以下、図1〜図5を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る自動運転車両システムは、自動運転機能を有する車両(自動運転車両)に適用される。図1は、本実施形態に係る自動運転車両システムが適用される自動運転車両200(単に車両と呼ぶこともある)の走行系の概略構成を示す図である。車両200は、ドライバによる運転操作が不要な自動運転モードでの走行だけでなく、ドライバの運転操作による手動運転モードでの走行も可能である。
図1に示すように、車両200は、エンジン1と、変速機2とを有する。エンジン1は、スロットルバルブ11を介して供給される吸入空気とインジェクタ12から噴射される燃料とを適宜な割合で混合し、点火プラグ等により点火して燃焼させ、これにより回転動力を発生する内燃機関(例えばガソリンエンジン)である。なお、ガソリンエンジンに代えてディーゼルエンジン等、各種エンジンを用いることもできる。吸入空気量はスロットルバルブ11により調節され、スロットルバルブ11の開度は、電気信号により作動するスロットル用アクチュエータ13の駆動によって変更される。スロットルバルブ11の開度およびインジェクタ12からの燃料の噴射量(噴射時期、噴射時間)はコントローラ40(図2)により制御される。
変速機2は、エンジン1と駆動輪3との間の動力伝達径路に設けられ、エンジン1からの回転を変速し、かつエンジン1からのトルクを変換して出力する。変速機2で変速された回転は駆動輪3に伝達され、これにより車両200が走行する。なお、エンジン1の代わりに、あるいはエンジン1に加えて、駆動源としての走行用モータを設け、電気自動車やハイブリッド自動車として車両200を構成することもできる。
変速機2は、例えば複数の変速段(例えば6段)に応じて変速比を段階的に変更可能な有段変速機である。なお、変速比を無段階に変更可能な無段変速機を、変速機2として用いることもできる。図示は省略するが、トルクコンバータを介してエンジン1からの動力を変速機2に入力してもよい。変速機2は、例えばドグクラッチや摩擦クラッチなどの係合要素21を備え、油圧制御装置22が油圧源から係合要素21への油の流れを制御することにより、変速機2の変速段を変更することができる。油圧制御装置22は、電気信号により作動するソレノイドバルブなどの変速機用のバルブ機構(便宜上、変速用アクチュエータ23と呼ぶ)を有し、変速用アクチュエータ23の作動に応じて係合要素21への圧油の流れを変更することで、適宜な変速段を設定できる。
図2は、本発明の実施形態に係る自動運転車両システム100の全体構成を概略的に示すブロック図である。図2に示すように、自動運転車両システム100は、コントローラ40と、コントローラ40にそれぞれ電気的に接続された外部センサ群31と、内部センサ群32と、入出力装置33と、GPS受信機34と、地図データベース35と、ナビゲーション装置36と、通信ユニット37と、走行用アクチュエータACとを主に有する。
外部センサ群31は、自車両の周辺情報である外部状況を検出する複数のセンサの総称である。例えば外部センサ群31には、自車両の全方位の照射光に対する散乱光を測定して自車両から周辺の障害物までの距離を測定するライダ、電磁波を照射し反射波を検出することで自車両の周辺の他車両や障害物等を検出するレーダ、自車両に搭載され、CCDやCMOS等の撮像素子を有して自車両の周辺(前方、後方および側方)を撮像するカメラなどが含まれる。自車両から前方車両までの車間距離は、ライダ、レーダおよび車載カメラのいずれによっても測定可能である。
内部センサ群32は、自車両の走行状態を検出する複数のセンサの総称である。例えば内部センサ群32には、自車両の車速を検出する車速センサ、自車両の前後方向の加速度および左右方向の加速度(横加速度)をそれぞれ検出する加速度センサ、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転数センサ、自車両の重心の鉛直軸回りの回転角速度を検出するヨーレートセンサ、スロットルバルブ11の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサ、自動変速機用オイルATF(Automatic Transmission Fluid)の温度を検出するATF油温センサなどが含まれる。手動運転モードでのドライバの運転操作、例えばアクセルペダルの操作、ブレーキペダルの操作、ステアリングの操作等を検出するセンサも内部センサ群32に含まれる。
入出力装置33は、ドライバから指令が入力されたり、ドライバに対し情報が出力されたりする装置の総称である。例えば入出力装置33には、操作部材の操作によりドライバが各種指令を入力する各種スイッチ、ドライバが音声で指令を入力するマイク、ドライバに表示画像を介して情報を提供する表示部、ドライバに音声で情報を提供するスピーカなどが含まれる。各種スイッチには、自動運転モードおよび手動運転モードのいずれかを指令する手動自動切換スイッチが含まれる。
手動自動切換スイッチは、例えばドライバが手動操作可能なスイッチとして構成され、スイッチ操作に応じて、自動運転機能を有効化した自動運転モードまたは自動運転機能を無効化した手動運転モードへの切換指令を出力する。手動自動切換スイッチの操作によらず、所定の走行条件が成立したときに、手動運転モードから自動運転モードへの切換、あるいは自動運転モードから手動運転モードへの切換が指令されるようにしてもよい。すなわち、手動自動切換スイッチが自動的に切り換わることで、モード切換が手動ではなく自動で行われるようにしてもよい。
GPS受信機34は、複数のGPS衛星からの測位信号を受信し、これにより自車両の絶対位置(緯度、経度など)を測定する。
地図データベース35は、ナビゲーション装置36に用いられる一般的な地図情報を記憶する装置であり、例えばハードディスクにより構成される。地図情報には、道路の位置情報、道路形状(曲率など)の情報、交差点や分岐点の位置情報が含まれる。なお、地図データベース35に記憶される地図情報は、コントローラ40の記憶部42に記憶される高精度な地図情報とは異なる。
ナビゲーション装置36は、ドライバにより入力された目的地までの道路上の目標経路を探索するとともに、目標経路に沿った案内を行う装置である。目的地の入力および目標経路に沿った案内は、入出力装置33を介して行われる。目標経路は、GPS受信機34により測定された自車両の現在位置と、地図データベース35に記憶された地図情報とに基づいて演算される。
通信ユニット37は、インターネット回線などの無線通信網を含むネットワークを介して図示しない各種サーバと通信し、地図情報および交通情報などを定期的に、あるいは任意のタイミングでサーバから取得する。取得した地図情報は、地図データベース35や記憶部42に出力され、地図情報が更新される。取得した交通情報には、渋滞情報や、信号が赤から青に変わるまでの残り時間等の信号情報が含まれる。
アクチュエータACは、車両200の走行動作に関する各種機器を作動するためのものである。アクチュエータACには、図1に示すエンジン1のスロットルバルブ11の開度(スロットル開度)を調整するスロットル用アクチュエータ13、係合要素21への油の流れを制御して変速機2の変速段を変更する変速用アクチュエータ23の他、制動装置を作動するブレーキ用アクチュエータ、およびステアリング装置を駆動する操舵用アクチュエータなどが含まれる。
コントローラ40は、電子制御ユニット(ECU)により構成される。なお、エンジン制御用ECU、変速機制御用ECU等、機能の異なる複数のECUを別々に設けることができるが、図2では、便宜上、これらECUの集合としてコントローラ40が示される。コントローラ40は、CPU等の演算部41と、ROM,RAM,ハードディスク等の記憶部42と、図示しないその他の周辺回路とを有するコンピュータを含んで構成される。
記憶部42には、車線の中央位置の情報や車線位置の境界の情報等を含む高精度の詳細な地図情報が記憶される。より具体的には、地図情報として、道路情報、交通規制情報、住所情報、施設情報、電話番号情報等が記憶される。道路情報には、高速道路、有料道路、国道などの道路の種別を表す情報、道路の車線数、各車線の幅員、道路の勾配、道路の3次元座標位置、車線のカーブの曲率、車線の合流ポイントおよび分岐ポイントの位置、道路標識等の情報が含まれる。交通規制情報には、工事等により車線の走行が制限または通行止めとされている情報などが含まれる。記憶部42には、変速動作の基準となるシフトマップ(変速線図)、各種制御のプログラム、プログラムで用いられる閾値等の情報も記憶される。
演算部41は、自動走行に関する機能的構成として、自車位置認識部43と、外界認識部44と、行動計画生成部45と、走行制御部46とを有する。なお、図示は省略するが、演算部41は、表示制御部なども有する。
自車位置認識部43は、GPS受信機34で受信した自車両の位置情報および地図データベース35の地図情報に基づいて、地図上の自車両の位置(自車位置)を認識する。記憶部42に記憶された地図情報(建物の形状などの情報)と、外部センサ群31が検出した車両の周辺情報とを用いて自車位置を認識してもよく、これにより自車位置を高精度に認識することができる。なお、道路上や道路脇の外部に設置されたセンサで自車位置を測定可能であるとき、そのセンサと通信ユニット37を介して通信することにより、自車位置を高精度に認識することもできる。
外界認識部44は、ライダ、レーダ、カメラ等の外部センサ群31からの信号に基づいて自車両の周囲の外部状況を認識する。例えば自車両の周辺を走行する周辺車両(前方車両や後方車両)の位置や速度や加速度、自車両の周囲に停車または駐車している周辺車両の位置、および他の物体の位置や状態などを認識する。他の物体には、標識、信号機、道路の境界線や停止線、建物、ガードレール、電柱、看板、歩行者、自転車等が含まれる。他の物体の状態には、信号機の色(赤、青、黄)、歩行者や自転車の移動速度や向きなどが含まれる。
行動計画生成部45は、例えばナビゲーション装置36で演算された目標経路と、自車位置認識部43で認識された自車位置と、外界認識部44で認識された外部状況とに基づいて、現時点から所定時間先までの自車両の走行軌道(目標軌道)を生成する。目標経路上に目標軌道の候補となる複数の軌道が存在するときには、行動計画生成部45は、その中から法令を順守し、かつ効率よく安全に走行する等の基準を満たす最適な軌道を選択し、選択した軌道を目標軌道とする。そして、行動計画生成部45は、生成した目標軌道に応じた行動計画を生成する。
行動計画には、現時点から所定時間T(例えば5秒)先までの間に単位時間Δt(例えば0.1秒)毎に設定される走行計画データ、すなわち単位時間Δt毎の時刻に対応付けて設定される走行計画データが含まれる。走行計画データは、単位時間Δt毎の自車両の位置データと車両状態のデータとを含む。位置データは、例えば道路上の2次元座標位置を示す目標点のデータであり、車両状態のデータは、車速を表す車速データと自車両の向きを表す方向データなどである。車両状態のデータは、単位時間Δt毎の位置データの変化から求めることができる。走行計画は単位時間Δt毎に更新される。
行動計画生成部45は、現時点から所定時間T先までの単位時間Δt毎の位置データを時刻順に接続することにより、目標軌道を生成する。このとき、目標軌道上の単位時間Δt毎の各目標点の車速(目標車速)に基づいて、単位時間Δt毎の加速度(目標加速度)を算出する。すなわち、行動計画生成部45は、目標車速と目標加速度とを算出する。なお、目標加速度を走行制御部46で算出するようにしてもよい。
行動計画生成部45は、前方車両を追い越すための追い越し走行、走行車線を変更する車線変更走行、走行車線を逸脱しないように車線を維持するレーンキープ走行、減速走行または加速走行等に対応した種々の行動計画を生成する。行動計画生成部45は、目標軌道を生成する際に、まず走行態様を決定し、走行態様に基づいて目標軌道を生成する。例えばレーンキープ走行に対応した行動計画を作成する際には、まず定速走行、追従走行、減速走行、カーブ走行等の走行態様を決定する。
具体的には、行動計画生成部45は、車両200の前方に他車両(前方車両)が存在しない場合に、走行態様を定速走行に決定し、前方車両が存在する場合に、追従走行に決定する。追従走行においては、例えば車速に応じて前方車両との間の車間距離を適切に制御するように、行動計画生成部45が走行計画データを生成する。なお、車速に応じた目標車間距離は、予め記憶部42に記憶される。
走行制御部46は、自動運転モードにおいて、行動計画生成部45で生成された目標軌道に沿って自車両が走行するように各アクチュエータACを制御する。すなわち、単位時間Δt毎の目標点を車両200が通過するように、スロットル用アクチュエータ13、変速用アクチュエータ23、ブレーキ用アクチュエータ、および操舵用アクチュエータなどをそれぞれ制御する。
より具体的には、走行制御部46は、自動運転モードにおいて道路勾配などにより定まる走行抵抗を考慮して、行動計画生成部45で算出された単位時間Δt毎の目標加速度を得るための要求駆動力を算出する。そして、例えば内部センサ群32により検出された実加速度が目標加速度となるようにアクチュエータACをフィードバック制御する。すなわち、自車両が目標車速および目標加速度で走行するようにアクチュエータACを制御する。なお、手動運転モードでは、走行制御部46は、内部センサ群32により取得されたドライバからの走行指令(アクセル開度等)に応じて各アクチュエータACを制御する。
このように構成された自動運転車両システムにおいて、例えば内部センサ群32を構成するセンサ(例えばATF油温センサ)が断線等により故障すると、コントローラ40は、センサ出力信号の異常により当該センサの故障を検知し、入出力装置33を介してセンサの故障情報を乗員に報知する。これにより乗員にセンサ交換等を促す。このとき、故障したセンサの出力信号として予め定められた代替値が代入され、代替値に基づいてアクチュエータAC(例えば変速用アクチュエータ23)が制御される。このため、一部のセンサが故障した場合であっても、車両200の自動運転を継続することができる。
このように一部のセンサが故障した場合には、自動運転を継続できるとしても車両200のダメージが拡大することを防ぐため、センサ交換等により、できるだけ早期に故障に対処することが望ましい。しかしながら、単に入出力装置33を介してセンサの故障情報を乗員に報知するだけで、センサ故障の前後で車両の挙動に差がない場合、乗員は車両の挙動に不満を感じず、センサ故障への対処が遅れるおそれがある。そこで、本実施形態では、センサ故障等の不具合への対処を乗員に早期に行わせるようにするため、以下のように自動運転車両システム100を構成する。
自動運転車両システム100は、故障への対処を乗員に促進するための故障対処促進装置を有する。図3は、故障対処促進装置101の要部構成を示すブロック図である。なお、以下では、一例として内部センサ群32の一部であるATF油温センサ32aの故障時の態様について説明する。
図3に示すように、コントローラ40には、ATF油温センサ32aからの信号が入力される。コントローラ40は、機能的構成として、判定部401と、アクチュエータ制御部402と、表示制御部403とを有する。判定部401とアクチュエータ制御部402とは、例えば図2の走行制御部46の一部である。
判定部401は、ATF油温センサ32aからの入力信号に基づいて、ATF油温センサ32aの故障の有無を判定する。すなわち、ATF油温センサ32aの断線等が生じると、正常範囲を規定する閾値を超えてセンサ信号が出力されるため、判定部401は、センサ信号が閾値を超えたか否かによりATF油温センサ32aの故障の有無を判定する。
アクチュエータ制御部402は、判定部401による判定結果に応じてアクチュエータAC(例えば変速用アクチュエータ23)を制御する。例えばATF油温センサ32aの正常時には、ATF油温センサ32aの検出信号に基づいてアクチュエータACを制御する。一方、ATF油温センサ32aの故障時には、所定の代替値をセンサ信号(ATF検出油温)として用い、このセンサ信号に基づいてアクチュエータACを制御する。このとき、ATF油温センサ32aの正常時よりも、アップシフトのタイミングを遅らせる。この点について具体的に説明する。
図4は、予め記憶部42(図2)に記憶された自動運転モード時におけるシフトマップの一例を示す図である。図中、横軸は車速V、縦軸は要求駆動力Fである。なお、要求駆動力Fはアクセル開度(自動運転モードでは擬似的アクセル開度)またはスロットル開度に一対一で対応し、アクセル開度またはスロットル開度が大きくなるに従い要求駆動力Fは大きくなる。特性f1は、n+1段からn段へのダウンシフトに対応するダウンシフト線の一例であり、特性f2,f3は、それぞれn段からn+1段へのアップシフトに対応するアップシフト線の一例である。特性f3は、特性f2よりも高車速側にずらして設定される。
図4に示すように、例えば作動点Q1からのダウンシフトに関し、要求駆動力Fが一定のまま車速Vが減少して、作動点Q1がダウンシフト線(特性f1)を超えると(矢印A)、変速機2がn+1段からn段へとダウンシフトする。車速Vが一定のまま要求駆動力Fが増加した場合も、作動点Q1がダウンシフト線を超えて、変速機2がダウンシフトする。
一方、例えば作動点Q2からのアップシフトに関し、要求駆動力Fが一定のまま車速Vが増加して、作動点Q2がアップシフト線(特性f2,f3)を越えると(矢印B)、変速機2はn段からn+1段へとアップシフトする。車速Vが一定のまま要求駆動力Fが減少した場合も、作動点Q2がアップシフト線を越えて変速機2がアップシフトする。なお、変速段が大きいほど(ハイ側であるほど)、ダウンシフト線およびアップシフト線は、高車速側にずらして設定される。
アクチュエータ制御部402は、判定部401によりATF油温センサ32aが正常と判定されると、特性f2に従い変速機2をアップシフトさせる。一方、判定部401によりATF油温センサ32aが故障と判定されると、特性f3に従い変速機2をアップシフトさせる。これによりATF油温センサ32aの故障時には正常時よりもアップシフトのタイミングが遅れ、エンジン回転数が高くなる。なお、アクチュエータ制御部402は、ATF油温センサ32aの故障の有無に応じてアップシフトのタイミングを変更するだけであり、走行駆動力や車速を制限するような制御を行うわけではない。
表示制御部403は、判定部401によりATF油温センサ32aが故障と判定されると、入出力装置33の一部である表示部33aに制御信号を出力し、ATF油温センサ32aが故障である旨を表示部33aに表示させる。これにより、乗員はATF油温センサ32aの故障の有無を認識することができる。さらに乗員は、表示部33aの表示を介して、アップシフトのタイミングが遅くなった原因、すなわち、ATF油温センサ32aの故障が原因でアップシフトのタイミングが遅くなったことを容易に判断できる。なお、故障したセンサの交換を促すメッセージ、あるいは、センサの交換をしない限りアップシフトのタイミングが遅くなる旨のメッセージを、表示部33aに表示させるようにしてもよい。
図5は、予め記憶部42に格納されたプログラムに従い、図3のコントローラ40のCPUで実行される処理の一例、特に変速機2のアップシフトに関する処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば運転モードが自動運転モードに切り換わると開始される。
まずステップS1で、判定部401が、ATF油温センサ32aが故障したか否かを判定する。ステップS1で否定されるとステップS2に進み、アクチュエータ制御部402が、図4の特性f1,f2に従い変速制御を実行する。すなわち、特性f1に従い変速機2がダウンシフトし、特性f2に従いアップシフトするように、アクチュエータ制御部402が変速用アクチュエータ23に制御信号を出力する。
一方、ステップS1で肯定されるとステップS3に進み、アクチュエータ制御部402が、図4の特性f1,f3に従い変速制御を実行する。すなわち、特性f1に従い変速機2がダウンシフトし、特性f3に従いアップシフトするように、アクチュエータ制御部402が変速用アクチュエータ23に制御信号を出力する。これにより、ATF油温センサ32aの故障時におけるアップシフトのタイミングが遅れる。次いで、ステップS4で、表示制御部403が、表示部33aに制御信号を出力し、ATF油温センサ32aの故障情報を表示させる。
本発明の実施形態に係る自動運転車両システムの動作をより具体的に説明する。車両200が自動運転モードで走行中にATF油温センサ32aに故障が生じると、ATF油温センサ32aの出力に所定の代替値が代入され、自動運転モードでの走行が継続される。このとき、ATF油温センサ32aが故障した旨が表示部33aに表示されるとともに、変速機2が特性f3に従いアップシフトするようになり、ATF油温センサ32aが正常であるときよりも、変速機2のアップシフトのタイミングが遅れる(ステップS3,ステップS4)。
その結果、エンジン回転数が高い状態で走行する頻度が高まり、騒音や燃費の悪化等により乗員の快適性が悪化する。このとき、乗員は、表示部33aの表示を介して、快適性を改善するためにはATF油温センサ32aの交換等が必要であることを認識する。これにより乗員は、車両200をディーラーまで走行させる等、ATF油温センサ32aの交換や修理のために必要な行動を早期にとるようになる。このため、ATF油温センサ32aの故障に早期に対処することができ、複合的な故障によって車両に大きなダメージが与えられることを未然に防止できる。すなわち、代替値のセンサ信号に基づいてアクチュエータACを制御し続けることにより、車両200にダメージが蓄積されて修理が困難となるなどの望ましくない事態が生じることを避けることができる。
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態に係る自動運転車両システム100は、自動運転車両200の走行駆動系の作動を制御するものであり、自動運転を継続可能な態様で故障を生じる可能性を有するATF油温センサ32aと、ATF油温センサ32aが故障したか否かを判定する判定部401と、判定部401によりATF油温センサ32aが故障したと判定されると、故障していないと判定されるときよりも、乗員の快適性を悪化させるような態様で変速用アクチュエータ23の作動を制御するアクチュエータ制御部402と、を備える(図3)。
この構成により、ATF油温センサ32aの故障時に、乗員は快適性の悪化を防ぐために、ATF油温センサ32aの交換等の必要な行為を早期に行うようになる。このため、センサ故障の不具合に早期に対処することができ、車両200に大きなダメージを与えることを未然に防ぐことができる。また、センサ故障時には、走行駆動力や車速を制限するのではなく、アップシフトのタイミングを遅らせて乗員の快適性を悪化させるだけなので、車両走行性能が維持され、乗員に余計な不安感を与えることがない。
(2)車両200は、走行駆動系として、走行駆動トルクを発生させるエンジン1と、エンジン1と駆動輪3との間の動力伝達径路に配置された変速機2とを有する(図2)。アクチュエータ制御部402は、判定部401によりATF油温センサ32aが故障したと判定されると、変速機2の挙動を悪化させる。より具体的には、変速機2のアップシフトのタイミングを遅らせる。このため、エンジン回転数が高くなりやすく、騒音や振動の増大等により乗員の快適性が損なわれる。これにより、ATF油温センサ32aの故障に対処するような早期の行動を乗員に促すことができ、その結果、乗員は快適性を改善するために早期にセンサ交換等を行うようになる。
(3)アクチュエータ制御部402は、判定部401によりATF油温センサ32aが故障したと判定されるまで、ATF油温センサ32aから出力された検出信号に基づいてエンジン1や変速機2等の作動を制御し、判定部401によりATF油温センサ32aが故障したと判定されると、所定の代替信号に基づいてエンジン1や変速機2等の作動を制御する。これにより、ATF油温センサ32aが故障してセンサ信号の出力が異常になった場合であっても、自動運転をそのまま継続することができる。このような場合、乗員はセンサ交換の必要性を感じ難いため、センサ交換を促す必要性が特に高まるが、本実施形態では、乗員の快適性を悪化させるため、乗員は早期のセンサ交換を行うようなる。
(4)自動運転車両システム100は、判定部401によりATF油温センサ32aが故障したと判定されると、乗員に対し故障の発生を報知するように表示部33aを制御する表示制御部403をさらに備える。これにより、乗員は、車両の挙動が変化した原因を容易に認識することができ、車両挙動の変化による不快感を解消するために、センサ交換等の必要な措置を適切にとるようになる。
上記実施形態は種々の形態に変更することができる。以下、変形例について説明する。上記実施形態では、ATF油温センサ32aの故障時にアップシフトのタイミングを遅らせることで、エンジン回転数を高めて乗員に不快感を与えるようしたが、変速用クラッチ(係合要素21)の作動速度を速めて変速時にショックが生じるように変速用アクチュエータ23を制御し、これにより乗員に不快感を与えるようにしてもよい。変速機2が無段変速機(例えば電子制御電磁クラッチ式無段変速機(eCVT))である場合、センサ故障時に、エンジン回転数がセンサ正常時よりも所定回転数(例えば500rpm)だけ高くなるようにアクチュエータ制御部402がスロットル用アクチュエータ13を制御してもよい。
上記実施形態では、判定部401によりセンサ故障と判定されると、アクチュエータ制御部402が変速機2の挙動を悪化させるように変速用アクチュエータ23を制御したが、エンジン1の挙動を悪化させるようにスロットル用アクチュエータ13を制御してもよい。例えば、変速時にエンジン回転数を所定回転数(例えば300rpm)以上吹き上がらせるようにしてもよい。このような吹き上がりは乗員にとって不快と感じやすいため、センサ交換を行うための乗員にとっての動機付けが強まり、乗員はセンサ故障の不具合に早期に対処するようになる。なお、駆動源として走行モータを用いる場合、エンジンの挙動を悪化させる代わりに、走行モータの挙動を悪化させるようにしてもよい。
なお、上記実施形態では、ATF油温センサ32aが故障した場合について説明したが、本発明は、自動運転を継続可能な態様で故障を生じる可能性を有する他の機器が故障した場合にも、同様に適用することができる。以下、本発明が適用可能ないくつかの機器の故障を例示する。故障時に代替値で制御可能な機器の故障の例として、上述したATF油温センサ32aの故障以外に、油圧制御装置22に含まれる潤滑回路切替え用のソレノイドの故障がある。冗長系が組まれている場合に機器が故障した場合にも本発明を適用することができ、その例として、車速センサの故障、回転センサの故障、油圧センサの故障、油圧スイッチの故障、パーキング判定センサの故障、リバース位置センサの故障がある。走行中の車両挙動に影響を与えない機器が故障した場合にも本発明を適用することができ、その例として、パーキングアクチュエータの故障がある。さらに限られた状況で用いられない機器に故障が生じた場合にも本発明を適用することができ、その例として、AWD(all-wheel drive)用の機器(例えばクラッチソレノイド)の故障がある。これらの機器が故障したか否かを、判定部401が判定するようにしてもよい。この場合、判定部401は、センサ信号が閾値を超えたか否か等、何らかの手法により機器が故障したか否かを判定すればよい。
上記実施形態では、判定部401によりATF油温センサ32aが故障したと判定されると、故障していないと判定されるときよりも、アクチュエータ制御部402が変速機2のアップシフトのタイミングを遅らせるようにした。すなわち、変速機の挙動を悪化させるようにしたが、乗員の快適性を悪化させるような態様で他の走行駆動系の作動を制御するようにしてもよく、制御部の構成は上述したものに限らない。時間経過に伴い快適性の悪化の程度が徐々に大きくなるように、走行駆動系の作動を制御してもよい。故障部位に応じて快適性の悪化の程度を変更するようにしてもよい。上記実施形態では、判定部401によりセンサ故障が判定されると、表示部33aを介して乗員に対し故障の発生を報知するようにしたが、報知部の構成はこれに限らない。
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。