JP3891621B2 - 窒化アルミニウム部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、接合部における熱伝導性の低下が殆ど無く、且つ高い接合強度を有し、半導体素子の放熱部材として好適な窒化アルミニウム部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化アルミニウム焼結体は、高い熱伝導性及び電気絶縁性を有するため、種々の装置、機器の放熱部材として使用されている。ところが、上記放熱部材として使用される窒化アルミニウム焼結体の形状は、板状、柱状等の単純な形状のみではなく、中空体や入り入り組んだ面を有する立体等の複雑な形状を要求される場合がある。
【0003】
特に、内部に空洞を有する中空の放熱部材を一体成形品として製造することは困難である。仮に、一体成形により製造しようとする場合は、先ず、窒化アルミニウム焼結体の塊状物を製造し、その内部を削り出すことによって得る方法が考えられるが、かかる方法は、生産効率が悪い上に歩留まりが低く、製造コストが高くなるという問題を有する。
【0004】
そこで、複雑な形状の窒化アルミニウム焼結体よりなる構造体を製造する方法としては、接合することによって内部に空洞を形成可能な形状のパーツをそれぞれ別個に製造し、これらを接合して上記構造体とする方法が考えられる。
【0005】
上記の接合方法として、従来より、次のような方法が提案されている。
【0006】
1.窒化アルミニウム焼結体を鉛ガラス等のガラス材を用いて接合する方法(特開平2−88471号公報)
2.窒化アルミニウム焼結体を、チタニウムを含有する銀ロウ等のロウ材及びシリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂を使用して接合する方法
3.窒化アルミニウム焼結体の接合面同士を密着させて加熱し、窒化アルミニウム粒界相成分の拡散により接合する拡散接合により接合する方法(特開平2−124778号公報)
4.接合しようとするセラミックグリーン体の接合面に、該セラミックグリーン体と同組成の粉末とバインダーを含有するペーストを塗布し、該グリーン体を接合面で密着せしめて乾燥した後、冷間静水等方加圧プレス処理に付し、次いで焼成処理する方法(特開平5−254947号公報)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記1に記載した、窒化アルミニウム焼結体同士の接合材としてガラス材を用いる方法によって得られる接合構造体は、かかるガラス材の熱伝導率が窒化アルミニウム焼結体よりも低いため、該窒化アルミニウム焼結体の重要な特性の熱伝導率が接合部において損なわれるという問題を有する。かかる接合部における熱伝導率の低下は、前記放熱部材への用途においては致命的である。即ち、前記中空体よりなる放熱部材においては、該中空体内部の冷媒と該中空体外部平面に接触する半導体素子等の固体物質との熱の授受が中空体の壁を介して行われるが、この場合、中空体外部に接触する固体物質の温度が上昇すると、該中空体の壁を通じて熱が拡散して内部の冷媒と熱交換が行われる。その際、該中空体を構成する壁の途中に熱伝導率の低い接合部が存在すると、上記接合部分において熱の拡散が阻害されるため、放熱部材の性能が低下するという問題を有する。
【0008】
また、上記2に記載した、窒化アルミニウム焼結体同士の接合材としてロウ材を用いる方法によって得られる接合構造体は、該ロウ材の導電性により、接合部において窒化アルミニウム焼結体の電気絶縁性が損なわれるばかりでなく、窒化アルミニウムとロウ材の熱膨張率差によって、耐熱衝撃性が劣る。一方、窒化アルミニウム焼結体同士の接合材として樹脂を用いる方法によって得られる接合構造体は、熱伝導率が接合部において損なわれる。また、接合部の強度及び耐熱性が接合部以外の窒化アルミニウム焼結体部分(以下「母材部分」)に比較して劣るという問題をも有している。
【0009】
更に、上記3に記載した、拡散による接合方法は、接合前に窒化アルミニウム焼結体の接合面同士の密着性を確保するために接合面を高精度で加工したり、接合のための熱処理等を必要とし、接合部において、満足される熱伝導性、接着強度を確保するまで上記処理を行うことが困難である。
【0010】
更にまた、上記4に記載した、接合面に接合されるセラミックグリーン体間に、該グリーン体と同組成の粉末とバインダーを含有するペーストを介してプレス処理により加圧した後、焼成する方法によって得られる接合構造体は、接合部の強度については十分満足できるが、該接合部における熱伝導性は十分でなく、未だ改良の余地があった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた。その結果、2以上の窒化アルミニウムのグリーン体の少なくとも一方の接合面に、該グリーン体と同一組成のペーストを塗布し、脱泡処理を行った後、該グリーン体を接合面で密着せしめ、乾燥、脱脂及び焼成することにより、接合部における熱伝導率が極めて高い窒化アルミニウム部材を得ることに成功し、本発明を提案するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、窒化アルミニウム焼結体よりなる母材間の接合部が窒化アルミニウム焼結体よりなり、該接合部を介して測定される熱伝導率が母材の熱伝導率の95%以上であり、内部に空洞を有し、該空洞は2つ以上の開口部により外部とつながっており、且つ、表面に凹部を有することを特徴とする窒化アルミニウム部材である。
【0013】
尚、本発明において、熱伝導率は、JIS R 1611(一次元のレーザーフラッシュ法)によって測定した値である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において、窒化アルミニウム部材の形状は特に制限されない。例えば、図1に示すような直方体であってもよく、その他、立方体、多角柱状、円柱状等の任意の形状であってよい。図1に示す窒化アルミニウム部材1は、図2に示すような1−A及び1−Bの2つの部品が接合部3において接合されて構成されている。そして、内部には図2に示すように空洞6を有しており、該空洞6は開口部2および2′により外部とつながっている。この開口部は、本発明の窒化アルミニウム部材を放熱部材として使用する場合に、熱交換のための冷媒を窒化アルミニウム部材の内部の空洞に供給または外部に排出するための供給口および排出口となる。
【0015】
本発明においては、空洞6は、窒化アルミニウム部材の内部を満遍無く冷媒が流れるように形成されていればよい。したがって、図2に示すように、窒化アルミニウム部材の内部に広がる一つの大きな空洞6を形成させてもよく、また、図4に示すように断面積の比較的小さな空洞を窒化アルミニウム部材の内部に折返して蛇行させて形成させることもできる。空洞6の数は一つに制限されることはなく、窒化アルミニウム部材の内部にそれぞれ独立した複数個の空洞が設けられていてもよい。
【0016】
窒化アルミニウム部材の内部の空洞6と外部とをつなげる開口部2および2′は、一つの空洞につき冷媒の供給口と排出口の少なくとも2個設けられる。複数個の空洞がそれぞれ独立している場合は、それぞれの空洞について開口部が2個以上設けられる。
【0017】
本発明の窒化アルミニウム部材は表面に凹部4を有する。この凹部4には半導体素子等の放熱対象物が搭載される。放熱対象物を凹部4の中に埋没させる必要がある場合、さらに、放熱対象物を搭載した凹部4を基板等で覆う場合には、凹部の深さは搭載する放熱対象物の高さよりも深くすればよい。凹部は、通常は図1に示すように窒化アルミニウム部材の上面に設けられるが、下面に設けることもできる。また、上下両面に設けることもできる。凹部の数は特に制限されず、搭載する放熱対象物の数、大きさ、種類、電気的絶縁性の必要性等により適宜決定すればよい。
【0018】
さらに、本発明の窒化アルミニウム部材の凹部4には、必要により放熱対象物と接触する凹部の底面や外周突部5に金属層が設けられる。この金属層は、ハンダ付け等の方法による放熱対象物の搭載のために、また、放熱対象物を搭載した凹部4を基板等で覆う場合の基板との接合のために利用される。
【0019】
金属層を形成する金属の種類は、窒化アルミニウムのメタライズに使用される公知の金属を用いることができる。例えば、チタニウムやジルコニウムを窒化アルミニウムとの接合層とした金属薄膜の積層体、具体的には、チタニウム/白金/金、チタニウム/ニッケル/金、ジルコニウム/白金/金、ジルコニウム/ニッケル/金等の組み合わせの金属薄膜の積層体を使用することができる。さらに、その上に金・スズ、鉛・スズ、金・ゲルマニウム等の各種のハンダ組成の合金膜を形成したものも使用可能である。
【0020】
本発明の窒化アルミニウム部材は、上記接合部を介して測定される熱伝導率が、窒化アルミニウム焼結体よりなる母材の熱伝導率の95%以上と極めて高い。従来より提案されている接合方法によって得られる窒化アルミニウム接合構造体において、接合部を介して測定される熱伝導率がこのように高い値を示す事例の報告はなく、後記する製造方法によって初めて達成されたものである。
【0021】
また、接合部においてかかる高い熱伝導性を示す本発明の窒化アルミニウム部材は、接合強度においても優れており、該接合部を中心として測定される3点曲げ強度において20kg/mm2以上の強度を有する。
【0022】
但し、上記曲げ強度と本発明の特徴である熱伝導率とは、必ずしも相関性はなく、例えば、本発明の製造方法に依らない公知の方法により得られた窒化アルミニウム焼結体の接合体は、該接合部の曲げ強度が母材と同等の強度に達した場合でも、接合部の熱伝導率は低く、本発明の目的を達成することはできない。
【0023】
また、本発明の窒化アルミニウム部材の接合部の界面は、走査型顕微鏡によって観察した結果、接合界面は完全に消失し判別出来ない程度に均質化されている。
【0024】
本発明の窒化アルミニウム部材は、以下の方法によって製造することができる。即ち、接合することにより内部に空洞が形成される2以上の窒化アルミニウムのグリーン体であって、上面および/または下面に位置するグリーン体の他のグリーン体との接合面とは反対側の表面に凹部が形成されてなり、さらに、内部の空洞と外部とをつなげる開口部を形成されたグリーン体の少なくとも一方の接合面に、該窒化アルミニウム粉末を主成分として含有するペーストを塗布し、脱泡処理を行った後、該グリーン体を接合面で密着せしめ、乾燥、脱脂及び焼成する方法である。
【0025】
上記方法に用いる窒化アルミニウムグリーン体は、目的とする窒化アルミニウム部材を構成するためのパーツ毎に成形される。例えば、図1の窒化アルミニウム部材を得る場合は、図2に示すような、1−A、1−Bの形状のパーツにそれぞれ成形され、また、図3の窒化アルミニウム部材を得る場合は、図4に示すような、1−A、1−Bおよび1−Cの形状のパーツにそれぞれ成形される。
【0026】
上記グリーン体の組成は、窒化アルミニウム粉末及び有機バインダーよりなり、必要に応じて焼結助剤、可塑剤等を配合した組成が一般に採用される。上記有機バインダーとしては、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、アクリル樹脂、エチルセルロース、ワックス類等の公知のものが挙げられる。
【0027】
また、焼結助剤としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム等のアルカリ土類金属化合物、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化エルビウム、酸化イッテルビウム、酸化ホルミウム、酸化ジスプロシウム、酸化ガドリニウム等の希土類元素化合物、アルミン酸カルシウム等の複合酸化物の一種又は二種以上が一般に使用される。更に、可塑剤としては、フタール酸系、グリコール系等の可塑剤が挙げられる。
【0028】
上記グリーン体中における有機バインダーの配合割合は、グリーン体の強度を維持するに十分な量であればよいが、後の接合の際にグリーン体の接合面に塗布される、窒化アルミニウム粉末を主成分として含有するペースト中のビヒクルがグリーン体に吸収されることによる乾燥を抑制し、脱泡処理の時間を確保するために、少なくとも1重量%以上、望ましくは4重量%以上含有されることが好ましく、かかる範囲内で前記成形方法に応じてその配合割合を適宜選択すればよい。但し、脱脂時の残存炭素の影響を避けるために該有機バインダーの割合は20重量%以下、特に6重量%以下とすることが望ましい。
【0029】
また、上記グリーン体中への焼結助剤の配合割合は、0〜10重量%、特に、2〜7重量%が好ましい。可塑剤は、前記有機バインダーに対して0〜80重量%、特に、10〜50重量%が適当である。
【0030】
上記グリーン体の成形方法は特に制限されず、公知の成形方法が採用される。例えば、成形方法としては、油圧プレス成形、冷間静水圧等方加圧成形、押し出し成形、射出成形及び鋳込み成形等、公知の成形方法が採用される。
【0031】
かかる成形方法において使用される成形材料の形態は、前記組成にビヒクルを添加して湿潤化した粉体の形態、前記組成にビヒクルを添加してペースト状、或いは粘土状に調製された形態、ビヒクルを使用しない単なる粉体混合物としての形態等が挙げられ、上記成形方法に応じて好適な形態を選択して使用すればよい。上記ビヒクルとしては、窒化アルミニウムと反応せず、且つ蒸発し易い有機溶剤が好適に使用される。一般に、沸点が150℃未満、好ましくは120℃以下、特に、40〜120℃のものが好適である。上記ビヒクルを具体的に例示すれば、トルエン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0032】
本発明の窒化アルミニウム部材の製造方法において、窒化アルミニウムのグリーン体の接合面に塗布されるペーストの組成は、窒化アルミニウム粉末を主成分として含有し、これにビヒクルを添加してペースト状としたものが特に制限なく使用されるが、有機バインダー等の有機化合物成分を除いた固形分に関して、グリーン体と同一組成の固形分を含有する組成、例えば、窒化アルミニウムに対する焼結助剤の配合割合が同一である組成とすることが好ましい。
【0033】
上記ペーストを構成するビヒクルとしては、窒化アルミニウムと反応しない有機溶剤が一般に使用される。特に好ましくは、後記の脱泡処理において、脱泡のための放置時間内にビヒクルが乾燥しないように、室温での蒸気圧が低く乾燥し難いもの、一般に、沸点が150℃以上、好ましくは、180℃以上、特に180〜300℃のものが好適である。上記ビヒクルを具体的に例示すれば、テルピネオール、n−ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。
【0034】
該ペーストの固形分濃度は、グリーン体へのペーストの塗布方法によって一概に規定できないが、40〜85重量%程度が好ましい。また、上記固形分濃度において、ペーストの好適な粘度は、10000〜150000センチポイズ、特に、20000〜50000センチポイズである。即ち、該粘度が10000センチポイズ未満の場合、一回の塗布では接合面への塗布厚みを十分確保することが困難となる傾向がある。また、ペーストの粘度が150000センチポイズを越えると、後記の脱泡処理において、脱泡に長時間を要したり、場合によっては脱泡が不完全となる傾向がある。
【0035】
また、本発明において接合面に塗布されるペーストは、後記の脱泡処理を効率よく行い、得られる窒化アルミニウム部材の接合部における欠陥を低減するため、塗布前にも脱泡処理を行うことが好ましい。
【0036】
本発明の窒化アルミニウム部材の製造方法では、グリーン体の接合面に上記ペーストを塗布する操作が行われる。かかる接合面にペーストを塗布する態様は、少なくとも一方の接合面にペーストを塗布すればよいが、接合する両方の面に塗布する方がより望ましい。
【0037】
グリーン体へのペーストの塗布方法としては、刷毛塗り法、ローラー塗り法、浸漬法、噴霧法、印刷法、スピンコート法等の公知の方法によって行える。望ましくは、均一な塗布厚みが得られるローラー塗り法及び浸漬法が好ましい。更に望ましくは、印刷法による塗布方法を採用することがペーストの厚みを均一にするためにより好ましい。
【0038】
上記グリーン体表面に塗布するペーストの厚みは特に制限されないが、塗布後1分間以上、好ましくは、3分間以上湿潤状態を維持し得る厚みとすることが、後記の脱泡処理において、該ペースト中の気泡の除去及び表面の平滑化を図ることが出来、接合部を介して測定される熱伝導率が、母材部分の熱伝導率の95%以上の窒化アルミニウム部材を再現性良く得るために好ましい。
【0039】
かかる厚みは、ペーストを構成するビヒクルの沸点により一概に限定することができないが、一般には、20〜500μm、好ましくは50〜300μmである。即ち、塗布されたペーストの乾燥は、ビヒクルの蒸発による乾燥よりも、ビヒクルのグリーン体への吸収による乾燥が支配的である。よって、塗布されたペースト表面の乾燥を抑制するためには、ペーストの厚みをある程度厚くすることが好ましい。
【0040】
本発明の製造方法において、脱泡処理は、グリーンシート表面に塗布したペースト中に含まれる気泡を除去する方法が特に制限なく採用される。一般には、常圧の場合、ペーストを塗布後、2分間以上、好ましくは3分間以上、更に好ましくは5分間以上静置することが好ましい。尚、減圧下で静置する場合は、上記時間を短縮することができる。上記脱泡を減圧下に行う場合、圧力は5×104〜105Paの減圧で行うことが好適である。また、脱泡処理における温度は、室温付近の温度が一般に採用されるが、0〜50℃、好ましくは、10〜25℃の範囲が適当である。
【0041】
上記脱泡処理を行った後、グリーン体に塗布されたペーストが乾燥する前、即ち、ペーストによりグリーン体表面が湿潤している状態で、グリーン体の各々の接合面を密着させる。かかる密着の圧力は、グリーン体が破損しない範囲が採用される。一般には、10〜1000g/cm2、特に、15〜200g/cm2が適当である。
【0042】
次に、接合面を密着したグリーン体は、乾燥、脱脂、焼成の操作を順次実施される。上記乾燥、脱脂、焼成の条件は公知の条件が特に制限なく採用される。例えば、乾燥は、室温から使用したビヒクルの沸点未満の温度範囲で実施することが好ましい。また、脱脂は、一般に、窒素等の不活性雰囲気中または空気中で行うことが望ましく、その際の脱脂温度は上記の雰囲気に応じて300〜1000℃の範囲より選択して実施すればよい。更に、焼結は、窒素等の非酸化雰囲気中、1700〜1950℃の範囲より選ばれた任意の温度で実施するのが一般的である。
【0043】
このようにして作成した窒化アルミニウム部材は、母材部分に比較してほとんど変わらない熱伝導率及び強度を有する接合部を有している。
【0044】
以上の方法によって製造された本発明の窒化アルミニウム部材の接合部の界面は、走査型顕微鏡によって観察した結果、接合界面は完全に消失し判別出来ない程度に均質化されている。
【0045】
上記の結果は、グリーン体の構成粉末と同一組成の構成紛末と有機バインダーを含有するペーストをグリーン体表面に塗布したとき、ペーストがグリーン体表面の微細な凹凸部を満たし、さらにはグリーン体表面より内部に浸透することによりペーストとグリーン体との接合界面が消失し、あたかも一体成形されたかのようになるものと推定している。また、接合部を形成するペーストの脱泡処理を行うことにより接合部の欠陥をなくすことが出来、高熱伝導性及び高強度の接合部を有する窒化アルミニウム部材を得ることが出来る。
【0046】
【発明の効果】
以上の説明より理解されるように、本発明の窒化アルミニウム部材は、母材の窒化アルミニウム焼結体に対して、接合部における熱伝導性の低下が極めて少なく、しかも、高い接合強度を有するものである。さらに、本発明の窒化アルミニウム部材は、凹部に高出力の半導体素子を搭載したときに、高出力の半導体素子の作動時に発生する熱を、窒化アルミニウム焼結体を通して空洞を流れる冷媒に効率よく熱伝導することができる。したがって、本発明の窒化アルミニウム部材は、半導体素子の放熱部材として好適に使用することができる。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
なお、実施例において、窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率の測定は一次元のレーザーフラッシュ法を用い、LF/TCM FA8510B(理学電気株式会社)により行った。また、3点曲げ強さの測定は、JIS R1601に従って行った。
【0049】
実施例1
図1に示す構造の窒化アルミニウム部材を以下の方法によって製造した。窒化アルミニウム粉末((株)トクヤマ製、Hグレード)100重量部、焼結助剤として酸化イットリウム微粉末5重量部及び有機バインダーとしてアクリル酸メチルエステル4重量部より成る組成物を成形型に充填し、圧力1000kg/cm2でプレス成形することにより、図2に示すような空洞6を形成するための空部と上面に凹部4を有するグリーン体と、空部のみを有するグリーン体を成形した。次いで、後者のグリーン体の側面にパイプ取り付け用の開口部2および2′を加工して設けた。
【0050】
一方、ペーストは、窒化アルミニウム100重量部、焼結助剤として酸化イットリウム微粉末5重量部、有機バインダーとしてエチルセルロース(グレード 4センチポイズ)3重量部及びビヒクルとしてテルピネオール50重量部を混合して調製した。得られたペーストの粘度は、20000センチポイズであった。上記方法により得られたペーストを80メッシュのスクリーンを用いて、前記グリーン体のそれぞれの接合面に約70μmの厚さで印刷した。ペースト印刷後、9.33×104Paの減圧下に2分間静置して脱泡処理を行うことにより、印刷されたペースト中の気泡の除去及びペースト表面の平滑化を図った。その後に、30g/cm2の圧力でグリーン体の接合面を密着させた。密着せしめたグリーン体を一昼夜室温で乾燥し、大気中600℃の条件で脱脂し、窒素雰囲気中1830℃の条件で焼成して、60mm×60mm×40mmで上面に50mm×50mm×15mm(深さ)の凹部を有する窒化アルミニウム部材を得た。
【0051】
得られた窒化アルミニウム部材の熱伝導率の測定は一次元法で行った。測定用のサンプルの大きさは、φ10×t4mmであり、このサンプルは、上記方法により得られた窒化アルミニウム部材から接合部を含み、且つ該接合部がサンプルの厚みの中央となるように切り出した。該接合部を含まない母材部分よりなる同サイズのサンプルも作成して、熱伝導率を測定した。
【0052】
また、接合部の曲げ強度の測定は、接合部が中央に来るようにサンプルを作成し、3点曲げ法で行った。その結果を表1に示した。接合部の熱伝導率は母材部分の100%、曲げ強さは母材部分の99%であった。
【0053】
さらに、窒化アルミニウム部材の凹部が形成された上面全体にチタン(0.2μm)、ニッケル(2μm)、金(0.3μm)をスパッタリングにより順次成膜し、次いで、凹部の底の部分にのみ金属層が残るように湿式エッチング法によりエッチングした。次いで、金属層の上に120Wのヒーターをハンダ付けした。窒化アルミニウム部材の2個の開口部には、樹脂製のパイプをエポキシ樹脂で接着し、冷却水の供給口および排出口とした。
【0054】
20℃の水を150cc/minの流量で冷却水の供給口に供給し、ヒーターに通電した。定常状態になった後のヒーター温度は70℃であり、排出口から出る水の温度は29℃であった。
【0055】
比較例
実施例1において、グリーン体の接合面にペーストを印刷後、脱気処理を行うことなく、直ちに2個のグリーン体のそれぞれの接合面を、30g/cm2の圧力で密着させた。以下、実施例1と同様な方法により、乾燥、脱脂、及び焼成して窒化アルミニウム部材を得た。得られた窒化アルミニウム部材について、実施例1と同様にして、熱伝導率、曲げ強度の測定を行った。その結果を表1に示した。接合部の熱伝導率は母材部分の90%、曲げ強さは母材部分の46%であった。
【0056】
実施例2
実施例1において、グリーン体の接合面にペーストを塗布後、脱泡処理の時間を3分間に代え、且つ減圧を行わずに常圧で行った以外は、同様にして窒化アルミニウム部材を得た。得られた窒化アルミニウム部材について、実施例1と同様にして接合部の熱伝導率、曲げ強さを測定した。その結果を表1に示した。接合部の熱伝導率は母材部分と同等、曲げ強さは母材部分の87%であった。
【0057】
実施例3
実施例1において、グリーン体の接合面にペーストを塗布後、脱泡処理の時間を7分間に代え、且つ減圧を行わずに常圧で行った以外は、同様にして窒化アルミニウム部材を得た。得られた窒化アルミニウム部材について、実施例1と同様にして接合部の熱伝導率、曲げ強さを測定した。その結果を表1に示した。接合部の熱伝導率は母材部分と同等、曲げ強さは母材部分の94%であった。
【0058】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の窒化アルミニウム部材の代表的な態様を示す斜視図
【図2】図1の窒化アルミニウム部材の接合前の状態を示す斜視図
【図3】本発明の窒化アルミニウム部材の他の代表的な態様を示す斜視図
【図4】図3の窒化アルミニウム部材の接合前の状態を示す斜視図
【符号の説明】
1 窒化アルミニウム部材
1−A、1−B、1−C 窒化アルミニウム部材のパーツ
2、2′ 開口部
3 接合部
4 凹部
5 凹部の外周突部
6 空洞
Claims (2)
- 窒化アルミニウム焼結体よりなる母材間の接合部が窒化アルミニウム焼結体よりなり、該接合部を介して測定される熱伝導率が母材の熱伝導率の95%以上であり、内部に空洞を有し、該空洞は2つ以上の開口部により外部とつながっており、且つ、表面に凹部を有することを特徴とする窒化アルミニウム部材。
- 凹部の底部に金属層を有する請求項1記載の窒化アルミニウム部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP34022396A JP3891621B2 (ja) | 1996-12-19 | 1996-12-19 | 窒化アルミニウム部材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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