JP3887887B2 - 回転速度検出装置付転がり軸受ユニット - Google Patents

回転速度検出装置付転がり軸受ユニット Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明に係る回転速度検出装置付転がり軸受ユニットは、自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持すると共に、この車輪の回転速度を検出する為に利用する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持するのに、転がり軸受ユニットを使用する。又、アンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)を制御する為には、上記車輪の回転速度を検出する必要がある。この為、上記転がり軸受ユニットに回転速度検出装置を組み込んだ、回転速度検出装置付転がり軸受ユニットにより、上記車輪を懸架装置に対して回転自在に支持すると共に、この車輪の回転速度を検出する事が、近年広く行なわれる様になっている。
【0003】
図12〜13は、この様な目的で使用される回転速度検出装置の従来構造の1例として、実開平7−31539号公報に記載されたものを示している。この回転速度検出装置付転がり軸受ユニットは、使用時にも回転しない静止輪である外輪1の内側に、使用時に回転する回転輪であるハブ2を回転自在に支持している。そして、このハブ2の一部に固定したエンコーダ3の回転速度を、上記外輪1に支持したセンサ4により検出自在としている。即ち、静止側周面である、上記外輪1の内周面には、それぞれが静止側軌道である、複列の外輪軌道5、5を設けている。又、回転側周面である、上記ハブ2及びこのハブ2に外嵌してナット6によりこのハブ2に対し結合固定した状態で上記ハブ2と共に上記回転輪を構成する内輪7の外周面には、それぞれが回転側軌道である、内輪軌道8、8を設けている。そして、これら各内輪軌道8、8と上記各外輪軌道5、5との間にそれぞれ複数個ずつの転動体9、9を、それぞれ保持器10、10により保持した状態で転動自在に設け、上記外輪1の内側に上記ハブ2及び内輪7を、回転自在に支持している。
【0004】
又、上記ハブ2の外端部(自動車への組み付け状態で幅方向外側となる端部を言い、図12の右端部)で上記外輪1の外端部から軸方向外方に突出した部分には、車輪を取り付ける為のフランジ11を設けている。又、上記外輪1の内端部(自動車への組み付け状態で幅方向中央側となる端部を言い、図12の左端部)には、この外輪1を懸架装置に取り付ける為の取付部12を設けている。又、上記外輪1の外端開口部と上記ハブ2の中間部外周面との間の隙間は、シールリング13により塞いでいる。尚、重量の嵩む自動車用の転がり軸受ユニットの場合には、上記複数個の転動体9、9として、図示の様な玉に代えて、テーパころを使用する場合もある。
【0005】
上述の様な転がり軸受ユニットに回転速度検出装置を組み込むべく、上記内輪7の内端部で上記内輪軌道8から外れた部分の外周面には、前記エンコーダ3を外嵌固定している。このエンコーダ3は、軟鋼板等の磁性金属板に塑性加工を施す事により、断面L字形で全体を円環状に形成したもので、円筒部15と円輪部16とを備え、このうちの円筒部15を上記内輪7の内端部に締まり嵌めで外嵌する事により、この内輪7の内端部に固定している。又、上記円輪部16には、それぞれがこの円輪部16の直径方向に長いスリット状の透孔17、17を多数、放射状に、円周方向に亙り等間隔で形成する事により、上記円輪部16の磁気特性を、円周方向に亙って交互に且つ等間隔で変化させている。
【0006】
更に、上記外輪1の内端開口部にはカバー18を、上記エンコーダ3の円輪部16の内側面に対向する状態で、嵌合固定している。金属板を塑性加工して成る、このカバー18は、上記外輪1の内端開口部に内嵌固定自在な嵌合筒部19と、この内端開口部を塞ぐ塞ぎ板部20とを有する。この塞ぎ板部20の中央部には、有底円筒状の膨出部21を形成して、この塞ぎ板部20と前記ナット6との干渉を防止している。又、この塞ぎ板部20の外周寄り部分で、この膨出部21よりも直径方向外側部分には透孔22を形成し、この透孔22を通じて上記センサ4の検知部24を、上記カバー18の内側に挿入している。又、上記センサ4の中間部外周面には取付フランジ25を固設しており、この取付フランジ25を上記カバー18の塞ぎ板部20に、止めねじ26、26で固定する事により、上記センサ4を上記カバー18に、所定の位置関係で結合固定している。この様にセンサ4をカバー18に結合固定した状態で、上記検知部24の先端面は、上記エンコーダ3の円輪部16の内側面に、微小隙間を介して対向する。
【0007】
上述の様な回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの使用時には、前記外輪1の外周面に固設した取付部12を懸架装置に対して図示しないボルトにより結合固定すると共に、前記ハブ2の外周面に固設したフランジ11に車輪を、このフランジ11に設けたスタッド27により固定する事で、上記懸架装置に対して上記車輪を回転自在に支持する。この状態で車輪が回転すると、上記センサ4の検知部24の端面近傍を、上記円輪部16に形成した透孔17、17と、円周方向に隣り合う透孔17、17同士の間に存在する柱部とが交互に通過する。この結果、上記センサ4内を流れる磁束の密度が変化し、このセンサ4の出力が変化する。この様にしてセンサ4の出力が変化する周波数は、上記車輪の回転数に比例する。従って、上記センサ4の出力を図示しない制御器に送れば、ABSやTCSを適切に制御できる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
図12〜13に示した従来構造の場合には、1対の止めねじ26、26により、センサ4をカバー18に結合固定している。従って、回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの組立工場で上記センサ4をカバー18に取り付ける作業は面倒であり、作業時間を要する為、回転速度検出装置付転がり軸受ユニットのコストが嵩む原因となる。又、修理等の為、上記センサ4を上記カバー18から取り外し、再び装着する作業も面倒で、その分修理に要するコストを高くする原因となる。
本発明は、この様な事情に鑑みて、センサを、静止輪である外輪若しくはこの外輪を固定する固定部材に着脱する作業を容易且つ迅速に行なえて、コスト低減を図れる回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの構造を実現すべく考えたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットは、内周面に外輪軌道を有し、使用時にも回転しない外輪と、上記外輪軌道と対向する内輪軌道を外周面に有し、使用時に回転する内輪と、上記外輪軌道と上記内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、上記内輪の一部にこの内輪と同心に固定された、円周方向に亙る特性を交互に且つ等間隔に変化させたエンコーダと、検知部を有し、この検知部を上記エンコーダの一部に対向させた状態で上記外輪の一部に支持され、上記エンコーダの特性の変化に対応して出力信号を変化させるセンサとを備える。
【0010】
特に、本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットに於いては、上記外輪の一部で上記エンコーダの一部と対向する部分には、上記センサを保持したホルダの少なくとも先端寄り部分を挿入自在な挿入孔が設けられており、上記センサを保持したホルダの一部で上記先端寄り部分から外れた部分には、上記挿入孔の開口周縁部に当接する事により、上記センサを保持したホルダの上記挿入孔の軸方向に亙る位置決めを図る位置決め部が設けられており、両端部に互いに同心に形成した1対の係止脚部の基端部と中間部に形成した抑え部の両端部とを1対の連結部により連結して成る結合ばねを構成する上記両係止脚部を、それぞれが上記外輪の外周面に、この外輪の内周面にまで貫通しない状態で互いに同心に形成された1対の凹孔に係止する事により、上記外輪に対して上記結合ばねを、上記両係止脚部を中心とする揺動自在に支持しており、この結合ばねを構成する上記抑え部で上記位置決め部を上記挿入孔の開口周縁部に押圧する事により、上記センサを保持したホルダを上記外輪に対して着脱自在に装着しており、この外輪の端部に、このセンサ及び上記エンコーダを設置した空間と外部空間とを遮断する密封シール部材を設けている。
【0011】
【作用】
上述の様に構成する本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットが、自動車の懸架装置に対して車輪を回転自在に支持すると共に、この車輪の回転速度を検出する際の作用自体は、前述した従来構造の場合と同様である。
特に、本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの場合には、センサを保持したホルダを外輪に着脱する作業を、容易且つ迅速に行なえる。
【0012】
先ず、上記センサを保持したホルダを上記外輪に装着する際には、上記センサを保持したホルダの先端寄り部分を挿入孔に挿入し、位置決め部をこの挿入孔の開口周縁部に当接させる。次いで、1対の係止脚部を上記外輪の外周面に形成された1対の凹孔に係止した結合ばねの抑え部を、上記センサを保持したホルダに係合させ、上記位置決め部を上記挿入孔の開口周縁部に押圧する。上記センサを保持したホルダを上記外輪から取り外す際には、これとは逆に、上記結合ばねの抑え部を上記外輪から外した後、上記センサを保持したホルダの先端寄り部分を挿入孔から抜き取る。
【0013】
上記結合ばねの抑え部を、上記センサを保持したホルダの一部に係合させたり、外したりする作業は、止めねじを緊締したり弛めたりする作業に比べて、容易且つ迅速に行なえる。従って、上記センサを保持したホルダを、上記外輪に着脱する作業に要する手間を軽減して、回転速度検出装置付転がり軸受ユニット自体のコスト、並びに修理に要するコストの低減を図れる。
又、上記両係止脚部を係止する為に、上記外輪の外周面に形成する凹孔を、この外輪の内周面にまで貫通させず、且つ、この外輪の端部に密封シール部材を設けている為、外部からこの外輪の外周面に吹き付けられる泥水等の異物が、この外輪の内側に侵入するのを防止できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1〜11は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本発明の特徴は、転がり軸受ユニットを構成する静止輪である外輪に、センサをホルダに保持して成るセンサユニット39を着脱する部分の構造にある。外輪1aに対して回転輪であるハブ2a及び内輪7を回転自在に支持して成る、転がり軸受ユニットの構造及び作用は、基本的には、前述の図12〜13に示した従来構造と同様であるので、同等部分には同一符号を付して重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分並びに前述した従来構造と異なる部分を中心に説明する。尚、本発明の実施の形態を表す図は、前述の従来構造を表した図12とは、車両の幅方向に関する内外方向が左右逆になっている。又、前述の従来構造が、非駆動輪(FF車の後輪、FR車の前輪)を支持する為の転がり軸受ユニットであったのに対して、本例の場合には、駆動輪(FF車の前輪、FR車の後輪、4WD車の全輪)を支持する為の転がり軸受ユニットに本発明を適用している。この為、車輪を支持するハブ2aは、内周面にスプライン孔を有する円筒状とし、このハブ2aの内側に等速ジョイント28の軸29を挿通自在としている。
【0015】
静止輪である外輪1aの内端部(図1の右端部)は、次述するエンコーダ3aを固定する内輪7の内端部よりも軸方向内側(図1の右側)に突出させている。そして、この外輪1aの内端部で、上記内輪7の内端部よりも軸方向内側へ突出した部分の一部に、上記外輪1aの外周面と内周面とを貫通させる挿入孔30を設けている。
【0016】
又、上記外輪1aの内端開口部と上記等速ジョイント28の外周面との間の環状隙間は、密封シール部材31により密に塞いでいる。この密封シール部材31は、金属板を折り曲げる事により断面L字形で全体を円環状に形成した芯金32と、この芯金32を構成する円輪部33の内周縁部に全周に亙って添着した、ゴム、エラストマー等の弾性材製のシールリップ34とから成る。そして、上記芯金32の円筒部35を上記外輪1aの内端開口部に、締まり嵌めで内嵌固定する事により、この外輪1aの内端開口部を密に塞いでいる。上記シールリップ34の先端縁は、前記等速ジョイント28の外周面に摺接させている。
【0017】
尚、この様な密封シール部材31の芯金32は、プレス加工により造る為、本来、良好な加工精度を得る事が難しい。但し、本例の場合には、上記外輪1aの内端部を、上記内輪7の内端部よりも軸方向内側に突出させており、又、この外輪1aを加工精度の良好な削り加工により仕上げている。従って、上記芯金32の内端面は上記外輪1aの内端面から大きく突出させる必要はなく、又、上記密封シール部材31は単純な形状である為、上記外輪1aと芯金32とは、それぞれの内端面同士をほぼ面一に組み合わせることができる。この結果、上記芯金32を上記外輪1aの内端部に内嵌した状態での、上記円輪部33及びこの円輪部33に添着したシールリップ34の真円度を十分に確保できる。従って、このシールリップ34を、全周に亙って上記等速ジョイント28の外周面に、十分な接触圧で摺接させ、上記外輪1aに対する上記密封シール部材31の密封性能を良好に維持できる。
【0018】
一方、前記ハブ2aと共に回転輪を構成する内輪7の内端部(図1の右端部)には、上記エンコーダ3aを外嵌固定している。このエンコーダ3aは、例えば支持環と永久磁石とから成る。このうちの支持環は、SPCC等の磁性金属板を折り曲げる事により、断面L字形で全体を円環状に形成し、上記内輪7の内端部に締まり嵌めで外嵌固定している。又、上記永久磁石は、例えばフェライト粉末を混入したゴムを上記支持環を構成する円輪部の内側面に、焼き付け等により添着して成る。この永久磁石は、例えば軸方向(図1の左右方向)に亙って着磁すると共に、着磁方向を円周方向に亙り交互に且つ等間隔で変化させている。従って、上記エンコーダ3aの内側面には、S極とN極とが円周方向に亙り交互に且つ等間隔で配置されている。
【0019】
又、上記内輪7の内端部よりも軸方向内側へ突出した上記外輪1aの内端部の一部で、上記エンコーダ3aよりも少し内方に寄った部分には、断面が円形の前記挿入孔30を、上記外輪1aの直径方向に亙り、この外輪1aの外周面と内周面とを貫通させる状態で設けている。そして、上記外輪1aの外周面で、上記挿入孔30の開口周縁部には、図2に示す様に、この挿入孔30の軸方向に対して垂直な平面部38を形成している。そして、上記挿入孔30内に、センサを保持したホルダに相当するセンサユニット39の先端寄り部分である、挿入部36を挿入している。このセンサユニット39は、ホール素子、磁気抵抗素子(MR素子)等、磁束の流れ方向に応じて特性を変化させる磁気検出素子並びにこの磁気検出素子の出力波形を整える為の波形整形回路を組み込んだICと、上記永久磁石から出る(或は上記永久磁石に流れ込む)磁束を上記磁気検出素子に導く為の、磁性材製のポールピース等とを、合成樹脂製のホルダ中に包埋保持して成る。又、上記ICから整形された波形として出る出力信号を図示しない制御器に送る為のハーネス40の端部を、(コネクタ等を介する事なく)直接上記センサユニット39に接続している。
【0020】
この様なセンサユニット39は、先端(図1、3、4の下端)寄り部分に設けた挿入部36と、上記挿入部36の基端側(図1、3、4の上端側)に設けた、位置決め部に相当する外向フランジ状の鍔部42とを備える。又、上記挿入部36は、上記挿入孔30をがたつきなく挿通自在な円柱状の基端側挿入部37と、断面が矩形である角柱状の先端側挿入部41とから成る。そして、この先端側挿入部41の先端部外側面(図1の左側面)に、上記エンコーダ3aを構成する永久磁石の内側面(図1の右側面)と対向する検出部を設けている。又、上記基端側挿入部37の中間部外周面には係止溝43を、全周に亙って形成すると共に、この係止溝43にOリング44等の密封部材を係止している。上記基端側挿入部37を上記挿入孔30に挿通した状態では、上記Oリング44がこの挿入孔30の内周面と上記係止溝43の底面との間で弾性的に圧縮されて、上記基端側挿入部37の外周面と上記挿入孔30の内周面との間をシールする。即ち、上記Oリング44は、泥水等の異物がこの挿入孔30を通じて上記外輪1aの内側に進入するのを防止する。この様に、この外輪1aと上記センサユニット39の挿入部36との間をシールする事により、磁性粉等の異物が前記エンコーダ3aを構成する永久磁石の側面に付着する事を防止し、回転速度検出の精度が悪化する事を防止している。尚、上記外輪1aと上記センサユニット39の挿入部36との間をシールする為のシールリングとして、上述の様なOリング44に代えて、断面形状がX字形であるXリング等の他のシールリングを使用すれば、上記挿入孔30に上記センサユニット39の基端側挿入部37を挿入する為に要する力を低減して、このセンサユニット39の装着作業の容易化を図る事もできる。更に、密封部材は、上記鍔部42と前記平面部38との間で挟持する、シート状のパッキングであっても良い。尚、上記先端側挿入部41を角柱状とした事により、上記センサユニット39を挟んで対向する上記エンコーダ3aと前記密封シール部材31との間の軸方向距離を縮める事ができ、回転速度検出装置付転がり軸受ユニット全体の軸方向寸法の短縮化を図れる。更に、本例では、上記密封シール部材31の円筒部35の一部を、上記挿入孔30の開口部に掛かる(この挿入孔30の内端開口の一部を塞ぐ)位置にまで延長させている。これにより上記外輪1aの軸方向寸法を徒に大きくする事なく、この外輪1aと上記円筒部35との必要な嵌合面積を確保している。
【0021】
上記センサユニット39の基端部に設けた、位置決め部として機能する上記鍔部42の内周側面(図1の下面)は平坦面として、上記外輪1aに形成した平面部38に当接させ、次述する結合ばね45により、上記外輪1aに結合固定する。弾性部材である、この結合ばね45は、ステンレスのばね鋼、クロムメッキ処理を施したばね鋼等、弾性及び耐食性を有する金属製の線材を、図5に示す様に曲げ形成して成る。この結合ばね45は、両端部に形成した1対の係止脚部46、46と、上記鍔部42を上記平面部38に向け抑え付ける為に、中間部に形成した抑え部47と、この抑え部47の両端部と上記各係止脚部46、46の基端部とを連結する為の、1対の連結部48、48とから成る。上記各係止脚部46、46は、互いに近づき合う方向に折り曲げて、同軸上に配置している。又、上記抑え部47は、中間部に形成した、それぞれが四分円弧よりも少し小さな円弧状である1対の湾曲部49、49と、これら各湾曲部49、49に挟まれた中央部分に設けられ、上記各連結部48、48とは、反対方向に折れ曲った摘み部51と、両端部に存在し互いに反対方向に折れ曲った直線部50、50とから成る。又、上記各連結部48、48は、先端側に設けた第一の円弧部52、52と、基端側に設けた第二の円弧部53、53とをそれぞれ直列に配置して成る。これら各円弧部52、53は、それぞれ結合ばね45の外側が凸となる方向に湾曲している。そして、これら第一、第二の円弧部52、53同士の間部分を第一の係止部54、54とし、上記結合ばね45の中央寄り部分である上記第二の円弧部53、53の一端部を第二の係止部55、55としている。
【0022】
この様な結合ばね45を構成する上記各係止脚部46、46の先端を枢支する為、前記外輪1aの外周面で、前記挿入孔30を中心とした直径方向反対側2箇所位置には、それぞれが上記外輪1aの内周面にまで貫通しない(有底の)1対の凹孔56を、互いに同心に設けている。この様にこれら凹孔56を上記外輪1aの内周面にまで貫通させない理由は、外部から上記外輪1aの外周面に吹き付けられる泥水等の異物が、上記外輪1aの内側に侵入するのを防止する為である。そして、上記各凹孔56に上記各係止脚部46、46を係止し、上記外輪1aに対して上記結合ばね45を、上記1対の係止脚部46、46を中心とする揺動自在に支持している。
【0023】
上記各係止脚部46、46が上記各凹孔56から外れない様にする為、上記結合ばね45の自由状態での、上記各係止脚部46、46の先端同士の間隔D46は、上記1対の凹孔56の開口部同士の間隔D56(図示せず)よりも十分に小さく(D46<D56)している。又、上記結合ばね45の自由状態での、上記1対の第一の係止部54、54同士の間隔及び上記1対の第二の係止部55、55同士の間隔は、それぞれ次の様に規制する。即ち、上記各係止脚部46、46同士の間隔を弾性的に押し広げ、これら各係止脚部46、46を上記各凹孔56に係止した状態で、上記結合ばね45をこれら各係止脚部46、46と各凹孔56との係合部を中心に揺動させた場合に、上記各第一の係止部54、54及び各第二の係止部55、55が、上記外輪1aの内端面と少し干渉して、上記結合ばね45の揺動変位を制限する様にしている。尚、図示の例では、上記1対の凹孔56は、それぞれ上記外輪1aの直径方向反対位置に形成したが、上記1対の凹孔56は、互いに同心に形成すれば、必ずしも直径方向反対位置に設けなくても良い。例えば、上記各係止脚部46、46の係止代を大きくすべく、各凹孔56を深くする為、図示の位置とは円周方向に外れた位置に形成しても良い。
【0024】
一方、前記センサユニット39に設けた前記鍔部42の基端面(先端側挿入部41と反対側の面で、図1、3、4の上端面)には、上記結合ばね45の抑え部47をがたつきなく係合させる為の抑え溝57を形成している。この抑え溝57は、前記ハーネス40の基端部を囲む状態で設けた湾曲部58と、この湾曲部58の両端から互いに逆方向に折れ曲がり、上記鍔部42の外周縁に開口した1対の直線部59、59とから成る。又、上記鍔部42の基端面の一部外周寄り部分で、上記湾曲部58の凸側に対向する部分には、傾斜面60を形成している。この傾斜面60は、上記鍔部42の厚さが、この鍔部42の端縁に向かう程小さくなる方向に傾斜している。又、上記抑え溝57は、上記結合ばね45の抑え部47を係合させた状態で、この抑え部47が不用意に外れる事を防止すると共に、前記挿入孔30内での上記センサユニット39の円周方向に関する位置決めを図る。尚、上記外輪1aに平面部38を形成せずに、センサユニット39の位置決め部として機能する鍔部42の内周側面を、断面が上記外輪1aの外周面と同じ曲率を有する円弧状凹面とする事もできる。この様な凹面の加工は、高精度で行なえる為、上記センサユニット39の円周方向(挿入孔30内での回転方向)に関する位置決めをより正確に行なえる。
【0025】
それぞれが上述の様に構成される各部材を組み合わせて、本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットを構成すべく、上記センサユニット39を前記外輪1aに装着する作業は、次の様にして行なう。先ず、上記結合ばね45を上記外輪1aに結合する場合、上記結合ばね45の各係止脚部46、46同士の間隔を弾力に抗して押し広げつつ、これら各係止脚部46、46を上記各凹孔56に挿入して、これら各係止脚部46、46を各凹孔56内に、揺動変位自在に係合させる。そして、上記結合ばね45を上記各係止脚部46、46を中心として、前記抑え部47を上記挿入孔30に近づけるべく、図6の反時計方向に揺動させる。この揺動に伴い、前記1対の第一の係止部54、54が、上記外輪1aの内端面に突き当たる。この状態で更に上記結合ばね45を揺動させると、図6〜7に示す様に、上記各第一の係止部54、54が直径方向外方に弾性変形しつつ、上記外輪1aの外周面に乗り上がる。但し、前記1対の第二の係止部55、55が上記外輪1aの内端面に突き当たり、上記抑え部47がそれ以上上記挿入孔30に近づく方向(図6の反時計方向)に、上記結合ばね45が揺動する事を阻止する。この状態では、上記各第一の係止部54、54が上記外輪1aの外周面を弾性的に押圧する為、上記結合ばね45は、上記抑え部47が上記挿入孔30から遠ざかる方向(図6の時計方向)にも、不用意に揺動する事がない。従って、この状態で結合ばね45は外輪1aに仮固定され、回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの搬送作業、並びに車両への組み付け作業時に、上記結合ばね45がぶらつく事を阻止する。
【0026】
回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの製造メーカーから自動車の組立工場へは、この様に第一の係止部54、54を外輪1aの外周面に乗り上げ、上記結合ばね45を上記外輪1aに仮固定した状態で納入する。尚、この様な状態で、上記結合ばね45の外接円の直径はナックルの支持孔69(図7)の内径及び外軸1aの大径部62の外径以下になる様にしている。従って、上記結合ばね45が、上記外輪1aの大径部62を上記ナックルの支持孔69に挿入しつつ、回転速度検出装置付転がり軸受ユニットを自動車の懸架装置に支持する作業の妨げとなる事はない。又、回転速度検出装置付転がり軸受ユニットを前記等速ジョイント28の軸29と結合する際には、この等速ジョイント28の一部で、車両の内側に向かう程直径が大きくなった円錐状のベル部61の外周面が、上記結合ばね45を構成する抑え部47を押圧し、前記各第二の係止部55、55を直径方向外方に変位させつつ、上記結合ばね45を、図6、8の反時計方向に押圧する。この結果、上記各第二の係止部55、55が、上記外輪1aの外周面に乗り上がる。
【0027】
回転速度検出装置付転がり軸受ユニットは、自動車の組立工場で上述した様に、上記ナックルの支持孔69の内側に上記外輪1aを、上記結合ばね45を装着した側から挿入し、上記外輪1aの大径部62を上記支持孔69に内嵌する。これと同時に、上記ハブ2aを上記等速ジョイント28の軸29に、スプライン係合させる。この際、上述した様に、上記結合ばね45を構成する抑え部47が、上記等速ジョイント28のベル部61の外周面に突き当たり、このベル部61が上記抑え部47を押圧して、この抑え部47が上記挿入孔30に近づく方向に上記結合ばね45を揺動させる。従って、この状態で上記各第二の係止部55、55が上記外輪1aの外周面に乗り上がり、上記結合ばね45を小さな力で揺動自在となる。但し、図8に示す様に、上記結合ばね45に力を加えない状態では、上記抑え部47が上記ベル部61に当接した状態のままとなり、上記抑え部47が上記挿入孔30の開口部を塞がず、この抑え部47が前記センサユニット39を上記挿入孔30に挿入する際の妨げとなる事はない。
【0028】
次に、図9に示す様に、上記センサユニット39の先端寄り部分である挿入部36を、上記挿入孔30の内側に挿入し、更に図10に示す様に、前記鍔部42を前記外輪1aの平面部38に当接させる。この状態で、上記センサユニット39を構成する先端側挿入部41の先端面に設けた検出部と前記エンコーダ3aを構成する永久磁石の内側面との間には、所望の厚さ寸法(例えば0.5mm程度)の微小隙間が存在する様に、各部の寸法を規制している。
【0029】
次に、図10に示す様に、上記結合ばね45の抑え部47の中間部に設けた摘み部51を摘んで、上記抑え部47が上記挿入孔30に近づく方向に上記結合ばね45を図10の反時計方向に揺動させる。この状態では、上記第一、第二の係止部54、55が、何れも、上記外輪1aの外周面に乗り上がっている為、上記結合ばね45は小さな力で揺動させる事ができる。そして、図11に示す様に、上記抑え部47を、上記センサユニット39の基端面に設けた抑え溝57に係合させる。この際、上記抑え部47は、上記センサユニット39の鍔部42の上端面に設けた傾斜面60に乗り上がる為、上記抑え溝57との係合作業を楽に行える。
【0030】
上述の様にして、上記抑え部47を上記抑え溝54に係合させた状態では、上記結合ばね45の抑え部47が、結合ばね45自体の弾力により、上記鍔部42を上記外輪1aの平面部38に向け、十分に大きな力(例えば10kgf 程度)で抑え付けて、上記センサユニット39を上記外輪1aに結合固定する。上記抑え部47と抑え溝57との係合力は十分に大きい為、自動車の走行時の振動等により、上記結合ばね45が上記センサユニット39から外れる事はない。又、上記抑え部47と抑え溝57との係合により、上記センサユニット39が前記挿入孔30の内側で回転する事を防止する。従って、センサの検出部と前記エンコーダ3aの内側面とを、確実に対向させたままの状態に維持できる。
【0031】
交換・修理等の為、上記センサユニット39を上記外輪1aから取り外す際には、上述した装着作業とは逆に、先ず、上記結合ばね45の抑え部47を上記センサユニット39の抑え溝57から取り外す。この取り外し作業は、先ず上記抑え部47の摘み部51を摘んで、上記結合ばね45を上記抑え部47が上記挿入孔30から遠ざかる方向に揺動させる。この揺動に伴って上記抑え部47は、直径方向外方に変位しつつ、上記抑え溝57から抜け出る。この様にして上記抑え部47を上記抑え溝57から取り外した後、上記センサユニット39の挿入部36を、前記挿入孔30の内側から抜き取る。
【0032】
上記結合ばね45の抑え部47を、上記センサユニット39の抑え溝57に係合させたり、外したりする作業は、止めねじを緊締したり弛めたりする作業に比べて、容易且つ迅速に行なえる。従って、本発明によれば、上記センサユニット39を上記外輪1aに着脱する作業に要する手間を軽減して、回転速度検出装置付転がり軸受ユニット自体の組み付けに要するコスト、並びに交換・修理に要するコストの低減を図れる。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた通り構成され作用するので、センサを保持したホルダを、外輪に着脱する作業に要する手間を軽減して、回転速度検出装置付転がり軸受ユニット自体のコスト、並びに修理に要するコストの低減を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の第1例を示す部分断面図。
【図2】 密封シール部材を装着した外輪のみを取り出して示す斜視図。
【図3】 ハーネスの端部及びセンサユニットのみを取り出して示す斜視図。
【図4】 図3の上方から見た斜視図。
【図5】 センサユニットと外輪とを結合する為の結合ばねの斜視図。
【図6】 転がり軸受ユニットに結合ばねを仮固定した状態で示す部分側面図。
【図7】 図6の右方から見た図。
【図8】 結合ばねを仮固定した転がり軸受ユニットを等速ジョイントに結合した状態で示す、図6と同様の図。
【図9】 図8の状態の転がり軸受ユニットにセンサユニットを装着する状態を示す、図6と同様の図。
【図10】 センサユニットを転がり軸受ユニットに結合固定すべく、結合ばねを揺動させる状態を示す、図6と同様の図。
【図11】 結合ばねの揺動を完了して、転がり軸受ユニットとセンサユニットとを結合固定した状態を示す、図6と同様の図。
【図12】 従来構造の1例を示す、図13のB−O−C断面図。
【図13】 図12の左方から見た図。
【符号の説明】
1、1a、1b 外輪
2、2a、2b ハブ
3、3a エンコーダ
4 センサ
5 外輪軌道
6 ナット
7、7a 内輪
8 内輪軌道
9 転動体
10 保持器
11 フランジ
12 取付部
13 シールリング
15 円筒部
16 円輪部
17 透孔
18 カバー
19 嵌合筒部
20 塞ぎ板部
21 膨出部
22 透孔
24 検知部
25 取付フランジ
26 止めねじ
27 スタッド
28 等速ジョイント
29 軸
30、30a 挿入孔
31 密封シール部材
32 芯金
33 円輪部
34 シールリップ
35 円筒部
36 挿入部
37 基端側挿入部
38 平面部
39 センサユニット
40 ハーネス
41 先端側挿入部
42 鍔部
43 係止溝
44 Oリング
45 結合ばね
46 係止脚部
47 抑え部
48 連結部
49 湾曲部
50 直線部
51 摘み部
52 第一の円弧部
53 第二の円弧部
54 第一の係止部
55 第二の係止部
56 凹孔
57 抑え溝
58 湾曲部
59 直線部
60 傾斜面
61 ベル部
62 大径部
63 段部
69 支持孔

Claims (1)

  1. 内周面に外輪軌道を有し、使用時にも回転しない外輪と、上記外輪軌道と対向する内輪軌道を外周面に有し、使用時に回転する内輪と、上記外輪軌道と上記内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、上記内輪の一部にこの内輪と同心に固定された、円周方向に亙る特性を交互に且つ等間隔に変化させたエンコーダと、検知部を有し、この検知部を上記エンコーダの一部に対向させた状態で上記外輪の一部に支持され、上記エンコーダの特性の変化に対応して出力信号を変化させるセンサとを備えた回転速度検出装置付転がり軸受ユニットに於いて、上記外輪の一部で上記エンコーダの一部と対向する部分には、上記センサを保持したホルダの少なくとも先端寄り部分を挿入自在な挿入孔が設けられており、上記センサを保持したホルダの一部で上記先端寄り部分から外れた部分には、上記挿入孔の開口周縁部に当接する事により、上記センサを保持したホルダの上記挿入孔の軸方向に亙る位置決めを図る位置決め部が設けられており、両端部に互いに同心に形成した1対の係止脚部の基端部と中間部に形成した抑え部の両端部とを1対の連結部により連結して成る結合ばねを構成する上記両係止脚部を、それぞれが上記外輪の外周面に、この外輪の内周面にまで貫通しない状態で互いに同心に形成された1対の凹孔に係止する事により、上記外輪に対して上記結合ばねを、上記両係止脚部を中心とする揺動自在に支持しており、この結合ばねを構成する上記抑え部で上記位置決め部を上記挿入孔の開口周縁部に押圧する事により、上記センサを保持したホルダを上記外輪に対して着脱自在に装着しており、この外輪の端部に、このセンサ及び上記エンコーダを設置した空間と外部空間とを遮断する密封シール部材を設けている事を特徴とする回転速度検出装置付転がり軸受ユニット。
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