JP2006275557A - 振動測定構造およびこれを用いた振動測定方法 - Google Patents

振動測定構造およびこれを用いた振動測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 実際の軸受装置に使用された状態により近い条件下での制振部材の制振効果を容易かつ安価に評価することができる振動測定構造、及びこれを用いた振動測定方法を提供する。
【解決手段】
本発明による軌道輪部材2の振動測定構造及び振動測定方法では、外輪7に円環状の制振合金からなる制振部材6を嵌合することにより、制振部材6に内部歪みを与え、軌道輪部材2の外周面2aにおける振動の節となる位置に線接触することにより軌道輪部材2を支持する一対の支持部材3に軌道輪部材2を載置し、軌道輪部材2の内周側をハンマ4で打撃することで軌道輪部材を振動させ、ハンマ4で打撃される部分の外周側から軌道輪部材2の振動を検出し、振動の減衰特性を把握する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、軸受軌道輪に使用される制振部材の制振効果を評価するための振動測定構造およびこれを用いた振動測定方法に関する。
回転体を回転可能に支持する軸受装置の近傍で発生する振動を吸収するため、例えば、当該軸受装置と当該軸受装置が取り付けられるハウジングとの間に制振部材を介在させることがある。
このような制振部材には、いわゆる制振合金が用いられるが、この制振合金には、所定の内部歪みを付与することで、非常に高い制振効果を発揮するものがある。制振部材は、通常、円環状に形成されて前記軸受装置の軌道輪の外周面もしくは内周面に圧入状態で嵌合一体とされるため、制振部材には適度な内部歪みが発生する。従って、制振部材を構成している制振合金においては、嵌合に伴う内部歪みによって、その制振効果は適度に高められる。一方、さらに制振効果を高めるため、嵌合による内部歪みに加えて、軸方向に応力を加えてより積極的に内部歪みを高めることで、さらに制振効果を高めるといった軸受装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
上記のように内部歪みを有する制振部材を介した軸受装置の制振効果を評価する場合、制振合金によって板状の試験片を作成し、その試験片に内部歪みを与えた状態で、例えば、JIS G 0602 に記載される「制振鋼板の振動減衰特性試験方法」に基づいた試験を行い、制振合金単体としての制振効果の評価を行う。そして、この得られた制振合金単体としての評価結果に基づいて、制振合金が軸受装置に使用された場合の制振効果を評価していた。
特開2004−293729号公報(図1)
しかし、実際の軸受装置では、制振部材は円環状に形成されるとともに軌道輪に嵌合されるので、上記のように試験片を用いて制振合金単体の制振効果を評価したとしても、実際の軸受装置における制振効果が把握できているとは言えなかった。
また、試験片に内部歪みを与えた状態で振動試験を行うためには、高価で特殊な試験機を必要とするため、高いコストを要した。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、実際の軸受装置に使用された状態により近い条件下における制振部材の制振効果を容易かつ安価に評価することができる振動測定構造およびこれを用いた振動測定方法を提供することを目的とする。
本発明は、軸受軌道輪及び、この軸受軌道輪に嵌合することにより内部歪みが与えられた円環状の制振合金からなる制振部材を有する軸受軌道輪部材と、前記軸受軌道輪部材の外周面における径方向の振動の節となる位置に先鋭な先端部で接触することにより前記軸受軌道輪部材を支持する支持部材と、前記軸受軌道輪部材の内周側を打撃することにより前記軸受軌道輪部材を振動させる振動付与手段と、前記振動付与手段によって打撃される部分の外周側から前記軸受軌道輪部材の振動を検出し、振動の減衰特性を把握する振動検出手段と、を有していることを特徴としている。
上記のように構成された振動測定構造によれば、比較的簡易な構成によって、制振部材に内部歪みが与えられた状態の軸受軌道輪部材を振動させ、その振動の減衰特性を把握することができる。
上記振動測定構造において、前記支持部材の先端部は、前記軸受軌道輪部材の軸線に平行かつ前記軸受軌道輪部材の外周面に線接触するナイフエッジ状であることが好ましい。
この場合、支持部材は、軸受軌道輪部材との接触面積を小さくしつつ、節の位置を確実に支持できるので、軸受軌道輪部材の振動を乱すことなく確実に軸受軌道輪部材を支持することができる。
また上記振動測定構造によれば、以下に示す振動測定方法を採ることができる。すなわち本発明は、軸受軌道輪に円環状の制振合金からなる制振部材を嵌合することにより、制振部材を有する軸受軌道輪部材とするとともに、前記制振部材に内部歪みを与える内部歪み付与工程と、前記軸受軌道輪部材の外周面における径方向の振動の節となる位置に先鋭な先端部で接触することにより前記軸受軌道輪部材を支持する支持部材に、前記軸受軌道輪部材を載置する載置工程と、前記軸受軌道輪部材の内周側を打撃することにより前記軸受軌道輪部材を振動させる振動付与工程と、前記振動付与工程によって打撃される部分の外周側から前記軸受軌道輪部材の振動を検出し、振動の減衰特性を把握する振動検出工程と、を有していることを特徴としている。
上記のように構成された振動測定方法によれば、内部歪み付与工程において制振部材を軸受軌道輪に嵌合することにより、制振部材に内部歪みを与えることができる。また、続く載置工程、振動付与工程、振動検出工程を経ることにより、制振部材に内部歪みが与えられた状態の軸受軌道輪部材を振動させ、その振動の減衰特性を把握することができる。
本発明の振動測定構造及びこれを用いた振動測定方法によれば、比較的簡易な構成によって、内部歪みが与えられた状態の制振合金からなる制振部材を有する軸受軌道輪部材を振動させ、その振動の減衰特性を把握することができるので、上記従来例のように試験片等を用いた場合よりも、実際の軸受装置に使用された状態により近い条件下における制振部材の制振効果を容易かつ安価に評価することができる。
以下、本発明の振動測定構造、及びこれを用いた振動特性の測定方法について、図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態に係る振動測定構造の概略を示す正面図であり、図1(b)はその側面図である。この振動測定構造は、軸受の軌道輪部材の振動の減衰特性を把握するためのものであり、図1に示すように、円環状の軌道輪部材2と、この軌道輪部材2を支持するための一対の支持部材3と、軌道輪部材2の内周側を打撃するハンマ4と、軌道輪部材2の振動を検出するためのマイクロホン5と、検出された振動を解析するためのフィルタ8、エンベロープユニット9、及びFFTアナライザ10とを有している。
軌道輪部材2は、転がり軸受の外輪7と、この外輪7の外周側に嵌合された円環状の制振部材6とを有している。この制振部材6は、例えばMn−Cu−Ni−Fe系の制振合金からなり、外輪7に対する嵌め合いの締め代を負(しまりばめ)とすることで、制振部材6に内部歪みを与えている。
一対の支持部材3は、図1(b)に示すように長方形状に形成された薄い金属製の板であり、架台Gの上面に互いに所定間隔をおいて平行に配置されるとともに、鉛直方向に立てて固定されている。その先端部3aは、先鋭にされており、振動測定に供される軌道輪部材2の軸線に平行にかつ所定の間隔をおいて軌道輪部材2の外周面2aに線接触した状態で軌道輪部材2を支持している。
また、一対の支持部材3は、図1(a)に示すように、軌道輪部材2の外周面2aにおいて接触部S1,S2でそれぞれ接触している。この接触部S1,S2の間隔、すなわち一対の支持部材3の互いの間隔Lは、軌道輪部材2を正面視した時において、接触部S1,S2をそれぞれ通過する軌道輪部材2の径方向線R1,R2が互いに直角に交わる寸法に設定されている。すなわち、軌道輪部材2の半径をrとすると、L=21/2rである。
図2は、軌道輪部材2に振動を加えた時の軌道輪部材2の振動の態様を模式的に示した図である。なお図において、軌道輪部材2は円形の線図で表している。上記のように一対の支持部材3の間隔Lを設定することにより、軌道輪部材2の円周を4等分する位置に配される接触部S1,S2及び点S3,S4を振動の節として、破線T1,T2で示す振幅をもって軌道輪部材2を振動させることができる。すなわち、一対の支持部材3は、軌道輪部材2の周方向に互いに隣接する振動の節である接触部S1,S2にそれぞれ接触して、軌道輪部材2を支持している。ここで、接触部S1,S2の間のみに着目すると、この間では、軌道輪部材2は一次の振動モードを構成している。
なお、一対の支持部材3には、例えば、カッターナイフの刃のように端部がナイフエッジ状である金属板が用いられる。この場合、支持部材3は、軌道輪部材2との接触面積を小さくしつつ、節の位置を支持できるので、軌道輪部材2の振動を乱すことなく確実に軌道輪部材2を支持することができる。
図1(a)に戻って、ハンマ4は、振動付与手段として、軌道輪部材2の内周側を打撃することによって、軌道輪部材2を振動させるものであり、接触部S1,S2との中間点を通過する径方向線R3(軌道輪部材2の中心点を通過する鉛直方向の線)が軌道輪部材2の内周面2bと交差する点Aを打撃するようにされている。またこのハンマ4には、図示しない加速度ピックアップやハンマ4を図中矢印の方向に上下動させるためのアクチュエータ等が取り付けられており、ハンマ4が軌道輪部材2を所定の強さで打撃できるようにされている。
マイクロホン5は、ハンマ4によって軌道輪部材2に加えられた振動を音として検出してその音の変化を電圧変化に変換するものであり、径方向線R3が軌道輪部材2の外周面2aと交差する点Eの直下に配置されている。マイクロホン5には、ノイズを除去するためのフィルタ8、検出される振動の波形のピークのみを包絡線として抽出するエンベロープユニット9、周波数解析するためのFFTアナライザ10が接続されており、軌道輪部材2の振動特性を把握できるようにされている。すなわち、これらマイクロホン5、フィルタ8、エンベロープユニット9、及びFFTアナライザ10は、ハンマ4によって打撃された軌道輪部材2の振動を検出し減衰特性を把握するための振動検出手段を構成している。
また、上記振動測定構造において、一対の支持部材3は、軌道輪部材2の周方向に互いに隣接する振動の節である接触部S1,S2にそれぞれ接触して、軌道輪部材2を支持しているので、接触部S1,S2の間において、軌道輪部材2に一次の振動モードを構成させることができる。従って、マイクロホン5で取得される振動波形を簡略なものとすることができ、この減衰特性の把握を容易なものにすることができる。
次に、上記振動測定構造を用いて軌道輪部材2の振動測定を行う方法について説明する。
軌道輪部材2の振動測定に際して、まず外輪7に制振部材6を嵌合することで、制振部材6を有する軌道輪部材2とするとともに、制振部材6に内部歪みを与える(内部歪み付与工程)。
次に、この軌道輪部材2を一対の支持部材3の先端部3aに載置する(載置工程)。次に、載置した軌道輪部材2の内周面2bにおける点Aをハンマ4によって打撃し、軌道輪部材2を振動させる(振動付与工程)。このときの軌道輪部材2の振動により発生する振動音をマイクロホン5によって取得する。取得された振動音はマイクロホン5によって電圧変化として出力され、軌道輪部材2の振動波形は電気信号に変換される。
図3は、取得された軌道輪部材2の振動波形の一例を示したグラフ図である。この図は、軌道輪部材2の共振周波数における振動波形を取得したものである。図中、縦軸は軌道輪部材からの振動音を電圧変化とした時の出力値(デシベル換算値)を示しており、この出力値の上限側のピーク値と下限側のピーク値との幅が大きいほど軌道輪部材2の振動の振幅が大きいことを示している。また横軸は経過時間を示している。図中、測定結果の波形Kに示されるように、軌道輪部材2の振幅は、時間の経過と共に小さくなり減衰していく。
上記のようにマイクロホン5によって取得された軌道輪部材2の振動波形は、フィルタ8によってノイズ除去され、エンベロープユニット9によって波形Kの包絡線Jを求めるべく振幅のピーク部分のみを抽出し、FFTアナライザ10によって解析される。そして、軌道輪部材2の振動の減衰特性を示す減衰度、及び損失係数を算出する(振動検出工程)。そして、これら減衰度及び損失係数の値をもって振動特性の評価を行う。
上記のように構成された振動測定構造及び振動測定方法によれば、比較的簡易な構成によって、内部歪みが与えられた状態の制振部材6を有する軌道輪部材2を振動させ、その振動の減衰特性を把握することができる。従って、上記従来例のように試験片等を用いて制振効果を評価する場合と比較して、実際の軸受装置に使用された状態により近い条件下での制振部材6の制振効果を容易かつ安価に評価することができる。
また、本実施形態の振動測定構造及び振動測定方法では、制振部材6と外輪7との嵌合における嵌め合いの締め代を変更することで、制振部材6に与えられる内部歪み量を容易かつ任意に調整することができる。従って、制振部材6に加わる内部歪み量と制振効果との関係を容易に把握することができる。また、本実施形態の振動測定構造及び振動測定方法は、その構成が簡易であるので、軌道輪部材2の加熱も容易に行うことができ、制振効果の温度依存性も容易に把握できる。
これによって、軌道輪部材2として制振効果が最適となる外輪7に対する締め代を検証したり、実際の使用温度環境における制振効果の検証を行うことができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、支持部材3に先端部3aがナイフエッジ状の金属板を用いたが、針状の先端部を有する部材を複数配置することで軌道輪部材2を支持するような支持部材としてもよい。また、振動検出手段として、本実施形態ではマイクロホンを用いたが、例えば、レーザをプローブとした変位計等を用いることもできる。
次に、本実施形態の振動測定構造を用いて、軌道輪部材の振動測定試験を行い、その制振効果を評価した結果について説明する。
本試験の供試材としては、JIS6006相当の玉軸受の外輪に制振合金からなる制振部材としてのスリーブを外嵌したものを軌道輪部材として用いた。また、この軌道輪部材において、外輪とスリーブとの締め代寸法が異なるものを2種類用意し、これら締め代寸法が異なる軌道輪部材における制振効果をそれぞれ把握し、互いに比較、評価を行った。
制振部材には、特許第2849698号に記載のM2052合金(Mn−Cu−Ni−Fe系制振合金)を用い、所定のスリーブ形状に形成したのち用いた。
外輪とスリーブとの締め代寸法については、締め代を比較的大きく設定したもの(供試材1)と、比較的小さく設定したもの(供試材2)を用意した。外輪の外径寸法は、55mmであり、この外径寸法に対する公差が、−0.001mm〜−0.011mmに設定されている。供試材1においては、スリーブ内径寸法の公差を、55mmに対して−0.026mm〜−0.045mmに設定した。また、供試材2では、スリーブ内径寸法を、55mmに対して−0.005mmに設定した。よって、締め代寸法は、供試材1では、約−0.02mm前後、供試材2では、約−0.005mmとなる。
支持部材には、先端部にナイフエッジを形成するとともに所定形状に成形した鋼製の薄板を用い、図1(a)に示した軌道輪部材2と支持部材3との位置関係となるように、間隔Lの値を設定した。これにより、図2で示したような振動を軌道輪部材にさせ、軌道輪部材における一対の支持部材の接触部S1−S2間に打撃が加えられた時に、この接触部S1−S2間で一次の振動モードが構成されるようにした。
制振効果の評価には、減衰度D、及び損失係数ηにより評価した。減衰度Dは、共振周波数における減衰振動において、1秒当たりの減衰量をデシベル(dB)表示したものである。また、損失係数ηは、以下に示す式(1)によって求められる。
η=D/27.2785f ・・・(1)
上記式(1)中のfは、共振周波数を示している。
従って、減衰度D、及び損失係数ηを算出するために、まず振動測定構造によって、軌道輪部材の共振周波数を把握し、その後、共振周波数に係る経時的な振動波形を測定した。
図4は、供試材1を用いて共振周波数を測定した結果を示したグラフ図である。図中、縦軸はマイクロホンによって得られた軌道輪部材からの振動音を電圧変化に変換した時の出力値を示しており、横軸は振動音の周波数を示している。そして図中の測定結果の波形を見ると、ピークが一ヶ所現れていることが判る。このピークが現れている周波数が共振周波数であり、このピーク部分の周波数から、供試材1の共振周波数を得ることができる。
図5は、上記で得られた共振周波数に基づいて振動波形の経時的な変化を測定し、その振幅の内、上半分側のピーク部分のみを抽出した結果を示したグラフ図である。図中、縦軸は上記共振周波数における前記振動音を電圧変化に変換した時の出力値であり、出力値が0の位置で振動波形の振幅の中心となるように示される。この出力値が大きいほど軌道輪部材の振動の振幅が大きいことを示している。
また縦軸の内、紙面左側には共振周波数における前記振動音を電圧変化とした時の出力値を示す目盛軸を表しており、紙面右側には前記出力値をデシベル(dB)換算した場合の目盛軸を表している。また、横軸は経過時間を示している。図中の測定結果の波形Hは、上述したように図3に示すような振動波形の最大振幅であるピーク部分のみを、エンベロープユニットによって抽出したものであり、そのピーク部分における出力値と経過時間との関係を示している。この波形Hから、振幅のピーク部分における出力値、すなわち振動の最大振幅が、振動の発生点Oから時間が経過するに従って序々に低下し、減衰していく様子が判る。
波形Iは、ピーク部分の出力値をデシベル換算した値と経過時間との関係を示している。この波形Iを直線近似した近似直線J(前記振動波形の包絡線)の傾きは、1秒当たりの減衰の度合いをデシベル(dB)として表すものであり、この傾きの絶対値を採ることで、供試材1の減衰度Dを求めることができる。さらに、得られた減衰度Dの値を上記式(1)に代入することによって、損失係数ηを算出することができる。
図6は供試材2を用いた場合の共振周波数を測定した結果を示したグラフ図であり、図7は供試材2を用いた場合の最大振幅の経時的変化を示したグラフ図である。供試材1と同様にして、供試材2の共振周波数及び波形Hから、波形I、近似直線Jを求め、減衰度D、及び損失係数ηを算出した。これら供試材1及び供試材2における、それぞれ減衰度D、及び損失係数ηを算出した結果を表1に示す。
Figure 2006275557
上記表1のように、供試材1と比較して、供試材2の方が、減衰度D及び損失係数ηの値が大きくなっており、供試材2の軌道輪部材の方が制振効果が高いことが判る。
制振部材に用いた制振合金であるM2052合金は、一般に内部歪みが大きくなるとその制振効果が向上するという特性を有している。供試材2では、供試材1と比較して嵌合に係る締め代寸法を小さく設定しており、制振部材に加わる内部歪みは、供試材2の方が小さくなる。つまり制振部材の内部歪みのみに着目すると、供試材1の方が制振効果が高くなると考えられる。
しかし、上記振動波形の測定結果に基づいた減衰度D、及び損失係数ηでは、供試材2における制振効果がより高いものとなっており、制振部材に加わる内部歪みの違い以外の要因が加わったことが、実測された制振効果に現れていると考えられる。この要因としては、供試材2の方が、制振部材と外輪との嵌合が緩いため、これらの間で個別に振動して摩擦が発生し、制振効果を増大させていることが推察される。
このように本発明による振動測定構造及び振動測定方法によれば、実際の軸受装置に使用された状態により近い条件下で制振効果の評価を行うことによって、上述のように試験片を用いた評価方法では現れない要因を抽出することができ、実際の軸受装置における制振部材の制振効果を把握することができる。
(a)は、本発明の一実施形態に係る振動測定構造の概略を示す正面図であり、(b)はその側面図である。 軌道輪部材に振動を加えた時の当該軌道輪部材の振動の態様を模式的に示した図である。 軌道輪部材の振動波形の一例を示したグラフ図である。 供試材1を用いて共振周波数を測定した結果を示したグラフ図である。 供試材1の共振周波数の振動波形の経時的な変化を測定し、その振幅の内、上半分側のピーク部分のみを抽出した結果を示したグラフ図である。 供試材2を用いて共振周波数を測定した結果を示したグラフ図である。 供試材2の共振周波数の振動波形の経時的な変化を測定し、その振幅の内、上半分側のピーク部分のみを抽出した結果を示したグラフ図である。
符号の説明
2 軌道輪部材
3 支持部材
3a 先端部
4 ハンマ
5 マイクロホン
6 制振部材
7 外輪
8 フィルタ
9 エンベロープユニット
10 FFTアナライザ

Claims (3)

  1. 軸受軌道輪及び、この軸受軌道輪に嵌合することにより内部歪みが与えられた円環状の制振合金からなる制振部材を有する軸受軌道輪部材と、
    前記軸受軌道輪部材の外周面における径方向の振動の節となる位置に先鋭な先端部で接触することにより前記軸受軌道輪部材を支持する支持部材と、
    前記軸受軌道輪部材の内周側を打撃することにより前記軸受軌道輪部材を振動させる振動付与手段と、
    前記振動付与手段によって打撃される部分の外周側から前記軸受軌道輪部材の振動を検出し、振動の減衰特性を把握する振動検出手段と、を有していることを特徴とする振動測定構造。
  2. 前記支持部材の先端部は、前記軸受軌道輪部材の軸線に平行かつ前記軸受軌道輪部材の外周面に線接触するナイフエッジ状である請求項1記載の振動測定構造。
  3. 軸受軌道輪に円環状の制振合金からなる制振部材を嵌合することにより、制振部材を有する軸受軌道輪部材とするとともに、前記制振部材に内部歪みを与える内部歪み付与工程と、
    前記軸受軌道輪部材の外周面における径方向の振動の節となる位置に先鋭な先端部で接触することにより前記軸受軌道輪部材を支持する支持部材に、前記軸受軌道輪部材を載置する載置工程と、
    前記軸受軌道輪部材の内周側を打撃することにより前記軸受軌道輪部材を振動させる振動付与工程と、
    前記振動付与工程によって打撃される部分の外周側から前記軸受軌道輪部材の振動を検出し、振動の減衰特性を把握する振動検出工程と、を有していることを特徴とする振動測定方法。
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