しうる軌跡が選択され、この選択された軌跡が自車両Vの進路として決定される。なお、図3において、この軌跡の道路R上におけるxy平面上への投影図が、記憶装置5に記憶されている道路地図の道路R上における自車両Vの進路となり、記憶装置5に記憶されている道路地図上における自車両Vの進路が、実際の道路における自車両Vの実際の進路となる。
次に、図4を参照しつつ、複数の進路の軌跡の中から、法令を順守しつつ、安全にかつ最短時間で目的地に到達しうる軌跡を選択する方法の一例について簡単に説明する。この図4のxy平面も、図3と同様に、記憶装置5に記憶されている道路地図上の地表面を表している。また、図4においてVは、図3と同様に、自車両を示しており、Aは自車両Vの前方で自車両Vと同一方向に進行している他車両を示している。なお、図4には、自車両Vについて生成された複数の進路の軌跡Pが示されている。さて、走行計画生成部14では、他車両Aについても車両の複数の加速度の値と複数の操舵角速度の値の組み合わせについて複数の進路の軌跡が生成され、他車両Aについて生成された複数の進路の軌跡が図4においてP’ で示されている。
走行計画生成部14では、最初に、外部状況認識部12により認識された外部情報に基づいて、軌跡Pに従って自車両Vが進行したときに、自車両Vが道路R内を走行しうるか否か、および固定障害物或いは歩行者と接触しないか否かが、全ての軌跡Pについて判別される。軌跡Pに従って自車両Vが進行したときに、自車両Vが道路R内を走行し得ないと判別されたとき、或いは自車両Vが固定障害物或いは歩行者と接触すると判別されたときには、当該軌跡Pは選択肢から除外され、残りの軌跡Pについて他車両Aとの干渉の有無について判別される。
即ち、図4において、軌跡Pと 軌跡P’とが交差したときは、交差した時刻tにおいて自車両Vと他車両Aとが衝突することを意味している。従って、上述の残りの軌跡Pのうちで軌跡P’と交差する軌跡Pが存在する場合には、軌跡P’ と交差する軌跡Pは選択肢から除外され、残りの軌跡Pの中から最短時間で目的地に到達しうる軌跡Pが選択される。このようにして複数の進路の軌跡Pの中から、法令を順守しつつ、安全にかつ最短時間で目的地に到達しうる軌跡Pが選択される。
軌跡Pが選択されると、選択された軌跡P上の時刻t=Δtにおける自車両Vの位置(x(1)、y(1))と自車両Vの走行状態(v(1)、θ(1))、選択された軌跡P上の時刻t=2Δtにおける自車両Vの位置(x(2)、y(2))と自車両Vの走行状態(v(2)、θ(2))、・・・・・選択された軌跡P上の時刻t=nΔtにおける自車両Vの位置(x(n)、y(n))と自車両Vの走行状態(v(n)、θ(n))が走行計画生成部14から出力され、これら自車両Vの位置と自車両Vの走行状態に基づき走行制御部15において自車両の走行が制御される。
次いで、時刻t=Δtになると、このときの時刻tを零とし(時刻t=0)、自車両Vの位置を(x(0)、y(0))とし、自車両Vの走行状態を(v(0)、θ(0))とて、再び、車両の複数の加速度の値と複数の操舵角速度の値の組み合わせについて複数の進路の軌跡Pが生成され、これら軌跡Pの中から最適な軌跡Pが選定される。最適な軌跡Pが選定されると、選択された軌跡P上の各時刻t=Δt、2Δt、・・・nΔtにおける自車両Vの位置と自車両Vの走行状態が、走行計画生成部14から出力され、これら自車両Vの位置と自車両Vの走行状態に基づき走行制御部15において自車両の走行が制御される。以後、これが繰り返される。
次に、この走行計画生成部14により生成された車両の走行計画に基づき行われる車両の走行制御について簡単に説明する。この車両の走行制御を行うためのルーチンを示す図5を参照すると、まず初めに、ステップ30において、走行計画生成部14により生成された走行計画、即ち、選択された軌跡P上のt=Δtからt=nΔtまでの各時刻における自車両Vの位置(x、y)と自車両Vの走行状態(v、θ)が読み込まれる。次いで、これらの各時刻における自車両Vの位置(x、y)と自車両Vの走行状態(v、θ)に基づいて、ステップ31では、車両Vのエンジンの駆動制御およびエンジン補機の制御等が行われ、ステップ32では、車両Vの制動制御および制動灯の点灯制御等が行われ、ステップ33では、操舵制御および方向指示灯の制御等が行われる。これらの制御は、ステップ30において、更新された新たな走行計画を取得するごとに更新される。このようにして、生成された走行計画に沿った車両Vの自動走行が行われる。
次に、図6Aを参照しつつ、走行計画生成部14により生成された走行計画に基づく自車両Vのエンジンの駆動制御の一例について概略的に説明する。この図6Aには、道路状況と、自車両Vの車速vと、自車両Vに対する要求駆動トルクTRとが示されている。なお、図6Aにおいて、車速vは走行計画生成部14による走行計画に基づく車速の一例を示しており、図6Aに示される例は、時刻t=0では車両Vが停止しており、時刻t=0から時刻t=Δtの間では車両Vの加速運転が行われ、時刻t=Δtから時刻t=7Δtの間では途中で上り勾配になったとしても定速走行が行われ、時刻t=7Δt以降の下り勾配では車速vが減速される場合を示している。
さて、本発明による実施例では、走行計画生成部14による走行計画に基づく車速vから車両Vに加えるべき車両Vの進行方向の加速度A(n)が求められ、この加速度A(n)から車両Vに対する要求駆動トルクTRが求められ、車両Vに対する駆動トルクがこの要求駆動トルクTRとなるようにエンジンが駆動制御される。例えば、図6Bに示されるように、質量Mの車両が時間Δtの間にv(n)からv(n+1)に加速されたとすると、このときの車両Vの進行方向の加速度A(n)は図6Bに示されるように加速度A(n)=(v(n+1)―v(n))/Δtで表される。このとき車両Vに対し働く力をFとすると、この力Fは車両Vの質量Mと加速度A(n)との積(=M・A(n))で表される。一方、車両Vの駆動輪の半径をrとすると、車両Vに対する駆動トルクTRはF・rで表され、従って車両Vに対する要求駆動トルクTRは、Cを定数とすると、C・A(n)(=F・r=M・A(n)・r)で表されることになる。
車両Vに対する要求駆動トルクTR(=C・A(n))が求まると、車両Vに対する駆動トルクがこの要求駆動トルクTRとなるようにエンジンが駆動制御される。具体的に言うと、車両Vに対する駆動トルクがこの要求駆動トルクTRとなるように、燃料噴射量および変速機の変速比が制御される。即ち、変速機の変速比は車速vと要求駆動トルクTRの関数として予め定められており、従って車速vと要求駆動トルクTRが定まると変速機の目標変速比が定まる。変速機の目標変速比が定まると車速vおよび要求駆動トルクTRの得られるエンジン回転数およびエンジン出力トルクが定まり、エンジン出力トルクが定まるとこのエンジン出力トルクの得られる目標燃料噴射量が定まる。このようにして目標変速比および目標燃料噴射量が定まり、変速機の変速比および燃料噴射量が夫々これら目標変速比および目標燃料噴射量に制御される。
一方、道路が上り勾配の場合には、平坦路の場合に比べて、車両Vを走行させるのに大きな駆動トルクが必要になる。即ち、図6Cに示されるように、上り勾配においては、重力の加速度をgとし、勾配をθとすると、質量Mの車両Vには、車両Vを後退させる方向に加速度AX(=g・SINθ)が作用する。即ち、車両Vには減速度AX(=g・SINθ)が作用する。このとき、車両Vが後退しないようにするのに必要な車両Vに対する要求駆動トルクTRは、Cを定数とすると、C・AX(=F・r=M・AX・r)で表される。従って、車両Vが上り勾配を走行しているときには、車両Vに対する要求駆動トルクTRが、この駆動トルクC・AXだけ増大せしめられる。
従って、図6Aに示される例では、車両Vの加速運転が行われている時刻t=0から時刻t=Δtの間では、車両Vに対する要求駆動トルクTRが増大され、車両Vが平坦路上を定速走行している時刻t=Δtから時刻t=3Δtの間では、車両Vに対する要求駆動トルクTRが若干減少され、車両Vが上り勾配上を定速走行している時刻t=3Δtから時刻t=5Δtの間では、車両Vに対する要求駆動トルクTRが大幅に増大され、車両Vが平坦路上を定速走行している時刻t=5Δtから時刻t=7Δtの間では、車両Vに対する要求駆動トルクTRが、上り勾配上を定速走行しているときに比べて減少され、車両Vが下り勾配上を若干減速して定速走行している時刻t=7Δt以降では、車両Vに対する要求駆動トルクTRが更に減少される。
図7は、車両の走行計画に基づくエンジン駆動制御の制御構造図を示している。走行計画40に基づき生成された現在(時刻t=0)の車速をv(0)とした場合、本発明による実施例では、Δt時間後の時刻t=Δtにおける車速を、走行計画40に基づき生成された車速v(1)に制御するフィードフォワード制御と、実際の車速を走行計画40に基づき生成された車速vに制御するフィードバック制御とが同時に平行して行われている。この場合、これらフィードフォワード制御とフィードバック制御とを同時に説明すると分かりづらいので、最初にフィードフォワード制御について説明し、続いてフィードバック制御について説明する。
図7を参照すると、フィードフォワード制御部41では、走行計画40に基づき生成された現在(時刻t=0)の車速v(0)と、時刻t=Δtにおける車速v(1)に基づき、車速v(0)からv(1)に変化するときの車両Vの進行方向の加速度A(1)=(v(2)―v(1))/Δtが演算される。一方、勾配補正部42では、図6Cを参照しつつ説明した、上り勾配或いは下り勾配における加速度AX(=g・SINθ)が演算される。これらのフィードフォワード制御部41で得られた加速度A(1)と勾配補正部43で得られた加速度AXが加算され、要求駆動トルクTRの演算部44において、フィードフォワード制御部41で得られた加速度A(1)と勾配補正部43で得られた加速度AXとの和(A(1)+AX)から車両Vに対する要求駆動トルクTRが演算される。
この加速度の和(A(1)+AX)は、車速をv(0)からv(1)に変化させるのに必要な加速度を表しており、従ってこの加速度の和(A(1)+AX)に基づいて車両Vに対する要求駆動トルクTRが変化せしめられると、時刻t=Δtにおける車速は計算上v(1)になる。従って、続くエンジン駆動制御部45では、車両Vに対する駆動トルクがこの要求駆動トルクTRとなるようにエンジンが駆動制御され、それによって車両が自動走行される。このように、加速度の和(A(1)+AX)に基づいて車両Vに対する要求駆動トルクTRが変化せしめられると、時刻t=Δtにおける車速は計算上v(1)になる。しかしながら、実際の車速はv(1)からずれ、このずれをなくすために、フィードバック制御が行われている。
即ち、フィードバック制御部43では、走行計画40に基づき生成された現在の車速v(0)と実際の車速vzとの差(=v(0)―vz)が零になるように、即ち、実際の車速vzが走行計画40に基づき生成された現在の車速v(0)となるように車両Vに対する要求駆動トルクTRがフィードバック制御される。具体的には、フィードバック制御部41では、現在の車速v(0)と実際の車速vzとの差(=v(0)―vz)に予め設定されたゲインGを乗算した値(v(0)―vz)・Gが演算され、フィードフォワード制御部41で得られた加速度A(1)にフィードバック制御部41で得られた(v(0)―vz)・Gの値が加算される。
このようにして実際の車速vzが走行計画40に基づき生成された車速v(n)に制御される。なお、走行計画40では各時刻t=0、t=Δt、t=2Δt・・・における各車速v(0)、v(1)、v(2)・・・が生成され、フィードフォワード制御部41ではこれらの車速v(n)に基づいて各時刻t=0、t=Δt、t=2Δt・・・における車両Vの進行方向の加速度A(1)、A(2)、A(3)・・・が演算され、要求駆動トルクTRの演算部44では、これら加速度A(1)、A(2)、A(3)・・・に基づいて各時刻t=0、t=Δt、t=2Δt・・・における車両Vに対する要求駆動トルクTRが演算される。
次に、演算されたこの要求駆動トルクTRの予測値に基づくエンジンの駆動制御について、簡単に説明する。なお、その前に、このエンジンの駆動制御に関連するエンジン部分について、先に説明する。図8Aは、圧縮着火式内燃機関全体を図解的に示している。図8Aを参照すると、50はエンジン本体、51は燃焼室、52は各燃焼室51内に燃料を噴射するための燃料噴射弁、53は吸気マニホルド、54は排気マニホルド、55は吸気ダクト、56は排気ターボチャージャ、57は吸入空気量検出器、58はエアクリーナ、59はスロットル弁、60はインタクーラ、61は排気管、62はパティキュレートフィルタ、63はNOX 選択還元触媒、64は排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路、65はEGR量を制御するためのEGR制御弁、66はEGRクーラ、67は燃料供給管、68はコモンレール、69は燃料供給ポンプ、70は燃料タンクを夫々示す。
吸入空気はエアクリーナ58、排気ターボチャージャ56の吸気コンプレッサ56a、吸気ダクト55、吸気マニホルド53を介して燃焼室51内に供給され、燃焼室51から排気マニホルド54内に排出された排気ガスは排気ターボチャージャ56の排気タービン56b、パティキュレートフィルタ62およびNOX 選択還元触媒63を介して大気中に排出される。一方、パティキュレートフィルタ62の下流であってNOX 選択還元触媒63上流の排気管61内には尿素水供給弁71が配置されており、尿素水タンク72内に貯留されている尿素水73は尿素水ポンプ74、尿素水供給管75を介して尿素水供給弁71から供給される。図8Aに示されるように、尿素水タンク72内には尿素水タンク72内の尿素水の液面の高さを検出するためのレベルセンサ76が配置されている。なお、図8Aに77はエンジン本体50に取り付けられた自動変速機を示している。
図8Aに示される自動変速機77は、有段の自動変速機又は無段変速機からなる。この自動変速機77の変速比は、図7の演算部44において演算された要求駆動トルクTRと車速vとの関数であり、この自動変速機77の変速比GRは、要求駆動トルクTRと車速vとの関数として、図8Bに示されるマップの形で予め電子制御ユニット10(図1)のROM内に記憶されている。概略的にいうと、この自動変速機77の変速比GRは車速vが高くなると小さくなる。
図9は、走行計画に基づき生成された車速vの代表的な変化に対する、要求駆動トルクTRの変化と、自動変速機77の変速比GRの変化と、機関回転数の変化と、機関出力トルクの変化とを示している。図9に示されるように、走行計画に基づき生成された車速vが上昇せしめられると、即ち加速運転が行われるときには、要求駆動トルクTRは大幅に増大される。一方、車速vが上昇せしめられると、それに伴って、変速比GRは徐々に減少せしめられ、機関回転数は徐々に増大せしめられ、機関出力トルクも徐々に増大せしめられる。これに対し、走行計画に基づき生成された車速vが低下せしめられると、即ち減速運転が行われるときには、要求駆動トルクTRは負の値まで大幅に低下せしめられる。一方、車速vが低下せしめられると、それに伴って、変速比GRは徐々に増大せしめられ、機関回転数は徐々に低下せしめられ、機関出力トルクが零、或いは零近くまで低下せしめられる。
さて、上述したように、NOX 選択還元触媒63上流の排気管61内には尿素水供給弁71が配置されており、尿素水タンク72内に貯留されている尿素水73が尿素水供給弁71から排気管61内に供給される。この尿素水は排ガス中において加水分解され、アンモニアの形でNOX 選択還元触媒63に吸着される。機関から排出された排気ガスがNOX 選択還元触媒63内に流入すると、排気ガス中に含まれるNOX はNOX 選択還元触媒63に吸着されているアンモニアにより還元される。この場合、排気ガス中に含まれるNOXをNOX 選択還元触媒63において吸着アンモニアにより良好に還元するには、排気ガス中に含まれるNOXを還元するのに十分な量のアンモニアをNOX 選択還元触媒63に吸着させておくことが必要である。この場合、NOXを還元するのに必要な吸着アンモニア量は排気ガス中に含まれるNOX 量に比例しており、従って排気ガス中に含まれるNOX 量が増大したときには、それに伴って吸着アンモニア量を増大させる必要がある。従って通常は、機関から排出されるNOXが増大すると、それに伴って尿素水供給弁71から供給される尿素水量が増大される。
機関から単位時間当たり排出されるNOX量は機関の運転状態が決まるとそれに応じて定まり、本発明による実施例では、この機関から単位時間当たり排出される排出NOX量NOXAは、図10Aに示されるように、機関出力トルクTQおよび機関回転数NEの関数の形で、予め記憶部16のROM内に記憶されている。この排出NOX量NOXAは機関出力トルクTQが高くなるほど多くなり、機関回転数NEが高くなるほど多くなる。従って、機関から単位時間当たり排出される排出NOX量NOXAは、機関出力トルクTQが高くかつ機関回転数NEが高いときに多くなり、この機関から単位時間当たり排出される排出NOX量NOXAが多くなる機関の運転領域、即ち機関から単位時間当たり排出されるNOX量が予め定められた量以上となる機関の運転領域が、図10BにおいてハッチングNMで示されている。なお、図10Bの縦軸は機関出力トルクTQを示しており、図10Bの横軸は機関回転数NEを示している。
本発明による実施例では、図10BにおいてハッチングNMで示される領域が、機関から単位時間当たり排出される排出NOX量NOXAが多くなる機関の運転領域NM、即ち機関から単位時間当たり排出されるNOX量が予め定められた量以上となる機関の運転領域NMとして、予め記憶部16のROM内に記憶されている。なお、図10Bにおいて、曲線GGは、機関から単位時間当たり排出されるNOX量がこの予め定められた量となる機関の運転状態を示しており、本発明による実施例では、この曲線GGは許容限界運転状態と称される。
さて、上述したように、通常は、機関から排出されるNOXが増大すると、それに伴って尿素水供給弁71から供給される尿素水量が増大される。従って、図10Bにおいて、P(TQ,NE)で表されている機関の運転状態が、ハッチングNMで示される機関の運転領域NW内の運転状態になると、機関から排出されるNOXが増大するために、尿素水供給弁71から供給される尿素水量が増大せしめられる。その結果、NOXを還元するのに必要な尿素水の消費量が増大する。この場合、NOXを還元するために必要な尿素水の消費量を低く抑えるには、機関の運転状態P(TQ,NE)が、できる限り、機関の運転領域NW内に侵入しないようにする必要がある。
ところで、尿素水タンク72内の尿素水73の残量が少なくなったときには、速やかに、尿素水を補充することが必要となる。しかしながら実際には、このとき、速やかに、尿素水を補充することができない場合がある。このような場合には、尿素水を補充するまでNOX を浄化し続けることができるように、少量の尿素水でもってNOX を還元し続けることが必要となり、そのためには、機関から排出されるNOX 量を低下させ続けることが必要となる。この場合、図10Bに示される機関の運転領域NW内において機関の運転を行わないようにすれば、機関から排出されるNOX 量を低下させ続けることができ、従って、機関から排出されるNOX 量を低下させ続けるためには、機関の運転状態P(TQ,NE)が、できる限り、機関の運転領域NW内に侵入しないようにする必要がある。
一方、前述したように、本発明による車両の自動運転システムは、自車両Vの周辺情報を検出する外部センサ1と、地図情報を記憶している記憶装置5と、電子制御ユニット10とを具備しており、外部センサ1により検出された自車両Vの周辺情報および記憶装置5に記憶された地図情報に基づいて、自車両Vの速度および進行方向の時間的変化を示す複数の車両走行進路が生成されると共にこれら複数の車両走行進路の中から目標走行進路が決定され、この決定された目標走行進路に従って自車両Vが走行するように機関の駆動制御が行われる。
そこで、本発明による実施例では、図10Bに示されるように、機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NM内でないときに、尿素水タンク72内の尿素水73の量が予め定められた量以下であると判別されたときには、生成された複数の車両走行進路の中から、機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NM内に侵入しない車両走行進路を目標走行進路として決定するようにしている。このようにして、目標走行進路が決定されると、車両の自動走行が行われたときに、機関の運転状態P(TQ,NE)が、機関の運転領域NW内に侵入しないので、機関から排出されるNOX 量を低下させつつ、尿素水の消費量を低く抑えることができることになる。
なお、この場合、単位時間当たりの尿素水の消費量が少なければ、尿素水を補充することのできる場所まで、できる限り早く到達することが好ましい。従って、本発明による実施例では、複数の車両走行進路の中から目標走行進路を決定する際には、運転の安全性を満たした上で、単位時間当たりの走行距離が最も長くなる車両走行進路が目標走行進路として決定される。例えば、本発明による実施例では、通常、現時点から5秒先程度までの目標走行進路が生成されるので、目標走行進路が生成される5秒間程度の間において、走行距離が最も長くなる車両走行進路が目標走行進路として決定される。
一方、機関の運転状態P(TQ,NE)が、機関の運転領域NM内にあるときに、尿素水タンク72内の尿素水73の量が予め定められた量以下であると判別されたときには、機関の運転状態P(TQ,NE)を機関の運転領域NMから、できるだけ早く抜け出させることが必要となる。そこで、この場合、本発明による実施例では、生成された複数の車両走行進路の中から、機関の運転状態P(TQ,NE)を機関の運転領域NMから早期に抜け出させることのできる車両走行進路が目標走行進路として選別される。なお、この場合にも、複数の車両走行進路の中から目標走行進路を決定する際には、運転の安全性を満たした上で、単位時間当たりの走行距離が最も長くなる車両走行進路が目標走行進路として決定される。
次に、尿素水タンク72内の尿素水73の量が予め定められた量以下であると判別されたときの目標走行進路の決定の仕方について、図11Aから図16を参照しつつ、もう少し具体的に説明する。なお、図11Aから図13は、機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NM内にあるときに、尿素水タンク72内の尿素水73の量が予め定められた量以下であると判別されたときを示しており、図14Aから図16は、機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NM内にないときに、尿素水タンク72内の尿素水73の量が予め定められた量以下であると判別されたときを示している。また、図11A,11B,14A、14Bは、図10Bと同様に機関の運転領域NMを示した図であり、図12,13,15,16は、尿素水タンク72内の尿素水73の残量,車速v、要求駆動トルクTR,変速比、機関回転数NE、機関出力トルクTQ、および機関から単位時間当たり排出される排出NOX量NOXAの変化を示した図である。
まず初めに、図11Aから図13を参照しつつ、機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NM内のA点にあるときに、尿素水タンク72内の尿素水73の量が予め定められた量以下であると判別されたときの目標走行進路の決定の仕方について説明する。本発明による実施例では、このとき、外部センサ1により検出された自車両Vの周辺情報および記憶装置5に記憶された地図情報に基づいて、図11Aに示されるように、A点を起点とした複数の車両走行進路Piが生成される。このとき、各車両走行進路Piは、前述したように、各時刻t(時刻t=iΔt)における自車両Vの位置(x(i)、y(i))と、自車両Vの走行状態(v(i)、θ(i))とによって表される。ただし、このときには、機関の運転状態P(TQ,NE)を機関の運転領域NMから早期に抜け出させるために、自車両Vの車速vを減少方向に変化させる複数の車両走行進路Piのみが生成される。
図11BにおけるP1は、図11Aに示される車両走行進路Piのうちの代表的な一つの車両走行進路を示している。この車両走行進路P1では、A点からB点に向けて車速vが比較的ゆっくりと減少せしめられており、このとき車両走行計画に基づき算出される要求駆動トルクTR,変速比、機関回転数NEおよび機関出力トルクTQの変化が図12に示されている。図12からわかるように、この車両走行進路P1では、要求駆動トルクTR,変速比、機関回転数NEおよび機関出力トルクTQの全てがゆっくりと変化する。なお、図12、13、15,16において、Kは,尿素水タンク72内の尿素水73の量が予め定められた量以下であると判別された時刻を示している。
図11BにおけるP2は、図11Aに示される車両走行進路Piのうちの代表的な別の一つの車両走行進路を示している。この車両走行進路P2では、A点からB点に向けて車速vが急速に減少せしめられており、このとき車両走行計画に基づき算出される要求駆動トルクTR,変速比、機関回転数NEおよび機関出力トルクTQの変化が図13に示されている。図13からわかるように、この車両走行進路P2では、時刻Kにおいて、要求駆動トルクTRおよび機関出力トルクTQが急激に減少せしめられ、次いでB点において、駆動トルクTRおよび機関出力トルクTQが急激に増大せしめられる。
本発明による実施例では、複数の車両走行進路Piについて、夫々、機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NMから抜け出るまでの経過時間tが求められ、複数の車両走行進路Piの中からこの経過時間tが予め定められた時間t0よりも短い車両走行進路Piが選別される。次いで、この選別された車両走行進路Piの中から、単位時間当たりの走行距離の最も長くなる車両走行進路が目標走行進路として決定される。
次に、図14Aから図16を参照しつつ、機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NM外のA点にあるときに、尿素水タンク72内の尿素水73の量が予め定められた量以下であると判別されたときの目標走行進路の決定の仕方について説明する。本発明による実施例では、このとき、外部センサ1により検出された自車両Vの周辺情報および記憶装置5に記憶された地図情報に基づいて、図14Aに示されるように、A点を起点とした複数の車両走行進路Piが生成される。このとき、各車両走行進路Piは、前述したように、各時刻t(時刻t=iΔt)における自車両Vの位置(x(i)、y(i))と、自車両Vの走行状態(v(i)、θ(i))とによって表される。このときには、自車両Vの車速vを減少方向に変化させる場合および自車両Vの車速vを増大方向に変化させる場合のいずれの場合についても車両走行進路Qiが生成される。
図14BにおけるQ1は、図14Aに示される車両走行進路Qiのうちの代表的な一つの車両走行進路を示している。この車両走行進路Q1では、A点からB点に向けて車速vが比較的ゆっくりと増大せしめられており、このとき車両走行計画に基づき算出される要求駆動トルクTR,変速比、機関回転数NEおよび機関出力トルクTQの変化が図15に示されている。図15からわかるように、この車両走行進路Q1では、要求駆動トルクTR,変速比、機関回転数NEおよび機関出力トルクTQの全てがゆっくりと変化している。
図14BにおけるQ2は、図14Aに示される車両走行進路Qiのうちの代表的な別の一つの車両走行進路を示している。この車両走行進路Q2では、車速vが急速に増大せしめられ、それにより車両走行計画に基づき算出された機関の運転状態P(TQ,NE)がA点から機関の運転領域NMに向けて変化せしめられている。更に、このとき、この車両走行進路Q2では、車両走行計画に基づき算出される機関の運転状態P(TQ,NE)が許容限界運転状態GGを突き抜けて機関の運転領域NMに侵入する。このような場合には、図14Aに示されるように、車両走行計画に基づき算出された機関の運転状態P(TQ,NE)が許容限界運転状態GGに一致した点Cにおいて、再度、外部センサ1により検出された自車両Vの周辺情報および記憶装置5に記憶された地図情報に基づき、C点を起点とした複数の車両走行進路Riが生成される。
図14BにおけるR2は、図14Aに示される車両走行進路Riのうちの代表的な一つの車両走行進路を示している。この車両走行進路R2では、C点からD点に向けて車速vが比較的急速に減少せしめられる。このように、図14Bにおいて機関の運転状態P(TQ,NE)がA点からC点に向かい、次いで、C点において向きを変えてD点に向かうときの要求駆動トルクTR,変速比、機関回転数NEおよび機関出力トルクTQの変化が図16に示されている。この車両走行進路Q2、R2では、A点からC点の間では、要求駆動トルクTRおよび機関出力トルクTQが増大せしめられ、C点からD点の間では、駆動トルクTRおよび機関出力トルクTQが減少せしめられる。
なお、本発明による実施例では、図14AのC点において、複数の車両走行進路Riから車両走行進路を選択する際には、機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NM内に侵入する車両走行進路は選別の対象から除外され、複数の車両走行進路Riの中から、機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NM内に侵入しない車両走行進路が選別され、この選別された車両走行進路の中から目標走行進路が決定される。この場合、この選別された車両走行進路Piの中から、単位時間当たりの走行距離の最も長くなる車両走行進路が目標走行進路として決定される。
このように本発明では、図17のブロック図に示されるように、自車両Vの周辺情報を検出する外部センサ1と、地図情報を記憶している記憶装置5と、電子制御ユニット10とを具備しており、電子制御ユニット10が、外部センサ1により検出された自車両Vの周辺情報および記憶装置5記憶された地図情報に基づいて、自車両Vの速度および進行方向の時間的変化を示す複数の車両走行進路を生成すると共に複数の車両走行進路の中から目標走行進路を決定する走行計画生成部14と、走行計画生成部14により決定された目標走行進路に従って車両が走行するように機関の駆動制御を行う走行制御部15と、尿素水タンク72内の尿素水73の量が予め定められた量以下であるか否かを判別する尿素水量判別部17と、機関からの単位時間当たりのNOX 排出量が予め定められた量以上となる機関の運転領域NMを記憶した記憶部16を具備しており、機関の運転状態が機関の運転領域NM内でないときに、尿素水量判別部17により尿素水タンク72内の尿素水73の量が予め定められた量以下であると判別されたときには、走行計画生成部14は走行計画生成部14により生成された複数の車両走行進路の中から、機関の運転状態が機関の運転領域NM内に侵入しない車両走行進路を目標走行進路として決定する。
図18および図19は、本発明を実行するための走行計画の生成ルーチン示している。この走行計画の生成ルーチンは繰り返し実行される。
図18を参照すると、まず初めにステップ80では、GPS受信部2で受信した自車両Vの位置情報に基づいて、車両位置認識部11により、自車両Vの位置が認識される。次いで、ステップ81では、外部センサ1の検出結果から、外部状況認識部12により、自車両Vの外部状況および自車両Vの正確な位置が認識される。次いで、ステップ82では、内部センサ3の検出結果から、走行状態認識部13により、自車両Vの走行状態が認識される。
次いで、ステップ83では、レベルセンサ76の検出信号に基づいて、尿素水タンク72内の尿素水73の量Wが予め定められた量WO 以上であるか否かが判別される。尿素水タンク72内の尿素水73の量Wが予め定められた量WO 以上であると判別されたときには、ステップ84に進んで、外部センサ1により検出された自車両Vの周辺情報および記憶装置5に記憶された地図情報に基づいて、自車両Vの速度および進行方向の時間的変化を示す複数の車両走行進路が生成される。次いで、ステップ85では、これら複数の車両走行進路から、法令を順守しつつ、安全にかつ最短時間で目的地に到達しうる一つの車両走行進路が選択され、即ち車両走行計画が決定され、この選択された車両走行進路に沿って自車両Vが自動走行される。
一方、ステップ83において、尿素水タンク72内の尿素水73の量Wが予め定められた量WO 以下であると判別されたときには、ステップ86に進んで、機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NM内であるか否かが判別される。機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NM内であると判別されたときには、ステップ87に進んで、外部センサ1により検出された自車両Vの周辺情報および記憶装置5に記憶された地図情報に基づいて、自車両Vの車速vを減少方向に変化させる複数の車両走行進路Piが生成される。次いで、ステップ88では、各時刻t(時刻t=iΔt)における要求駆動トルクTRと機関回転数NEが算出される。
次いで、ステップ89では、複数の車両走行進路Piについて夫々、機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NMから抜け出るまでの経過時間t、即ち、機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NM外となるまでの時間tが求められる。次いで、ステップ90では、複数の車両走行進路Piの中からこの経過時間tが予め定められた時間t0よりも短い車両走行進路Piが選別される。次いで、ステップ91では、この選別された車両走行進路Piの中から、単位時間当たりの走行距離の最も長くなる車両走行進路が目標走行進路として決定され、この目標走行進路に沿って自車両Vが自動走行される。
一方、ステップ86において、機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NM内にないと判別されたときには、図19のステップ92に進んで、外部センサ1により検出された自車両Vの周辺情報および記憶装置5に記憶された地図情報に基づいて、複数の車両走行進路Qiが生成される。次いで、ステップ93では、ステップ93に進む毎に、各車両走行進路Qiについて、機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NM内に侵入するか否かが順次判別される。機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NM内に侵入しないと判別されたときには、ステップ94に進んで、機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NM内に侵入しないと判別された車両走行進路Qiが記憶され、次いでステップ97に進む。
一方、ステップ93において、機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NM内に侵入すると判別されたときには、ステップ95に進み、機関の運転状態P(TQ,NE)が許容限界運転領域GGに到達した後の複数の車両走行進路Riが再度生成される。次いで、ステップ96では、再度生成された複数の車両走行進路Riの中から、機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NM内に侵入しない車両走行進路Riが選別され、この選別された車両走行進路Riが記憶される。次いで、ステップ97に進む。ステップ97では、ステップ92において生成された全ての車両走行進路Qiについて、ステップ93における判別が完了したか否かが判別される。
ステップ92において生成された全ての車両走行進路Qiについて、ステップ93における判別が完了していないときにはステップ93に戻る。これに対し、ステップ92において生成された全ての車両走行進路Qiについて、ステップ93における判別が完了したときにはステップ98に進み、ステップ94において記憶された車両走行進路Qiおよび
ステップ96において記憶された車両走行進路の中から、単位時間当たりの走行距離の最も長くなる車両走行進路が目標走行進路として決定され、この目標走行進路に沿って自車両Vが自動走行される。
このように本発明では、尿素水タンク72内の尿素水73の量が予め定められた量以下であると判別されたときには、走行計画生成部14により生成された複数の車両走行進路の中から、機関の運転状態P(TQ,NE)が機関の運転領域NM内に侵入しない車両走行進路を目標走行進路として決定し、この目標走行進路に沿って自車両Vが自動走行される。このように、本発明では、NOX 排出量が予め定められた量以上となる機関の運転領域NM内での機関の運転が行われないように目標走行進路が決定されるので、尿素水の消費量を抑制することができる。また、本発明では、実際にNOX 排出量が予め定められた量以上となる機関の運転領域NM内に限って機関の運転が制限されており、この実際にNOX 排出量が予め定められた量以上となる機関の運転領域NM外であれば、たとえアクセル開度が大きい場合でも機関の運転が行われるので、車両の走行性能が過度に抑制されるのを阻止することができる。