JP3892834B2 - 厚鋼板の冷却方法 - Google Patents

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本発明は、厚鋼板の上面と下面の表面温度差を低減して、厚鋼板の形状不良を防止する厚鋼板の冷却方法に関する。
従来、熱間で圧延された高温の厚鋼板を、その上面及び下面(以下、上下面ともいう)に冷却水を供給するノズルを配置した冷却装置内で連続的に冷却し、高強度、高靭性を有する厚鋼板を製造するプロセスが広く用いられている。この製造プロセスにおいては、連続的な冷却により鋼材の組織制御を行うため、合金元素の低減や熱処理工程の省略が可能であり、製造コストは大幅に削減される。また、合金元素の低減によって、溶接性が向上し、予備熱量の低下や大入熱溶接の適用等が可能となり、溶接作業の効率が大幅に改善される。
しかしながら、厚鋼板の上面には、供給された冷却水が滞留するため、上面と下面では、それぞれ冷却水の挙動が異なり、上下面にそれぞれ同じ水量を供給すると上面の冷却能が大きくなり、冷却終了後、上下面には、非対称な温度分布が生じる。この厚鋼板の上下面の表面温度差による熱応力によって、厚鋼板は、幅方向に上方向又は下方向に反る形状不良が発生していた。
ここで、厚鋼板の形状不良を防止するために、厚鋼板のサイズ、供給する冷却水の水量、及び冷却停止温度等の冷却条件毎に、上面に供給される水の冷却能を考慮して、下面に供給する水量に対して、上面に供給する水量を調整する上面と下面の水量比(以下、上下水量比という)を経験的に求め、この上下水量比に基づいた量の冷却水を厚鋼板の上下面にそれぞれ供給して、厚鋼板の平坦度が良好となるようにしていた。しかしながら、経験則に基づき厚鋼板の上下水量比を求める方法では、厚鋼板の形状不良の発生防止が充分に行われない。
ここで、冷却開始前に厚鋼板の上下面の温度を測定し、冷却終了時の厚鋼板の上下面の表面温度差を許容値内とする上下水量比の設定条件を演算によって定めると共に、冷却終了時の厚鋼板の上下面の表面温度差を実測値に基づいて、次回の厚鋼板の上下水量比を修正する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、熱間で圧延された厚鋼板を冷却装置に搬送して、冷却装置内の上部及び下部に配置したノズルから厚鋼板に冷却水を供給し、冷却装置の長手方向で厚鋼板の上下面に供給する冷却水の水量を制御可能な複数の冷却ゾーン毎に、各冷却ゾーン入側で、厚鋼板の上下面の表面温度差を検出し、この検出した厚鋼板の上下面の表面温度差に基づいて、冷却ゾーンにおいて、厚鋼板に供給する上下水量比を修正制御して、厚鋼板の上下面の表面温度差を無くす方向に修正を行なう方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
なお、特許文献2の発明では、複数回の温度測定によって修正精度が向上し、厚鋼板の上下面の表面温度差を無くすことができる。また、厚鋼板は、一枚毎に、上下面の表面温度差を冷却過程で直接制御するため、一本目の厚鋼板から形状不良の発生を防止することができる。
特公平5−34093号公報 特公平6−89411号公報
しかしながら、温度計を設置しているゾーンには、温度測定の精度を維持するために、冷却水を供給することができないことから、前記特許文献1及び特許文献2では、冷却水を供給する冷却ゾーンと冷却水を供給しない温度測定ゾーンが交互に多数回出現する。このため、厚鋼板の表面は冷却と復熱を繰り返し、冷却速度が低下し、高い冷却速度を得られず、厚み方向で、内部と表面及び裏面との温度差が縮小し、冷却装置の機長が長くなる。また、厚鋼板の表面温度が遷移沸騰域(約600℃〜300℃)にある場合、冷却による温度低下に伴い熱伝達係数が増加するので、上下面の温度差が発生し易い。
更に、特許文献2の発明では、遷移沸騰域において、厚鋼板の冷却と復熱を何回も繰り返しており(特許文献2の実施例では、温度測定ゾーンは17回である)、それに伴って、遷移沸騰域での冷却時間が長くなり、厚鋼板の内外部の温度偏差が更に増大する。このように、厚鋼板を均一に冷却するためには、遷移沸騰域での冷却時間を極力短縮しなければならず、特許文献2の発明のように、厚鋼板に供給する上下面の水量比の修正を行い、厚鋼板の上下面の表面温度差を解消しても、厚鋼板の内外部の温度偏差が増大するため、厚鋼板の形状不良を防止するのは困難であった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、厚鋼板の上面と下面の表面温度差を低減して、厚鋼板の形状不良を防止する厚鋼板の冷却方法を提供することを目的とする。
前記目的に沿う第1の発明に係る厚鋼板の冷却方法は、熱間で圧延された高温の厚鋼板の表面温度が遷移沸騰域にある領域に設置され、更に該厚鋼板を挟んで上下対称位置に配置され、該厚鋼板の上面及び下面の表面温度を同時に測定する温度計と、前記厚鋼板の上面及び下面の表面に冷却水を供給するノズルとを有した冷却装置内に、前記厚鋼板を搬送し、該厚鋼板の上面及び下面に冷却水を供給して、前記厚鋼板を膜沸騰域から核沸騰域まで冷却する厚鋼板の冷却方法において、
前記冷却装置内で冷却して遷移沸騰域にある前記厚鋼板の上面と下面の表面温度を前記温度計で同時に測定し、測定された前記厚鋼板の上面と下面の表面温度差に基づいて、前記温度計の上流側の少なくとも膜沸騰域にある前記厚鋼板の上面及び下面に供給する冷却水の水量比を修正し、前記厚鋼板の上面と下面の表面温度差を低減する。
これによって、厚鋼板の上面及び下面(以下、上下面ともいう)の表面の温度差を解消するように厚鋼板の上下面の表面に供給する冷却水の水量比(以下、上下水量比ともいう)が修正され、厚鋼板の形状不良を防止できる。また、厚鋼板の上下面の表面温度の測定は、厚鋼板の上下面の温度差が発生し易い遷移沸騰域(厚鋼板の表面温度が、約600℃〜300℃である)で行い、更に少なくとも膜沸騰域にある厚鋼板の上下面に供給する冷却水の水量比を修正するので、有効な制御効果を得ることができ、冷却終了時の上下面の表面の温度差を安定して低減することができる。
圧延が完了した厚鋼板は、加熱や圧延等の前工程の操業での影響を受け、表面温度、表面に付着したスケール及び表面粗度等が1枚1枚異なっている。これによって、厚鋼板の熱伝達係数が大きく変化するため、表面性状にばらつきがあると均一な冷却は困難である。通常、厚鋼板の冷却は800℃前後から開始するが、遷移沸騰域より高温側の膜沸騰域(約800℃〜600℃)では、冷却能が小さいため温度差はまだ増加しておらず、厚鋼板の上下面に供給する冷却水の水量比を決定し難い。また、低温側の核沸騰域(約300℃〜100℃)では、遷移沸騰域で発生した温度差が収束し始めていると共に、冷却能が縮小しているため、温度差を測定しても有効な制御効果を得ることができず、厚鋼板の上下面の表面温度差を解消できない領域が多くなり、厚鋼板が変形することがある。
ここで、遷移沸騰域及び核沸騰域では、膜沸騰域と比較して、冷却水を実質的に同じ水量で供給した際には、抜熱量が2〜5倍程度大きい。従って、冷却前(膜沸騰域)に厚鋼板の上下面の表面温度差がある場合、厚鋼板の温度低下と共に熱伝達係数が増大するため、厚鋼板の上下面の表面温度差が急激に拡大し、厚鋼板の内外部の温度偏差を増加させる。従って、膜沸騰域で厚鋼板の上下面の表面温度差を少なくすれば、遷移沸騰域では、厚鋼板の上下面の表面温度差が拡大し難くなる。また、厚鋼板の表面のスケール、粗度に応じて、安定した冷却を行うためには、遷移沸騰域での冷却時間を極力短縮することが好ましい。
また、遷移沸騰域及び核沸騰域では、供給する冷却水の水量変化に対して、厚鋼板の表面温度が急激に低下するが、膜沸騰領域では、遷移沸騰域及び核沸騰域と比較して、ゆっくり低下する。従って、膜沸騰領域では、供給する冷却水の水量の誤差が若干あったとしても、厚鋼板の上下面の表面温度にあまり影響しないので、冷却水の水量調節が容易である。また、温度差が急激に拡大する遷移沸騰域よりも前の膜沸騰域で温度差をなくすことができれば、遷移沸騰域において、厚鋼板の上下面の表面温度差が広がり難くなる。
第2の発明に係る厚鋼板の冷却方法は、第1の発明に係る厚鋼板の冷却方法において、前記温度計の上流側では、フィードバック制御が行われ、該温度計よりも上流側の少なくとも膜沸騰域にある前記厚鋼板の上面及び下面に供給する冷却水の水量比を修正すると共に、前記温度計の下流側では、フィードフォワード制御が行われ、該温度計よりも下流側の遷移沸騰域及び核沸騰域にある前記厚鋼板の上面及び下面に供給する冷却水の水量比を修正することが好ましい。これによって、発生した厚鋼板の上下面の表面温度差に応じて、下流側領域及び上流側領域の上下水量比を修正し、厚鋼板の全体において上下面を均一に冷却することが可能となる。
ここで、厚鋼板は、長手方向に搬送されながら冷却されるため、厚鋼板の上流先端部と下流尾端部とでは、冷却開始までの空冷時間が異なり、その結果、冷却時開始の厚鋼板の温度や表面性状も異なる。従って、厚鋼板を長手方向に複数の領域にブロック分けし、そのブロック毎に温度測定して平均温度差を求め、フィードバック制御及びフィードフォワード制御を行うことが、厚鋼板の長手方向全長に亘って、上下面の表面温度差を低減できるので好ましい。
前記目的に沿う第3の発明に係る厚鋼板の冷却方法は、熱間で圧延された高温の厚鋼板の表面温度が遷移沸騰域にある領域の上流側及び下流側にそれぞれ設置され、更に該厚鋼板を挟んで上下対称位置に配置され、該厚鋼板の上面及び下面の表面温度を同時に測定する第1及び第2の温度計と、前記厚鋼板の上面及び下面の表面に冷却水を供給するノズルとを有した冷却装置内に、前記厚鋼板を搬送し、該厚鋼板の上面及び下面に冷却水を供給して、前記厚鋼板を膜沸騰域から核沸騰域まで冷却する厚鋼板の冷却方法において、
前記第1の温度計で測定された前記厚鋼板の上面と下面の表面温度差に基づいて、前記第1の温度計の上流側の少なくとも膜沸騰域にある前記厚鋼板の上面と下面に供給する冷却水の水量比を修正し、更に前記第2の温度計で測定された前記厚鋼板の上面と下面の表面温度差に基づいて、前記第2の温度計の下流側の前記厚鋼板の上面及び下面に供給する冷却水の水量比を修正し、前記厚鋼板の上面と下面の表面温度差を低減する。
これによって、厚鋼板の上下面の表面の温度差を解消するように厚鋼板の上下面の表面に供給する冷却水の水量比が修正され、厚鋼板の形状不良を防止できる。また、第1の温度計では、第1の温度計よりも上流側の少なくとも膜沸騰域にある厚鋼板の上下面に供給する冷却水の水量比を修正し、また、第2の温度計では、発生した温度差を解消するように、第2の温度計よりも下流側にある厚鋼板の上下面に供給する冷却水の水量比を修正するので、有効な制御効果を得ることができる。
圧延が完了した厚鋼板は、付着したスケール及び表面粗度等が前記の様に異なっている。これによって、厚鋼板の熱伝達係数が大きく変化するため、表面性状にばらつきがあると均一な冷却は困難である。通常、厚鋼板の冷却は800℃前後から開始するが、遷移沸騰域(約600℃〜300℃)より高温側の膜沸騰域(約800℃〜600℃)では、冷却能が小さいため温度差はまだ増加しておらず、厚鋼板の上下面に供給する冷却水の水量比を決定し難い。また、低温側の核沸騰域(約300℃〜100℃)では、遷移沸騰域で発生した温度差が収束し始めていると共に、冷却能が縮小しているため、温度差を測定しても有効な制御効果を得ることができず、厚鋼板の上下面の表面温度差を解消できない領域が多くなり、厚鋼板の内部歪みが残り変形する。
ここで、遷移沸騰域及び核沸騰域では、膜沸騰域と比較して、冷却水を実質的に同じ水量で供給した際には、抜熱量が2〜5倍程度大きい。従って、冷却前(膜沸騰域)において、厚鋼板の上下面の表面温度差がある場合、厚鋼板の温度低下と共に熱伝達係数が増大するため、厚鋼板の上下面の表面温度差が急激に拡大し、拡大厚鋼板の内外部の温度偏差を増加させる。従って、膜沸騰域において、厚鋼板の上下面の表面温度差を少なくすると、遷移沸騰域において、厚鋼板の上下面の表面温度差が拡大し難くなる。従って、厚鋼板の表面のスケール、粗度に応じて、安定した冷却を行うためには、遷移沸騰域での冷却時間を極力短縮することが好ましい。
また、遷移沸騰域及び核沸騰域では、供給する冷却水の水量変化に対して、厚鋼板の表面温度が急激に低下するが、膜沸騰領域では、遷移沸騰域及び核沸騰域と比較して、ゆっくり低下する。従って、膜沸騰領域では、供給する冷却水の水量の誤差があっても、厚鋼板の上下面の表面温度にあまり影響しないので、冷却水の水量調節が容易である。また、温度差が急激に拡大する遷移沸騰域よりも前の膜沸騰域で温度差をなくすことができれば、遷移沸騰域において、厚鋼板の上下面の表面温度差が広がり難くなる。
第4の発明に係る厚鋼板の冷却方法は、第3の発明に係る厚鋼板の冷却方法において、前記第1及び第2の温度計の間の前記厚鋼板の上面及び下面に供給する冷却水の水量比は、該第2の温度計の測定によるフィードバック制御によって修正することができる。これによって、より正確に厚鋼板の上下面の表面温度を制御できる。
第5の発明に係る厚鋼板の冷却方法は、第3の発明に係る厚鋼板の冷却方法において、前記第1及び第2の温度計の間の前記厚鋼板の上面及び下面に供給する冷却水の水量比は、該第1の温度計の測定によるフィードフォワード制御によって修正することができる。これによって、より正確に厚鋼板の上下面の表面温度を制御できる。
第1及び第2の発明に係る厚鋼板の冷却方法においては、遷移沸騰域にある厚鋼板の上面及び下面の表面温度を遷移沸騰域にある領域に設置された温度計で同時に測定し、測定された厚鋼板の上面と下面の表面温度差に基づいて、温度計の上流側の少なくとも膜沸騰域にある厚鋼板の上面と下面に供給する冷却水の水量比を修正し、厚鋼板の上面と下面の表面温度差を低減するので、厚鋼板の上面と下面の表面温度差を低減でき、厚鋼板の形状不良を防止できる。
特に、第2の発明に係る厚鋼板の冷却方法においては、温度計の上流側では、フィードバック制御が行われ、温度計よりも上流側の少なくとも膜沸騰域にある厚鋼板の上面及び下面に供給する冷却水の水量比を修正すると共に、温度計の下流側では、フィードフォワード制御が行われ、温度計よりも下流側の遷移沸騰域及び核沸騰域にある厚鋼板の上面及び下面に供給する冷却水の水量比を修正するので、発生した厚鋼板の上下面の表面温度差に応じて、下流側領域及び上流側領域の上下水量比を修正し、以降の厚鋼板の部位において上下面を均一に冷却することが可能となる。
第3〜第5の発明に係る厚鋼板の冷却方法においては、遷移沸騰域の上流側に設置された第1の温度計で測定された厚鋼板の上面と下面の表面温度差に基づいて、第1の温度計の上流側の少なくとも膜沸騰域にある厚鋼板の上面と下面に供給する冷却水の水量比を修正し、更に遷移沸騰域の下流側に設置された第2の温度計で測定された厚鋼板の上面と下面の表面温度差に基づいて、第2の温度計の下流側の厚鋼板の上面と下面に供給する冷却水の水量比を修正し、厚鋼板の上面と下面の表面温度差を低減するので、厚鋼板の上面と下面の表面温度差を低減でき、厚鋼板の形状不良を防止できる。
特に、第4の発明に係る厚鋼板の冷却方法においては、第1及び第2の温度計の間の厚鋼板の上面及び下面に供給する冷却水の水量比は、第2の温度計の測定によるフィードバック制御によって修正されるので、より正確に厚鋼板の上下面の表面温度を制御できる。
第5の発明に係る厚鋼板の冷却方法においては、第1及び第2の温度計の間の厚鋼板の上面及び下面に供給する冷却水の水量比は、第1の温度計の測定によるフィードフォワード制御によって修正されるので、より正確に厚鋼板の上下面の表面温度を制御できる。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係る厚鋼板の冷却方法に使用する厚鋼板の冷却装置の説明図、図2は同冷却装置の冷却装置本体内の説明図、図3は本発明の第2の実施の形態に係る厚鋼板の冷却方法に使用する厚鋼板の冷却装置の説明図、図4は同冷却装置の冷却装置本体内の領域の説明図、図5は試験例1における冷却装置での厚鋼板の上下面の表面温度を示すグラフ、図6は試験例2における冷却装置での厚鋼板の上下面の表面温度を示すグラフ、図7は試験例3における冷却装置での厚鋼板の上下面の表面温度を示すグラフ、図8は比較例1における冷却装置での厚鋼板の上下面の表面温度を示すグラフ、図9は厚鋼板の温度測定回数による厚鋼板の内外部の温度偏差の増加量を示すグラフ、図10は厚鋼板の内外部の温度偏差と厚鋼板の形状不良の指標である厚鋼板の表面の波高さの関係を示すグラフである。
図1、図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る厚鋼板の冷却方法に使用する厚鋼板の冷却装置(以下、単に冷却装置という)10について説明する。
図1に示すように、冷却装置10は、圧延機11で圧延された高温の厚鋼板12が搬送される冷却装置本体13を有している。冷却装置本体13には、冷却装置本体13内に搬送された厚鋼板12の上面及び下面(以下、上下面という)の表面温度を同時に測定するために、厚鋼板12の上部及び下部位置の厚鋼板12を挟んで面対称となる位置に、例えば、1対、2つの温度計14、15が取付けられている。
また、冷却装置本体13内には、厚鋼板12の上下面の表面にそれぞれ冷却水を供給する複数の噴出部を備えた複数、例えば、2対、4つのノズル16〜19が取付けられている。ここで、ノズル16、17はそれぞれ、温度計14、15の設置位置より上流側で厚鋼板12の表面温度が膜沸騰域及び遷移沸騰域の一部にある上面位置及び下面位置に、また、ノズル18、19はそれぞれ、温度計14、15の設置位置よりの下流側で厚鋼板12の表面温度が遷移沸騰域の一部及び核沸騰域にある上面位置及び下面位置に、それぞれ厚鋼板12を挟んで面対称となる様に設置されている。
更に、冷却装置本体13内には、温度計14、15の上流側及び下流側に設置され、温度計14、15にノズル16〜19から供給される冷却水がかからないようにすると共に、厚鋼板12の上下面の表面の水を除去する水切りロール20〜23が設置されている。ここで、水切りロール20、21は、厚鋼板12の上面に接触し、温度計14の上流位置及び下流位置にそれぞれ配置されている。また、水切りロール22、23は、厚鋼板12の下面に接触し、温度計15の上流位置及び下流位置にそれぞれ配置されている。なお、温度計14、15は、冷却水によって冷却された厚鋼板12の表面温度が遷移沸騰域、つまり約600℃〜300℃となる位置に設置し、厚鋼板12の上下面の表面の温度を測定する。
また、冷却装置10には、ノズル16〜19にそれぞれ取付けられたバルブ24〜27を調整して、厚鋼板12に供給する冷却水の流量を制御する流量制御装置28を有している。また、冷却装置10は、温度計14、15による厚鋼板12の上下面の表面温度の温度データを取り込み、ノズル16〜19から供給する冷却水の流量を補正する流量補正演算器29を有している。更に、冷却装置10は、厚鋼板12において温度測定がなされていない初期の冷却に際して、厚鋼板12の性状(例えば、厚鋼板のサイズ、材質、及び、冷却装置10に搬送される以前に測定された温度等)によって予め決められている冷却水の水量を設定する初期設定演算器30が設けられている。初期設定演算器30では、予め決められた冷却水の水量を流量制御装置28に指示して、ノズル16〜19から厚鋼板12の上下面に供給する。
ここで、図2に示すように、冷却装置本体13は、水切りロール20〜23によって3つの領域に区切られている。冷却装置本体13は、水切りロール20〜23で区切られ、温度計14、15を有する領域である測定ゾーン31を有している。また、冷却装置本体13は、水切りロール20、22の上流側でノズル16、17を有する領域である第1の冷却ゾーン32と、水切りロール21、23の下流側でノズル18、19を有する領域である第2の冷却ゾーン33とを有している。
次に、図1、図2を参照して、厚鋼板の冷却装置10を使用した厚鋼板の冷却方法について説明する。
圧延機11の熱間で圧延された高温の厚鋼板12を冷却装置本体13内に搬送する。ここで、厚鋼板12の先端が冷却装置本体13の第1の冷却ゾーン32に搬入される前に、初期設定演算器30で設定されている厚鋼板12に供給する冷却水の上下水量比を含む流量データが流量制御装置28に送信される。流量制御装置28は、この流量データに基づき、バルブ24、25を介して、ノズル16、17から冷却水を供給している。更に、厚鋼板12が進み、第1の冷却ゾーン32に搬入され、厚鋼板12の上下面には、ノズル16、17から冷却水がそれぞれ供給され、厚鋼板12が冷却される。本実施の形態では、厚鋼板12の上下面の上下水量比は、厚鋼板12の下面に供給する水量を一定とし、厚鋼板12の上面に供給する水量を調整している。
更に、厚鋼板12は、冷却装置本体13内を進み、水切りロール20、22を通過して、測定ゾーン31に搬送される。水切りロール20、22によって、厚鋼板12に残っている冷却水が除去され、冷却水の影響を受けることなく厚鋼板12の上下面の表面温度を測定できると共に、温度計14、15には冷却水がかかることがない。温度計14、15によって、厚鋼板12の上下面の表面温度がそれぞれ測定される。この測定された温度データに基づいて、流量補正演算器29は、厚鋼板12の上下面の表面温度差がなくなるように、厚鋼板12に供給する上下水量比を補正する。
この補正された流量データは、流量制御装置28に送信され、流量制御装置28では、この補正された上下水量比となるように、バルブ24、25を調整し、ノズル16、17から冷却水を厚鋼板12に供給する。つまり、測定ゾーン31に設置された温度計14、15で測定された厚鋼板12の上下面の表面温度の温度データに基づいて、第1の冷却ゾーン32に設置されたノズル16、17から厚鋼板12の上下面にそれぞれ供給される冷却水の供給量は、フィードバック制御されている。
更に、厚鋼板12は、冷却装置本体13内を進み、水切りロール21、23を通過して、第2の冷却ゾーン33に搬送される。ここでは、温度計14、15によって測定した厚鋼板12の上下面の表面温度を流量補正演算器29によって解析し、上下水量比が補正され、その補正した流量データに基づき、流量制御装置28がバルブ26、27を調整し、ノズル18、19から適切な水量比で冷却水が厚鋼板12に供給される。つまり、測定ゾーン31において、測定した厚鋼板12の上下面の表面温度に基づいて、第2の冷却ゾーン33では、フィードフォワード制御され、厚鋼板12の上下面に供給する冷却水の上下水量比が補正されている。
なお、水切りロール21、23によって、ノズル18、19から供給される冷却水は、温度計14、15にかかることがない。
以上のように、冷却装置10では、測定ゾーン31で測定した温度データに基づき、第1の冷却ゾーン32のフィードバック制御及び第2の冷却ゾーン33のフィードフォワード制御を行っている。
図3、図4を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る厚鋼板の冷却方法に使用する厚鋼板の冷却装置(以下、単に冷却装置という)40について説明する。なお、冷却装置10と同一の構成要素については同一の番号を付してその詳しい説明を省略する。
図3に示すように、冷却装置40は、圧延機11で圧延された高温の厚鋼板12が搬送される冷却装置本体41を有している。冷却装置本体41には、冷却装置本体41内に搬送された厚鋼板12の上下面の表面温度を同時に測定するために、厚鋼板12の上部及び下部位置の厚鋼板12を挟んで面対称となる位置に、例えば、2対、4つの温度計42〜45が長手方向に所定の間隔を設けて取付けられている。ここで、温度計(第1の温度計)42、43は、冷却装置本体41の上流側の厚鋼板12の上部位置及び下部位置にそれぞれ設置され、温度計(第2の温度計)44、45は、冷却装置本体41の下流側の厚鋼板12の上部位置及び下部位置にそれぞれ設置されている。
また、冷却装置本体41内には、厚鋼板12の上下面の表面にそれぞれ冷却水を供給する複数の噴出部を備えた複数、例えば、3対、6つのノズル46〜51が取付けられている。ここで、ノズル46、47は、冷却装置本体41の上流側の厚鋼板12の上部位置及び下部位置にそれぞれ設置され、ノズル48、49は、冷却装置本体41の中央部の厚鋼板12の上部位置及び下部位置にそれぞれ設置され、ノズル50、51は、冷却装置本体41の下流側の厚鋼板12の上部位置及び下部位置にそれぞれ設置されている。
更に、冷却装置本体41内には、温度計42〜45のそれぞれの上流側及び下流側に設置され、温度計42〜45にノズル46〜51から供給される冷却水がかからないようにすると共に、厚鋼板12の上下面の表面の水を除去する水切りロール52〜59が設置されている。ここで、水切りロール52〜55は、厚鋼板12の上面に接触し、それぞれ温度計42の上流位置及び下流位置、及び温度計44の上流位置及び下流位置に配置されている。また、水切りロール56〜59は、厚鋼板12の下面に接触し、それぞれ温度計43の上流位置及び下流位置、及び温度計45の上流位置及び下流位置に配置されている。なお、温度計42〜45は、冷却水によって冷却された厚鋼板12の表面温度が遷移沸騰域、つまり約600℃〜300℃となる位置に設置し、厚鋼板12の上下面の表面の温度を測定する。
また、冷却装置40には、ノズル46〜51にそれぞれ取付けられたバルブ60〜65を調整して、厚鋼板12に供給する冷却水の流量を制御する流量制御装置28を有している。また、冷却装置40は、温度計42〜45による厚鋼板12の上下面の表面温度の温度データを取り込み、ノズル46〜51から供給する冷却水の流量を補正する流量補正演算器29を有している。更に、冷却装置40は、厚鋼板12において温度測定がなされていない初期の冷却に際して、厚鋼板12の性状(例えば、厚鋼板のサイズ、材質、及び、冷却装置40に搬送される以前に測定された温度等)によって予め決められている冷却水の水量を設定する初期設定演算器30が設けられている。初期設定演算器30では、予め決められた冷却水の水量を流量制御装置28に指示して、ノズル46〜51から厚鋼板12の上下面に供給する。
ここで、図4に示すように、冷却装置本体41は、水切りロール52〜59によって5つの領域に区切られている。冷却装置本体41は、水切りロール52、53及び水切りロール56、57で区切られ、温度計42、43を有する領域である第1の測定ゾーン66と、水切りロール54、55及び水切りロール58、59で区切られ、温度計44、45を有する領域である第2の測定ゾーン67とを有している。また、冷却装置本体41は、水切りロール52、56の上流側でノズル46、47を有する領域である第1の冷却ゾーン68と、水切りロール53、54及び水切りロール57、58で区切られ、ノズル48、49を有する領域である第2の冷却ゾーン69と、水切りロール55、59の下流側でノズル50、51を有する領域である第3の冷却ゾーン70とを有している。
次に、図3、図4を参照して、厚鋼板の冷却装置40を使用した厚鋼板の冷却方法について説明する。
圧延機11の熱間で圧延された高温の厚鋼板12を冷却装置本体41内に搬送する。ここで、厚鋼板12の先端が冷却装置本体41の第1の冷却ゾーン68に搬入される前に、初期設定演算器30で設定されている厚鋼板12に供給する冷却水の上下水量比を含む流量データが流量制御装置28に送信される。流量制御装置28は、この流量データに基づき、バルブ60、61を調整し、ノズル46、47から冷却水を供給している。更に、厚鋼板12が進み、第1の冷却ゾーン68に搬入され、少なくとも膜沸騰域にある厚鋼板12の上下面には、ノズル46、47から冷却水がそれぞれ供給され、厚鋼板12が冷却される。本実施の形態では、厚鋼板12の上下面の上下水量比は、厚鋼板12の下面に供給する水量を一定とし、厚鋼板12の上面に供給する水量を調整している。
更に、厚鋼板12は、冷却装置本体41内を進み、水切りロール52、56を通過して、第1の測定ゾーン66に搬送される。水切りロール52、56によって、厚鋼板12に残っている冷却水が除去され、冷却水の影響を受けることなく厚鋼板12の上下面の表面温度を測定できると共に、温度計42、43には冷却水がかかることがない。温度計42、43によって、厚鋼板12の上下面の表面温度がそれぞれ測定される。この測定された温度データに基づいて、流量補正演算器29は、厚鋼板12の上下面の表面温度差がなくなるように、厚鋼板12に供給する上下水量比を補正する。
この補正された流量データは、流量制御装置28に送信され、流量制御装置28では、この補正された上下水量比となるように、バルブ60、61を調整し、ノズル46、47から冷却水を厚鋼板12に供給する。つまり、第1の測定ゾーン66に設置された温度計42、43で測定された厚鋼板12の上下面の表面温度の温度データに基づいて、第1の冷却ゾーン68に設置されたノズル46、47から厚鋼板12の上下面にそれぞれ供給される冷却水の供給量は、フィードバック制御されている。
更に、厚鋼板12は、冷却装置本体41内を進み、水切りロール53、57を通過して、第2の冷却ゾーン69に搬送される。第2の冷却ゾーン69では、初期設定演算器30で設定された流量データが予め送信された流量制御装置28によって、バルブ62、63が調整され、ノズル48、49から冷却水が予め供給され、厚鋼板12の上下面には、ノズル48、49から冷却水がそれぞれ供給され、厚鋼板12が冷却される。
更に、厚鋼板12は、水切りロール54、58を通過して、第2の測定ゾーン67に搬送される。なお、水切りロール53、54、57、58によって、厚鋼板12の第2の冷却ゾーン69に供給される冷却水は、第2の冷却ゾーン69外の第1及び第2の測定ゾーン66、67には漏れ出すことがない。
第2の測定ゾーン67において、厚鋼板12は、温度計44、45によって、上下面の表面温度がそれぞれ測定される。流量補正演算器29は、その測定結果に基づいて適正な上下水量比を解析し、上下水量比を補正した流量データを流量制御装置28に送信する。流量制御装置28は、バルブ62、63を調整し、ノズル48、49から補正された上下水量比の冷却水を、厚鋼板12に供給する。つまり、第2の測定ゾーン67において測定した厚鋼板12の上下面の表面温度に基づいて、第2の冷却ゾーン69での厚鋼板12の上下面に供給する冷却水の上下水量比を補正するフィードバック制御がなされている。
更に、厚鋼板12は、冷却装置本体41内を進み、水切りロール55、59を通過して、第3の冷却ゾーン70に搬送される。ここでは、温度計44、45によって測定した厚鋼板12の上下面の表面温度を流量補正演算器29によって解析し、上下水量比が補正され、その補正した流量データに基づき、流量制御装置28がバルブ64、65を調整し、ノズル50、51から適切な水量比で冷却水が厚鋼板12に供給される。つまり、第2の測定ゾーン67において、測定した厚鋼板12の上下面の表面温度に基づいて、第3の冷却ゾーン70では、フィードフォワード制御され、厚鋼板12の上下面に供給する冷却水の上下水量比が補正されている。
なお、水切りロール55、59によって、ノズル50、51から供給される冷却水は、温度計44、45にかかることがない。
以上のように、冷却装置40では、第1の測定ゾーン66で測定した温度データに基づき、第1の冷却ゾーン68のフィードバック制御を行い、更に、第2の測定ゾーン67で測定した温度データに基づき、第2の冷却ゾーン69でのフィードバック制御及び第3の冷却ゾーン70のフィードフォワード制御を行っている。なお、前記第1及び第2の実施の形態においては、温度計14、15及び温度計42、43の上流側の冷却水の調整を、鋼板12の温度の膜沸騰域と遷移沸騰域の両方で行ったが、膜沸騰域のみで行ってもよい。しかし、この際は若干、鋼板の上面と下面の温度差が残るが、実操業的に問題にならない程度である。
試験例1として、本発明の第2の実施の形態に係る厚鋼板の冷却方法に使用する厚鋼板の冷却装置40による長さ18000mm、幅3000mm、厚さ25mmの厚鋼板の冷却を行った。また、試験例2は、冷却装置10の温度計と同様に、温度計を遷移沸騰域内に1対設置した冷却装置を用いて厚鋼板の冷却を行い、試験例3は、温度計を遷移沸騰域内に3対設置した冷却装置を用いて厚鋼板の冷却を行なったものである。更に、比較例1として、特許文献2に記載された冷却装置による厚鋼板の冷却を行った。なお、比較例1の冷却装置は、13対の温度計によって、厚鋼板に供給する冷却水の水量をフィードフォワード制御している。
図5〜図8は、それぞれ試験例1〜試験例3及び比較例1における厚鋼板の上下面の表面温度の変化を示すグラフである。
図5〜図7に示すように、試験例1〜試験例3の冷却装置では、温度測定は厚鋼板の上下面の表面温度が、600℃〜300℃の遷移沸騰域に行われている。なお、温度測定をしている箇所は、復熱により、温度が上昇している区間である。つまり、図5においては、冷却時間が約5秒、約7秒で温度測定が開始されている。図8に示すように、比較例1の冷却装置では、遷移沸騰域より高温の膜沸騰域、及び遷移沸騰域より低温の核沸騰域においても、温度測定されている。
図9を参照して、厚鋼板の温度測定回数による厚鋼板の内外部の温度偏差の増加量について説明する。
試験例1〜試験例3及び比較例1の冷却装置では、厚鋼板の温度測定の回数はそれぞれ、2回、1回、3回、13回であり、それぞれの厚鋼板の内外部の温度偏差の増加量は、13℃、6℃、20℃、25℃であった。
また、図10を参照して、厚鋼板の内外部の温度偏差と厚鋼板の形状不良の指標である厚鋼板の表面の波高さの関係について説明する。
厚鋼板を遷移沸騰域において、2回測定する試験例1及び1回測定する試験例2の冷却装置により冷却された厚鋼板は、温度偏差増加量がそれぞれ13℃及び6℃であり、この際の厚鋼板の波高さは、共に基準内であり、平坦度の基準値以下であった。しかしながら、3回以上の温度測定を行う試験例3及び比較例1の装置により冷却された厚鋼板は、温度偏差増加量がそれぞれ20℃及び25℃であり、この際の波高さは、基準を超え、矯正工程を必要とした。
この結果から、冷却途中の温度測定は、2回以下が適正であることが明らかとなった。遷移沸騰域において、上下面の表面温度差を測定する回数が多くなるにつれて、冷却と復熱が繰り返されると共に、厚鋼板の表面が復熱により温度が上昇し、これを十分に冷却するためには、冷却時間が長くなるため、厚鋼板の内外部の温度偏差が増加すると考えられる。
次に、試験例1として、前記したように本発明の第2の実施の形態に係る厚鋼板の冷却方法に使用される厚鋼板の冷却装置40によって厚鋼板の冷却を行い、また、試験例4として、遷移沸騰域に2対の温度計を設置し、更に下流の核沸騰域に1対の温度計を備えた冷却装置による厚鋼板の冷却を行った。なお、試験例4の冷却装置の3対の温度計は、それぞれフィードバック制御によって厚鋼板を冷却している。しかも、最上流にある温度計により、少なくとも膜沸騰域にある厚鋼板の冷却が制御され、中間の温度計により遷移沸騰域にある厚鋼板の冷却が制御され、最下流にある温度計により、少なくとも遷移沸騰域にある厚鋼板の冷却が制御されている。更に、比較例2として、遷移沸騰域よりも高温である膜沸騰域に一対の温度計を設置し、遷移沸騰域よりも低温である核沸騰域に一対の温度計を設置した冷却装置を用いて、厚鋼板の冷却を行った。
試験例1及び試験例4の冷却装置により冷却された厚鋼板は、上下面の表面温度差なく冷却が完了し、厚鋼板の内外部の温度偏差の増加量は10℃であったため、形状良好な厚鋼板が得られた。しかしながら、比較例2の冷却装置においては、温度測定タイミングが遷移沸騰域、つまり600℃〜300℃の温度域から外れていたので、厚鋼板の上下面の表面温度差が解消されず、厚鋼板に幅方向の反りが発生し、矯正工程が必要となった。
このことから、厚鋼板の上下面の表面温度差を測定するタイミングは、温度差が発生しやすい遷移沸騰域(600℃〜300℃)である必要があり、遷移沸騰域より高温側の膜沸騰域では、冷却能が小さいため温度差は、まだ増加しておらず、また、低温側の核沸騰域では、遷移沸騰域で発生した温度差が収束し始めていると共に、冷却能が縮小しているため、温度差を測定しても有効な制御効果を得ることができないことが分かった。
本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の厚鋼板の冷却方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、前記実施の形態の厚鋼板の冷却方法において、遷移沸騰域に2対の温度計を設置して、厚鋼板の温度を2回測定した場合、及び、1対の温度計を設置して1回測定した場合について記載したが、この場合には、少なくとも膜沸騰域での上下水量比を制御できればよく、温度計が設置される測定ゾーンの上流側の冷却ゾーンをフィードバック制御してもよく、また、温度計が設置される測定ゾーンの上流側及び下流側の冷却ゾーンをそれぞれフィードバック制御及びフィードフォワード制御してもよい。
また、2対以上、例えば2対の温度計(第1及び第2の温度計)による厚鋼板の上下面の表面温度差を測定する場合には、第1の温度計(上流側)をフィードバック制御として、第2の温度計(下流側)をフィードバック制御及びフィードフォワード制御としたが、第1の温度計(上流側)をフィードバック制御及びフィードフォワード制御として、第2の温度計(下流側)をフィードフォワード制御としてもよい。即ち、第1及び第2の温度計の間の厚鋼板の上面及び下面に供給する冷却水の水量比を、第2の温度計の測定によるフィードバック制御によって修正しても、また第1の温度計の測定によるフィードフォワード制御によって行なってもよい。
本発明の第1の実施の形態に係る厚鋼板の冷却方法に使用する厚鋼板の冷却装置の説明図である。 同冷却装置の冷却装置本体内の説明図である。 本発明の第2の実施の形態に係る厚鋼板の冷却方法に使用する厚鋼板の冷却装置の説明図である。 同冷却装置の冷却装置本体内の領域の説明図である。 試験例1における冷却装置での厚鋼板の上下面の表面温度を示すグラフである。 試験例2における冷却装置での厚鋼板の上下面の表面温度を示すグラフである。 試験例3における冷却装置での厚鋼板の上下面の表面温度を示すグラフである。 比較例1における冷却装置での厚鋼板の上下面の表面温度を示すグラフである。 厚鋼板の温度測定回数による厚鋼板の内外部の温度偏差の増加量を示すグラフである。 厚鋼板の内外部の温度偏差と厚鋼板の形状不良の指標である厚鋼板の表面の波高さの関係を示すグラフである。
符号の説明
10:厚鋼板の冷却装置、11:圧延機、12:厚鋼板、13:冷却装置本体、14、15:温度計、16〜19:ノズル、20〜23:水切りロール、24〜27:バルブ、28:流量制御装置、29:流量補正演算器、30:初期設定演算器、31:測定ゾーン、32:第1の冷却ゾーン、33:第2の冷却ゾーン、40:厚鋼板の冷却装置、41:冷却装置本体、42〜45:温度計、46〜51:ノズル、52〜59:水切りロール、60〜65:バルブ、66:第1の測定ゾーン、67:第2の測定ゾーン、68:第1の冷却ゾーン、69:第2の冷却ゾーン、70:第3の冷却ゾーン

Claims (5)

  1. 熱間で圧延された高温の厚鋼板の表面温度が遷移沸騰域にある領域に設置され、更に該厚鋼板を挟んで上下対称位置に配置され、該厚鋼板の上面及び下面の表面温度を同時に測定する温度計と、前記厚鋼板の上面及び下面の表面に冷却水を供給するノズルとを有した冷却装置内に、前記厚鋼板を搬送し、該厚鋼板の上面及び下面に冷却水を供給して、前記厚鋼板を膜沸騰域から核沸騰域まで冷却する厚鋼板の冷却方法において、
    前記冷却装置内で冷却して遷移沸騰域にある前記厚鋼板の上面と下面の表面温度を前記温度計で同時に測定し、測定された前記厚鋼板の上面と下面の表面温度差に基づいて、前記温度計の上流側の少なくとも膜沸騰域にある前記厚鋼板の上面及び下面に供給する冷却水の水量比を修正し、前記厚鋼板の上面と下面の表面温度差を低減することを特徴とする厚鋼板の冷却方法。
  2. 請求項1記載の厚鋼板の冷却方法において、前記温度計の上流側では、フィードバック制御が行われ、該温度計よりも上流側の少なくとも膜沸騰域にある前記厚鋼板の上面及び下面に供給する冷却水の水量比を修正すると共に、前記温度計の下流側では、フィードフォワード制御が行われ、該温度計よりも下流側の遷移沸騰域及び核沸騰域にある前記厚鋼板の上面及び下面に供給する冷却水の水量比を修正することを特徴とする厚鋼板の冷却方法。
  3. 熱間で圧延された高温の厚鋼板の表面温度が遷移沸騰域にある領域の上流側及び下流側にそれぞれ設置され、更に該厚鋼板を挟んで上下対称位置に配置され、該厚鋼板の上面と下面の表面温度を同時に測定する第1及び第2の温度計と、前記厚鋼板の上面と下面の表面に冷却水を供給するノズルとを有した冷却装置内に、前記厚鋼板を搬送し、該厚鋼板の上面及び下面に冷却水を供給して、前記厚鋼板を膜沸騰域から核沸騰域まで冷却する厚鋼板の冷却方法において、
    前記第1の温度計で測定された前記厚鋼板の上面と下面の表面温度差に基づいて、前記第1の温度計の上流側の少なくとも膜沸騰域にある前記厚鋼板の上面及び下面に供給する冷却水の水量比を修正し、更に前記第2の温度計で測定された前記厚鋼板の上面と下面の表面温度差に基づいて、前記第2の温度計の下流側の前記厚鋼板の上面及び下面に供給する冷却水の水量比を修正し、前記厚鋼板の上面と下面の表面温度差を低減することを特徴とする厚鋼板の冷却方法。
  4. 請求項3記載の厚鋼板の冷却方法において、前記第1及び第2の温度計の間の前記厚鋼板の上面及び下面に供給する冷却水の水量比は、該第2の温度計の測定によるフィードバック制御によって修正されることを特徴とする厚鋼板の冷却方法。
  5. 請求項3記載の厚鋼板の冷却方法において、前記第1及び第2の温度計の間の前記厚鋼板の上面及び下面に供給する冷却水の水量比は、該第1の温度計の測定によるフィードフォワード制御によって修正されることを特徴とする厚鋼板の冷却方法。
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