従って、本発明の目的は、機械加工用ダイナミクス計器を提供することである。
更に、本発明の目的は、加工部品の加工中にその加工部品の表面仕上げのリアルタイム測定値を提供するそのような機械加工用ダイナミクス計器を提供することである。
更に、本発明の目的は、加工部品の加工中にビットの状態のリアルタイムの状況を提供するそのような機械加工用ダイナミクス計器を提供することである。
更に、本発明の目的は、その冷却剤または潤滑剤のリアルタイムの状況を提供するそのような機械加工用ダイナミクス計器を提供することである。
更に、本発明の目的は、その機械の稼働能力を上げる一方で、その加工部品の正確な表面仕上げを維持するそのような機械加工用ダイナミクス計器を提供することである。
更に本発明の目的は、その加工部品がその機械クランプに正しく固定されているかどうかをリアルタイムで示すそのような機械加工用ダイナミクス計器を提供することである。
更に、本発明の目的は、その加工部品の加工中にその工作機械ツールが損傷若しくは磨耗していることをリアルタイムで示すそのような機械加工用ダイナミクス計器を提供することである。
更に、本発明の目的は、工作機械ツールの残り寿命をリアルタイムで示すそのような機械加工用ダイナミクス計器を提供することである。
更に本発明の目的は、その加工部品の加工後の検査の必要を取り除くそのような機械加工用ダイナミクス計器を提供することである。
本発明は、真に有効な機械加工用ダイナミクス計器を次のような組み合わせにより達成できるという認識によってもたらされた:1)機械のビットまたはツールの近くに配置され、スピンドルまたはツール・ホルダーなどの機械の非回転部に反応してその振動信号を出力するセンサーと、2)前記センサーの出力に反応するプロセッサであって、前記振動信号のダイナミクスを完全に特徴付けるために複数の特異な特徴的数量を計算し、例えば加工部品の表面仕上げ、工作機械ツールビットの状態、及び機械の冷却剤または潤滑剤の状態などの特徴的数量と相互に関連付けて前記機械の運転に関連するパラメータを検出するプロセッサとの組み合わせによって達成できるという認識である。
本発明は、機械のツールに近接し、その機械の非回転部に反応して振動信号を出力するためのセンサーと、前記センサーの出力に反応するプロセッサであって、前記振動信号の力学を特徴付ける複数の特徴的数量を計算し、それら特徴的数量を相互に関連付けして前記機械の動作に関連するパラメータを検出するように設定されたプロセッサとを含む機械加工用ダイナミクス計器を特徴とする。
好ましい実施形態において、前記機械は旋盤でもよい。前記機械はフライス盤でもよい。前記機械の非回転部はツール・ホルダーでもよい。前記機械の非回転部はスピンドル・アセンブリでもよい。前記ツールは機械ビットでもよい。
前記機械加工用ダイナミクス計器は更に、前記機械の動作に関連する検出されたパラメータを出力するための装置を有するコンピュータ・サブシステムを含むことができる。前記検出されたパラメータを出力する装置は、電子コンソールを含むことができる。前記検出されたパラメータを出力する装置は、聴覚装置を含むことができる。
前記機械加工用ダイナミクス計器は更に、前記センサーにより前記振動信号出力を変換してデジタル化するための信号調整回路を含むことができ、それによって前記センサーの時系列のコンピュータ・コード表現を獲得する。前記検出されたパラメータは、加工中の加工部品の表面仕上げの測定値を含むことができる。加工部品の表面仕上げの測定値は、前記加工部品の表面仕上げの平均線からの高さの平均絶対値偏差を含むことができる。
加工部品の表面仕上げの測定値は、前記加工部品のサンプリング長の範囲にわたる、前記加工部品の表面仕上げの平均線より上の最高ピークと、前記加工部品の平均線より下の最下点との高さの差を含むことができる。前記加工部品の表面仕上げの測定値は、前記加工部品のサンプリング長の範囲にわたる、前記加工部品の表面の平均線より上のピーク−最下点間の高さ平均を含むことができる。
前記検出されたパラメータは、前記機械における潤滑剤の流動の状態の示度を含むことができる。前記検出されたパラメータは、前記機械ツールが磨耗または損傷しているかどうかの示度を含むことができる。前記検出されたパラメータは、前記機械ツールの残り寿命の示度を含むことができる。前記検出されたパラメータは、前記機械で加工中の加工部品がクランプにどの程度固定されているかの示度を含むことができる。
電子コンソールは、前記機械の動作に関連して検出されたパラメータの視覚表示を出力することができる。前記コンソールは、前記機械の動作に関連して検出されたパラメータの視覚警報を出力することができる。聴覚装置は、前記機械の動作に関連して検出されたパラメータの聴覚警報を出力することができる。
前記センサーとして、加速度計が可能である。前記センサーは、外部ノイズの影響が低減された信号を出力するための電荷増幅器を含むことができる。前記センサーとして、音響センサーが可能である。前記音響センサーは増幅器と狭帯域パスフィルターとを含むことができ、それにより、異なる振幅で搬送波を出力する。
多くの特徴的数量の計算に、前記振動信号の振幅における変動の計算を含むことができる。前記プロセッサは更に、前記特徴的数量を相互に関連付けるように調整されたニューラル・ネットワークを含むことができ、それにより、前記機械の動作に関連するパラメータを検出する。
1つの特徴的数量は、前記振動信号の振幅の平均値を含むことができる。1つの特徴的数量が、前記振動信号の振幅の標準偏差である場合がある。1つの特徴的数量は、前記振動信号の特徴的自己相関時間を含むことができる。1つの特徴的数量が、前記振動信号の振幅の平均絶対値である場合がある。1つの特徴的数量が、前記振動信号の平均交差波変数である場合がある。1つの特徴的数量が、前記振動信号の平均交差波変数の二乗平均平方根である場合がある。1つの特徴的数量が、前記振動信号の平均交差波変数の持続期間である場合がある。1つの特徴的数量が、前記振動信号の平均交差波変数の持続期間の二乗平均平方根である場合がある。1つの特徴的数量が、前記振動信号の標準偏差交差波の期間である場合がある。1つの特徴的数量が、前記振動信号の交差波の持続期間である場合がある。1つの特徴的数量が、前記振動信号の標準偏差交差波の二乗平均平方根持続期間である場合がある。1つの特徴的数量が、前記振動信号のエンベロープの振幅の平均値と、前記振動信号のエンベロープの振幅の平均値の標準偏差との両方である場合がある。
本発明は更に、機械のツールに近接し、前記機械の非回転部に反応して振動信号を出力するためのセンサーと、前記センサーの出力に反応して、前記振動信号のダイナミクスを特徴付ける多数の特徴的数量を計算し、前記特徴的数量を相互に関連付けて前記機械の動作に関連するパラメータを検出するプロセッサとを含む機械加工用ダイナミクス計器を特徴とし、前記プロセッサは前記機械に接続された出力を含み、それにより機械動作パラメータを変動させる。
1つの実施形態において、前記機械加工用ダイナミクス計器は更に、前記プロセッサ及び前記機械の出力に接続されたコントローラを含み、それにより前記機械動作パラメータを変動させる。前記コントローラは、前記機械のモーターに接続することができる。
本発明はまた、機械加工の動的方法を特徴とし、機械のツールに近接して前記機械の非回転部にセンサーを連結して振動信号を出力する工程と、前記振動信号を応じて、前記振動信号のダイナミクスを特徴付ける複数の特徴的数量を計算し、前記特徴的数量を相互に関連付けて前記機械の動作に関連するパラメータを検出する工程とを含む。
1つの実施形態において、前記機械の動作に関連するパラメータの検出は、前記機械の動作に関連する既知のパラメータの複数の特徴的数量表現に従って、前記パラメータを計算するように調整されたニューラル・ネットワークを用いる工程を含む。前記パラメータは、前記振動信号の振幅エンベロープの振幅における変動を求める工程を含むことができる。1つの特徴的数量が、前記振動信号の振幅の平均値である場合がある。1つの特徴的数量が、前記振動信号の振幅の標準偏差である場合がある。1つの特徴的数量が、前記振動信号の特徴的自己相関時間である場合がある。1つの特徴的数量が、前記振動信号の振幅の平均絶対値である場合がある。1つの特徴的数量が、前記振動信号の平均交差波変数である場合がある。1つの特徴的数量が、前記振動信号の平均交差波変数の二乗平均平方根である場合がある。1つの特徴的数量が、前記振動信号の平均交差波変数の持続期間である場合がある。1つの特徴的数量が、前記振動信号の平均交差波変数持続期間の二乗平均平方根である場合がある。1つの特徴的数量が、前記振動信号の標準偏差交差の期間である場合がある。1つの特徴的数量が、前記振動信号の標準偏差交差波の二乗平均平方根持続期間である場合がある。1つの特徴的数量が、前記振動信号の標準偏差交差波の二乗平均平方根持続期間である場合がある。特徴的数量が、前記振動信号のエンベロープの振幅の平均値と、前記振動信号のエンベロープの振幅の平均値の標準偏差との両方である場合がある。
前記方法は更に、電子コンソール上に数字指標を表示することができ、前記数字指標は前記機械の動作に関連するパラメータを表現する。前記方法は更に、前記機械の動作に関連するパラメータが所定の範囲外にあるかどうかを示す音声警報の発生を表示する工程を含む。
好ましい実施形態または以下に開示する実施形態とは別に、本発明は他の実施形態が可能であり、且つ様々な方法で実用又は実行され得る。従って本発明は、本書の以下の説明または図面が示す構造の詳細、及びコンポーネントの配置への応用に限定されないものと理解されるべきである。
上記「背景技術」において説明したように、機械加工の従来の方法は、機械作業者に、製造中の加工部品の表面仕上げの客観的な動的測定値を提供しない。従って、作業者は主観的な視覚、聴覚、及び振動を頼りにスピンドル速度と、切削の深さと、切削ツールの進行速度とを調整することにより、前記表面が正しく仕上がるようにしなくてはならない。また、従来の方法は、工作機械ツールが磨耗または損傷しているか、適正に冷却剤または潤滑剤が流動ているか、あるいは前記加工部品が前記機械のクランプにどれだけしっかり固定されているかを判断するための動的情報も作業者に提供しない。同様に、作業者は視覚的、聴覚的、及び振動的な感覚を頼りにこれらを判断しなくてはならない。
対照的に、本発明の図1の機械加工ダイナミクス計器10は、機械16に近接してツール20(例えば、機械ビット)の非回転部14(例えば、スピンドルまたはツールホルダー)に反応するセンサー12を含み、それによって振動信号24のような振動信号を出力する。プロセッサ22はセンサー12の出力に反応して複数の特徴的数量を計算するように設定され、それら特徴的数量は振動信号のダイナミクスを特徴付け、例えば加工部品36の最終表面仕上げ、工作機械ツール20が磨耗または損傷しているかどうか、及び前記機械の潤滑剤または冷却剤の状況など、それら特徴的数量を相互に関連付けして前記機械の動作に関連するパラメータを検出する。
前記振動信号の力学を特徴付ける多数の特徴的数量を求める特異な計算を行い、次に前記特徴的数量を相互に関連付けて前記機械の動作に関連するパラメータを検出することにより、システム10は、表面仕上げのリアルタイムの検出と、機械ツールの状態と、潤滑剤流動の状態とを提供する。その結果、作業者は前記加工部品の表面仕上げを正しく行うために視覚、聴覚、及び/または振動を頼りにスピンドル速度と、切削の深さと、切削ツール進行速度とを調整する必要がなくなる。代わりに、前記作業者または機械管理者は、システム10が提供するリアルタイムの情報に基づいて調整を行うことができる。加工部品の加工後の検査をなくすことができる。工作機械ツール20についての情報(例えば、ツールの残り寿命)をダイナミックに提供することにより、前記機械作業者は前記機械を遮断すべき時及び前記ツールを交換すべき時を正確に知るので、前記作業者は機械16をその全能力且つ加工率で運転することができ、前記加工部品をより効率的に生産することができる。
本発明の1つの実施例において、機械16は旋盤である。他の設計において、機械16は、図2のEnco Model 1005200 ニーミル(knee mill)(米国イリノイ州シカゴ市Enco Manufacturing Co.)47のフライス盤である。この例において、フライス盤47のスピンドル速度は、Vベルトを使って215〜3440rpm(3.58〜57.3Hz)まで調整することができ、860rpm、1720rpm、3440rpm(14.3Hz、28.7Hz、及び57.3Hz)という3つのスピンドル速度を採用することが可能である。送り速度を変化させるために、Enco Model 205−6404からの可変速度ドライブを活用し、Enco Model 1005200 ニーミルの使用ように修正することにより、最高約0.44in/秒(11.2mm/秒)までの速度でテーブルを送ることができる。本発明に従って用いられる典型的なフライス削り変数は、典型的にスピンドル速度、テーブル送り(例えば、送り速度)、加工部品36の図1が示す切削の径方向の深さ、37が示す切削の軸方向の深さ、及び加工部品36の剛性を含む。
機械16の非回転部14は、典型的にツール・ホルダーまたはスピンドル・アセンブリである。典型的に機械16のツール20は、図3の28が示すような機械ビットである。この例において、前記機械ビットは直径0.500in(12.7mm)の高速スチール・エンドミルであって、2つのねじれ溝(2.720inまたは69.09mmのリードを持つ)を含み、さらに耐摩耗性を与えるためにTiNで被覆されている場合がある。
図1及び2のシステム10は、電子コンソール32のような装置のあるコンピュータ・サブシステム30も含み、それにより、機械16の動作に関連する検出されたパラメータを出力する。1つの設計において、前記検出されたパラメータを出力する装置として、図1のスピーカ34のような聴覚装置が可能である。
また、機械加工用ダイナミクス計器10またはシステム10は、信号調整器33も含むことができ、それによって、センサー12による振動信号(例えば、振動信号24)出力を変換及びデジタル化する。信号調整器32からの出力は、プロセッサ22に入力され、上記で示すようにこのプロセッサ22は、複数の特徴的数量を計算するように設定され、それら特徴的数量が振動信号のダイナミクスを特徴化し、前記機械の動作に関連するパラメータを検出するようにそれら特徴的数量を相互に関連付ける。
上述のように、システム10は、前記振動信号のダイナミクスを特徴付ける複数の特徴的数量を計算し、それら特徴的数量を相互に関連付けて前記機械の動作に関連するパラメータを検出する。機械10の動作に関連する検出されたパラメータは、機械加工中の加工部品36の表面仕上げ34の測定値を含むことができる。加工部品36の表面仕上げ34の測定値は、図3Aの51が示すRa、すなわち加工部品36の表面仕上げ34の平均線からの高さの平均絶対値偏差を含むことができる。別の実施例において、図1の加工部品36の表面仕上げ34の測定値は、図3Bの53が示すRy、すなわち加工部品36のサンプリング長の範囲にわたる、加工部品36の表面仕上げ34の平均線を越す最高ピークと、加工部品34の平均線より下の最下点との高さの差を含むことができる。別の実施例において、図1の加工部品36の表面仕上げ34の測定値はRz、すなわち加工部品36のサンプリング長38にわたる、加工部品36の表面の平均線より上のピーク‐最下点間の高さ平均を含むことができる。Rzは次の公式を用いて計算される。
例えば、図3Cが示すように、例えば図中55、57、59、61、及び63がそれぞれ示すRz1、Rz2、Rz3、Rz4、及びRz5という5つの表面測定値が採られるとき、Rzは次のように計算される。
理想的には、図1の40が示すように、システム10は電子コンソール32上に前記検出された表面仕上げ測定値を表示する。機械加工用ダイナミクス計器10によって検出及び表示される機械16の動作に関連する他のパラメータは、42が示すように、電子コンソール32上に表示される、前記工作機械ツール20が磨耗または損傷しているかどうかを示す残り寿命を含む。44が示すように、電子コンソール32上に前記潤滑剤の状況を表示することもできる。また、機械加工用ダイナミクス計器10は、コンソール32上に視覚警報46を提供することもでき、この警報は表面仕上げ警報47、潤滑剤の流動の警報49、及び加工部品36がクランプ53にしっかり固定されているかどうかを示すクランプ警報51の状況を含むことができる。
前記クランプでの加工部品の固定具合を示す視覚警報(例えば、クランプ警報51)、表面仕上げを示す視覚警報(例えば、表面仕上げ警報47)、及び潤滑剤の流動を示す視覚警報(例えば、潤滑剤のフロー警報49)を、聴覚警報(例えば、スピーカ34)と併せて用いることで、表面仕上げの偏差あるいは機械16の不良がある場合に前記機械作業者の注意をすばやく喚起することができる。
本発明に従った1つの設計おいて、センサー12は図4が詳細に示すような、Endevco Corp.(米国カリフォルニア州San Juan Capistrano)より入手可能なEndevco Model 7259A−25のような加速度計である。この実施形態において、センサー12は前記取付面よりわずか0.5インチ上の高さの非常にコンパクトな造りであり、10〜32のネジのある設置用止め金具を使って取り付けられる。理想的には、センサー12は一方向性であり、センサー12は前記取付面に対し垂直方向を1.3%の最大軸外感度で感知する。この設計において採用されるようなセンサー12は、約93kHzの高い共鳴周波数を典型的に有し、動的測定用途に適したものとなる。1つの実施例において、外部雑音を減らすために、前記ケース・センサー12に電荷増幅器(図示せず)を埋め込むことを含めることができる。Kistler Model 504E圧電センサー増幅器(米国ニューヨーク州Amherst,Kistler Instrument Corp.)をアイソトロン・モードで動作させて用いることにより、センサー12からの出力をデータ収集に必要なレベルに増幅することができる。センサー12と組み合わせた前記センサー増幅器の出力範囲は、総出力0.4734V/gである。機械16に取り付けられるセンサー12の取り付け方法は、図4に示す。
図1のシステム10は、ノルウェーのClampOn ASが製造するClampOn 2000のような音響センサーも含むことができる。センサー46は典型的には、図4が示すように、図2の47が示すようなEnco Model 1005200ニーミルのような機械16に取り付けられる。センサー46は、約83kHzの共鳴周波数を持つ圧電センサーを採用することができ、また、10〜66dBの範囲の高利得増幅器を含むこともできる。前記増幅器は、約61kHzを中心とする狭帯域パスフィルターを含むこともできる。動作時に、センサー46の出力は、変動する(変調)振幅を伴う図5が示す61kHzの搬送波60となることが可能である。理想的には、センサー46の共鳴周波数を中心とするフィルターを用いて、機械加工中に必然的に生じる一時的事象(例えば、各歯が当たること)及び他の動作、例えばセンサー(例えば、量子雑音)または周囲の音源(モーターや蛍光灯など)から生じる雑音などをフィルターする。図4が示すように、センサー46のセンサーヘッドは、非常に厳しい作業環境での使用に耐える設計である。1つの実施例において、センサー46は、約直径1.9インチ、長さ3.7インチの非常に丈夫なステンレススチール筐体の中に納められる。センサー46は、理想的には図5のセンサー12のツバ48を挟んだ反対側に取り付けられる。
センサー12及び46からのダイナミクスデータの収集は、理想的にはCIO−DAS16/330 Data Acquisition Board(米国マサチューセッツ州Middleboro、Measurement Computing Corp.)のようなコンピュータボードによって行われる。1つの設計において、前記コンピュータボードは、12ビットの解像度で最高16のシングルエンド(または8のダブルエンド)チャネルまでのデータを最高330kHzまでの総取得率で収集する能力がある。前記コンピュータボードは、Visual Basicのような言語で書かれたコンピュータ・プログラムを用いて典型的に操作される。1つの実施形態において、前記コンピュータボードは、REP INS W(Repeat Instruction Word(繰返し命令))モードで操作される。機械加工用ダイナミクス計器10に従って高いサンプリング率が望ましいため、典型的に4つの入力チャネルすべてに対して1つの範囲が選択される。可能な限り高いサンプリング率で各機械加工条件のデータの代表的サンプルを集めながらも管理可能な範囲の分析データ量を維持するために、各条件について5秒間のデータを収集するようにすることができ、これは最も遅いスピンドル速度でわずか143回の歯の衝突に相当する。この結果サンプル数は1,650,000になり、それをASCIIフォーマットに保存するとそれぞれ約20Mbを消費することになる。82回のテストにおいて、1.55Gb以上の生データが収集された。これだけ高いデータ獲得率であっても、前記主要なダイナミクスセンサー12及び46は、前記信号の力学を完全に捕らえるには不十分である82.5kHzで記録される。従って、本発明はサンプルの少ないデータでも有効である。
システム10はセンサー12及び/またはセンサー46によって提供される振動信号(例えば、振動信号24)を分析し、前記振動信号の力学を特徴付ける数量一式を計算し、前記機械の動作に関連するパラメータを検出するために前記特徴的数量を相互に関連付けることによって動作する。前記特徴的数量の計算は、前記振動信号の振幅における変動を決定する工程を含む。それら特徴的数量の一部は、単純で分かり易いものである。例えば、信号の平均値またはその標準偏差である。その他には、特徴的サイズ、持続期間、あるいは前記信号力学の動作シーケンスのような前記信号の具体的な特徴を定量化することを目的とした、より詳細な特徴的数量もある。十分な期間にわたってデータが収集されれば、「サンプル数の少ない」データ・ストリームは測定値の代表セットを捕らえる。サンプル抽出されたデータの標準偏差が実際の信号のそれと同等でなくとも、前記サンプル抽出されたデータと前記実際の信号の値との間には1対1の関係がある。
そのような特徴的数量の1つである(Avg)は、図6の80が示す振動信号の平均値である。別の特徴的数量は、信号の調波力を反映する信号の標準偏差(StDev)であり、有意な情報を搬送するあらゆる不規則な変動信号に関する重要な変数である。第3の特徴的数量は、特徴的自己相関時間(Auto)である。これは時間スケールであり、この間に信号は線形相関を失い、プロセスにおける混合率を特徴付ける。前記自己相関数量は、信号の遅延バージョンを掛けた信号の全時間の積分である。長い時間遅延に対して、前記自己相関は次の方法を採り、
ここにおいてnは記録に含まれる測定値数である。無時間遅延に対して、前記自己相関は次と同等であり、
これはサンプリング間隔で測定される。自己相関時間は次の式で表される。
4つ目のフロー指標数量は、平均差(Dif)であって、具体的には、シーケンシャル測定値における平均絶対値の差である。このフロー指標数量は、最小の時間スケールでデータがどれだけ急速に変化するかを示す1次指標である。これは、第1の表面仕上げパラメータであり、表面形状測定に適用される同様の尺度であるRaと類似する。
5つ目のフロー指標数量は、シーケンシャル測定値における二乗平均平方根差(RMSDif)であって、平均差と同類の尺度だが、シーケンシャル測定値における比較的小さい変化よりも、より大きな変化をより強く測る傾向がある。
残りのフロー指標数量は、生の時系列データを生データの移動標準偏差で置き換えることによって計算される。すなわち、データ記録の最初の20の測定値の標準偏差が計算され、ウィンドウが10測定値前進する、そして全記録の移動標準偏差が計算されるまで前記プロセスが繰り返される。前記結果である標準偏差ベクトルは、時間の関数として信号に存在する調波力を特徴付ける。その結果として、このベクトルを元に計算されるフロー指標数量は、時間とともに変化する調波力の変動を特徴付ける。そのようなフロー指標数量は接頭辞「Sd」によって識別される。
別のフロー指標数量は、平均交差波期間(SdaPd)であって、これは図7の82が示す振幅平均値の上方向交差間に生ずる平均測定値数を反映するものであり、1次信号変動の時間長として特徴付けられる。
別のフロー指標数量は、より長い期間の波を強調する平均交差波期間変数の二乗平均平方根の値(SdaRMSpd)である。関連フロー指標数量(SdaDur)は、平均交差波持続期間であり、これは図7の82が示す平均振幅値の上方及び下方交差間に生じる測定値平均数の尺度である。前記関連フロー指標数量は、平均交差波持続期間の二乗平均平方根(SdaRMSDur)である。
図8が示す標準偏差交差波期間フロー指標数量(SdsPd)は、平均交差波の平均期間と類似の尺度だが、この場合、図8の84が示すように平均プラス標準偏差を交差する波の期間を見るために線(バー)をいくらか上げてある。関係のあるフロー指標数量は、標準偏差交差波期間の二乗平均平方根の値(SdsRMSPd)である。別のフロー指標数量は、図8の86が示す標準偏差交差波の持続期間(SdsDur)である。最後に、関連フロー指標数量は、標準偏差交差波の二乗平均平方根持続期間(SdsRMSDur)である。ただし、他のフロー指標数量も本発明の範囲に含まれる。
図1及び2のコンピュータ・サブシステム32で動作する、DOSオペレーティング・システムで実行されるQuick Basic 4.5プログラミング言語の1つのバージョンを、上述の特徴的数量を計算するために、以下に示すコンピュータ・プログラム・リスティングにおいて提供する。
このプログラムは次の形式でコマンド・ラインを受け入れる。DOC96195[DataFile$][−1FileList$] n。1つのデータファイルの分析を行う場合、上記DataFile$フィールドにパス名及びデータを含むファイルを記入する。一連のファイルを分析する場合、マイナス1スイッチを用い、前記パス、及び一連のファイルを含むASCIIファイルの名前をFileList$変数として用いる。前記コマンド・ライン・パラメータnは分析されるコラム番号(加速度計に関しては0、受容音響センサーに関しては1)である。いずれの場合も、単一のASCII出力ファイルはDataFile$またはListFile$から作成され、名前拡張子が「Oun」に代わり、nは分析されたデータを含むコラムの番号である。このファイルは計算された各特徴的数量の名前が記述される見出し行を1行含み、特徴的数量に対応する値を含む、分析された各データファイルを示す行を1行含む。
本発明の1つの実施形態において、前記特徴的数量は、図1のコンピュータ・サブシステム上で動作する図9のネットワーク相関サブシステム70に提示され、そこでは電子コンソール32にリアルタイムで出力が提供される。機械16に取り付けられたセンサー12からの図9の生データ71が増幅され、デジタル化されて特徴抽出分析73に送られる。この分析で得られた特徴的数量セット及び別の有用な設定(例えば、72が示すスピンドル速度、進行速度など)がニューラル・ネットワーク相関70ネットワークに送られ、このネットワークが前記データのダイナミクスと最適にマッチする表面仕上げを定める。前記表面仕上げ、及び74が示す「ツール磨耗」、「冷却剤OK」、「クランプOK」といった他の出力がリアルタイムで表示され、前記機械作業者または機械管理者が機械加工プロセス(例えば、スピンドル速度、切削の深さ、及び/または進行速度の増減など)を修正するのを助ける。機械16からの典型的な入力は、72が示すようにスピンドル速度、またはテーブル速度を含む。次に、図10のニューラル・ネットワーク80を用いて特徴的数量を求め、それら特徴的数量は前記振動信号の力学を特徴付け、それら特徴的数量を相互に関連付けて機械の動作に関連するパラメータを検出する。
次に、図10のニューラル・ネットワーク80を用いて特徴的数量を求め、それら特徴的数量は振動特徴の力学を特徴付け、それら特徴的数量を相互に関連付けして機械の動作に関連するパラメータを検出する。ニューラル・ネットワーク80を用いる主な理由は、急な移行、変動の激しい動作、あるいは入力変数間での複雑なインタラクションを伴う非線形相関関係を任意に扱う能力を前記ニューラル・ネットワークが有するからである。加えて、ニューラル・ネットワーク80は、形式または入力セットと望ましい出力セットとの相関関係についての仮定を一切必要としない。ニューラル・ネットワーク80は、実行の必要がある操作セットを明白に定義するのではなく、1つの加重コネクションセットを調整することによってプログラムされる。いったん調整されたニューラル・ネットワーク80は、リアルタイムの用途に理想的である非常に速く効率的なソフトウェア、ファームウェア、あるいはハードウェア環境で実施することか可能である。また、いったん適正に調整されたニューラル・ネットワーク80は、極めて耐故障(フォールト・トレラント)及び/または故障示唆的(フォールト・インディケーティング)である。従って、データにノイズ、エラーまたは不足がある場合、ニューラル・ネットワークはそれを表しながらも、動作条件の合理的予測をなおかつ提供することができる。
実際には、ニューラル・ネットワーク80は、広範な既知の条件に対する既知の指標数量をまず入力し、それら具体的な事例を扱うように前記ネットワークを調整することによって調整される。いったん調整されたネットワーク80は、新しい指標数量セットに適用可能であり、実際の用途に用いることのできるデータ分析手段が提供される。
ニューラル・ネットワーク80は、ニューロンの層で作られた存在として見ることができる。最も一般的なタイプのニューラル・ネットワークは、「逆伝播」ネットワークと呼ばれ、3つの層(入力層82、隠れた層84、及び出力層86)を含むことが多い。前記入力層は入力情報を受け取り、この場合それは上述した特徴的数量である。各入力は全範囲から(−1,1)範囲まで縮小され、この取り扱いを前記ネットワークは得意とする。この入力層では何の処理も行われず、各ニューロンは単に前記入力値を送り、前記入力値は加重コネクションセットを介して次の層へ送られる。
通常、連続層が完全に相互接続しているので、前記加重コネクションは入力層82の各ニューロンを隠れた層84の各ニューロンにリンクする。与えられたコネクションに沿って隠れたニューロンに到達する値は、前記入力ニューロンによって前記コネクションに投入された値と前記コネクション加重の値の積である。隠れた層84において、各ニューロンは、コネクションを介してそこに到達する値を合計し、次に1つの単純な非線形変換を前記値に適用する。ガウス(釣鐘型)及びシグモイド(S字型)関数が最も一般的に用いられるのは、それらは計算が容易だからである。
好ましい実施形態において、ニューラル・ネットワーク80は「ロジスティック」関数と呼ばれるシグモイド関数を用いる。この関数は、無限範囲にある入力値を(−1,1)の出力にマッピングする。次に、この結果得られた値を加重コネクションに沿って先に送り、出力層86に到達させる。出力層86は前記隠れた層と同一の働きをし、そこに到達した加重値を合計し、ロジスティック変換を適用して結果を出力する。前記範囲(−1,1)にある出力値は前記全範囲にスケールバックされ、前記ネットワークの最終結果(1つの例として、表面仕上げ87、チャター近接89、ツール鋭度91、十分な冷却剤93、緩んだ加工部品95、及び故障95が含まれる)を生成する。
本発明において、前記18の特徴的数量入力は、各データセットと、前記機械加工速度または「はい」若しくは「いいえ」の答えに対応する3つの出力に対して使われる。必要な計算の難易度により、隠れたニューロンの数は大幅に変動することがある。より多くのニューロンはより複雑な計算を可能にするが、処理速度を下げる。Ward Systems Groupより入手可能な「NeuroShell 2」ニューラル・ネットワーク・シミュレーション・プログラムを使って、図10のニューラル・ネットワーク80を実施することができる。
逆伝播ネットワーク80の調整は、入力と望ましい出力との両方を含む調整データセットの作成を必要とする。加重値は当初、ランダムに選択される。調整中、調整事例をランダムに選び、前記ネットワークに与え、前記ネットワークの出力の誤差を前記ネットワークを通して「逆伝播」することにより、前記誤差を取り除くための、加重値への最小限の変化を決定する。この処理を幾度も行い、必要に応じて前記加重値を更新することにより、前記ネットワークの計算精度は、それ以上精度が上がらないところまで向上し続ける。前記ネットワークの精度が前記時点で許容範囲であれば、希望に応じてそれを使い、前記入力値セットに対する出力値を急速に生成することができる。
ニューラル・ネットワーク80は、慎重に適正な調整を行わないと「調整過剰」となる可能性がある。調整過剰とは、前記ネットワークが、異なる調整セット間のパターンにある基本的変動ではなく個々の調整セットを認識する能力である。調整過剰となったネットワークでは、新しい入力セットの状況を予測するために用いたときに、性能が貧しいことが多い。この問題は、獲得可能なデータセットの1つのサブセットを調整データとして使い、残りをテストデータとして使うことによって避けられる。前記ネットワークはこの調整セットを用いて調整されるが、前記コネクション加重に対する新しい値のセットは、前記テストデータ(前記ネットワークの調整に使われなかったデータ)で性能が向上する場合にのみ保存される。この方法は通常、前記調整データを超えて入力として可能なより大きな範囲へと「一般化」する能力を十分に持つネットワークを作る。
生データの各データファイルは、上述のコンピュータ・プログラムを使って特徴ファイルにフィルターされる。それら特徴ファイルは、機械加工条件と結果的表面仕上げとを含むマスター・スプレッドシートとマージ(合併)され、ニューラル・ネットワーク80への入力として使われるデータベースが作り出される。
1つの実施例において、図10のニューラル・ネットワーク80は、55の調整セットと27のテストセットとを用いて調整される。1つのデータセットで調整し、別のデータセットでテストすることにより、ニューラル・ネットワーク82が単にデータを記憶するだけにはならないようにできる。
例えば、図1のセンサー12である入力加速度計と、スピンドル速度及び進行速度と、表面仕上げという出力Raとの間の3つのニューラル・ネットワーク相関関係の中で最も弱い相関関係を図11は示す。図11が示すように、本発明の機械加工用ダイナミクス計器10により与えられる表面仕上げ予測には強い総体的な相関関係があり、テスト条件の大半がY=X線付近に集中している。これは本発明の機械加工用ダイナミクス計器10が、加工部品の表面仕上げを正確に予測していることを示す。
図10のニューラル・ネットワーク80を調整し、表面仕上げパラメータRa、Ry、及び Rz を採用して下記表1が示すように互いに予測させることができる。表1が示すように、表面仕上げのどの尺度から他のどの尺度までについても1:1のマッピングがあり、表面仕上げパラメータの変動は本質的にリンクしている。1つのパラメータの変更は、誤差領域の狭い予測可能な方法で他のパラメータの変更につながる傾向がある。
本発明の1つの実施形態において、図1の機械加工用ダイナミクス計器は、線92上のプロセッサ22の出力に接続されるコントローラ100を含むことができ、それによりスピンドル速度、切削の深さ、及び切削ツールの進行速度といった機械動作パラメータを変動させる。1つの実施例において、コントローラ100はモーター102に接続され、それにより機械16の速度を変動させる。1つの設計において、コントローラ100からのフィードバックは、プロセッサ22に提供さられる。
本発明の機械加工のための動的方法は、図1のセンサー12を機械16の近接ツール20の非回転部14に連結して図12の工程200の振動信号24を出力する工程と、前記振動信号を受けて、前記振動信号のダイナミクスを特徴付ける複数の特徴的数量を計算し、前記特徴的数量を相互に関連付けて図12の段階202の機械16の動作に関連するパラメータを検出する工程とを含む。1つの設計において、機械加工のための動的方法は更に、前記機械の動作に関連する既知のパラメータを代表する複数の特徴的数量表現に従って前記機械の動作に関連するパラメータを計算するように調整されたニューラル・ネットワークを用いる工程を含むことができる。複数の特徴的数量の計算は典型的に、前記振動信号(例えば、図1の振動信号24)の振幅における変動を求める工程を含む。前記特徴的数量として、上記に詳細に説明したように、振幅平均値、振幅標準偏差、特徴的自己相関時間、平均差、より具体的にはシーケンシャル測定値の平均絶対値差、シーケンシャル測定値の二乗平均平方根(RMSDif)、平均交差波変数期間(SdaPd)、より長期間の波を強調する平均交差波変数期間の二乗平均平方根値(SdRMSpd)、平均交差波持続期間(SdaDur)、平均交差波持続期間の二乗平均平方根値(SdaRMSDur)、標準偏差交差波期間フロー指標数量(SdsPd)、標準偏差交差波期間値の二乗平均平方根値(SdsRMSPd)、標準偏差交差波持続期間(SdsDur)、及び標準偏差交差波の二乗平均平方根持続期間(SdsRMSDur)が含まれる。
本発明の具体的な特徴は一部の図面に示されており、その他の図面には示されていないが、これはあくまでも便宜上そうしているのであり、各特徴は本発明に従ったその他の特徴のすべて若しくはいずれとも組み合わせることができる。本書において「含む」、「有する」、「持つ」、「・・・を用いて」「・・・と共に」という言葉は広範且つ包括的に解釈されるべきであり、いかなる物理的相互接続にも限定されない。更に、本発明の用途において開示されているいかなる実施形態も、唯一可能な実施形態として解釈されるべきではない。
当業者であれば思いつくであろう前記他の実施形態は、付属の特許請求項の範囲内に含まれる。