JP3790046B2 - ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートを含むポリエステル樹脂組成物に関し、特に透明性、成形性および耐熱圧性に優れるポリエステルボトル成形用の原料樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック製ボトルは軽量性及び耐衝撃性に優れていることから、各種液体に対する包装容器として広く使用されており、中でもポリエチレンテレフタレートを延伸ブローして成るボトルは成形が容易であり、透明性、機械的強度に優れるため、ジュース、清涼飲料、炭酸飲料などの飲料充填用容器として広く用いられている。
【0003】
近年、内容物の充填が高温殺菌条件で実施されることや内容物の保存期間の長期化の要請に対応するため、より優れた耐熱圧性、ガスバリア性、透明性等が望まれている。かかる課題を解決するために、ポリエチレンテレフタレートよりも耐熱性、ガスバリア性に優れた材料であることが知られているポリエチレンナフタレートをポリエチレンテレフタレートにブレンドし、耐熱性、ガスバリア性、耐熱圧性に優れた包装材料を得ることが特開昭50−122549号公報に示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートは、両者間の相溶性が劣るため、通常それらの混合物は乳白色を呈し透明性に劣る。そのため、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートの透明なブレンド物を得るには溶融混合を行い、エステル交換反応を起こさせ、分子構造をランダム共重合体構造に近づける必要があり、十分な透明性を得るには樹脂の融点以上の温度での長時間の反応が必要となる。溶融混合の手法として、射出成形機でポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートを直接混合成形して透明なブレンド物を得る方法を検討したところ、小規模な生産機においては生産速度を遅くし、平均樹脂滞留時間を長くとれるので、透明なブレンド物を得ることができるが、近年開発されているアウトプット量が単位時間当たり300kgを越えるような高速ボトル生産設備においては、反応時間の制約があるため、透明な成形品は得られないという知見を得た。また、混練押出機でポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートを溶融混合する従来からの方法においても、高速生産設備では同上の理由から、透明な成形品を得ることは困難であった。
【0005】
本発明者は高速ボトル生産設備においても透明性を備えたボトルを得るために鋭意研究を行い、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートを所定の条件下で混練し、従来に比べエステル交換率が低いにも拘らず優れた透明性を有するポリエステル樹脂組成物の発明を為し、特許出願した(特願平9−194766号)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、該組成物から2軸延伸ブロー成形して得られるボトルの耐熱性、特にボトル口栓部の耐熱性については、炭酸飲料等を充填したボトルの熱間充填殺菌工程において、熱と圧力が集中的にかかるため、さらなる改良が望まれる。耐熱性を上げるために、ポリエチレンテレフタレート2軸延伸ボトルにおいて広く行われている口栓部の結晶化処理を行う方法は長時間を要し、生産速度の低下を招く。他には、原料樹脂のガラス転位温度を上昇させる方法が考えられる。これは、ボトル口栓部は延伸されないので、この部分の耐熱変形性が主として原料樹脂のガラス転位温度(Tg)によって決定されることに基づく。
【0007】
Tgを上げるための方法としては、Tgがポリエチレンテレフタレートよりも高いポリエチレンナフタレートをより多く配合させることが考えられる。しかし、ポリエチレンナフタレートは価格が高い。また、ポリエチレンナフタレートが樹脂全体の20モル%を超えると結晶性が低下し、2 軸延伸ブロー成形に適さない材料となる。従って、ポリエチレンナフタレートを多く配合することによる解決には限界がある。
【0008】
本発明者は、上記配合比率以外に、Tgを左右する要因として、樹脂組成物中のジエチレングリコールエステル単位の含有量に着目した。該単位は、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸又はそれらのエステル誘導体と、ジエチレングリコール又はその誘導体との反応により導かれる単位である。本発明者は、該単位含有量と樹脂Tgとの関係を調べ、該単位含有量が一定量以下の範囲内である樹脂を用いることによって、Tgが高く、耐熱変形性に優れた樹脂組成物を得ることを見出し、本発明に至ったものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、(A)ポリエチレンテレフタレートと(B)ポリエチレンナフタレートとを溶融混練してなるポリエステル樹脂組成物において、
イ)エチレンナフタレート単位の含有量が(A)と(B)の合計量に対して5〜15モル%であり、
ロ)エステル交換率が20%以下であり、且つ、
ハ)(A)ポリエチレンテレフタレート中のジエチレングリコールエステル単位の含有量が(A)の1.5 モル%以下であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物である。
【0010】
さらに、ポリエステル樹脂組成物中のジエチレングリコールエステル単位の含有量が(A)と(B)の合計量に対して1.5 モル%以下であることが好ましい。
【0011】
上記(B)ポリエチレンナフタレート中のエチレンナフタレート成分以外の他のエステル単位の含有量が8モル%以下であることが好ましい。
【0012】
また、(B)ポリエチレンナフタレートが、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートであることが好ましい。特に、(B)ポリエチレンナフタレートが、エチレンテレフタレート成分を8モル%含むポリエチレンテレフタレートナフタレートコポリマーであることが好ましい。
【0013】
加えて、本発明は、上記いずれかのポリエステル樹脂組成物からなるポリエステルボトルにも関する。
【0014】
【発明実施の形態】
本発明で用いられるポリエチレンテレフタレートは実質的に線状であり、テレフタル酸又はそのエステル誘導体と、エチレングリコール又はそのエステル誘導体とから導かれるエチレンテレフタレート単位を主成分とする。該ポリエチレンテレフタレートは、他のジカルボン酸及び/又は他のジヒドロキシ化合物から導かれる単位を含まないことが好ましい。
【0015】
さらに、本発明で使用するポリエチレンテレフタレートは、ジエチレングリコールエステル単位の含有量が一定量以下であることが必要である。該単位は、ポリエチレンテレフタレート製造における副生成物であるジエチレングリコールと、テレフタル酸又はそのエステル誘導体との反応により生成され得るもので、化学式(1)に示すような構造(2-エチレンオキシエチレンテレフタレート残基)を有すると考えられる。本発明者らは該単位の含有量と樹脂のTgとの関係について、種々のポリエチレンテレフタレートについて検討を重ねた。その結果、該単位の含有量が1.5 モル%以下、好ましくは1.4 モル%以下であるポリエチレンテレフタレートを用いることによって、ポリエチレンナフタレートのブレンド量を増やす手段に拠ること無く、原料ポリエステル樹脂ブレンド組成物において高いTgを実現することに成功した。
【0016】
【化1】
本発明においては、樹脂組成物の調製に際して、ポリエチレンテレフタレートのロット毎に上記単位の含有量を測定し、ポリエチレンテレフタレート中の該含有量が1.5 モル%以下のものを使用する。測定は、例えばNMRスペクトル法により、芳香族カルボン酸ジエチレングリコールエステルのジエチレン基におけるプロトンのピークを利用して行うことができ、その詳細については後述する。
【0017】
本発明で用いられるポリエチレンテレフタレートは、その固有粘度[ η](フェノールとテトラクロロエタンとの体積比1:1の混合溶媒中において30℃で測定)が、0.6 〜1.2 (dl/g)、好ましくは0.7 〜0.9 (dl/g)である。
【0018】
本発明で用いられるポリエチレンナフタレートは、ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとから導かれるエチレンナフタレート単位を主成分とする。ナフタレンジカルボン酸としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等があるが、特に2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
【0019】
また、上記ポリエチレンナフタレートは、ナフタレンジカルボン酸以外の他のジカルボン酸、及び/又はエチレングリコール以外の他のジヒドロキシ化合物から導かれるエステル単位を15モル%以下、好ましくは10モル%以下、より好ましくは8モル%以下の量で含有してもよい。他のジカルボン酸類としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、及びこれらのエステル誘導体が挙げられる。他のジヒドロキシ化合物としては、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ビスフェノール類、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジオール類、及びこれらのエステル誘導体が挙げられる。
【0020】
上記他のエステル単位は、ナフタレートコポリエステルポリマーの形で含まれることが好ましく、特に、エチレンテレフタレートとのコポリエステルポリマーが好ましい。なぜなら、そのようなコポリエステルポリマーはポリエチレンナフタレートホモポリマーに比べ、ポリエチレンテレフタレートと融点がより近いため、ポリエチレンテレフタレートとの溶融混合がより容易であるからである。コポリエステルにおける他のエステル成分の含有量は、15モル%以下、好ましくは10モル%以下である。特にエチレンテレフタレート単位を8モル%で含むポリエチレンテレフタレート−エチレン−2,6−ジナフタレートコポリマーが好ましい。
【0021】
本発明で用いられるポリエチレンナフタレートは、固有粘度[η](フェノールとテトラクロロエタンとの体積比1:1の混合溶媒中において30℃で測定)が0.4 〜1.0 であることが好ましく、より好ましくは0.4 〜0.8 (dl/g)である。
【0022】
本発明においては、最終的に得られる樹脂組成物中のジエチレングリコールエステル単位の含有量が1.5 モル%以下であることがより好ましく、従って、ポリエチレンナフタレート中のジエチレングリコールエステル単位の含有量も一定量以下であることが好ましい。ポリエチレンナフタレート中のジエチレングリコールエステル単位は、上記化学式(1)において、ベンゼン環がナフタレン環に置換されている構造を有するものと考えられ、さらにテレフタレートとのコポリマーの場合には、化学式(1)の構造の物も含まれ得る。好ましくは、樹脂組成物中のベースポリマーであるポリエチレンテレフタレート中のジエチレングリコールエステル単位含有量が1.4 モル%以下であり、且つポリエチレンナフタレート中のジエチレングリコールエステル成分の含有量が2.0 モル%以下である。
【0023】
本発明で用いられる(A)ポリエチレンテレフタレートと(B)ポリエチレンナフタレートとの混合比率は、(A)と(B)の合計量に対してエチレンナフタレート単位が5〜15モル%の範囲、好ましくは7〜13モル%である。エチレンナフタレート単位が上記下限値より少ないとボトルの耐熱性、ガスバリア性が不十分である。一方、上記上限値より多いとブレンド樹脂組成物の結晶化特性が失われ、本発明の樹脂のペレットを2次溶融成形する前の除湿乾燥時に、ペレット同志が融着する等の問題が生じるので好ましくない。
【0024】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、(A)ポリエチレンテレフタレートと(B)ポリエチレンナフタレートをそれぞれ、例えばペレットの状態で計量したのち、混練押出機により樹脂混合物の融点以上の温度で溶融混合することにより行う。混練押出機は脱気式、例えばベント付き2軸押出機等、であることが望ましい。ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートは予め乾燥することが望ましいが、脱気式混練押出機によれば、未乾燥のまま溶融混合することができる。溶融混合の温度は、樹脂混合物の融点以上、例えば樹脂温度で290〜330℃に設定する。押出条件としては、押出量と押出機スクリュウ回転数の比率を0.5 〜1.4 kg/hr・rpmの範囲で、好ましくは0.7 〜1.0 kg/hr・rpmの範囲で混練押出する。該比率が上記下限値より小さい場合は押出機の高い剪断力によって、樹脂における発熱が大きくなり樹脂劣化が起きて不適切である。さらに、押出量が低下するために量産性が損なわれる。一方、この比率が上記上限値より大きい場合は、透明性が悪くなる。得られる樹脂組成物は、例えばペレット形状へと成形することができる。
【0025】
本発明においてエステル交換率とは、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとのエステル相互交換率を意味し、NMRスペクトル法を用いて求めることができる。該測定法の詳細については後述する。本発明の樹脂組成物のエステル交換率は20%以下であり、量産性、樹脂劣化等の点から好ましくは18%以下である。ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートを、従来の射出成形法によりブレンドした樹脂組成物においては、通常エステル交換率が20%以下では不透明であり、30%以上でなければ透明にならない。交換率30%以上に至るためには高温且つ長時間の成形工程を要するため、樹脂劣化を招き、耐熱性、ボトル成形性等も低下し易い。
【0026】
次いで、このペレットを110〜130℃で2〜4時間空気中で加熱して、少なくとも表層を結晶化した後、140〜160℃で3〜6時間除湿乾燥するとペレット中の水分を通常、50ppm以下とすることができる。
【0027】
上記樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候安定剤、顔料、又は染料などの各種配合剤を配合してもよい。
【0028】
本発明のポリエステルボトルは、上記ペレットから公知のボトル製造方法により製造することができる。好ましくは、上記ペレットから、射出成形法によりボトルプリフォームを成形し、該プリフォームを2軸延伸ブロー成形することにより製造する。ボトルプリフォームの成形にあたり、溶融樹脂温度は樹脂の融点+5〜40℃、好ましくは+10〜20℃とする。溶融樹脂温度が樹脂の融点+5℃より低い場合は、溶融粘度が高過ぎて射出成形が困難である。一方、融点+40℃より高い場合は、アセトアルデヒド等の熱分解物の生成がより多くなり、飲料用ボトルとしての品質低下を来し得る。
【0029】
射出成形機としては、混練効果が高く、且つ溶融過程で生成するアセトアルデヒド等の熱分解物等を減圧または真空吸引して系外に除去できるベント式が好ましいが、通常の射出成形機を用いることもできる。
【0030】
2軸延伸ブロー成形は、プリフォームが延伸適温であれば、溶融温度から冷却する過程で行っても、または一旦室温付近に冷却してから再加熱した後に行ってもよい。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明のポリエステル樹脂組成物及びポリエステルボトルについて詳細に説明する。
【0032】
(I)使用した樹脂の個有粘度及びジエチレングリコールエステル単位の含有量は以下のとおりである。
【0033】
(A)ポリエチレンテレフタレート:
a.実施例1及び比較例1及び2
固有粘度 0.83(dl/g)
ジエチレングリコールエステル単位 1.3 モル%
b.参考例1
固有粘度 0.83(dl/g)
ジエチレングリコールエステル単位 1.7 モル%
c.参考例2及び比較例3
固有粘度 0.83(dl/g)、
ジエチレングリコールエステル単位 3.2 モル%
(B)ポリエチレンナフタレート:
エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位92モル%とエチレンテレフタレート単位8モル%からなるコポリマー、
固有粘度 0.50(dl/g)
ジエチレングリコールエステル単位 1.8 モル%
【0034】
(II)樹脂組成物の調製
実施例1
上記ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートを85対15重量%の比率(エチレンナフタレート単位11.4モル%)で定重量供給し、日本製鋼所社製同方向2軸押出機TEX65(スクリュウ径φ65mm、L/D=42)を用いて押出量250kg/hr、押出量対スクリュウ回転数比率=0.9の混練条件でブレンド樹脂ペレットを成形した。
【0035】
参考例1
ジエチレングリコールエステル単位含有量 1. 7モル%のポリエチレンテレフタレートを用いたことを除き、実施例1と同様の条件で溶融混合しブレンド樹脂ペレットを得た。
【0036】
参考例2
ジエチレングリコールエステル単位含有量が3.2 モル%であるポリエチレンテレフタレートを用いたことを除き、実施例1と同様の条件で溶融混合しブレンド樹脂ペレットを得た。
【0037】
比較例1
実施例1と同じポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートを、85対15重量%の比率で定重量供給し、日本製鋼所社製同方向2軸押出機TEX65(スクリュウ径φ65mm、L/D=42)を用いて押出量250 kg/hr、押出量対スクリュウ回転数比率=0.09の混練条件で、エステル交換率が28.2%のブレンド樹脂ペレットを成形した。
【0038】
比較例2
実施例1と同じポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートを、70対30重量%(エチレンナフタレート23.6モル%)の比率で、定重量供給し、日本製鋼所社製同方向2軸押出機TEX65(スクリュウ径φ65mm、L/D=42)を用いて押出量250 kg/hr、押出量対スクリュウ回転数比率=0.9 の混練条件で、ブレンド樹脂ペレットを成形した。
【0039】
比較例3
参考例2と同じポリエチレンテレフタレートを用い、70対30重量%(エチレンナフタレート23.6モル%)の比率で定重量供給し、日本製鋼所社製同方向2軸押出機TEX65(スクリュウ径φ65mm、L/D=42)を用いて押出量 250kg/hr、押出量対スクリュウ回転数比率= 0.9の混練条件で、ブレンドペレットを成形した。
【0040】
(III)樹脂組成物の評価
(イ)上記各条件で調製したペレットのガラス転移温度、固有粘度、エステル交換率、ジエチレングリコールエステル単位含有率を以下に示す方法により測定した。
【0041】
(1)ガラス転移温度
セイコー電子工業社製走査型熱量計DSC220Cを用いて、10℃/分で昇温して得られたチャートからガラス転移温度を求めた。
【0042】
(2)固有粘度
フェノール、1,1,2,2 −テトラクロロエタンの体積比1:1混合溶液100ccに0.5 gのポリエステル樹脂を溶かして、30℃にて、ウベローデ粘度計を用いて測定した。
【0043】
(3)エステル交換率
FT−NMR(日本電子製)を用いて、トリフルオロ酢酸とクロロホルムの体積比1:1混合溶液に試料を適当量溶解し、テトラメチルシランを標品として混合し、プロトンNMRスペクトルを測定し、ナフタレート−エチレン−テレフタレート結合、ナフタレート−エチレン−ナフタレート結合、テレフタレート−エチレン−テレフタレート結合の各結合に由来するピークの積分値を求め各結合の存在比率を求める。その各結合比率から下記に示す式により反応率を算出した。
【数1】
【0044】
(4)ジエチレングリコ−ルエステル単位含有量
エステル交換率と同様にプロトンNMRスペクトルを測定し、4.84ppm 付近に現れるエチレンテレフタレート単位中のプロトンに由来するピークと、4.20ppm 及び4.70ppm 付近に現れる芳香族カルボン酸ジエチレングリコ−ルエステル単位中のジエチレン基におけるプロトンに由来するピークの積分値を求め、その比率によりジエチレングリコ−ルエステル単位成分含有率を計算した。
【0045】
(ロ)さらに、各ブレンドペレットから、住友重機械工業製射出成形機SH-150A を用いて280 ℃のシリンダ温度で2mm ×110mm 角のシートを射出成形し、該シートよりテストピースを切削して下記耐熱性測定を行った。
【0046】
(1)動的粘弾性におけるtan δピーク温度
シートを12mm幅に切削してテストピースを調製し、レオメトリクス社粘弾性測定装置RDA2を用いて、以下の条件下での動的粘弾性測定により、tan δピーク温度を求めた。
昇温速度: 23℃→130 ℃ 、2 ℃/ 分
周波数: 10Hz 捩り
【0047】
(2)微小定荷重伸び試験
上記射出成形シートを2mm 幅に切削したテストピースについて、インテスコ社製微小定荷重伸び試験装置を用いて、引張り荷重に対する変形率を測定した。
試料サイズ:2mm ×2mm ×50mmL
荷重: 20kg/cm 2
昇温パターン:30→65℃(4 ℃/ 分)、以降65℃一定
変形率: 65℃×30分経過後の変形率
【0048】
(IV)ポリエステルボトルの調製及び評価
上記各ブレンドペレットから、住友重機械工業製射出成形機SH-150A を用いて280 ℃のシリンダ温度で、重量31g のプリフォームを成形し、それを110 ℃に再加熱しクルップコーポプラスト社製ブロー機LB-01E機にて内容量500ml のボトルを成形し、ボトル熱水充填試験及びボトル成形性の評価を行った。
【0049】
(1)ボトル熱水充填試験
得られたボトルに85℃の熱水を充填してキャップをし、3 分間放置後、水冷して口栓部内径をノギスにより測定し、充填前内径と比べた寸法変化率を求めた。
【0050】
(2)ボトル成形性
各条件で調製したボトル5本ずつについて、成形直後のボトル外観を目視して評価した。5本総てが型に忠実に成形され、かつ平坦部に立てた時に正立するものを○、1 本でも立てた時に傾くものがあった場合には△、一見して形状が型忠実でないものがあった場合には×とした。
上記各評価結果を表1にまとめた。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1と参考例1、又は2とを比較すると、実施例1の樹脂組成物はTg、tan δピーク温度が高く、且つ微小定荷重試験における変形率及び85℃熱水充填ボトルの口栓変化率が小さく、耐熱性に優れている。比較例1は、実施例1と同じ樹脂を用いたものであるが、エステル交換率が高くなるまで混練したために、樹脂の結晶性が低下し、ボトル成形性が悪かった。これに対し、実施例1の本発明組成物は、ボトル成形性がよいだけでなく、エステル交換率が7.3 %と低いが透明度も十分であり、且つ製造サイクルも短い。比較例2は、ポリエチレンナフタレートの配合量が多いものである。樹脂のTgは高いものの、個有粘度が低く、ボトルの成形性が悪かった。比較例3も、ポリエチレンナフタレートの配合量が多いが、ジエチレングリコールエステル単位の含有量が高いために配合量に相当するTgが得られず、且つボトル成形性も悪かった。
【0053】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の樹脂組成物は、
イ)ジエチレングリコ−ルエステル単位の含有量が低いので、樹脂のTgが高く、耐熱圧性の高いボトルを与える;
ロ)低いポリエチレンナフタレート配合量で、高いTgを有するので、ボトル成形性が損なわれない;
ハ)エステル交換率が20%以下であっても、透明度が十分高いボトルを与える;且つ、
ニ)高速生産設備でのボトルの生産が可能である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートを含むポリエステル樹脂組成物に関し、特に透明性、成形性および耐熱圧性に優れるポリエステルボトル成形用の原料樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック製ボトルは軽量性及び耐衝撃性に優れていることから、各種液体に対する包装容器として広く使用されており、中でもポリエチレンテレフタレートを延伸ブローして成るボトルは成形が容易であり、透明性、機械的強度に優れるため、ジュース、清涼飲料、炭酸飲料などの飲料充填用容器として広く用いられている。
【0003】
近年、内容物の充填が高温殺菌条件で実施されることや内容物の保存期間の長期化の要請に対応するため、より優れた耐熱圧性、ガスバリア性、透明性等が望まれている。かかる課題を解決するために、ポリエチレンテレフタレートよりも耐熱性、ガスバリア性に優れた材料であることが知られているポリエチレンナフタレートをポリエチレンテレフタレートにブレンドし、耐熱性、ガスバリア性、耐熱圧性に優れた包装材料を得ることが特開昭50−122549号公報に示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートは、両者間の相溶性が劣るため、通常それらの混合物は乳白色を呈し透明性に劣る。そのため、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートの透明なブレンド物を得るには溶融混合を行い、エステル交換反応を起こさせ、分子構造をランダム共重合体構造に近づける必要があり、十分な透明性を得るには樹脂の融点以上の温度での長時間の反応が必要となる。溶融混合の手法として、射出成形機でポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートを直接混合成形して透明なブレンド物を得る方法を検討したところ、小規模な生産機においては生産速度を遅くし、平均樹脂滞留時間を長くとれるので、透明なブレンド物を得ることができるが、近年開発されているアウトプット量が単位時間当たり300kgを越えるような高速ボトル生産設備においては、反応時間の制約があるため、透明な成形品は得られないという知見を得た。また、混練押出機でポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートを溶融混合する従来からの方法においても、高速生産設備では同上の理由から、透明な成形品を得ることは困難であった。
【0005】
本発明者は高速ボトル生産設備においても透明性を備えたボトルを得るために鋭意研究を行い、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートを所定の条件下で混練し、従来に比べエステル交換率が低いにも拘らず優れた透明性を有するポリエステル樹脂組成物の発明を為し、特許出願した(特願平9−194766号)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、該組成物から2軸延伸ブロー成形して得られるボトルの耐熱性、特にボトル口栓部の耐熱性については、炭酸飲料等を充填したボトルの熱間充填殺菌工程において、熱と圧力が集中的にかかるため、さらなる改良が望まれる。耐熱性を上げるために、ポリエチレンテレフタレート2軸延伸ボトルにおいて広く行われている口栓部の結晶化処理を行う方法は長時間を要し、生産速度の低下を招く。他には、原料樹脂のガラス転位温度を上昇させる方法が考えられる。これは、ボトル口栓部は延伸されないので、この部分の耐熱変形性が主として原料樹脂のガラス転位温度(Tg)によって決定されることに基づく。
【0007】
Tgを上げるための方法としては、Tgがポリエチレンテレフタレートよりも高いポリエチレンナフタレートをより多く配合させることが考えられる。しかし、ポリエチレンナフタレートは価格が高い。また、ポリエチレンナフタレートが樹脂全体の20モル%を超えると結晶性が低下し、2 軸延伸ブロー成形に適さない材料となる。従って、ポリエチレンナフタレートを多く配合することによる解決には限界がある。
【0008】
本発明者は、上記配合比率以外に、Tgを左右する要因として、樹脂組成物中のジエチレングリコールエステル単位の含有量に着目した。該単位は、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸又はそれらのエステル誘導体と、ジエチレングリコール又はその誘導体との反応により導かれる単位である。本発明者は、該単位含有量と樹脂Tgとの関係を調べ、該単位含有量が一定量以下の範囲内である樹脂を用いることによって、Tgが高く、耐熱変形性に優れた樹脂組成物を得ることを見出し、本発明に至ったものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、(A)ポリエチレンテレフタレートと(B)ポリエチレンナフタレートとを溶融混練してなるポリエステル樹脂組成物において、
イ)エチレンナフタレート単位の含有量が(A)と(B)の合計量に対して5〜15モル%であり、
ロ)エステル交換率が20%以下であり、且つ、
ハ)(A)ポリエチレンテレフタレート中のジエチレングリコールエステル単位の含有量が(A)の1.5 モル%以下であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物である。
【0010】
さらに、ポリエステル樹脂組成物中のジエチレングリコールエステル単位の含有量が(A)と(B)の合計量に対して1.5 モル%以下であることが好ましい。
【0011】
上記(B)ポリエチレンナフタレート中のエチレンナフタレート成分以外の他のエステル単位の含有量が8モル%以下であることが好ましい。
【0012】
また、(B)ポリエチレンナフタレートが、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートであることが好ましい。特に、(B)ポリエチレンナフタレートが、エチレンテレフタレート成分を8モル%含むポリエチレンテレフタレートナフタレートコポリマーであることが好ましい。
【0013】
加えて、本発明は、上記いずれかのポリエステル樹脂組成物からなるポリエステルボトルにも関する。
【0014】
【発明実施の形態】
本発明で用いられるポリエチレンテレフタレートは実質的に線状であり、テレフタル酸又はそのエステル誘導体と、エチレングリコール又はそのエステル誘導体とから導かれるエチレンテレフタレート単位を主成分とする。該ポリエチレンテレフタレートは、他のジカルボン酸及び/又は他のジヒドロキシ化合物から導かれる単位を含まないことが好ましい。
【0015】
さらに、本発明で使用するポリエチレンテレフタレートは、ジエチレングリコールエステル単位の含有量が一定量以下であることが必要である。該単位は、ポリエチレンテレフタレート製造における副生成物であるジエチレングリコールと、テレフタル酸又はそのエステル誘導体との反応により生成され得るもので、化学式(1)に示すような構造(2-エチレンオキシエチレンテレフタレート残基)を有すると考えられる。本発明者らは該単位の含有量と樹脂のTgとの関係について、種々のポリエチレンテレフタレートについて検討を重ねた。その結果、該単位の含有量が1.5 モル%以下、好ましくは1.4 モル%以下であるポリエチレンテレフタレートを用いることによって、ポリエチレンナフタレートのブレンド量を増やす手段に拠ること無く、原料ポリエステル樹脂ブレンド組成物において高いTgを実現することに成功した。
【0016】
【化1】
本発明においては、樹脂組成物の調製に際して、ポリエチレンテレフタレートのロット毎に上記単位の含有量を測定し、ポリエチレンテレフタレート中の該含有量が1.5 モル%以下のものを使用する。測定は、例えばNMRスペクトル法により、芳香族カルボン酸ジエチレングリコールエステルのジエチレン基におけるプロトンのピークを利用して行うことができ、その詳細については後述する。
【0017】
本発明で用いられるポリエチレンテレフタレートは、その固有粘度[ η](フェノールとテトラクロロエタンとの体積比1:1の混合溶媒中において30℃で測定)が、0.6 〜1.2 (dl/g)、好ましくは0.7 〜0.9 (dl/g)である。
【0018】
本発明で用いられるポリエチレンナフタレートは、ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとから導かれるエチレンナフタレート単位を主成分とする。ナフタレンジカルボン酸としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等があるが、特に2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
【0019】
また、上記ポリエチレンナフタレートは、ナフタレンジカルボン酸以外の他のジカルボン酸、及び/又はエチレングリコール以外の他のジヒドロキシ化合物から導かれるエステル単位を15モル%以下、好ましくは10モル%以下、より好ましくは8モル%以下の量で含有してもよい。他のジカルボン酸類としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、及びこれらのエステル誘導体が挙げられる。他のジヒドロキシ化合物としては、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ビスフェノール類、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジオール類、及びこれらのエステル誘導体が挙げられる。
【0020】
上記他のエステル単位は、ナフタレートコポリエステルポリマーの形で含まれることが好ましく、特に、エチレンテレフタレートとのコポリエステルポリマーが好ましい。なぜなら、そのようなコポリエステルポリマーはポリエチレンナフタレートホモポリマーに比べ、ポリエチレンテレフタレートと融点がより近いため、ポリエチレンテレフタレートとの溶融混合がより容易であるからである。コポリエステルにおける他のエステル成分の含有量は、15モル%以下、好ましくは10モル%以下である。特にエチレンテレフタレート単位を8モル%で含むポリエチレンテレフタレート−エチレン−2,6−ジナフタレートコポリマーが好ましい。
【0021】
本発明で用いられるポリエチレンナフタレートは、固有粘度[η](フェノールとテトラクロロエタンとの体積比1:1の混合溶媒中において30℃で測定)が0.4 〜1.0 であることが好ましく、より好ましくは0.4 〜0.8 (dl/g)である。
【0022】
本発明においては、最終的に得られる樹脂組成物中のジエチレングリコールエステル単位の含有量が1.5 モル%以下であることがより好ましく、従って、ポリエチレンナフタレート中のジエチレングリコールエステル単位の含有量も一定量以下であることが好ましい。ポリエチレンナフタレート中のジエチレングリコールエステル単位は、上記化学式(1)において、ベンゼン環がナフタレン環に置換されている構造を有するものと考えられ、さらにテレフタレートとのコポリマーの場合には、化学式(1)の構造の物も含まれ得る。好ましくは、樹脂組成物中のベースポリマーであるポリエチレンテレフタレート中のジエチレングリコールエステル単位含有量が1.4 モル%以下であり、且つポリエチレンナフタレート中のジエチレングリコールエステル成分の含有量が2.0 モル%以下である。
【0023】
本発明で用いられる(A)ポリエチレンテレフタレートと(B)ポリエチレンナフタレートとの混合比率は、(A)と(B)の合計量に対してエチレンナフタレート単位が5〜15モル%の範囲、好ましくは7〜13モル%である。エチレンナフタレート単位が上記下限値より少ないとボトルの耐熱性、ガスバリア性が不十分である。一方、上記上限値より多いとブレンド樹脂組成物の結晶化特性が失われ、本発明の樹脂のペレットを2次溶融成形する前の除湿乾燥時に、ペレット同志が融着する等の問題が生じるので好ましくない。
【0024】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、(A)ポリエチレンテレフタレートと(B)ポリエチレンナフタレートをそれぞれ、例えばペレットの状態で計量したのち、混練押出機により樹脂混合物の融点以上の温度で溶融混合することにより行う。混練押出機は脱気式、例えばベント付き2軸押出機等、であることが望ましい。ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートは予め乾燥することが望ましいが、脱気式混練押出機によれば、未乾燥のまま溶融混合することができる。溶融混合の温度は、樹脂混合物の融点以上、例えば樹脂温度で290〜330℃に設定する。押出条件としては、押出量と押出機スクリュウ回転数の比率を0.5 〜1.4 kg/hr・rpmの範囲で、好ましくは0.7 〜1.0 kg/hr・rpmの範囲で混練押出する。該比率が上記下限値より小さい場合は押出機の高い剪断力によって、樹脂における発熱が大きくなり樹脂劣化が起きて不適切である。さらに、押出量が低下するために量産性が損なわれる。一方、この比率が上記上限値より大きい場合は、透明性が悪くなる。得られる樹脂組成物は、例えばペレット形状へと成形することができる。
【0025】
本発明においてエステル交換率とは、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとのエステル相互交換率を意味し、NMRスペクトル法を用いて求めることができる。該測定法の詳細については後述する。本発明の樹脂組成物のエステル交換率は20%以下であり、量産性、樹脂劣化等の点から好ましくは18%以下である。ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートを、従来の射出成形法によりブレンドした樹脂組成物においては、通常エステル交換率が20%以下では不透明であり、30%以上でなければ透明にならない。交換率30%以上に至るためには高温且つ長時間の成形工程を要するため、樹脂劣化を招き、耐熱性、ボトル成形性等も低下し易い。
【0026】
次いで、このペレットを110〜130℃で2〜4時間空気中で加熱して、少なくとも表層を結晶化した後、140〜160℃で3〜6時間除湿乾燥するとペレット中の水分を通常、50ppm以下とすることができる。
【0027】
上記樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候安定剤、顔料、又は染料などの各種配合剤を配合してもよい。
【0028】
本発明のポリエステルボトルは、上記ペレットから公知のボトル製造方法により製造することができる。好ましくは、上記ペレットから、射出成形法によりボトルプリフォームを成形し、該プリフォームを2軸延伸ブロー成形することにより製造する。ボトルプリフォームの成形にあたり、溶融樹脂温度は樹脂の融点+5〜40℃、好ましくは+10〜20℃とする。溶融樹脂温度が樹脂の融点+5℃より低い場合は、溶融粘度が高過ぎて射出成形が困難である。一方、融点+40℃より高い場合は、アセトアルデヒド等の熱分解物の生成がより多くなり、飲料用ボトルとしての品質低下を来し得る。
【0029】
射出成形機としては、混練効果が高く、且つ溶融過程で生成するアセトアルデヒド等の熱分解物等を減圧または真空吸引して系外に除去できるベント式が好ましいが、通常の射出成形機を用いることもできる。
【0030】
2軸延伸ブロー成形は、プリフォームが延伸適温であれば、溶融温度から冷却する過程で行っても、または一旦室温付近に冷却してから再加熱した後に行ってもよい。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明のポリエステル樹脂組成物及びポリエステルボトルについて詳細に説明する。
【0032】
(I)使用した樹脂の個有粘度及びジエチレングリコールエステル単位の含有量は以下のとおりである。
【0033】
(A)ポリエチレンテレフタレート:
a.実施例1及び比較例1及び2
固有粘度 0.83(dl/g)
ジエチレングリコールエステル単位 1.3 モル%
b.参考例1
固有粘度 0.83(dl/g)
ジエチレングリコールエステル単位 1.7 モル%
c.参考例2及び比較例3
固有粘度 0.83(dl/g)、
ジエチレングリコールエステル単位 3.2 モル%
(B)ポリエチレンナフタレート:
エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位92モル%とエチレンテレフタレート単位8モル%からなるコポリマー、
固有粘度 0.50(dl/g)
ジエチレングリコールエステル単位 1.8 モル%
【0034】
(II)樹脂組成物の調製
実施例1
上記ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートを85対15重量%の比率(エチレンナフタレート単位11.4モル%)で定重量供給し、日本製鋼所社製同方向2軸押出機TEX65(スクリュウ径φ65mm、L/D=42)を用いて押出量250kg/hr、押出量対スクリュウ回転数比率=0.9の混練条件でブレンド樹脂ペレットを成形した。
【0035】
参考例1
ジエチレングリコールエステル単位含有量 1. 7モル%のポリエチレンテレフタレートを用いたことを除き、実施例1と同様の条件で溶融混合しブレンド樹脂ペレットを得た。
【0036】
参考例2
ジエチレングリコールエステル単位含有量が3.2 モル%であるポリエチレンテレフタレートを用いたことを除き、実施例1と同様の条件で溶融混合しブレンド樹脂ペレットを得た。
【0037】
比較例1
実施例1と同じポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートを、85対15重量%の比率で定重量供給し、日本製鋼所社製同方向2軸押出機TEX65(スクリュウ径φ65mm、L/D=42)を用いて押出量250 kg/hr、押出量対スクリュウ回転数比率=0.09の混練条件で、エステル交換率が28.2%のブレンド樹脂ペレットを成形した。
【0038】
比較例2
実施例1と同じポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートを、70対30重量%(エチレンナフタレート23.6モル%)の比率で、定重量供給し、日本製鋼所社製同方向2軸押出機TEX65(スクリュウ径φ65mm、L/D=42)を用いて押出量250 kg/hr、押出量対スクリュウ回転数比率=0.9 の混練条件で、ブレンド樹脂ペレットを成形した。
【0039】
比較例3
参考例2と同じポリエチレンテレフタレートを用い、70対30重量%(エチレンナフタレート23.6モル%)の比率で定重量供給し、日本製鋼所社製同方向2軸押出機TEX65(スクリュウ径φ65mm、L/D=42)を用いて押出量 250kg/hr、押出量対スクリュウ回転数比率= 0.9の混練条件で、ブレンドペレットを成形した。
【0040】
(III)樹脂組成物の評価
(イ)上記各条件で調製したペレットのガラス転移温度、固有粘度、エステル交換率、ジエチレングリコールエステル単位含有率を以下に示す方法により測定した。
【0041】
(1)ガラス転移温度
セイコー電子工業社製走査型熱量計DSC220Cを用いて、10℃/分で昇温して得られたチャートからガラス転移温度を求めた。
【0042】
(2)固有粘度
フェノール、1,1,2,2 −テトラクロロエタンの体積比1:1混合溶液100ccに0.5 gのポリエステル樹脂を溶かして、30℃にて、ウベローデ粘度計を用いて測定した。
【0043】
(3)エステル交換率
FT−NMR(日本電子製)を用いて、トリフルオロ酢酸とクロロホルムの体積比1:1混合溶液に試料を適当量溶解し、テトラメチルシランを標品として混合し、プロトンNMRスペクトルを測定し、ナフタレート−エチレン−テレフタレート結合、ナフタレート−エチレン−ナフタレート結合、テレフタレート−エチレン−テレフタレート結合の各結合に由来するピークの積分値を求め各結合の存在比率を求める。その各結合比率から下記に示す式により反応率を算出した。
【数1】
【0044】
(4)ジエチレングリコ−ルエステル単位含有量
エステル交換率と同様にプロトンNMRスペクトルを測定し、4.84ppm 付近に現れるエチレンテレフタレート単位中のプロトンに由来するピークと、4.20ppm 及び4.70ppm 付近に現れる芳香族カルボン酸ジエチレングリコ−ルエステル単位中のジエチレン基におけるプロトンに由来するピークの積分値を求め、その比率によりジエチレングリコ−ルエステル単位成分含有率を計算した。
【0045】
(ロ)さらに、各ブレンドペレットから、住友重機械工業製射出成形機SH-150A を用いて280 ℃のシリンダ温度で2mm ×110mm 角のシートを射出成形し、該シートよりテストピースを切削して下記耐熱性測定を行った。
【0046】
(1)動的粘弾性におけるtan δピーク温度
シートを12mm幅に切削してテストピースを調製し、レオメトリクス社粘弾性測定装置RDA2を用いて、以下の条件下での動的粘弾性測定により、tan δピーク温度を求めた。
昇温速度: 23℃→130 ℃ 、2 ℃/ 分
周波数: 10Hz 捩り
【0047】
(2)微小定荷重伸び試験
上記射出成形シートを2mm 幅に切削したテストピースについて、インテスコ社製微小定荷重伸び試験装置を用いて、引張り荷重に対する変形率を測定した。
試料サイズ:2mm ×2mm ×50mmL
荷重: 20kg/cm 2
昇温パターン:30→65℃(4 ℃/ 分)、以降65℃一定
変形率: 65℃×30分経過後の変形率
【0048】
(IV)ポリエステルボトルの調製及び評価
上記各ブレンドペレットから、住友重機械工業製射出成形機SH-150A を用いて280 ℃のシリンダ温度で、重量31g のプリフォームを成形し、それを110 ℃に再加熱しクルップコーポプラスト社製ブロー機LB-01E機にて内容量500ml のボトルを成形し、ボトル熱水充填試験及びボトル成形性の評価を行った。
【0049】
(1)ボトル熱水充填試験
得られたボトルに85℃の熱水を充填してキャップをし、3 分間放置後、水冷して口栓部内径をノギスにより測定し、充填前内径と比べた寸法変化率を求めた。
【0050】
(2)ボトル成形性
各条件で調製したボトル5本ずつについて、成形直後のボトル外観を目視して評価した。5本総てが型に忠実に成形され、かつ平坦部に立てた時に正立するものを○、1 本でも立てた時に傾くものがあった場合には△、一見して形状が型忠実でないものがあった場合には×とした。
上記各評価結果を表1にまとめた。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1と参考例1、又は2とを比較すると、実施例1の樹脂組成物はTg、tan δピーク温度が高く、且つ微小定荷重試験における変形率及び85℃熱水充填ボトルの口栓変化率が小さく、耐熱性に優れている。比較例1は、実施例1と同じ樹脂を用いたものであるが、エステル交換率が高くなるまで混練したために、樹脂の結晶性が低下し、ボトル成形性が悪かった。これに対し、実施例1の本発明組成物は、ボトル成形性がよいだけでなく、エステル交換率が7.3 %と低いが透明度も十分であり、且つ製造サイクルも短い。比較例2は、ポリエチレンナフタレートの配合量が多いものである。樹脂のTgは高いものの、個有粘度が低く、ボトルの成形性が悪かった。比較例3も、ポリエチレンナフタレートの配合量が多いが、ジエチレングリコールエステル単位の含有量が高いために配合量に相当するTgが得られず、且つボトル成形性も悪かった。
【0053】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の樹脂組成物は、
イ)ジエチレングリコ−ルエステル単位の含有量が低いので、樹脂のTgが高く、耐熱圧性の高いボトルを与える;
ロ)低いポリエチレンナフタレート配合量で、高いTgを有するので、ボトル成形性が損なわれない;
ハ)エステル交換率が20%以下であっても、透明度が十分高いボトルを与える;且つ、
ニ)高速生産設備でのボトルの生産が可能である。
Claims (6)
- (A)ポリエチレンテレフタレートと(B)ポリエチレンナフタレートとを溶融混練してなるポリエステル樹脂組成物において、
イ)エチレンナフタレート単位の含有量が(A)と(B)の合計量に対して5〜15モル%であり、
ロ)エステル交換率が20%以下であり、且つ、
ハ)(A)ポリエチレンテレフタレート中のジエチレングリコ−ルエステル単位の含有量が(A)ポリエチレンテレフタレートの1.5 モル%以下であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。 - ポリエステル樹脂組成物中のジエチレングリコ−ルエステル単位の含有量が(A)と(B)の合計量に対して1.5 モル%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
- (B)ポリエチレンナフタレート中のエチレンナフタレート成分以外の他のエステル成分の含有量が8モル%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリエステル樹脂組成物。
- (B)ポリエチレンナフタレートが、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のポリエステル樹脂組成物。
- (B)ポリエチレンナフタレートが、エチレンテレフタレート成分を8モル%含むポリエチレンテレフタレートナフタレートコポリマーである請求項1〜4のいずれか1つに記載のポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1つに記載のポリエステル樹脂組成物からなるポリエステルボトル。
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