JP3891791B2 - 電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性支持体上に感光層が形成された電子写真感光体に関し、更に詳しくは、感光層としての表面滑り性、耐摩耗性、及び電気的応答性に優れ、且つ、導電性支持体上に該感光層を形成するにおける塗布液調製時の溶媒溶解性、及び該塗布液の保存安定性に優れたバインダー樹脂を用いた電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子写真方式の画像形成方法として、導電性支持体上に感光層が形成された感光体を一様に帯電させ、次いで、露光せしめて、露光された部分の電荷を消散させて静電荷潜像を形成し、露光されていない部分に荷電させたトナーを付着させることによってその静電荷潜像を可視化させて現像し、得られた可視像を転写紙等の転写材に転写せしめ、加熱、加圧等によってその可視像を転写材に定着させる方法が、即時に高品質の画像が得られることから、複写機やプリンター等において広く利用されている。
【0003】
そして、その感光体の光導電材料としては、従来からのセレニウム、砒素−セレニウム合金、硫化カドミウム、酸化亜鉛等の無機系の材料が、近年では、安全性や成膜性等の優位性から、有機系の光導電材料に代替されつつある。一方、有機系の光導電材料による感光体の感光層としては、光導電性物質をバインダー樹脂中に分散させた一層からなる単層型と、電荷発生物質をバインダー樹脂中に分散させた電荷発生層と電荷輸送物質をバインダー樹脂中に分散させた電荷輸送層との二層からなる積層型とがあり、後者積層型は、材料の選択範囲が広く安全性の高い感光体が得られること、電荷発生物質と電荷輸送物質を組み合わせることにより高感度の感光体が得られること、又、生産性も高いこと等の利点を生かし、急速に実用化が進んでいる。
【0004】
ところで、電子写真感光体は、電子写真プロセス、即ち、帯電、露光、現像、転写、クリーニング、除電等のサイクルで繰り返し使用されるため、例えば、クリーニングブレード、磁気ブラシ等との摺擦や、現像液、転写材等との接触等によって、感光層は摩耗、擦傷、層剥離等の機械的劣化を受け、更に、帯電器として一般的に用いられているコロナ帯電器から発生する強酸化性のオゾンやNOX 等により、又、像露光で生成したキャリアー(電流)が流れたり、或いは、除電光、外部からの光等によって、化学的、電気的にも劣化を受けることとなり、そして、感光層が前記積層型の場合、これらの劣化を受けるのは電荷輸送層であり、その層中のバインダー樹脂がこれらの機械的劣化、及び、化学的、電気的劣化に対する耐久性を負うことになる。
【0005】
又、近年の高速印刷の要求の高まりから、より高速の電子写真プロセス対応の材料が要望されており、感光層としては、前述の電子写真プロセスサイクルの短縮化に伴う電気的応答性が求められ、この電気的応答性は、電荷輸送層中の電荷輸送物質に主として支配されるものの、バインダー樹脂によっても大きく変動することが知られている。
【0006】
更に、電子写真感光体を構成する各層は、支持体表面に塗布液として塗布し、乾燥させることにより形成されることから、バインダー樹脂には、その塗布液調製時の溶媒に対する溶解性、及び、その塗布液の保存安定性も求められる。
【0007】
これらの要求性能に対して、バインダー樹脂としては、従来より、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン等の熱可塑性樹脂、及び、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられており、中で、ポリカーボネートが比較的優れた性能を発現し得ることから多用されており、電子写真感光体の感光層のバインダー樹脂として、例えば、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン〔ビスフェノールP〕タイプのポリカーボネート(特開昭50−98332号公報)、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン〔ビスフェノールZ〕タイプのポリカーボネート(特開昭59−71057号公報)、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン〔ビスフェノールP〕と2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕との共重合タイプのポリカーボネート(特開昭59−184251号公報)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンを含む共重合タイプのポリカーボネート(特開平5−21478号公報)等が知られている。
【0008】
しかしながら、ポリカーボネートを感光層のバインダー樹脂とする電子写真感光体は、耐摩耗性や耐擦傷性等が必ずしも十分ではなく、これに対して、ジオール成分がジフェノールからなるポリエステルであるポリアリレート樹脂を用いることが提案されており、例えば、特開昭56−135844号公報には、ジオール成分としてビスフェノールAを用いたポリアリレート樹脂、又、特開平3−6567号公報には、ジオール成分としてビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン〔テトラメチルビスフェノールF〕とビスフェノールAを用いたポリアリレート樹脂、又、特開平10−288845号公報及び特開平10−288846号公報には、ジオール成分として、2,2−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールC〕、或いは、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔テトラメチルビスフェノールA〕を用いたポリアリレート樹脂、をそれぞれバインダー樹脂とする電子写真感光体が開示されている。
【0009】
従来知られているこれらのポリアリレート樹脂を感光層のバインダー樹脂とする電子写真感光体は、特開昭56−135844号公報開示の樹脂では、感度、耐摩耗性では改良が認められるものの、その塗布液の保存安定性が劣り、又、特開平3−6567号公報開示の樹脂では、機械的特性の向上は認められるものの、感度、電気的応答性の面では充分な性能が得られず、又、特開平10−288845号公報及び特開平10−288846号公報開示の樹脂では、機械的特性、溶媒溶解性及びその塗布液の保存安定性の面では向上が認められるものの、電気的応答性に関しては不充分であった。
【0010】
従って、電子写真感光体の感光層のバインダー樹脂として従来知られているいずれの樹脂も、転写材等との繰り返しの接触によっても円滑に作動するための表面滑り性、及びその際の耐摩耗性、並びに、帯電のし易さ及び除電のし易さ等の電気的応答性、更に、導電性支持体上に感光層を形成するにおける塗布液調製時の溶媒溶解性、及びその塗布液の保存安定性のいずれをも同時に満足させ得ているものではなく、これらの性質を同時に満足させ得るバインダー樹脂、それを用いた電子写真感光体が求められているのが現状である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の従来技術に鑑みてなされたもので、従って、本発明は、感光層としての表面滑り性、耐摩耗性、及び電気的応答性に優れ、且つ、導電性支持体上に該感光層を形成するにおける塗布液調製時の溶媒溶解性、及び該塗布液の保存安定性に優れたバインダー樹脂を用いた電子写真感光体を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、感光層におけるバインダー樹脂として特定の共重合体のポリアリレート樹脂を用いることによって前記目的が達成できることを見出し本発明を完成したもので、即ち、本発明は、導電性支持体上に感光層が形成された電子写真感光体であって、該感光層におけるバインダー樹脂が、下記式(I) で表される構成単位を主たる繰返し単位とし、且つ、下記一般式(II)で表される構成単位を10モル%未満の割合で含むポリアリレート樹脂である電子写真感光体、を要旨とする。
【0013】
【化4】
【0014】
〔式(I) は、右端のフェニレン基がp−フェニレン基である構成単位とm−フェニレン基である構成単位とを表し、両構成単位の合計に対するm−フェニレン基である構成単位の割合は30モル%未満である。〕
【0015】
【化5】
【0016】
〔式(II)中、Aは置換基を有していてもよいアリーレン基を示し、nは0又は1であり、nが1のとき、Xは、単結合、置換基を有していてもよいアルキレン基(但し、メチレン基であるとき、Aも含めた構造として式(I) における構造と同一ではない。)、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、置換基を有していてもよいフェニレンジメチレン基、エーテル基、カルボニル基、チオエーテル基、スルフィニル基、又はスルホニル基を示し、Xに結合するベンゼン環は置換基を有していてもよい。又、式(II)は、右端のフェニレン基がp−フェニレン基である構成単位とm−フェニレン基である構成単位とを表し、両構成単位の合計に対するm−フェニレン基である構成単位の割合は30モル%未満である。〕
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に形成された感光層のバインダー樹脂が、前記式(I) で表される構成単位を主たる繰返し単位とし、且つ、前記一般式(II)で表される構成単位を10モル%未満の割合で含むポリアリレート樹脂であることが必須であり、これにより本発明の目的を達成することが可能となる。
【0018】
本発明におけるポリアリレート樹脂において、その主たる繰返し単位を構成する前記式(I) の構成単位は、ジオール成分としてのビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン〔テトラメチルビスフェノールF〕と、ジカルボン酸成分としてのテレフタル酸及びイソフタル酸とのエステル化反応に基づくものであり、又、前記一般式(II)の構成単位は、ジオール成分としての芳香族ジオールと、ジカルボン酸成分としてのテレフタル酸及びイソフタル酸とのエステル化反応に基づくものである。
【0019】
ここで、前記一般式(II)において、Aのアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、中で、フェニレン基が好ましい。又、nが1であるのが好ましく、nが1のとき、Xのアルキレン基としては炭素数が1〜5であるのが、シクロアルキレン基としては炭素数が5〜8であるのが、それぞれ好ましく、Xとしては、単結合、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、置換基を有していてもよいフェニレンジメチレン基、エーテル基、カルボニル基、チオエーテル基、スルフィニル基、及びスルホニル基の中で、単結合、又は置換基を有していてもよいアルキレン基が好ましく、置換基を有していてもよいメチレン基が特に好ましい。
【0020】
又、前記一般式(II)において、Aのアリーレン基、並びに、Xのアルキレン基、シクロアルキレン基、及びフェニレンジメチレン基における置換基としては、例えば、炭素数が1〜10のアルキル基、及びそのハロゲン化アルキル基、炭素数が1〜10のアルコキシ基、フェニル基、ハロゲン原子等が挙げられる。又、Xに結合するベンゼン環における置換基としても同様のものが挙げられる。
【0021】
本発明において、前記Xとして好ましいとするメチレン基は、無置換メチレン基、モノアルキル置換メチレン基、又はジアルキル置換メチレン基のいずれかであるのが好ましく、ジアルキル置換メチレン基であるのが特に好ましく、その置換アルキル基としてはメチル基が特に好ましい。又、Aのアリーレン基、及びXに結合するフェニレン基におけるベンゼン環は置換基を有さないか、2−、3−、5−、又は6−位にメチル基を置換基として有するのが特に好ましい。尚、前記一般式(II)において、nが好ましいとする1であって、Xが好ましいとするメチレン基であるとき、Aも含めた基本構造〔−A−CH2 −C6 H4 −〕において式(I) における構造と同一ではないことが必要であり、式(I) における構造と同一では、本発明の効果を達成することができない。
【0022】
これらのA及びXを含む前記一般式(II)の構成単位を構成するジオール成分としての芳香族ジオールとしては、具体的には、例えば、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、キシリレングリコール等のジヒドロキシベンゼン類、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)、ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)、ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)、ビス(2,3,5,6−テトラメチル−4−ヒドロキシフェニル)等のビス(ヒドロキシフェニル)類、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン〔ビスフェノールF〕、2−ヒドロキシフェニル−4−ヒドロキシフェニル−メタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン〔ジメチルビスフェノールF〕、ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,5,6−テトラメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン〔ビスフェノールE〕、1,1−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3’,6’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(2’,3’,6’−トリメチル−4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(2’,3’,5’,6’−テトラメチル−4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3’−フェニル−4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3’−フェニル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、2,2−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールC〕、2,2−ビス(3’−エチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−i−プロピル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−s−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔テトラメチルビスフェノールA〕、2,2−ビス(2’,3’,5’−トリメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2’,3’,5’,6’−テトラメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−フェニル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールQ〕、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、フェノールフタレイン等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン〔ビスフェノールP〕、1,1−ビス(2’,3’,5’−トリメチル−4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジフェニルプロパン等のビス(ヒドロキシフェニル)フェニルアルカン類、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン〔ビスフェノールZ〕、1,1−ビス(2’,3’,5’−トリメチル−4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類、ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1,4−フェニレンジメチレン、ビス(2’,6’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)−1,4−フェニレンジメチレン、ビス(2’,3’,6’−トリメチル−4’−ヒドロキシフェニル)−1,4−フェニレンジメチレン、ビス(2’,6’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)−1,4−フェニレンビス(α−メチルエチリデン)、ビス(2’,3’,6’−トリメチル−4’−ヒドロキシフェニル)−1,4−フェニレンビス(α−メチルエチリデン)、ビス(2’,3’,6’−トリメチル−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−フェニレンビス(α−メチルエチリデン)、ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1,4−フェニレンビス(α−メチルビニリデン)、ビス(2’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)−1,4−フェニレンビス(α−メチルビニリデン)等のビス(ヒドロキシフェニル)フェニレンジメチレン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル〔ビスフェノールO〕、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(ヒドロキシフェニル)エーテル類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ケトン等のビス(ヒドロキシフェニル)ケトン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド等のビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等のビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン〔ビスフェノールS〕、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン等のビス(ヒドロキシフェニル)スルホン類等が挙げられる。
【0023】
又、前記式(I) 及び前記一般式(II)は、右端のフェニレン基が、ジカルボン酸成分としてのテレフタル酸に由来するp−フェニレン基である構成単位と、ジカルボン酸成分としてのイソフタル酸に由来するm−フェニレン基である構成単位とをそれぞれ表し、両式において、両構成単位の合計に対するm−フェニレン基である構成単位の割合は30モル%未満であり、1〜9モル%であるのが好ましく、1〜7モル%であるのが特に好ましい。m−フェニレン基である構成単位の割合が前記範囲以上では、電子写真感光体の感光層として電気的応答性等が劣ることとなり、一方、前記範囲未満では、導電性支持体上に該感光層を形成するにおける塗布液の保存安定性が劣る傾向となる。
【0024】
尚、これらの構成単位を構成するジカルボン酸成分としての芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸及びイソフタル酸のクロライド等のハロゲン化物等の誘導体が挙げられる。
【0025】
本発明におけるバインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂は、前記式(I) で表される構成単位を主たる繰返し単位とし、且つ、前記一般式(II)で表される構成単位を10モル%未満の割合で含むものであり、前記一般式(II)で表される構成単位を1〜9モル%の割合で含むのが好ましく、1〜7モル%の割合で含むのが特に好ましい。前記一般式(II)で表される構成単位の割合が前記範囲以上では、電子写真感光体の感光層として耐摩耗性、及び電気的応答性等が劣ることとなり、一方、前記範囲未満では、導電性支持体上に該感光層を形成するにおける塗布液調製時の溶媒溶解性、及び該塗布液の保存安定性が劣る傾向となる。
【0026】
本発明における前記ポリアリレート樹脂は、ジオール成分としての前記芳香族ジオールとジカルボン酸成分としての前記芳香族ジカルボン酸とを、界面重合法、溶融重合法、溶液重合法等の公知の重合法を用いて重縮合反応させることにより製造される。例えば、界面重合法による製造は、芳香族ジオールのアルカリ水溶液と芳香族ジカルボン酸のハロゲン化炭化水素溶液とを混合し、触媒としての四級アンモニウム塩若しくは四級ホスホニウム塩の存在下又は不存在下に、0〜40℃の温度で2〜12時間重縮合反応させ、反応後、水相と有機相を分離し、有機相中に溶解しているポリマーを公知の方法で分離し、洗浄、乾燥することによりなされる。
【0027】
ここで、芳香族ジオールのアルカリ水溶液に用いられるアルカリ成分としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等が挙げられ、又、芳香族ジカルボン酸のハロゲン化炭化水素溶液に用いられるハロゲン化炭化水素溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。又、触媒としての四級アンモニウム塩若しくは四級ホスホニウム塩としては、例えば、トリブチルアミンやトリオクチルアミン等の三級アルキルアミンの塩酸、臭素酸、沃素酸等の塩、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、N−ラウリルピリジニウムクロライド、ラウリルピコリニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリエチルオクタデシルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。
【0028】
又、重縮合反応の際、分子量調節剤として、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、t−ブチルフェノール、ジメチルフェノール、メチル−t−ブチルフェノール、トリメチルフェノール、テトラメチルフェノール、ジメチル−t−ブチルフェノール、ジメチル−アセチルフェノール、フェニルフェノール等の一官能性のフェノール類、酢酸クロリド、酪酸クロリド、オクチル酸クロリド、塩化ベンゾイル、ベンゼンスルフォニルクロリド、ベンゼンスルフィニルクロリド、ベンゼンホスホニルクロリド、及びそれらの置換体等の一官能性の酸ハロゲン化物類等を存在させてもよく、これらの中で、少なくとも2−位と6−位にメチル基を有するフェノール類、具体的には、例えば、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2,3,4,6−テトラメチルフェノール、2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェノール、2,6−ジメチル−4−ノニルフェノール、2,6−ジメチル−4−アセチルフェノール、及びα−トコフェロール等、が好ましく、2,3,6−トリメチルフェノールが特に好ましい。
【0029】
又、本発明における前記ポリアリレート樹脂は、粘度平均分子量が10,000〜300,000であるのが好ましく、15,000〜100,000であるのが更に好ましく、20,000〜50,000であるのが特に好ましい。粘度平均分子量が前記範囲未満では、電子写真感光体の感光層として耐摩耗性等の機械的特性が劣る傾向となり、一方、前記範囲超過では、導電性支持体上に該感光層を形成するにおける塗布液の塗布性等が劣る傾向となる。
【0030】
尚、本発明における感光層のバインダー樹脂としては、前記ポリアリレート樹脂の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリメタアクリル酸エステル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が併用されていてもよい。
【0031】
本発明の電子写真感光体における導電性支持体としては、特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料、及び、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫合金)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として用いられる。又、金属材料の導電性支持体上に、導電性、表面特性等の制御や欠陥被覆のために、適当な抵抗値を有する導電性材料を塗布したものでもよい。その形態としては、ドラム状、シート状、或いはベルト状の、従来より用いられているものが挙げられる。導電性支持体としてアルミニウムやアルミニウム合金等の金属材料を用いる場合、その表面を陽極酸化処理、化成皮膜処理等を施してから用いてもよく、陽極酸化処理を施した場合、封孔処理を施すのが好ましい。支持体表面は、平滑であってもよいし、切削或いは研磨処理を施し粗面化されていてもよく、更に、支持体材料に適当な粒径の粒子を添加することによって粗面化されたものでもよい。
【0032】
又、前記導電性支持体上に形成された感光層としては、電荷発生物質と電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された一層からなる単層型と、電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層と、電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層の二層からなる積層型のいずれであってもよい。
【0033】
その電荷発生物質としても、特に限定されるものではなく、例えば、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム、その他の無機系光導電材料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等の有機顔料等の有機系光導電材料等各種光導電材料が用いられ、中で、有機顔料が好ましく、フタロシアニン顔料、アゾ顔料が特に好ましい。
【0034】
そのフタロシアニン顔料としては、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等が配位したフタロシアニンが挙げられる。特に、X型、τ型無金属フタロシアニン、A型、B型、D型等のチタニルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等が好適である。尚、チタニルフタロシアニンの結晶型のうち、A型、B型については、W.HellerらによってそれぞれI相、II相として示されており(Zeit.Kristallogr.159(1982)173)、A型は安定型として知られているものである。D型は、CuKα線を用いた粉末X線回折において、回折角(2θ±0.2°)が27.3°に明瞭なピークを示すことを特徴とする結晶型である。フタロシアニン顔料は、単一のものを用いても混合状態で用いてもよく、その混合状態としては、それぞれを混合しても、合成、顔料化、或いは結晶化等の製造・処理工程で酸ペースト処理、磨砕処理、溶剤処理等によって混合状態を生ぜしめたものでもよい。
【0035】
本発明において、感光層における前記バインダー樹脂と前記電荷発生物質との量比は、バインダー樹脂100重量部に対して電荷発生物質30〜500重量部であるのが好ましい。
【0036】
又、その電荷輸送物質としても、特に限定されるものではなく、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン類等の電子吸引物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、チアジアゾール誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族或いは複素環アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン化合物、及び、これらの誘導体の複数が結合した化合物、並びに、これらの誘導体を含む基を主鎖若しくは側鎖に有する重合体等の電子供与物質が挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族或いは複素環アミン誘導体、スチルベン誘導体、及びブタジエン誘導体、並びにこれらの誘導体の複数が結合した化合物が好ましく、芳香族或いは複素環アミン誘導体、スチルベン誘導体、及びブタジエン誘導体の複数が結合した化合物が特に好ましく、その化合物としては、具体的には、下記一般式(III) で表される化合物が挙げられる。
【0037】
【化6】
【0038】
〔式(III) 中、Zは単結合、又は2価の有機基を示し、Y1 、Y2 、Y3 、及びY4 は各々独立して、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を示し、n1 及びn2 は各々独立して0又は1であり、n1 及びn2 が0のとき、Y5 及びY6 は各々独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を示し、n1 及びn2 が1のとき、Y5 及びY6 は各々独立して、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を示し、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 、及びR8 は各々独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、又は水素原子を示し、m1 、m2 、m3 、及びm4 は各々独立して0〜4の整数である。〕
【0039】
ここで、前記一般式(III) において、Zの2価の有機基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、又は置換基を有していてもよいアリーレン基、並びに、それら各基が酸素原子又は硫黄原子で結合された、例えば、〔−O−Z’−O−〕、〔−Z’−0−Z’−〕、〔−S−Z’−S−〕、〔−Z’−S−Z’−〕(但し、ここで、Z’は、アルキレン基又はシクロアルキレン基又はアリーレン基である。)等、が挙げられる。
【0040】
そのZのアルキレン基としては炭素数が1〜6であるのが好ましく、メチレン基、又はエチレン基であるのが特に好ましく、又、シクロアルキレン基としては炭素数が5〜8であるのが好ましく、シクロペンチレン基、又はシクロヘキシレン基が特に好ましく、又、アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基等が挙げられ、フェニレン基が特に好ましい。以上の中で、本発明においてZとしては、単結合であるのが特に好ましい。
【0041】
尚、Zのアルキレン基、シクロアルキレン基、及びアリーレン基における置換基としては、例えば、炭素数が通常1〜6のアルキル基、炭素数が通常5〜8のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等の炭素数が通常1〜6のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、及びハロゲン原子等が挙げられる。
【0042】
又、前記一般式(III) において、Y1 〜Y4 は各々独立して、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は置換基を有していてもよい2価の複素環基であり、n1 及びn2 が0のとき、Y5 及びY6 は各々独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基であり、n1 及びn2 が1のとき、Y5 及びY6 は各々独立して、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は置換基を有していてもよい2価の複素環基であるが、ここで、そのアルキル基としては炭素数が1〜6であるのが好ましく、メチル基、又はエチル基であるのが特に好ましく、又、そのアルキレン基としては炭素数が1〜6であるのが好ましく、メチレン基、又はエチレン基であるのが特に好ましく、又、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられ、フェニル基が特に好ましく、又、アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基等が挙げられ、フェニレン基が特に好ましく、又、その1価の複素環基としては、芳香族性を有する複素環基が好ましく、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基等が挙げられ、又、2価の複素環基としては、芳香族性を有する複素環基が好ましく、例えば、フリレン基、チエニレン基、ピリジレン基等が挙げられる。以上の中で、本発明においては、Y1 、Y2 、Y3 、及びY4 としてはフェニレン基が特に好ましく、n1 及びn2 が0であって、Y5 及びY6 としてはフェニル基が特に好ましい。
【0043】
又、前記一般式(III) において、R1 〜R8 のアルキル基としては炭素数が1〜8であるのが好ましく、炭素数が1〜6であるのが特に好ましく、又、シクロアルキル基としては炭素数が5〜8であるのが好ましく、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基が特に好ましく、又、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられ、フェニル基が特に好ましく、又、1価の複素環基としては、芳香族性を有する複素環基が好ましく、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基等が挙げられる。以上の中で、本発明においては、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 、及びR8 としては、メチル基、又はフェニル基が特に好ましい。
【0044】
尚、Y1 〜Y4 のアリーレン基、及び2価の複素環基、Y5 及びY6 のアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルキレン基、アリーレン基、及び2価の複素環基、並びに、R1 〜R8 のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び1価の複素環基における置換基としては、例えば、炭素数が通常1〜6のアルキル基、炭素数が通常5〜8のシクロアルキル基、炭素数が通常1〜6のアルコキシ基、ビニル基、アリル基等の炭素数が通常1〜6のアルケニル基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基、フェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等のアリールチオ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジアリルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基等の置換アミノ基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、及びハロゲン原子等が挙げられる。以上の中で、本発明においては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ジアルキルアミノ基、水酸基、シアノ基、及びハロゲン原子が好ましく、メチル基、又はフェニル基が特に好ましい。
【0045】
本発明において、感光層における前記バインダー樹脂と前記電荷輸送物質との量比は、バインダー樹脂100重量部に対して電荷輸送物質30〜200重量部であるのが好ましく、40〜150重量部であるのが更に好ましい。
【0046】
又、本発明において、感光層には、必要に応じて、メチルバイオレット、ブリリアントグリーン、クリスタルバイオレット等のトリフェニルメタン系染料、メチレンブルー等のチアジン系染料、キニザリン等のキノン系染料等の染料、及び、クロラニル、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、1−ニトロアントラキノン、1−クロロ−5−ニトロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類、4−ニトロベンズアルデヒド等のアルデヒド類、9−ベンゾイルアントラセン、インダンジオン、3,5−ジニトロベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトラニトロベンブフェノン、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン等のケトン類、テトラシアノエチレン、テレフタラルマロノニトリル、9−アントリルメチリデンマロノニトリル、4−ニトロベンザルマロノニトリル、4−(p−ニトロベンゾイルオキシ)ベンザルマロノニトリル等のシアノ化合物類、3−ベンザルフタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)フタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等のフタリド類、ペリレン等の縮合多環芳香族化合物類、無水フタル酸、4−クロロナフタル酸無水物等の酸無水物類、置換又は無置換サリチル酸の金属塩又は金属錯体類、芳香族カルボン酸の金属塩又は金属錯体類等の電子吸引性化合物が添加されていてもよく、更に、例えば、フタル酸エステル、燐酸エステル、塩素化脂肪酸エステル、塩素化パラフィン、エポキシ化合物、メチルナフタレン等の可塑剤、及び、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、難燃剤、レベリング剤等の添加剤が添加されていてもよい。
【0047】
又、前記導電性支持体と前記感光層との間には下引き層が設けられていてもよく、その下引き層は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸金属塩、窒化チタン、窒化珪素等の窒化物、炭化チタン、炭化珪素等の炭化物等の微粒子が、通常、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース、カゼイン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等のバインダー樹脂中に分散されてなり、それらの微粒子とバインダー樹脂を溶媒或いは分散媒に溶解或いは分散させた塗布液として支持体表面に塗布し、乾燥させることにより、好ましくは10〜80重量%の微粒子濃度、好ましくは0.05〜20μm、更に好ましくは0.1〜10μmの厚みで形成される。
【0048】
尚、その際の微粒子としては、酸化チタン、又は酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。又、酸化チタンは、その表面が、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又は、ステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物によって処理されたものであってもよい。又、微粒子の粒子径としては、平均一次粒子径で10〜100nmであるのが好ましい。
【0049】
本発明における感光層のバインダー樹脂としての前記ポリアリレート樹脂は、単層型の場合の感光層に用いられ、積層型の場合は、電荷発生層或いは電荷輸送層のいずれに用いられていてもよいが、表面側に位置する層、又は電荷輸送層には少なくとも用いられているのが好ましい。
【0050】
又、前記各種の積層構造の感光体の表面には、更に、前述のバインダー樹脂等を主成分とする表面保護層が、好ましくは0.01〜20μm、更に好ましくは0.1〜10μmの厚みで設けられていてもよい。
【0051】
本発明において、感光層の形成は、単層型の場合には、前記電荷発生物質、前記電荷輸送物質、及び前記ポリアリレート樹脂、或いは更に必要に応じて用いられる他バインダー樹脂や添加剤等を、溶媒或いは分散媒に溶解或いは分散させた塗布液として、積層型の場合には、前記電荷発生物質、及び前記ポリアリレート樹脂或いは他バインダー樹脂や添加剤等を、溶媒或いは分散媒に溶解或いは分散させた塗布液として、又、前記電荷輸送物質、及び前記ポリアリレート樹脂或いは更に必要に応じて他バインダー樹脂や添加剤等を、溶媒或いは分散媒に溶解或いは分散させた塗布液として、前記支持体上に、或いはその上に形成された下引き層上に、乾燥膜厚として、単層型の場合、好ましくは5〜50μm、更に好ましくは10〜45μm、積層型の場合、電荷発生層は好ましくは0.1〜1μm、更に好ましくは0.15〜0.6μm、電荷輸送層は好ましくは5〜50μm、更に好ましくは10〜45μmとなるように塗布し、乾燥させることによりなされる。
【0052】
尚、その際の塗布液の作製に用いられる溶媒或いは分散媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール類、蟻酸メチル、酢酸エチル、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、エチルアセテート、ブチルアセテート等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0053】
又、その際の塗布法としては、例えば、ディッピング法、スプレー法、バーコーター法、ブレード法、ロールコーター法、ワイヤーバー法、ナイフコーター法等が挙げられる。
【0054】
尚、塗布液或いは分散液の作製において、単層型感光層用の場合、及び積層型感光層における電荷輸送層用の場合には、固形分濃度を好ましくは40重量%以下、更に好ましくは10〜35重量%、粘度を好ましくは50〜300cpsとし、又、積層型感光層における電荷発生層用の場合には、固形分濃度を好ましくは15重量%以下、更に好ましくは1〜10重量%、粘度を好ましくは0.1〜10cpsとする。
【0055】
本発明の電子写真感光体は、表面滑り性、耐摩耗性、及び電気的応答性に優れ、又、750〜850nmの波長領域の感度が高いことから、特に半導体レーザーを露光光源とする複写機やプリンター等に組み込まれて好適に使用される。
【0056】
本発明の電子写真感光体の使用において、帯電器としては、コロトロン、スコロトロン等のコロナ帯電器、帯電ロール、帯電ブラシ等の接触帯電器等が用いられ、露光は、ハロゲンランプ、蛍光灯、レーザー(半導体、He−Ne)、LED、感光体内部露光方式等により行われる。又、現像は、カスケード現像、一成分絶縁トナー現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像等の乾式現像方式や湿式現像方式等により、転写は、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等により、定着は、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着等により行われ、又、クリーニングは、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナー等を用いて行われる。
【0057】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
ポリアリレート樹脂の製造例1
1lビーカーに脱イオン水940mlと水酸化ナトリウム26.94gを仕込み、攪拌下に窒素バブリングしながら溶解させ、次いで、2,3,6−トリメチルフェノール1.79g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.34g、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン〔テトラメチルビスフェノールF〕61.40g、及び、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕2.88gを加え、攪拌下に溶解させた後、このアルカリ水溶液を2l反応槽に移し、ジクロロメタン470mlにテレフタル酸クロライド49.96g及びイソフタル酸クロライド2.63ggを溶解させた溶液を、20℃で攪拌下に1時間かけて滴下し、更に攪拌下に9時間反応させた後、酢酸8.88mlとジクロロメタン470mlを加えて反応を停止させ、更に30分の攪拌後、有機相を分離し、その有機相を0.1N水酸化ナトリウム水溶液940mlで2回洗浄し、更に、0.1N塩酸水溶液710mlで2回、脱イオン水710mlで2回洗浄した後、該有機相をメタノール5000ml中に注ぎ、析出したポリマーを濾別し、減圧下に乾燥させることにより、前記式(I) におけるm−フェニレン基である構成単位の割合が、p−フェニレン基である構成単位とm−フェニレン基である構成単位の合計に対して5モル%、前記一般式(II)におけるAがフェニレン基、nが1、Xがジメチルメチレン基、m−フェニレン基である構成単位の割合が、p−フェニレン基である構成単位とm−フェニレン基である構成単位の合計に対して5モル%であり、前記式(I) の構成単位の割合が95モル%、前記一般式(II)の構成単位の割合が5モル%であるポリアリレート樹脂を得た。又、得られたポリアリレート樹脂の粘度平均分子量を以下に示す方法で測定した結果、34,400であった。これらの結果を次表1に示した。
【0059】
粘度平均分子量
樹脂試料をジクロロメタンに溶解して濃度cが6.00g/lの溶液を調製し、ジクロロメタンの流下時間t0 が136.16秒のウベローデ型毛細管粘度計を用いて、20.0℃に設定した恒温槽中で樹脂溶液の流下時間t1 を測定し、以下の式に従って粘度平均分子量を算出した。
(1)相対粘度ηrel =t1 /t0
(2)比粘度ηsp=ηrel −1
(3)a=0.438×ηsp+1
(4)b=100×ηsp/c
(5)粘度η=b/a
(6)粘度平均分子量Mv=3207×η1.205
【0060】
ポリアリレート樹脂の製造例2
1lビーカーに脱イオン水600mlと水酸化ナトリウム7.25gを仕込み、攪拌下に窒素バブリングしながら溶解させ、次いで、2,4,6−トリメチルフェノール0.48g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.09g、及び、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン〔テトラメチルビスフェノールF〕17.39gを加え、攪拌下に溶解させた後、このアルカリ水溶液を1l反応槽に移し、ジクロロメタン300mlにテレフタル酸クロライド14.15gを溶解させた溶液を、20℃で攪拌下に1時間かけて滴下し、更に攪拌下に5時間反応させた後、酢酸2.39mlとジクロロメタン150mlを加えて反応を停止させ、更に30分の攪拌後、有機相を分離し、その有機相を0.1N水酸化ナトリウム水溶液340mlで2回洗浄し、更に、0.1N塩酸水溶液340mlで2回、脱イオン水340mlで2回洗浄した後、該有機相をメタノール2500ml中に注ぎ、析出したポリマーを濾別し、減圧下に乾燥させることにより、前記式(I) におけるm−フェニレン基である構成単位の割合、及び粘度平均分子量が次表1に示す通りのポリアリレート樹脂を得た。
【0061】
ポリアリレート樹脂の製造例3
1lビーカーに脱イオン水282mlと水酸化ナトリウム8.06gを仕込み、攪拌下に窒素バブリングしながら溶解させ、次いで、p−t−ブチルフェノール0.34g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.09g、及び、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン〔テトラメチルビスフェノールF〕19.84gを加え、攪拌下に溶解させた後、このアルカリ水溶液を1l反応槽に移し、ジクロロメタン141mlにテレフタル酸クロライド11.24g及びイソフタル酸クロライド4.82gを溶解させた溶液を、20℃で攪拌下に1時間かけて滴下し、更に攪拌下に3時間反応させた後、酢酸2.70mlとジクロロメタン140mlを加えて反応を停止させ、更に30分の攪拌後、有機相を分離し、その有機相を0.1N水酸化ナトリウム水溶液210mlで2回洗浄し、更に、0.1N塩酸水溶液210mlで2回、脱イオン水210mlで2回洗浄した後、該有機相をメタノール2000ml中に注ぎ、析出したポリマーを濾別し、減圧下に乾燥させることにより、前記式(I) におけるm−フェニレン基である構成単位の割合、及び粘度平均分子量が次表1に示す通りのポリアリレート樹脂を得た。
【0062】
ポリアリレート樹脂の製造例4
1lビーカーに脱イオン水600mlと水酸化ナトリウム7.26gを仕込み、攪拌下に窒素バブリングしながら溶解させ、次いで、p−t−ブチルフェノール0.55g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.09g、及び、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン〔テトラメチルビスフェノールF〕9.86gを加え、攪拌下に溶解させた後、このアルカリ水溶液を1l反応槽に移し、ジクロロメタン300mlにテレフタル酸クロライド7.22g及びイソフタル酸クロライド7.22gを溶解させた溶液を、20℃で攪拌下に1時間かけて滴下し、更に攪拌下に3時間反応させた後、酢酸2.39mlとジクロロメタン150mlを加えて反応を停止させ、更に30分の攪拌後、有機相を分離し、その有機相を0.1N水酸化ナトリウム水溶液600mlで2回洗浄し、更に、0.1N塩酸水溶液600mlで2回、脱イオン水600mlで2回洗浄した後、該有機相をメタノール2250ml中に注ぎ、析出したポリマーを濾別し、減圧下に乾燥させることにより、前記式(I) におけるm−フェニレン基である構成単位の割合、及び粘度平均分子量が次表1に示す通りのポリアリレート樹脂を得た。
【0063】
ポリアリレート樹脂の製造例5
1lビーカーに脱イオン水470mlと水酸化ナトリウム13.46gを仕込み、攪拌下に窒素バブリングしながら溶解させ、次いで、2,3,6−トリメチルフェノール1.35g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.17g、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン〔テトラメチルビスフェノールF〕30.27g、及び、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕1.42gを加え、攪拌下に溶解させた後、このアルカリ水溶液を1l反応槽に移し、ジクロロメタン235mlにテレフタル酸クロライド26.28gを溶解させた溶液を、20℃で攪拌下に1時間かけて滴下し、更に攪拌下に5時間反応させた後、酢酸4.44mlとジクロロメタン235mlを加えて反応を停止させ、更に30分の攪拌後、有機相を分離し、その有機相を0.1N水酸化ナトリウム水溶液350mlで2回洗浄し、更に、0.1N塩酸水溶液350mlで2回、脱イオン水350mlで2回洗浄した後、該有機相をメタノール2500ml中に注ぎ、析出したポリマーを濾別し、減圧下に乾燥させることにより、前記式(I) におけるm−フェニレン基である構成単位の割合、前記一般式(II)におけるA、X、及びm−フェニレン基である構成単位の割合、前記式(I) の構成単位と前記一般式(II)の構成単位の割合、並びに粘度平均分子量が次表1に示す通りのポリアリレート樹脂を得た。
【0064】
ポリアリレート樹脂の製造例6
1lビーカーに脱イオン水470mlと水酸化ナトリウム13.51gを仕込み、攪拌下に窒素バブリングしながら溶解させ、次いで、2,3,6−トリメチルフェノール1.36g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.17g、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン〔テトラメチルビスフェノールF〕28.78g、及び、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕2.85gを加え、攪拌下に溶解させた後、このアルカリ水溶液を1l反応槽に移し、ジクロロメタン235mlにテレフタル酸クロライド26.37gを溶解させた溶液を、20℃で攪拌下に1時間かけて滴下し、更に攪拌下に5時間反応させた後、酢酸4.45mlとジクロロメタン235mlを加えて反応を停止させ、更に30分の攪拌後、有機相を分離し、その有機相を0.1N水酸化ナトリウム水溶液350mlで2回洗浄し、更に、0.1N塩酸水溶液350mlで2回、脱イオン水350mlで2回洗浄した後、該有機相をメタノール2500ml中に注ぎ、析出したポリマーを濾別し、減圧下に乾燥させることにより、前記式(I) におけるm−フェニレン基である構成単位の割合、前記一般式(II)におけるA、X、及びm−フェニレン基である構成単位の割合、前記式(I) の構成単位と前記一般式(II)の構成単位の割合、並びに粘度平均分子量が次表1に示す通りのポリアリレート樹脂を得た。
【0065】
ポリアリレート樹脂の製造例7
1lビーカーに脱イオン水400mlと水酸化ナトリウム4.91gを仕込み、攪拌下に窒素バブリングしながら溶解させ、次いで、p−t−ブチルフェノール0.21g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.06g、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン〔テトラメチルビスフェノールF〕9.67g、及び、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕2.15gを加え、攪拌下に溶解させた後、このアルカリ水溶液を1l反応槽に移し、ジクロロメタン200mlにテレフタル酸クロライド4.89g及びイソフタル酸クロライド4.89gを溶解させた溶液を、20℃で攪拌下に1時間かけて滴下し、更に攪拌下に3時間反応させた後、酢酸1.62mlとジクロロメタン100mlを加えて反応を停止させ、更に30分の攪拌後、有機相を分離し、その有機相を0.1N水酸化ナトリウム水溶液450mlで2回洗浄し、更に、0.1N塩酸水溶液450mlで2回、脱イオン水450mlで2回洗浄した後、該有機相をメタノール1500ml中に注ぎ、析出したポリマーを濾別し、減圧下に乾燥させることにより、前記式(I) におけるm−フェニレン基である構成単位の割合、前記一般式(II)におけるA、X、及びm−フェニレン基である構成単位の割合、前記式(I) の構成単位と前記一般式(II)の構成単位の割合、並びに粘度平均分子量が次表1に示す通りのポリアリレート樹脂を得た。
【0066】
ポリアリレート樹脂の製造例8
1lビーカーに脱イオン水400mlと水酸化ナトリウム5.84gを仕込み、攪拌下に窒素バブリングしながら溶解させ、次いで、p−t−ブチルフェノール0.22g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.06g、及び、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕12.83gを加え、攪拌下に溶解させた後、このアルカリ水溶液を1l反応槽に移し、ジクロロメタン200mlにテレフタル酸クロライド10.37gを溶解させた溶液を、20℃で攪拌下に1時間かけて滴下し、更に攪拌下に3時間反応させた後、酢酸2.61mlとジクロロメタン100mlを加えて反応を停止させ、更に30分の攪拌後、有機相を分離し、その有機相を0.1N水酸化ナトリウム水溶液450mlで2回洗浄し、更に、0.1N塩酸水溶液450mlで2回、脱イオン水450mlで2回洗浄した後、該有機相をメタノール1500ml中に注ぎ、析出したポリマーを濾別し、減圧下に乾燥させることにより、前記一般式(II)におけるA、X、及びm−フェニレン基である構成単位の割合が次表1に示す通りのポリアリレート樹脂を得た。尚、ポリアリレート樹脂の粘度平均分子量は、樹脂がジクロロメタンに溶解せず、測定不能であった。
【0067】
【表1】
【0068】
実施例1、比較例1〜7
厚み75μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの表面に厚み700Åのアルミニウム蒸着層を形成した導電性支持体を用い、その支持体の蒸着層上に、以下に示す電荷発生層用塗布液をバーコーターにて塗布し、乾燥させて、厚み0.4μmの電荷発生層を形成した。
【0069】
電荷発生層用塗布液
電荷発生物質としての下記構造のβ型オキシチタニウムフタロシアニン10重量部に、4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2を150重量部を加え、サンドグラインドミルで粉砕し微粒化分散処理した後、バインダー樹脂として、ポリビニルブチラール(電気化学工業社製「デンカブチラール♯6000C」)5重量%濃度の1,2−ジメトキシエタン溶液100重量部とフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製「PKHH」)5重量%濃度の1,2−ジメトキシエタン溶液100重量部との混合物のうちの100重量部を加え、更に適量の1,2−ジメトキシエタンを加えて、固形分濃度を4重量%に調整した分散液。
【0070】
【化7】
【0071】
次いで、その電荷発生層上に、以下に示す電荷輸送層用塗布液をフィルムアプリケーターにて塗布し、120℃で20分間乾燥させて、厚み20μmの電荷輸送層を形成することにより、電子写真感光体を作製した。
【0072】
電荷輸送層用塗布液
電荷輸送物質として前記一般式(III) の下記構造の化合物を用い、その60重量部と、バインダー樹脂として、前記製造例1〜8で得られたポリアリレート樹脂100重量部とに、更にレベリング剤としてシリコーンオイル0.03重量部を加え、640重量部のテトラヒドロフラン/トルエン(重量比8/2)の混合溶媒に溶解させた溶液。
【0073】
【化8】
【0074】
その際の各電荷輸送物質塗布液について、テトラヒドロフラン/トルエン混合溶媒に対する各製造例のポリアリレート樹脂の溶解状態を目視観察することにより溶解性を評価し、更に、各電荷輸送物質塗布液を室温で2ケ月間静置した後の溶解状態を目視観察することにより保存安定性を評価し、それらの結果を次表2に示した。
【0075】
別に、得られた各電子写真感光体について、以下に示す方法で、表面滑り性、耐摩耗性、及び電気的応答性を評価し、結果を次表2に示した。
【0076】
表面滑り性
全自動摩擦摩耗試験機(協和界面科学社製「DFPM−SS」)を用い、感光層表面にトナーを0.1mg/cm2 の量で均一にのせた感光体試料表面に、厚み2mm、幅1cmのウレタンゴム片を45度の角度で押し当て、荷重200g、速度5mm/秒、ストローク20mm、繰り返し回数100回の条件で、摩擦係数を測定した。
【0077】
耐摩耗性
テーバー摩耗試験機(東洋精機社製)を用い、直径10cmの円状に切りだした感光体試料について、23℃、50%RHの雰囲気下で、摩耗輪CS−10F、荷重なしの条件で1000回回転後の感光層の摩耗量を測定した。
【0078】
電気的応答性
電子写真学会測定基準に従って作製された電子写真特性評価装置(「続電子写真技術の基礎と応用」電子写真学会編、コロナ社発行、404〜405頁)を用い、感光体をアルミニウム製ドラムに円筒状に貼り付け、ドラムと感光体の導電性支持体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数で回転させて、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を実施し、その際、初期表面電位を−700Vとし、露光は780nm、除電は660nmの単色光を用い、780nmの光を2.4μJ/cm2 で照射したときの表面電位(VL)を、25℃、50%RHの雰囲気下(VL:NN)、及び、5℃、10%RHの雰囲気下(VL:LL)で測定した。尚、露光から電位測定に要する時間を139ミリ秒とした。
【0079】
実施例2
電荷輸送物質として前記一般式(III) の下記構造の化合物(尚、左側のフェニルブタジエン鎖は括弧内の左端の2つのベンゼン環のいずれかに、右側のフェニルブタジエン鎖は括弧内の右端の2つのベンゼン環のいずれかに、それぞれ結合している。)を50重量部用い、更に、酸化防止剤(チバガイギー社製「イルガノックス1076」)を8重量部加えて調製した電荷輸送層用塗布液を用いた外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製して評価し、結果を次表2に示した。
【0080】
【化9】
【0081】
【表2】
【0082】
【発明の効果】
本発明によれば、感光層としての表面滑り性、耐摩耗性、及び電気的応答性に優れ、且つ、導電性支持体上に該感光層を形成するにおける塗布液調製時の溶媒溶解性、及び該塗布液の保存安定性に優れたバインダー樹脂を用いた電子写真感光体を提供することができる。
Claims (10)
- 導電性支持体上に感光層が形成された電子写真感光体であって、該感光層におけるバインダー樹脂が、下記式(I) で表される構成単位を主たる繰返し単位とし、且つ、下記一般式(II)で表される構成単位を10モル%未満の割合で含むポリアリレート樹脂であることを特徴とする電子写真感光体。
- 前記一般式(II)におけるAが置換基を有していてもよいフェニレン基であり、nが1であり、Xが置換基を有していてもよいアルキレン基である請求項1に記載の電子写真感光体。
- Xのアルキレン基が、ジアルキル置換メチレン基である請求項2に記載の電子写真感光体。
- 前記式(I) 及び前記一般式(II)において、右端のフェニレン基がm−フェニレン基である構成単位の割合が、p−フェニレン基である構成単位とm−フェニレン基である構成単位の合計に対して1〜9モル%である請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真感光体。
- ポリアリレート樹脂が、前記式(I) で表される構成単位91〜99モル%と、前記一般式(II)で表される構成単位9〜1モル%からなるものである請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真感光体。
- ポリアリレート樹脂が、粘度平均分子量10,000〜300,000のものである請求項1乃至5のいずれかに記載の電位写真感光体。
- 感光層が電荷発生物質と電荷輸送物質を含有し、該電荷輸送物質が、カルバゾール誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族或いは複素環アミン誘導体、スチルベン誘導体、及びブタジエン誘導体、並びにこれらの誘導体の複数が結合した化合物からなる群から選択されたいずれかの化合物である請求項1乃至6のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 電荷輸送物質が、芳香族或いは複素環アミン誘導体、スチルベン誘導体、及びブタジエン誘導体の複数が結合した化合物である請求項7に記載の電子写真感光体。
- 電荷輸送物質が、下記一般式(III) で表される化合物である請求項7又は8に記載の電子写真感光体。
- 感光層が、電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層と電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層との二層からなる積層型である請求項1乃至9のいずれかに記載の電子写真感光体。
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