JP3891898B2 - 化粧シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭酸カルシウムを結合成分として含有する化粧層と基材シートとよりなる新規な化粧シートに関する。詳しくは、比較的厚みの厚い基材シートを使用することにより、壁面、柱面、天井面等の化粧面に貼着した際の該化粧面の凹凸の隠蔽性を付与する構成とした化粧シートにおいて、該化粧シートが長期間に亘り化粧面より剥離せず、また、複数枚を継ぎ合わせて貼付した後の継目における隙間の発生を極めて効果的に抑えることが可能な化粧シートである。
【0002】
【従来の技術】
珪酸カルシウムボード、石膏ボード等のボードよりなる壁面、柱面、天井面等の仕上げ材料として、施工が容易で経済性に優れる塩化ビニル製の壁紙が広く用いられてきたが、該壁紙の貼着により形成された仕上げ面は実質的に通気性に乏しく、そのため、基材のボードの有する通気性が壁紙により阻害され、その表面に結露を生じて黴の発生や該壁紙の剥離といった問題を有する。また、近年では該壁紙およびその貼着に使用する接着剤から出る有害な揮発成分が様々な健康障害をもたらすことも問題視されている。
【0003】
該壁紙に代わる仕上げ材料として通気性を有し、且つ有害物質を発散しない漆喰、聚楽等の湿式仕上げ材による左官仕上げが見直されつつあるものの、該湿式仕上げ材が固化するまでに養生を必要とするため工期が長く、また左官による仕上がりの個人差が出易い等の問題があった。更にまた、近年は優秀な左官の不足が深刻化しており、上記需要に対応できない状況にある。
【0004】
そこで本発明者らは基材シートの表面に漆喰の主成分である炭酸カルシウムを結合成分として含有する化粧層を形成することにより、漆喰、聚楽等の湿式仕上げ材の左官仕上げと酷似した意匠を持つ化粧シートを提案した(特開平10−801296号)。
【0005】
そして、上記化粧シートを壁面に貼付することにより、前記優れた機能を有し、且つ、良好な意匠性を有する壁を形成することが可能である。
【0006】
上記基材シートとしては、化粧シートの製造時、製造後の取扱い時の破損を防止するため、石膏ボード用原紙を代表とする高い強度を有する紙が使用されていた。
【0007】
上記化粧シートを使用して大面積の壁面を施工する場合、複数枚の化粧シートを継ぎ合わせて貼付する方法が採られる。具体的には、(a)隣接する化粧シートを端部で重ね合わせて貼り合わせ、(b)上記化粧シートの重ね合わされた部分を、カッターで切断する方法が採用され、かかる方法により継ぎ目部に隙間のない化粧シートの貼付を行うことができる。
【0008】
ところが、基材層として石膏ボード原紙を使用した化粧シートは、化粧面の凹凸に対して隠蔽性を持たせるために、基材シートの厚みを厚くした場合、貼り付け後、糊の乾燥と共に経時的に継ぎ目部が開いて目隙が発生したり、長期間の使用により、端部がカールして剥がれが生じ易くなるという現象が起こることがある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、化粧面の凹凸に対して隠蔽性を持たせるために、基材シートの厚みを厚くした化粧シートにおいて、該化粧面に貼付後の寸法変化が極めて小さいことにより長期間に亘って剥離を防止することができると共に、複数枚を継ぎ合わせて貼付した後の継目部における隙間の発生を極めて効果的に防止することが可能な化粧シートを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、化粧シートの隠蔽性を持たせるために基材シートの厚みを増すことにより、その強度も増加すること及び上記強度の高い紙よりなる基材シートを使用した場合、湿潤時、乾燥時の寸法変化が、上記強度の強い基材シートによって支配されるため、寸法安定性が元来良好な化粧層が、該基材シートの収縮に伴って、収縮したり、収縮に追従できない部分がカールして剥がれを引き起こすという知見を得た。そして、かかる知見に基づき、更に研究を重ねた結果、厚くとも強度が比較的弱い基材シートを使用することにより、化粧層の寸法安定性を支配的とすることができ、貼付後の湿潤度の変化に対して、極めて安定性の高い化粧シートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、炭酸カルシウムを結合成分として含有する化粧層及び基材シートよりなる積層体であって、該基材シートの厚みが120〜300μmであり、且つ、引張強度が1.5〜7KN/mであることを特徴とする化粧シートである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において、炭酸カルシウムを結合成分として含有する化粧層は、結合成分の少なくとも一部として、水酸化カルシウムと水とを含む混練物を二酸化炭素と反応せしめて炭酸化することにより硬化させた炭酸カルシウム成分を含有する。
【0013】
尚、水酸化カルシウムの炭酸化反応は反応率約50%までは急速に、その後は緩やかに進行する。また、該結合成分としての機能は、炭酸化反応の反応率が約50%を過ぎた時点で十分な効果を発揮する。従って、本発明の化粧層において炭酸カルシウムは、該反応率が50%以上に達した状態のものを含むものであり、特に、反応率が約60%を過ぎたものが好適である。
【0014】
上記水酸化カルシウムとしては、工業用消石灰、漆喰、ドロマイトプラスター等、水酸化カルシウムを主成分とするものが特に制限無く使用される。
【0015】
上記炭酸カルシウムを結合成分として含有する化粧層は、表面硬度が、45゜鉛筆硬度でB以上のものが好適である。かかる高度を有する化粧層は、後で詳述するように、化粧層の形性時、その表面に保護シートを積層し、硬化させる方法によって形成することが可能である。かかる硬度を有する化粧層は、耐擦傷性を著しく向上できるため、本発明において好適である。
【0016】
また、上記化粧層には、建築用材料の用途に求められる物性に応じて、各種の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、水性エマルジョンの固形分、繊維、無機細骨材、活性微粒子、顔料等を例示することができる。また、後記の製造上好ましく添加される配合剤を含んでいても良い。
【0017】
上記水性エマルジョンの固形分は、化粧層の靱性を向上せしめるほか、化粧層と基材シートとの接着強度や、化粧層と任意に設けることができる通気性保護シートとの剥離強度とを向上せしめる作用を有する。従って、該水性エマルジョンの固形分を適度に配合することにより、化粧層と通気性保護シートとの剥離接着強度を前記範囲でより高く調整することが可能であり好ましい。
【0018】
該水性エマルジョンとしては、水媒体中にモノマー、オリゴマーこれらの重合体等が分散したエマルジョンが特に制限なく使用できる。かかる水性エマルジョンを具体的に例示すると、アクリル樹脂系、酢酸ビニル系、スチレン/ブタジエンゴム系等の合成高分子系エマルジョンを挙げることができる。上記の水性エマルジョンは、炭酸カルシウムの硬化体が形成される際に、媒体が蒸発して固形分の少なくとも一部が該炭酸カルシウムの硬化体中に存在する。
【0019】
また、上記繊維としては、化粧層に配合が可能な公知の繊維を特に制限なく用いることができる。具体的に例示すれば、ガラス繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、金属繊維等を使用できる。また、繊維の形状としては短繊維、長繊維、織布、不織布等の形状のものが使用できるが、これらのうち短繊維は化粧層の靱性および切断加工性の向上に特に有効であり、好適に使用される。上記短繊維の長さおよび直径は特に制限されないが、長さは1mm〜10mm、特に2mm〜6mmであることが、また、直径は5〜50μm、特に10〜30μmであることが得られる化粧層の靱性をより向上させ、また切断加工性においても優れたものとするために好適である。
【0020】
更に、上記無機細骨材としては、例えば、平均粒子径が0.001〜2mmである炭酸カルシウム(結合成分として関与しない)、珪砂、寒水砂、マイカ、施釉珪砂、施釉マイカ、セラミックサンド、ガラスビーズ、パーライト等を挙げることができるが、基材がシートの場合、該平均粒子径は0.003〜1.0mmとすることが好ましく、更に基材がシートで化粧層に実質的に繊維を含有せず、且つ、該化粧層の厚みを0.1〜1mmとした場合は該平均粒子径は0.003〜0.5mmとすることが好ましい。更にまた、上記活性微粒子としては、例えば、平均粒子径が0.1〜50μmの高炉水砕スラグ、フライアッシュ、シリカフューム等が挙げられる。
【0021】
上記顔料としては左官用に一般に用いられるもの、例えば、平均粒子径が0.5〜50μmの酸化鉄、酸化チタン、酸化クロム等の金属酸化物および各種石粉が挙げられる。
【0022】
その他の添加剤として、例えば、パラフィン、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の有機質混和材;ジメチルポリシロキサンおよびそのメチル基の一部を水素原子、フェニル基、アルキル基、メルカプト基、ビニル基、シアノアルキル基、フルオロアルキル基等で置換したポリシロキサンを主成分としたシリコーンオイルまたはシリコーン樹脂;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ジヘキシルジメトキシシラン、ジヘプチルジメトキシシラン、トリヘキシルメトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン等を挙げられる。
【0023】
上記した各種の添加剤の配合量は得に制限されない。一般には、化粧層中の重量%で表すと次のような割合となるように使用することが好ましい。尚、上記割合は、前記水酸化カルシウムの全量が炭酸化されて炭酸カルシウムに変換された状態に換算した値である。
【0024】
水性エマルジョンの添加量は、水性エマルジョンを固形分換算で0.5〜18重量%、好ましくは2〜15重量%とすることが、得られる化粧層の靱性および該化粧層と基材との接着強度並びに該化粧層とシートとの剥離強度を高めることができるために好ましい。
【0025】
また、繊維の添加量は、例えば短繊維では、0.1〜5重量%とするのが好ましいが、基材がシートで化粧層の厚みが0.1〜1mmの場合は実質的に繊維を添加せずとも得られる建築用材料の可とう性を確保できる。
【0026】
無機細骨材の添加量は、70重量%以下、好ましくは60重量%以下とするのが好ましい。更に、顔料は5重量%以下であれば特に問題なく使用できる。
【0027】
また、その他の添加剤は有機質混和剤、シリコーンオイル、シリコーン樹脂およびオルガノアルコキシシランは、得られる建築用材料の化粧層の防水性、耐凍結融解性、耐薬品性、耐候性を向上させるのに効果的であり、通常、炭酸カルシウムからなる化粧層中にそれぞれ0.05〜2重量%とするのが好ましい。
【0028】
本発明においては、化粧層に上記した何れの添加剤を配合する場合においても、結合材として作用する炭酸カルシウム(前記と同様、水酸化カルシウムが100%炭酸化された状態に換算したもの)の割合が、10重量%以上、好ましくは25重量%以上、更に好ましくは30重量%以上となるように調整することが、化粧層表面の意匠を漆喰仕上げに近づけるために望ましい。
【0029】
本発明において、炭酸カルシウムを結合成分として含有する化粧層の厚みは、特に制限されないが、一般に100〜2000μm、特に、100〜1000μmの範囲とすることが、化粧層に実質的に繊維を含有しなくても、後記の通気性保護シートを前記剥離強度で積層する作用により、曲げに対す耐性をより向上させることが可能であり好ましい。
【0030】
本発明において、上記化粧層は、未硬化のスラリーの状態で基材シートの片面に塗布し、これを硬化させることによって、基材シートに積層することができる。
【0031】
本発明の特徴は、上記基材シートとして、引張強度が、1.5〜7KN/m、好ましくは、3〜5KN/mのシートを使用することにある。即ち、上記基材シートの引張強度が7KN/mより大きい場合、貼付後の化粧シートの寸法安定性が基材シートに支配されるようになり、化粧シートを糊により貼り付け後、乾燥と共に経時的に継ぎ目が開いて発生する目隙が目視によって容易に確認できるようになる。この目隙の限界は、0.05mmであり、これを超える目隙は、施工後の化粧シートの継ぎ目の外観を著しく低下させる。また、場合によっては、端部がカールして更に外観の低下を助長し、本発明の目的を達成することができない。
【0032】
また、逆に、該基材シートの引張強度が1.5KN/mより小さい場合、特に、製造時の強度が十分でなく、安定して化粧シートを製造することが困難となる。
【0033】
尚、本明細書において、上記基材シートの引張強度は、最も強い方向における引張強度であり、連続して製造される基材シートの場合、製造時の縦方向の引張強度がこれに当たる。
【0034】
本発明において、上記引張強度を有する基材シートの厚みは、120〜300μm、特に、130〜180μmであることが、化粧シートを壁面等に貼付する場合の密着性を高め、安定した仕上げ面を形成するために重要である。
【0035】
即ち、基材シートの厚みが薄すぎる場合、化粧シートを貼付する壁面等の凹凸を吸収することが困難であり、一部で化粧層が浮いたり、ひびが入ったりすることがある。また、基材シートの厚みはあまり厚過ぎる場合、得られる化粧シートを貼付後の化粧層が不安定となり、表面から圧力を受けた際にひび割れ等が発生し易くなる。
【0036】
このように、ある程度の厚みを有しながら、強度が小さい基材シートを使用することが本発明の最大の特徴であり、本発明によって初めて提案された構成である。
【0037】
本発明において、基材シートは、上記条件を満足するものであれば特に制限されないが、更に、水中伸度が1.3%以下、特に0.8%以下であることが後記の理由により好ましい。また、水中伸度は、あまり大きいと、未だ強度のない未硬化の状態の化粧層が、基材シートの収縮によりカール等の変形をして製造時のトラブルを発生する場合があり、かかる水中伸度が上記範囲のものを使用することが好ましい。
【0038】
尚、上記水中伸度はTAPPI−NO,27−B法、通気度はJIS−P8117によって測定した値である。
【0039】
また、基材シートは、透気度が10秒以下、特に3〜8秒のものが、製造工程上好適である。
【0040】
本発明において、上記基材シートの材質は、前記未硬化のスラリーとの馴染みを持たせ、形成される化粧層と基材シートとの密着性を高めるために紙が好ましい。即ち、本発明の化粧シートは、前記したように、化粧層を形成し得る未硬化のスラリーを塗布して硬化することによって製造されるが、該化粧層と積層される基材シートは、未硬化のスラリーを塗布後、硬化工程に至るまでに、該スラリーと速やかに馴染むことが製造時の該基材シートにおける皺の発生を防止するために好ましい。
【0041】
特に、紙中に、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機充填材を多量、具体的には30〜90重量%、好ましくは40〜70重量%配合することによって燃焼性を低下せしめた紙を使用することが最も好ましく、そのうち、上記無機充填材として炭酸カルシウムを配合したものが、特に好ましい。
【0042】
以上の特性を満足する、本発明に好適な基材シートを具体的に例示すれば、OKコスモCA135(商品名)王子製紙株式会社製、OKコスモCA100(商品名)王子製紙株式会社製等が挙げられる。
【0043】
本発明の化粧シートは、図1に示すように、基材シート1の表面に形成された炭酸カルシウムを結合成分として含有する化粧層2の表面に、別途接着剤を介することなく、剥離可能な強度で通気性保護シート3を積層することが、簡易に化粧層を保護すると共に、取扱い時における曲げに対して化粧シートのひび割れを効果的に防止するために好ましい。
【0044】
化粧シートの表面に積層された通気性保護シートの剥離強度は、特に、200〜4000mN、特に、800〜2500mNとなるように調節することが好ましい。
【0045】
なお、本発明において剥離強度は、JIS−K6854の180゜剥離接着強度試験に準じ、幅25mmの試験体を用い、測定条件を300mm/分の条件で測定した値である。
【0046】
本発明において、上記通気性保護シートは、その全面に実質的に均一な通気性を有し、後記の製造条件下に、悪影響を与えないもの、化粧層の未硬化スラリーである水酸化カルシウムと水とを含む混練物との接触により著しい変形および変質を起こさず、且つ該混練物の固形分が実質的に透過しないものが特に制限なく使用される。具体的には、ガーレ透気度2000sec./100cc以下の通気度、特に好適には1〜1000sec/100ccの通気度を有し、全面にわたって3mmφ以上好ましくは2mmφ以上の非通気性部分がない合成紙が好適に使用される。
【0047】
尚、本発明において、「シート」の語は、厚みによりフィルムと厳密に区別するものではなく、保護シートとして要求される強度を有するもので有れば、特に厚みに対して制限されるものではない。
【0048】
かかる通気性保護シートを更に具体的に示せば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の膜状物および防水紙等の非透水性シートにニードルパンチ、延伸等、公知の方法により通気性のみを付与する微多孔を形成した非透水性且つ通気性シート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ビニロン、ポリエチレンテレフタレート、耐アルカリガラス等の人工繊維からなる織布および不織布等の繊維シートが挙げられる。
【0049】
上記通気性保護シートのうち、特に好適に使用されるのは、ポリエチレン、ポリプロピレン等の膜状物に通気性のみを付与する微多孔が形成された非透水性且つ通気性シートおよびポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ビニロン、ポリエチレンテレフタレート等からなる通気性を有する不織布である。
【0050】
上記のように化粧層の表面に、別途接着剤層を介することなく、通気性保護シートを適度な剥離強度で積層することにより、該化粧シートを取り扱う間は、化粧層から通気性保護シートが剥離することなく、取り扱うことが出来、また、施行後は、容易に且つ化粧層に悪影響を与えることなく、該通気性保護シートを剥離することが可能である。
【0051】
しかも、上記通気性シートを使用して後記の化粧層の形成方法で得られた化粧層は、通気性保護シートの適度な通気性が作用してその表面に炭酸カルシウムの緻密な層が形成されるため、高い表面硬度を有し、該通気性保護シートの除去後も優れた耐擦傷性を有する。
【0052】
また、通気性保護シートを設けることにより、化粧シートを湾曲せしめても化粧層にひびが生じ難いというに優れた耐屈曲性を付与することが可能である。従って、化粧シートの取扱いが容易となるばかりでなく、2次元曲面への施工も容易となる。そして、2次元曲面に施工後、該通気性保護シートを除去しても新たなクラックが生じることがないという優れた特性を発揮する。
【0053】
本発明の化粧シートの施工は、施工面に接着剤を塗布して行うことも可能であるが、該化粧シートの基材シート面に予め公知の材質よりなる接着層を形成させることも好ましい態様である。
【0054】
本発明の化粧シートの製造方法は特に制限されるものではないが、好適な方法として、下記の方法が挙げられる。
【0055】
即ち、前記基材シート表面に水酸化カルシウムと水とを含む混練物よりなる未硬化スラリーを塗布し、必要に応じて、その上に通気性保護シートを積層し、該混練物よりなる層を通気性保護シートで被覆した状態で混練物中の水酸化カルシウムを炭酸化して硬化させることによって製造することができる。
【0056】
上記方法において、水酸化カルシウムとしては、前記したように、水酸化カルシウムを主成分とする工業用消石灰、漆喰、ドロマイトプラスター等の材料が特に制限なく使用される。
【0057】
上記水酸化カルシウムと水とを含む混練物には、前記した添加剤を必要に応じて前記した好適な割合となるように添加される。
【0058】
また、上記混練物には、これらの添加剤の他、建築用材料の製造時の作業性等を改良する目的で、各種の配合剤を添加することができる。このような配合剤としては、例えば、増粘剤、流動化剤、消泡剤等を例示することができる。
【0059】
増粘剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系、サッカロース、グルコース等からなる多糖類系、およびアクリル系等が挙げられる。
【0060】
また、流動化剤としては、例えば、メチロール/メラミン縮合物、ポリカルボン酸塩、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ナフタリンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、高分子量リグニンスルホン酸を主成分とするものが挙げられる。
【0061】
消泡剤としては、例えば、プルロニック系、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0062】
これら各種の配合剤の配合量は特に制限されないが、一般には、水酸化カルシウムと水とを含む混練物中の重量%で表すと、次のような範囲で使用することが好ましい。
【0063】
例えば、上記増粘剤の添加量は、使用する増粘剤の性能により異なるが、例えば1重量%水溶液の20℃における粘度が100cPとなるヒドロキシエチルセルロースでは0.04重量%以内であれば特に問題なく使用できる。
【0064】
また、流動化剤の添加量は、使用する流動化剤の性能により異なるが、例えば、比較的分離抵抗性に優れるポリカルボン酸塩を主成分とするものの場合、0.1〜5重量%、更に0.5〜3重量%とするのが好ましい。
【0065】
更に、消泡剤の添加量は、1重量%以内、更に0.3重量%以内とすることが好ましい。
【0066】
以上の任意成分を必要に応じて配合した水酸化カルシウムと水とにより混練物が得られる。水酸化カルシウムと水との混合割合は特に制限されないが、水分量を適宜調節し、該混練物の粘度が100〜400000センチポイズとすることで製造時の取扱いが容易になる。このような粘度とするためには、一般に、混練物中の水分が20〜50重量%となる範囲で混合すればよい。
【0067】
水酸化カルシウムと水とを含む混練物を基材シートに塗布する方法としては、該混練物をロールコーター、フローコーター、ナイフコーター、コンマコーター、スプレー、ディッピング、吐出、型材転写等によりボードに塗布し、必要に応じてコテ押さえ、口金絞り、ローラー転圧、1軸プレス等により成形する方法を特に制限なく採用できる。
【0068】
水酸化カルシウムと水とを含む混練物の層の表面を通気性保護シートで被覆する方法としては、該層の成形後、硬化前にシートを密着させる方法、または層の形成と同時に通気性保護シートを密着させる方法等の何れでもよい。
【0069】
上記の状態下での水酸化カルシウムと水とを含む混練物の硬化は、水酸化カルシウムと水とを含む混練物の成形体と空気中の二酸化炭素とが反応して炭酸カルシウムを生成することによって行われる。従って、硬化の方法は該炭酸化反応を妨げない条件下で行えばよいが、温度、湿度、二酸化炭素濃度等の制御により養生時間を短縮することが可能である。
【0070】
上記養生温度については、初期温度を25〜90℃、好ましくは、50〜80℃とし、2〜120分養生することで生産性を高めることができる。
【0071】
また、硬化に際しては該混練物の成形体中の余剰な水分の除去および二酸化炭素の供給が重要であるが、前記したように、通気性を有する通気性保護シート等を使用すれば、該シートを介して該混練物の成形体からの外気への水の蒸散と外気からの二酸化炭素の供給に有効であり、養生時間が短縮されるだけでなく、該通気性保護シートの作用により得られる化粧層の表面硬度をより向上せしめることができる。
【0072】
本発明の上記方法において、得られる化粧シートの化粧層と通気性保護シートとの剥離強度の調整は、種々の条件によって適宜行うことができるが、効果的な条件として、通気性保護シートの化粧層と接する面の親水性、粗度等および混練物に添加する水性エマルジョン、シリコーンオイル等の添加剤の制御等が挙げられる。
【0073】
例えば、該通気性保護シートの化粧層と接する面の親水性を強めることにより、剥離強度は向上し、逆に該親水性を弱めることによって剥離強度は低下する。また、水性エマルジョンの添加量を多くすることにより、剥離強度は向上し、逆に該添加量を少なくすることによって剥離強度は低下する。更にまた、シリコーンオイルの添加量を少なくすることにより、剥離強度は向上し、逆に該添加量を多くすることによって剥離強度は低下する。
【0074】
【発明の効果】
以上の説明より理解されるように、本発明の化粧シートは、基材シートとして特定の厚みと強度を有するシートを使用することにより、貼り付け時に使用するでんぷん系などの接着剤の水分による伸びが抑えられ、貼付後の乾燥に伴う収縮が極めて少ないという特性を有する。
【0075】
従って、複数枚の化粧シートの継ぎ合わせにより形成された接合部の密着状態が乾燥後も維持され、良好な仕上がり状態が得られると共に、貼付後も、長期間安定して剥離を防止することができる。
【0076】
また、上記のように安定して壁面等に施工できるため、化粧シートの張り替えにおいては、該化粧シートの上から、更に化粧シートを重ねて貼付しても安定な化粧面を形成することが可能であり、従来の壁紙では考えられないような、極めて簡易な施工態様を採ることも可能である。
【0077】
【実施例】
以下、本発明を更に具体的に説明するために実施例を示すが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0078】
尚、実施例および比較例において、各試験は下記に示す方法によって実施した。併せて、実施例及び比較例において使用した基材の詳細を以下に示す。
【0079】
(1)乾湿繰り返しによる剥離試験
150×300mmの石綿スレート板の全面に、でん粉系の接着剤を介して化粧シートの基材シート面を貼り付けた後、通気性保護シートを剥離し、24時間乾燥させて試験体を得た。
【0080】
得られた試験体を温度60℃、湿度95%RHの蒸気中で2時間吸湿させた後、温度60℃の熱風乾燥器中で2時間乾燥させることを30回繰り返した。試験の結果、試験体の周囲に捲れ部分が認められなかったものを○、認められたものを×とした。
【0081】
(2)強制目隙試験
900×900mmの石膏ボードの表面に、450×900mmに切断した化粧シート2枚を中央部に隙間がないように壁紙用接着剤「ヤヨイ化学工業株式会社製ルーアマイルド(商品名)」を介して基材シート面を貼り付けた後、通気性保護シートを剥離し、試験体を得た。
【0082】
得られた試験体を直ちに60℃の熱風乾燥機に3時間入れ、継ぎ目に生じる隙間をマイクロスコープにより測定した。
【0083】
(3)下地凸部の隠ぺい性試験
300×300×12mmの石膏ボードの中央部に直径30mm、厚さ0.1mmのタックシールを貼った後、石膏ボード全面に壁紙用接着剤「ヤヨイ化学工業株式会社製ルーアマイルド(商品名)」を介して化粧シートの基材シート面を貼り付け、次いで、通気性保護シートを剥離した。
【0084】
その後、化粧シートの表面を自然光で観察してタックシールの凸が見えないものを○、凸が見えるものを×とした。
【0085】
(A)基材シート
表1に示す引張り強さ、水中伸度及び厚みを有する加工原紙1〜29を用いた。
【0086】
(B)水酸化カルシウム
・消石灰A: 宇部マテリアルズ製高純度消石灰CH(商品名)
・消石灰B:JIS R 9001−81規格品
・消石灰C: 田中石灰工業株式会社製「雪印左官用」(商品名)
(C)水性エマルジョン
・モビニール:ヘキスト合成株式会社製「モビニール752」(商品名)
(アクリルスチレン共重合体、固形分47重量%)
・ポリトロン:旭化成工業株式会社製「ポリトロンA1480」(商品名)
(アクリル系共重合体ラテックス、固形分40重量%)
(D)無機細骨材
・炭カルA:株式会社飯田工業所製「イーカル100」(商品名)
・炭カルB:薬仙石灰製ホワイト7(商品名)
(G)流動化剤
・レオビルド:株式会社ポゾリス物産製「レオビルドSP−8N」(商品名)
・シーカメント:日本シーカ株式会社製「シーカメント1000NT」(商品名)
(J)通気性保護シート
・不織布A:ユニセル株式会社製BT−1306WM(商品名)
・不織布B:旭・デュポンフラッシュスパン・プロダクツ株式会社製タイベック1059B(商品名)
実施例1〜24、比較例1〜8
表1に示す、引張強度、水中伸度及び厚みを有する基材シートを準備した。
【0087】
【表1】
次いで、上記基材シートの表面に、表2、表3に示す種類、配合比率の原材料を混練して得た混練物を、ロールコーターを用いて塗布し、表2及び表3に示す通気性保護シートを積層し、硬化後の厚みが200μm(700μm)となるようにした。
【0088】
【表2】
【表3】
この状態で、80℃で5分間乾燥し、該混練物を硬化させて炭酸カルシウムを結合成分として含有する化粧層を形成した。
【0089】
このようにして得られた化粧シートは、図1にその断面図を示すように、基材シート1片面に、化粧層2が形成され、更に該化粧層の表面に通気性保護シート3が積層されたものであった。
【0090】
上記化粧シートの通気性保護シートは、手で引っ張ることによって容易に剥離することができ、また、剥離時に化粧層を破壊することの無い程度の強度で付着していた。
【0091】
尚、得られた化粧シートは、温度25℃相対湿度65%の条件下に放置して水酸化カルシウムの炭酸カルシウムへの変化率(炭酸化率)が75%以上となるように調整して試験に供した。
【0092】
得られた化粧シートについて、試験結果を表4に示した。
【0093】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧シートの代表的な態様を示す斜視図
【符号の説明】
1 基材シート
2 化粧層
3 通気性保護シート
Claims (5)
- 炭酸カルシウムを結合成分として含有する化粧層及び基材シートよりなる積層体であって、該基材シートの厚みが120〜300μmであり、且つ、引張強度が1.5〜7KN/mであることを特徴とする化粧シート。
- 化粧層の表面に、剥離可能な強度で通気性保護シートを積層した請求項1に記載の化粧シート。
- 基材シートの水中伸度が1.3%以下である請求項1又は2に記載の化粧シート。
- 基材シートが無機填料を30〜90重量%含有する紙よりなる請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
- 表面保護シートが、ガーレ透気度2000sec./100cc以下の通気度を有する合成紙よりなる請求項1〜4のいずれかに記載の化粧シート。
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