JP3893225B2 - 現像装置および画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば複写機あるいはプリンタなどとされる電子写真画像形成装置、該画像形成装置に装着される現像装置およびクリーニング装置、該現像装置あるいはクリーニング装置に用いられるトナー搬送ローラに関する。
【0002】
【従来の技術】
画像形成装置の現像装置においては、トナー(現像剤)を担持した現像剤担持体である現像スリーブが回転し、像担持体である感光ドラムとの対向部にトナーを搬送し、感光ドラム上に形成された静電潜像に対して現像を行っている。
【0003】
そして、画像の解像力、鮮明度などの向上が求められている現在、この現像スリーブ上へのトナー薄層形成が重要となっており、トナー薄層形成方法およびその装置の開発は必須であり、これに対していくつかの方策が提案されている。
【0004】
例えば特開昭54−43038号公報には、現像スリーブ上にゴムまたは金属製などの弾性ブレードを当接させ、この弾性ブレードと現像スリーブとの当接部の間をトナーを通過させて規制することにより、現像スリーブ上にトナーの薄層を形成し、且つ当接部で十分なトリボを付与させることが記載されている。
【0005】
この場合、上記の弾性ブレードにより非磁性トナーを規制するときには、現像スリーブ上にトナーを供給するトナー供給部材が別途必要になる。これは磁性トナーの場合には、現像スリーブ内に設けられた磁石の磁力により現像スリーブ上にトナーを供給することができるが、非磁性トナーの場合には磁力によりトナー搬送が行われないためである。
【0006】
そこで現像スリーブへのトナーの搬送を行うために、従来からソリッドゴム材、ブラシ材、発泡ゴム材などを用いたトナー搬送ローラを現像スリーブに当接させる提案が数多くなされている。
【0007】
このトナー搬送ローラの機能として、前述した現像スリーブへのトナーの搬送はむろん必要であるが、それとともに、感光ドラムへ現像されなかった現像スリーブ上の未現像トナーの掻き取り性が必要になる。これが不十分になると、現像容器内において、未現像トナーと新たに供給されたトナーとが現像スリーブ上で混在することになり、つぎに弾性ブレードの規制部を通過し、感光ドラムとの対向部に送られた際に、これらのトナーの間で現像性の違いが生じるといったいわゆるゴースト画像を招き好ましくない。
【0008】
したがって、トナー搬送ローラとしては、トナー搬送機能とトナー掻き取り(剥ぎ取り)機能の両機能が要求される。
【0009】
まずトナー搬送機能に着目すると、従来からソリッドゴム材、ブラシ材、発泡ゴム材などを用いた提案が数多くなされている。しかしソリッドゴム材は表面が平滑であるために十分なトナー搬送性が得られがたい。また、ブラシ材はトナー搬送能力は優れているが、ブラシ繊維の抜けや切断などの問題がある。それに対し、発泡ゴム材は、特開平2−191974号公報によれば、表面に形成された発泡孔によりトナー搬送性がソリッドゴム材に比べ大幅に向上し、また、ブラシ材の有する問題がない。
【0010】
さらに、搬送力を向上させる技術として、特開平5−61350号公報に開示されるトナー搬送ローラは、発泡弾性体表面に凹凸形状を持たせるというものであり、トナー供給装置におけるトナーホッパーから現像装置へトナーを供給する作用を行っている。また上記発泡弾性体は、熱線カット法によりフォーム体を加工し、ロール表面に凹凸形状を持たせている。さらに、作用としては凹部を形成しより多くのトナーを取り込み搬送することを主眼としたもので、トナーを捉えやすく、かつ、放ちやすいものであれば形状自体には特に限定はないとされていた。
【0011】
つぎに、トナー掻き取り機能に着目すると、発泡弾性体ローラを被当接部材に当接させてトナーを力学的に掻き取る方法や、特開平2−191974号公報に開示されているように、発泡弾性体ローラにバイアスを印加し、被当接部材から静電気的な力でトナーを掻き取る方法が知られている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
さて、トナーへのストレスを少なくした上で掻き取り性能をより向上させるためには、回転軸と該回転軸の周囲に設けられた発泡弾性体とを有し、該発泡弾性体の外周面が凹凸面形状をなすトナー搬送ローラを用いる方法がある。
【0013】
しかしながら、カラーの電子写真装置の場合、中間転写体や多重転写を用いるために、トナーにはより高いトリボが要求される。そのため、通常は凸部だけを用いて掻き取ることが可能であるが、高いトリボを持つトナーでは付着力が大きく、掻き取り性能やトナー付与能力が低下するために、濃度薄やゴーストといった問題が発生してしまう。
【0014】
一方、近年さらなる高画質化のために電子写真画像形成装置に用いるトナーとして、その粒径はさらに小さくしていく必要があり、このトナーは通常粒径のトナーに比べて掻き取られにくい傾向がある。
【0015】
したがって掻き取り性能をより向上させる必要があり、そのために被当接部材への侵入量を増やす、あるいは当接幅(以下「ニップ幅」という)を増やす、発泡弾性ローラの回転数を増やすなどの手法により、機械的な力をさらに加えなければならない。
【0016】
しかし、これらの手法では、トナーおよび被当接部材へのストレスが増加してしまい、トナー劣化による帯電不良や融着、固化、また、被当接部材の劣化および損傷、さらには発泡弾性体自体の損傷を招いてしまう。
【0017】
また上述したような静電気的な力を利用する場合は、発泡弾性ローラを導電化しなければならず、導電物の添加により発泡弾性体としての必要な物性が疎外されやすい。またバイアス電源等が必要となり、構成が複雑で且つ高コストとなってしまう。
【0018】
このトナー掻き取り性に対しては、上述のように従来例において、トナー供給部材である発泡弾性体表面に凹凸形状を持たせたものがあり、この目的は搬送性の向上であるが、本発明者らの実験によれば、この凹凸形状を規定することにより掻き取り性にも効果があることが判明した。と同時に、この凹凸形状であるがゆえに、凹部と凸部それぞれの剥ぎ取り性に差があるため、被当接部材に対して、適正な条件で当接回転させなければ、被当接部材上にトナーの剥ぎ取り不良により交互のムラが生じてしまうことも判明した。
【0019】
このムラは、現像スリーブ上においてはピッチムラにつながってしまう。そこで、これらトナーの剥ぎ取りおよび供給(搬送)能力の両者を十分に発揮させて、現像スリーブへの良好なトナーの薄層形成を得るためには、トナー搬送ローラの形状、トナーを担持する部材への当接回転条件を、適切に規定することが望まれている。
【0020】
なお上記では、トナー搬送ローラを現像スリーブとの関係において説明したが、このトナー搬送ローラをクリーニング装置に適用した場合には、像担持体である感光ドラムとの関係における掻き取り性能についても同様なことがいえる。
【0021】
従って、本発明の主な目的は、高いトリボを持つ現像剤に対しても、現像剤劣化や被当接部材の劣化および損傷を招くことなく、現像剤搬送性を維持しつつ、安定且つ十分な現像剤掻き取り性能が得られる現像装置、および画像形成装置を提供することである。
【0023】
また、本発明の他の目的は、静電的な力を利用せず現像剤劣化や被当接部材の劣化および損傷を招くことなく、ムラのない現像剤搬送性を維持しつつ、安定かつ十分な現像剤掻き取り性能が得られる現像剤搬送ローラ備えた現像装置、および画像形成装置を提供することである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記目的は本発明に係る現像装置および画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、少なくとも現像剤を担持し搬送する現像剤担持体と、回転軸および該回転軸の周囲に設けられた発泡弾性体を有し、該発泡弾性体の外周面が周方向に凹凸形状をなす現像剤搬送ローラと、を具備する現像装置において、前記現像剤担持体と前記現像剤搬送ローラとは当接状態とし、且つ、前記現像剤搬送ローラへの前記現像剤担持体の侵入量が前記現像剤搬送ローラの凸部の高さより大であり、前記発泡弾性体のセル径をamm、前記凸部の外周面の長さをbmm、前記現像剤担持体と前記現像剤搬送ローラとの周方向のニップ幅をdmm、前記凸部の根元部分の周方向の長さをemm、前記凸部の高さをhmm、前記凸部の外周面の周方向中心点から隣接した凸部の外周面の周方向中心点までの距離をpmmとすると、a≦b<e<p≦d、a≦hを満たすことを特徴とする現像装置である。
【0025】
上記本発明の一実施態様によると、前記現像剤搬送ローラの回転速度をV1mm/sec、前記現像剤担持体の回転速度をV2mm/secとすると、
{(p−b)b}1/2×{V2/(V1+V2)}/V1≦0.035
の関係を満たす。
【0026】
また、本発明による他の態様によれば、潜像が形成される像担持体と、前記像担持体に形成された潜像を現像剤で可視像化する上記本発明の現像装置と、を有する画像形成装置が提供される。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る現像装置および画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0037】
実施例1
まず、本発明に係る画像形成装置の一実施例について図1により説明する。同図において、像担持体としての感光ドラム1は、矢印A方向に回転し、感光ドラム1を帯電処理するための帯電装置2によって一様に帯電され、感光ドラム1に静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光3により、その表面に静電潜像が形成される。
【0038】
この静電潜像を感光ドラム1に対して近接配置され、プロセスカートリッジとして、画像形成装置本体に対し着脱可能である現像装置4によって現像し、トナー像として可視化する。本実施例では露光部にトナー像を形成する反転現像を行っている。
【0039】
可視化された感光ドラム1上のトナー像は、転写ローラ9によって記録媒体である紙13に転写され、転写されずに感光ドラム1上に残存した転写残トナーはクリーニングブレード10により掻き取られ、クリーニング装置11の廃トナー容器11aに収納され、クリーニングされた感光ドラム1上述作用を繰り返し画像形成を行う。
【0040】
一方、トナー像を転写された紙13は定着装置12に搬送されて定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。
【0041】
つぎに、本実施例の現像装置4について図2に基づいてさらに説明する。
【0042】
図2において、現像装置4は一成分現像剤として非磁性トナー8を収容した現像容器14を有し、現像容器14の長手方向に延在する開口部に位置し、感光ドラム1と対向設置された現像剤担持体としての現像スリーブ5を備え、感光ドラム1上の静電潜像を現像する可視像化を行っている。
【0043】
また現像装置4において、現像スリーブ5は、上記開口部にて図中右略半周面を現像容器14内に突入し、左略半周面を現像容器14外に露出して横設されている。この現像容器14外へ露出した面は、現像装置4の左方に位置する感光ドラム1にわずかな微小間隔を有して対向している。
【0044】
現像スリーブ5は矢印B方向に回転駆動され、その表面は、トナー8との摺擦確率を高くし、かつ、トナー8の搬送を良好に行うための適度な凹凸を有している。この凸部粗面形成のためにアランダム砥粒による不定形サンドブラスと処理、あるいは、ガラスビーズによる定型サンドブラスト処理などが施される。また、凸部粗面を形成するには、単独で凸部を形成しうる例えば金属酸化物の粒子、グラファイト、カーボン等の導電性粒子を用い、凹部形成にこの粒子を結着するためのフェノール、フッ素などの樹脂を用いて凹凸粗面を形成しても良い。
【0045】
そして、その上方位置には、弾性ブレード7が押さえ板金15に支持され、自由端側の先端近傍を現像スリーブ5の外周面に面接触にて当接されるよう設けられており、当接方向としては、当接部に対して先端側が現像スリーブ5の回転方向上流側に位置するいわゆるカウンター方向になっている。
【0046】
この弾性ブレード7は、一般にバネ弾性を有するSUSまたはリン青銅の金属薄板27上に弾性体26としてウレタン、シリコーン等のゴム材料や各種エラストマーを接着もしくは射出成形して設けたものであり、本実施例においては、特に負極性トナーに対する帯電性を持たせるためポリアミドとポリエーテルをエステル結合あるいはアミド結合させたポリアミドエラストマーをリン青銅薄板に射出成形したものを用いた。
【0047】
現像剤搬送ローラとしての弾性ローラ6は、上記弾性ブレード7の現像スリーブ5表面との当接部に対して現像スリーブ5回転方向上流側に当接され、かつ回転可能に支持されている。
【0048】
上記のように構成された現像装置4において、現像動作時に、現像容器14内のトナー8は、攪拌部材18の矢印C方向の回転に伴い弾性ローラ6方向に送られる。さらにトナー8は弾性ローラ6が矢印D方向に回転することにより、現像スリーブ5近傍に運ばれ、現像スリーブ5と弾性ローラ6との当接部において、弾性ローラ6上に担持されているトナー8は、現像スリーブ5と摺擦されることによって、摩擦帯電をうけ、現像スリーブ5上に付着する。
【0049】
その後、現像スリーブ5の矢印B方向の回転に伴い、弾性ブレード7の圧接下に送られ、ここで適正なトリボ(摩擦帯電量)を受けると共に現像スリーブ5上に薄層形成された後感光ドラム1との対向部である現像部へ搬送される。
【0050】
現像部において消費されなかった未現像トナーは、現像スリーブ5の回転と共に現像スリーブ5の下部より回収される。この回収部分にはシール部材19が設けられ、未現像トナーの現像容器14内への通過を許容するとともに、現像容器14内のトナー8が現像スリーブ5の下部から漏出するのを防止する。
【0051】
この回収された現像スリーブ5上の未現像トナーは、弾性ローラ6と現像スリーブ5との当接部において、現像スリーブ5表面から剥ぎ取られる。この剥ぎ取られたトナーの大部分は、弾性ローラ6の回転に伴い搬送され現像容器14内のトナー8と混ざり合い、トナーの帯電電荷が分散される。同時に弾性ローラ6の回転により現像スリーブ5上に新たなトナーが供給され前述の作用を繰り返す。
【0052】
上記現像部において感光ドラム1上の潜像は、現像スリーブ5と感光ドラム1の両者間に電源20によって直流を重畳した交流電圧(現像ACバイアス)を印加することによって、トナー像として現像される。
【0053】
つぎに本実施例の現像装置4における各構成要素の具体例を以下に述べる。
【0054】
現像スリーブ5は、外径16mmのアルミニウム製スリーブ表面にカーボンを分散させたフェノール樹脂を厚さ10μmで塗覆し、表面粗さRaが約0.9μmとしたものを用い、感光ドラム1との間隙が300μmになるように対向し、感光ドラム1の周速117mm/sに対して若干早めた周速199mm/sで回転させた。
【0055】
トナー8は、非磁性一成分現像剤であり、平均粒径6μmのものを用いた。
【0056】
弾性ブレード7は、前述のように、バネ弾性を有する厚さ0.1mmのリン青銅金属薄板上に厚さ1mmとなるように弾性体としてポリアミドエラストマーを成型した。
【0057】
つぎに本発明に従って構成されるトナー搬送ローラ6に関して図3以下を参考にして詳述する。
【0058】
前述のように、このトナー搬送ローラ6は、図3に示すように、直径5mmの金属製の芯金17の周囲に最外径が17mmとなるようにフォームローラ16を囲繞したものであり、現像スリーブ5に対して当接させ、さらに現像スリーブ5と同一方向に不図示の駆動手段により周速158mm/sで回転駆動させた。
【0059】
このフォームローラ16は連続発泡性のポリウレタンフォームから形成されており、セルサイズの均一性おほび耐変形性からエステル系のポリウレタンが好ましい。フォームローラ16はその表面に多数の凸部21および凹部22を均一な分布で有している。この凸部21および凹部22はフォーム部長手方向全域に渡りいずれも芯金17と平行に、かつ交互に形成されている。
【0060】
ここで、フォームローラ16の凹凸形状について詳しく説明するが、形状測定にあたりフォームローラ16の半径方向断面を光学顕微鏡等で観察し写真等に納め、図4に示す方法で形状を測定するもので、凹凸部の稜線に沿って形状概略線23を描き形状を測定した。そして、凹部22において最も径が小さくなる場所を内径部、凸部21の頂点を外径部と呼ぶことにする。図4にてhは凸部高さを示す。
【0061】
つぎに、図5に本実施例に係る現像スリーブ5およびトナー搬送ローラ6の外周面部の断面概略を示す。図中、Pは現像スリーブ5の直径、Rはトナー搬送ローラ6の外径、Cは現像スリーブ5の回転軸中心とトナー搬送ローラ6の回転軸中心間距離、Iはトナー搬送ローラ6への現像スリーブ5の侵入量、hは凸部高さである。
【0062】
具体的には、本実施例の現像スリーブ5およびトナー搬送ローラ6の構成は、R=17.0mm、h=0.5mm、C=14.5mm、I=2.0mmであり、侵入量Iがトナー搬送ローラ6の凸部高さhより大きくなっている。
【0063】
本実施例の現像スリーブ5およびトナー搬送ローラ6を図2に示した現像装置4に搭載し、5000枚のプリント動作を行ったが画像上なんら不具合もなく、また、5000枚のプリント動作終了後におけるトナー搬送ローラ6の変形、欠損、破断などの以上もなかった。この際、現像動作時には現像バイアス電源20から現像スリーブ5に印加する現像バイアスとして周波数2000Hz、ピーク・ピーク間電圧1600Vの交流電圧に−400Vの直流電圧を重畳させ、感光ドラム1上の潜像の表面電位を非露光部−600V、露光部−150Vにし露光部へ反転現像を行った。
【0064】
ここで、上記本実施例の現像スリーブおよびトナー搬送ローラの構成(以下、構成Aという)の比較例として、つぎの2つの構成と比較した。
【0065】
第1比較例は、R=17.0mm、h=3.0mm、C=14.5mm、I=2.0mmの構成(以下、構成Bという)、第2比較例は、R=17.0mm、h=1.0mm、C=14.5mm、I=2.0mmの構成(以下、構成Cという)であり、侵入量Iがトナー搬送ローラ6の凸部高さhより大きくなっているものである。
【0066】
評価方法は、上記トナー搬送ローラを図2に示した現像装置4に搭載し、低温低湿環境下(15℃/10%RH)での5000枚のプリント動作を行い、カブリ、ゴースト等を特に着目して観察し評価した。
【0067】
ここで、ゴースト画像とは、図6に示すような画像であり、これは現像工程において現像スリーブ上の現像されずに残った画像が、トナー搬送ローラで掻き落とされず、現像パターン(トナーが消費された部分と未消費部分との痕跡)が次なる現像スリーブの回転で画像上に発生する現象であり、掻き取り性能が劣ると発生するものである。そして、低温低湿環境下ではトナーが帯電しやすくなるので、その鏡映力によってトナーは現像スリーブから離れにくくなるためこのゴースト画像は顕著となる。
【0068】
各構成の評価結果を下記の表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示すように、構成Aは画像上問題もなく、使用後のローラもなんら不具合はなかった。構成Bは初期において画像上問題はなかったが、5000枚プリント時にはカブリ、ゴーストの画像上不具合が発生した。
【0071】
これは、低温低湿環境下(15℃/10%RH)では現像スリーブ上におけるトナーの外添剤のトリボが大きく、トナーの現像スリーブ上の付着力が増大してしまうために、やわらかな凸部のみが当たるだけでは掻き取り性能が不足し、さらに凹部が当たらないために、接触頻度も少なくなることから、ゴーストが発生してしまう。
【0072】
一方、構成Cは構成A同様、画像上問題もなく、使用後のローラもなんら不具合はなかった。これは、構成Bとは逆に凹部が十分に現像スリーブに接触するため、構成A同様低温低湿環境下においても十分な掻き取り性能があるために、カブリ、ゴーストなどの画像上不具合なく、安定した画質を維持できるものである。
【0073】
以上説明したように、トナーを担持し搬送する現像スリーブと、フォームローラ外周に均一な凹凸分布を有するトナー搬送ローラを内包する現像装置において、トナー搬送ローラへの現像スリーブの侵入量がトナー搬送ローラの凸部の高さより大であることを満足することで安定した掻き取り性能を得ることができる。
【0074】
実施例2
つぎに、本発明の第2実施例について図7により説明する。
【0075】
本実施例は、第1実施例と同様の現像装置において、現像スリーブ5とトナー搬送ローラ6に関して、形状構成要素の関係式を導くことで安定した掻き取り性能を維持しつつ設計、製作を容易にするものである。
【0076】
図7には本実施例に係る現像スリーブ5およびトナー搬送ローラ6の外周面部を示す。図中、Pは現像スリーブ5の直径、Rはトナー搬送ローラ6の外径、rはトナー搬送ローラ6の内径、Cは現像スリーブ5の回転軸中心とトナー搬送ローラ6の回転軸中心間距離、Iはトナー搬送ローラ6への現像スリーブ5の侵入量、hは凸部高さである。
【0077】
そして、現像スリーブ5の回転軸中心とトナー搬送ローラ6の回転軸中心間距離Cおよび現像スリーブ5の直径Pを設定したときに、凹凸形状をしたトナー搬送ローラ6への現像スリーブ5の侵入量がトナー搬送ローラ6の凸部高さより大となる関係を満足するように、トナー搬送ローラ6の外径Rおよび内径rを設計するものである。
【0078】
それによると、現像スリーブ5のトナー搬送ローラ6に対する侵入量Iは、I=(P+R)/2−Cとなることから、この侵入量Iがトナー搬送ローラ6の凸部高さhより大きければよいので、h=(R−r)/2より、(R−r)/2<(P+R)/2−Cとなる。整理すると、結局、r>2C−Pなる関係を満たすとき、低温低湿環境下においても十分な掻き取り性能を発揮でき、より安定した画質を維持することができる。
【0079】
本実施例において、P=16.0mm、C=14.5mmとしたとき、r>13.0mmとなり、これを満たすような、R=17.0mm、r=16.0mmのトナー搬送ローラを試作し、第1実施例で説明した現像装置4に搭載したところ、5000枚プリントを実施したが、画像上の問題点もなく、かつ使用後ローラにもなんら不具合がなかった。
【0080】
以上、説明したようにトナーを担持し搬送する現像スリーブと、フォームローラ外周に均一な凹凸分布を有するトナー搬送ローラとを有する現像装置において、現像スリーブ5の回転軸中心とトナー搬送ローラ6の回転軸中心間距離をC、現像スリーブ5の直径をPとしたとき、r>2C−Pなる関係を満たすトナー搬送ローラの内径rを設定することで安定した掻き取り性能が得られる。
【0081】
実施例3
つぎに、本発明の第3実施例について図8により説明する。図8には、本実施例に係る現像スリーブ5およびトナー搬送ローラ6の外周面部の断面概略図を示す。
【0082】
現像装置の設計上、弾性ブレード7や吹き出し防止シート19などの位置によっては、現像スリーブ5とトナー搬送ローラ6の設置場所が限られてしまい、当接幅が制限されることがある。そのため、本実施例では現像スリーブ5およびトナー搬送ローラ6に関する形状構成要素の関係式を導くことで、安定した掻き取り性能を維持しつつ、設計、製作を容易にするものである。
【0083】
図中、Pは現像スリーブ5の直径、Rはトナー搬送ローラ6の外径、rはトナー搬送ローラ6の内径、dはトナー搬送ローラ6と現像スリーブ5との円弧状のニップの幅(以下、当接幅という)である。
【0084】
そして、現像スリーブ5とトナー搬送ローラ6との当接幅dを設定したときに、第2実施例にて説明した式、r>2C−Pなる関係を満足するように、トナー搬送ローラ6の内径rおよび外径Rを設計するものである。
【0085】
それによると、現像スリーブ5とトナー搬送ローラ6との当接幅dを設定したときに必要なトナー搬送ローラ6の内径rは、
r>P(cos(d/P)−1)+(R2 −P2 sin2 (d/P))1/2
という関係を満たすとき、低温低湿環境下においても十分な掻き取り性能を発揮できるために、より安定した画質を維持できる。
【0086】
さらに説明すると、図8に示すように、トナー搬送ローラ6の中心と現像スリーブ5の中心の間に直線αを引き、トナー搬送ローラ6の外径部と現像スリーブ5が交わっている点をβとし、交点βからトナー搬送ローラ6の中心と現像スリーブ5の中心にそれぞれ直線を引き、これらの直線と中心間を結んだ直線αとのなす角の現像スリーブ5側をφ、トナー搬送ローラ6側をψとし、交点βから中心間を結んだ直線αに垂線を下ろす。このとき、φ=(d/2)/(P/2)=d/Pとなる。また、(P/2)sinφ=(R/2)sinψとなることから、第2実施例で説明した関係式r>2C−Pを用いることによって、現像スリーブ5とトナー搬送ローラ6との当接幅dを設定したときに必要なトナー搬送ローラ6の内径rは、上記の
r>P(cos(d/P)−1)+(R2 −P2 sin2 (d/P))1/2
という関係を導き出すことができ、上記関係を満たすとき、前述のように、低温低湿環境下においても十分な掻き取り性能を発揮できるために、より安定した画質を維持できる。
【0087】
本実施例において、P=16.0mm、R=17.0mm、d=5.0mmとしたとき、r>15.5mmとなり、これを満たすような、R=17.0mm、r=16.0mmのトナー搬送ローラを試作し、第1実施例で説明した現像装置4に搭載したところ、5000枚プリントを実施したが、画像上の問題点もなく、且つ使用後ローラにもなんら不具合がなかった。
【0088】
以上、説明したようにトナーを担持し搬送する現像スリーブと、フォームローラ外周に均一な凹凸分布を有するトナー搬送ローラとを有する現像装置において、r>P(cos(d/P)−1)+(R2 −P2 sin2 (d/P))1/2 なる関係を満たすトナー搬送ローラの内径を設定することで安定した掻き取り性能が得られる。
【0089】
実施例4
つぎに、本発明の第4実施例について図9を参照して説明する。本実施例では、上記実施例にて説明したトナー搬送ローラをクリーニング装置に適用した。
【0090】
図9には、感光ドラム1に関してその右側に図2を参照して説明した現像装置4が配され、左側には本実施例のトナー搬送ローラ28を搭載したクリーニング装置25が配されている。
【0091】
現像装置4で顕画されたトナー像は、不図示のバイアス電源からバイアス印加された転写ローラ30によりトナー像が転写材31上に転写される。転写工程後、感光ドラム1上に残った転写残トナーは、続くクリーニング装置25にて感光ドラム1から除去され感光ドラム1は初期化される。
【0092】
以下、クリーニング装置25について詳述する。転写残トナーは図中矢印E方向に回転するトナー搬送ローラ28にて感光ドラム1からそのほとんどが掻き取られてクリーニング容器26に収容され、僅かに残ったトナーがクリーニングブレード27で完全にせき止められる。トナー搬送ローラ28の下方にはクリーニング装置25から掻き取ったトナーが装置外へ外れることを防ぐスクイシート29が設けてある。
【0093】
本実施例のトナー搬送ローラ28について説明する。
【0094】
トナー搬送ローラ28は直径5mmの金属製の芯金の周囲に最外径が直径17mmとなるようにフォームローラを囲繞し、その表面に凸部高さが0.5mmとなるように多数の凸部および凹部を均一な分布で有している。この凸部および凹部はフォーム部長手方向全域に亘りいずれも芯金と平行に、且つ交互に形成されている。そして、感光ドラム1の外径が46.6mm、感光ドラム1の回転軸中心とトナー搬送ローラ28の回転軸中心間距離が31.0mmとなる構成にする。これにより、トナー搬送ローラ28への感光ドラム1の侵入量が0.8mmで、トナー搬送ローラ28の凸部高さより侵入量の方が大きくなる。
【0095】
このような構成のクリーニング装置により安定したクリーニング性が得られる。
【0096】
以上説明したように、感光ドラムと、フォームローラの外周面が凹凸形状をなすトナー搬送ローラとを有するクリーニング装置において、トナー搬送ローラへの感光ドラムの侵入量がトナー搬送ローラの凸部の高さより大であることを満足することで安定した掻き取り性能が得られ、クリーニング性が安定する。
【0097】
なお、前述の第2、第3実施例で説明した、現像スリーブ5とトナー搬送ローラ6との関係式と同様に、図10に示すように、感光ドラム1の直径Oを現像スリーブ5の直径Pに、感光ドラム1の回転軸中心とトナー搬送ローラ28の回転軸中心間距離Bを現像スリーブ5の回転軸中心とトナー搬送ローラ6の回転軸中心間距離Cに、感光ドラム1とトナー搬送ローラ28との当接幅kを現像スリーブ5とトナー搬送ローラ6の当接幅dに当てはめることで十分な掻き取り性が得られ、かつ設計等も容易になることはいうまでもない。
【0098】
実施例5
つぎに、本発明に係る現像装置の第5実施例について図11〜図13により説明する。なお、本実施例の現像装置は図1に示した画像形成装置に装着されるものとし、またその構成及び機能については概略同様であるので、主に前述の現像装置と異なる部分について説明する。前出の部材と同一の部材には参照番号の下2桁を同じ番号とした。
【0099】
まず、本実施例の現像装置104における各構成要素の具体例について図11により説明する。
【0100】
現像スリーブ105は直径16mmのアルミニウム製スリーブ表面にガラスビーズ(#600)による定形ブラスト処理を施し、表面粗さRzが約3μmとしたものを用い、感光ドラム1との間隙が300μmになるように対向させた。感光ドラム1の周速は100m/s、現像スリーブ105の周速はV1とする。
【0101】
トナー108は非磁性一成分現像剤であり、平均粒径8μmのものとした。
【0102】
弾性ブレード107は、バネ弾性を有する厚さ0.1mmのリン青銅製の金属薄板127上に厚さ1mとなるように弾性体126としてポリアミドエラストマーを接着もしくは成型したものを用いた。
【0103】
つぎにトナー供給ローラとしての弾性ローラ106について詳述する。
【0104】
弾性ローラ106は、図12に示すように、回転軸である芯金117にポリウレタンフォームやシリコンなどの発泡体116をローラ形状になるように接着し、外表面周方向に凹凸を設けている。
【0105】
凹凸を設ける手段は、第一に金型内面に凹凸を設けその形状に倣うように発泡させる、第二に凹凸形状を設けた切断用の型に発泡体を押し出して外周面を凹凸形状にする、第三にニクロム線などを熱した熱線を用い表面を凹凸にするなどの方法がある。
【0106】
このうち第三の方法は、熱線でカットした際に、当然発泡体表面に熱を加えることになるためセル壁が溶解し、局所的な硬度アップを招く。これにより、現像スリーブ105に当接した際に、トナーに対しダメージを与えやすくなるため好ましくない。また第二の方法は、細かい凹凸を設けるのが困難であるのと、表面凹凸形成時に内部のセル壁を切断しやすいなどの不都合がある。したがって、凹凸を設ける手段としては、上記第一の方法が好ましく、本実施例においてもこの方法を用いた。
【0107】
発泡体のセル数に関しては1インチ当たりのセル数が50〜200個程度がトナー供給の点で好ましく、本実施例においては75個であるポリウレタンフォームを用いた。
【0108】
図13に示すように、弾性ローラ116の表面には周方向に凹凸を設けている。この図は光学顕微鏡などで弾性ローラ116の断面の凹凸部分を観察したものであり、図中斜線部がセル壁を示している。実際の凹凸は図13に示したようにセル壁が部分的に切れているため、その形状を定義するのは困難であるが、凹凸の外周を概略なぞった点線部分によって凹凸形状を定義することとする。
【0109】
本実施例においては、具体的には外径15mm、凸部高さh=0.8mmの弾性ローラ106を用いた。
【0110】
上記弾性ローラ106を用いた現像装置104において、弾性ローラ106の周面を凹凸形状に構成したことにより、凸部121がある程度の自由度をもって現像スリーブ105に当接することができ、それにより当接時における接触頻度を増し、凹部122においても凸部121にて剥ぎ取ったトナーを凹部122においても保持して搬送することができることから、剥ぎ取ったトナーの搬送性も向上できる。しかしながら、このような作用を効果的に得るためには、現像スリーブ105と弾性ローラ110の当接ニップ内で、現像スリーブ105のある一点が凹凸に遭遇する回数が重要な因子となってくる。
【0111】
そこで、現像スリーブ105と弾性ローラ106の当接ニップ幅をd(mm)、弾性ローラ106の凹凸部の長さすなわち凹凸ピッチp(mm)、現像スリーブ5の周速をV1(mm/s)、弾性ローラ106の周速をV2としたとき、凹凸遭遇回数X=(d/p)×(V2/V1)の最適条件を見出すために、上記弾性ローラ116を装着した現像装置104を用いて実験を行った。
【0112】
感光ドラム1の周速は100mm/s、弾性ローラ106は現像スリーブ105と同一方向に不図示の駆動手段により回転駆動させ、現像スリーブ105の周速V1を50〜500mm/s、弾性ローラ106の周速V2を50〜300mm/s、弾性ローラ106の凹凸部の長さすなわち凹凸ピッチpを0.2〜4mm、現像スリーブ105と弾性ローラ106の当接ニップ幅dを0.2〜4mmと、上記パラメータを種々変更して、3000枚のプリント動作を行った。この際、現像動作時に電源20から現像スリーブ105に印加する現像バイアスとして周波数2000Hz、ピーク・ピーク間電圧2000Vの交流電圧に−400Vの直流電圧を重畳させ、感光ドラム1上の潜像の表面電位を非露光部−600V、露光部−150Vとし露光部に反転現像を行った。
【0113】
その結果を下記の表2に示す。表2はゴースト画像(あるパターンで現像した際に、トナーが消費された部分と未消費部分で、つぎの現像スリーブ5の1周での現像濃度に差が生じる現象)、耐久後半のトナー劣化によるカブリの、凹凸遭遇回数Xとの関係を示したものである。
【0114】
【表2】
【0115】
表2から、現像スリーブ105と弾性ローラ116の当接ニップ内で、現像スリーブのある一点が凹凸に遭遇する回数が、ゴースト画像の発生を防止するのに最低でも1回は必要であり、またそれが15回を超えてしまうと、耐久後半のトナー劣化によるカブリを生じてしまうことが分かった。
【0116】
以上の結果から、凹凸形状を有した弾性ローラ106を用いた現像装置において、現像スリーブ105と弾性ローラ106の当接ニップ内で現像スリーブ105のある一点が凹凸に遭遇する回数が1以上15以下すなわち、1≦(d/P)×(V2/V1)≦15、の条件を満足した場合、良好な画像を得ることができた。
【0117】
つまり、本実施例のように、現像スリーブ105と弾性ローラ106の当接ニップ内で、現像スリーブ105のある一点が凹凸に遭遇する回数を規定することにより、トナー劣化や現像スリーブへのトナー融着および現像スリーブの損傷を招くことなく、トナー供給性を維持しつつ、安定、かつ十分なトナー掻き取りを確実に行うことにより、安定して均一で良好な画像を得ることができる。
【0118】
実施例6
つぎに、本発明の第6実施例について図14〜図17により説明する。本実施例は、図1に示した画像形成装置、および図11に示した現像装置104に装着されるトナー搬送ローラである弾性ローラに特徴を有する。
【0119】
なお、本実施例における画像形成装置においては、感光ドラム1と現像スリーブ105との間隙は300μmであり、感光ドラム1の周速50mm/sに対し、若干早めた周速80mm/sで回転で回転させた。その他の基本的構成は上述の通りである。
【0120】
本実施例における弾性ローラ206は、図14に示すように、回転軸である芯金222上にポリウレタンフォームやシリコンなどの発泡体221をローラ形状になるように接着し、外表面周方向に凹凸を設けている。凹凸を設ける手段は、上述のように金型内面に凹凸を設けその形状に倣うように発泡させたり、凹凸形状を設けた切断用の型に発泡体を押し出して外周面に凹凸形状にするなどの方法がある。本実施例においては、発泡体材料として1インチ当たりのセル数が75個であるポリウレタンフォームを用いた。
【0121】
つぎにこの弾性ローラ206の凹凸部分の長さに関して説明する。
【0122】
図15は前出の図13と同様の図であり、光学顕微鏡などで弾性ローラ206の断面の凹凸部分を観察したもので、図中斜線部がセル壁を示している。実際の凹凸は図15に示したようにセル壁が部分的に切れているため、その形状を定義するのは困難であるが、図15に示すように、凹凸の外周を概略なぞることで凹凸の形状を定め、その長さ関係を図16に示すように定義する。
【0123】
bは凸部外周面の長さ、eは凸部の根元部分の周方向の長さ、hは凹部の外周面から凸部の外周面までの半径方向の距離つまり凸部高さ、pは凸部外周面の周方向中心点から隣接凸部外周面の周方向中心点までの周方向の距離つまりピッチをそれぞれ示す。
【0124】
また発泡体のセル径として、図15に示すように、断面中に存在する各セルの径を少なくとも10個以上調べ、これらを平均したものをセル径aとした。
【0125】
本発明者らは、この凹凸の最適形状を見出すために各種の形状の弾性ローラ206を試作し、実験を行った。
【0126】
まず凸部221の最小の大きさに関しては、用いる発泡体のセルの大きさに関係があることが判明した。つまり凸部外周面の長さbを少なくともセル径aより長くし、かつ凹部222の外周面から凸部221の外周面までの半径方向の距離h、すなわち凸部221の高さをも少なくもセル径aより長くすることが必要である。
【0127】
これによって、凸部表面と側面に少なくともセル壁を一つ以上形成せしめ、さらに凸部表面もしくは側面でセル開口を一つ以上形成せしめ、凸部の安定形成および凸部内(表面および側面)でのトナーの剥ぎ取り性およびトナー搬送性を良好に行うことができるが、これより短いものを試作したところ、凸部がない場所がところどころできてしまい、凸部の安定形成が困難になり好ましくなかった。
【0128】
さらに凸部221の根元部分の周方向の長さeについても少なくともセル径aより長くし、凸部外周面の長さbより長くする。これにより凸部の根元部分の安定化を図ることが可能となる。
【0129】
このようにして凸部221として必要な最小の大きさが定まったが、つぎに凸部221の最大値に関しては、本実施例においては現像スリーブ105との当接ニップ幅との関係で定まることが判明した。つまり凹凸形状とした効果を出すためには、当接ニップ部内に少なくとも一つ以上の凸部と凹部が必要である。これによって弾性ローラ206と同方向に回転する現像スリーブ105表面上の任意の点は回転に伴いニップ部内を通過する際に凸部からの剥ぎ取りを必ず受けることが可能となる。
【0130】
したがって凸部外周面の周方向中心点から隣接凸部外周面の周方向中心点までの周方向の距離pすなわちピッチをニップ幅d以下とし、凸部と凹部がトナー搬送ローラの被当接部材とのニップ幅d内に必ず存在するようにすることで凸部での剥ぎ取りおよび凹部でのトナー搬送を確実に行えるようにすることが重要である。
【0131】
以上の結果をまとめると、a≦b<e<p≦d、a≦hの条件を満たすことで、凸部の安定化を図り、被当接部材への確実な当接を行うことが可能となる。
【0132】
この結果から凹凸の各長さの上下限が定まったことになる。
【0133】
但し、凸部高さであるhに関しては上限が定まっていない。そこで本発明者らはその上限を調べるために試作検討を行ったところ、凸部高さhの上限はピッチpに応じて定められることが判明した。
【0134】
具体的にはh≦pとすることで、より凹凸を設けた効果が発揮され、トナーの剥ぎ取り性および搬送性が良好が行われることが判明した。この理由としては、h>pの場合において、ある凸部221が当接状態で倒れた際に隣接する凸部221にぶつかる場合があるためと考えられる。この状態が起こると、隣接した凸部221の現像スリーブ105に対する当接が不安定になり摺擦確率が減ってしまったり、且つ凹部222が凸部221が倒れた際に覆われることになり凹部222のトナー搬送性を犠牲にする場合がある。したがって、これらの不都合を防止するために、h≦pとすることが好ましい。
【0135】
凹凸形状の弾性ローラ206は、前述したように、現像スリーブ105上の残存したトナー108の剥ぎ取りおよび新しいトナー108の供給の両方の働きを備えているため、それぞれの働きを十分に発揮するように、弾性ローラ206の現像スリーブ105への当接回転条件を適正に設定する必要がある。
【0136】
そこで、適正条件を見出すために、弾性ローラ206として上記した条件であるa≦b<e<p≦d、a≦h≦pを満たす弾性ローラ6として以下の値のものを試作した。
【0137】
すなわち、a=0.3mm、h=0.5mm、e=0.8mm、p=1.0mmでb=0.5mm、p=3.0mmでb=1.5mm、p=5.0mmでb=2.5mmの凹凸条件で芯金径5mm、外径15.0mmのものを試作した。
【0138】
そして、この弾性ローラ206の効果を調べるために、この弾性ローラ206を用い、現像スリーブ5に対して当接ニップ幅が5mmになるように現像装置内に装着した。そして、弾性ローラ206(現像スリーブ105と逆方向に回転)の周速比V1/V2=10〜200%、現像スリーブ105の周速V2=20〜400mm/sの範囲で種々変更を行い、現像スリーブ5上のコーティング状態を調べた。
【0139】
その結果を表3〜表5に示す。表3はp=1.0mmでb=0.5mm、表4はp=3.0mmでb=1.5mm、表5はp=5.0mmでb=2.5mmの凹凸形状である弾性ローラ206と現像スリーブ105の各回転速度におけるコーティング状況を評価したものである。
【0140】
【表3】
【0141】
【表4】
【0142】
【表5】
【0143】
まず、この結果の中で、コーティング状態に不良が生じた条件について注目すると、(1)現像スリーブの回転速度V2が遅いとき、(2)弾性ローラの回転速度V1が遅いとき、(3)凸部と凸部の間隔pが長いとき、コーティングムラが発生する傾向にあることがわかる。これらのムラが発生する場合のムラの発生間隔を調べてみるとどれも現像スリーブ5の周方向にp×V2/V1[mm]の間隔で発生していることが判明した。
【0144】
すなわち、現像スリーブ105に当接回転する弾性ローラ206の剥ぎ取りが大きく関与していることがわかった。
【0145】
この弾性ローラ206による現像スリーブ105上からの古いトナー8の剥ぎ取りは、当接ニップ内において、凸部のエッジが当接することで良好に行われる。
【0146】
一方、凸部のエッジによって、剥ぎ取られたトナー8は回転方向下流の凹部に溜まり、弾性ローラ6が回転することにより、当接ニップ外へ搬送される。
【0147】
本発明者らは、上記コーティング不良の生じた現像装置を現像スリーブ105を回転途中で停止させ、現像スリーブ105と弾性ローラ206の当接ニップ部の様子を観察することにより、弾性ローラ206の回転方向下流に、凸部と凸部の当接周期の剥ぎ取りムラが生じていることが判明した。また、逆に、上記コーティング不良の生じない現像装置を同様に停止させ、観察を行ったところ、現像スリーブ105と弾性ローラ206の当接ニップ部の弾性ローラ206の回転方向下流から、良好に剥ぎ取りが行われていることも判明した。
【0148】
これらの結果から、凹凸形状の弾性ローラ206の剥ぎ取り性能は、当接ニップ部の弾性ローラ206の回転方向下流における、トナー搬出状況に依存していることが類推される。
【0149】
図17を用いて、弾性ローラ206の凸部221によりトナーが剥ぎ取られている様子を説明する。
【0150】
当接ニップ内において、凹凸形状の弾性ローラ206の凸部221は、回転方向下流に向かって、回転速度V1にて現像スリーブ105から離脱するまで、現像スリーブ105上のトナー8を剥ぎ取る。先の凸部221が離脱後(図17(a)から(b)への流れの中)、つぎの凸部Yが未剥ぎ取りトナー層先端Xとすれ違う地点(図17(b))から、現像スリーブ105から凸部Yが離脱するまで、長さI移動する間に、未剥ぎ取りトナー層を回転方向下流へ剥ぎ取りながらニップ外まで搬送し、離脱後もさらにトナーを搬送する。
【0151】
この当接初期の長さI部分でのトナーの剥ぎ取りを確実に繰り返すことによって、良好なトナーの剥ぎ取りが可能となる。すなわち、この剥ぎ取りを短時間に行うことが良好なトナーのコーティングにつながるものである。
【0152】
凸部中心が現像スリーブ5から離れてから、その離れた現像スリーブ5上の部分(剥ぎ取りが行われなくなった部分)Xが、つぎの凸部中心Yに当接するまで、図17からも分かるように、長さV2×p/(V1+V2)の未剥ぎ取り部分が生じる。また、弾性ローラ206の凸部の移動速度V1から、この未剥ぎ取り部分を弾性ローラ206の凸部によって、当接ニップ外に搬出するためには、時間t=V2×p/{V1×(V1+V2)}を要する。
【0153】
上記の式から、算出した未剥ぎ取り部分搬出時間tを、表5の結果に照らし合わせたものを下記の表6に示す。
【0154】
【表6】
【0155】
表6から、コーティング不良が生じた条件は、上記搬出時間tがある一定時間より長くなっていることが分かる。
【0156】
この結果から、良好なコーティングを可能とする関係式として、V2×p/{V1×(V1+V2)}≦0.07が得られる。
【0157】
つぎに、凸部の長さbと凹部の長さ(p−b)のコーティング不良に対する影響であるが、下記の表7に凸部の長さbと凹部の長さ(p−b)を変えたときのコーティング状態を示した。
【0158】
【表7】
【0159】
表7からも分かるように、凸部の長さbと凹部の長さ(p−b)に差があるほど、コーティング不良が出がたくなっている。上述の関係式は、凸部の長さbと凹部の長さ(p−b)の長さの、相加平均≧相乗平均、すなわち、{(p−b)+b}/2≧{(p−b)b} 1/2 を用いることによって、
{(p−b)b} 1/2 ×{V2/(V1+V2)}/V1≦0.035
とすることができる。
【0161】
この関係式の妥当性を調べるために、弾性ローラ206をa=0.3mm、h=0.5mm、e=0.8mm、p=1.0〜5.0mm、b=0.1〜4.9mmで芯金径5mm、外径15.0mmであり、弾性ローラ206(現像スリーブ105と逆方向に回転)の周速比V1/V2=10〜200%、現像スリーブ5の周速V2=20〜400mm/sの範囲で条件に設定して同様に実験を行ったところ、関係式を満足する範囲で良好なコーティングを得られた。
【0162】
その結果、トナーや現像スリーブ105に過大なストレスを与えることなく、トナー搬送性を維持しつつ、安定、且つ十分なトナー掻き取り性能が得られた。
【0163】
なお、むろん本実施例において用いた各部材に関して、本発明の範囲内で適宜選択可能である。
【0164】
さらに上記実施例においては、画像形成装置本体に着脱可能な現像装置からなるプロセスカートリッジとして用いたが、画像形成装置本体内に固定され、トナーのみを補給するような構成の現像装置として用いてもよく、また現像装置と感光ドラム、クリーニングブレード、廃トナー収容容器、帯電装置を一体で形成して画像形成装置本体に対し、着脱可能なプロセスカートリッジとして用いてもよい。
【0165】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、現像剤担持体と現像剤搬送ローラとは当接状態とし、且つ、前記現像剤搬送ローラへの前記現像剤担持体の侵入量が前記現像剤搬送ローラの凸部の高さより大であり、前記発泡弾性体のセル径をamm、前記凸部の外周面の長さをbmm、前記現像剤担持体と前記現像剤搬送ローラとの周方向のニップ幅をdmm、前記凸部の根元部分の周方向の長さをemm、前記凸部の高さをhmm、前記凸部の外周面の周方向中心点から隣接した凸部の外周面の周方向中心点までの距離をpmmとすると、a≦b<e<p≦d、a≦hを満たす構成とすることにより、高いトリボを持つ現像剤に対しても、現像剤劣化や被当接部材の劣化および損傷を招くことなく、現像剤搬送性を維持しつつ、安定且つ十分な現像剤掻き取り性能が得られる現像装置、および該現像装置を備えた画像形成装置を得ることができる。
【0167】
また、本発明によれば、静電的な力を利用せず現像剤劣化や被当接部材の劣化および損傷を招くことなく、ムラのない現像剤搬送性を維持しつつ、安定かつ十分な現像剤掻き取りを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明が適用される画像形成装置の一実施例を示す構成図である。
【図2】 本発明に係る現像装置の第1実施例を示す構成図である。
【図3】 本発明に従って構成されるトナー搬送ローラの第1実施例を示す斜視図である。
【図4】 図3のトナー搬送ローラの外周部拡大断面図である。
【図5】 第1実施例のトナー搬送ローラおよび現像スリーブの外周部断面概略図である。
【図6】 ゴースト画像の一例を示す説明図である。
【図7】 第2実施例のトナー搬送ローラおよび現像スリーブの外周部断面概略図である。
【図8】 第3実施例のトナー搬送ローラおよび現像スリーブの外周部断面概略図である。
【図9】 第4実施例におけるクリーニング装置を備えた画像形成装置を示す概略構成図である。
【図10】 第4実施例の変形例としてのトナー搬送ローラおよび感光ドラムの外周部断面概略図である。
【図11】 第5実施例の現像装置を示す構成図である。
【図12】 第5実施例のトナー搬送ローラを示す斜視図である。
【図13】 図12のトナー搬送ローラの外周面における凹凸部の拡大断面図である。
【図14】 第6実施例のトナー搬送ローラを示す斜視図である。
【図15】 図14のトナー搬送ローラの外周面における凹凸部の拡大断面図である。
【図16】 図15の凹凸部における長さ関係を示す説明図である。
【図17】 第6実施例における現像スリーブとトナー搬送ローラとの当接部を示す説明図である。
【符号の説明】
1 感光ドラム(像担持体)
4、104 現像装置
5、105 現像スリーブ(現像剤担持体)
6、28 弾性ローラ(トナー搬送ローラ/現像剤搬送ローラ)
11、25 クリーニング装置
16、116、221 発泡弾性体
17、117、222 回転軸
Claims (3)
- 少なくとも現像剤を担持し搬送する現像剤担持体と、回転軸および該回転軸の周囲に設けられた発泡弾性体を有し、該発泡弾性体の外周面が周方向に凹凸形状をなす現像剤搬送ローラと、を具備する現像装置において、
前記現像剤担持体と前記現像剤搬送ローラとは当接状態とし、且つ、前記現像剤搬送ローラへの前記現像剤担持体の侵入量が前記現像剤搬送ローラの凸部の高さより大であり、
前記発泡弾性体のセル径をamm、前記凸部の外周面の長さをbmm、前記現像剤担持体と前記現像剤搬送ローラとの周方向のニップ幅をdmm、前記凸部の根元部分の周方向の長さをemm、前記凸部の高さをhmm、前記凸部の外周面の周方向中心点から隣接した凸部の外周面の周方向中心点までの距離をpmmとすると、
a≦b<e<p≦d、a≦h
を満たすことを特徴とする現像装置。 - 前記現像剤搬送ローラの回転速度をV1mm/sec、前記現像剤担持体の回転速度をV2mm/secとすると、
{(p−b)b}1/2×{V2/(V1+V2)}/V1≦0.035
の関係を満たすことを特徴とする請求項1の現像装置。 - 潜像が形成される像担持体と、前記像担持体に形成された潜像を現像剤で可視像化する請求項1又は2の現像装置と、を有する画像形成装置。
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