JP4358138B2 - 切削加工時の異常振動診断方法 - Google Patents

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Description

本発明は、旋削加工などにおいて発生する異常振動の要因がバイトにあるか否かを判定する診断方に関する。
切削加工においては、多かれ少なかれ加工点において振動が発生する。これに伴い加工点から音が発生することとなり、これが切削音と呼ばれる。特に、断続切削や、工具や被削材の剛性不足等に伴って発生するびびり振動の状態においては、大きな切削音が生じることがよく知られている。このようなびびり振動は、切削音のほか、仕上げ面の劣化、工具刃先の損傷加速といった悪影響を及ぼし易い。
上記のようなびびり振動は経験的に、工具系の剛性が高く、被削材系の剛性が低い場合、逆に工具系の剛性が低く、被削材系の剛性が高い場合に生じ易いとされており、剛性の低い側が大きく振動することとなる。このため、びびり振動を防ぐには、切削条件の調整のほか、被削材系・工具系のいずれか、あるいは両方の機械的特性を調整することが必要となる。ただ実際には、被削材系は目的とする製品形状に合わせて設定してあるため制約条件が多く、主に工具系の調整が行われることとなる。
このような機械的特性の調整としては、工具系の減衰性を向上させたり、動ダンパを用いてびびり振動と逆位相の振動を工具系に加えるといった特徴を有する防振型の工具が用いられることが多い。防振型工具は通常の工具よりも高価であり、使用する場合には高い確率で効果を期待できるようにも思われるが、実際には効果が現れない場合も多々ある。効果が現れない場合の主な原因の1つとして、被削材側が大きく振動していることを挙げることができる。この場合には防振型工具を使用するような工具側の対策で効果を出すのは困難となる。そこで、防振型工具を使用する前に、事前に振動の要因を特定し、効果発現の可能性を見極めることが重要になってくる。
特許第3249111号公報 特開2002−139377号公報
上述のように切削音は振動の結果現れるものであり、切削中の振動の状態を反映したものとなるため、音の解析は振動を評価する上で有効であると考えられる。切削音の評価に関しては、これまでにも多くの研究・発明がなされており、たとえば特許第3249111号公報では、複数のマイク(マイクアレイ)を使用して環境音成分を排除し、実際の切削音のみを抽出し、それらの経時的変化から工具摩耗の進展を推定する手法が開示されている。しかし、単純に切削音の解析を行っただけでは、いずれの箇所が異常振動の原因となっているかを特定することができない。
他方、振動箇所を特定するための解析は切削加工以外においても有効であり、以前より試みられている。たとえば特開2002−139377号公報では、評価対象に対して複数の音センサを取付け、評価点での機器の異常音の周波数を特定し、その周波数において複数の音センサのエネルギー比から各箇所の異常音に対する寄与割合を求めることで、異常音の発生部位を特定するという方法を提示している。
しかし、加工現場で評価を実施するには上記の方法はあまりにも複雑かつ大掛かりであり、実際の使用上は簡便な方法が要望される。また、切削加工中は工具と被削材は接しており、たとえ複数のマイクを使用しても、それぞれの発する切削音を抽出することは困難である。
また、旋削加工の場合は、工具(バイト)が回転しないため、バイトの振動方向がわかれば、たとえばその方向の制振性の高いバイトを使用するといった対策も採り易くなるが、単純に切削音の評価を行うだけでは振動の方向を評価することができないといった問題も残る。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、切削加工時の異常振動の原因の系を特定し、防振型バイトの効果発現可能性を見極めることが可能となる切削加工時の異常振動診断方を提供することを目的とする。
本発明に係る切削加工時の異常振動診断方法は、1つの局面では、切削加工中に発生する切削音の周波数分析を行い切削音の主要振動周波数を特定するステップと、切削加工中のバイトの加速度もしくは変位を測定して周波数分析を行いバイトの主要振動周波数を特定するステップと、切削音の主要振動周波数とバイトの主要振動周波数とを比較することで、切削音の発生原因がバイト側にあるか否かを判定するステップとを備える。なお、切削音の周波数分析は、切削音を録音して行ってもよい。
上記バイトの主要振動周波数を特定するステップは、数の方向(たとえば2軸以上の方向)についてバイトの加速度もしくは変位を測定して周波数分析を行い、該周波数分析の結果に基づいてバイトの主要な振動方向を特定す。なお、バイトの主要な振動方向を特定するには、たとえばバイトの各方向の主要振動周波数に対する評価値(成分値)を比較し、該評価値が大きい方向をバイトの主要な振動方向とすることが考えられる。
また、上記主要振動周波数を特定するステップは、解析周波数帯域を複数の帯域に分割し、各帯域の中で上記周波数分析により得られた評価値(成分値)が最大となる帯域を主要振動周波数帯域として選定するステップを含むものであってもよい。
上記切削音の主要振動周波数を特定するステップは、非切削時の加工点付近の音を測定することにより切削音以外の音声成分を除去するステップを含むことが好ましい。切削音以外の音声成分を除去するには、たとえば切削時と非切削時の加工点付近の音を測定してそれぞれ周波数分析を行い、切削時の各周波数における評価値(成分値)から非切削時の各周波数における評価値(成分値)を差し引けばよい。
本発明の常振動診断方法によれば、加工点から発する切削音とバイトの振動状態との双方を考慮して判定しているので、加工中の振動の主体がバイト側にあるか否かを特定することができる。したがって、加工中の振動を抑制するための対策が立て易くなり、たとえば高価な防振型工具を導入すべきか否かを簡便に判断することができる。その結果、無駄な投資を効果的に抑制することができる。
以下、図1〜図6を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における切削加工時の異常振動診断方法のフロー手順を示す図である。図1に示すように、まず切削音の測定とバイトの振動測定とを行う。これらの測定は通常は同時に行うが、個別に行ってもよい。切削音の測定とバイトの振動測定とを個別に行う場合、いずれを先に測定してもよい。
切削音の測定は、切削加工点近くにマイクロフォンを設置して行う。そして、該マイクロフォンを用いて切削音を録音する。たとえばパーソナルコンピュータに上記のマイクロフォンを接続して切削音を録音することにより、切削音のデータをWAVE形式のファイルとして簡便に取り込むことが可能である。このようにして得られた切削音のデータを、時系列の音圧データとして登録する。
なお、びびり振動の周波数は、高い場合には数kHzのレベルであることから、マイクロフォンとしては10kHz程度まで音声を録音可能なものを使用することが望ましい。
バイトの振動測定は、たとえばバイト先端に加速度ピックアップを取り付けることにより行うことができる。そして、切削加工中にピックアップから出力される信号をアンプにて増幅し、レコーダに時系列の電圧データ(加速度データ)として登録する。なお、本実施の形態の手法では、振動周波数のみが必要であるから、たとえばバイトにハンマなどでパルス的な力を加えることで得られる加速度データを利用してもよい。
上記のように時系列の音圧データと時系列の加速度データとを登録した後、周波数分析を行う。
音圧データの周波数分析は、FFT(Fourier Fast Transform)などの計算法を用いてコンピュータ上で行うことができる。このように音圧データの周波数分析を行うことで、切削音スペクトルを得ることができる。たとえばFFT計算法を用いて周波数分析を行った場合、図2(a)のようなスペクトルを得ることができる。
なお、切削音測定の際には、工作機械のモータなどから発せられる音や、周囲環境からの騒音なども同時に録音されてしまう。高周波のびびり振動が発生しているような場合には、一般に他の音とは周波数帯域が大きく異なり、かつ音声レベルが非常に高くなるので、単純に加工点付近を測定しただけでも充分切削音を測定することは可能である。しかし、比較的振動レベルが低い場合や周辺騒音が大きい場合などには、切削音以外の音と切削音との分離が困難となる。そこで、このような場合には、予め測定しておいた被削材の空転時の音(非切削時の加工点付近の音)の周波数分析結果を、加工時の周波数分析結果から差し引くことで、切削音以外の音の成分を除去することができる。それにより、たとえばモータ音などの切削音以外の音声成分を除去して評価することができ、比較的振動レベルが低い場合や周辺騒音が大きい場合でも、正確に切削音成分を評価することができる。
加速度データの周波数分析は、音圧データの場合と同様にコンピュータ上で行える。該加速度データの周波数分析により、加速度スペクトルを得ることができる。なお、アンプからの信号をFFTアナライザに入力して直接周波数分析結果を得るようにしてもよい。また、切削音についても周波数分析機能を有する騒音計などを用いて、直接周波数分析結果を得るようにしてもよい。
次に、主要振動周波数の特定を行う。つまり、切削音の主たる振動周波数およびバイト振動が生じている主たる周波数を特定する。単純には、解析対象周波数帯域の中で最大値を有する周波数を求めればよい。たとえば図2(a)のようなスペクトルでは、ピーク値となる周波数が、対象となる切削加工の主要振動周波数であると考えられる。この振動周波数での振動を抑制することで、加工中の異常な切削音を抑制することができ、また切削仕上げ面を向上することができ、さらには工具損傷をも抑制することができる。
ところが、図2(b)に示すようにピンポイントで特定の周波数にて高い値となった場合には、単に最大値を有する周波数を求めるだけでは主要振動周波数を特定することができない。つまり、最大値を有する周波数が必ずしも振動の主要周波数であるとはいえない場合がある。
そこで、このような場合には、次のような処理を行うことで、振動の主要周波数を特定することができる。すなわち、図2(c)に示すように、解析対象の周波数帯域を複数に分割する。そして、周波数帯域ごとの成分を求め、最も大きな値となった帯域を主要振動周波数帯域と特定する。帯域の分割については、バイトの固有振動数が数kHzレベルであることから、あまり細かく分割する必要はなく、たとえば50〜500kHz程度ずつに分割すればよい。かかる処理を行うことで、評価プロセスを自動化する場合に有利となる。
次に、上記の手法で得られた、切削音の主要振動周波数と、バイトの主要振動周波数とを比較する。測定値は誤差を含むことが多いと考えられることから、ある程度の幅をもった判断が必要となる。そこで、たとえばバイト側の振動周波数の±20%の範囲に切削音の主要振動周波数が存在するか否かという基準で両者が一致しているか否かを評価する。
そして、切削音の主要振動周波数とバイトの主要振動周波数とが一致していると判断された場合には、異常振動の主要因が切削バイト側にあるという診断結果が出力される。逆に、切削音の主要振動周波数とバイトの主要振動周波数とが一致していないと判断された場合には、被削材側に要因があるという診断結果が出力される。この診断結果を受けて、バイトが原因である場合には、たとえば防振型工具などを採用することで振動発生を抑制し、被削材側が原因である場合には、被削材のチャッキングを変更するなどして被削材側の剛性を改善するなどの対策が有効となる。
(実施の形態2)
次に、図3と図4を用いて本発明の実施の形態2について説明する。図3は、本実施の形態2における切削加工時の異常振動診断方法のフロー手順を示す図であり、図4は、外径加工の場合の切削力の方向を示す図である。
上述の実施の形態1では、バイト側の振動を測定する際に1方向の振動を測定すれば足りるが、本実施の形態2では、バイト側の振動を測定する際に複数の方向の振動測定を行う。
バイトは概ね長手方向の曲げ振動を行うことから、特に長手方向に垂直な2方向、たとえば図4のような外径加工の場合には、主分力方向および送り分力方向の振動測定を行うことが望ましい。このように2軸以上の方向の振動測定を行うことにより、バイトの振動周波数のみではなく、バイトの主要な振動方向の評価も可能となる。このような2軸以上の方向の振動測定を行うには、多軸測定が可能な加速度ピックアップを用いるのが簡便である。
上記のようにバイト側の振動を測定する際に複数の方向(2軸以上の方向)の振動測定を行うことにより、バイトの主要な振動方向の評価も可能となり、その主要な振動方向に制振性の高いバイトを導入することで効果的に異常振動を抑制することができる。
図3に示すように、実施の形態1と同様の手法で、切削音の測定とバイトの振動測定とを行う。このとき、本実施の形態2では、上述のような2軸以上の方向の振動測定を行う。それにより、時系列の音圧データと、2軸以上の方向の時系列の加速度データとが得られる。
その後、実施の形態1と同様の手法で、時系列の音圧データおよび2軸以上の方向の時系列の加速度データの登録を行い、また周波数分析を行うことで切削音スペクトルおよび2軸以上の方向の加速度スペクトルが得られる。さらに、実施の形態1と同様の手法で、切削音の主要振動周波数を特定し、2軸以上の方向のバイトの主要振動周波数をそれぞれ特定する。
そして、各方向のバイトの主要振動周波数と、切削音の主要振動周波数とを比較し、実施の形態1の場合と同様の判断基準で、これらが一致するか否かを判断する。このとき、1方向のバイトの主要振動周波数のみが、誤差範囲を考慮した切削音の主要振動周波数と一致した場合、その一致した方向のバイトの振動が異常振動の原因であると判断する。
なお、多くのバイトでは幅や厚みが同じか、あるいはボーリングバイトのように同心円状であるため、、両方向(主分力方向および送り分力方向)の固有振動数がほぼ同じ値となるケースが多い。そこで、両方向の主要振動周波数がともに切削音の主要振動周波数と一致すると判断された場合には、それぞれの方向で主要振動周波数帯域の成分値を求め、これらの値から特に影響の大きい方向を判断すればよい。
両方向の主要振動周波数の成分値の比によってバイトの振動方向が分かることから、その方向の制振性の高い切削工具を使用することにより、効果的に振動を抑制することができる。しかし、実際には工具の製作上の問題もあり、バイトの振動方向と、制振性を高める方向とを必ずしも厳密に一致させる必要はない。たとえば送り分力方向の振動の方が主分力方向の振動よりも大きい場合に、送り分力方向のみに制振性の高い工具を用いても十分に効果を期待できる。
(実施の形態3)
次に、図5を用いて、本発明の実施の形態3について説明する。図5は、本実施の形態3における切削加工時の異常振動診断方法のフロー手順を示す図である。
本実施の形態3では、バイト側の振動測定を行わず、バイトの固有振動数を計算し、該固有振動数からバイトの振動周波数を推定する。バイトの固有振動数は、バイトを構成する部材のヤング率、密度、断面積、工作機械の台座に固定する際のバイトの突き出し量、バイトの把持状態などによって決まる。比較的正確な計算方法としては、有限要素法を利用してバイトの把持状態を厳密に規定する手法を挙げることができる。逆に最も単純な方法としては、バイトの把持状態を片持ち梁と考え、下記の数式(1)により固有振動数fを求める手法を挙げることができる。
Figure 0004358138
上記数式(1)において、Eはバイトを構成する部材のヤング率、ρはバイトを構成する材料の密度、lは工作機械の工具台座からのバイトの突き出し長さ、Aはバイトの断面積である。また、λは、片側固定の1次振動と考えてλ=1.875と設定する。Iは断面2次モーメントであり、角バイトの場合、バイト厚みをh、幅をbとすれば、I=(b×h)/12となる。これにより算出された固有振動数をバイトの主要振動周波数とする。
なお、突き出し長さlについては、たとえば外径加工用バイトに多い四角断面のものでは、その面毎に把持状態が異なるケースが多く、工具台座の面で支えられている面もあれば、ボルトで支えられている面もある。そのため、切刃から固定位置までの長さが、対向する面で異なることが多い。振動においては剛性の低い側の状態に最も影響を受けることを考慮し、本例では、基本的に最も大きな力のかかる主分力方向を支えるバイトの上下面において、突き出し量の大きい側の値を突き出し長さlと設定する。すなわち、バイト底面が工具台座の面で支えられ、上面側からボルトで押えている場合には、切刃に最も近いボルトから切刃までの長さを突き出し長さlとして設定する。
図5に示すように、本実施の形態3では、実施の形態1と同様の手法で、切削音の測定を行い、時系列の音圧データの登録を行い、周波数分析を行うことで切削音スペクトルを得る。また、実施の形態1と同様の手法で、切削音の主要振動周波数を特定する。
その一方で、バイト形状やバイトの把持状態などの条件を入力してバイトの固有振動数を計算する。そして、該固有振動数を、バイトの主要振動周波数とする。
その後、実施の形態1と同様の手法で、切削音の主要振動周波数と、バイトの主要振動周波数とを比較し、これらが一致するか否かを判断する。そして、切削音の主要振動周波数とバイトの主要振動周波数とが一致していると判断された場合には、異常振動の主要因が切削バイト側にあるという診断結果が出力される。逆に、切削音の主要振動周波数とバイトの主要振動周波数とが一致していないと判断された場合には、被削材側に要因があるという診断結果が出力される。
以上のように、本実施の形態3では、バイトの振動状態を測定することなく、大まかなバイトの主要振動周波数を推定することが可能であるが、計算では機械側を剛体として想定し、かつバイトの固定状態も完全固定と仮定することが通常であるので、実際の振動周波数はこれらの影響が加わるため計算値よりも低下する。しかし、主要な振動の要因を特定するという解析の目的に鑑み、大まかな値が得られるだけでも十分な場合が多い。また、バイト側の固有振動数が被削材側の固有振動数より大きくなるケースが多い。そこで、たとえば計算した固有振動数の40%〜100%程度の範囲に切削音の主要な周波数帯域の中心値が存在するという大まかな判断にて、十分に目的を達成することができる。
本実施の形態3の異常振動診断方法では、実際に測定するのは切削音のみでよいので、加速度ピックアップなどを用いてバイト側の振動を評価する必要がなくなる。したがって、実施の形態1,2の場合よりも簡便な診断が可能となる。
(実施の形態4)
次に、図6を用いて、本発明の実施の形態4について説明する。図6は、本実施の形態4における切削加工時の異常振動診断システムを示す図である。本実施の形態4では、上述の実施の形態3の異常振動診断方法を実施可能なシステムの一例について説明する。
図6に示すように、本実施の形態4における異常振動診断システム10は、データ入出力部11と、本体システム部12と、周波数分析部13と、固有振動数計算部14と、データベースとを備える。
データ入出力部11は、システム利用者からの入力受付を行うデータ入力部と、入力された情報形式の検査を行う情報形式検査部と、診断結果の出力を行うデータ出力部とを有する。データ入力部は、切削音データをデジタルデータとして登録する切削音データ登録部と、バイト型番や工作機械台座からのバイト突出し量などのバイト1に関する各種データを登録するバイトデータ登録部とを含み、入力項目は、バイト型番と、工具台座からのバイト突き出し量と、切削音のWAVE形式の電子ファイルである。なお、切削音の測定には、図6に示すように、パーソナルコンピュータに接続したマイクロフォン3を用いる。
本体システム部12は、主要振動数抽出部と、比較部と、制御部とを有する。主要振動数抽出部は、本実施の形態4の異常振動診断システムでは、切削音の主要振動周波数を抽出し、比較部に入力する。
比較部は、切削音の主要振動周波数と、後述する固有振動数計算部14により算出されたバイト1の固有振動周波数とを比較し、これらが一致するか否かを判断する。該比較部は、具体的には上記バイトの固有振動数の周囲に一定の周波数帯域を設定し、その周波数帯域内に上記切削音の主要振動周波数が存在するかどうかを判断する。
制御部は、各種演算および各部の動作制御を行う。具体的には、次のような演算および動作制御を行う。入力されたバイト型番に基づいてデータベースにアクセスしてバイト1の断面形状、密度、ヤング率などの情報を得て、これらの情報とバイト1の突き出し長さとを固有振動数計算部14に入力し、固有振動数の計算値を得る。そして、この固有振動数の計算値を比較部に入力する。固有振動数の計算は、有限要素法や片持ち梁の計算式などを用いて行う。
また、制御部は、入力されたWAVE形式の電子ファイルの時系列音圧データとサンプリング周波数とを周波数分析部13に入力し、音圧スペクトルを得て、該音圧スペクトルを主要振動数抽出部に入力する。主要振動数抽出部は、好ましくは、解析周波数帯域を複数の帯域に分割し、各帯域の中で切削音成分が最大となる帯域の中心値を切削音の主要振動周波数として特定するように構成される。
さらに、制御部は、比較部による比較結果を出力部に送る。出力部では、たとえば、切削音の主要振動周波数と、バイト1の固有振動数とが一致する場合には、異常振動の原因がバイト1側にあるとの診断結果がシステム利用者に提示される。
周波数分析部13は、時系列音圧データとサンプリング周波数に基づいてFFTなどの手法により周波数分析を行い、音圧スペクトルを出力する。固有振動数計算部14は、バイト1の断面形状、密度、ヤング率、工作機械台座からのバイト1の突出し量などの情報に基づいてバイト1の固有振動数を計算し、固有振動数の計算値を出力する。
データベースは、バイト型番に応じたバイト1の断面形状、密度、ヤング率などの各種情報を格納する。該データベースは、バイトの型番からバイトの断面形状や物性などのバイトに関する各種データを抽出可能なものである。
次に、本発明の実施例について説明する。
ダクタイル鋳鉄材部品の加工において、端面および外径加工部において大きな切削音が発生するとともに、仕上げ面にびびりマークが見られ、工具寿命も短いとの現象が発生したことから、本実施の形態の診断方法を用いて原因追求を行った。
対象となるバイトは、25mm角の外径加工用のバイトであり、シャンク部の材質はSCM鋼である。バイト下面は面固定であり、バイト上面はボルト固定であり、切刃からボルトまでの距離が55mmとなっている。ここでは、加工中の振動を測定するものとし、バイト頭部に加速度ピックアップを取り付け、時系列の加速度データ(主分力方向)を測定するとともに、端面加工部と外径加工部のそれぞれで切削音をWAVE形式で録音し、これらの周波数分析を行った。その結果を図7(a)〜(d)に示す。
解析対象の周波数帯域(〜10000Hz)を100Hzずつに分割し、各帯域での成分値を比較した結果、図7(a),(b)に示すように、バイトの主要振動周波数は約4050Hzであった。また、切削音を同様に周波数分析したところ、図7(c),(d)に示すように、端面加工時は1250Hz、外径加工時は3950Hzが主要振動周波数であった。
以上の結果より、外径加工時の切削音の周波数は、バイトの主要振動周波数の約98%の値であることから、バイトの振動が、切削異常音、すなわち異常振動の主要な原因であると考えられる。他方、端面加工時の切削音の周波数は、バイトの主要振動周波数の約30%の値であることから、異常振動の主要な原因は被削材側にあると考えられる。
そこで、実際にこのバイトを等方的に制振性の高い素材を用いたものに変えた場合、外径加工における切削異常音は低下し、仕上げ面性状も良好となり、工具寿命も改善した。これに対し、端面加工においては、特に顕著な効果は得られなかった。
また、前述の数式(1)を用いてバイトの把持状態での固有振動数を計算したところ、計算結果は約6850Hzであった。そこで、たとえばこの計算値の40%の2740Hzをバイトの主要振動周波数と想定した場合でも、やはり診断結果は上述の場合と同様となる。
さらに、工具が振動している外径加工において、その振動方向を特定するために3軸加速度ピックアップをバイト頭部に取り付けてバイトの主要振動周波数の測定を行った。その結果を図8(a),(b)に示す。
図8(a),(b)に示すように、主分力方向と送り分力方向との双方で4050Hzを中心とした周波数帯域での成分が大きかったが、両者の成分値を比較すると、送り分力方向が主分力方向の2.5倍以上の成分値を示していた。そこで、バイトとして、超硬合金板材を組合わせた、送り分力方向に特に制振性の高いバイトを用いたところ、さらに切削音が低下し、工具寿命にも更なる改善効果が見られた。
以上のように、本実施例の診断方法によれば、異常切削音の原因がバイトと被削材のいずれにあるかを簡便に診断することが可能となる。そして、この診断結果に基づき、たとえば防振工具を使用することによる効果の有無を予め予測することができ、振動抑制に対し効率的な投資が可能となる。
上述のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上記の各実施の形態および実施例の特徴的構成を適宜組み合わせることも当初から予定されている。
また、本発明は上記の実施の形態および実施例に限定されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
本発明は、切削加工時の異常振動診断方法および異常振動診断システムに有効に適用される。
本発明の実施の形態1における切削加工時の異常振動診断方法のフロー手順を示す図である。 (a)〜(c)は、周波数分析により得られたスペクトル例を示す図である。 本発明の実施の形態2における切削加工時の異常振動診断方法のフロー手順を示す図である。 外径加工の場合の切削力の方向を示す図である。 本発明の実施の形態3における切削加工時の異常振動診断方法のフロー手順を示す図である。 本発明の実施の形態4における切削加工時の異常振動診断システムの概略構成図である。 (a)〜(d)は、端面加工と外径加工の場合の周波数分析結果を示す図である。 (a),(b)は、主分力方向と送り分力方向の周波数分析結果を示す図である。
符号の説明
1 バイト、2 被削材、3 マイクロフォン、10 異常振動診断システム、11 データ入出力部、12 本体システム部、13 周波数分析部、14 固有振動数計算部。

Claims (3)

  1. 切削加工中に発生する切削音の周波数分析を行い、前記切削音の主要振動周波数を特定するステップと、
    前記切削加工中のバイトの加速度もしくは変位を複数の方向について測定して周波数分析を行い、該周波数分析の結果に基づいて前記バイトの主要振動周波数を特定するステップと、
    前記切削音の主要振動周波数と、前記バイトの主要振動周波数とを比較することで、前記切削音の発生原因が前記バイト側にあるか否かを判定するステップとを備え
    前記切削音の発生原因が前記バイト側にあるか否かを判定するステップにおいて、前記バイトの振動が異常振動の原因であると判定され、前記複数の方向の主要振動周波数がともに前記切削音の主要振動周波数と一致すると判定された場合には、それぞれの方向で主要振動周波数帯域の成分値を求め、最も大きな成分値を有する方向を主要な振動方向として特定するステップをさらに含む、切削加工時の異常振動診断方法。
  2. 前記主要振動周波数を特定するステップは、解析周波数帯域を複数の帯域に分割し、各帯域の中で前記周波数分析により得られた評価値が最大となる帯域を主要振動周波数帯域として選定するステップを含む、請求項1記載の切削加工時の異常振動診断方法。
  3. 前記切削音の主要振動周波数を特定するステップは、非切削時の加工点付近の音を測定することにより切削音以外の音声成分を除去するステップを含む、請求項1または請求項に記載の切削加工時の異常振動診断方法。
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