以下、図1〜図8を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る車両制御装置が適用される車両101の走行駆動系の概略構成を示す図である。車両101は、自動運転機能を有する自動運転車両である。なお、車両101は、ドライバによる運転操作が不要な自動運転モードでの走行だけでなく、ドライバの運転操作による手動運転モードでの走行も可能である。図1に示すように、車両101は、エンジン1と、変速機2とを有する。
エンジン1は、スロットルバルブ11を介して供給される吸入空気とインジェクタ12から噴射される燃料とを適宜な割合で混合し、点火プラグ等により点火して燃焼させ、これにより回転動力を発生する内燃機関(例えばガソリンエンジン)である。なお、ガソリンエンジンに代えてディーゼルエンジン等、各種エンジンを用いることもできる。吸入空気量はスロットルバルブ11により調節され、スロットルバルブ11の開度は、スロットル用アクチュエータ13の駆動によって変更される。スロットルバルブ11の開度およびインジェクタ12からの燃料の噴射量(噴射時期、噴射時間)はコントローラ40(図2)により制御される。
変速機2は、エンジン1と駆動輪3との間の動力伝達径路に設けられる自動変速機であり、入力軸を介して入力されたエンジン1からの回転を変速し、かつエンジン1からのトルクを変換して出力する。変速機2で変速された回転は駆動輪3に伝達され、これにより車両101が走行する。なお、エンジン1の代わりに、あるいはエンジン1に加えて、駆動源としての走行用モータを設け、電気自動車やハイブリッド自動車として車両101を構成することもできる。車両101は、駆動輪3に設けられたブレーキ装置4により制動される。ブレーキ装置4は、例えば油圧ディスクブレーキにより構成される。
変速機2は、例えば複数の変速段(例えば6段)に応じて変速比を段階的に変更可能な有段変速機である。なお、変速比を無段階に変更可能な無段変速機を、変速機2として用いることもできる。図示は省略するが、トルクコンバータを介してエンジン1からの動力を変速機2に入力してもよい。変速機2は、例えばドグクラッチや摩擦クラッチなどの係合要素21を備え、油圧制御装置22が係合要素21への油の流れを制御することにより、変速機2の変速段を変更することができる。油圧制御装置22は、電気信号により作動するソレノイドバルブなどのバルブ機構(便宜上、変速用アクチュエータ23と呼ぶ)を有し、変速用アクチュエータ23の作動に応じて係合要素21への圧油の流れを変更することで、適宜な変速段を設定できる。
図2は、本発明の実施形態に係る車両制御装置100の全体構成を概略的に示すブロック図である。図2に示すように、車両制御装置100は、コントローラ40と、コントローラ40にそれぞれ電気的に接続された外部センサ群31と、内部センサ群32と、入出力装置33と、GPS装置34と、地図データベース35と、ナビゲーション装置36と、通信ユニット37と、走行用のアクチュエータACとを主に有する。
外部センサ群31は、車両101の周辺情報である外部状況を検出する複数のセンサの総称である。例えば外部センサ群31には、車両101の全方位の照射光に対する散乱光を測定して車両101から周辺の障害物までの距離を測定するライダ、電磁波を照射し反射波を検出することで車両101の周辺の他車両や障害物等を検出するレーダ、車両101に搭載され、CCDやCMOS等の撮像素子を有して車両101の周辺(前方、後方および側方)を撮像するカメラなどが含まれる。
内部センサ群32は、車両101の走行状態を検出する複数のセンサの総称である。例えば内部センサ群32には、車両101の車速を検出する車速センサ、車両101の前後方向の加速度および左右方向の加速度(横加速度)をそれぞれ検出する加速度センサ、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転数センサ、車両101の重心の鉛直軸回りの回転角速度を検出するヨーレートセンサ、スロットルバルブ11の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサなどが含まれる。手動運転モードでのドライバの運転操作、例えばアクセルペダルの操作、ブレーキペダルの操作、ステアリングの操作等を検出するセンサも内部センサ群32に含まれる。
入出力装置33は、ドライバから指令が入力されたり、ドライバに対し情報が出力されたりする装置の総称である。例えば入出力装置33には、操作部材の操作によりドライバが各種指令を入力する各種スイッチ、ドライバが音声で指令を入力するマイク、ドライバに表示画像を介して情報を提供するディスプレイ、ドライバに音声で情報を提供するスピーカなどが含まれる。各種スイッチには、自動運転モードおよび手動運転モードのいずれかを指令する手動自動切換スイッチが含まれる。
手動自動切換スイッチは、例えばドライバが手動操作可能なスイッチとして構成され、スイッチ操作に応じて、自動運転機能を有効化した自動運転モードまたは自動運転機能を無効化した手動運転モードへの切換指令を出力する。手動自動切換スイッチの操作によらず、所定の走行条件が成立したときに、手動運転モードから自動運転モードへの切換、あるいは自動運転モードから手動運転モードへの切換が指令されるようにしてもよい。すなわち、手動自動切換スイッチが自動的に切り換わることで、モード切換が手動ではなく自動で行われるようにしてもよい。
GPS装置34は、複数のGPS衛星からの測位信号を受信するGPS受信機を有し、GPS受信機が受信した信号に基づいて車両101の絶対位置(緯度、経度など)を測定する。
地図データベース35は、ナビゲーション装置36に用いられる一般的な地図情報を記憶する装置であり、例えばハードディスクにより構成される。地図情報には、道路の位置情報、道路形状(曲率など)の情報、交差点や分岐点の位置情報が含まれる。なお、地図データベース35に記憶される地図情報は、コントローラ40の記憶部42に記憶される高精度な地図情報とは異なる。
ナビゲーション装置36は、ドライバにより入力された目的地までの道路上の目標経路を探索するとともに、目標経路に沿った案内を行う装置である。目的地の入力および目標経路に沿った案内は、入出力装置33を介して行われる。入出力装置33を介さずに、目的地を自動的に設定することもできる。目標経路は、GPS装置34により得られた自車両の現在位置と、地図データベース35に記憶された地図情報とに基づいて演算される。
通信ユニット37は、インターネット回線などの無線通信網を含むネットワークを介して図示しない各種サーバと通信し、地図情報および交通情報などを定期的に、あるいは任意のタイミングでサーバから取得する。取得した地図情報は、地図データベース35や記憶部42に出力され、地図情報が更新される。取得した交通情報には、渋滞情報や、信号が赤から青に変わるまでの残り時間等の信号情報が含まれる。
アクチュエータACは、車両101の走行動作に関する各種機器を作動するための走行用アクチュエータである。アクチュエータACには、エンジン1のスロットルバルブ11の開度(スロットル開度)を調整するスロットル用アクチュエータ13、変速機2の変速段を変更する変速用アクチュエータ23、ブレーキ装置を作動するブレーキ用アクチュエータ、およびステアリング装置を駆動する操舵用アクチュエータなどが含まれる。
コントローラ40は、電子制御ユニット(ECU)により構成される。なお、エンジン制御用ECU、変速機制御用ECU等、機能の異なる複数のECUを別々に設けることができるが、図2では、便宜上、これらECUの集合としてコントローラ40が示される。コントローラ40は、CPU等の演算部41と、ROM,RAM,ハードディスク等の記憶部42と、入出力インターフェース等の図示しないその他の周辺回路とを有するコンピュータを含んで構成される。
記憶部42には、車線の中央位置の情報や車線位置の境界の情報等を含む高精度の詳細な地図情報が記憶される。より具体的には、地図情報として、道路情報、交通規制情報、住所情報、施設情報、電話番号情報等が記憶される。道路情報には、高速道路、有料道路、国道などの道路の種別を表す情報、道路の車線数、各車線の幅員、道路の勾配、道路の3次元座標位置、車線のカーブの曲率、車線の合流ポイントおよび分岐ポイントの位置、道路標識等の情報が含まれる。交通規制情報には、工事等により車線の走行が制限または通行止めとされている情報などが含まれる。記憶部42には、変速動作の基準となるシフトマップ(変速線図)、各種制御のプログラム、プログラムで用いられる閾値等の情報も記憶される。
演算部41は、自動走行に関する機能的構成として、自車位置認識部43と、外界認識部44と、行動計画生成部45と、走行制御部46とを有する。
自車位置認識部43は、GPS装置34で得られた車両101の位置情報および地図データベース35の地図情報に基づいて、地図上の車両101の位置(自車位置)を認識する。記憶部42に記憶された地図情報(建物の形状などの情報)と、外部センサ群31が検出した車両101の周辺情報とを用いて自車位置を認識してもよく、これにより自車位置を高精度に認識することができる。なお、道路上や道路脇の外部に設置されたセンサで自車位置を測定可能であるとき、そのセンサと通信ユニット37を介して通信することにより、自車位置を高精度に認識することもできる。
外界認識部44は、ライダ、レーダ、カメラ等の外部センサ群31からの信号に基づいて車両101の周囲の外部状況を認識する。例えば車両101の周辺を走行する周辺車両(前方車両や後方車両)の位置や速度や加速度、車両101の周囲に停車または駐車している周辺車両の位置、および他の物体の位置や状態などを認識する。他の物体には、標識、信号機、道路の境界線や停止線、建物、ガードレール、電柱、看板、歩行者、自転車等が含まれる。他の物体の状態には、信号機の色(赤、青、黄)、歩行者や自転車の移動速度や向きなどが含まれる。
行動計画生成部45は、例えばナビゲーション装置36で演算された目標経路と、自車位置認識部43で認識された自車位置と、外界認識部44で認識された外部状況とに基づいて、現時点から所定時間先までの車両101の走行軌道(目標軌道)を生成する。目標経路上に目標軌道の候補となる複数の軌道が存在するときには、行動計画生成部45は、その中から法令を順守し、かつ効率よく安全に走行する等の基準を満たす最適な軌道を選択し、選択した軌道を目標軌道とする。そして、行動計画生成部45は、生成した目標軌道に応じた行動計画を生成する。
行動計画には、現時点から所定時間T(例えば5秒)先までの間に単位時間Δt(例えば0.1秒)毎に設定される走行計画データ、すなわち単位時間Δt毎の時刻に対応付けて設定される走行計画データが含まれる。走行計画データは、単位時間Δt毎の車両101の位置データと車両状態のデータとを含む。位置データは、例えば道路上の2次元座標位置を示す目標点のデータであり、車両状態のデータは、車速を表す車速データと車両101の向きを表す方向データなどである。車両状態のデータは、単位時間Δt毎の位置データの変化から求めることができる。走行計画は単位時間Δt毎に更新される。
図3は、行動計画生成部45で生成された行動計画の一例を示す図である。図3では、車両101カーブ路200を旋回走行するシーンの走行計画が示される。図3の各点Pは、現時点から所定時間T先までの単位時間Δt毎の位置データに対応する。行動計画生成部45は、これら各点Pを時刻順に接続することにより、目標軌道103を生成する。
行動計画生成部45は、目標軌道103を生成する際に、まず走行態様を決定し、走行態様に基づいて目標軌道103を生成する。例えばレーンキープ走行に対応した行動計画を作成する際には、まず定速走行、追従走行、減速走行、旋回走行(カーブ走行)等の走行態様を決定する。具体的には、行動計画生成部45は、自車両の前方に他車両(前方車両)が存在しない場合に、走行態様を定速走行に決定し、前方車両が存在する場合に、追従走行に決定する。自車位置認識部43で認識された地図上の自車位置に基づいて旋回走行の開始を判定し、旋回走行の開始が判定されると、走行態様を旋回走行に決定する。この場合、車両101がカーブ路200に進入したと判定されると、あるいは現時点から所定時間後または所定距離走行後にカーブ路200に進入すると判定されると、旋回走行の開始と判定される。なお、外界認識部44によりカーブ路200の走行が認識された場合に、走行態様を旋回走行に決定するようにしてもよい。
走行制御部46は、自動運転モードにおいて、行動計画生成部45で生成された目標軌道103に沿って車両100が走行するように各アクチュエータACを制御する。例えば、単位時間Δt毎に図3の各点Pを車両101が通過するように、スロットル用アクチュエータ13、変速用アクチュエータ23、ブレーキ用アクチュエータ、および操舵アクチュエータをそれぞれ制御する。
より具体的には、走行制御部46は、自動運転モードにおいて、道路勾配などにより定まる走行抵抗を考慮して、行動計画生成部45で算出された単位時間毎の目標加速度を得るための要求駆動力を算出する。そして、例えば内部センサ群32により検出された実加速度が目標加速度となるようにアクチュエータACをフィードバック制御する。すなわち、車両101が目標車速および目標加速度で走行するようにアクチュエータACを制御する。なお、手動運転モードでは、走行制御部46は、内部センサ群32により取得されたドライバからの走行指令(アクセル開度、ステアリングホイール5の操舵角等)に応じて各アクチュエータACを制御する。
変速機2の制御について説明する。走行制御部46は、予め記憶部42に記憶された変速動作の基準となるシフトマップを用いて、変速用アクチュエータ23に制御信号を出力し、これにより変速機2の変速動作を制御する。
図4は、記憶部42に記憶されたシフトマップの一例を示す図である。図中、横軸は車速V、縦軸は要求駆動力Fである。なお、要求駆動力Fはアクセル開度(自動運転モードでは擬似的アクセル開度)またはスロットル開度に一対一で対応し、アクセル開度またはスロットル開度が大きくなるに従い要求駆動力Fは大きくなる。したがって、縦軸をアクセル開度またはスロットル開度に読み替えることもできる。
特性f1(実線)は、自動運転モードにおけるn+1段からn段へのダウンシフトに対応するダウンシフト線の一例であり、特性f2(実線)は、自動運転モードにおけるn段からn+1段へのアップシフトに対応するアップシフト線の一例である。特性f3(点線)は、手動運転モードにおけるn+1段からn段へのダウンシフトに対応するダウンシフト線の一例であり、特性f4(点線)は、手動運転モードにおけるn段からn+1段へのアップシフトに対応するアップシフト線の一例である。特性f3,f4は、それぞれ特性f1,f2よりも高車速側に設定される。
図4に示すように、例えば作動点Q1からのダウンシフトに関し、要求駆動力Fが一定のまま車速Vが減少して、作動点Q1がダウンシフト線(特性f1,f3)を超えると(矢印A)、変速機2がn+1段からn段へとダウンシフトする。車速Vが一定のまま要求駆動力Fが増加した場合も、作動点Q1がダウンシフト線を超えて、変速機2がダウンシフトする。
一方、例えば作動点Q2からのアップシフトに関し、要求駆動力Fが一定のまま車速Vが増加して、作動点Q2がアップシフト線(特性f2,f4)を越えると(矢印B)、変速機2はn段からn+1段へとアップシフトする。車速Vが一定のまま要求駆動力Fが減少した場合も、作動点Q2がアップシフト線を越えて変速機2がアップシフトする。なお、変速段が大きいほど、ダウンシフト線およびアップシフト線は、高車速側にずらして設定される。
手動運転モードの特性f3,f4は、動力性能と燃費性能とを両立させる特性である。これに対し、自動運転モードの特性f1,f2は、動力性能よりも燃費性能や静粛性能を重視した特性である。特性f1,f2は特性f3,f4よりも低車速側に設定されるため、自動運転モード時にはアップシフトのタイミングが早く、かつ、ダウンシフトのタイミングが遅くなり、手動運転モード時よりも高速段で走行されやすい。
本実施形態の特徴的構成について説明する。本実施形態の車両制御装置100は、演算部41の構成、特に自動運転でカーブ路を走行(旋回走行)するときに、乗員の車酔いを低減するような目標加速度を設定する点に特徴がある。すなわち、車両101がカーブ路200を走行するときには、車両前後方向および車両左右方向の加速度の変化を伴うため、車両101の挙動が大きく変化する。そして、自動運転モードで走行中の車両101の乗員は、旋回走行を予期しないため乗車姿勢が不安定なことがあり、そのため、手動運転モード時よりも車酔いを生じやすい。そこで、本実施形態では、以下のように、自動運転モードで旋回走行するときの乗員の車酔いを最適に抑えることが可能な車両制御装置を構成する。
図5は、本実施形態に係る車両制御装置100の要部構成、特にコントローラ40の要部構成を示すブロック図である。図5に示すようにコントローラ40は、機能的構成として、加速度演算部51と、目標加速度決定部52と、走行制御部46とを有する。加速度演算部51と目標加速度決定部52とは、図2の行動計画生成部45の一部を構成する。
図6は、車両101の旋回走行時の位置変化の一例を示す図である。図6に示すように、旋回半径Rのカーブ路200は、カーブ路200の入口区間201、出口区間203、および入口区間201と出口区間203との間の旋回区間202に区分される。入口区間201は旋回走行が開始される区間、出口区間203は旋回走行が終了する区間であり、これらは、例えばカーブ路200の曲率半径が所定値以上変化する区間である。一方、旋回区間202は、曲率半径の変化量が所定値以下となる区間である。入口区間201の手前には、旋回走行の準備をするための準備区間204が定義される。
加速度演算部51は、内部センサ群32からの信号に基づいて車両101の加速度Gを演算する。図6に示すように、旋回走行時に車両101には、車両前後方向の前進駆動力F1と車両左右方向の遠心力F2との合力F3が作用する。加速度演算部51は、エンジン回転数、エンジン出力トルク、変速機2の変速比等に基づいて前進駆動力F1を算出する。さらに、地図データベース35に記憶された地図データと外部センサ群31(カメラなど)からの信号等に基づいてカーブ路200の旋回半径Rを求めるとともに、旋回半径Rと車速及び車両101の質量とに基づいて遠心力F2を算出する。そして、加速度演算部51は、前進駆動力F1と遠心力F2との合力F3を求め、合力F3を車両101の質量で除算することにより旋回走行時の加速度Gを算出する。
目標加速度決定部52は、旋回走行時の車両101の目標加速度Gaを決定する。すなわち、準備区間204での目標加速度Ga0と、入口区間201での目標加速度Ga1と、旋回区間202での目標加速度Ga2と、出口区間203での目標加速度Ga3とをそれぞれ決定する。
より具体的には、目標加速度決定部52は、車両101が準備区間204に進入すると、外部センサ群31により検出される車両101の周囲の状況(前方車両との車間距離等)やカーブ路200の旋回半径Rを考慮して、旋回走行開始時の目標車速、すなわち入口区間201の開始地点における車両101の目標車速を設定する。そして、車速を目標車速とするための準備区間204での目標加速度Ga0を設定する。目標加速度Ga0は準備区間204にわたって一定値である必要はなく、所定値α1以下となうように徐々に小さくしてもよい。
次いで、目標加速度決定部52は、予め記憶部42に記憶された所定値α1以下の範囲内で入口区間201での目標加速度Ga1を設定する(Ga1≦α1)。所定値α1は、乗員が車酔いを生じる加速度よりも低い値、すなわち乗員の車酔いの程度を所定の程度以下に抑えるような値に設定される。所定値α1は、例えば予め乗員を乗車させて車両101を旋回走行させる実験を行うことにより定めることができる。目標加速度決定部52は、さらに、目標加速度Ga1のばらつきΔGa1が予め定めた所定値α2以下となるように(ΔGa1≦α2)、入口区間201での目標加速度Ga1を設定する。
次いで、目標加速度決定部52は、入口区間201における目標加速度Ga1との差(Ga1−Ga2の絶対値)が予め定めた所定値α3以下となるように旋回区間202での目標加速度Ga2を設定する(Ga1−α3≦Ga2≦Ga1+α3)。このとき、目標加速度Ga2のばらつきΔGa2が入口区間201での目標加速度Ga1のばらつきΔGa1に対し、予め定めた所定値α4以下となるように旋回区間202での目標加速度Ga2を設定する(ΔGa1−α4≦ΔGa2≦ΔGa1+α4)。なお、所定値α4は所定値α2以下、例えば所定値α2より小さい値に設定される。
次いで、目標加速度決定部52は、旋回区間202での目標加速度Ga2と同一の値に出口区間203での目標加速度Ga3を設定する。すなわち、Ga1−α3≦Ga3≦Ga1+α3を満たし、かつ、ΔGa1−α4≦ΔGa3≦ΔGa1+α4を満たすように目標加速度Ga3を設定する。
旋回走行時に車両101に作用する全体の加速度は、図6の合力F3に対応しており、車両進行方向の成分(前進駆動力F1に対応する成分)と進行方向に垂直な成分(遠心力F2に対応する成分)とを有する。したがって、目標加速度決定部52は、旋回走行時の目標加速度Ga1〜Ga3を、車速と旋回半径Rとにより定まる遠心力F2を考慮して、車両進行方向の成分と進行方向に対し垂直な成分とに分解する。そして、車両進行方向の成分である前進目標加速度Gb、すなわち目標加速度Ga1〜Ga3にそれぞれ対応する前進目標加速度Gb1〜Gb3を、併せて設定する。
走行制御部46は、車両101が目標加速度決定部48で決定された目標加速度Gaで走行するようにアクチュエータACを制御する。すなわち、目標加速度Ga(前進目標加速度Gb)に対応する車両101の前進駆動力F1を算出し、車両101が前進駆動力F1で走行するとともに、カーブ路200に沿って旋回するようにスロットル用アクチュエータ13や操舵用アクチュエータなどを制御する。変速機2の制御に関しては、走行制御部46は、例えば旋回走行中に変速しないように変速用アクチュエータ23を制御する。
図7は、図5のコントローラ40で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば自動運転モードで走行中の車両101がカーブ路200の手前の準備区間204に進入すると開始され、旋回走行が終了するまで(出口区間203から退出するまで)所定周期で繰り返される。なお、準備区間204の開始地点は、自車両101の車速と旋回半径R等に応じて定められる。
まず、ステップS1で、GPS装置34からの信号に基づいて車両101の現在位置を特定し、車両101が準備区間204を走行中か否かを判定する。ステップS1で肯定されるとステップS2に進み、旋回走行開始時の目標車速に対応した目標加速度Ga0を設定する。一方、ステップS1で否定されるとステップS3に進み、車両101が入口区間201を走行中か否かを判定する。ステップS3で肯定されるとステップS4に進み、否定されるとステップS5に進む。ステップS4では、Ga1≦α1かつΔGa1≦α2(但し、α1、α2は所定値)を満たすように目標加速度Ga1を設定する。このとき、前進目標加速度Gb1を併せて設定する。
ステップS5では、車両101が旋回区間202を走行中か否かを判定する。ステップS5で肯定されるとステップS6に進み、否定されるとステップS7に進む。ステップS6では、Ga1−α3≦Ga2≦Ga1+α3かつΔGa1−α4≦ΔGa2≦ΔGa1+α4(但し、α3、α4は所定値)を満たすように目標加速度Ga2を設定する。このとき、前進目標加速度Gb2を併せて設定する。ステップS7では、車両101が出口区間203を走行中か否かを判定する。ステップS7で肯定されるとステップS8に進み、Ga1−α3≦Ga3≦Ga1+α3かつΔGa1−α4≦ΔGa3≦ΔGa1+α4を満たすように目標加速度Ga3を設定する。このとき、前進目標加速度Gb3を併せて設定する。
ステップS2、ステップS4、ステップS6およびステップS8のいずれかで目標加速度Gaが設定されると、ステップS9に進み、車両101の実加速度が目標加速度Gaとなるように目標加速度Ga(前進目標加速度Gb)に応じてアクチュエータACを制御する。一方、車両101が出口区間203を通過したことによりステップS7で否定されると、処理を終了する。この場合には、以降、通常の自動運転制御により車両101の走行動作が制御される。
図8は、本実施形態に係る車両制御装置100の動作の一例、特に加速度Gの時間経過に伴う変化の一例を示すタイムチャートである。なお、図8には、自動運転モード時の動作を実線で示すとともに、手動運転モード時の動作を点線で示す。
図8に示すように、自動運転モードで走行中に、時点t1でカーブ路200の手前の準備区間204に進入すると、車両101は、加速度Ga0で走行する(ステップS2→ステップS9)。時点t2で、車両101がカーブ路200の入口区間201に到達すると、車両101は所定値α1よりも低い加速度Ga1で走行する(ステップS4→ステップS9)。入口区間201を走行中は、加速度Ga1のばらつきは所定値α2以下に抑えられる。
時点t3で、車両101が旋回区間202に到達すると、車両101は加速度Ga2で走行する(ステップS6→ステップS9)。このとき入口区間201の加速度Ga1との差は、所定値α3以下に抑えられる。また、入口区間201の加速度Ga1のばらつきΔGa1が0であった場合、旋回区間202を走行中は、加速度Ga2のばらつきΔGa2は所定値α4以下に抑えられる。
時点t4で、車両101が出口区間203に到達すると、車両101は加速度Ga3で走行する(ステップS8→ステップS9)。このとき旋回区間202を走行中と同様、入口区間201の加速度Ga1との差は、所定値α3以下に抑えられる。また、入口区間201の加速度Ga1のばらつきΔGa1が0であった場合、出口区間203を走行中は、加速度Ga3のばらつきΔGa3は、旋回区間202を走行中と同様、所定値α4以下に抑えられる。時点t5で、車両101が出口区間203の終了地点を通過すると、旋回走行を終了する。
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両制御装置100は、走行用アクチュエータACを有する自動運転車両101の走行動作を制御するものであり、車両101の目標加速度Gaを含む行動計画を生成する行動計画生成部45と、行動計画生成部45により生成された行動計画に従い車両101が自動運転で走行するようにアクチュエータACを制御する走行制御部46と、を備える(図2)。行動計画生成部45は、旋回走行開始時の入口区間201での目標加速度Ga1、旋回走行開始後かつ旋回走行終了前の旋回区間202での目標加速度Ga2、旋回走行終了時の出口区間203での目標加速度Ga3をそれぞれ決定する目標加速度決定部52を有する(図5)。目標加速度決定部52は、入口区間201での目標加速度Ga1を所定値α1以下に決定するとともに、旋回区間202での目標加速度Ga2および出口区間203での目標加速度Ga3を、加速度Ga1との差異が所定値α3以下となるようにそれぞれ決定する。
このように本実施形態では、旋回走行時のカーブ路200を車両101の挙動に対応して3つの区間(入口区間201、旋回区間202、出口区間203)に分け、入口区間201で目標加速度Ga1を所定値α1以下に設定し、この目標加速度Ga1を基準として、旋回区間202および出口区間203の目標加速度Ga2,Ga3を目標加速度Ga1との偏差が所定値α3以下となるように設定する。これにより、旋回走行の開始から終了まで、車両101は所定値α1以下の低い加速度で、かつ、ほぼ一定の加速度で旋回走行するようになるため、乗員の車酔いを最適に抑制することができる。すなわち、車酔いは車両101の加速度の大きさおよび変動に依存するが、本実施形態によれば、旋回走行時の加速度の大きさを低減かつ加速度の変動を抑えるので、車酔いしやすい自動運転中であっても、乗員の車酔いを良好に抑えることができ、乗員にとって快適な自動運転車両101を提供することができる。
(2)目標加速度決定部52は、さらに入口区間201での目標加速度Gaの単位時間当たりの変化量ΔGaが所定値α2以下となるように目標加速度Gaを決定するとともに、旋回区間202での目標加速度Ga2および出口区間203での目標加速度Ga3の単位時間当たりの変化量ΔGa2,ΔGa3と入口区間201での目標加速度Ga1の単位時間当たりの変化量ΔGa1との差異がそれぞれ所定値α4以下となるように旋回区間202での目標加速度Ga2および出口区間203での目標加速度Ga3をそれぞれ決定する。これにより旋回走行時の加速度の変動が一層抑えられ、車酔いをさらに良好に抑えることができる。
上記実施形態は種々の形態に変形することができる。以下、変形例について説明する。上記実施形態では、目標加速度決定部52が、カーブ路200の入口区間201、旋回区間202および出口区間203での目標加速度Ga1,Ga2,Ga3をそれぞれ設定(決定)するようにしたが、目標加速度決定部の構成は上述したものに限らない。例えば、目標加速度Ga1の単位時間当たりの変化量ΔGa1が所定値α2(第1所定量)以下となるように目標加速度Ga1を決定するとともに、目標加速度Ga2,Ga3の単位時間当たりの変化量ΔGa2,ΔGa3と目標加速度Ga1の単位時間当たりの変化量ΔGa1との差異が所定値α4(第2所定量)以下となるように目標加速度Ga2,Ga3を決定する構成を省いてもよい。すなわち、旋回走行開始時の第1加速度、旋回走行開始後かつ旋回走行終了前の第2加速度、旋回走行終了時の第3加速度をそれぞれ決定するのであれば、目標加速度決定部の構成はいかなるものでもよい。
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。