JP3895978B2 - 炭化珪素単結晶育成用種結晶、炭化珪素単結晶インゴット、及びこれらの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化珪素単結晶育成用種結晶及びその製造方法に関し、特に、マイクロパイプや刃状欠陥等々をはじめとする各種欠陥が極めて少ない大型単結晶インゴットの製造を可能にする、種結晶及びその製造方法に関するものであり、また、この種結晶を用いた炭化珪素単結晶インゴット及びその製造方法に関するものである。本種結晶を使用して製造される炭化珪素単結晶インゴットは、青色発光ダイオードや、高耐圧・高周波動作を特徴とする電子デバイス等の基板ウエハとして使用される。
【0002】
【従来の技術】
炭化珪素(SiC)は、耐熱性及び機械的強度に優れ、また、代表的な汎用半導体材料であるシリコンを超える優れた半導体特性を有することから、青色から紫外にかけての短波長光デバイス、高周波高耐圧電子デバイス等の基板ウエハとして、その工業的安定生産を目指す研究が近年活発化している。しかしながら、現状でも欠陥密度が依然として高く、実用化に際して大きな障壁の一つになっている。代表的な欠陥としてはマイクロパイプと称される微小中空状の欠陥の存在が知られており、素子を作製した際に漏れ電流等を引き起こすなど、致命的な影響を与えてしまうことが既に報告されている(例えば、P. G. Neudeck et al., IEEE Electron Device Letters, Vol.15 (1994) pp.63-65)。また、近年では、インゴット中に存在する刃状転位あるいは螺旋転位等々の欠陥も、デバイスの漏れ電流を引起し得る可能性があることを指摘する報告も増加する傾向にある。したがって、工業的には、かような欠陥群が極力少ない、大口径かつ高品質のSiC単結晶インゴットの製造が希求されているものの、それを可能にする結晶成長技術は、いまだ十分には確立されるには至っていない。
【0003】
一般的に、SiC単結晶インゴットは、改良レーリー法と称される方法によって製造される(Yu. M. Tairov and V. F. Tsvetkov, Journal of Crystal Growth, Vol.52 (1981) pp.146-150)。本法では、SiC単結晶ウエハを種結晶として使用し、主として黒鉛からなる坩堝中に原料となるSiC結晶粉末を充填して、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中(133Pa〜13.3kPa)にて、2000〜2400℃に加熱される。この際、原料粉末に比べ種結晶が低温側となる温度勾配が形成されるように種結晶及び原料粉末が配置され、これにより原料は昇華後、種結晶方向へ拡散、輸送され、しかる後に、種結晶上に到来したSiC昇華ガスが種結晶上に再結晶化することにより、単結晶成長が実現する。
【0004】
このような改良レーリー法によってSiC単結晶インゴットを製造する際、種結晶中に既に存在する欠陥群を成長時に引き継がれる性質があることが知られている。これらの欠陥群を除去するためには、異種ポリタイプと称される本系特有の多形結晶や、結晶方位が大きく乱れた結晶粒の発生等々による、刃状転位、螺旋転位、マイクロパイプのような新たな欠陥群の発生が全く起こらないように安定結晶成長を繰り返す必要がある。この安定成長の繰り返し操作により、結晶中の刃状転位は、結晶周辺部に移動して、最終的に結晶外部に転位中心が逃げる等々の現象により、結晶中の刃状転位密度が減少する。また、マイクロパイプについても、その形成原因と目されている螺旋転位中心の巨大なバーガースベクトルが、臨界値以下のバーガースベクトルを有する螺旋転位群に分解して、空孔部分が消滅する。現状では、このような方法以外に有効な方法は無い。
【0005】
従来、欠陥密度の極めて小さい種結晶として供試可能な結晶として、レーリー法によって製造される、レーリー結晶と称される結晶片の存在が知られている。しかしながら、この結晶片は、その大きさが直径にしてせいぜい10〜15mm程度にしか及ばず、工業的に希求されている2〜4インチ(約50〜100mm)径にははるかに及ばない。このため、前記のような事情から、実際としては、上記レーリー結晶から出発し、安定結晶成長を繰り返して欠陥を新たに発生させないように慎重に口径拡大を重ね、所望の2〜4インチ(約50〜100mm)径にすることにより大口径高品質インゴットを製造する方法で、大口径インゴットを作製しているのが現状である。更に、この方法によって口径拡大に成功したとしても、成長条件の突発的変移等々の偶発的な要因による成長不安定性が起こって、インゴット中に新たに欠陥が多数発生する確率が無視できないことに留意する必要がある。すなわち、かような成長不安定性が起こって欠陥密度が増加した場合には、欠陥密度が元のレベルまで低減するまで、再び安定結晶成長を繰り返す必要があり、効率的な工業生産が阻まれてしまう。
【0006】
このような理由から、特に大口径を有する炭化珪素インゴットであって、かつ、欠陥密度が極力小さい高品質なインゴットを、種結晶の欠陥密度に依存せず、かつ過大な繰り返し安定成長を必要とせずに、製造可能にする新たな方法が強く望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記のとおり、安定成長が実現されている場合、SiC単結晶に存在する各種欠陥の多くは、種結晶に存在していたものが、成長結晶に引き継がれたものである(Takahashi et al., Journal of Crystal Growth, Vol.167 (1996) pp.596-606参照)。従って、欠陥密度が極めて小さい大口径インゴットを実現するためには、理想的には、欠陥が皆無な大口径種結晶を作製する必要がある。しかしながら、現状では、そのような種結晶を効率的に作製する方法は無い。
【0008】
従って本発明は、上記事情に鑑み、欠陥密度が極めて小さい大口径インゴットを製造し得る、高品質大口径種結晶、及びそれを用いた単結晶炭化珪素インゴット、及びこれらの製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は以下の通りである。すなわち、
(1)昇華再結晶法による炭化珪素単結晶インゴットの製造に用いられる種結晶であって、炭化珪素単結晶からなる種結晶中に、炭素を含んでなるマスク部と、開口部とからなるマスク層を複数含み、前記マスク部の幅が、それぞれ独立して、10〜100μmであり、かつ、前記マスク部を種結晶成長面上に投影したときに得られる投影像が種結晶成長面を完全に遮蔽することを特徴とする炭化珪素単結晶育成用種結晶。
【0010】
(2)前記マスク層の厚さが、それぞれ独立して、1〜100μmである(1)に記載の炭化珪素単結晶育成用種結晶。
【0012】
(3)前記マスク層のマスク開口率(開口部面積/マスク部面積)が、それぞれ独立して、0.05〜2である(1)又は(2)に記載の炭化珪素単結晶育成用種結晶。
【0014】
(4)(1)〜(3)のいずれか一項に記載の炭化珪素単結晶育成用種結晶を製造する方法であって、炭化珪素単結晶からなる種結晶の結晶成長面上にマスク部と開口部とからなるマスク層を形成し、該マスク層越しに炭化珪素エピタキシャル成長を行い、成長の途中に新たなマスク層を形成して、さらに炭化珪素エピタキシャル成長を継続することを少なくとも1回は行い、前記各マスク層は、フォトリソグラフィーによって種結晶上に遮蔽物を形成し、その上に炭素を含んでなる薄膜を堆積した後に該遮蔽物を除去する方法によって作製され、かつ、前記マスク部を種結晶成長面上に投影したときに得られる投影像が種結晶成長面を完全に遮蔽するように各マスク層を配置することを特徴とする炭化珪素単結晶育成用種結晶の製造方法。
【0016】
(5)昇華再結晶法により種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させる工程を包含する炭化珪素単結晶インゴットの製造方法であって、種結晶として(1)〜(3)のいずれか一項に記載の炭化珪素単結晶育成用種結晶を用いることを特徴とする炭化珪素単結晶インゴットの製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明は、結晶法による炭化珪素単結晶インゴットの製造に用いられる種結晶であって、炭化珪素単結晶からなる種結晶中に、炭素を含んでなるマスク部と、開口部とからなるマスク層を複数含むことを特徴とする炭化珪素単結晶育成用種結晶およびその製造方法、ならびに、当該種結晶からなる炭化珪素単結晶インゴットおよびその製造方法である。
【0019】
本発明において、種結晶上に、例えばフォトリソグラフィーの手法を利用して、主として炭素からなるマスク層を形成し、そのマスク越しにSiC単結晶を成長させつつ、その単結晶成長の途中で、フォトリソグラフィーによる新たなマスク層を形成してそのマスク越しに炭化珪素単結晶エピタキシャル成長を行う工程を少なくとも1回は繰り返し、その際、各マスク層のマスク部分の種結晶表面上への投影像が種結晶表面を覆い尽くすように各マスク層を配置することにより、マイクロパイプ欠陥がほぼ皆無な、SiC単結晶育成用種結晶を得ることができる。この種結晶を使用して、改良レーリー法等々による昇華再結晶法によりSiC単結晶を成長させることで、マイクロパイプ欠陥が極めて少ない、高品質SiC単結晶インゴットを簡便に製造することが可能になる。
【0020】
図1に本発明の概要を示す。本図では、{0001}面上にSiC単結晶成長を実施する場合について、2層のマスク層によって結晶成長表面が完全に覆われる例が示されている。まず、SiC種結晶表面上にフォトリソグラフィーを利用して、主として炭素からなる第1層マスク層を形成する。このとき使用される種結晶には、多数のマイクロパイプ欠陥が含まれていても構わない。フォトリソグラフィーとしては、一般的に行われている方法で十分であるが、例えば、SiC種結晶表面に、まずフォトレジストと呼ばれるポジ型の感光剤を均一に塗布してプリベークさせる。この表面へ、所望のパターンを予め形成させてあるフォトマスクを通して紫外線を露光し、しかる後に現像処理することにより、感光した部分が全て抜け落ちたパターンが形成される。このパターン化されたSiC種結晶表面上に、一様にカーボン薄膜を真空蒸着させ、その後残留レジストを剥離除去すると、この残留レジスト上に形成されたカーボン薄膜層も全て除去され、最終的にフォトマスクのマスク部に該当する部分のみ基板のSiC種結晶表面が露出し、それ以外の部分は全てカーボン薄膜に覆われたパターン化表面(マスク層)を得ることができる(図1(a))。
【0021】
次に、このカーボン薄膜からなるマスク層によってパターン化されたSiC種結晶表面上へ、マスク層越しにSiC単結晶をエピタキシャル成長させる。ここでエピタキシャル成長の方法としては、物理的気相成長法(Physical Vapor Transport法)、または、化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition法)のいずれを用いても構わないが、前者の方法がより高速成長が可能である点で有利である。ただし、結晶成長時に、三次元的核生成やステップバンチングが発生しないように、成長速度等々の条件をコントロールする必要がある(例えば、Y. Khlebnikov et al., Journal of Crystal Growth, Vol.233 (2001) p.112)。エピタキシャル成長の初期段階では、マスク層の開口部において、c軸にほぼ平行方向のSiC単結晶成長が起こるが、その後成長が進展するにつれ、マスク部の直上部分では、c軸に垂直方向の結晶成長が進展し、最終的にはパターン化された種結晶の表面全体を覆うようになる(図1(b))。この際、マスク層の開口部では、種結晶中に存在するマイクロパイプ等々の欠陥群が引き継がれるために、欠陥密度がほぼ種結晶中のそれとほぼ同等のまま維持されるが、特開平5−262599号公報に開示されているように、マスク部上の空間部分では、マイクロパイプ欠陥の発生が殆ど無いことに加え、エピタキシャル成長特有の安定成長機構により、極めて欠陥密度の小さい結晶成長が実現される。ほぼ同様な結果は、最近Y. Khlebnikov等によっても報告されている通りである(Y. Khlebnikov et al., Journal of Crystal Growth, Vol.233 (2001) p.112)。
【0022】
引き続いて、本結晶表面上に第2層目のマスク層を上述した通りに形成し、開口部に残存した欠陥群を除去する(図1(c))。以下、詳細に説明する。まず、本結晶表面に、前記と同様にして、再びフォトリソグラフィーによって、主として炭素を含んでなるマスク部と開口部とからなるマスク層を形成する。当該マスク層は本結晶表面上に直接形成しても構わないが、表面起伏が激しい場合には、その前処理として、結晶表面を研磨処理して、鏡面平坦面を形成してもよい。研磨処理は、主としてダイヤモンド砥粒を含む研磨液を用いた機械的研磨で十分であるが、引き続く結晶成長時の欠陥生成を極力抑えるために、溶融KOH等々によるエッチングによって表面ダメージ層を除去することが好ましい。このようにして形成した平坦面上に、前回と同様な方法により、マスク形成及び単結晶エピタキシャル成長を実施するが、その際、形成する第2マスク層を、そのマスク部分が第1マスク層の開口部分を完全に覆うように配置する。この操作により、各マスク層のマスク部分の投影像が、種結晶表面上を完全に遮蔽する。このようにして作製したマスク越しに、エピタキシャル成長を行うと、第1回目のエピタキシャル成長によって形成された、欠陥密度が極めて小さい結晶部分より結晶成長が継続されるため、第2マスク層の開口部分においても既に欠陥は極めて少なく、結果的に結晶成長を行う結晶表面のほぼ全部分に亘って欠陥密度の小さい、良質な種結晶が製造される。
【0023】
なお、フォトマスクの形状としては、メッシュ状あるいは格子状等々、どのようなパターンでも可能であるが、フォトマスク製作の容易性の観点から、できるだけ簡便なものが好ましい。またマスク層の材質としては、SiC単結晶成長時の耐熱性や耐反応性等々を考慮すると、炭素を含むことが好ましく、より好ましくは黒鉛で形成される。
【0024】
また、形成される炭素を含んでなるマスク部と、開口部とからなるマスク層の厚さは、1〜100μmであることが望ましい。ここでマスク層の厚さが1μm未満となった場合には、マスク層厚のバラツキ等々の理由により、マスクとしての機能が不十分となり好ましくなく、一方で、100μmを超えると、かようなマスク層を形成するのに過大な時間が必要となり、工業的に好ましくない。
【0025】
さらに、上述したマスク層の開口率(開口部の面積/マスク部の面積)は、0.05〜2.0であることが望ましい。ここで開口率が0.05未満になると、種結晶部分からの成長方位の引き継ぎが困難となり、マスク部上で多結晶等が発生し易くなる恐れがあり、一方、2.0超になると、マスク部で被覆される部分が小さくなり、マスク層によるマイクロパイプ欠陥の遮蔽効果が小さくなってしまう恐れがある。
【0026】
さらに、マスク部の幅が10μm未満では、c軸に垂直な方向への成長が、充分な長さ行われず、マイクロパイプ欠陥が完全に抑制できない。従って、本発明の効果を得ることが難しくなる。また、マスク部の幅が100μm超になると、今度は逆にc軸に垂直な方向への成長によりマスク全域を覆うことが困難となり、マスク部中央部直上にボイド等の欠陥が発生するなど、好ましくない。
【0027】
さらに本発明は、上記により得られたSiC単結晶育成用種結晶を使用し、前記にて詳述した改良レーリー法等の昇華再結晶法により、インゴットを製造する方法である。当該方法により、ほぼ全面に亘って欠陥密度が極めて低い高品質単結晶インゴットを製造することができる。
【0028】
なお、種結晶の、特にマスク部直上の領域に、Takahashi et al., Journal of Crystal Growth, Vol.181 (1997) pp.229-240に示されているように、(0001)面積層欠陥が発生する可能性があるが、本発明の種結晶を用いて昇華再結晶法によりSiC単結晶成長を行い、十分に厚い単結晶インゴットを製造することにより、種結晶直上以外の大部分の領域においては、ほぼc軸と平行な結晶成長が進行するため、前記のような面欠陥は発生しない。
【0029】
最後に、本発明は、基本的には種結晶の口径に依存せず、あらゆる口径の種結晶について有効であるが、特に、口径が50mm以上の大型単結晶育成用種結晶、及び単結晶インゴットについて、極めて大きな効果が得られる。かように大型化したインゴットを作製するためには、従来では、既述したように、口径の小さく、かつ、マイクロパイプ密度等々の欠陥が少ない高品質単結晶を慎重に口径50mmまで口径拡大するか、あるいは、その途中でマイクロパイプ密度が増加した場合には、マイクロパイプ密度が所定の値まで低下するまで安定成長を繰り返すことの、いずれかの方法でしか作製できない。本発明の、例えば図1に示す方法によれば、僅か2回の単結晶エピタキシャル成長を実施することのみで、欠陥密度が極めて小さい高品質単結晶育成用種結晶が得られ、かつ、改良レーリー法による単結晶インゴットの製造において、得られた育成用種結晶を使用することにより、欠陥密度が極めて小さい高品質単結晶インゴットが簡便に製造することが可能になる。
【0030】
上記のように、本発明の製造方法により、種結晶の欠陥密度に関わらず、従来のように安定成長を過大に繰り返すことなく、欠陥が極めて少ない大口径SiC単結晶インゴット製造の高品質大口径種結晶を簡便に製造することが可能になる。
【0031】
【実施例】
以下に本発明の実施例を述べる。
【0032】
図2に成長装置の概要を示す。口径は約51mm(=2インチ)で、そのc軸が<11−20>方向に4°傾いた4°オフ六方晶系SiC単結晶ウエハを種結晶ウエハとして使用した。次に、この種結晶ウエハ表面にフォトリソグラフィーにより黒鉛製のマスク層を形成した。図2(b)に、そのマスク形状を示す。当該マスク層はマスク部(28)と開口部(29)とからなり、マスク層の厚さは5μmで、円状の開口部の直径は30μm、開口部の円中心間の隣接開口円中心間距離(30)は80μmとした(マスク開口率:約0.12)。この種結晶を黒鉛製蓋の内面に取り付け、さらに黒鉛製坩堝(21)の下部に、原料用高純度SiCウェハ(23)を対向設置した後密閉し、断熱用黒鉛製フェルト(25)で被覆して断熱処理を施して、水冷式二重石英管(24)内部に設置した。二重石英管(24)の外周には、ワークコイル(27)が設置されており、高周波電流を流すことにより黒鉛製坩堝(21)を加熱し、原料及び種結晶を所望の温度に加熱することができる。石英管の内部を真空排気した後、真空排気装置Arガス配管(26)を介してArガスを流入して雰囲気置換し、石英管内圧力を約80kPaに保ちながら、原料温度を約2350℃まで上げた後、成長圧力である1.3kPaに減圧し、その温度で約1時間成長を保持して、エピタキシャル成長を実施した。成長速度は約2μm/分以下であった。
【0033】
次に得られた単結晶表面を、ダイヤモンド砥粒を含む研磨液を使用する機械研磨によって鏡面処理化し、さらに500℃に加熱した溶融KOHで単結晶表面を僅かにエッチングした。このウエハ表面に、新たにフォトリソグラフィーにより黒鉛製のマスク層を形成した。この時形成された、メッシュ状マスク層は開口部を平行移動させ、初回成長時に使用したマスクの開口部分を完全に覆うように配置した。以下、初回成長時とほぼ同様な条件でエピタキシャル成長を実施し、SiC単結晶育成用種結晶を作製した。
【0034】
このようにして得られたSiC単結晶育成用種結晶を用いて、一般的な改良型レーリー法による昇華再結晶法により、SiC単結晶インゴットを製造した。すなわち、黒鉛製坩堝に、高純度SiC粉末からなる原料を充填した後、上記で得られた種結晶を装着した蓋で密閉し、黒鉛製フェルトで被覆して断熱処理を施した後、二重石英管内部に設置した。石英管の内部を真空排気した後、Arガスを流入して雰囲気置換し、石英管内圧力を約80kPaに保ちながら、原料温度を2000℃まで上げた。その後、成長圧力である1.3kPaに約30分かけて減圧しながら、原料温度を目標温度である2400℃まで上昇させ、その温度で約20時間成長を保持して、単結晶成長を実施した。この際の坩堝内の温度勾配は15℃/cmであった。得られた結晶の口径は53mmで、成長速度は約1mm/時であった。
【0035】
このようにして得られたインゴットより、厚さ約1mmの4°オフ{0001}面ウェハを取り出し、研磨後に溶融KOHでウエハ表面をエッチング後、顕微鏡観察したところ、各種欠陥に対応するエッチピットの数は、概算でほぼ800個/cm2程度であることが判明した。
【0036】
比較例として、上記単結晶育成用種結晶を作成する際に用いたSiC種結晶ウエハとほぼ同等な欠陥密度を有する種結晶ウエハを用いて、全く同等な条件にて直接昇華再結晶法により炭化珪素単結晶インゴットを製造し、厚さ約1mmの4°オフ{0001}面ウエハを取り出して、同様に研磨後に溶融KOHでウェハ表面をエッチング後、顕微鏡観察したところ、エッチピットの数は、概算でほぼ2000個/cm2程度であった。すなわち本発明の種結晶を使用することにより約60%におよぶ欠陥密度の減少が達成された。
【0037】
また更に、従来行われてきた安定化工程を繰り返すことによって欠陥を防ぐインゴット製造方法と、本発明との比較を行った。上記単結晶育成用種結晶を作成する際に用いたSiC種結晶ウエハと、ほぼ同等の欠陥密度を有する種結晶ウエハを用いて、マスクを設置しない、従来の昇華再結晶法による単結晶成長を実施した。成長条件は前記と同様である。このインゴットから4°オフ{0001}面ウエハを切り出し、さらにこのウエハを用いた単結晶成長と、4°オフ{0001}面ウエハ切り出しとを、その後約19回、総計20回繰り返した。しかる後に前記と同様に、厚さ約1mmの4°オフ{0001}面ウエハを切り出し、研磨後に溶融KOHでウエハ表面をエッチング後、顕微鏡観察したところ、エッチピットの数は、ほぼ全面に亘って1500個/cm2程度であった。すなわち、従来法では総計20回におよぶ単結晶成長および種結晶ウエハ切り出し工程の繰り返しを行っても実現し得ない高品質単結晶インゴットが、本発明では、僅か2層のマスク形成とそれに伴う2回の単結晶成長によって実現できることが証明された。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の種結晶は簡便に作成することができ、改良型レーリー法による炭化珪素単結晶インゴットの製造において、本発明の種結晶を用いることにより、欠陥密度が極めて小さい良質の炭化珪素単結晶を再現性、及び均質性良く成長させることができる。このような炭化珪素単結晶ウエハを用いれば、光学的特性の優れた青色発光素子、電気的特性の優れた高耐圧・耐環境性電子デバイスを製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の種結晶の製造方法を概説する図である。
【図2】 (a)は、エピタキシャル単結晶成長を行う成長装置の概要図であり、(b)は、フォトリソグラフィーで用いるカーボン製マスクパターン例である。
【符号の説明】
11 マスク部
12 SiC種結晶
13 マイクロパイプ欠陥
21 黒鉛製坩堝
22 マスク付き種結晶
23 原料用高純度SiCウエハ
24 水冷式二重石英管
25 断熱用黒鉛製フェルト
26 真空排気装置Arガス配管
27 ワークコイル
28 マスク部
29 開口部
30 隣接開口円中心間距離
Claims (5)
- 昇華再結晶法による炭化珪素単結晶インゴットの製造に用いられる種結晶であって、炭化珪素単結晶からなる種結晶中に、炭素を含んでなるマスク部と、開口部とからなるマスク層を複数含み、前記マスク部の幅が、それぞれ独立して、10〜100μmであり、かつ、前記マスク部を種結晶成長面上に投影したときに得られる投影像が種結晶成長面を完全に遮蔽することを特徴とする炭化珪素単結晶育成用種結晶。
- 前記マスク層の厚さが、それぞれ独立して、1〜100μmである請求項1に記載の炭化珪素単結晶育成用種結晶。
- 前記マスク層のマスク開口率(開口部面積/マスク部面積)が、それぞれ独立して、0.05〜2である請求項1又は2に記載の炭化珪素単結晶育成用種結晶。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭化珪素単結晶育成用種結晶を製造する方法であって、炭化珪素単結晶からなる種結晶の結晶成長面上にマスク部と開口部とからなるマスク層を形成し、該マスク層越しに炭化珪素エピタキシャル成長を行い、成長の途中に新たなマスク層を形成して、さらに炭化珪素エピタキシャル成長を継続することを少なくとも1回は行い、前記マスク層は、フォトリソグラフィーによって種結晶上に遮蔽物を形成し、その上に炭素を含んでなる薄膜を堆積した後に該遮蔽物を除去する方法によって作製され、かつ、前記マスク部を種結晶成長面上に投影したときに得られる投影像が種結晶成長面を完全に遮蔽するように各マスク層を配置することを特徴とする炭化珪素単結晶育成用種結晶の製造方法。
- 昇華再結晶法により種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させる工程を包含する炭化珪素単結晶インゴットの製造方法であって、種結晶として請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭化珪素単結晶育成用種結晶を用いることを特徴とする炭化珪素単結晶インゴットの製造方法。
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