JP3886417B2 - ブレーキディスクの固有振動数測定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブレーキディスクの固有振動数測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
車輌用ブレーキ装置では、ブレーキ構成部品の固有振動数(又は固有周波数)が制動時のブレーキ摩擦挙動で生じる振動の周波数に一致すると、ブレーキ鳴きを生じる。特にブレーキディスクは制動用摩擦面を有するため、ブレーキ構成部品の中でもブレーキ鳴きの大きな要因となる。このため、ブレーキディスクの固有振動数がブレーキ摩擦挙動で生じ得る振動周波数から外れるように、ディスクの材質や形状を決定している。
【0003】
しかし、鋳造によって作られるブレーキディスクでは、製造上の理由から金属(例えば鋳鉄)の成分組成が変化し易く、材質面での厳密な品質管理が難しい。また、例えば冷却性能を向上させるための通風孔を備えたベンチレーテッドディスクにあっては、各通風孔内を鋳肌のままとすることが多く、その鋳肌部分の寸法精度は鋳造後に機械加工(例えば切削加工)が施される他部位に比べて低い。つまり、ブレーキディスクの材質や形状を設計段階で厳格に定めておいても、実際に製造されるブレーキディスクが一定の材質や形状になる保証はなく、所期の固有振動数を持つとは限らない。そこで、工場で量産されるブレーキディスクについては、その固有振動数が所定の規格値内に収まっているか否かを個々に測定し管理すること(即ち全品対象の品質検査)が欠かせなくなっている。
【0004】
従来、ブレーキディスクの固有振動数の測定方法としては、図1に示すようにブレーキディスクの摩擦面を加振用ハンマー等の加振手段で軸方向(摩擦面に対し直交する方向)に加振し、その際の応答波(音波)をマイクで検出すると共にその応答波を周波数解析して固有振動数を求める方法が知られている(例えば、特開平8−304354号公報参照)。
【0005】
尚、応答波の検出には、マイクの代わりに加速度センサーを利用することも考えられる。しかし、軸方向加振の応答波を加速度センサーで検出するためには、ディスクのいずれかの摩擦面上に加速度センサーを接触固定する必要があり、測定終了後に加速度センサーを取り外したときにその摩擦面に固定の痕跡が残ってしまう。かかる痕跡はブレーキディスクの商品価値を損なうため、加速度センサー等の接触式センサを用いて加振時の応答波を検出することは、実験室ではあり得ても、実際の生産現場では採用し難い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一口にブレーキディスクの振動といっても、様々な振動態様(振動モード)が存在する。本件発明者の認識するところでは、ブレーキディスクの振動対策上特に注意を払うべき振動モードとして、「面直振動モード」と「面内振動モード」の二つがある。
【0007】
図2はブレーキディスクにおける面直振動のモデルを斜視的に示す。面直振動モードとは、ディスクの摩擦面が回転軸と同じ方向に振幅すると共に、ディスクの横方向から見て摩擦面の外周縁が波状の変形を起こすような振動態様をいう。摩擦面外周縁の波状変形にあっては、回転軸方向に最も大きく振幅する場所と、全く振幅しない場所(「節」と呼ぶ)とがある。節は常に摩擦面の同一直径の両端に位置しており、振動数が高くなるにつれて二つの節を結ぶ直径の数も増え、高次の振動形態となる。
【0008】
図3はブレーキディスクにおける面内振動のモデルを斜視的に示す。面内振動モードとは、ディスクの周方向への振幅により、摩擦面の同一円周内において振幅が疎になる場所と密になる場所とが生じるような振動態様をいう。ディスクの周方向に沿った疎密振動にあっても、当該周方向に最も大きく振幅する場所と、全く振幅しない場所(「節」と呼ぶ)とがある。節は常に摩擦面の同一直径の両端に位置しており、振動数が高くなるにつれて二つの節を結ぶ直径の数も増え、高次の振動形態となる。
【0009】
図1に示した従来の固有振動数測定方法は、ディスクの摩擦面に対して軸方向への加振をくわえるものであるから、面直振動モードでの固有振動数を測定する技術であって、面内振動モードでの固有振動数を測定する技術ではない。
【0010】
面内振動モードでの固有振動数を測定するためには、その前提として前述のような周方向に沿った疎密振幅に基づく面内振動をディスクに生じさせる必要がある。ディスクに面内振動を生じさせるための最も直接的な方法としては、例えば図6に示すように、ディスクの外周側面に金属片を強力な接着剤で固着し、その金属片の一方の側面を加振手段で加振することにより、当該金属片を介してディスク外周部をその円周接線方向に加振する方法が考えられる。そして、金属片の反対側面に配置した加速度センサで応答波を検出し、それを周波数解析すれば面内振動モードでの固有振動数を把握することができる。しかしながら、この方法では、上記円周接線方向への加振を行うために、ディスクの外周側面に金属片を固着する必要があり、測定後不要となる金属片を取り外した際に、固着の痕跡がディスクの外周側面に残り、ディスクの商品価値を損なってしまう。
【0011】
本発明の目的は、測定対象物たるブレーキディスクに対し振動付与のための介在物(例えば金属片)を固着することなく、適切な加振によってブレーキディスクに面内振動に準じた振動を生じさせて、面内振動モードでの固有振動数を精度良く測定することが可能なブレーキディスクの固有振動数測定方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のブレーキディスクの固有振動数測定方法は、ディスク本体部、取付フランジ部及び前記両部をつなぐ略円筒状のハット部を具備したブレーキディスクにあって、前記ディスク本体部の外周側面に対する略半径方向への加振、前記ハット部に対する略半径方向への加振、又は、前記取付フランジ部に対する略回転軸方向への加振のうちのいずれかを行い、その加振時の応答波を解析することにより当該ブレーキディスクの面内振動モードでの固有振動数を測定することを特徴とするものである。
【0013】
更に好ましくは、前記加振時の応答波を非接触式センサーで検出し、その検出した応答波を周波数解析することを特徴とするものである。
【0014】
(解決手段の補足説明)
本件発明者が本発明を想到するきっかけとなったのは、図6に示すような方法でブレーキディスクの摩擦面に面内振動を生じさせた実験事例を振動解析したときの知見である。振動解析から得た知見とは、面内振動モードでは、ディスク摩擦面以外にも、当該摩擦面と同じ周波数にて特定方向に振動する部位(具体的には、ディスク本体部の外周側面、ハット部及び取付フランジ部)が存在するというものである。この知見に基づいて、ブレーキディスクの摩擦面に面内振動を生じさせるために図6に示すような直接的加振手法を殊更に採用せずとも、ブレーキディスクの摩擦面以外の適切な部位を適切な方向に加振するという代替的加振によっても、面内振動モードに準じた振動をブレーキディスクに生じさせることができるはずであり、その際の応答波に基づいて面内振動モードでの固有振動数を間接的に測定できるはずとの着想が生まれた。そして、後述するような実験による裏付けを経て、各請求項に記載したような発明が完成した。
【0015】
本件方法の特徴は、面内振動モードでの固有振動数を測定するための前提条件として、ブレーキディスクに面内振動に準じた振動を生じさせる手法にある。具体的には、(イ):ディスク本体部の外周側面に対する略半径方向への加振、(ロ):ハット部に対する略半径方向への加振、(ハ):取付フランジ部に対する略回転軸方向への加振、という三通りの加振手法がある。
【0016】
上記(イ)のディスク本体部の外周側面に対する略半径方向への加振とは、より具体的には、ディスク本体部の外周側面の一箇所を略半径方向に加振することをいう。略半径方向とは、加振方向がディスク本体部の半径方向に完全一致する場合のみならず、その半径方向に対して傾斜した方向をも含む意味であって、加振時の力のベクトルを分解したときに半径方向への分力が認められるような加振方向をいう。かかる略半径方向への加振により、当該加振箇所には、ディスク本体部の半径方向に振幅する振動が生じ、その振動はたちまちブレーキディスク全体に伝播する。その際、ほぼ円盤状をなすディスク本体部にあっては、その周方向に振動が伝播し、ディスク本体部の周方向に沿った疎密振動が誘発されて、面内振動に準じた振動が生まれる。それ故、その応答波から面内振動モードでの固有振動数測定が可能となる。
【0017】
上記(ロ)のハット部に対する略半径方向への加振とは、例えば、略円筒状のハット部の外周側面の一箇所を略半径方向に加振することをいう。略半径方向とは、加振方向がハット部の半径方向に完全一致する場合のみならず、その半径方向に対して傾斜した方向をも含む意味であって、加振時の力のベクトルを分解したときに半径方向への分力が認められるような加振方向をいう。ハット部は、ディスク本体部の摩擦面に対して起立した略円筒状の部位であるため、ハット部に対する略半径方向への加振は、ディスク本体部における周方向疎密振動を誘発し、面内振動に準じた振動を生み出す。それ故、その応答波から面内振動モードでの固有振動数測定が可能となる。
【0018】
上記(ハ)の取付フランジ部に対する略回転軸方向への加振とは、例えば、円板状の取付フランジ部の一箇所をその面に対しほぼ直交する方向に加振することをいう。略回転軸方向とは、加振方向がブレーキディスクの回転軸方向に完全一致する場合のみならず、その回転軸方向に対して傾斜した方向をも含む意味であって、加振時の力のベクトルを分解したときに回転軸方向への分力が認められるような加振方向をいう。取付フランジ部とディスク本体部とはほぼ平行な関係にあり、取付フランジ部は略円筒状のハット部を介してディスク本体部とつながっている。取付フランジ部の中心位置には取付孔(インロー孔とも言う)が確保されることから、取付フランジ部は、ハット部の一端において径方向に延びる鍔のような存在である。このため、取付フランジ部を略回転軸方向に加振することには、ハット部を略半径方向に加振した場合と同じ振動付与効果があり、取付フランジ部に対する略回転軸方向への加振によってディスク本体部における周方向疎密振動が誘発され、面内振動に準じた振動が生み出される。それ故、その応答波から面内振動モードでの固有振動数測定が可能となる。
【0019】
尚、上記(イ)、(ロ)及び(ハ)のいずれの加振手法も、適切な加振手段(例えば、インパクトハンマーや電磁加振器)を用いてブレーキディスクを直接的に加振可能な手法であり、ブレーキディスクの表面に振動付与のための介在物(例えば、金属片)を固着する必要が無く、製品の表面に当該介在物の固着痕を残す心配がない。
【0020】
本発明においては、前記加振時の応答波を非接触式センサーで検出し、その検出した応答波を周波数解析することが好ましい。仮に応答波の検出に使用するセンサーを接触式センサーとした場合には、ブレーキディスクの表面に当該接触式センサーを直接固着したり、ブレーキディスクと接触式センサーとの接続を担保するための介在物を固着したりする必要が生じ、やはり、製品の表面に固着痕を残すという問題を生じてしまう。この点、非接触式センサーを用いれば、固着痕による品質低下の問題を未然に回避できる。なお、非接触式センサーとしては、加振によって生じた音波(応答波)を検出するマイクを例示できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の固有振動数測定方法がブレーキディスクの面内振動モードでの固有振動数を精度良く測定可能な方法であることを裏付ける実験結果について説明する。固有振動数の測定実験としては、以下に述べる共通の実験供試体を用いて、参考例1及び2、並びに、実施例1、2及び3を行った。
【0022】
(実験供試体)
図4に示すように、実験供試体としての鋳鉄製ブレーキディスクは、ディスク本体部(1〜4)、ハット部5及び取付フランジ部6を備えている。ディスク本体部は、円盤状のインナーディスク1及びアウターディスク2並びに両ディスク1,2間に設けられた複数のリブ3からなり、直径275mm×高さ25mmの円盤形状をなす。インナー及びアウターディスク1,2の各表面は制動用摩擦面を構成する。また、複数のリブ3は、ディスク本体部内に半径方向に貫通する複数の通風孔4を区画している。アウターディスク2の摩擦面上にはハット部5が立設されている。ハット部5は、直径141mm×高さ24mmの略円筒形状をなす。更に、ハット部5の上端には、円板状の取付フランジ部6が設けられている。取付フランジ部6の中心位置には、車輌の回転軸と同軸性を維持するインロー孔8が存在する。また、取付フランジ部6には、当該ブレーキディスクを車輌の回転軸に固定する際にボルトを通すための複数のボルト孔7(図では4個)が形成されている。
【0023】
(参考例1)
参考例1は、従来の方法によって面直振動モードでの固有振動数を測定した実験事例である。具体的には図5に示すように、ブレーキディスク(実験供試体)を倒置状態でスポンジ体上に載置すると共に、アウターディスク2の外周縁から10mm内側位置の摩擦面に、加速度センサーを強力な接着剤(例えば瞬間接着剤)で固着した。その際、加速度センサーを、摩擦面に対して直交する方向(即ちブレーキディスクの回転軸方向)の振動を検出可能な向きに配置した。そして加速度センサーの丁度反対側にあたるインナーディスク1の外周縁から10mm内側位置の摩擦面をその摩擦面に対し直交方向(即ちブレーキディスクの回転軸方向)にインパルスハンマーで一撃(即ち加振)し、その際に生じた応答波を加速度センサーで検出した。加速度センサーで検出された応答波は、電気信号としてアンプ及びFFT(高速フーリエ変換装置)に伝達され、FFTにて周波数解析した。FFTによる周波数解析の解像度は4Hzである。図7は周波数解析の結果をグラフ化したものであり、そのグラフの横軸は周波数(Hz)、縦軸はイナータンス(dB/N)である。イナータンスのピーク位置から、このブレーキディスクの面直振動モードでの固有振動数が、1156Hz,2659Hz,4303Hz,5987Hz,7694Hz,9400Hz,11119Hz,12806Hz等であることが判明した。
【0024】
この参考例1の測定実験において、加速度センサーの代わりにマイクを用いて加振時の応答波を検出した場合(即ち図1に示すような測定方法)における周波数解析の結果を図8に示す。図8のグラフの横軸は周波数(Hz)、縦軸は音圧(dB)である。音圧のピーク位置から、このブレーキディスクの面直振動モードでの固有振動数が、1156Hz,2659Hz,4303Hz,5994Hz,7697Hz,9403Hz,11100Hz,12975Hz等であることが判明した。
【0025】
加速度センサーを用いた図7の測定結果と、マイクを用いた図8の測定結果とでは、1万ヘルツ以上の高周波数領域で若干のずれがみられるが、1万ヘルツ未満の周波数領域では、周波数解析の解像度が4Hzであることを考慮すれば、双方の測定結果はよく一致していると考えてよい。
【0026】
(参考例2)
参考例2は、振動付与のための介在物を用いてブレーキディスクに対し円周接線方向への加振を直接行い、面内振動モードでの固有振動数を測定した実験事例である。具体的には図6に示すように、ブレーキディスクのディスク本体部外周側面に、5mm角立方体状の鋳鉄製金属片を強力な接着剤(例えば瞬間接着剤)で固着した。また、その立方体状金属片の一側面に、加速度センサーを強力な接着剤で固着し、ディスクの円周接線方向への振動を当該加速度センサーで検出可能とした。そして、加速度センサーの丁度反対側にあたる立方体状金属片の他側面を、その側面に対し直交する方向(即ちブレーキディスクの円周接線方向)にインパルスハンマーで一撃(即ち加振)し、その際に生じた応答波を加速度センサーで検出した。加速度センサーで検出された応答波は、電気信号としてアンプ及びFFT(高速フーリエ変換装置)に伝達され、FFTにて周波数解析した。FFTによる周波数解析の解像度は4Hzである。図9は周波数解析の結果を示すグラフ(横軸が周波数、縦軸がイナータンス)である。イナータンスのピーク位置から、このブレーキディスクの面内振動モードでの固有振動数が、7284Hz,7863Hz,11459Hz等であることが判明した。
【0027】
この参考例2の測定実験において、加速度センサーの代わりにマイクを用いて加振時の応答波を検出した場合における周波数解析の結果を図10のグラフ(横軸が周波数、縦軸が音圧)に示す。音圧のピーク位置から、このブレーキディスクの面内振動モードでの固有振動数が、7291Hz,7869Hz,11469Hz等であることが判明した。これらの測定結果は、加速度センサーを用いた場合の測定結果に極めて近似している。尚、図9と図10とを比較して、図9のイナータンスのピーク数に比して図10の音圧のピーク数が多いのは、加速度センサーによる検出ではディスクの円周接線方向への振動成分だけを選択的に拾うことができるのに対し、マイクによる検出ではディスクの円周接線方向への振動以外の振動成分(即ちノイズ)をも拾ってしまうという事情による。
【0028】
参考例1と参考例2の測定結果を比較することで、面直振動モードと面内振動モードとではそれぞれの固有振動数が異なる値を示すことが理解できる。つまり従来の測定手法である参考例1は、面直振動モードでの固有振動数を測定するものであって面内振動モードでの固有振動数を測定するものではないことが、実験事実として明らかとなる。
【0029】
(実施例1)
実施例1は、振動付与のための介在物を使用せずに、ブレーキディスクのディスク本体部の外周側面に対し半径方向への加振(摩擦面外周半径方向加振)を行い、面内振動モードでの固有振動数を測定した実験事例である。具体的には図11に示すように、ブレーキディスクのディスク本体部外周側面に、5mm角立方体状の鋳鉄製金属片を強力な接着剤(例えば瞬間接着剤)で固着すると共に、その立方体状金属片の一側面に、加速度センサーを強力な接着剤で固着し、ディスクの円周接線方向への振動を当該加速度センサーで検出可能とした。尚、前記金属片は、加速度センサーでの検出の便宜のために設けられたものであり、振動付与のための介在物ではない。そして、ディスク本体部の外周側面をその半径方向(外周側面の円周接線方向に対し直交する方向)にインパルスハンマーで一撃(即ち加振)し、その際に生じた応答波を加速度センサーで検出した。加速度センサーで検出された応答波は、電気信号としてアンプ及びFFT(高速フーリエ変換装置)に伝達され、FFTにて周波数解析した。FFTによる周波数解析の解像度は4Hzである。図13は周波数解析の結果を示すグラフ(横軸が周波数、縦軸がイナータンス)である。イナータンスのピーク位置から、このブレーキディスクの面内振動モードでの固有振動数が、7288Hz,7856Hz,11459Hz等であることが判明した。
【0030】
この実施例1の測定実験において、加速度センサーの代わりにマイクを用いて加振時の応答波を検出した場合(図12参照)における周波数解析の結果を図14のグラフ(横軸が周波数、縦軸が音圧)に示す。音圧のピーク位置から、このブレーキディスクの面内振動モードでの固有振動数が、7291Hz,7869Hz,11500Hz等であることが判明した。
【0031】
(実施例2)
実施例2は、振動付与のための介在物を使用せずに、ブレーキディスクのハット部の外周側面に対し半径方向への加振(ハット外周半径方向加振)を行い、面内振動モードでの固有振動数を測定した実験事例である。具体的には、前記実施例1と同じく図11に示すような装置構成の下で、ハット部の外周側面をその半径方向(外周側面の円周接線方向に対し直交する方向)にインパルスハンマーで一撃(即ち加振)し、その際に生じた応答波を加速度センサーで検出し、これをFFTにて周波数解析した。FFTによる周波数解析の解像度は4Hzである。図15は周波数解析の結果を示すグラフ(横軸が周波数、縦軸がイナータンス)である。イナータンスのピーク位置から、このブレーキディスクの面内振動モードでの固有振動数が、7288Hz,7859Hz,11459Hz等であることが判明した。
【0032】
この実施例2の測定実験において、加速度センサーの代わりにマイクを用いて加振時の応答波を検出した場合(図12参照)における周波数解析の結果を図16のグラフ(横軸が周波数、縦軸が音圧)に示す。音圧のピーク位置から、このブレーキディスクの面内振動モードでの固有振動数が、7297Hz,7856Hz,11472Hz等であることが判明した。
【0033】
(実施例3)
実施例3は、振動付与のための介在物を使用せずにブレーキディスクの取付フランジ部の上面に対し回転軸方向への加振(フランジ回転軸方向加振)を行い、面内振動モードでの固有振動数を測定した実験事例である。具体的には、前記実施例1と同じく図11に示すような装置構成の下で、取付フランジ部の上面をその軸方向(当該上面に対して直交する方向)にインパルスハンマーで一撃(即ち加振)し、その際に生じた応答波を加速度センサーで検出し、これをFFTにて周波数解析した。FFTによる周波数解析の解像度は4Hzである。図17は周波数解析の結果を示すグラフ(横軸が周波数、縦軸がイナータンス)である。イナータンスのピーク位置から、このブレーキディスクの面内振動モードでの固有振動数が、7288Hz,7850Hz,11497Hz等であることが判明した。
【0034】
この実施例3の測定実験において、加速度センサーの代わりにマイクを用いて加振時の応答波を検出した場合(図12参照)における周波数解析の結果を図18のグラフ(横軸が周波数、縦軸が音圧)に示す。音圧のピーク位置から、このブレーキディスクの面内振動モードでの固有振動数が、7297Hz,7856Hz,11472Hz等であることが判明した。
【0035】
【表1】
Figure 0003886417
【0036】
(実験結果の考察等)
表1は、参考例2及び実施例1〜3の固有振動数の測定結果を一覧形式にまとめたものである。表1からわかるように、周波数解析の解像度が4Hzであることを考慮すれば、実施例1〜3のいずれの方法による測定結果も、参考例2の方法(即ち、ブレーキディスクに対し円周接線方向への加振を行って面内振動を直接的に生じさせる方法)による測定結果と、比較的よく一致している。この結果から、実施例1〜3で述べたような加振手法を採用することにより、ブレーキディスクに面内振動に準じた振動を生じさせて面内振動モードでの固有振動数を精度良く測定できることが立証される。尚、1万ヘルツ以上の高周波数領域においても、加速度センサー及びマイクによる双方の測定結果が参考例2の測定結果に比較的よく一致しているという点で、実施例2(ハット部外周への半径方向加振)の測定方法が、実施例1及び3の測定方法よりも測定の精度又は信頼性が高いものと思われる。
【0037】
また、各実施例ごとに加速度センサーによる測定結果とマイクによる測定結果とを比べても、両者は比較的よく一致するか、又は、両者間に緊密な相関関係が認められる。従って、ブレーキディスクの一部との接触が必要な加速度センサーを殊更に用いなくとも、ブレーキディスクに対し非接触で設置可能なマイクを用いて加振時の応答波を検出し、その応答波を周波数解析することで固有振動数の割り出し(必要に応じて数値補正を施してもよい)を行うことができる。
【0038】
(定義)この明細書において「略円筒状」とは、純粋な円筒形状のみならず、円錐台形状等の筒形状をも含む概念である。
【0039】
【発明の効果】
本発明のブレーキディスクの固有振動数測定方法によれば、測定対象物たるブレーキディスクに対し振動付与のための介在物を固着することなく、適切な加振によってブレーキディスクに面内振動に準じた振動を生じさせて、面内振動モードでの固有振動数を精度良く測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の固有振動数測定方法の概要を示す斜視図。
【図2】面直振動モードのモデルを示した斜視図。
【図3】面内振動モードのモデルを示した斜視図。
【図4】実験供試体たるブレーキディスクの斜視図。
【図5】参考例1の固有振動数測定方法の概要を示す断面図。
【図6】参考例2の固有振動数測定方法の概要を示す斜視図。
【図7】参考例1の周波数解析の結果を示すグラフ。
【図8】参考例1の周波数解析の結果を示すグラフ。
【図9】参考例2の周波数解析の結果を示すグラフ。
【図10】参考例2の周波数解析の結果を示すグラフ。
【図11】実施例1,2及び3の固有振動数測定方法(加速度センサー使用時)の概要を示す斜視図。
【図12】実施例1,2及び3の固有振動数測定方法(マイク使用時)の概要を示す斜視図。
【図13】実施例1の周波数解析の結果を示すグラフ。
【図14】実施例1の周波数解析の結果を示すグラフ。
【図15】実施例2の周波数解析の結果を示すグラフ。
【図16】実施例2の周波数解析の結果を示すグラフ。
【図17】実施例3の周波数解析の結果を示すグラフ。
【図18】実施例3の周波数解析の結果を示すグラフ。
【符号の説明】
1…インナーディスク、2…アウターディスク、3…リブ、4…通風孔(1〜4はディスク本体部を構成する)、5…ハット部、6…取付フランジ部、8…インロー孔(取付孔)。

Claims (2)

  1. ディスク本体部、取付フランジ部及び前記両部をつなぐ略円筒状のハット部を具備したブレーキディスクにあって、
    前記ディスク本体部の外周側面に対する略半径方向への加振、
    前記ハット部に対する略半径方向への加振、又は、
    前記取付フランジ部に対する略回転軸方向への加振
    のうちのいずれかを行い、その加振時の応答波を解析することにより当該ブレーキディスクの面内振動モードでの固有振動数を測定することを特徴とするブレーキディスクの固有振動数測定方法。
  2. 前記加振時の応答波を非接触式センサーで検出し、その検出した応答波を周波数解析することを特徴とする請求項1に記載のブレーキディスクの固有振動数測定方法。
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