JP3890992B2 - マザーガラス基板の切断用溝形成方法及びその装置 - Google Patents

マザーガラス基板の切断用溝形成方法及びその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マザーガラス基板を複数の基板に分割するために、前記マザーガラス基板に対してカッターを用いて切断用溝を形成する切断用溝形成方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、一枚のマザーガラス基板から、複数枚の基板を分割形成するために、前記マザーガラス基板に対してカッターを用いて切断用溝を形成するということが一般的に行われている。この分割作業においては、前記カッターによって前記マザーガラス基板に切断用溝が形成された後に、前記マザーガラス基板に外力が付加されることで、前記切断用溝を境界として前記マザーガラス基板が分割される。
【0003】
このとき、分割形成された前記マザーガラス基板の分割境界部分の形状を、前記切断用溝に沿った精度の良好なものとするためには、前記切断用溝の深さは、前記マザーガラス基板の板厚に対して十分に確保されるとともに、前記溝全長に亘って均一なものとされることが望ましい。
【0004】
前記切断用溝の形成工程では、前記マザーガラス基板の周縁部を廃材部(無効部分)として設定する場合があるが、歩留まりの向上を目的として、前記廃材部を極力小さく設定したり、更には、前記廃材部を廃止するとともに前記マザーガラス基板の全域を使用して複数の基板を分割形成する場合がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記切断用溝の形成工程において前記カッターを前記マザーガラス基板に接触(当接)させる瞬間においては、この接触時の衝撃により前記マザーガラス基板の前記接触箇所にひび割れや欠け等の破損が生じ易くなるとともに、前記切断用溝の深さのばらつきも大きくなり易くなる。つまり、前記廃材部が廃止された場合には、分割形成された複数の基板(有効部分)において、前述の破損や、前記切断用溝の深さのばらつきに起因する外形形状の大きなばらつきが生じやすくなる。これは、マザーガラス基板を複数の基板に分割する際における歩留まり向上の阻害要因となる。
【0006】
一方、前記廃材部が設けられた場合には、該廃材部において前記カッターを前記マザーガラス基板に接触させることが可能となる。この場合、前記破損等の発生点を前記廃材部内とすることが可能になるが、前記廃材部の大きさが不足すると、分割形成される基板(有効部分)側に対して前記廃材部側から前記破損等が波及する虞がある。
【0007】
また、前記カッターを前記マザーガラス基板に接触させる瞬間における衝撃を和らげるために、前記接触時において、前記マザーガラス基板に対する前記カッターの押接力を加減した場合、この加減によって前記切断用溝の深さのばらつきが大きくなるという不都合がある。これらの不都合は、表示パネル用のガラス基板のように、薄いガラス基板が採用された場合に大きく影響する。
【0008】
本発明の目的は、マザーガラス基板を複数の基板に分割する際の歩留まりをよくすることができるマザーガラス基板の切断用溝形成方法及びその装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、マザーガラス基板を複数の基板に分割するために、前記マザーガラス基板に対してカッターを用いて切断用溝を形成する切断用溝形成方法を対象としている。この方法では、前記カッターの移動方向における前記マザーガラス基板の少なくとも一端側に対して当接した状態でダミー部材が並設される。そして、前記カッターを、前記マザーガラス基板及び前記ダミー部材に対して、前記両者の当接箇所を横切るようにして移動かつ押接させるようにしている。
【0010】
この発明によれば、カッターは、マザーガラス基板及びダミー部材に対して、前記両者の当接箇所を横切るようにして移動かつ押接される。そのため、例えば、前記ダミー部材が並設されていない場合と比較して、前記カッターが前記マザーガラス基板の端部を通過する際に前記マザーガラス基板に対して与える衝撃が小さくなる。したがって、前記衝撃による前記マザーガラス基板のひび割れ等の破損が抑止されるとともに切断用溝の深さのばらつきが小さくなる。
【0011】
また、前記衝撃を和らげるために、前記カッターが前記マザーガラス基板の端部を通過する際において、前記マザーガラス基板に対する前記カッターの押接力を加減する必要がなくなる。したがって、この加減による前記切断用溝の深さのばらつきをなくすることが可能になる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記ダミー部材は、前記カッターの移動方向における前記マザーガラス基板の両端側に対して当接した状態で並設されている。
【0013】
この発明によれば、マザーガラス基板の端部において、ダミー部材側から前記マザーガラス基板側にカッターが侵入する箇所と、前記マザーガラス基板側から前記ダミー部材側に離脱する箇所との両方での前記破損抑止や切断用溝の深さのばらつきの抑制が可能になる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の発明において、前記ダミー部材と前記マザーガラス基板とは、それらの厚みが互いに同等に設定されている。
【0015】
この発明によれば、ダミー部材とマザーガラス基板との当接箇所における段差がほぼ皆無となる。そのため、例えば、前記段差が或る程度存在する場合と比較して、カッターが前記当接箇所を通過する際に前記マザーガラス基板に対して与える衝撃が小さくなる。
【0016】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記ダミー部材と前記マザーガラス基板とは、それらの硬さが互いに同等に設定されている。
【0017】
この発明によれば、ダミー部材とマザーガラス基板との硬度差がほぼ皆無となる。そのため、例えば、前記硬度差が或る程度存在する場合と比較して、カッターが前記当接箇所を通過する際に前記マザーガラス基板に対して与える衝撃が小さくなる。
【0018】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明において、前記ダミー部材には、前記カッターが押接されることによって溝が形成される。前記ダミー部材は、形成後の前記溝に対する前記カッターの押接を回避するために、前記マザーガラス基板に対する当接位置がずらされる。
【0019】
この発明によれば、ダミー部材において、カッターの押接によって溝が形成された後に、この形成された溝に対して前記カッターが押接されることがなくなる。そのため、前記溝に対する前記カッターの押接による前記ダミー部材の割れ等の破損がなくなる。
【0020】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明において、前記ダミー部材は、前記カッターをその移動方向にガイド可能なガイド溝を備えている。また、前記ガイド溝は、前記カッターの先端には当接しないように形成されている。
【0021】
この発明によれば、カッターをその移動方向にガイド可能なガイド溝は、前記カッターの先端には当接しないように形成されている。そのため、例えばカッターの先端がダミー部材に当接する場合に比較して、ダミー部材の交換回数を大幅に減少させることが可能になる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、マザーガラス基板を複数の基板に分割するために、前記マザーガラス基板に対して切断用溝を形成する切断用溝形成装置を対象としている。前記装置は、前記マザーガラス基板に押接させることで前記切断用溝を形成可能なカッターと、前記カッターを前記切断用溝の形成方向にガイド可能なガイド機構と、前記マザーガラス基板を載置可能なテーブルとを備えている。前記テーブル上には、前記カッターの移動方向における前記マザーガラス基板の少なくとも一端側に対して当接した状態でダミー部材を並設可能なダミー部材並設部が設けられている。また、前記ガイド機構は、前記マザーガラス基板、及び、前記ダミー部材並設部に配置された前記ダミー部材に対して、前記両者の当接箇所を横切るようにして前記カッターを移動かつ押接させるように構成されている。
【0023】
この発明によれば、カッターは、マザーガラス基板及びダミー部材に対して、前記両者の当接箇所を横切るようにして移動かつ押接される。そのため、例えば、前記ダミー部材が並設されていない場合と比較して、前記カッターが前記マザーガラス基板の端部を通過する際に前記マザーガラス基板に対して与える衝撃が小さくなる。したがって、前記衝撃による前記マザーガラス基板のひび割れ等の破損が抑止されるとともに切断用溝の深さのばらつきが小さくなる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
図1に示すように、切断用溝形成装置11は、図示しない基台上において水平方向にスライド移動可能に搭載されたテーブル12を備えている。テーブル12上のワーク搭載面12Aには、後述するマザーガラス基板13等が載置される。ワーク搭載面12Aは、水平面とされている。
【0025】
テーブル12の上方には、マザーガラス基板13を複数の基板に分割するために、マザーガラス基板13に対して切断用溝を形成するためのカッター14を備えたヘッド部15が配設されている。ヘッド部15は、スライダアーム16を介してスライダ17に連結固定されている。
【0026】
スライダ17は、前記基台に固設された略円柱状のガイドバー18に対して、該ガイドバー18の軸線方向に沿ってスライド移動可能に装着されている。スライダ17は、図示しないエアシリンダによる駆動に基づいて、前記軸線方向に移動され得るようになっている。また、ガイドバー18は、その軸線が水平方向に沿って延在するように配置されている。すなわち、ヘッド部15(カッター14)は、ワーク搭載面12Aと平行なガイドバー18の軸線方向に沿って移動可能に構成されている。ヘッド部15、スライダアーム16、スライダ17、ガイドバー18等は、ガイド機構を構成している。
【0027】
本実施形態では、以下、ガイドバー18の軸線方向をY方向ということにする。また、水平面に平行でかつY方向に直行する方向をX方向ということにする。なお、テーブル12は、X方向及びY方向にスライド移動可能であるとともに、水平面上において回転移動され得るようになっている。以下、この回転移動における回転方向を、θ方向ということにする。テーブル12は、図示しないアクチェータ(テーブルアクチェータ)による駆動に基づいて、X方向、Y方向及びθ方向に移動され得るようになっている。
【0028】
ヘッド部15は、ヘッド部本体19、荷重ウェイト20、及び、前記カッター14を支持するホルダ21を備えている。ホルダ21はロッド22(図2参照)を介して荷重ウェイト20と一体的に連結固定されている。互いに一体的に連結固定された荷重ウェイト20及びホルダ21は、ヘッド部本体19に対して鉛直(上下)方向にスライド移動可能に支持されている。荷重ウェイト20及びホルダ21は、ヘッド部本体19に設けられた図示しないアクチェータ(ヘッドアクチェータ)によって、鉛直上方に持ち上げられ得るようになっている。
【0029】
カッター14は、略円板状を呈しており、前記ホルダ21において回動可能に支持されている。図2は、カッター14をY方向に見た状態の模式正面図である。カッター14は、X方向に平行な軸線を中心として回動可能に支持されている。カッター14の外周部はテーパ状に形成されており、その外周先端はダイヤモンドによって構成されている。カッター14は、マザーガラス基板13に対して前記外周先端を押接させることで前記切断用溝を形成可能な構成となっている。つまり、前記切断用溝形成方向は、Y方向に一致する。
【0030】
図1及び図3に示すように、テーブル12の上面には、ダミー部材ストッパ部12Bが上方に向けて突設されている。テーブル12の上面においてダミー部材ストッパ部12Bと並設されたワーク搭載面12Aの中ほどには、前述のマザーガラス基板13が載置されている。マザーガラス基板13は、平面形状が長方形状の透明なアルカリガラスからなっている。本実施形態では、マザーガラス基板13は、その長辺がX方向に、短辺がY方向に沿うように配置されている。マザーガラス基板13の板厚は、0.7mm程度に設定されている。
【0031】
ワーク搭載面12A上において、Y方向におけるマザーガラス基板13の両端側には、平面形状がマザーガラス基板13よりも細長い長方形状のダミー部材23がそれぞれ並設されている。各ダミー部材23は、マザーガラス基板13と同材質(すなわち硬さが同じ)かつ同板厚とされている。各ダミー部材23は、マザーガラス基板13の端部(Y方向を臨む端面)に対して当接した状態となっている。各ダミー部材23の長辺の長さは、マザーガラス基板13のそれと比較して長く設定されている。各ダミー部材23は、マザーガラス基板13の前記端部に対して、X方向全域に亘って当接されている。なお、図1では、図示の都合上、マザーガラス基板13及びダミー部材23は、それらの板厚が実際のものよりも大きい(厚い)状態で示されている。
【0032】
ワーク搭載面12Aにおいて、Y方向におけるマザーガラス基板13の前記両端部よりも外側(Y方向における外側)の領域は、ダミー部材23を載置(並設)可能なダミー部材並設部として機能している。
【0033】
切断用溝形成装置11において、カッター14が前記アクチェータによって最高位置(鉛直方向における最も高い位置)に持ち上げられた状態では、ワーク搭載面12A上に配置されたマザーガラス基板13及びダミー部材23の上面とカッター14との間に隙間が形成され得るようになっている。また、カッター14が前記最高位置よりも低い位置に配置された状態では、カッター14がテーブル12側(マザーガラス基板13やダミー部材23を含む)に当接し得るようになっている。前記アクチェータは、カッター14を上方に持ち上げ可能であるが、下方にはカッター14に対して力を付与しないように構成されている。すなわち、カッター14は、前記テーブル12側に当接するとともに静止した状態では、荷重ウェイト20,ロッド22、ホルダ21及びカッター14によって構成される部分の自重と等しい大きさの力で以って、前記テーブル12側に押接される。カッター14の前記押接によってマザーガラス基板13及びダミー部材23に形成される溝(マザーガラス基板13においては切断用溝)の深さは、マザーガラス基板13及びダミー部材23に対するカッター14の前記押接力の大きさのばらつきが小さいほど、より均一なものになり得る。
【0034】
マザーガラス基板13及び各ダミー部材23は、互いにY方向に並設された状態で、図示しない押圧装置の押圧部と、ダミー部材ストッパ部12BとによってY方向に押圧された状態となっている。すなわち、マザーガラス基板13と各ダミー部材23との当接箇所には、互いの押圧による押圧力が作用している。これにより、マザーガラス基板13の前記端部と各ダミー部材23との間に隙間が発生し難くなっている。
【0035】
テーブル12には、ワーク搭載面12Aに開口するように吸引孔12Cが複数形成されている。マザーガラス基板13及び各ダミー部材23は、それぞれに対応する吸引孔12Cを介して、図示しないバキューム装置によって吸引力を受けることで、それぞれ、ワーク搭載面12Aに対して密着固定されるようになっている。
【0036】
マザーガラス基板13の下方におけるワーク搭載面12A上には、複数のマーキング24が設けられている。マーキング24は、互いにY方向に並ぶように離間して配置されたもの同士が一対となって、この対状態のものが互いにX方向に所定間隔をおいて並ぶように複数配置されている。この場合の所定間隔は、マザーガラス基板13から複数形成される基板の幅寸法と同一に設定されている。
【0037】
切断用溝形成装置11には、アーム25を介してCCDカメラ26が設けられている。また、切断用溝形成装置11には図示しない制御装置が搭載されており、該制御装置は、CCDカメラ26によってマザーガラス基板13を通して撮影されたマーキング24を認識できるようになっている。
【0038】
前記制御装置は、複数のマーキング24のうち、互いにY方向に並ぶように離間して配置された前記一対のマーキング24上を通過する仮想直線を、前記切断用溝を形成するための目標ラインLとして設定するようになっている。
【0039】
前記制御装置は、前記目標ライン方向と、カッター14の移動方向(ガイドバー18の軸線方向)とを一致させるために、前記テーブルアクチェータの駆動によってテーブル12をθ方向に移動させ得るようになっている。また、前記制御装置は、カッター14をワーク搭載面12Aの上方における所定位置に配置するために、前記テーブルアクチェータの駆動によってテーブル12をX及びY方向に移動させ得るようになっている。
【0040】
一方、前記制御装置は、前記ヘッドアクチェータの駆動によって、カッター14を、前記最高位置と、これより下方であるとともに前記切断用溝の形成が可能な位置との間で上下移動させ得るようになっている。また、前記制御装置は、前記エアシリンダの駆動によって、スライダ17すなわちカッター14をY方向に所定の距離だけ移動させ得るようになっている。
【0041】
次に、マザーガラス基板13に対して前記切断用溝を形成するための切断用溝形成装置11の作用等を説明する。
まず、テーブル12のワーク搭載面12A上において、マザーガラス基板13と、そのY方向における両端側にそれぞれダミー部材23が載置される。本実施形態では、マザーガラス基板13は、これを複数の基板に分割するために、そのY方向における全域が有効部分として使用される。つまり、マザーガラス基板13のY方向における両端部には、廃材部(無効部分)が設けられない。
【0042】
この状態から、マザーガラス基板13及び各ダミー部材23は、前記押圧装置の作動により、前記押圧装置の押圧部と、ダミー部材ストッパ部12BとによってY方向に押圧される。
【0043】
次に、マザーガラス基板13及び各ダミー部材23は、前記バキューム装置による吸引力を吸引孔12Cを介して受けることで、それぞれ、ワーク搭載面12Aに対して密着固定される。
【0044】
次に、CCDカメラ26によって撮影されたマーキング24が、前記制御装置によって認識される。前記制御装置は、複数のマーキング24のうち、互いにY方向に並ぶように離間して配置された前記一対のマーキング24上を通過する仮想直線を、前記切断用溝を形成するための目標ラインL(図3参照)として設定する。そして、前記制御装置は、前記目標ライン方向と、カッター14の移動方向とを一致させるために、前記テーブルアクチェータの駆動によってテーブル12をθ方向に移動させて位置調節を行う。
【0045】
さらに、前記制御装置は、カッター14をワーク搭載面12Aの上方における所定位置に配置するために、前記テーブルアクチェータの駆動によってテーブル12をX及びY方向に移動させる。なお、この状態では、カッター14が前記ヘッドアクチェータによって前記最高位置に配置された状態となっている。この場合の前記所定位置は、ダミー部材ストッパ部12B側と反対側に配置された方のダミー部材23のY方向における中間部においてX方向に延在する仮想中心線と、目標ラインLとの交点(上方から見た状態での交点)P1(図3参照)の上方に設定されている。なお、交点P1は、前記ダミー部材23の上面に設定されているものとする。
【0046】
次に、前記制御装置は、前記ヘッドアクチェータの駆動によって、カッター14を前記最高位置から下方に移動させる。この動作により、カッター14はダミー部材23の上面において交点P1に当接される。カッター14は、荷重ウェイト20及びカッター14自身等の自重によって、交点P1に押接される。
【0047】
次に、前記制御装置は、前記エアシリンダの駆動によって、カッター14を、Y方向であってマザーガラス基板13側(ダミー部材ストッパ部12B側)に移動させる。この移動及び前述のカッター14による押接によって、前記ダミー部材23の上面には、目標ラインLに沿った溝が形成される。そして、カッター14は、前記ダミー部材23とマザーガラス基板13との当接箇所を横切るようにして移動される。このマザーガラス基板13上において継続的に行われる前述同様のカッター14の移動及び押接によって、マザーガラス基板13の上面には、目標ラインLに沿った前記切断用溝が形成される。
【0048】
その後さらに、カッター14は、マザーガラス基板13と、ダミー部材ストッパ部12B側に配置された方のダミー部材23との当接箇所を横切るようにして移動される。このダミー部材23上において継続的に行われる前述同様のカッター14の移動及び押接によって、前記ダミー部材23の上面には、目標ラインLに沿った前記切断用溝が形成される。
【0049】
次に、前記制御装置は、ダミー部材ストッパ部12B側の前記ダミー部材23上の所定位置においてカッター14の前記移動を停止させるとともに、前記ヘッドアクチェータの駆動によってカッター14を前記最高位置に向けて上方に移動させる。この場合の前記所定位置は、ダミー部材ストッパ部12B側に配置された方のダミー部材23のY方向における中間部においてX方向に延在する仮想中心線と、目標ラインLとの交点(上方から見た状態での交点)P2(図3参照)に設定されている。なお、交点P2は、前記ダミー部材23の上面に設定されているものとする。
【0050】
次に、前記制御装置は、前記エアシリンダの駆動によるY方向へのカッター14の移動、及び、前記テーブルアクチェータの駆動によるX方向へのテーブル12の移動によって、カッター14をワーク搭載面12Aの上方における所定位置に配置する。この場合の所定位置は、既に形成された切断用溝に対応するマーキング24とは別のマーキング24に対応する目標ラインLと、ダミー部材ストッパ部12B側と反対側に配置された方のダミー部材23のY方向における中間部においてX方向に延在する仮想中心線との前述同様の交点の上方に設定されている。マザーガラス基板13において必要な切断用溝が1つのみである場合、前記制御装置は切断用溝形成装置11における切断用溝形成のための制御を終了させる。
【0051】
同一のマザーガラス基板13において複数の切断用溝が必要とされる場合、前記制御装置は、次に、前記ヘッドアクチェータの駆動によってカッター14を下方に移動させて前記ダミー部材23上の前記交点部分に当接させる。そして、前記制御装置は、次に、前記エアシリンダの駆動によってカッター14をY方向であってダミー部材ストッパ部12B側に移動させる。これにより、マザーガラス基板13上には、前述の切断用溝とは別の切断用溝が、所定間隔をおいて形成される。
【0052】
次に、前記制御装置は、前記エアシリンダの駆動によるY方向へのカッター14の移動、及び、前記テーブルアクチェータの駆動によるX方向へのテーブル12の移動によって、カッター14をワーク搭載面12Aの上方における所定位置に配置する。この場合の所定位置は、既に形成された切断用溝に対応するマーキング24とは別のマーキング24に対応する目標ラインLと、ダミー部材ストッパ部12B側と反対側に配置された方のダミー部材23のY方向における中間部においてX方向に延在する仮想中心線との前述同様の交点の上方に設定されている。
【0053】
前述の動作(前述のカッター14を交点P1の上方に配置するためのテーブル12のX,Y方向への移動動作よりも後の動作)の繰り返しにより、必要な本数の切断用溝が形成されたマザーガラス基板13は、ワーク搭載面12Aから取り外される。このマザーガラス基板13は、前記切断用溝と直交する方向に延在する切断用溝を形成するために切断用溝形成装置に再度載置されたり、外力の付加により複数の基板に分割されたりする。
【0054】
なお、前記マザーガラス基板13とは別のマザーガラス基板13に切断用溝を形成する際など、前述の各ダミー部材23を再利用する場合には、各ダミー部材23において既に形成された前記溝に対するカッター14の押接を回避するために、各ダミー部材23は、X方向にずらして配置される。すなわち、各ダミー部材23は、マザーガラス基板13に対する当接位置がX方向にずらされる。
【0055】
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
(1) Y方向におけるマザーガラス基板13の端部(Y方向を臨む端面)に対して当接した状態でダミー部材23を並設し、カッター14を、マザーガラス基板13及び各ダミー部材23に対して、前記両者の当接箇所を横切るようにして移動かつ押接させるようにした。これによれば、例えば、ダミー部材が並設されていない場合と比較して、カッター14がマザーガラス基板13の端部を通過する際にマザーガラス基板13に対して与える衝撃が小さくなる。したがって、前記衝撃によるマザーガラス基板13のひび割れ等の破損が抑止されるとともに前記切断用溝の深さのばらつきが小さくなる。
【0056】
また、前記衝撃を和らげるために、カッター14がマザーガラス基板13の端部を通過する際において、マザーガラス基板13に対するカッター14の押接力を加減する必要がなくなる。したがって、この加減による前記切断用溝の深さのばらつきが小さくなる。
【0057】
(2) ダミー部材23は、Y方向におけるマザーガラス基板13の両端側に対して当接した状態で並設されている。これによれば、マザーガラス基板13の端部において、ダミー部材23側からマザーガラス基板13側にカッター14が侵入する箇所と、マザーガラス基板13側からダミー部材23側に離脱する箇所との両方での前記破損抑止や切断用溝の深さのばらつきの抑制が可能になる。
【0058】
(3) ダミー部材23とマザーガラス基板13とは、それらの厚みが互いに同一に設定されている。これによれば、ダミー部材23とマザーガラス基板13との当接箇所における段差がなくなる。そのため、例えば、前記段差が存在する場合と比較して、カッター14が前記当接箇所を通過する際にマザーガラス基板13に対して与える衝撃が小さくなる。
【0059】
(4) ダミー部材23とマザーガラス基板13とは、それらの硬さが互いに同一に設定されている。これによれば、ダミー部材23とマザーガラス基板13との硬度差がなくなる。そのため、例えば、前記硬度差が存在する場合と比較して、マザーガラス基板及びダミー部材に形成される溝の深さの相互差がなくなる。したがって、カッターが前記当接箇所を通過する際にマザーガラス基板13に対して与える衝撃が小さくなる。
【0060】
(5) ダミー部材23には、カッター14が押接されることによって溝が形成される。ダミー部材23は、形成後の前記溝に対するカッター14の押接を回避するために、マザーガラス基板13に対する当接位置がずらされる。これによれば、ダミー部材23において、カッター14の押接によって溝が形成された後に、この形成された溝に対してカッター14が押接されることがなくなる。そのため、前記溝に対するカッター14の押接によるダミー部材23の割れ等の破損がなくなる。
【0061】
(6) カッター14は、該カッター14や荷重ウェイト20等の自重により、マザーガラス基板13に対して所定の荷重を付加可能に構成されている。これによれば、切断用溝の深さのばらつきを抑えることが容易になる。
【0062】
実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば、以下の様態としてもよい。
○ 前記実施形態では、各ダミー部材23において既に形成された前記溝に対するカッター14の押接を回避するために、各ダミー部材23のマザーガラス基板13に対する当接位置がX方向にずらされたが、このX方向へのずらしは必ずしも行われなくてもよい。
【0063】
○ 前記実施形態では、同一のマザーガラス基板13において複数の切断用溝が必要とされる場合、前記制御装置は、カッター14を、交点P2側のダミー部材23から上方に移動して離間させた後、交点P1側のダミー部材23上に移動させ、これにカッター14を当接させた。これに対して、前記制御装置が、カッター14を、交点P2側のダミー部材23から上方に移動して離間させた後、該交点P2側のダミー部材23の所定位置上に移動させ、これにカッター14を当接させるようにしてもよい。これによれば、マザーガラス基板13及びダミー部材23から離間した状態でのカッター14の移動距離が短くなる。
【0064】
○ ダミー部材において、カッター14と係合するとともに、該カッター14をその移動方向にガイド可能な溝(ガイド溝)を予め形成してもよい。この場合、例えば、図4に示すように構成する。図4は、カッター14の外周先端部及びダミー部材の一部を示す断面図である。この図に示すように、ダミー部材23の上面側には、カッター14と係合するとともに、該カッター14をその移動方向(図1及び図3におけるY方向)にガイド可能なガイド溝30が形成されている。ガイド溝30は、前記Y方向に延在するように形成されている。ガイド溝30は、上方ほどその溝幅が広いテーパ状に形成されている。ガイド溝30の上端の溝幅は、カッター14の幅(図1及び図3のX方向における幅)よりも小さく形成されている。ガイド溝30の前記テーパ角度は、カッター14の前記外周先端部のテーパ角度よりも小さく設定されている。すなわち、ガイド溝30は、カッター14の先端には当接しないように形成されている。カッター14は、そのテーパ面がガイド溝30の上端に当接することでガイドされるとともに、ダミー部材23とマザーガラス基板13との当接箇所を横切るようにしてダミー部材23側からマザーガラス基板13側へ移動される。ガイド溝30の溝幅は、カッター14がマザーガラス基板13に対して押接されることで形成される切断用溝の深さが適切なものとなる大きさに設定されている。これによれば、例えば、ダミー部材が並設されていない場合と比較して、カッター14がマザーガラス基板13の端部を通過する際にマザーガラス基板13に対して与える衝撃が小さくなる。また、ガイド溝30がカッター14の先端には当接しないように形成されているため、例えばカッターの先端がダミー部材に当接する場合に比較して、ダミー部材の交換回数を大幅に減少させることが可能になる。
【0065】
○ ダミー部材とテーブルとを一体形成してもよい。この場合、例えば、図5に示すように構成する。図5における左右方向は、図1及び図3におけるY方向に一致する。この図に示すように、テーブル31の上面には、ダミー部材としてのダミー部32が上方に向けて突設されている。テーブル31の上面においてダミー部32と並設された水平なワーク搭載面33上には、ダミー部32に当接された状態でマザーガラス基板13が載置されている。ダミー部32の上面は、ワーク搭載面33上に載置されたマザーガラス基板13の上面と同一の平面を構成する。テーブル31は、マザーガラス基板13と同じ材質によって形成されている。ワーク搭載面33上において、マザーガラス基板13のダミー部32と反対側の領域には、前述同様のダミー部材23が、マザーガラス基板13の端部に当接した状態で載置されている。
【0066】
○ マザーガラス基板は、ノンアルカリガラスからなるものであってもよい。
○ ダミー部材は、マザーガラス基板と同一の材質によって形成されていなくてもよい。例えば、樹脂や、セラミックなどによって形成されていてもよい。前記樹脂は、ガラス繊維が配合されたものであってもよく、配合されていないものでもよい。
【0067】
○ ダミー部材は、必ずしもマザーガラス基板と同等の硬さに設定されている必要はない。
○ ダミー部材は、必ずしもマザーガラス基板と同等の厚さに設定されている必要はない。
【0068】
○ マザーガラス基板13は、その周縁部において廃材部が多少設けられていてもよい。これによれば、マザーガラス基板13の平面形状精度やワーク搭載面12A上での配置精度等を緩和することが可能になる。
【0069】
○ 前記実施形態では、マーキング(24)をワーク搭載面12Aに設けたが、例えば、マザーガラス基板13に設けてもよい。
○ カッター14の移動方向におけるマザーガラス基板13の一方の端部側のみにダミー部材23が載置されていてもよい。
【0070】
○ 前記実施形態では、カッター14をヘッド部本体19に対して鉛直(上下)方向に移動可能に設けるとともに、この方向への移動によってマザーガラス基板13やダミー部材23とカッター14とを当接及び離間させるようにした。これに対して、スライダアーム16側をガイドバー18側に対してガイドバー18の軸線周りに回動可能に設けるとともに、この回動によってマザーガラス基板13やダミー部材23とカッター14とを当接及び離間させるようにしてもよい。
【0071】
○ 前記実施形態では、カッター14が回転可能に設けられたが、回転可能に設けられていなくてもよい。例えば、ヘッド部側に固定したダイヤモンドチップ等をカッターとして用いてもよい。
【0072】
○ 切断用溝形成装置11は、カッター14がマザーガラス基板13に対して付加する荷重が変更され得るように構成されていてもよい。この場合、例えば、ヘッド部15において、荷重ウェイト20を、重量の異なる他のウェイト部材に交換できるように構成する。これによれば、マザーガラス基板13における切断用溝の深さ(目標値)を調節することが可能になる。
【0073】
○ 前記制御装置による一連の動作制御のうち、その一部または全部は、前記制御装置による自動的な制御とされていなくてもよい。例えば、作業者の操作によって行われるように構成されていてもよい。さらに、テーブル12やカッター14の移動は、各種アクチェータ等を用いることなく、作業者の手によって直接的に行われてもよい。また、前記押圧装置による押圧および前記バキューム装置による密着固定に代えて、それぞれ、作業者の手によって押圧および密着固定を行うようにしてもよい。
【0074】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(1) 前記カッターは、前記マザーガラス基板に対して所定の荷重を付加可能に構成されている請求項7に記載のマザーガラス基板の切断用溝形成装置。
【0075】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1〜6に記載の発明によれば、マザーガラス基板の切断用溝形成方法において、マザーガラス基板を複数の基板に分割する際の歩留まりをよくすることができる。また、請求項7に記載の発明によれば、マザーガラス基板の切断用溝形成装置において、マザーガラス基板を複数の基板に分割する際の歩留まりをよくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の切断用溝形成装置を示す模式斜視図。
【図2】同じくカッターの概要を示す模式正面図。
【図3】同じくマザーガラス基板等が載置されたテーブルの模式平面図。
【図4】別例のカッター及びダミー部材を示す模式部分断面図。
【図5】マザーガラス基板等が載置された別例のテーブルの模式側面図。
【符号の説明】
11…切断用溝形成装置、12,31…テーブル、12A…ワーク搭載面(12Aの一部はダミー部材並設部を構成する)、13…マザーガラス基板、14…カッター、15…ヘッド部、16…スライダアーム、17…スライダ、18…ガイドバー(15,16,17及び18はガイド機構を構成する)、23…ダミー部材、30…ガイド溝。

Claims (7)

  1. マザーガラス基板を複数の基板に分割するために、前記マザーガラス基板に対してカッターを用いて切断用溝を形成する切断用溝形成方法であって、
    前記カッターの移動方向における前記マザーガラス基板の少なくとも一端側に対して当接した状態でダミー部材を並設し、前記カッターを、前記マザーガラス基板及び前記ダミー部材に対して、前記両者の当接箇所を横切るようにして移動かつ押接させるようにしたマザーガラス基板の切断用溝形成方法。
  2. 前記ダミー部材は、前記カッターの移動方向における前記マザーガラス基板の両端側に対して当接した状態で並設されている請求項1に記載のマザーガラス基板の切断用溝形成方法。
  3. 前記ダミー部材と前記マザーガラス基板とは、それらの厚みが互いに同等に設定されている請求項1または2に記載のマザーガラス基板の切断用溝形成方法。
  4. 前記ダミー部材と前記マザーガラス基板とは、それらの硬さが互いに同等に設定されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のマザーガラス基板の切断用溝形成方法。
  5. 前記ダミー部材には、前記カッターが押接されることによって溝が形成され、前記ダミー部材は、形成後の前記溝に対する前記カッターの押接を回避するために、前記マザーガラス基板に対する当接位置がずらされる請求項1〜4のいずれか一項に記載のマザーガラス基板の切断用溝形成方法。
  6. 前記ダミー部材は、前記カッターをその移動方向にガイド可能なガイド溝を備え、前記ガイド溝は、前記カッターの先端には当接しないように形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載のマザーガラス基板の切断用溝形成方法。
  7. マザーガラス基板を複数の基板に分割するために、前記マザーガラス基板に対して切断用溝を形成する切断用溝形成装置であって、
    前記マザーガラス基板に押接させることで前記切断用溝を形成可能なカッターと、前記カッターを前記切断用溝の形成方向にガイド可能なガイド機構と、前記マザーガラス基板を載置可能なテーブルとを備え、前記テーブル上には、前記カッターの移動方向における前記マザーガラス基板の少なくとも一端側に対して当接した状態でダミー部材を並設可能なダミー部材並設部が設けられ、前記ガイド機構は、前記マザーガラス基板、及び、前記ダミー部材並設部に配置された前記ダミー部材に対して、前記両者の当接箇所を横切るようにして前記カッターを移動かつ押接させるように構成されているマザーガラス基板の切断用溝形成装置。
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