JP3646323B2 - トラクターの旋回制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、トラクタ−の旋回制御装置に関し、畦際等での機体の旋回操作を容易にして作業者に掛かる精神的及び肉体的負担を軽減させようとするものである。
【0002】
【従来技術】
従来、ステアリングハンドルを回して、これが所定角度以上に操作されると自動的にリフトア−ムが回動され、あるいは後輪内側のブレ−キが効くように連動構成されたもの、あるいはこれらが同時に作動するように連動構成されたものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、係る従来装置にあっては、ステアリングハンドルとリフトア−ムを上昇させる制御バルブとが機械的に連動されていたり、あるいはステアリングハンドルと後輪片側ブレ−キ装置とが機械的に連動された構成であったから、ステアリングハンドルを所定角度回動操作すると、リフトア−ムを上昇させたくないときでも作業機が自動的に上昇し、あるいはブレ−キを掛けたくないときでも旋回内側のブレ−キが掛かってしまい、後輪で圃場を荒らしてしまうといった不具合を有していた。
【0004】
特に、畦際や枕地では、作業機の上げ下げに伴う凹凸が多く発生することから車輪が凹部に落ち込んだり、反対に凸部に乗り上げたりすることが多く、機体を直進させようとステアリングハンドルをしっかり握っていても、これらの凹凸によってステアリングハンドルを大きく取られることがあり、トラクタ−の直進性を維持することが困難であった。
【0005】
このようなとき、ステアリングハンドルの操舵角が大きいと、ステアリングハンドル操作と連動して作業機が上昇する「オ−トリフト制御」やステアリングハンドル操作と連動して後輪片側ブレ−キが効く「オ−トブレ−キ制御」が不測に作動することがあった。
【0006】
【課題を解決するための技術手段】
この発明は前記した問題点に鑑みて提案するものであって、このため、次のような技術的手段を講じた。即ち、請求項1の発明は、ステアリングハンドル操作と連動してリフトアームが昇降回動するオートリフト機構を有するトラクターにおいて、このトラクターの左右傾斜を検知する傾斜センサを設け、さらにこの傾斜センサの検出値の変化率の大小を判別する判別部を設け、この変化率が設定値より大きい場合にはオートリフトの作動を停止させる制御手段を設けたことを特徴とするトラクターの旋回制御装置とした。
【0007】
【実施例】
以下、図面に基づきこの発明の実施例を説明する。まず、構成から説明すると、1はトラクタ−で前輪2と後輪3を備え、機体前部に搭載したエンジン5の回転動力をミッションケ−ス6内の変速装置を介して適宜減速し、これを前輪2と後輪3とに伝えるように構成している。
【0008】
ミッションケ−ス6の上部には油圧シリンダケ−ス8が搭載され、その左右両側部には作業機昇降用のリフトア−ム9、9が回動自由に枢着されている。油圧シリンダケ−ス8内の単動式油圧シリンダ−10に作動油が供給あるいは排出されるとリフトア−ム9、9が上昇しあるいは下降する。図2に示す符号12は上げ、中立、下げの3位置を有する油圧制御弁である。13、13は左右後輪3、3の後車軸上に設置されたブレ−キ装置であって油圧で作動し、後述するようにマイコンからなるコントロ−ラ15からの指令により、あるいはブレ−キペダル16、16をオペレ−タが直接踏み込むことにより、作動油がブレ−キ装置13、13のシリンダ−17、17内に流入してブレ−キ装置13、13が作動する。18a、18bは前記油圧制御弁12の上昇用と下降用のソレノイドである。
【0009】
20はステアリングハンドルであり、その回動基部には操舵角センサ22が設けられ、ステアリングハンドル20の操舵量と単位時間当たりの操作速度を検出すべく構成している。この実施例では、操舵角センサ22はアナログセンサを利用したが、操舵角度に比例してパルス信号を出力させる方式のものを用いても良い。
【0010】
23は前記ブレ−キ装置13を作動させるための切替弁であって、左旋回用と右旋回用のソレノイド23a、23bが択一的に励磁されることによってブレ−キ用シリンダ−17、17に至る油路が切り替えられ、右側若しくは左側のブレ−キ装置13が作動する。図2において符号24は分流弁、25は油圧ポンプである。
【0011】
なお、この実施例では、ステアリングハンドル20を所定角度以上に回動操作するか、所定の操作速度以上でステアリングハンドル20を操作した場合には作業機が上昇するように連動された「オ−トリフト制御」と、ステアリングハンドル20を所定角度以上回動操作したときに後輪3の片側ブレ−キ装置13が作動する「オ−トブレ−キ制御」が共に作動するように構成されている。
【0012】
作業機が上昇するタイミングとブレ−キが効くタイミングは略同時でも良いが、ブレ−キが効くタイミングが、作業機の上昇するタイミングよりやや遅い方が圃場の荒れが少なくて望ましい。なお、このトラクタ−1は機体後部に連結した作業機を左右方向にロ−リング制御することもできるものであって、そのための機構を説明すると、リフトア−ム9とロワ−リンク27とを接続するリフトロッド28のうち、片側のリフトロッドが油圧シリンダ−28rで構成されており、この油圧シリンダ−28rを伸縮させて作業機であるロ−タリ耕耘装置29の左右傾斜姿勢をコントロ−ルできるようにしている。
【0013】
油圧シリンダ−28rの横側部には、油圧シリンダ−28rの長さを検出するストロ−クセンサ30が設けられ、トラクタ−1の油圧シリンダケ−ス8の横側部には機体の左右傾斜を検出する傾斜センサ32が設けられている。操縦席の近傍に設けた傾斜設定器33によってロ−タリ耕耘装置29の傾斜角度を設定すると、傾斜センサ32、ストロ−クセンサ30の検出値及び傾斜設定器33の設定値から油圧シリンダ−28rの目標位置を演算し、コントロ−ラ15からの指令によって伸長用ソレノイド35あるいは短縮用ソレノイド36が励磁され、油圧シリンダ−28rが設定長さに伸縮制御される。
【0014】
次に、トラクタ−1の後部に連結されているロ−タリ耕耘装置29について概略の構成を説明すると、このロ−タリ耕耘装置29は、耕耘部38と、耕耘部38の上方を覆う主カバ−40と、主カバ−40の後部に枢着されたリヤカバ−42等からなり、主カバ−40の後上部にはリヤカバ−42の前後揺動角度から耕深を検出するデプスセンサ44が設けられている。デプスセンサ44と耕深設定器45は共に前記コントロ−ラ15に接続されており、耕深設定器45で設定した深さに耕深が維持されるように前記上昇用ソレノイド18a又は下降用ソレノイド18bが励磁される。
【0015】
なお、図1に記載されたトラクタ−の他の構成について簡単に説明を加えると、47はポジションレバ−、48はポジションレバ−47の回動基部に取り付けられたポジション設定器、49はリフトア−ム9の基部に取り付けられたリフトア−ム角センサ、50はロワ−リンク、51はトップリンク、52は自在継手である。
【0016】
図3はコントロ−ラ15に接続される各種スイッチ類や設定器、検出器類、及び同コントロ−ラ15の出力側に接続される各種ソレノイド等の関係について説明したブロック図であって、このコントロ−ラ15の入力ポ−ト側には、操舵角センサ22、ポジション設定器48、リフトア−ム角センサ49、耕深設定器45、デプスセンサ44、傾斜設定器33、ストロ−クセンサ30、傾斜センサ32が接続され、コントロ−ラ15の出力ポ−ト側には、上昇用ソレノイド18a、下降用ソレノイド18b、伸長用ソレノイド35、短縮用ソレノイド36、左旋回ブレ−キ用ソレノイド23a、右旋回ブレ−キ用ソレノイド23bが接続されている。
【0017】
次に図4のフロ−チャ−トに基づいて作用を説明する。このフロ−チャ−トで説明される制御プログラムはコントロ−ラ15の記憶装置内に組み込まれているものであって、傾斜センサ32の変化率によってオ−トリフト制御を作動させるか、停止させるように構成されている。まず、最初にコントロ−ラ15にセンサや設定器の状態が読み込まれ(ステップS1)、更に、操舵角センサ22の単位時間当たりの変化速度が算出される(ステップS2)。このとき、操舵角センサ22の操舵角が大きい場合、例えば旋回操作に伴ってステアリングハンドル20を2回転(720度)以上回すような場合には、ステアリングハンドル20の操作速度が小さくてもオ−トリフト制御を作動させる(ステップS3、S8)。
【0018】
そして、それ以外の場合には、操舵角センサ22の角度に関する検出値と操作速度に関する検出値とをオ−トリフト制御判定のための演算式に代入し(ステップS4)、オ−トリフト制御に移行する場合には、更に傾斜センサ32の変化率を算出する(ステップS5、S6)。そして、傾斜センサ32が検出する傾斜信号の変化する割合(率)が小さい場合には、凹凸変化が少ないものであるから、この場合は、オ−トリフト制御を行わせる(ステップS8)。
【0019】
反対に、変化率が大きい場合には、畦際や枕地のように凹凸の多い荒れ地を直進走行しているときと判断されるので、このような場所ではオ−トリフト制御を停止させる(ステップS9)。このように、上記の例によれば、圃場が荒れた枕地のような所でステアリングハンドル20を頻繁に左右に回動操作しても、傾斜センサ32がその機体の激しい揺れを検出することになって、コントロ−ラ15から上昇用ソレノイド18aに対する上昇指令がカットされ、このため、軌道修正のためにハンドル20を回す度に作業機が上昇するようなことがなく、耕耘作業等を良好に行うことができるものである。
【0020】
以上がオ−トリフト制御に関する作用の説明であり、次に図5乃至図10に基づいてオ−トブレ−キ制御について説明する。図5は傾斜センサ32の出力信号の変化の様子を示し、図6はステアリングハンドル20操舵角と不感帯幅との関係について説明したものである。図7のフロ−チャ−トについて説明すると、最初に初期設定がなされた後、傾斜センサ32の検出値が読み込まれ(ステップ♯2)、サンプリングした傾斜センサ32の検出値の分散値Vが算出される(ステップ♯3)。そして、操舵角センサ22の検出値θhが入力され(ステップ♯4)、同時に求めた分散値Vと予め設定されている許容分散値Vmaxとの比較がなされる(ステップ♯5)。分散値が許容値Vmax以下の場合には、不感帯幅θを狭いものθminにセットし(ステップ♯6)、分散値が許容値Vmaxを越えるときには、不感帯幅を大きなものθmaxにセットする(ステップ♯9)。なお、この実施例では、不感帯幅をステアリング操舵角で表すようにしており、狭いときの不感帯幅は直進位置から±180度の範囲、広いときの不感帯幅は直進位置から±270度の範囲としている。
【0021】
そして、ステップ♯7において、検出したステアリング操舵角θhの絶対値と不感帯幅θとの大小関係を比較し、その絶対値が設定した不感帯幅を越えるときには後輪片側のブレ−キ装置13を効かせ(ステップ♯10)、越えないときにはブレ−キ出力をカットする(ステップ♯8)ようにしている。この結果、不感帯幅θが狭いときには、ステアリングハンドル20を±180度の範囲内で回動操作しても旋回内側のブレ−キ装置13が作動することがなく、それを越えたときのみブレ−キ装置13が作動するものである。
【0022】
また、不感帯幅が広いときには、±270度の範囲までステアリングハンドル20を回動操作してもブレ−キ装置13が効くことはなく、それ以上になったときにブレ−キ装置13が作動する。この実施例では圃場内での通常の耕耘作業は不感帯幅を狭くし、枕地のように荒れた場所では不感帯幅を拡げて作業を行わせるようにしているのである。しかも、この不感帯幅の切替は、手動操作によらず、傾斜センサ32の信号を拾ってコントロ−ラ15からの指令で自動的に切り替えられるものであるから、作業者には何ら負担が掛からず、操作が楽であり、また、作業中にオ−トブレ−キが作動してしまうような不具合は全く生じないのである。
【0023】
図8乃至図10に示す実施例は前記の不感帯幅調節に代えて、ブレ−キ制動力自体を変えるようにしたものである。この場合、図9に示すように、枕地では圃場内の耕耘作業に比べて制動力を弱めに設定するようにしている。次に図10のフロ−チャ−トについて説明する。ステップT5において分散値Vと許容分散値Vmaxとの比較がなされ、求めた分散値Vが許容分散値Vmaxを越えたときには、ブレ−キ制動力を弱め(ステップT7)、逆に分散値Vが許容分散値Vmax以下であるときには、ブレ−キ制動力を強める(ステップT6)ようにしている。
【0024】
なお、この実施例ではブレ−キ制動力の切り替えを2段切替方式としたが、それ以上に切り替えられるように構成しても良い。更に、その制動力のカ−ブは1次関数でなく、2次関数的に変化するようなものを用いても良い。
【0025】
【発明の効果】
請求項1の発明は前記の如く、ステアリングハンドル操作と連動してリフトアームが昇降回動するオートリフト機構を有するトラクターにおいて、このトラクターの左右傾斜を検知する傾斜センサを設け、さらにこの傾斜センサの検出値の変化率の大小を判別する判別部を設け、この変化率が設定値より大きい場合にはオートリフトの作動を停止させる制御手段を設けたものであるから、機体の左右傾斜が頻繁に変わる荒地のような場所で作業をしているときにステアリングハンドルが激しく左右に振られてもオートリフトが誤って作動することがなく、操作性、作業性が著しく改善され、この結果、作業者に掛かる精神的、肉体的負担は軽くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】トラクタ−全体の側面図である。
【図2】油圧回路図である。
【図3】制御ブロック図である。
【図4】オ−トリフト制御のフロ−チャ−トである。
【図5】傾斜センサの出力信号の変化を図示したグラフである。
【図6】ステアリング操舵角と不感帯幅との関係を示したグラフである。
【図7】オ−トブレ−キ制御に関するフロ−チャ−トである。
【図8】傾斜センサの出力信号の変化を図示したグラフである。
【図9】ステアリング操舵角とブレ−キ制動力との関係を図示したグラフである。
【図10】オ−トブレ−キ制御に関するフロ−チャ−トである。
【符号の説明】
1 トラクタ−
2 前輪
3 後輪
5 エンジン
6 ミッションケ−ス
8 油圧シリンダケ−ス
9 リフトア−ム
13 ブレ−キ装置
15 コントロ−ラ
20 ステアリングハンドル
22 操舵角センサ

Claims (1)

  1. ステアリングハンドル操作と連動してリフトアームが昇降回動するオートリフト機構を有するトラクターにおいて、このトラクターの左右傾斜を検知する傾斜センサを設け、さらにこの傾斜センサの検出値の変化率の大小を判別する判別部を設け、この変化率が設定値より大きい場合にはオートリフトの作動を停止させる制御手段を設けたことを特徴とするトラクターの旋回制御装置。
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