JP3893692B2 - 動力車両のトレッド調節装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、トラクタ−、田植機、あるいは乗用管理機等の動力車両の輪距調節、所謂トレッド調節装置に関し、安全にトレッド調節が行なえるようにしたものである。
【0002】
【従来技術、及び発明が解決しようとする課題】
従来、トラクタ−等の動力車両において左右の前輪あるいは後輪のトレッドを油圧により伸縮調節するものが知られている。トレッドは、畑の畝幅に応じて調節するものであるが、圃場は必ずしも平坦でなく傾斜した場所もある。このような傾斜した場所においてトレッド調節を行なうと機体の左右バランスが崩れ、機体が横転する恐れがある。
【0003】
【課題を解決するための手段】
この発明は前記の課題に鑑みて提案するものであり、トレッド調節を安全に行なうことができるようにすることを目的とし、このため、次のような技術的手段を講じた。
即ち、トレッド調節可能な動力車両において、機体の左右傾斜角を検出する傾斜角センサ−16を設け、この傾斜角センサ−16が所定の傾斜角を検出すると前記トレッド調節を禁止する制御手段20を設けたことを特徴とする動力車両のトレッド調節装置の構成とする。
【0004】
【作用】
機体が左右方向に傾斜して機体が横転しそうな危険転倒角に近づいたことを傾斜角センサ−16が検出すると、トレッド調節を禁止する制御指令がコントロ−ラ20から出されてトレッド調節は不能となる。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示す実施例に基づいて、この発明の実施の形態を説明する。
1は動力車両としてのトラクタ−で、機体前後部に前輪2、2と後輪3、3を備え、エンジン4の回転動力をミッションケ−ス5内の変速装置で適宜減速し、減速した回転動力を前輪2、2と後輪3、3とに伝達すべく構成している。ミッションケ−ス5の後上部には油圧シリンダケ−ス8が取り付けられ、この油圧シリンダケ−ス8の左右両側部にはリフトア−ム9、9が回動自在に枢着されている。油圧シリンダケ−ス8の中に収容されている単動式の油圧シリンダ−(図示省略)に作動油を供給乃至排出するとリフトア−ム9、9が上下方向に回動する。
【0006】
リフトア−ム9、9とロワ−リンク11、11との間にはリフトロッド12、12が介装連結され、このうち、右側のリフトロッド12は油圧伸縮式のシリンダ−12aで構成されている。13はトップリンクである。トップリンク13と前記ロワ−リンク11、11とで従来周知の3点リンク機構が構成されており、この3点リンク機構には一作業機としてのロ−タリ耕耘装置15が着脱自在に連結されている。
【0007】
16は機体の傾斜量を検出する手段である傾斜角センサ−であり、トラクタ−1の左右方向の傾斜角度を検出する。傾斜角センサ−16と前記油圧式リフトロッド12の横に並設したストロ−クセンサ−17と操縦席横に設けた傾斜角設定器18とによってロ−タリ耕耘装置15のロ−リング制御がなされる。
即ち、傾斜角設定器18にて設定した傾斜姿勢となるように傾斜角センサ−値とストロ−クセンサ−値が後述のコントロ−ラ20に読み込まれ、傾斜設定値と比較されて油圧リフトロッド12aが予め設定された所定の長さまで伸縮するように構成される。
【0008】
次に図2に基づいて後輪トレッド調節機構について説明する。
符号21は後輪3のデフ装置であって、ミッションケ−ス5内の変速装置で減速された回転動力がドライブピニオン24を介してこの後輪デフ装置21に伝えられる。
後輪デフ装置21の左右両側にはブレ−キ装置25、25が設けられ、その外側には遊星減速ギヤ機構26、26が設けられている。遊星減速ギヤ機構26、26の一部を構成するキャリヤ28、28には中実状の内側後車軸29、29が固着されており、これに中空状の外側後車軸30が摺動自在に外側から嵌合されている。外側後車軸30の外端部にはフランジ部32が構成され、このフランジ部32に後輪3がボルト31締めされる。又、前記の後車軸同士29、30はスプライン嵌合により一体化されており、このスプラインを介して回転動力が伝達される。
【0009】
33は後車軸29、30を支持しているリヤアクスルハウジングであり、このリヤアクスルハウジング33には後輪3を左右横方向に移動させるアクチュエータである油圧シリンダ−35が一体的に組み込まれている。
又、前記フランジ部32と一体の板状部材36にはピストンロッド37の外端部が固着されており、油圧シリンダ−35内に作動油を送り込んで、ピストンロッド37を伸縮させて板状部材36を介して後輪3トレッドを調節する構成としている。
【0010】
図2において符号40、41は切替弁である。切替弁40は油圧ポンプ42から送り出された作動油を外部油圧の取出用として使用するか、トレッド調節用として使用するかを選択するものであり、この切替弁40を外部油圧取出側に切り替えれば、他のフロントロ−ダ等の作業機を油圧駆動することができ、反対にこれをトレッド調節側に切り替えれば後輪3の輪距、即ち、トレッドを任意に調節することができる。
【0011】
図2から明らかなように油圧シリンダ−35は復動式であり、後輪3のトレッドを伸長させたり短縮させたりすることができる。
左右の後輪3、3は独立して左右に移動させることができるものであり、一対の切替弁40、40、41、41を適宜切り替えることにより、左と右を略同時に、あるいは一方を他方より遅らせて伸縮させることができるものである。
【0012】
なお、この発明においては、前記傾斜角センサ−16が機体の転倒危険角度に近づいたことを検出すると、トレッド調節の切替弁41を中立に戻すように制御回路を構成している。即ち、傾斜角センサ−16が機体が転倒しそうな危険角度に近づくと前記切替弁41のソレノイド53、54の励磁を解いてこの切替弁41を中立位置に復帰させるべく構成している。
【0013】
次に、図3の制御ブロック図に基づいて制御系の構成を簡単に説明すると、マイコンを有する制御部としてのコントロ−ラ20の入力側には、傾斜角センサ−16、ストロ−クセンサ−17、傾斜角設定器18が接続される。更に、トレッド調節用の油圧シリンダ−35の伸縮長さを検出するセンサ−49、50、及びトレッドの長さを設定する設定器55が前記コントロ−ラ20に接続される。
【0014】
一方、コントロ−ラ20の出力側にはロ−リング制御用の油圧リフトロッド12aを伸縮させるための伸長用及び短縮用のソレノイド46、47と、油路を切り替えるソレノイド52、52、53、53、54、54が接続されている。
ソレノイド52、52が励磁されると油圧ポンプ42から送り出された作動油はサブコン側(A、Bポ−ト)に流れ、励磁が解かれるとトレッド調節側に切り替えられる。
【0015】
又、この状態でソレノイド53、53が励磁されると油圧シリンダ−35、35が伸長してトレッドが拡がり、反対側のソレノイド54、54が励磁されると油圧シリンダ−35、35が短縮してトレッドが狭まる。
左右いずれの油圧シリンダ−35、35もその伸縮量はセンサ49、50で検出され、これらの油圧シリンダ−35、35がトレッド設定器55で設定した長さになると切替弁41、41が中立位置に復帰する。
【0016】
トレッド調節中に機体が左右方向に傾斜し、その傾きが危険転倒角に近づくとトレッド調節用の切替弁41、41は中立状態に戻る。従って、機体が大きく傾いた状態ではトレッド調節が行なえないようになっている。
図4はトラクタ−1の横に障害物センサ−57を取り付けた場合の例を示すものであり、この障害物センサ−57が作業者や他の危険物を感知するとトレッド調節を禁止するようにしている。
【0017】
なお、この実施例では、切替弁40を適宜切り替えて外部油圧機構を使用しないときにトレッド調節を行なう構成としたが、作業機のロ−リング姿勢を変更する作動油を利用してトレッド調節を行なうようにしても良い。
その場合には、ロ−リング制御用の油圧回路の手動回路を用いてトレッドを調節するようにすれば良く、例えば、ロ−リング制御回路を自動モ−ドから手動モ−ドに切り替え、図示外のロ−リング制御用の伸長側あるいは短縮側の操作スイッチ(図示省略)を操作し、ロ−リング制御用の油圧リフトロッド12aに流れる作動油をトレッド調節用の油圧シリンダ−35に導くようにすれば良い。
【0018】
図5はプッシュプルワイヤ−58と回転式ポテンショメ−タ59とでトレッドの伸縮長さを検出するようにしたものである。ワイヤ−の一端を板状部材36に取り付け、ワイヤ−の他端をポテンショメ−タ59に接続してトレッドの長さを検出する。直線式のストロ−クセンサ−に比較して回転式ポテンショメ−タはコストが安く、トレッド調節装置を廉価に構成することができる。
【0019】
図6はキャビン外からトレッド調節が簡単に行なえるようにフェンダ−61にスイッチ62を設けたものである。伸長あるいは短縮側のスイッチ62a、62bを押すことによってトレッドの伸縮調節が行なえるようにしている。
この例のようにフェンダ−部に操作スイッチ62a、62bを設けておくとトレッドの調節が簡単となるものである。なお、図例ではフェンダ−の中間部に操作スイッチ62を設置したが、後端部に取り付けても良い。
【0020】
次にキャビンなしのトラクタ−の改良部分について構成を説明する。
前記実施例で説明したトラクタ−1にはインディペンデントPTOクラッチが搭載されている。インディペンデントPTOクラッチは走行系のクラッチとは独立して動力の入切りができるもので、この改良装置においては動力入切用のスイッチ64がフェンダ−61の上面部に上方突出状に設けられている。
【0021】
スイッチ64を下側に操作するとPTOクラッチ(図示省略)が入り、このスイッチ64を上側に操作するとPTOクラッチが切れる。スイッチ64の外側方には作業機を昇降させるスイッチ65が設けられ、スイッチ65を上側に引き起こすと作業機が上昇し、下側に倒すと作業機が下降する。
同図からも明らかなように、両スイッチ64、65は互いに接近させて設けられており、片手で両方のスイッチ64、65を同時に、あるいは別々に操作できるように構成している。
【0022】
なお、これらのスイッチ64、65はいずれも市販されているトグルスイッチで構成しているため、スイッチ64、65の構成が簡潔で操作性が向上する特徴を有する。そして両方のスイッチ64、65を共に下側に倒すと、作業機が下降すると共にPTOクラッチが入となる。逆に両方のスイッチ64、65を共に上側に倒すとPTOクラッチが切れて作業機が上昇する。
【0023】
次に図8の前輪周りの構成について説明する。
図中符号70は前輪デフ装置、71は前輪駆動軸、72は前輪駆動軸71の外端部にスプライン嵌合されたベベルギヤ、73はキングピン、74、75はキングピン73の上下にスプライン嵌合されているベベルギヤで、ベベルギヤ72とベベルギヤ74は常時噛み合い、下側のベベルギヤ75は前輪2のホイルシャフトと一体の大径ベベルギヤ78に常時噛み合うように構成している。
【0024】
大径ベベルギヤ78を収容している回動ケ−ス80はフロントアクスルケ−ス81外端部に取り付けられた固定ケ−ス83に対してキングピン廻りに回動する。 固定ケ−ス83の上部は開口されており、この開口部をOリング付の蓋体85で塞ぎ、蓋体85の上部にはボルト87によりナックルア−ム86を固定し、ナックルア−ム86の外端部を回動ケ−ス80の上面部に固定している。
【0025】
キングピン73廻りに回動する回動ケ−ス80の下部は固定ケ−ス83に嵌合され、回動ケ−ス80の上部はナックルア−ム86、蓋体85を介して固定ケ−ス83に対して上下から挟み込み支持する構成としているので、前輪2に対する分担荷重が増大しても最終減速ギヤケ−スが破損する恐れがなく前輪2を十分に支持することができる。なお、参考までに、図9、図10に前輪ファイナルケ−ス部の断面構造を示す。
【0026】
図9は回動ケ−ス80の下部を固定ケ−ス83に嵌合させて舵取回動自在に支持したものであり、このような形態のものにあっては前輪2に重荷重が掛かったときには強度が不足する欠点がある。
又、図10に示すものにあっては回動ケ−ス80を固定ケ−ス83に対して上下から挟み込んで支持させるものであるから強度的には強い特徴があるが、構造が複雑な分だけコストが高くなる欠点がある。即ち、図10に示す構造のものにあってはナックルア−ム86の回動支点を構成する蓋体の加工、固定ケ−ス83側への取り付け方が複雑になり、製造コストが高くなる欠点が存在するが、前記改良装置によれば、外周にOリングを備える板状部材からなる蓋体85にナックルア−ム86をボルト87により締め付け固定する形態としているので製造コストも高くならない。
【0027】
【発明の効果】
この発明は前記の如く、トレッド調節可能な動力車両において、機体の左右傾斜角を検出する傾斜角センサ−を設け、この傾斜角センサ−が所定の傾斜角を検出すると前記トレッド調節を禁止する制御手段を設けたものであるから、傾斜地等でのトレッド調節時に重心が大きく移動し、機体が危険転倒角を越えて横転するようなことがなく、従って、安全にトレッド調節を行なうことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】トラクタ−の全体側面図である。
【図2】リヤアクスルハウジング部の断面および油圧回路を示す図である。
【図3】制御ブロック図である。
【図4】障害物センサ−を取り付けた状態のトラクタ−の斜視図である。
【図5】プッシュプルワイヤ−方式のセンサ−を取り付けたリヤアクスルハウジング部の断面図である。
【図6】要部の斜視図である。
【図7】インディペンデントPTOクラッチ操作部の平面図である。
【図8】前輪ファイナルケ−ス部分の断面図である。
【図9】従来装置の前輪ファイナルケ−ス部分の断面図である。
【図10】従来装置の前輪ファイナルケ−ス部分の断面図である。
【符号の説明】
1 トラクタ−
2 前輪
3 後輪
4 エンジン
5 ミッションケ−ス
7 ハンドルポスト
8 油圧シリンダケ−ス
10 油圧シリンダ−
15 ロ−タリ耕耘装置
16 傾斜角センサ−
17 ストロ−クセンサ−
18 傾斜角設定器
20 コントロ−ラ
21 後輪デフ装置
33 リヤアクスルハウジング
Claims (1)
- トレッド調節可能な動力車両において、機体の左右傾斜角を検出する傾斜角センサ−を設け、この傾斜角センサ−が所定の傾斜角を検出すると前記トレッド調節を禁止する制御手段を設けたことを特徴とする動力車両のトレッド調節装置。
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JP27716997A JP3893692B2 (ja) | 1997-10-09 | 1997-10-09 | 動力車両のトレッド調節装置 |
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JP27716997A JP3893692B2 (ja) | 1997-10-09 | 1997-10-09 | 動力車両のトレッド調節装置 |
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JP27716997A Expired - Fee Related JP3893692B2 (ja) | 1997-10-09 | 1997-10-09 | 動力車両のトレッド調節装置 |
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1997
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