本発明は、運転者に燃費を向上させるための推奨アクセル開度を決定して教示する運転支援装置に関する。
従来から、自動車の走行に影響する複数の情報を組み合わせて運転者に対し自動車の運転性能の少なくとも一つを高める上で推奨すべきアクセル開度を算出し且つ提示する推奨アクセル開度算出提示手段と、自動車の運転条件の一部を変更する運転条件一部変更手段とを有し、前記運転条件一部変更手段は運転者が実行する実行アクセル開度と前記推奨アクセル開度算出提示手段が算出し提示する推奨アクセル開度の対比に基づいて作動するようになっていることを特徴とする自動車が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−197647号公報
ところで、上述の特許文献1において記述されているように、自動車の運転性能の改善に向けて運転者を誘うには、運転者に対しアクセルペダルをどのように操作すればよいかを提示するのがより直観的あり且つ制御の応答性の上からも迅速である。
しかしながら、上述の従来技術のように、車両の多様な走行シーンを考慮せずに、一律に最適燃費を達成するアクセル開度を推奨アクセル開度として算出する構成では、算出される推奨アクセル開度が、そのときの走行シーンの如何によっては必ずしも適切なアクセル開度となりえず、教示の効果が薄れる虞がある。即ち、一般的に加速走行は燃費向上とは背反関係にあるので、加速走行が行われる走行シーンにおいて、加速走行に適したアクセル開度が推奨アクセル開度として教示されない虞がある。
そこで、本発明は、加速走行が行われる走行シーンにおいて適切なアクセル開度を推奨アクセル開度として決定して教示することができる運転支援装置の提供を目的とする。
上記課題を解決するため、第1の発明は、運転者に燃費を向上させるための推奨アクセル開度を決定して教示する運転支援装置において、
アクセルペダルの操作量又は操作速度が所定値以上であるか否かを判定する加速状況判定手段と、
アクセルペダルの操作量又は操作速度が所定値以上であるか否かに応じて通常アクセルワーク案内と加速用アクセルワーク案内とを切り替えるアクセルワーク案内手段とを備え、
前記加速用アクセルワーク案内は、アクセルペダルの操作量又は操作速度が所定値以上である場合に実行され、前記アクセルワーク案内手段は、前記加速用アクセルワーク案内時には、前記通常アクセルワーク案内時よりも加速域を広く含む推奨アクセル開度を決定して教示することを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明に係る運転支援装置において、前記アクセルワーク案内手段は、前記加速用アクセルワーク案内時には、加速可能であり且つ熱効率が所定の良好な範囲内となるアクセル開度を前記推奨アクセル開度として教示することを特徴とする。
第3の発明は、第2の発明に係る運転支援装置において、前記推奨アクセル開度は、熱効率が最良となるアクセル開度であることを特徴とする。
第4の発明は、第1の発明に係る運転支援装置において、前記アクセルワーク案内手段は、前記通常アクセルワーク案内時には、制限速度が遵守されるアクセル開度を前記推奨アクセル開度として教示することを特徴とする。
第5の発明は、第1の発明に係る運転支援装置において、前記加速用アクセルワーク案内時の推奨アクセル開度は、前記通常アクセルワーク案内の推奨アクセル開度の加速側に加速用のアクセル開度の範囲を付加したものであることを特徴とする。
本発明によれば、加速走行が行われる走行シーンにおいて適切なアクセル開度を推奨アクセル開度として決定して教示することができ、その結果、加速走行が行われる走行シーンにおいても、燃費が向上するようなアクセルワークを運転者にしてもらえるように効果的に誘導することができる運転支援装置を得ることができる。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
図1は、本発明による運転支援装置の一実施例を示すシステム構成図である。本実施例の運転支援装置は、電子制御ユニット(以下、「運転支援ECU10」という)を中心に構成される。運転支援ECU10は、マイクロコンピュータによって構成されており、例えば、CPU、制御プログラムを格納するROM、演算結果等を格納する読書き可能なRAM、タイマ、カウンタ、入力インターフェイス、及び、出力インターフェイス等を有する。
運転支援ECU10には、CAN(controller area network)等の適切な通信線を介して、車両内の各種の電子部品(各種センサや各種ECU)が接続される。運転支援ECU10は、図1に示すように、かかる通信線を介して、車両ネットワーク情報や、車両前方を走行する前車に関する情報(前車情報)を取得する。
車両ネットワーク情報としては、車速や加速度のような車両の走行状態を表す車両走行情報、車両の現在位置や現在の走行環境に関する走行環境情報、アクセル開度やブレーキ操作量、方向表示器の操作信号のような運転者の操作情報、及び、各種制御情報が含まれる。尚、アクセル開度は、アクセルペダルの踏み込みストローク量としてアクセルセンサにより検出されてよい。アクセルセンサは、リンクレスタイプ等を含む如何なる種類のセンサであってもよい。例えば、アクセルセンサは、ホール素子を用いた電子式のポジションセンサであり、アクセルペダルの踏み込みストローク量の変化に応じて変化する磁界の角度をアクセル開度信号として出力する。
制御情報としては、例えばエンジン回転数、トランスミッションにおいて現在形成されているギア段などがある。走行環境情報は、主にナビゲーションシステム30から入手される。即ち、車両の現在位置は、GPS受信機によるGPS信号に基づくものであってよく、車両の現在の走行環境は、地図データベースに保存される各種地図情報に基づくものであってよい。尚、地図データベースには、例えば、交差点・高速道路の合流点/分岐点に各々対応する各ノードの座標情報、隣接するノードを接続するリンク情報、各リンクに対応する道路の車線数(レーン数)、幅員情報、各リンクに対応する国道・県道・高速道路等の道路種別や法定速度、各リンクの通行規制情報及び各リンク間の通行規制情報等が含まれている。
前車情報としては、前車と自車との相対距離、相対速度、相対角度などを表すことができる情報であり、具体的には、ミリ波やレーザー波などにより前車を検出するレーダーセンサの検出結果や、車両前方を撮影する車載カメラの画像に基づいて導出されてよい。
運転支援ECU10は、図1に示すように、メーター20やナビゲーションシステム30のディスプレイを介して、推奨アクセル開度の教示、即ちアクセルワーク案内を行う。推奨アクセル開度は、導出方法については後に詳説するが、燃費向上の観点から推奨されるアクセル開度である。アクセルワーク案内方法は、任意であるが、例えばメーター20内に推奨アクセル開度を知らせるインジケーター(レベル表示器)を設定することや、ナビゲーションシステム30のディスプレイに推奨アクセル開度を出力することで実現することができる。但し、本発明は、かかる視覚的なアクセルワーク案内方法に限定されることはなく、推奨アクセル開度を運転者に知覚させることができるものであれば、如何なる態様のアクセルワーク案内方法であってもよい。例えば、推奨アクセル開度を現在のアクセル開度が逸脱したときにブザー音を出力したり、推奨アクセル開度を現在のアクセル開度が逸脱したときにアクセルペダルに体感可能な程度の軽い衝撃(反力)を与えたり、推奨アクセル開度を現在のアクセル開度が逸脱したときに、振動体により運転者が体感可能な振動を与えたりする等、多様な態様で実現することができる。
図2は、本実施例の運転支援装置(運転支援ECU10)により実現される特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
ステップ100では、アクセルワーク案内を行うための前提条件が成立するか否かが判定される。ここでは、燃費向上よりも重視すべき状況が検出された場合に、アクセルワーク案内を行うことに対して制限が加えられる。具体的には、(1)雨や雪などで視界が悪いことが想定されるワイパー作動時、(2)視界が悪いことが想定される夜間、(3)安全性を特に配慮すべきカーブ走行などのハンドル操舵時、(4)前車との車間距離が所定閾値よりも狭くなったとき、(5)現在の車速が法定速度を超えているとき、の何れかのときは、アクセルワーク案内を行うべきでないと判断する。尚、法定速度は、例えばナビゲーションシステム30(地図データベース)から入手されてよく、或いは、車載カメラの画像に対する道路標識認識処理により導出されたものであってもよい。
本ステップ100において、アクセルワーク案内を行うための前提条件が成立する場合、即ちアクセルワーク案内が可能である場合には、ステップ110に進み、そうでない場合は、そのまま終了する。
ステップ110は、加速走行が行われる状況であるか否か、即ち運転者に加速意思があるか否かが判定される。運転者の加速意思は、如何なる適切な方法で検出されてもよく、例えば、(1)検出される車両加速度が所定の閾値を越えた場合、(2)車速が減少しない状況で追い越し車線側への車線変更を知らせる方向指示器の出力がなされた場合、(3)前方を走行する前両と自車との車間距離が所定値以上に広がった場合、及び、(4)アクセルペダルの操作量又は操作速度が所定値以上になった場合、の少なくとも何れかの場合に検出されてよい。
図3は、運転者に加速意思判定用の閾値(上記(1)における所定の閾値)の一例を示す図である。図3には、横軸に車速をとり、縦軸に加速度をとったときの閾値曲線が示されている。図3に示す例では、閾値は、車速に応じて変化し、低速域では中速域ないし高速域によりも大きな値になるように定義されている。これは、特に市街地走行時には、低速域で比較的大きい加速度が出やすいことに基づく。また、図3に示す例では、閾値曲線は、ヒステリシス特性を有するように2つの曲線G1、G2により定義されている。即ち、加速度が上限曲線G1を超えると、加速度が下限曲線G2を下回るまで、運転者に加速意思があると判定され続ける。尚、図3に示すようなマップは、例えば市街地走行時や高速道路走行時、渋滞区間走行など各種走行環境毎に用意され、走行環境毎にマップを切り替えるようにしてもよい。
図2に戻る。ステップ110において加速走行が行われる状況でないと判定された場合は、ステップ120に進み、ステップ110において加速走行が行われる状況であると判定されると、ステップ130に進む。
ステップ120では、加速走行が行われる状況でないときに適したアクセルワーク案内が実行される。以下、これを「通常アクセルワーク案内」という。通常アクセルワーク案内時には、運転支援ECU10は、例えば、制限速度が遵守され、且つ、熱効率が最良となるアクセル開度又は所定の良好な範囲内となるアクセル開度を算出し、当該算出したアクセル開度を推奨アクセル開度として教示を行う。
ステップ130では、加速走行が行われる状況にあるときに適したアクセルワーク案内、即ち加速意思があるときに適したアクセルワーク案内が実行される。以下、これを「加速用アクセルワーク案内」という。
このように本実施例によれば、加速走行が行われる状況であるか否かに応じて、それぞれに応じた異なるアクセルワーク案内(通常アクセルワーク案内又は加速用アクセルワーク案内)を行うことで、それぞれの走行シーンに適合したアクセルワーク案内を実現することができる。
例えば、通常アクセルワーク案内時には、運転支援ECU10は、定常走行が可能で、且つ、熱効率の良いアクセル開度が、推奨アクセル開度として算出される。一方、加速用アクセルワーク案内時には、運転支援ECU10は、通常アクセルワーク案内時の推奨アクセル開度よりも加速域を広く含むアクセル開度が、推奨アクセル開度として算出される。これにより、加速走行が行われる走行シーンにおいて、加速が許容される適切なアクセル開度を推奨アクセル開度として算出して教示することができる。
次に、加速用アクセルワーク案内時における推奨アクセル開度の具体的な算出方法について、各実施例に分けて説明する。
実施例1は、エンジンと電動モータを駆動源とするハイブリット車両に適用される実施例に関する。尚、電動モータの電力源は、2次電池や燃料電池であってよい。
図4は、エンジンの動作点の効率を示す図であり、横軸にパワー[kw]を示し、縦軸に燃料消費量増加比を示す。横軸のパワーは、ドライバのアクセル操作量に応じて決定されるドライバ要求パワーである。燃料消費量増加比とは、エンジンの熱効率が最良となるドライバ要求パワーを事前に算出又は実験により求めておき、そのときの燃料消費量を基準として、各ドライバ要求パワーにおいてどの程度の比で燃料消費量が増加するかを示す指標値である。従って、エンジンの熱効率の最良点は、図4に示すように、燃料消費量増加比が1になる点であり、そのときのドライバ要求パワーが、熱効率が最良となるドライバ要求パワーであり、当該ドライバ要求パワーに対応したアクセル開度が、熱効率が最良となるアクセル開度となる。尚、アクセル開度とドライバ要求パワーとの関係は、予めマップにより定められており、線形的又は非線形的に1対1で対応している。また、図4に示すようなエンジン動作線は、搭載するエンジンの特性・諸元データに基づいて予め計算ないし実験により導出しておく。
推奨アクセル開度は、図4に示すようなエンジン動作線に基づいて、熱効率が良好となるようなアクセル開度として、点又は範囲で決定される。尚、以下で説明するような推奨アクセル開度は、既知のエンジン動作線に基づいて予め算出しておき、所定のメモリに記憶される。
推奨アクセル開度を点で与える構成では、熱効率が最良となるアクセル開度が、推奨アクセル開度として決定されてよい。これにより、加速用アクセルワーク案内時に、加速可能であり、且つ、熱効率が最良となるアクセル開度を教示することができる。
また、推奨アクセル開度を範囲で与える構成では、熱効率が最良となるアクセル開度を中心とした所定範囲内のアクセル開度が、推奨アクセル開度として決定されてよい。これにより、加速用アクセルワーク案内時に、加速可能であり、且つ、熱効率が良好となるアクセル開度を教示することができる。尚、推奨アクセル開度を範囲で与える構成では、ドライバがアクセルペダルを推奨アクセル開度に合わせることが容易である。
また、同様に、推奨アクセル開度を範囲で与える構成では、エンジンの熱効率が所定基準以上となるアクセル開度の範囲が、推奨アクセル開度として決定されてよい。例えば、燃料消費量増加比に対する許容悪化率を10%に設定し、悪化率10%未満となるアクセル開度の範囲(即ち、燃料消費量増加比が1.1未満となるアクセル開度の範囲)が、推奨アクセル開度として決定されてよい。これにより、加速用アクセルワーク案内時に、加速可能であり、且つ、熱効率が良好となるアクセル開度を教示することができる。
尚、上述の如く推奨アクセル開度を範囲で与える構成では、推奨アクセル開度の下限値は、図4に示すようなエンジン動作線に基づいて熱効率の観点から決定されるアクセル開度と、必要な加速を実現可能な最小のアクセル開度とに基づいて決定されてもよい。例えば、平坦路では、図4に示すようなエンジン動作線に基づいて熱効率の観点から決定されるアクセル開度が採用され、上りの道路勾配の大きい道路では、必要な加速を実現可能な最小のアクセル開度が増加するので、それに伴って、推奨アクセル開度の下限値が増加方向にシフトされてもよい。
実施例2は、エンジンに連続可変バルブタイミング機構(VVT)を備えた車両に適用される実施例に関する。一般的に、VVTコントローラーは、ハウジングとベーンで構成され、VVTコントローラー内部の油圧室(例えば進角室と遅角室が各三室ずつ)の油圧を制御することで、インテーク及びエキゾーストカムシャフトの位相が連続的に変化される。
実施例2は、特に上述の実施例1において説明したような構成に対して、VVTの観点から、推奨アクセル開度の上限値を付与するものである。
具体的には、推奨アクセル開度の上限値は、VVT進角要求(パワー優先モード)が発生するアクセル開度の閾値に対応するものであってよい。即ち、アクセル開度が大きくなり、所定の閾値を超えるとVVT進角要求が出されるが、かかるVVT進角要求が出されると燃料消費量が増すので、燃費が悪くなる。そこで、実施例1では、VVT進角要求が出されるときのアクセル開度(所定の閾値)を、推奨アクセル開度の上限値として設定する。これにより、VVT進角要求が出されない範囲で最大限の加速が許容される。尚、VVT進角要求が出されるアクセル開度の閾値は、一般的に車速に応じて変化するので、運転支援ECU10は、現在の車速に基づいて、現在車速に対応する閾値を、推奨アクセル開度の上限値として設定する。尚、現在の車速に代えて、将来の車速(例えば所定の短い時間後の車速や所定の短い距離走行後の車速)が用いられてもよい。この将来の車速は、現在までの車速の履歴に基づいて推定可能な以後の加減速態様を加味して推定することができる。
このように本実施例2によれば、VVT進角要求による燃費悪化の可能性を考慮して、推奨アクセル開度の上限値が決定されるので、加速用アクセルワーク案内時に、燃費悪化を招くVVT進角要求が発生しない範囲で、最大限の加速を許容することができる。
尚、同様の観点から、例えば、エンジンの燃焼モードがアクセル開度(スロットル開度)を因子として切り替わる構成、例えば均質燃焼モードと、成層燃焼モードとが切り替わる構成では、成層燃焼モードから均質燃焼への切り替えが生じない最大のアクセル開度が、推奨アクセル開度の上限値として設定されてよい。尚、成層燃焼モードとは、スロットル開度を全開として多量の空気を燃焼室に供給すると共に、アクセル開度に応じた燃料を圧縮行程において噴射することにより、燃焼室内で成層燃焼を実現する動作モードである。
実施例3は、エンジン等の駆動源に接続され変速比を段階的に変化させる有段自動変速機(AT)を搭載する車両に適用される実施例に関する。即ち、エンジン等の駆動源の出力軸は、トルクコンバータを介して有段自動変速機に接続される。有段自動変速機は、所与の変速線図に基づいて変速制御される。
実施例3は、特に上述の実施例1又は2において説明したような構成に対して、有段自動変速機の変速の観点から、推奨アクセル開度の上限値を付与するものである。
具体的には、推奨アクセル開度の上限値は、各変速段におけるダウンシフト線図をまたがない最大のアクセル開度に対応するものであってよい。即ち、一般的にアクセル開度が増加されると、キックダウンが典型的であるが、現在のギア段からシフトダウンが生ずる場合があり、かかるシフトダウンは燃費悪化の要因となる。そこで、実施例3では、ダウンシフト線図をよぎってシフトダウンを起こさない最大のアクセル開度が、推奨アクセル開度の上限値として設定する。これにより、燃費悪化を招くシフトダウンの生じない範囲で、最大限の加速が許容される。
尚、有段自動変速機の変速線図は、一般的にスロットル開度と車速(又は有段自動変速機のアウトプットシャフトの回転数)による変速点が定義された変速線図が用いられるが、この場合、運転支援ECU10は、現在の車速及び現在の形成中のギア段に基づいて、現在の形成中のギア段のダウンシフト線図をよぎらない最大のスロットル開度を求め、当該求めたスロットル開度に対応するアクセル開度を、推奨アクセル開度の上限値として設定する。尚、アクセル開度とスロットル開度との関係は、予めマップにより定められており、線形的又は非線形的に1対1で対応している。
このように本実施例3によれば、有段自動変速機の変速(シフトダウン)による燃費悪化の可能性を考慮して、推奨アクセル開度の上限値が決定されるので、加速用アクセルワーク案内時に、燃費悪化を招くシフトダウンが生じない範囲で、最大限の加速を許容することができる。
尚、本実施例は、有段自動変速機の変速線図として、目標駆動力や目標加速度と車速(又は有段自動変速機のアウトプットシャフトの回転数)による変速点が定義された変速線図が用いられる場合でも、適用可能である。この場合も、運転支援ECU10は、現在の車速及び現在の形成中のギア段に基づいて、現在の形成中のギア段のダウンシフト線図をよぎらない最大の目標駆動力等を求め、当該求めた目標駆動力等に対応するアクセル開度を、推奨アクセル開度の上限値として設定すればよい。
また、本実施例において、変速線図に適用される車速は、現在の車速に代えて、将来の車速(例えば所定の短い時間後の車速や所定の短い距離走行後の車速)であってもよい。この将来の車速は、現在までの車速の履歴に基づいて推定可能な以後の加減速態様を加味して推定することができる。
また、実施例3は、上記の実施例2と組み合わせて用いることもできる。即ち、ダウンシフトが生じないようなアクセル開度の最大値と、VVT進角要求が出されないようなアクセル開度の最大値とが、選択的に推奨アクセル開度の上限値として決定される構成(例えば、何れか小さいほうが選択される構成)であってもよい。
実施例4は、エンジン等の駆動源に接続され変速比を段階的に変化させる有段自動変速機(AT)を搭載する車両に適用される実施例に関する。即ち、エンジン等の駆動源の出力軸は、トルクコンバータを介して有段自動変速機に接続される。トルクコンバータは、駆動源の出力軸の回転力を有段自動変速機のインプットシャフトへとフルードを媒体として動力伝達させる。ポンプインペラーとタービンランナー間には、ロックアップクラッチが設けられ、ロックアップクラッチは、所与のロックアップクラッチ解除線図に基づいて、その状態(係合状態又は解除状態)が油圧により制御される。ロックアップクラッチが係合状態にされると、駆動源の出力軸と有段自動変速機のインプットシャフトが直結状態となるので、トルクコンバータにおけるエネルギ損失が少なくなり、動力伝達効率(ひいては燃費)が向上する。
実施例4は、特に上述の実施例1又は2において説明したような構成に対して、ロックアップクラッチの作動の観点から、推奨アクセル開度の上限値を付与するものである。
具体的には、推奨アクセル開度の上限値は、ロックアップクラッチ解除線をまたがない最大のアクセル開度に対応するものであってよい。即ち、ロックアップクラッチ解除をまたぐと、駆動源の出力軸と有段自動変速機のインプットシャフトとが直結状態から非直結状態となるので、燃費悪化の要因となる。そこで、実施例4では、ロックアップクラッチ解除線をよぎってロックアップクラッチの解除を起こさない最大のアクセル開度が、推奨アクセル開度の上限値として設定する。これにより、燃費悪化を招くロックアップクラッチの解除の生じない範囲で、最大限の加速が許容される。
尚、ロックアップクラッチ解除線図は、一般的にスロットル開度と車速(又は有段自動変速機のアウトプットシャフトの回転数)による変速点が定義された解除線図が用いられるが、この場合、運転支援ECU10は、現在の車速に基づいて、現在の車速でロックアップクラッチ解除線をよぎらない最大のスロットル開度を求め、当該求めたスロットル開度に対応するアクセル開度を、推奨アクセル開度の上限値として設定する。尚、アクセル開度とスロットル開度との関係は、予めマップにより定められており、線形的又は非線形的に1対1で対応している。
このように本実施例4によれば、ロックアップクラッチ機構の解除による燃費悪化の可能性を考慮して、推奨アクセル開度の上限値が決定されるので、加速用アクセルワーク案内時に、燃費悪化を招くロックアップクラッチ機構の解除が生じない範囲で、最大限の加速を許容することができる。
尚、本実施例において、ロックアップクラッチ解除線図に適用される車速は、現在の車速に代えて、将来の車速(例えば所定の短い時間後の車速や所定の短い距離走行後の車速)であってもよい。この将来の車速は、現在までの車速の履歴に基づいて推定可能な以後の加減速態様を加味して推定することができる。
また、実施例4は、上記の実施例2及び/又は実施例3と組み合わせて用いることもできる。即ち、ロックアップクラッチ機構の解除が生じないようなアクセル開度の最大値と、ダウンシフトが生じないようなアクセル開度の最大値と、VVT進角要求が出されないようなアクセル開度の最大値とが、選択的に推奨アクセル開度の上限値として決定される構成(例えば、最も小さいアクセル開度の最大値が選択される構成)も可能である。
実施例5は、エンジン等の駆動源に接続され変速比を段階的に変化させる有段自動変速機(AT)を搭載する車両に適用される実施例に関する。即ち、エンジン等の駆動源の出力軸は、トルクコンバータを介して有段自動変速機に接続される。
本実施例5では、上述の実施例1と同様の考え方で、推奨アクセル開度は、スロットル開度と燃料消費量との関係を表すエンジン動作線(この場合、図4の横軸のパワーが、スロットル開度となる。)に基づいて、熱効率が良好となるようなアクセル開度として、点又は範囲で決定される。尚、この場合、スロットル開度と燃料消費量との関係は、エンジン回転数に依存するので、推奨アクセル開度は、エンジン回転数毎に算出されたエンジン動作線に基づいて予め算出しておき、所定のメモリに記憶される。また、アクセル開度とスロットル開度との関係は、予めマップにより定められており、線形的又は非線形的に1対1で対応している。
具体的には、運転支援ECU10は、計測されたエンジン回転数(例えばNEセンサの信号)を取得し、そのエンジン回転数で熱効率が最良となるアクセル開度を、推奨アクセル開度として決定してもよい。これにより、加速用アクセルワーク案内時に、加速可能であり、且つ、熱効率が最良となるアクセル開度を教示することができる。
また、運転支援ECU10は、計測されたエンジン回転数を取得し、そのエンジン回転数で熱効率が最良となるアクセル開度を中心とした所定範囲内のアクセル開度を、推奨アクセル開度として決定してもよい。これにより、加速用アクセルワーク案内時に、加速可能であり、且つ、熱効率が良好となるアクセル開度を教示することができる。
また、同様に、運転支援ECU10は、計測されたエンジン回転数を取得し、そのエンジン回転数でエンジンの熱効率が所定基準以上となるアクセル開度の範囲を、推奨アクセル開度として決定してもよい。例えば、燃料消費量増加比に対する許容悪化率を10%に設定し、悪化率10%未満となるアクセル開度の範囲(即ち、燃料消費量増加比が1.1未満となるアクセル開度の範囲)が、推奨アクセル開度として決定されてよい。これにより、加速用アクセルワーク案内時に、加速可能であり、且つ、熱効率が良好となるアクセル開度を教示することができる。
本実施例5は、上述の実施例3又は4の構成において組み合わせて適用可能であり、この場合、推奨アクセル開度の下限値を付与するために用いられてよい。例えば、推奨アクセル開度の下限値は、燃料消費量増加比に対する許容悪化率を10%に設定し、悪化率10%となるアクセル開度が、推奨アクセル開度の下限値として決定されてよい。この場合、推奨アクセル開度(下限値及び上限値)は、各変速段にて速度のマップとして予め用意されてよい。
また、同様に、推奨アクセル開度の下限値は、エンジン動作線に基づいて熱効率の観点から決定されるアクセル開度と、必要な加速を実現可能な最小のアクセル開度とに基づいて決定されてもよい。例えば、平坦路では、エンジン動作線に基づいて熱効率の観点から決定されるアクセル開度が採用され、上りの道路勾配の大きい道路では、必要な加速を実現可能な最小のアクセル開度が増加するので、それに伴って、推奨アクセル開度の下限値が増加方向にシフトされてもよい。
実施例6は、上述の実施例3又は4の構成に対する変形例に関し、実施例6では、上述の実施例3又は4における所与の変速線又はロックアップクラッチ解除線に代えて、ドライバ毎に学習された変速線又はロックアップクラッチ解除線が、推奨アクセル開度の上限値を求めるために用いられる。尚、推奨アクセル開度の上限値の導出方法については、用いる線図が異なる以外は同じであるので、説明を省略する。
ところで、変速やロックアップクラッチの制御は、基本的には所与の変速線図又はロックアップクラッチ解除線図に基づいて行われるが、実際には、アクセルペダルの踏み込み速度によって変速やロックアップクラッチの動作タイミングは異なる。このため、例えばアクセルの踏み込み速度の速い傾向にあるドライバに対して、アクセルペダルの踏み込み速度を考慮せずに加速用アクセルワーク案内を行うと、既に推奨アクセル開度を逸脱して燃費悪化領域に入ってしまっている(即ち、推奨アクセル開度の教示タイミングが遅れる。)事態が起こりうる。
これに対して、本実施例6によれば、ドライバ毎に学習された変速線又はロックアップクラッチ解除線を用いることで、ドライバ毎に異なり得るアクセルペダルの踏み込み速度を補償して、ドライバの癖を加味した加速用アクセルワーク案内を実現することができる。尚、変速線又はロックアップクラッチ解除線の学習は、変速時の車速とアクセル開度の関係を学習することで実現されてよく、あるいは、それに加えてエンジン回転数を監視して実現されてもよい。また、ドライバの識別は、ドライバ毎に付与されてよいIDや生体情報などの識別情報に基づいて実現されてよい。
また、本実施例6は、変速線図又はロックアップクラッチ解除線図がメモリに記録されていない場合に有用である。この場合、同様の要領で、変速線又はロックアップクラッチ解除線自体がアクセル開度やエンジン回転数の検出結果から推定して導出され、当該推定される変速線又はロックアップクラッチ解除線に基づいて、推奨アクセル開度の決定及びその教示(加速用アクセルワーク案内)が行われる。
また、本実施例6は、上述の実施例5との組み合わせが可能であり、この場合、上述の実施例5は、推奨アクセル開度の下限値を付与するために用いられてよい。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上述した実施例では、通常アクセルワーク案内と加速用アクセルワーク案内とが選択的に実現されているが、加速用アクセルワーク案内のみを行い、通常アクセルワーク案内が省略されてもよい。
また、上述した実施例において、加速用アクセルワーク案内時の推奨アクセル開度は、上述の如く通常アクセルワーク案内の推奨アクセル開度とは無関係に導出されるのではなく、通常アクセルワーク案内の推奨アクセル開度を補正することで導出されてもよい。例えば、加速用アクセルワーク案内時の推奨アクセル開度は、通常アクセルワーク案内の推奨アクセル開度の加速側に加速用のアクセル開度の範囲を付加することで、導出することができる。この場合、付加される加速用のアクセル開度は、上述の実施例3又は4と同様の観点から上限値が決定される。
また、上述した実施例において、上述した運転支援ECU10の機能の一部は、他のECUで実現されてもよく(例えば、現在のギア段から推奨アクセル開度の上限値を求める機能をトランスミッションECUが行ってもよい。)、逆に他のECUで実現される機能が運転支援ECU10に組み込まれてもよい。
また、上述した実施例では、燃料消費量増加比なる指標値を導入して、エンジンの熱効率ないし燃費(効率)を評価しているが、他のパラメータを用いて評価することも可能である。
本発明による運転支援装置の一実施例を示すシステム構成図である。
本実施例の運転支援装置(運転支援ECU10)により実現される特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
運転者に加速意思判定用の閾値の一例を示す図である。
エンジンの動作点の効率を示す図である。
符号の説明
10 運転支援ECU
20 メーター
30 ナビゲーションシステム