JP3896534B2 - 集合住宅建物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高層ないし超高層の集合住宅建物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、30階建て程度(高さ100m程度)の高層集合住宅建物や、50階建て以上(高さ150m程度以上)の超高層集合住宅建物が計画されるようになってきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
高層ないし超高層の集合住宅建物を計画する際には、特に構造的な制約から解決するべき課題は多く、構造的に合理的であり、快適な居住環境を確保でき、設計自由度に優れる有効な集合住宅建物の構造と形態が模索されているのが実状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、高層ないし超高層の集合住宅建物であって、当該建物の中心部を取り囲むように鉄筋コンクリート造の連層耐震壁からなる高剛性のコアウォールを設けて、コアウォールの内側を共用ゾーンとするとともにその周囲を住戸ゾーンとし、前記コアウォールの外側の左右両側に跳ね出しスラブを設けるとともに、前記住戸ゾーンには該跳ね出しスラブの先端部の位置にプレストレスを導入したプレキャストコンクリート製の小梁を設けて、該小梁の側面を跳ね出しスラブ先端の位置に揃え、それら跳ね出しスラブおよび小梁により前記住戸ゾーンの床を形成するフラットな無梁スラブを支持せしめてなることを特徴とする。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1の発明の集合住宅建物において、前記無梁スラブは、プレキャストコンクリート版、あるいはハーフプレキャストコンクリート版とその上に打設された現場打ちコンクリートからなり、かつ該無梁スラブにはプレストレスが導入されてなることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
図1〜図4は本発明の一実施形態を示すものである。本実施形態の建物は図1および図2に示すように平面形状がほぼ正方形をなす塔状(30階建て以上、高さ100m以上)の高層集合住宅であって、その構造は、図3および図4に示すように、外周部に設けられた外周ラーメン架構1と、中心部を取り囲むように設けられたコアウォール2と、コアウォール2の外側に設けられた跳ね出しスラブ3と、さらにその外側に設けられた無梁スラブ4を主体としている。
【0007】
この建物の平面プランは、上記の構造に対応して、図1に示すようにコアウォール2の内側をエレベータや階段室を配した共用ゾーン5とし、コアウォール2の周囲の跳ね出しスラブ3の範囲に共用廊下6を設け、その外側の無梁スラブ4の範囲を住戸ゾーン7としている。また、共用廊下6に面して設けられて各住戸のメータボックスを兼ねる設備シャフト8を、コアウォール2に接する位置に設けている。
【0008】
外周部に設けられた外周ラーメン架構1は、外周柱9と外周梁10とによる鉄筋コンクリート造の高剛性のもので、この建物全体の外殻をなすチューブ状の架構を構成しているものである。符号11はバルコニーのための跳ね出しスラブである。
【0009】
コアウォール2はこの建物の最下層から最上層まで連なる一連の現場打ち鉄筋コンクリート造の連層耐震壁からなる高剛性のものである。本実施形態ではそのコアウォール2が平面的に4分割されていて、分割された各コアウォール2どうしの間には各階に境界梁12が架設されている。境界梁12としてはH形鋼等の鉄骨梁が用いられ、地震によりコアウォール2全体が変形した際には境界梁12が早期に降伏(曲げ降伏が先行する場合と、剪断降伏が先行する場合がある)して塑性変形し、それにより地震エネルギーを吸収して振動を減衰させるようになっている。すなわち、境界梁12は制震ダンパーとして機能するものとなっている。
【0010】
跳ね出しスラブ3は、コアウォール2と一体に設けられた現場打ちの鉄筋コンクリート造のもので、本実施形態では図3に示すようにコアウォール2の左右両側に設けられ、その先端部には小梁13が架設されている。小梁13は住戸ゾーン7に設けられる唯一の梁であり、この小梁13としては低梁成のプレキャストコンクリート梁(PCa梁)が採用され、かつこの小梁13にはプレストレスが導入されている。
【0011】
無梁スラブ4は、外周ラーメン架構1と跳ね出しスラブ3および上記の小梁13との間に架設された一方向のプレキャストコンクリート版(PCa版)からなるものであり、この無梁スラブ4により住戸ゾーン7の全体が無柱かつ上記の小梁13を除いて無梁の空間とされ、この住戸ゾーン7全体を自由に区画して所望プランの住戸を所望位置に自由に設定できるものとなっている。なお、無梁スラブ4としてのPCa版としてはボイドスラブを採用したりプレストレスを導入しても良い。また、無梁スラブ4としては床型枠を兼ねるハーフPCa版とその上部に打設した現場打ちコンクリートとによるものも採用可能である。いずれにしても通常の床剛性を確保するためには無梁スラブ4の厚さは300mm程度で十分である。
【0012】
また、本実施形態では、図4に示すように、跳ね出しスラブ3および無梁スラブ4の上面レベルをフロアレベルより300mm程度下げ、それらの上部に仕上げ床14を設けることで、共用廊下6および住戸ゾーン7全体にわたって二重床空間を確保するようにしている。これにより、住戸内の所望位置に自由に水場を設定できるし、上下階間の遮音性確保の上でも有利である。そして、無梁スラブ4の下面を直天井仕上げとすることにより、階高を3,300mm程度としても2,700mm程度の有効天井高を確保することができる。
【0013】
以上の構造による本実施形態の建物にあっては、建物全体の鉛直力と水平力とを主として外周ラーメン架構1とコアウォール2とに負担させて優れた構造安定性と耐震性能を確保できることができ、したがって外周ラーメン架構1とコアウォール2以外には上記の小梁13を除いて柱および梁が一切不要であり、構造的に極めて合理的である。
【0014】
特に、コアウォール2を複数に分割してそれらの間に制震ダンパーとしての境界梁12を架設しているので、それら境界梁12による優れた制震効果が得られるし、境界梁12に変形が集中するのでコアウォール2全体にひび割れが生じるようなことを防止することができる。
【0015】
また、コアウォール2と一体に跳ね出しスラブ3を設け、その跳ね出しスラブ3および小梁13により住戸ゾーン7の無梁スラブ4を支持して設けるので、住戸ゾーン7全体を実質的に無柱無梁空間とすることができ、それにより比較的低階高でも有効天井高を大きく確保できるし、いわゆるスケルトンとインフィルとの分離を実現し得て万全のフリープラン対応が可能である。そして、無梁スラブ4をPCa版や、ハーフPCa版と現場打ちコンクリートとにより構成することで、軽量でありながら優れた床剛性を確保できるとともに、施工性やコストの点でも有利である。また、図3に示しているように小梁13の側面の位置を跳ね出しスラブ3の先端の位置に揃えておくことにより、無梁スラブ4を構成するPCa版やハーフPCa版のスパンを統一できるので施工性が良い。
【0016】
なお、跳ね出しスラブ3を設けることなく住戸ゾーン7の無梁スラブ4をそのまま共用廊下6の範囲まで延長してコアウォール2により直接的に支持するような構造も考えられようが、その場合には無梁スラブ4のスパンが大きくなり過ぎ、したがって無梁スラブ4の厚さが大きくなり過ぎるので、好ましくない。
【0017】
さらに、本実施形態では、共用廊下6に面して設ける設備シャフト8を住戸ゾーン2側ではなくコアウォール2側に設けているので、つまり設備シャフト8をコアウォール2に接するように設けていることにより、この点においても高度のフリープラン化を実現できるものとなっている。
【0018】
すなわち、集合住宅では各住戸のエントランス付近にメータボックスを兼ねる設備シャフトを共用廊下に面して設けることが通常であり、従来においては各住戸のエントランスを設備シャフトを避けた位置に設定せざるを得なかったし、逆に住戸レイアウトを優先させる場合には設備シャフトの位置や大きさが制約を受けることもあったが、本実施形態では設備シャフト8を同じく共用廊下6に面するとはいえ住戸ゾーン7側ではなくコアウォール2側に配置したことにより、エントランスの位置も含めて住戸レイアウトを設備シャフト8とは係わりなく自由にかつ最適に設定することが可能である。また、設備シャフト8も住戸レイアウトに係わりなく最適に配置できるから、その内部に設ける配管配線類の施工性や保守管理性を最優先した設計が可能であるし、その標準化も十分に図ることが可能となる。
【0019】
なお、上記のように設備シャフト8をコアウォール2側に設けることはすなわち設備シャフト8が各住戸から若干離れてしまうことにはなるが、その場合であっても設備シャフト8やメータボックスとしての本来的な機能は何等損なわれることはない。勿論、設備シャフト8と各住戸とを連絡するための配管配線スペースを共用廊下6を横断するように確保しておく必要はあるが、上記のように跳ね出しスラブ3および無梁スラブ4を下げて共用廊下6および住戸ゾーン7に二重床空間を確保しているので、そのような配管配線スペースは支障なく確保できている。さらに、設備シャフト8は現場打ちコンクリート造の跳ね出しスラブ3の範囲に設けられるので、設備シャフト8における床開口部は跳ね出しスラブ3の施工時に支障なくかつ容易に設けることができるし、必要に応じて開口補強も容易にかつ確実に行い得る。この点で、仮に、設備シャフト8を無梁スラブ4の範囲に設けるようにした場合には、無梁スラブ4を形成するためのPCa版やハーフPCa版に対する加工が必要となったり、部分的にスパン長が変化することになるので、施工性が低下して好ましくない。
【0020】
以上で本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでは勿論なく、建物全体の規模や形態、平面プラン、コアウォール2の分割の形態やその内部の共用ゾーン5の平面計画は、たとえば図5に他の一例を示すように適宜の変更が可能である。
【0021】
【発明の効果】
請求項1の発明の集合住宅建物は、コアウォールの外側の左右両側に跳ね出しスラブを設けるとともに、住戸ゾーンには該跳ね出しスラブの先端部の位置にプレストレスを導入したプレキャストコンクリート製の小梁を設けて、該小梁の側面を跳ね出しスラブ先端の位置に揃え、それら跳ね出しスラブおよび小梁により住戸ゾーンの床を形成するフラットな無梁スラブを支持せしめたので、外周部の架構とコアウォール以外には上記の小梁を除いて実質的に無柱無梁とできるので構造的に極めて合理的であり、高度のフリープラン対応が可能であるし、低階高で高天井高を実現し得る。
【0022】
請求項2の発明は、住戸ゾーンの床を構成する無梁スラブとして、プレキャストコンクリート版、あるいはハーフプレキャストコンクリート版とその上に打設された現場打ちコンクリートからなり、かつ該無梁スラブにはプレストレスが導入されてなるものを採用したので、軽量でありながら優れた床剛性を確保できるとともに、施工性やコストの点でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態である集合住宅建物の平面プランの一例を示す図である。
【図2】 同、全体の立断面図である。
【図3】 同、基準階の床伏図である。
【図4】 同、要部拡大断面図である。
【図5】 同、平面プランの他の例を示す図である。
【符号の説明】
2 コアウォール
3 跳ね出しスラブ
4 無梁スラブ
5 共用ゾーン
7 住戸ゾーン
9 外周柱
10 外周梁
13 小梁
Claims (2)
- 高層ないし超高層の集合住宅建物であって、
当該建物の中心部を取り囲むように鉄筋コンクリート造の連層耐震壁からなる高剛性のコアウォールを設けて、コアウォールの内側を共用ゾーンとするとともにその周囲を住戸ゾーンとし、
前記コアウォールの外側の左右両側に跳ね出しスラブを設けるとともに、前記住戸ゾーンには該跳ね出しスラブの先端部の位置にプレストレスを導入したプレキャストコンクリート製の小梁を設けて、該小梁の側面を跳ね出しスラブ先端の位置に揃え、それら跳ね出しスラブおよび小梁により前記住戸ゾーンの床を形成するフラットな無梁スラブを支持せしめてなることを特徴とする集合住宅建物。 - 前記無梁スラブは、プレキャストコンクリート版、あるいはハーフプレキャストコンクリート版とその上に打設された現場打ちコンクリートからなり、かつ該無梁スラブにはプレストレスが導入されてなることを特徴とする請求項1記載の集合住宅建物。
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