JP3889841B2 - ポリエステル組成物 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、結晶化速度が速く、かつガスバリヤー性、透明性および耐熱性に優れたポリエステル組成物に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
ポリエチレンテレフタレートなどの飽和ポリエステルは、ガスバリヤー性、透明性および機械的強度に優れるため、ボトルなどの容器として広く利用されている。特にポリエチレンテレフタレートを二軸延伸ブロー成形して得られるボトルは、透明性、機械的強度、耐熱性、およびガスバリヤー性に優れており、ジュース、清涼飲料、炭酸飲料などの飲料充填用容器(PETボトル)として広く用いられている。このようなボトルは、一般的に、飽和ポリエステルを射出成形して口栓部と胴部とを有するプリフォームを成形し、次いでこのプリフォームを所定形状の金型に挿入し、延伸ブロー成形して胴部を延伸して、口栓部と延伸された胴部を有するボトルとすることにより製造されている。
【0003】
このようなポリエステル製ボトル、特にジュースなどの飲料用途に用いられるポリエステル製ボトルでは、内容物の加熱殺菌処理に対応しうる耐熱性が要求されるため、通常ブロー成形後にさらにボトルを熱処理(ヒートセット)して耐熱性を向上させている。
【0004】
ところが上記のようにして得られるポリエステル製ボトルの口栓部は、未延伸であり、延伸された胴部と比較すると機械的強度および耐熱性に劣っている。このため通常ブロー成形前にプリフォームの口栓部を加熱・結晶化するか、あるいはブロー成形により得られたボトルの口栓部を加熱・結晶化して、口栓部の機械的強度、耐熱性などを向上させている。
【0005】
ところで、近年ポリエステル樹脂(特にポリエチレンテレフタレート)から製造されるボトルは小型化する傾向にあるが、このような小型ボトルの場合、単位容量当りのボトル胴部と接する面積が大きくなるため、ガス損失あるいは外部からの酸素の透過による内容物への影響が顕著となり、内容物の保存期間が低下することがある。このため従来よりもガスバリヤー性に優れるポリエステル製ボトルの出現が望まれている。
【0006】
また、近年ポリエステル樹脂(特にポリエチレンテレフタレート)から製造されるボトルの製造時間を短縮し、生産性を向上することが求められている。ボトルの製造時間を短縮する方法としては、口栓部の結晶化時間、ボトルのヒートセット時間を短縮する方法が有効である。
【0007】
ところが一般に口栓部の結晶化時間、ボトル胴部のヒートセット時間を短縮すると、得られるボトルの機械的強度および耐熱性などが低下する。このため口栓部の結晶化時間、ボトル胴部のヒートセット時間を短時間とするには、結晶化速度の大きいポリエステルを用いる必要がある。このような結晶化速度の大きいポリエステルとしては、原料ポリエステルとリプロポリエステルとからなるポリエステル組成物が知られている。ここで「原料ポリエステル」とは、ジカルボン酸とジオールとから製造され、加熱溶融状態で成形機を通過させてボトル、プリフォームなどに成形された履歴がないポリエステルをいい、「リプロポリエステル」とは、このような原料ポリエステルを少なくとも1回以上加熱溶融状態で成形機を通過させ、得られたポリエステル成形体を粉砕して得られるポリエステルをいう。
【0008】
しかしながらこのポリエステル組成物は、結晶化速度が速く加熱結晶化を短時間で行うことができるが、一方得られるボトルの透明性が低下してしまうという問題点があった。
【0009】
このため加熱結晶化速度が速く、かつ透明性およびガスバリヤー性に優れたボトル等の成形体が得られるようなポリエステル組成物の出現が望まれている。
【0010】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、結晶化速度が速く、かつガスバリヤー性、透明性および耐熱性に優れたポリエステル組成物を提供することを目的としている。
【0011】
【発明の概要】
本発明に係るポリエステル組成物は、
[A]ナフタレンジカルボン酸と必要に応じてイソフタル酸とからなるジカルボン酸から誘導されるジカルボン酸構成単位と、エチレングリコールおよび炭素原子数2〜10のアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールからなるジオールから誘導されるジオール構成単位とからなり、
前記ポリアルキレングリコールから誘導される構成単位の割合が、ジオール構成単位に対して0.001 〜10重量%の範囲にあり、
ナフタレンジカルボン酸から誘導される構成単位の割合が、ジカルボン酸構成単位に対して100〜55重量%の範囲にある第1ポリエステル:1〜50重量%と、
[B]テレフタル酸、イソフタル酸およびナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸から誘導されるジカルボン酸構成単位と、
エチレングリコールを含むジオールから誘導されるジオール構成単位とからなり、
ポリアルキレングリコールから誘導される構成単位の割合が、ジオール構成単位に対して0.001重量%未満である第2ポリエステル:50〜99重量%とからなることを特徴としている。
【0013】
さらにまた、前記第1ポリエステルにおけるジカルボン酸がナフタレンジカルボン酸と必要に応じてイソフタル酸とからなり、ナフタレンジカルボン酸から誘導される構成単位の割合は、ジカルボン酸構成単位に対して100〜55重量%の範囲にあることが好ましい。
【0014】
前記ポリアルキレングリコールの重合度(n)は5〜50の範囲にあるのが好ましく、特に、前記ポリアルキレングリコールはポリテトラメチレングリコールであることが好ましい。
【0015】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係るポリエステル組成物について具体的に説明する。
本発明に係るポリエステル組成物は、
[A]ナフタレンジカルボン酸と必要に応じてイソフタル酸とからなるジカルボン酸から誘導されるジカルボン酸構成単位と、エチレングリコールおよび炭素原子数2〜10のアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールからなるジオールから誘導されるジオール構成単位とからなり、
前記ポリアルキレングリコールから誘導される構成単位の割合が、ジオール構成単位に対して0.001 〜10重量%の範囲にあり、
ナフタレンジカルボン酸から誘導される構成単位の割合が、ジカルボン酸構成単位に対して100〜55重量%の範囲にある第1ポリエステル:1〜50重量%と、
[B]テレフタル酸、イソフタル酸およびナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸から誘導されるジカルボン酸構成単位と、
エチレングリコールを含むジオールから誘導されるジオール構成単位とからなり、
ポリアルキレングリコールから誘導される構成単位の割合が、ジオール構成単位に対して0.001重量%未満である第2ポリエステル:50〜99重量%とからなることを特徴としている。
【0016】
[A]第1ポリエステル
まず第1ポリエステル[A]について説明する。
第1ポリエステル[A]は、上記のように、ジカルボン酸構成単位とジオールとから誘導される構成成分からなる。
【0017】
以下、ジカルボン酸およびジオールについて説明する。
ジカルボン酸構成単位
【0023】
(3)本発明における好ましい態様では、ジカルボン酸構成単位はナフタレンジカルボン酸またはそのエステル誘導体から誘導される構成単位を主たる成分とし、必要に応じてテレフタル酸、イソフタル酸またはそれらのエステル誘導体から誘導される構成単位を含有している。
【0024】
本発明では、第1ポリエステル[A]中のナフタレンジカルボン酸またはそのエステル誘導体から誘導される構成単位が、ジカルボン構成単位に対して55〜100重量%、好ましくは75〜100重量%、より好ましくは85〜99重量%の範囲にあることが望ましい。このような範囲でナフタレンジカルボン酸から誘導される構成単位を含有するポリエステル組成物は、成形時の熱安定性とガスバリヤー性が優れている。
【0025】
このジカルボン酸構成単位は、ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸およびイソフタル酸以外のジカルボン酸から誘導される構成単位を15モル%以下の量で含有していてもよい。
【0026】
ナフタレンジカルボン酸およびイソフタル酸以外のジカルボン酸として具体的には、o-フタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類;
コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸類;
シクロへキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸類などが挙げられる。
【0027】
これらのナフタレンジカルボン酸およびイソフタル酸以外のジカルボン酸は、そのエステル誘導体であってもよい。またこれらは2種以上の組合わせであってもよい。
【0028】
ジオール構成単位
ジオール構成単位は、エチレングリコールから誘導される構成単位を主たる成分とし、炭素原子数が2〜10のアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールから誘導される構成単位を特定の割合で含有している。
【0029】
ポリアルキレングリコール
ジオール構成単位を形成する炭素原子数2〜10のアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールは、従来公知のポリアルキレングリコールであり、このようなポリアルキレングリコールは、炭素数2〜10のアルキレングリコールを、公知の方法により共縮合させて得られる。
【0030】
このポリアルキレングリコールは、重合度(n)が5〜50、好ましくは10〜45の範囲にあることが好ましい。またこのようなポリアルキレングリコールの分子量は100〜10000、好ましくは200〜5000、特に好ましくは500〜3000の範囲にあることが好ましい。
【0031】
このようなポリアルキレングリコールとしては、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコールなどが挙げられ、特にポリテトラメチレングリコールが好ましい。
【0032】
本発明では、第1ポリエステル[A]中のポリアルキレングリコールから誘導される構成単位が、ジオール構成単位に対して0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜8重量%、より好ましくは0.1〜6重量%、特に好ましくは1〜4重量%の範囲にあることが望ましい。
【0033】
ポリアルキレングリコールから誘導される構成単位が0.001重量%未満であると、ポリエステル組成物のガスバリヤー性や昇温結晶化速度が充分でないことがあり、一方10重量%を超えると、ポリエステル組成物の透明性、成形時の熱安定性が充分でないことがある。
【0034】
他のジオール
ジオール構成単位は、エチレングリコールおよび炭素原子数2〜10のアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコール以外のジオールから誘導される構成単位を15モル%以下の量で含有していてもよい。
【0035】
エチレングリコールおよびポリアルキレングリコール以外のジオールとしては、具体的には、
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチレングリコール(プロパンジオール)、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコールなどの脂肪族グリコール類;
シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール類;
ビスフェノール類、ハイドロキノンなどの芳香族ジオール類などが挙げられる。
【0036】
これらのジオールは、そのエステル誘導体であってもよい。またこれらのジオールは、2種以上の組合わせであってもよい。
本発明で用いる第1ポリエステル[A]には、ジカルボン酸構成単位およびジオール構成単位の他に、必要に応じて、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトールなどの多官能化合物から誘導される構成単位を少量、たとえば2モル%以下の割合で含んでいてもよい。
【0037】
第1ポリエステル[A]は、上記のような構成単位を形成するジカルボン酸とジオールとから、従来公知の製造方法により製造される。
このような第1ポリエステル[A]は、実質上線状であり、このことは該ポリエステルが、o-クロロフェノールに溶解することによって確認される。
【0038】
第1ポリエステル[A]は、o-クロロフェノール中で25℃で測定される極限粘度[IV]が、通常0.3〜1.5dl/g、好ましくは0.5〜1.5dl/gであることが望ましい。
【0039】
第1ポリエステル[A]は、半結晶化時間が、10〜200秒、好ましくは20〜120秒の範囲にあることが望ましい。なお半結晶化時間は、後述のように測定される。
【0040】
[B]第2ポリエステル
次に、第2ポリエステル[B]について説明する。
第2ポリエステル[B]は、テレフタル酸、イソフタル酸およびナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸から誘導されるジカルボン酸構成単位と、エチレングリコールを含むジオールから誘導される構成単位とからなり、
ポリアルキレングリコールから誘導される構成単位の割合が、ジオール構成単位に対して0.001重量%未満である。
【0041】
このような第2ポリエステル[B]として以下のようなポリエステルが挙げられる。
(i)テレフタル酸またはそのエステル誘導体から誘導されるジカルボン酸構成単位と、エチレングリコールから誘導されるジオール構成単位とからなるポリエチレンテレフタレート。
【0042】
このようなポリエチレンテレフタレート(i)には、20モル%未満の量で他のジカルボン酸および/または他のジオールから誘導される構成単位を含んでいてもよい。
【0043】
他のジカルボン酸としては、具体的に、イソフタル酸、o-フタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0044】
他のジオールとしては、具体的に、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ポリアルキレングリコールなどの脂肪族グリコール;脂環族グリコール;ビスフェノール類;ハイドロキノン、2,2-ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジオール類などが挙げられる。
【0045】
このようなポリエチレンテレフタレート(i)の極限粘度[IV](o-クロロフェノール中25℃で測定した値)は、通常0.6〜1.5dl/g、好ましくは0.7〜1.2dl/gであることが望ましい。
【0046】
(ii)ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル誘導体から誘導されるジカルボン酸構成単位と、エチレングリコールから誘導されるジオール構成単位とからなるポリエチレンナフタレート。
【0047】
このようなポリエチレンナフタレート(ii)には、40モル%未満の量で他のジカルボン酸および/または他のジオールから誘導される構成単位を含んでいてもよい。
【0048】
他のジカルボン酸としては、具体的に、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジブロモテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロプロパンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環族ジカルボン酸;グリコール酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシエトキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。
【0049】
他のジオールとしては、具体的に、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、ポリアルキレングリコール、p-キシレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、p,p-ジフェノキシスルホン、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2-ビス(p-β-ヒドロキシエトキシフェノール)プロパン、p-フェニレンビス(ジメチルシロキサン)、グリセリンなどが挙げられる。
【0050】
また、本発明において用いられるポリエチレンナフタレート(ii)は、トリメシン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトールなどの多官能化合物から導かれる構成単位を少量、たとえば2モル%以下の量で含んでいてもよい。
【0051】
このポリエチレンナフタレート(ii)は、ベンゾイル安息香酸、ジフェニルスルホンモノカルボン酸、ステアリン酸、メトキシポリエチレングリコール、フェノキシポリエチレングリコールなどの単官能化合物から導かれる構成単位を2モル%以下の量で含んでいてもよい。
【0052】
このようなポリエチレンナフタレート(ii)の極限粘度[IV](o-クロロフェノール中25℃で測定した値)は、通常0.2〜1.1dl/g、好ましくは0.3〜0.9dl/g、特に好ましくは0.4〜0.8dl/gの範囲にあることが望ましい。
【0053】
また、ポリエチレンナフタレート(ii)の示差走査型熱量計(DSC)で10℃/分の速度で昇温した際の昇温結晶化温度(Tc)は、通常150℃以上であり、好ましくは160〜230℃、より好ましくは170〜220℃の範囲にあることが望ましい。
【0054】
なお、ポリエチレンナフタレート(ii)の昇温結晶化温度(Tc)は次の方法によって測定される。すなわち、パーキンエルマー社製DSC−2型走差型熱量計を用いて、約140℃で約5mmHgの圧力下約5時間以上乾燥した飽和ポリエステル樹脂チップの中央部から採取された試料約10mgの薄片を、液体用アルミニウムパン中に窒素雰囲気下に封入して測定する。測定条件は、まず室温より急速昇温して290℃で10分間溶融保持したのち室温まで急速冷却し、その後10℃/分の昇温速度で昇温する際に検出される発熱ピークの頂点温度を求める。
【0055】
(iii)テレフタル酸またはそのエステル誘導体から誘導される構成単位を主たる成分とし、イソフタル酸またはそのエステル誘導体から誘導される構成単位を特定の割合で含有するジカルボン酸構成単位と、エチレングリコールから誘導されるジオール構成単位とからなる共重合ポリエステル。
【0056】
イソフタル酸またはそのエステル誘導体から誘導される構成単位は、共重合ポリエステル(iii)中のジカルボン酸構成単位に対して0.5〜15モル%、好ましくは0.5〜10モル%の範囲にあることが望ましい。
【0057】
(iv)テレフタル酸またはそのエステル誘導体から誘導される構成単位を主たる成分とし、ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル誘導体から誘導される構成単位を特定の割合で含有するジカルボン酸構成単位と、エチレングリコールから誘導されるジオール構成単位とからなる共重合ポリエステル。
【0058】
ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル誘導体から誘導される構成単位は、共重合ポリエステル(iv)中のジカルボン酸構成単位に対して0.5〜20モル%、好ましくは0.5〜10モル%の範囲にあることが望ましい。
【0059】
(v)テレフタル酸またはそのエステル誘導体から誘導される構成単位を主たる成分とし、アジピン酸またはそのエステル誘導体から誘導される構成単位を特定の割合で含有するジカルボン酸構成単位と、エチレングリコールから誘導されるジオール構成単位とからなる共重合ポリエステル。
【0060】
アジピン酸またはそのエステル誘導体から誘導される構成単位は、共重合ポリエステル(v)中のジカルボン酸構成単位に対して0.5〜15モル%、好ましくは0.5〜10モル%の範囲にあることが望ましい。
【0061】
(vi)テレフタル酸またはそのエステル誘導体から誘導されるジカルボン酸構成単位と、エチレングリコールから誘導される構成単位を主たる成分とし、ジエチレングリコールから誘導される構成単位を特定の割合で含有するジオール構成単位とからなる共重合ポリエステル。
【0062】
ジエチレングリコールから誘導される構成単位は、共重合ポリエステル(vi)中のジオール構成単位に対して、0.5〜5重量%、好ましくは1.0〜3.0重量%の範囲にあることが望ましい。
【0063】
(vii)テレフタル酸またはそのエステル誘導体から誘導されるジカルボン酸構成単位と、エチレングリコールから誘導される構成単位を主たる成分とし、ネオペンチルグリコールから誘導される構成単位を特定の割合で含有するジオール構成単位とからなる共重合ポリエステル。
【0064】
ネオペンチルグリコールから誘導される構成単位は、共重合ポリエステル(vii)中のジオール構成単位に対して、1〜30重量%、好ましくは5〜15重量%の範囲にあることが望ましい。
【0065】
(viii)テレフタル酸またはそのエステル誘導体から誘導されるジカルボン酸構成単位と、エチレングリコールから誘導される構成単位を主たる成分とし、シクロヘキサンジメタノールから誘導される構成単位を特定の割合で含有するジオール構成単位とからなる共重合ポリエステル。
【0066】
シクロヘキサンジメタノールから誘導される構成単位は、共重合ポリエステル(viii)中のジオール構成単位に対して、1〜30重量%、好ましくは5〜15重量%の範囲にあることが望ましい。
【0067】
(ix)イソフタル酸またはそのエステル誘導体から誘導される構成単位を主たる成分とし、必要に応じてテレフタル酸またはそのエステル誘導体から誘導される構成単位を特定の割合で含有するジカルボン酸構成単位と、
ジヒドロキシエトキシレゾールから誘導される構成単位とエチレングリコールから誘導される構成単位とを含むジオール構成単位とからなる共重合ポリエステル。
【0068】
イソフタル酸から誘導される構成単位は、共重合ポリエステル(ix)中のジカルボン酸構成単位に対し、20〜100重量%、好ましくは50〜98重量%の範囲にあることが望ましい。
【0069】
また、ジヒドロキシエトキシレゾールから誘導される構成単位は、共重合ポリエステル(ix)中の構成単位に対して5〜90モル%、好ましくは10〜85モル%の範囲にあることが望ましい。
【0070】
さらに、上記共重合ポリエステル(ix)中に、少なくとも3個のヒドロキシ基を有する多官能ヒドロキシ化合物から誘導される構成単位が、ジカルボン酸構成単位100モル部に対して0.05〜1.0モル部、好ましくは0.1〜0.5モル部の量で存在していることが望ましい。
【0071】
少なくとも3個のヒドロキシ基を有する多官能ヒドロキシ化合物としては、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。これらのうち、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0072】
上記共重合ポリエステル(iii)〜(ix)には、上記のようなジカルボン酸およびジオール以外に、得られる共重合ポリエステル(iii)〜(ix)の特性を損なわない範囲、たとえば1モル%以下の量で他のジカルボン酸および/または他のジオールから誘導される構成単位を含んでいてもよい。
【0073】
他のジカルボン酸としては、o-フタル酸、2-メチルテレフタル酸などが挙げられ、他のジオールとしては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2- ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホンなどが挙げられる。
【0074】
このような共重合ポリエステル(iii)〜(ix)の極限粘度(IV:o-クロロフェノール中25℃で測定した値)は、通常0.5〜1.5dl/g、好ましくは0.6〜1.2dl/gであることが望ましい。
【0075】
上記のような第2ポリエステル[B]は、従来公知の製造方法によって製造することができる。
また、上記のような第2ポリエステル[B]は2種以上の第2ポリエステルをブレンドして用いてもよく、たとえば、
ポリエチレンテレフタレート(i)とポリエチレンナフタレート(ii)とのブレンド、
ポリエチレンテレフタレート(i)と共重合ポリエステル(iii)〜(ix)とのブレンド、
2種以上の共重合ポリエステルのブレンドなどが挙げられる。
【0076】
このようなブレンドのうち、ポリエチレンテレフタレート(i)と共重合ポリエステル(iii)とをブレンドしてなるポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(i)と共重合ポリエステル(ix)とをブレンドしてなるポリエステルなどが好ましく使用される。
【0077】
ポリエステル組成物
本発明に係るポリエステル組成物は、上記のような
第1ポリエステル[A]が1〜50重量%、好ましくは2〜25重量%と、
第2ポリエステル[B]が50〜99重量%、好ましくは75〜98重量%とからなる。
【0078】
ポリエステル組成物中、第1ポリエステル[A]の量が上記範囲内であれば、ポリエステル組成物のガスバリヤー性および昇温結晶化速度が充分に向上し、かつ成形時の熱安定性が低下することもない。
【0079】
本発明に係るポリエステル組成物は、昇温半結晶化時間が、10〜400秒、好ましくは60〜300秒の範囲にあることが望ましい。なお、昇温半結晶化時間は、後述のように測定される。
【0080】
本発明に係るポリエステル組成物は、上記第1ポリエステル[A]と第2ポリエステル[B]とから、任意の調製方法によって調製することができる。
たとえば、第1ポリエステル[A]と第2ポリエステル[B]とをタンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサーなどの混合機で直接混合して溶融混練する方法、
また予め第1ポリエステル[A]と第2ポリエステル[B]とを溶融混練して第1ポリエステル[A]を高濃度に含むマスターバッチを調製しておき、このマスターバッチを第2ポリエステル[B]に適宜配合する方法などによりポリエステル組成物を調製することができる。
【0081】
上記のような本発明に係るポリエステル組成物は、必要に応じて、通常ポリエステルに添加される添加剤、たとえば着色剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤を含有していてもよい。このような添加剤は、予めこれら添加剤とポリエステル組成物とから調製されたマスターバッチとしてポリエステル組成物にブレンドされていてもよい。
【0082】
本発明に係るポリエステル組成物は、プリフォーム、ボトル、(延伸)フィルム、シートなどの種々の成形体の材料として用いることができる。
このような本発明に係るポリエステル組成物は、結晶化速度が速いので、たとえばボトルを成形する場合には、プリフォームの口栓部またはボトルの口栓部を加熱・結晶化する時間を短くすることができ口栓部の機械的強度および耐熱性に優れたボトルを効率よく製造することができる。
【0083】
【発明の効果】
本発明に係るポリエステル組成物は、優れた結晶化速度を有し、ガスバリヤー性、透明性および耐熱性に優れている。
【0084】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0085】
なお実施例において、各特性は以下のように測定した。
極限粘度 [IV]
o-クロロフェノール溶媒を用いて8g/dlの試料溶液を調製し、25℃で測定した溶液粘度から算出した。
【0086】
炭酸ガス透過係数(ガスバリヤー性)
ジーエルサイエンス株式会社製ガス透過率測定装置GPM−250を用いて、23℃、相対湿度60%の条件下で測定した。
【0087】
測定に使用したフィルムは、以下のようにして作製した。
延伸フィルム▲2▼:金型温度290℃のプレス成形機を用いて0.1mm厚のフィルムを作製し、このフィルムを冷却金型温度0℃の条件で急冷して非晶フィルム▲1▼とした。次いで、この非晶フィルム▲1▼を該フィルムを形成するポリエステルのガラス転移温度(Tg)よりも15℃高い温度で3×3倍に同時二軸延伸を行い、延伸フィルム▲2▼とした。
【0088】
ヒートセットフィルム▲3▼:前記延伸フィルム▲2▼を金枠に固定して150℃で3分間オーブン中でヒートセットを行い、ヒートセットフィルム▲3▼とした。
ヒートセットボトル▲4▼:シリンダー温度280℃の射出成形機を用いて金型温度10℃でプリフォームを成形し、次にこのプリフォームを該プリフォームを形成するポリエステルのTgより15℃高い温度で縦3倍、横3倍に逐次二軸延伸することによりボトル成形を行い、さらにボトル胴部を200℃で1分間ヒートセットして二軸延伸ボトルを得た。このボトルから、胴部切片を切り出してヒートセットボトル▲4▼とした。
【0089】
透明性(ヘイズ値)
乾燥ポリマーをシリンダー温度280℃の射出成形機を用いて金型温度10℃の条件で5mm厚の角板を成形し、成形物の透明性をヘイズ値(白色光の光線乱反射率)で比較した。
【0090】
半結晶化時間
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計(DSC)を使用して測定した。
乾燥ポリマーをサンプルパンに10mg秤量し、290℃で5分間加熱して溶融し、次いで320℃/分の冷却速度で50℃まで急冷して5分間放置し、非晶性試料を作製した。この試料を320℃/分の昇温速度で140℃まで加熱し、該温度に保持した。試料は、この温度で結晶化して時間−発熱曲線を与え、この時間−発熱曲線から総発熱量を求めた。総発熱量の1/2の熱量を生じるのに要する時間(秒)をもって半結晶化時間とした。
【0091】
この半結晶化時間の短いものほど効率的に結晶化が進行し、ボトルの生産性が向上する。
ヒートセットボトル▲4▼の方法で得られたボトルについて、耐熱性および外観を下記のように評価した。
【0092】
耐熱性の評価
上記のようにして得られた内容積が1.5リットルの二軸延伸ボトルを、40℃、湿度90%の条件下に1週間放置した後、ボトル内に90℃の熱水を10分間充填して、充填前後の内容量を測定した。
【0093】
充填前後の内容量から、収縮率(%)を次式により求めた。
【0094】
【数1】
【0095】
このようにして求めた収縮率(%)の値から、耐熱性を下記の基準で評価した。
○ … 0≦収縮率(%)<0.5
× … 0.5≦収縮率(%)
ボトル外観
上記のようにして得られた内容積が1.5リットルの二軸延伸ボトルの下(底部側)から83mmの高さのボトル側面のヘイズ(白色光の構成乱反射率)を測定した。
【0096】
このヘイズ値(%)から、ボトル外観を下記のように評価した。
○ … 0≦ヘイズ値(%)<5
× … 5≦ヘイズ値(%)
【0097】
【実施例1】
第1ポリエステル [A-1]
ジカルボン酸構成単位を形成するジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸 198重量部およびイソフタル酸 16 重量部と、ジオール構成単位を形成するジオール成分としてエチレングリコール 68重量部および平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール 1.9重量部とを用い極限粘度[IV]が0.643dl/gの第1ポリエステル[A-1]を得た。
【0098】
ポリエステル組成物の調製
上記第1ポリエステル[A-1]と、第2ポリエステル[B-1] (ポリエチレンテレフタレート、ジエチレングリコール含量;1.95重量%、極限粘度[IV]=0.835dl/g)とを、[A-1]:[B-1](重量比)で5:95になるようにポリエステル組成物を調製した。得られたポリエステル組成物を、溶融後射出成形して上記のような角板、フィルムおよびボトルを作成し、ヘイズ、半結晶化時間、炭酸ガス透過係数、耐熱性およびボトル外観について評価した。結果を表1に示す。
【0099】
【実施例2】
実施例1において、[A-1]:[B-1](重量比)が10:90になるようにポリエステル組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0100】
【実施例3】
実施例1において、[A-1]:[B-1](重量比)が15:85になるようにポリエステル組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0101】
【実施例4】
第1ポリエステル [A-2]
ジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸 198重量部およびイソフタル酸 16重量部と、ジオール成分としてエチレングリコール 68重量部および平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール 1.9重量部とを用い極限粘度[IV]が0.648dl/gの第1ポリエステル[A-2]を得た。
【0102】
実施例1において、[A-1]の代わりに、[A-2]を用いた以外は、実施例1と同様にした。結果を表1に示す。
【0103】
【実施例5】
実施例1において、[A-1]の代わりに、[A-2]を使用し、かつ[A-2]:[B-1](重量比)が10:90になるようにポリエステル組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0104】
【実施例6】
実施例1において、[A-1]の代わりに、[A-2]を使用し、かつ[A-2]:[B-1](重量比)が15:85になるようにポリエステル組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0105】
【実施例7】
第1ポリエステル [A-3]
ジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸 206重量部およびイソフタル酸 8重量部と、ジオール成分としてエチレングリコール 68重量部および平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール 1.9重量部とを用い極限粘度[IV]が0.622dl/gの第1ポリエステル[A-3]を得た。
【0106】
実施例1において、[A-1]の代わりに、[A-3]を用いた以外は、実施例1と同様にした。結果を表1に示す。
【0107】
【実施例8】
実施例1において、[A-1]の代わりに、[A-3]を使用し、かつ[A-3]:[B-1](重量比)が10:90になるようにポリエステル組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0108】
【実施例9】
第1ポリエステル [A-4]
ジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸 214重量部と、ジオール成分としてエチレングリコール 68重量部および平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール 1.9重量部とを用い極限粘度[IV]が0.613dl/gの第1ポリエステル[A-4]を得た。
【0109】
実施例1において、[A-1]の代わりに、[A-4]を使用し、かつ[A-4]:[B-1](重量比)が10:90になるようにポリエステル組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0110】
【比較例1】
ポリエチレンテレフタレート[B-1]を、溶融後射出成形して角板、フィルムおよびボトルを作成し、ヘイズ、半結晶化時間、炭酸ガス透過係数を測定した。結果を表1に示す。
【0111】
【比較例2】
実施例1において、[A-1]の代わりに、ポリエチレンテレフタレート([B-2] 、ジエチレングリコール含量;1.33重量%、極限粘度[IV]=0.775dl/g)を使用し、かつ[B-2]:[B-1](重量比)が20:80になるようにポリエステル組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0112】
【表1】
Claims (3)
- [A]ナフタレンジカルボン酸と必要に応じてイソフタル酸とからなるジカルボン酸から誘導されるジカルボン酸構成単位と、エチレングリコールおよび炭素原子数2〜10のアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールからなるジオールから誘導されるジオール構成単位とからなり、
前記ポリアルキレングリコールから誘導される構成単位の割合が、ジオール構成単位に対して0.001 〜10重量%の範囲にあり、
ナフタレンジカルボン酸から誘導される構成単位の割合が、ジカルボン酸構成単位に対して100〜55重量%の範囲にある第1ポリエステル:1〜50重量%と、
[B]テレフタル酸、イソフタル酸およびナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸から誘導されるジカルボン酸構成単位と、
エチレングリコールを含むジオールから誘導されるジオール構成単位とからなり、
ポリアルキレングリコールから誘導される構成単位の割合が、ジオール構成単位に対して0.001重量%未満である第2ポリエステル:50〜99重量%とからなることを特徴とするポリエステル組成物。 - 前記ポリアルキレングリコールの重合度(n)が5〜50の範囲にある請求項1に記載のポリエステル組成物。
- 前記ポリアルキレングリコールがポリテトラメチレングリコールである請求項1または2に記載のポリエステル組成物。
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