JP4002455B2 - 車両運転状態評価システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃費等の車両の運転状態を評価するためのシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
燃費等の車両運転状態を評価するための装置としては、例えば特開2000−205925号に開示された燃費表示装置がある。この装置は、エンジンコントロールユニットから出力される燃料噴射パルス信号に基づき燃料消費量を演算し、車速センサから出力される車速パルス信号に基づき走行距離を演算し、演算された走行距離を燃料消費量で割ることにより燃費を演算し表示するものである。
【0003】
しかしながら、上記従来例のように燃費を単に表示するだけでは、運転者は具体的にどのように運転操作を改善すれば燃費を良くすることができるのか、また運転操作を改善することによってどの程度燃費が向上するのかが分からず、運転技術の向上に役立てるには十分とはいえない。
【0004】
そこで、本願出願人が提案した特願2001−168964号のように、手動変速機を備えた車両において、急加速等の燃費を悪化させる運転が行なわれるとそれによって余計に消費された燃料量(過剰燃料消費量)が演算され、運転者に対して表示し、燃費を悪化させる運転を行なえばそれが直ちに過剰燃料消費量の増加となって表れるので、運転者は燃費を悪化させる原因となった運転操作を知らせて、運転操作を改善する際の参考にする、というものがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記後者の従来例では、運転者が操作するアクセルペダルの踏み込み量と手動変速機で選択した変速段(変速比)及び車速などの運転状態を検出して上記過剰燃料消費量の演算及び判定を行っているが、定速走行装置(オートクルーズコントローラ)を備えた車両に上記後者の従来例を適用しようとすると、定速走行装置の作動中では、アクセルペダルが踏まれていないため、アクセルペダルの踏み込み量とエンジン回転速度からエンジン出力を求めることができず、この結果、過剰燃料消費量の演算を行うことができないという問題があった。
【0006】
また、トルクコンバータを含む自動変速機を備えた車両に上記後者の従来例を適用すると、トルクコンバータのコンバータレンジでは、ポンプとタービンに滑りが生じるため、エンジンが行った仕事と駆動輪が実際に行った仕事には、トルクコンバータの伝達効率が影響するため、上記過剰燃料消費量の演算を正確に行うことができないという問題があった。
【0007】
さらに、定速走行装置や自動変速機などの自動制御装置を備えた車両では、運転者の運転意図が直接エンジン回転速度や変速比(変速段)に対応するものではなく、定速走行装置を適用した車両では、運転者の運転意図は車速の維持または加減速といった定速走行装置に対する指令として表れ、自動変速機を適用した車両では運転者の運転意図はアクセルペダルの踏み込み量として表れるため、上記後者の従来例のように、加速、定常共に可能な限りより高速側の変速段を使用するように理想的な運転操作を教示することができない、という問題があった。
【0008】
そこで本発明はこのような点に着目してなされたもので、定速走行装置やトルクコンバータ付き自動変速機等の自動制御装置を備えた車両において、運転者に対して運転技術の向上に役立つ情報を提示し、運転操作の改善による燃費の向上、ひいては低公害化を実現することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
また、第1の発明は、特定の燃費を悪化させる運転が行われたことを検出する燃費悪化検出手段と、前記特定の燃費を悪化させる運転が行われたことが検出された場合に、実際に消費された燃料量と、前記特定の燃費を悪化させる運転が行なわれずに走行したとした場合に消費される燃料量とをそれぞれ演算する燃料量演算手段と、前記実際に消費された燃料量から前記特定の燃費を悪化させる運転が行われずに走行したとした場合に消費される燃料量を減じて前記特定の燃費を悪化させる運転によって過剰に消費された過剰燃料量を演算する過剰燃料量演算手段と、前記演算された過剰燃料消費量を運転者に対して表示する表示手段と、
を備えた車両運転状態評価システムにおいて、
前記燃料量演算手段は、車両に搭載されて車速を制御する定速走行装置の作動状態を推定する自動制御装置作動状態検出手段と、前記定速走行装置に設けた出力調整部の作動状態を推定する出力調整状態検出手段を有し、前記自動制御装置作動状態検出手段は、車両の運転状態が予め設定した運転状態となったときに前記定速走行装置が作動中であることを推定し、前記定速走行装置が作動中であることが推定されたときには、前記出力調整状態検出手段が推定した出力調整部の作動状態と、エンジン回転速度とから、予め設定したエンジン特性におけるエンジンの運転点を求め、この運転点に対応するエンジントルクと燃料消費率を算出し、前記エンジン回転速度とエンジントルクからエンジン出力を求め、このエンジン出力と前記燃料消費率の積から実際に消費された燃料量を演算する。
【0014】
また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記出力調整部は、電子制御による噴射パルスにより燃料噴射量を制御する燃料噴射量制御手段を有し、エンジン回転速度と噴射パルス幅とから予め設定されたエンジン特性に基づいてエンジントルクと燃料消費率を演算し、前記エンジン回転速度とエンジントルクからエンジン出力を求め、このエンジン出力と前記燃料消費率の積から実際に消費された燃料量を演算する。
【0017】
また、第3の発明は、前記第1の発明において、前記燃料量演算手段は、車両が抵抗に抗して走行した仕事率に前記燃料消費率を乗じて求めた要求燃料量を、前記特定の燃費を悪化させる運転が行なわれずに走行したとした場合に消費される燃料量として演算する。
【0019】
【発明の効果】
したがって、第1の発明は、車両に搭載された定速走行装置の作動状態を車両の運転状態に基づいて推定し、急加速等の燃費を悪化させる運転が行なわれるとそれによって余計に消費された燃料量(過剰燃料消費量)が、定速走行装置の特性に応じて演算され、運転者に対して表示される。燃費を悪化させる運転を行なえばそれが直ちに過剰燃料消費量の増加となって表れるので、運転者は燃費を悪化させる原因となった運転操作を知ることができ、運転操作の改善する際の参考にすることができる。また、運転者に自らの運転操作によってどの程度燃費を悪化させたかを認識させることができるので、運転者に運転技術の改善を促すことができる。特に、定速走行装置やトルクコンバータ付き自動変速機を備えた車両では、運転者が直接的に変速段を指令することが難しいが、定速走行装置に設定する車速や自動変速モードにおけるアクセル操作量に対する過剰な燃料の消費を教示することが可能となり、定速走行装置や自動変速機などの自動制御装置の特性に応じた運転技術の向上を図ることが可能となるのである。
【0020】
さらに、定速走行装置を備えた車両に車両運転状態評価システムを付加する場合、定速走行装置の信号から作動状態を判定することもできるが、車両の運転状態から定速走行装置の作動状態を推定することにより容易に取り付けることが可能となると共に、信号線の加工などによる定速走行装置の誤動作を防ぐことができる。
【0021】
また、定速走行装置を搭載した車両では、車両の運転状態が予め設定した運転状態となったときに、定速走行装置による定速走行制御中であることを判定でき、定速走行装置からの信号を用いることなく車両運転状態評価システムを容易に付加することが可能となって、また、アクセル操作量が0となる定速走行制御期間中の燃料量の演算を正確に行うことができる。
【0022】
また、定速走行装置に設けた出力調整部の作動状態と、エンジン回転速度とから、予め設定したエンジン特性に基づいてエンジントルクと燃料消費率を算出して、消費した燃料量と無駄に消費した燃料量をそれぞれ求めることができる。
【0023】
また、第2の発明によれば、出力調整部が電子制御による噴射パルスにより燃料噴射量を制御する場合、エンジン回転速度と噴射パルス幅とから予め設定されたエンジン特性に基づいてエンジントルクと燃料消費率を正確に演算することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明に係る車両運転状態評価システムを定速走行装置(オートクルーズコントローラ)及びトルクコンバータ付き自動変速機を備えた車両に適用した構成を示すブロック図である。このシステムは、評価対象となる車両に装着される運転状態表示装置1と、その車両を管理する管理者用パソコン2とで構成される。
【0029】
運転状態表示装置1は、運転状態演算部3と、表示部4と、メモリカード読み出し/書込み部5と、加速度センサ6とから構成され、少なくとも表示装置4が運転者にとって見やすい位置となるように評価対象車両に装着される。
【0030】
運転状態演算部3には、車速(駆動輪または駆動軸の回転速度)信号、図示しない評価対象車両のエンジンの回転速度信号、冷却水温信号、アクセル操作量信号、燃料温度信号、シフト位置信号等の車両出力信号と内蔵加速度センサ6からの加速度信号等が入力される。車両出力信号は図示しないエンジンコントロールユニットから得ることができるが、エンジンコントロールユニットを介さずこれらの信号を検出するセンサから直接得ることもできる。また、シフト位置信号は、自動変速機(または変速制御装置)から出力されるギアポジション信号を用い、各変速段の変速比が既知であるから、シフト位置信号に応じて変速比が決まる。
【0031】
なお、自動変速機には、運転者の操作に応じて最高ギア位置(例えば前進4速の場合は4速)の変速を行うか行わないか設定するオーバードライブスイッチ(以下、ODスイッチ)、駆動力を増大させるべく主に1速のみの変速を行うLレンジ、2速までで変速を行う2レンジ、3速までで変速を行う3レンジ、通常の走行に用いる自動変速モードとしてのDレンジ、後退位置としてのRレンジ、ニュートラル位置としてのNレンジ、駐車時に用いるPレンジなどを備える。
【0032】
定速走行装置10は、運転者が設定した車速を実現するようにエンジン出力と後述するトルクコンバータ付き自動変速機の変速段を制御する。
【0033】
ここで、定速走行装置10が作動中の期間(定速走行制御中)は、エンジンコントロールユニットに対して作動信号をONにしているので、図1の波線で示すように、運転状態表示装置1に定速走行装置10からの作動信号線を接続すれば、この作動信号のON、OFFにより定速走行制御中か否を容易に判定できる。
【0034】
定速走行装置10は、運転者の操作により定速走行制御の開始を行うセットスイッチ(図示せず)、加速(車速の増大)を指令する加速スイッチ、減速(車速の減少)を指令する減速スイッチ、再度定速走行制御に復帰するためのリジュームスイッチなどを備え、運転者の運転意図に応じた車速を設定可能に構成される。なお、定速走行制御の解除は、ブレーキペダルの操作や車速が所定の下限値を下回ったことなど所定の解除条件が成立したときに行われる。
【0035】
そして、定速走行装置10は、実際の車速を設定された車速に一致させるように、スロットル開度(または燃料噴射量)を指令する出力調整部から構成される。
【0036】
このエンジン出力調整部の一例を図2に示す。図2においてアクセルペダルの動きはワイヤー18やリンケージにより出力調整部(たとえばディーゼルエンジンの列型ポンプやガソリンエンジンのスロットルバルブ)の出力調整レバー17に伝えられ、この動きの位置は開度センサー16により検出される。これによればアクセルペダル7を踏み込んだ直後の加速初期のスモークを低減するため、アクセルと出力調整部との間にダンパー(ダッシュポット)を入れた場合でも出力調整部の真の位置を検出することができる。
【0037】
一方、定速走行装置10がオンとなって車速が設定されると、当該車速を維持するようにアクチュエーター14が作動しドラム13を回転させる。13は出力調整レバー17と同軸で軸の周りに自由に回転できる。アクチュエータ14がワイヤーやリンクを介してドラム13を図中右方向(反時計回り)に回転させるとドラム13の先端のピックアップ部15で出力調整レバー17を押して同方向に回転させて出力を増大させる。
【0038】
また、車速が設定値より高くなると、アクチュエータ14が出力調整レバー17を図中左方向(時計回り)に若干回転させてエンジン出力を低減する。このように定速走行装置10が作動しているときは、アクセルペダル7から足をはなしていても出力調整レバー17は適切な位置を保つ。
【0039】
このとき、アクセルペダル7が踏み込まれていなくても、出力調整レバー17の動きを出力調整部操作量検出センサー16で実質的なアクセル操作量を検出できる。
【0040】
なお、エンジン出力調整部は、上記図2のように機械的なアクチュエータ14を用いたものに限定されるものではなく、図3に示すように、燃料噴射弁に送出する燃料噴射パルス幅を制御して速度を一定に維持するようにしてもよい。図3のエンジン出力調整部では、目標の車速が設定されるとこの目標値と現在の速度(実車速)とをコンピューター19で比較し、目標値の許容範囲より実車速が遅くなると燃料噴射パルス幅を広げ、また逆に実車速が目標値よりも速くなると狭くするようにして目標値の範囲内に速度を維持するようにエンジン回転速度を制御する。これはコモンレール式等の燃料噴射手段を備えたディーゼルエンジンで可能な定速走行制御である。なお、燃料噴射弁を備えたガソリンエンジンを用いた定速走行制御に適用してもよい。
【0041】
この場合、図4のようにエンジン回転速度とパルス幅を両軸(縦軸、横軸)にして、トルクと燃料消費率をパラメーターにしたマップ(エンジン特性)を作成しておき、このマップからトルクと燃料消費率を読み出し、後述のようにエンジン回転数とトルクからエンジン出力を求め、エンジン出力と燃料消費率から実際の燃料消費量を算出する。そして、車両が走行抵抗に抗して走行した仕事率に燃料消費率を乗じた要求燃料を求め、この要求燃料と上記実際の燃料消費量の差から無駄に消費された燃料量を求めることができる。
【0042】
なお、図4で破線Aのように低速もしくは高速域でパルス幅を小さく設定して、過度のスモークを発生させないようにする場合もある。
【0043】
また、定速走行装置10が停止している期間は、アクセルペダルの操作量を出力調整部の作動状態として用いればよい。あるいは、定速走行装置10の作動中は、開度センサ16の出力をアクセル操作量相当値として用いてもよい。
【0044】
運転状態演算部3は、上記入力される各種信号、メモリカード7から読み込まれた車両諸元データ、エンジン全性能マップ等に基づき燃費等の運転状態を演算する。そして、その演算された運転状態を表示部4に表示するとともに、メモリカード読出し/書込み部5でメモリカード7に記録する。
【0045】
ここでエンジン全性能マップとは、通常、図5(a)に示すようにエンジン回転速度、エンジントルクに対する燃料消費率(BSFC)の関係を示したマップ(各メッシュにはそのエンジン回転速度及びエンジントルクにおける燃料消費率が格納されている。)を指すが、このままでは燃料消費率を求めるのにいちいちエンジントルクを演算する必要があって取り扱いに不便である。そこで、ここでは、これを図5(b)に示すように縦軸がアクセル操作量(開度センサー16の出力あるいはスロットル開度)、横軸がエンジン回転速度となるように書き換え、各メッシュにその運転状態におけるエンジントルクと燃料消費率が格納されるようにしたものをエンジン全性能マップとして用いる。
【0046】
なお、ここでは、図5(b)のようなエンジン全性能マップを用い、定速走行装置10に適用する例を述べるが、まず、エンジントルクを求めるとともに、走行抵抗(空気抵抗Rl[N]、転がり抵抗Rr[N]、加速抵抗Ra[N]、勾配抵抗Ra[N]の和)を求めておくことが必要である。
【0047】
また、管理者用パソコン2は車両データベース、管理用ソフトウェア等を備え、読出し/書込み可能な記録媒体であるメモリカード7を介して前記運転状態表示装置1との間で運転状態演算に必要な各種データ、走行時に記録された運転状態の演算結果のやり取りを行なう。
【0048】
この管理者用パソコン2は、評価対象となる車両のエンジン全性能マップの自動生成、運転状態を演算するのに必要なデータ及びエンジン全性能マップのメモリカード7への記録、運転状態表示装置1でメモリカード7に記録されたデータの分析・表示等に用いられる。
【0049】
次に、トルクコンバータ付き自動変速機を図6に示す。
【0050】
図6においてトルクコンバータ20は、ポンプインペラ23,タービンランナー22およびステーター24の3要素で構成されている。ポンプインペラ23はエンジン30のクランクシャフト31と一体に回転するが、タービンランナー22は流体を介してポンプインペラ23から力が伝達される。
【0051】
ここで、ステータ24はポンプインペラ23に対しタービンランナー22の回転が低い場合、流体の流れの向きを変えトルクを増大させる。ここで、タービンランナー22の回転速度(nt)とポンプインペラ23の回転速度(np=N)との比が速度比eである。
【0052】
しかし、タービンランナー22の回転速度ntがポンプインペラ23の回転速度npの0.8倍程度(速度比eが0.8程度)になるとステータ24はワンウェイクラッチ25がはずれ、空転するようになっている。これより速度比eが大きい領域ではトルクコンバーターによるトルクの拡大はない。なお、タービンランナー22は出力軸26を介してスプラインで自動変速機27のインプットシャフト29に結合されているため、インプットシャフト29の回転速度はタービンランナー22と同じである。
【0053】
エンジン回転速度と間接的に求めたタービンランナー22の回転速度とから速度比eを求め、図7のように予め作成されているトルクコンバーターの特性線図から伝達効率ηを求め、これによりトルクコンバータ20で無駄に消費した燃料の量を算出する。
【0054】
まず、エンジン回転速度と出力制御部の位置とからマップによりトルクと燃料消費率を求め、次にエンジン回転速度と求めたトルクとからエンジン出力を算出し、これと燃料消費率とを掛け単位時間当たりの燃料消費量を演算する。ここで、タービンランナー22の回転速度は車輪もしくは駆動軸の回転速度と電子制御式の自動変速機の場合はコントロールユニットからのギヤ位置シグナル、または機械式の自動変速機の場合は制御部のライン油圧から使用しているギヤ比を求めることができる。一方、その時の速度と走行抵抗を掛け会わせることにより、車両が抵抗に抗して行った仕事率を算出する。これを変速機以降の伝動効率(例えば、0.97)で除してインプットシャフト29に入力した仕事率を求めることができる。
【0055】
ちなみにこの仕事率とエンジンの仕事率の比がトルクコンバーター20の伝達効率ηに相当する。
【0056】
エンジンが消費した燃料量の(1−η)倍が無駄に消費されたことになる。ここで、図7から直接ηを求めてもよいが、この図の値は設計値もしくは理想的な状態での値である。従って、トルクコンバータ20の伝達効率ηは作動流体(トルコン油)の性状変化や温度、トルクコンバーター20の性能劣化によって若干変化する。そのため、計算によって求めた値を用いるのがより現実に近い。また、車速が速くなってエンジンの回転速度Nとタービンランナー22の回転速度(nt)とが等しくなったときロックアップクラッチ21がオン(=エンゲージ、ロックアップ状態)になったと判断し、速度比および伝達効率をともに1とする。
【0057】
以下、本システムの具体的な内容について説明する。
【0058】
1.評価対象車両データの設定
本システムにより車両の運転状態の評価を行なう場合、まず、管理者用パソコン2において評価対象となる車両を車両データベースから選択する。ここで選択される項目としては、メーカー名、車種、年式、エンジン形式、アイドリング回転速度、車両総重量、終減速装置の減速比、各ギアポジションにおける変速機の変速比、ウィンドディフレクタの種類、ボディ形状、タイヤサイズ等があり、評価対象となる車両に対応する項目をそれぞれ選択する。
【0059】
これらの選択が終了すると、その選択された車両固有のデータ、例えば、最大エンジントルク、最大エンジントルク時のエンジン回転速度、最大駆動力、最小燃料消費率、最小燃料消費率時のエンジン回転速度等のエンジン性能データ、前面投影面積、空気抵抗係数等の車体特性データ、エンジン回転パルス数(エンジン回転速度とエンジン回転パルス数との関係)、車速パルス数(車速と車速パルス数との関係)等が自動的に選択され、選択されたデータはメモリカード7に書き込まれる。
【0060】
ここで選択されるデータのうち、エンジン性能データと車体特性データは各自動車メーカーから配布されているカタログや整備解説書等から抽出することができるので、データベースを作成するに当たって実走試験を行なってこれらのデータを収集する必要はない。また、エンジン回転パルス数、車速パルス数は各車両に搭載されているエンジンコントロールユニットの出力信号から取得することができる。
【0061】
また、管理者用パソコン2では、エンジンの全性能マップを作成すべく、車両データベースに格納されている評価対象車両のトルクに基づき、予め用意された数種類の代表的なトルクパターンをもとに評価対象車両のトルクパターン照合が行われる。
【0062】
類似したトルクパターンを持つエンジンの燃料消費率はエンジン種類(排気量等)に関係なくほぼ同じ特性を有することがわかっているので、予め用意されている代表的なトルクパターンに対応する燃料消費率特性データの中から対象車両のトルクパターンに対応する燃料消費率データが選択され、燃料消費率の特性が求められる。そして、この選択された燃料消費率特性データと実際の値である最小燃料消費率とを組み合わせることによって残りの運転条件における燃料消費率が演算され、エンジン全性能マップの燃料消費率データが生成される。
【0063】
なお、評価対象となる車両のエンジンがどれも同じ様なトルクパターンを有するときは、燃料消費率特性データは1つだけ用意しておけばよく、上記トルクパターン照合も不要である。
【0064】
図8は、エンジン全性能マップの燃料消費率データが自動生成される様子を表したものである。上述の通りトルクパターンが分かればそのエンジンの燃料消費率特性がわかるので、実際の値である最小燃料消費率を一つ与えれば、あとはそれに対する比率を掛けていくことで全運転条件における燃料消費率を求めることができる。なお、エンジン全性能マップのトルクデータはデータベースに格納されているエンジン出力特性から求めることができる。
【0065】
このようにして燃料消費率データとエンジントルクデータとで構成されるエンジン全性能マップが自動的に生成され、生成されたマップはメモリカード7に記録される。
【0066】
運転状態を演算するのに必要な各種データをメモリカード7に書き込んだら、そのメモリカード7を運転状態表示装置1のメモリカード読み出し/書込み部5に差し込み、運転状態の演算に必要な各種データを運転状態表示装置1に読み込ませる。
【0067】
2.センサの初期調整及びエンジン全性能マップの補正
必要なデータの読込が完了したら、アクセル操作量センサと内蔵加速度センサ6の初期調整が行われる。アクセル操作量センサの初期調整は、例えば、アクセルペダルを全閉状態、全開状態としたときのセンサ出力値を検出することによって行われ、また、内蔵加速度センサ6の初期調整は、例えば、装置に取り付けた水準器を用いて行われる。
【0068】
センサの初期調整が終了すると、今度は車両を実際に走行させ、そのときに計測されたデータに基づき上記エンジン全性能マップのトルクデータの補正が行われる。このような補正を行なうのは、エンジンのカタログ性能と実際の性能とにはずれがあり、正確な運転状態を演算するためにはこのずれを修正する必要があるからである。なお、この補正は運転状態表示装置1を車両に取り付けた後の最初の走行時に計測されたデータに基づき行われる。
【0069】
具体的には、第1のトレース条件(アクセル操作量70%以上)で車両を走行させて全開走行時におけるトルクデータを演算し、第2のトレース条件(アクセル操作量30〜70%)で車両を走行させて指定したトルクにおけるアクセル操作量及びエンジン回転速度を計測する。なお、いずれのトレース条件も、路面勾配ゼロ、水温規定値、加速状態、空車状態に設定され、エンジントルクTeは次式(1)、
【0070】
【数1】
により演算される。Rは後述の式(8)から式(13)を用いて演算される走行抵抗[N]、rはタイヤ動荷重半径[m]、itはそのときのギアポジションにおける変速比、ifは減速比、η1は自動変速機27以降の伝動効率である。
【0071】
そして、この計測されたデータとエンジン全性能マップとの比較に基づきエンジン全性能マップのトルクデータの補正が行われる。このように全負荷走行時及び部分負荷時の走行データに基づき補正を行なうことにより、エンジン全性能マップのトルクデータをほぼ正確な値に補正することができる。
【0072】
ここで、エンジン30と自動変速機27との間には、トルクコンバータ20が介装されており、ロックアップクラッチの解放状態ではトルクコンバータに滑りが生じ、エンジンが行った仕事と、実際に駆動輪が行った仕事にはトルクコンバータの伝達効率ηが影響するため、上記(1)式のエンジントルクTeを次のように補正する。
【0073】
まず、エンジントルクTeとトルクコンバータ20のアウトプットシャフト29に伝達されるトルクTe’は、トルクコンバータのトルク比tより、次式の関係になる。
【0074】
Te’=Te・t ………(2)
また、図7の特性図より、トルクコンバータの伝達効率ηには、
η=e・t
の関係にあることから、ストールトルク比をt1とすると、トルク比tは以下の式より求めることができる。
【0075】
【数2】
なお、e<0.8のときはポンプインペラとタービンランナーに滑りを生じるコンバータレンジとなり、e≧0.8のときはポンプインペラとタービンランナーの回転速度が一致するカップリングレンジとなる。
【0076】
次に、エンジンが行った仕事Leと、トルクコンバータ20のアウトプットシャフト29に伝達される仕事Le’より、エンジンが無駄にした仕事ΔLeを求める。まず、トルクコンバータ20のアウトプットシャフト29に伝達される仕事Le’[N・m/s]は、
【0077】
【数3】
より算出できる。ただし、ntはタービンランナー22の回転速度である。
【0078】
次に、トルクコンバータ20のアウトプットシャフト29に伝達される仕事Le’は、Le’=η・Leとなることから、既知のLe’及びt・eより算出できるηよりエンジン出力は次式で表される。
【0079】
【数4】
したがって、無駄にした仕事ΔLeは、
【0080】
【数5】
となり、また、
したがって、無駄にしたトルク(余剰トルク)をΔTeとすると、
【0081】
【数6】
より求めることができる。ただし、npはポンプインペラ23の回転速度である。
【0082】
以上の(3)式から(7)式によって、トルクコンバータ20がコンバータレンジのときには、トルクコンバータ20のアウトプットシャフト29、つまり自動変速機27に入力されるトルクLe’を求めることができる。
【0083】
なお、トルクコンバータ20の運転状態がコンバータレンジにあるかカップリングレンジ(ロックアップ状態を含む)にあるかの判定は、自動変速機27から得たギアポジション信号より変速段が決まり、この変速段に応じた変速比を用いて、カップリングレンジと仮定した場合のエンジン回転速度を求めて実際のエンジン回転速度と比較を行い、この比較結果が一致すればコンバータレンジ(またはロックアップ状態)となる。
【0084】
3.走行データに基づく運転状態の演算・判定
以上のようにして正確なトルクデータを有するエンジン全性能マップが得られれば、評価に用いる運転状態の演算・判定を開始する。具体的には、まず、基本データの演算が行われ、運転状態の演算・判定はこの基本データの演算結果を利用して行われる。
【0085】
3.1.基本データの演算
運転状態の演算に用いる基本データとしては、転がり抵抗係数μr、走行抵抗R及び駆動力Fが演算される。
【0086】
転がり抵抗係数μrは、後述の転がり抵抗Rrを演算する際に用いるデータで、路面状況(乾燥、雨天、結露、積雪等)とタイヤ種類、磨耗度等の状態によって変化する。転がり抵抗係数μrの演算に用いるデータの計測は、アクセル操作量0%で、かつシフト位置がニュートラル(Nレンジ)となっている状態で行われ、転がり抵抗係数μrの演算に必要なデータを計測することができる。転がり抵抗係数μrは、具体的には、減速開始時の速度v1[m/s]、所定時間Δt秒後の速度v2[m/s]とに基づき、次式(8)、
【0087】
【数7】
により演算される。なお、式中のgは重力加速度(=9.8[m/s2])である(他の式においても同じ)。
【0088】
次に、走行抵抗R[N]は、勾配抵抗Rs[N]、加速抵抗Ra[N]、空気抵抗Rl[N]、転がり抵抗Rr[N]をそれぞれ求め、次式(9)、
【0089】
【数8】
により演算される。
【0090】
ここで、勾配抵抗Rsは内蔵加速度センサ6によって検出された垂直方向を含む加速度と、車速信号に基づき演算される車両前後加速度との差分により勾配角度θを求め、次式(10)、
【0091】
【数9】
により演算される。W[kg]は車両総重量である。
【0092】
また、加速抵抗Raは、車両を加減速させる際に作用する慣性力による抵抗をいい、車速信号に基づき演算される車両前後加速度[m/s2]と車両総重量W[kg]及び回転部分相当重量Wr[kg]に基づき、次式(11)、
【0093】
【数10】
により演算される。
【0094】
また、空気抵抗Rlとは、走行中に車体と空気との衝撃のため生じる抵抗をいい、空気密度ρ[kg/m3]、空気抵抗係数Cd、前面投影面積A[m2]及び車速V[m/s]に基づき、次式(12)、
【0095】
【数11】
により演算される。
【0096】
また、転がり抵抗Rrとは、タイヤと路面との間に生じる抵抗をいい、転がり抵抗係数μrと車両総重量W[kg]に基づき、次式(13)、
【0097】
【数12】
により演算される。
【0098】
また、駆動力F[N]とは、エンジンからの出力によって車両を動かす力をいい、エンジン全性能マップを参照することで得られるエンジントルクTe[N・m]、現在選択されているギアポジションの変速比it、減速比if、伝動効率η1、タイヤ動荷重半径r[m]に基づき、次式(14)、
【0099】
【数13】
により演算される。
【0100】
3.2.運転状態の演算・判定
運転状態の演算・判定は以上のようにして演算された基本データを利用して行なわれる。運転状態の演算・判定としては、燃料消費量・燃費の演算、過剰駆動力・過剰駆動力率等の演算、過剰燃料消費量の演算、アイドリング判定、急加速・急減速の判定、速度超過判定、シフトアップ可能判定、等速走行判定、空ぶかし判定が行われる。
【0101】
以下、これらの演算・判定処理について説明する。
【0102】
(1) 燃料消費量及び燃費の演算
燃料消費量は、エンジン回転速度N[rpm]=ポンプインペラ23の回転速度npと、エンジン回転速度及びアクセル操作量(または定速走行装置10の開度センサ16の出力信号)からエンジン全性能マップを参照することで得られるエンジントルクTe[N・m]と、に基づいて演算を行う。
【0103】
ここでは、トルクコンバータ20を備えた車両におけるエンジントルク及び燃料消費量の算出について図11のフローチャートを参照しながら説明する。なお、この図11の処理は、後述の図9に示すステップS11、S13、S15で行えばよい。
【0104】
まず、ステップS31では、検出したエンジン回転速度Nをトルクコンバータ20のポンプインペラ23の回転速度npとする。
【0105】
ステップS32では、上記運転状態演算部に入力された車速V、ギアポジションに基づく変速比it、諸元データに基づく減速比if、タイヤ動荷重半径r、ストールトルク比t1、自動変速機27以降の伝達効率η1を読み込む。
【0106】
そして、ステップS33では、次式によりタービンランナー22の回転速度ntを算出する。
【0107】
【数14】
ステップS34では、トルクコンバータ20の速度比eを、
e=nt/ne
より算出する。
【0108】
ステップS35では、速度比eがコンバータレンジにあるか否かを所定値(例えばカップリングポイント=0.8)に基づいて判定し、所定値以上であればカップリングレンジと判定してステップS37でトルク比t=1とする一方、所定値未満の場合には、コンバータレンジと判定してステップS36に進み、上記ストールトルク比t1に基づいて、上記式(3)から、
【0109】
【数15】
よりトルク比tを算出する。
【0110】
ステップS38では、トルクコンバータ20の伝達効率ηを、
η=t・e
より算出する。
【0111】
ステップS39では、効率η=1であるかを判定し、1でない場合にはステップS40以降に進み、1のときにはステップS50に進んで、マニュアル式変速機と同様の処理を行う。
【0112】
一方、トルクコンバータ20の伝達効率ηが1未満のときには、ステップS40以降の処理を行う。
【0113】
ステップS40では、次式によってエンジントルクTe[N・m]を算出する。
【0114】
【数16】
ステップS41ではエンジンが単位時間に行った仕事Le[kW]を次式により算出する。
【0115】
【数17】
ステップS42では、上記エンジントルクTeとポンプインペラ回転速度npより図5(b)に示したエンジン全性能マップより燃料消費率BSFC[g/kW・h]より算出する。
【0116】
ステップS43では上記仕事Leと既知である燃料の比重より、次式を用いて燃料消費量[cc]を算出する。
【0117】
【数18】
ステップS44では、上記式(6)から無駄にした仕事ΔLeを算出し、ステップS45では、上記式(7)から余剰トルクΔTeを算出する。
【0118】
そして、ステップS46では、無駄にした仕事ΔLe、燃料消費率BSFC、時間hから次式により無駄な燃料消費量を算出する。
【0119】
【数19】
以上より、トルクコンバータ20の滑りに起因する無駄な燃料消費量を算出できる。
【0120】
なお、定速走行装置10が作動中の場合では、上記ステップS42の演算を、図5(b)に示すマップより燃料消費率BSFC及びエンジントルクTeを求めればよく、また、この図5(b)のマップでは、縦軸がアクセル操作量となっているが、上記開度センサ16が検出した出力をアクセル操作量に換算してもよく、あるいは、縦軸を開度センサ16の出力としたエンジン全性能マップを別途設け、定速走行制御中には使用するマップを切り換えるようにしてもよい。
【0121】
一方、上記ステップS50で行われる手動変速機を備えた車両の燃料消費量は、エンジン回転速度N[rpm]と、エンジン回転速度及びアクセル操作量から図5(a)のエンジン全性能マップを参照することで得られるエンジントルクTe[N・m]と、に基づき、次式(19)、
【0122】
【数20】
によりエンジン出力[kW]を求め、このエンジン出力と、エンジン回転速度とアクセル操作量とに基づきエンジン全性能マップを参照することによって得られる燃料消費率と、燃料比重と、走行時間に基づき、次式(20)、
【0123】
【数21】
により演算される。そして、燃費は、車速信号に基づき得られる車速を積分することで得られる走行距離と上記燃料消費量とに基づき、次式(21)、
【0124】
【数22】
により演算される。ここで燃費としては、例えば、過去所定時間の平均燃費、現在の瞬間燃費が演算される。そして、過去の燃費データと比較して平均燃費が最もよい値をとった場合はその値を最高燃費として記憶される。
【0125】
(2) 過剰駆動力・過剰駆動力率等の演算
「過剰駆動力」とは、エンジンより伝達される駆動力Fから、走行抵抗Rから加速抵抗Raを除いた値(=Rs+Rl+Rr)を減じた値をいい、この過剰駆動力の値が負であれば車両は減速状態にあり、正であれば加速状態にある。この過剰駆動力が極端に大きい場合は無駄な駆動力を働かせていると推定でき、速やかなシフトアップまたは適切なアクセル操作量に戻す操作が必要であると判断できる。
【0126】
図9は過剰駆動力・過剰駆動力率等の演算処理及び演算された過剰駆動力率等の表示部4への表示処理の内容を示したものである。この処理は運転状態演算部3において所定時間毎に繰り返し実行される。
【0127】
この処理について説明すると、まず、ステップS1では、エンジン回転速度が0ではないかを判定し、エンジンが運転中であれば、ステップS2、S3へ進んで定速走行装置が作動中(定速走行制御中)であるか否かを判定する。一方、エンジンが停止していればステップS16、S17に進み、過剰駆動力は0に設定され、表示部4への運転状態の表示は行わない。
【0128】
ステップS2の定速走行制御検出処理は、図10に示す処理にて実行される。
【0129】
この定速走行制御検出処理では、車両の走行状態から定速走行装置10が作動中か否かを判定するものであり、まず、ステップS101では、エンジン回転速度が予め設定した一定範囲内にあるか否かを判定し、一定範囲内になければステップ110へ進んで、通常走行中と判定する。
【0130】
一定範囲内にあればステップS102へ進んで、車速の差が一定範囲内(例えば、10km/h以内)にあるかを判定し、この速度差が一定範囲内になければステップS110に進んで通常走行中と判定する一方、速度差が一定範囲内の場合にはステップS103に進む。
【0131】
ここで、速度差は、現在の車速と所定回数前の車速の差を示すものであり、上記図9の処理が例えば100msec毎に実行される場合では、20サンプル前(2秒前)の車速と現在の車速の差を求め、この差の絶対値が予め設定した一定範囲内にあるか否かを判定する。
【0132】
ステップS103では、現在の車速が定速走行装置10で設定可能な所定の速度範囲にあるか否かを判定し、所定の速度範囲(例えば35km/h〜90km/h)にあればステップS104に進む一方、そうでない場合には定速走行制御が実行されないためステップS110に進んで通常走行中と判定する。
【0133】
ステップS104では、アクセル操作量が0(解放状態)であるか否かを判定し、アクセル操作量が0でなければ踏み込まれているのでステップS110に進んで定速走行装置10を使用しない通常走行中と判定する。アクセル操作量が0の場合にはステップS106に進む。
【0134】
ステップS106は、定速走行制御中の場合にこのサブルーチンを開始する位置である。
【0135】
ステップS107では、アクセル操作量が0(解放状態)であるか否かを判定し、アクセル操作量が0でなければ踏み込まれているのでステップS110に進んで定速走行装置10を使用しない通常走行中と判定する。一方、アクセル操作量が0の場合にはステップS108に進み、ギアが確定してるか否かを判定し、確定していればステップS109に進んで定速走行制御中と判定する一方、ギアが確定していない場合はステップS110に進んで通常走行中と判定する。
【0136】
以上ステップS101〜S110より、定速走行装置10の作動状態を車両の運転状態に基づいて間接的に検出して判定した後、図9のフローチャートに復帰する。
【0137】
そして、図9のステップS3では、定速走行制御中か否かを判定して定速走行制御中であればステップS9に進む一方、通常走行中であればステップS4に進んでアクセル操作量が0か否かを判定する。
【0138】
ステップS4、S5ではアクセル操作量、車速がそれぞれゼロでないか判断される。そして、アクセル操作量、車速のいずれか一つでもゼロであればステップS22、S23に進んで過剰駆動力はゼロに設定される。この場合、表示部4には何も表示されない。
【0139】
また、ステップS6では現在変速中か、すなわち自動変速機27からのギアポジション信号が前回制御時から変化したか否かにより変速中か否かを判定し、変速中と判断されるとステップS22、S23に進み、この場合も過剰駆動力はゼロに設定されて表示部4には何も表示されない。
【0140】
変速中でないと判断された場合はステップS7に進み、現在の車速が規定車速以上でかつギヤ位置が最大変速段(前進5段の変速機の場合は5速)にあるか判断される。規定車速は例えば一般道走行中は50[km/h]、高速道走行中は80[km/h]に設定される。規定車速以上でかつ変速段位が最大変速段にあるときはステップS18に進み、トルクコンバータ20の滑りによる無駄なトルクの有無に応じて速度超過による過剰駆動力が演算される。
【0141】
すなわち、ステップS18では、トルクコンバータ20の滑りによって無駄にしたトルク(余剰トルク)ΔTeを上記式(7)から求め、この余剰トルクΔTeが0であればステップS19へ進んで速度超過時の過剰駆動力を演算する。
【0142】
このステップS19で行われる速度超過による過剰駆動力を演算するには、まず、現在の車速での空気抵抗と規定車速での空気抵抗をそれぞれ算出し、これらの差を余剰空気抵抗として算出する。そして、駆動力から加速抵抗を除く走行抵抗を減じて得られる過剰駆動力にこの余剰空気抵抗を加えたものを速度超過による過剰駆動力として算出する。過剰駆動力が演算されたらステップS21に進み、次式(22)、
【0143】
【数23】
により演算される過剰駆動力率が表示部4に表示される。ただし、車両が等速走行状態にあり、余剰空気抵抗の現在の駆動力に対する割合[%]が上記過剰駆動力率よりも大きい場合は、上記過剰駆動力率に代えてこの割合が表示部4に表示される。
【0144】
一方、上記ステップS18の判定で、トルクコンバータ20の滑りによる余剰トルクΔTeが0でない場合には、ステップS20に進んで、上記ステップS19で求めた過剰駆動力に余剰トルクΔTeに相当する駆動力を加えたものをトルクコンバータ20の無駄分を入れた速度超過時過剰駆動力とし、上記ステップS21へ進んで過剰駆動力率を演算すると共に表示する。
【0145】
上記ステップS7の判定で、規定車速未満あるいは最大変速段でない場合はステップS8に進み、ギヤ位置が確定変速段(シフトアップ不可能の変速段、前進5段の変速機の場合は5速あるいはリバース)にあるか判断される。
【0146】
この確定変速段にあると判断された場合はステップS10に進み、トルクコンバータ20で無駄にしたトルクΔTeの有無に応じて過剰駆動力が演算される。
【0147】
ステップS10では、上記ステップS18と同様にしてトルクコンバータ20の滑りにより無駄にした余剰トルクΔTeを求め、この余剰トルクΔTeが0のときにはステップS12へ進んで、現在の駆動力から加速抵抗を除く走行抵抗を減じて過剰駆動力が演算される。
【0148】
一方、余剰トルクΔTeが0でない場合には、ステップS11に進んで、現在の駆動力から加速抵抗を除く走行抵抗を減じたものに余剰トルクΔTeに応じた駆動力を加えたものをトルクコンバータ20による無駄分を入れた過剰駆動力として演算する。そして、ステップS13で上式(22)により過剰駆動力率が演算され表示部4に表示される。
【0149】
一方上記ステップS8でギヤ位置が確定変速段にないと判断された場合はステップS9に進んでシフトアップ可能か判断される。シフトアップ可能かどうかの判定は次のようにして行われる。
【0150】
まず、シフトアップと仮定した場合のエンジン回転速度が求められ、この時のエンジン回転速度から、シフトアップ時の全負荷時のエンジントルクが全性能マップを参照して求められる。そして、この全負荷時エンジントルクに基づきシフトアップ時の全負荷時の駆動力(最大駆動力)が算出される。
【0151】
そして、シフトアップ時のエンジン回転速度が規定回転速度以上でかつシフトアップ時の最大駆動力が走行抵抗(=Rs+Rl+Rr)以上であればシフトアップ可能と判断され、そうでなければシフトアップ可能ではないと判断される。
【0152】
シフトアップ可能でない場合は上記ステップS10に進んで現在の駆動力から走行抵抗を減じて過剰駆動力が演算され、式(22)により過剰駆動力率が演算されて表示部4に表示される。
【0153】
一方、シフトアップ可能と判断された場合はステップS14に進んで、トルクコンバータ20により無駄なトルクΔTeの有無に応じてシフトアップ可能時の過剰駆動力が演算される。
【0154】
ステップS14では上記ステップS10、S18と同様にしてトルクコンバータ20の滑りにより余剰トルクΔTeを求め、この余剰トルクΔTeが0のときにはステップS15へ進み、余剰トルクΔTeが0でないときにはステップS16に進む。
【0155】
ステップS15では、シフトアップ可能時の過剰駆動力を、シフトアップすることにより予測される燃料消費量(算出方法は後述)と現在の燃料消費量の差であるシフトアップ不作為による過剰燃料消費量を求め、これを駆動力に換算した値(ロス駆動力)とする。駆動力への換算値は式(19)、式(20)から導出される燃料消費量とエンジントルクとの関係式を用いて過剰燃料消費量をトルクに換算し、さらにこれを式(18)に代入することによって求めることができる。これによって、シフトアップが可能な状態でありながら2速レンジなどで走行を行った場合の駆動力の無駄を明確に表示できる。
【0156】
一方、ステップS16では、上記ステップS15と同様にシフトアップ不作為による駆動力を求め、これにトルクコンバータ20の滑りによって無駄にしたトルクΔTeに相当する駆動力を加えたものを、トルクコンバータ20の滑りによる無駄分を入れたシフトアップ可能時過剰駆動力を求める。これにより、シフトアップが可能な状態でありながら2速レンジなどで走行し、かつ、ロックアップが行われていない場合の過剰駆動力を演算できる。
【0157】
そして、ステップS17では上記ステップS15またはS16の何れかで求めた過剰駆動力とシフトアップ時の最大駆動力を上記式(22)に代入して過剰駆動力率を演算し、表示部4に表示する。
【0158】
ただし、車両が等速走行状態にあって上記ロス駆動力の現在の駆動力に対する割合[%]が過剰駆動力率よりも大きい場合は、過剰駆動力に代えてこの割合を表示部4に表示する。
【0159】
(3) 過剰燃料消費量の演算
「過剰燃料消費量」とは、上記過剰駆動力をはじめとして燃費を悪化させる運転によって過剰に消費された燃料量をいい、燃費を悪化させる運転が行なわれなかったとした場合の燃料消費量と実際に消費された燃料量と差として求められる。この過剰燃料消費量により、どの程度の燃料が余計に消費されたか、言い換えれば運転操作を改善することによってどの程度の燃料を節約することができるのかを知ることができる。
【0160】
過剰燃料消費量は、過剰駆動力使用による過剰燃料消費量、速度超過による過剰燃料消費量、シフトアップ不作為による燃料消費量、空ぶかしによる過剰燃料消費量、アイドリングによる過剰燃料消費量の和として演算される。
【0161】
過剰駆動力使用による過剰燃料消費量は上述した過剰駆動力を使用したことにより余計に消費される燃料量であり、過剰駆動力に基づき算出される。この過剰駆動力は、トルクコンバータ20のトルク比t<1のときには、上記式(7)で求め、トルクコンバータ20のトルク比t=1のときには、次式(23)、
【0162】
【数24】
により過剰駆動力から過剰トルクが求められる。rはタイヤ動荷重半径[m]、itはそのときのギアポジションにおける変速比it、ifは減速比、η1は自動変速機27以降の伝動効率である。そして、次式(24)、
【0163】
【数25】
により過剰トルクからトルク比t=1のときの過剰出力が求められる。なお、トルクコンバータ20のトルク比t<1のときの過剰出力は上記式(6)から求める。そしてさらに、この過剰出力から次式(25)、
【0164】
【数26】
により過剰駆動力使用による過剰燃料消費量が演算される。メモリカード7にはこの過剰駆動力使用による過剰燃料消費量を積算したものが記録される。
【0165】
また、速度超過による過剰燃料消費量は、規定車速以上で走行することによって空気抵抗が増加し、その結果過剰に消費される燃料量である。規定車速は例えば、一般道では50[km/h]、高速道では80[km/h]に設定される。速度超過による過剰燃料消費燃料量は、速度超過時の燃料消費量と規定車速時に予測される燃料消費量の差から算出される。具体的には、まず、次式(26)、
【0166】
【数27】
より走行抵抗Rr+Rs+Raを同条件として現在の空気抵抗Rlから速度超過による空気抵抗増加分(=現在の空気抵抗Rl−規定車速空気抵抗)を除いた駆動力が算出される。そして、この規定車速時駆動力から、トルクコンバータ20のトルク比t<1のときには上記式(15)からエンジントルクTeを求め、トルクコンバータ20のトルク比t=1のときには次式(27)、
【0167】
【数28】
により規定車速時のエンジントルクが求められる。また、規定車速時のエンジン回転速度は次式(28)、
【0168】
【数29】
により求められる。そして、この規定車速時のエンジン回転速度とエンジントルクに対応する燃料消費率[g/kW・h]がエンジン全性能マップを参照することによって求められ、さらに規定車速時のエンジントルクに基づき次式(29)、
【0169】
【数30】
により規定車速時のエンジン出力が求められる。そして、次式(30)、
【0170】
【数31】
により規定車速時の燃料消費量が求められ、速度超過による過剰燃料消費量は現在の燃料消費量から規定車速時の燃料消費量を減ずることで算出される。メモリカード7にはこの演算された速度超過時の過剰燃料消費量を積算したものが記録される。
【0171】
また、シフトアップ不作為による過剰燃料消費量は、シフトアップ可能な運転条件下であるにもかかわらず運転者が変速操作を怠ったことによりエンジンの運転点が燃料消費率の良い領域から外れてしまい、過剰に消費されることとなった燃料の量である。
【0172】
このシフトアップ不作為による過剰燃料消費量は、シフトアップすることにより予測される燃料消費量と現在の燃料消費量の差から算出される。具体的には、シフトアップ後のエンジントルク[N・m]を次式(31)、
【0173】
【数32】
により求め、さらにシフトアップ後のエンジン出力を次式(32)、
【0174】
【数33】
により求める。そして、シフトアップ後のエンジン回転速度とエンジントルクに対応する燃料消費率[g/kW・h]をエンジン全性能マップを参照して求め、次式(33)、
【0175】
【数34】
によりシフトアップ後に予測される燃料消費量を算出する。そして、この値を現在の燃料消費量から減ずることでシフトアップ不作為による過剰燃料消費量が求められ、これを積算したものがメモリカード7に記録される。
【0176】
また、空ぶかしによる過剰燃料消費量とは、停車時に空ぶかしをすることによって余計に消費された燃料量である。空ぶかしによる過剰燃料消費量は、まず、次式(34)、
【0177】
【数35】
によりアイドリング時の出力を求める。図示トルクはエンジン自体の回転に要するトルク(主運動系、動弁系、補機類などフリクション)である。そして、このアイドリング時の出力を、次式(35)、
【0178】
【数36】
に代入してアイドリング時の燃料消費量を算出する。そして、現在の燃料消費量からこのアイドリング時の燃料消費量を減ずることで空ぶかしによる燃料消費量が算出され、これを積算したものがメモリカード7に記録される。
【0179】
また、アイドリング時の過剰燃料消費量は、所定時間(例えば20秒)以上のアイドリングにより消費される燃料量であり、アイドリング条件成立時の燃料消費量をそのまま過剰燃料消費量とする。メモリカード7にはこの値を積算したものが記録される。
【0180】
以上のようにして算出された、過剰駆動力使用による過剰燃料消費量、速度超過による過剰燃料消費量、シフトアップ不作為による燃料消費量、空ぶかしによる過剰燃料消費量、アイドリングによる過剰燃料消費量を加えたものが過剰燃料消費量となり、過剰燃料消費量は後述する表示部4の運転状態表示部43に表示される。
【0181】
なお、過剰燃料消費量は以下に示すようにエンジン全性能マップから規定される理想的な運転をしたときに消費される燃料量を求め、これを実際に消費された燃料量から減じて求めるようにしても良い。
【0182】
図12はエンジン全性能マップの一例を示したものであり、理想的な運転とはエンジンの運転点が燃料消費率の高くなる図中斜線で示す領域を通るように変速操作を行なう運転である。図12において、各ギヤでエンジンの運転点がC1→D1と移行するようにすれば燃料消費率が良い領域を有効に使うことができるが、使用するギヤ位置が不適切でC2→D2、C3→D3のような運転をすると同一仕事をするときに燃料を余分に消費することになる。ここでC3→D3はトルクが出ない分、回転速度を上げたり加速時間が長くなったりする。したがって、理想的な運転とは3速でエンジンの運転点がC1→D1となるように運転してシフトアップし、4速で再びエンジンの運転点がC1→D1となるように運転し、さらにシフトアップしてエンジンの運転点がC1→目標車速になるような運転となる。
【0183】
ただし、自動変速機付き車両では、車速とアクセル操作量等に応じて、自動変速機の制御装置側で変速段が決定されてしまうので、上述のような運転点となるようにアクセル操作量を調整することになる。
【0184】
実際の燃料消費量を演算するには、ある区間についてどのようなエンジン回転速度とトルクの組み合わせで走行したかを記憶しておき、対応する使用ギヤ段位も記憶しておく。そして、これに基づき実際の時間あたりの消費燃料量[l/h]を次式(32)、
【0185】
【数37】
により演算し、これを時間積分することによって求める。ρは燃料比重[kg/l]である。一方、理想の燃料消費量を演算するには、同じ走行距離を同じ時間で図12のC1→D1に近い動作点で走行するように変速操作が行なわれたとして求めればよい。
【0186】
(4) 加速、急加速の判定
加速の判定は車速信号により検出された速度により演算された加速度、又は加速度センサ6によって検出された加速度と加速判定値(例えば0.2[m/s2]に設定)とを比較し、検出された加速度が規定加速度を超えている場合に加速が行われたと判定される。
【0187】
さらに、加速と判定された場合はそれが急加速であるかの判定も行われる。急加速の判定は、検出された加速度と、運転者の運転技術のランク(後述するエコグラフメータのランク、あるいは加速に関するランク)に応じて設定される急加速判定値(例えば0.7[m/s2])とを比較し、検出された加速度が急加速判定値を超えている場合に急加速が行われたと判定される。
【0188】
急加速判定値は、運転技術のランクが高くなるほど小さな値に設定され、例えば、運転技術のランクが最低ランクEのときは0.7[m/s2]に設定され、ランクが上がるとそれよりも小さな値に自動的に更新される。
【0189】
上記加速が行なわれた時間と急加速が行なわれた時間はそれぞれメモリカード7に記録される。
【0190】
(5) 減速、急減速の判定
上記加速、急加速の判定と同様の処理により判定され、検出された減速度が減速判定値(例えば0.2[m/s2])よりも大きければ減速と判定され、さらに減速度が急減速判定値(例えば0.7[m/s2])よりも大きければ急減速が行われたと判定される。急減速判定値は運転技術のランク(後述するエコグラフメータのランク、あるいは減速に関するランク)に応じて変更され、ランクが高くなるほど小さな値に設定される。そして、上記減速が行なわれた時間と急減速が行なわれた時間はそれぞれメモリカード7に記録される。
【0191】
(6) アイドリング判定
連続して所定時間X(例えば20秒)以上車両が停車状態にあり、かつエンジン回転速度がアイドリング判定しきい値以下のときにアイドリング中であると判定される。所定時間Xは信号待ちが除かれるよう設定される。また、アイドリング判定しきい値はエンジン出力を利用して荷役作業用のクレーン等を駆動する場合のアイドルアップが除かれるように、アイドルアップ時の回転速度よりも小さな値に設定される。アイドリング中であると判定された場合はその時間が計測されメモリカード7に記録される。また、メモリカード7には停車回数、停車時間、エンジン停止回数、エンジン停止時間等もあわせて記録される。
【0192】
(7) 速度超過判定
速度超過判定は車速と規定車速を比較することにより行われ、車速が規定車速を超えているときは速度超過と判定される。規定車速は予め定められており、一般道走行時は60[km/h]、高速道走行時は80[km/h]に設定される。速度超過と判定された場合は、速度超過で走行した時間がメモリカード7に記録される。メモリカード7には一般道を走行した時間、高速道を走行した時間も記録される。
【0193】
(8) シフトアップ可能判定
図9のステップS9の処理と同様に、シフトアップしたときのエンジン回転速度と最大駆動力が算出され、シフトアップしたとした場合のエンジン回転速度が規定値以上でかつシフトアップ後の最大駆動力が現在の走行抵抗(Rs+Rl+Rr)以上のときにシフトアップ可能と判断される。シフトアップ可能と判定された場合はその時間がメモリカード7に記録される。また、メモリカード7には、加速時に使用したギヤ位置、確定変速段以外のギヤ位置(前進5速の場合は2速、3速及び4速)で走行した時間もあわせて記録される。
【0194】
(9) 等速走行判定
等速走行中かどうかは過剰駆動力に基づき判定され、過剰駆動力が小さく、後述するエコグラフメータ41が点灯しない状態あるいはその緑色のマス目のみが点灯する状態が一定時間以上継続した場合に等速走行と判定される。等速走行と判断された時間はメモリカード7に記録される。また、メモリカード7には全走行時間に対する等速走行の頻度を調べるために全走行時間もあわせて記録される。
【0195】
(10) 空ぶかし判定
空ぶかしが行われたかどうかの判定は、車速と、エンジン回転速度と、アクセル操作量とに基づき行われ、車速ゼロの状態でエンジン回転速度及びアクセル操作量がゼロで無い場合に空ぶかしが行われたと判定される。メモリカード7には空ぶかしが行なわれた回数が記録される。また、メモリカード7には停車回数も記録される。
【0196】
4.運転状態の表示・記録
以上のようにして運転状態の演算・判定が行なわれ、その結果は運転状態表示装置1の表示部4にリアルタイムで表示される。
【0197】
図13は表示部4の具体的な構成を示したものである。表示部4は、過剰駆動力率等を表示するメータ(エコグラフメータ)41、現在及び過去の燃費を表示する燃費表示部42、過剰燃料消費量等の運転状態を表示する運転状態表示部43、急加速時が行われたとき等に警告メッセージを表示する警告表示部44、メモリカード7の空き容量を表示するメモリ残量表示部45、現在の時刻や運転継続時間を選択的に表示する時刻表示部46で構成される。なお、エコグラフメータ41には過剰駆動力率以外の値(図9のステップS11、S12、S15、S16、S19、S20で演算される割合)も表示されうるが、以下の説明では過剰駆動力率が表示される場合を中心に説明する。
【0198】
エコグラフメータ41は過剰駆動力率の大きさを棒グラフ形式で表示するものであり12個の一列に並んだマス目で構成される。過剰駆動力率が大きくなるに従い図中左側のマス目から順に点灯するが、各マス目の点灯色、及び過剰駆動力率に応じて点灯するマス目の数は運転技術のランク(後述するエコグラフメータのランク)に応じて変更される。
【0199】
図14はエコグラフメータ41の表示形式が運転技術のランクに応じて変更される様子を示したものである。エコグラフメータ41は緑、黄、赤に色分けされた12分割のマス目で構成される。最低ランクEではメータ無点灯時が過剰駆動力率0%、メータ全点灯時が過剰駆動力率100%の状態に対応するように設定されるが、ランクが上がるに従ってメータ全点灯時の過剰駆動力率が小さくなり、ランクDでは過剰駆動力率80%、ランクCでは過剰駆動力率60%で全点灯と徐々に小さな値に設定され、ランクAでは過剰駆動力率40%で全点灯するように設定される。
【0200】
過剰駆動力率0%から40%を緑色、40%から60%を黄色、60%から100%を赤色で表示するとした場合、最低ランクEでは緑色、黄色、赤色のマス目の数が4個づつになり、過剰駆動力率の増大に伴い左側のマス目から順に点灯すると、運転者はなるべく赤色のランプ(あるいは黄色のランプ)が点灯しないように運転するようになる。したがって、このときの運転者の目標とする過剰駆動力率は40%から60%程度となる。
【0201】
運転技術のランクが上がって緑色の表示エリアが大きくなると、運転者は今度はなるべく黄色のランプが点灯しないように運転するようになる。したがって、このときの運転者の目標とする過剰駆動力率は40%程度となり、運転者の目標はランクEの時よりも高くなっている。
【0202】
さらにランクが上がって最高ランクAに達すると各マス目の点灯色が全て緑色になると、運転者は今度はこの緑色の点灯する数を減らすように運転するようになる。したがって、このときの運転者の目標とする過剰駆動力率は40%以下まで下がり、運転者の目標は更に高くなっている。
【0203】
このように、運転者が表示形式を運転技術のランクに応じて表示形式を変更するようにしたことにより、運転者にその人の運転技術にふさわしい目標を持たせることができ、熟練者、非熟練者を問わず運転技術の向上が期待できる。
【0204】
図13に戻って表示部4についてさらに説明すると、燃費表示部42には現在の燃費、過去30分の燃費の変化の様子が表示され、運転者が自らの運転操作によって燃費がどのように変化したかを把握できるようになっている。燃費は基準燃費(ここでは5.0[km/l])よりも燃費が良いときは中央より上側のマス目が基準燃費との差に応じた数だけ点灯し、基準とする燃費よりも燃費が悪いときは下側のマス目が基準燃費との差に応じた数だけ点灯する。
【0205】
また、運転状態表示部43には、上記演算処理により演算された過剰燃料消費量のほか、最高燃費やこれまでの消費された燃料量等が選択的に表示される。
【0206】
また、警告表示部44には、上記した判定処理により、急加速が行われた、急減速が行なわれた、シフトアップ可能な状況である、アイドリング中である、空ぶかしを行ったと判定された場合は、判定内容に応じて運転者に対する警告メッセージが表示される。警告メッセージが表示されるときは過剰燃料消費量も増加するため、運転者は燃費を悪化させる運転操作を具体的に知ることができ、自らの運転操作の改善の参考にすることができる。なお、警告の方法は警告音を発する方法や、警告メッセージを音声で流す方法であってもよい。
【0207】
なお、定速走行装置10や自動変速機27を備えた車両では、運転者が直接的に変速段を指令することが難しいが、定速走行装置10に設定する車速や自動変速モードにおけるアクセル操作量に対する過剰な燃料の消費を教示することが可能となり、定速走行装置10や自動変速機27などの自動制御装置の特性に応じた運転技術の向上を図ることが可能となるのである。
【0208】
また、定速走行装置10による定速走行制御を、車両の運転状態から推定して過剰燃料消費量の演算を行うようにしたので、定速走行装置10からエンジンコントロールユニット(ECU)などの信号線に加工を施す必要がなく、定速走行装置10を備えた車両に運転状態表示装置1を容易に付加することが可能となる。
【0209】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上記構成は本発明を適用したシステムの一例を示したもので本発明の範囲を限定するものではない。本発明はここで示した構成以外の構成のシステムに対しても適用することができるものであり、例えば、車両データベースを車載装置(上記実施形態では運転状態表示装置1)に内蔵させ、車載装置側で車両の選択や全性能マップの自動生成を行なうようにしてもよい。さらに、記録された運転状態の分析・表示も車載装置側で行なうようにしても良い。
【0210】
さらに、上記実施形態ではエンジンの全性能マップを予め用意されている燃料消費率特性データと、評価対象となるエンジンのある運転条件における既知の実燃料消費率とに基づき生成しているが、全性能マップが入手可能な場合はそれを用いるようにしてもよい。
【0211】
また、車載側装置と管理者側装置のデータのやり取りはメモリカードの受け渡しによる方法以外であってもよく、磁気ディスクによる受け渡し、無線通信による受け渡しであってもよい。
【0212】
また、上記実施形態においては、定速走行装置10とトルクコンバータ20付き自動変速機27をともに備えた車両に適用した場合を示したが、どちらか一方のみを採用した車両にも適用可能である。
【0213】
また、上記実施形態においては、自動制御装置の一つとして定速走行装置10に適用した場合を示したが、設定された車間距離を維持するように車速を制御する車間距離維持装置を備えた車両に適用してもよく、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両運転状態評価システムの構成を示すブロック図である。
【図2】同じく定速走行装置の出力調整部を示す概略図である。
【図3】定速走行装置の出力調整部の他の形態を示す概略図である。
【図4】エンジン回転速度と噴射パルス幅に応じた、エンジントルクと燃料消費率を示すエンジン全性能マップである。である。
【図5】エンジン全性能マップを示し、(a)はエンジン回転速度にスロットル開度(アクセル操作量)をパラメータとしたエンジントルクと燃料消費率のマップで、(b)はエンジン回転速度とアクセル操作量またはアクセル操作量相当値に応じたエンジントルクと燃料消費率のマップである。
【図6】トルクコンバータ付き自動変速機の一例を示す概略図である。
【図7】トルクコンバータの特性線図で、速度比とトルク比、伝達効率の関係を示す。
【図8】エンジン全性能マップの燃料消費率データが自動生成される様子を模式的に表した図である。
【図9】過剰駆動力・過剰駆動力率等の演算処理及び演算された過剰駆動力率等の表示処理の内容を示したフローチャートである。
【図10】定速走行制御の判定処理を示すフローチャートである。
【図11】トルクコンバータの動作状態に応じたエンジントルクと燃料消費率及び燃料量の算出処理を示すフローチャートである。
【図12】エンジン回転速度及びエンジントルクと燃料消費率との関係を示した特性図である。
【図13】表示部の具体的な構成を示した図である。
【図14】エコグラフメータの表示形式の変更を説明するための図である。
【符号の説明】
1 運転状態表示装置
2 管理者用パソコン
3 運転状態演算部
4 表示部
5 メモリカード読出し/書込み部
6 内蔵加速度センサ
7 メモリカード
10 定速走行装置
20 トルクコンバータ
27 自動変速機
Claims (3)
- 特定の燃費を悪化させる運転が行われたことを検出する燃費悪化検出手段と、
前記特定の燃費を悪化させる運転が行われたことが検出された場合に、実際に消費された燃料量と、前記特定の燃費を悪化させる運転が行なわれずに走行したとした場合に消費される燃料量とをそれぞれ演算する燃料量演算手段と、
前記実際に消費された燃料量から前記特定の燃費を悪化させる運転が行われずに走行したとした場合に消費される燃料量を減じて前記特定の燃費を悪化させる運転によって過剰に消費された過剰燃料量を演算する過剰燃料量演算手段と、
前記演算された過剰燃料消費量を運転者に対して表示する表示手段と、
を備えた車両運転状態評価システムにおいて、
前記燃料量演算手段は、
車両に搭載されて車速を制御する定速走行装置の作動状態を推定する自動制御装置作動状態検出手段と、
前記定速走行装置に設けた出力調整部の作動状態を推定する出力調整状態検出手段を有し、
前記自動制御装置作動状態検出手段は、車両の運転状態が予め設定した運転状態となったときに前記定速走行装置が作動中であることを推定し、
前記定速走行装置が作動中であることが推定されたときには、前記出力調整状態検出手段が推定した出力調整部の作動状態と、エンジン回転速度とから、予め設定したエンジン特性におけるエンジンの運転点を求め、この運転点に対応するエンジントルクと燃料消費率を算出し、前記エンジン回転速度とエンジントルクからエンジン出力を求め、このエンジン出力と前記燃料消費率の積から実際に消費された燃料量を演算することを特徴とする車両運転状態評価システム。 - 前記出力調整部は、電子制御による噴射パルスにより燃料噴射量を制御する燃料噴射量制御手段を有し、エンジン回転速度と噴射パルス幅とから予め設定されたエンジン特性におけるエンジンの運転点を求め、当該運転点に対応するエンジントルクと燃料消費率を演算し、前記エンジン回転速度とエンジントルクからエンジン出力を求め、このエンジン出力と前記燃料消費率の積から実際に消費された燃料量を演算することを特徴とする請求項1に記載の車両運転状態評価システム。
- 前記燃料量演算手段は、車両が抵抗に抗して走行した仕事率に前記燃料消費率を乗じて求めた要求燃料量を、前記特定の燃費を悪化させる運転が行なわれずに走行したとした場合に消費される燃料量として演算することを特徴とする請求項1に記載の車両運転状態評価システム。
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