JP2017030066A - 切削工具の異常検出方法及び切削加工装置 - Google Patents

切削工具の異常検出方法及び切削加工装置 Download PDF

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孝行 岩▲崎▼
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Abstract

【課題】摩耗や欠損の形態に拘わらず、高精度に切削工具の摩耗や欠損等の異常を検出可能な切削工具の異常検出方法及び切削加工装置を提供する。【解決手段】交換直後の切削工具1により切削加工された被加工物2の表面形状を計測する工程と、切削加工進行後の前記切削工具により切削加工された前記被加工物の表面形状を計測する工程と、2つの前記表面形状の送り方向位置を揃える工程と、該送り方向位置を揃えた2つの前記表面形状から相関係数を求める工程と、該相関係数と予め設定した相関係数の閾値とを比較して前記切削工具の異常を検出する工程とを有する。【選択図】図1

Description

本発明は、切削工具の摩耗や欠損を検出可能な切削工具の異常検出方法及び切削加工装置に関するものである。
従来、旋削やフライス加工等を行う切削工具の摩耗や欠損をインプロセスで検出する方法としては、主軸トルクの変化、切削抵抗の変化、AE(Acoustic Emission)信号等を検出し、利用するものがある。従来の方法の場合、素材の固さやバラツキ、送り速度や切込み量等の切削条件の変化や、その他の外乱ノイズの影響を受け易い為、切削工具の正確な摩耗や欠損を検出するのは困難である。
又、加工後の被加工物の加工面には、切削工具の刃先の形状が転写されることから、加工後の被加工物の加工面を表面粗さ測定器により計測し、計測された加工面の表面粗さ、表面形状を基に、切削工具の摩耗や欠損を検出するものもある。
尚、特許文献1には、切削加工状態にある被加工物に対し、該被加工物の直径より広い幅のレーザ光を照射すると共にレーザ光を受光し、受光値の最大値と最小値との差を基にして前記被加工物の表面切削肌粗さをインラインで測定し、該表面切削肌粗さが所定値以上となったときに切削加工ラインを自動的に停止するインライン切削肌粗さ測定方法が開示されている。
又、特許文献2には、切削後の被加工物の表面形状を測定して表面形状データを取得し、該表面形状データをフーリエ変換した上でバンドパスフィルタにより工具摩耗と関係のある特定周波数帯域のパーシャルオーバオール値を算出し、求めた値と予め設定された判定基準値とを比較して工具の摩耗の限界を判定する切削工具の摩耗検出方法が開示されている。
特開平6−328349号公報 特開平6−344246号公報
然し乍ら、切削工具の摩耗が進行した場合、必ずしも切削工具の表面粗さが粗くなるとは限らず、又表面形状から演算したパーシャルオーバーオール値が変化するとも限らない。例えば、切削工具が正常に(刃先に損傷なく均等に)摩耗した場合には、切削工具の表面粗さは逆に小さくなる場合があり、表面粗さからでは正常な摩耗は検出できない場合がある。
又、切削工具の摩耗や欠損の形態によっては、摩耗前と摩耗後とで表面形状から演算したパーシャルオーバーオール値に大きな差が出ない場合があり、この場合には表面形状のスペクトルを基にした摩耗検出の検出精度は大きく低下する。
本発明は、摩耗や欠損の形態に拘わらず、高精度に切削工具の摩耗や欠損等の異常を検出可能な切削工具の異常検出方法及び切削加工装置を提供するものである。
本発明は、交換直後の切削工具により切削加工された被加工物の表面形状を計測する工程と、切削加工進行後の前記切削工具により切削加工された前記被加工物の表面形状を計測する工程と、2つの前記表面形状の送り方向位置を揃える工程と、該送り方向位置を揃えた2つの前記表面形状から相関係数を求める工程と、該相関係数と予め設定した相関係数の閾値とを比較して前記切削工具の異常を検出する工程とを有する切削工具の異常検出方法に係るものである。
又本発明は、交換直後の切削工具により切削加工された被加工物の表面形状を計測する工程と、切削加工進行後の前記切削工具により切削加工された前記被加工物の表面形状を計測する工程と、2つの前記表面形状の送り方向位置と切削深さ方向位置を揃える工程と、前記送り方向位置と前記切削深さ方向位置を揃えた2つの前記表面形状から近似直線を演算して該近似直線の傾きと決定係数とを求める工程と、前記傾き及び前記決定係数と予め設定した閾値とをそれぞれ比較して前記切削工具の異常を検出する工程とを有する切削工具の異常検出方法に係るものである。
又本発明は、被加工物を切削加工する切削工具と、交換直後の該切削工具による前記被加工物の加工面の表面形状と、切削加工進行後の前記切削工具による前記被加工物の加工面の表面形状とを計測する表面形状計測部と、該表面形状計測部で計測された2つの前記表面形状の送り方向位置を揃え、該送り方向位置を揃えた2つの前記表面形状から相関係数を演算する制御演算部と、前記相関係数の閾値が格納される記憶部と、前記相関係数と前記閾値とを比較して前記切削工具の異常を判断する判断部とを具備する切削加工装置に係るものである。
更に又本発明は、被加工物を切削加工する切削工具と、交換直後の該切削工具による前記被加工物の加工面の表面形状と、切削加工進行後の前記切削工具による前記被加工物の加工面の表面形状とを計測する表面形状計測部と、該表面形状計測部で計測された2つの前記表面形状の送り方向位置と切削深さ方向位置を揃え、前記送り方向位置と前記切削深さ方向位置を揃えた2つの前記表面形状から近似直線を演算して該近似直線の傾きと決定係数とを演算する制御演算部と、前記傾きの閾値と前記決定係数の閾値がそれぞれ格納される記憶部と、前記傾きと前記決定係数とをそれぞれ前記閾値と比較して前記切削工具の異常を判断する判断部とを具備する切削加工装置に係るものである。
本発明によれば、正常摩耗や異常摩耗等の摩耗や欠損の形態に拘わらず、又表面粗さや表面形状から得られるスペクトルの変化に拘わらず、切削工具の摩耗度合い(異常)を検出することができ、異常検出精度を向上させることができるという優れた効果を発揮する。
本発明の第1の実施例に係る切削工具と被加工物の加工面の表面形状との関係を示す説明図である。 本発明の実施例に係る切削加工装置の構成を示すブロック図である。 切削工具の刃先部に生じる摩耗の形態を説明する説明図である。 摩耗のない切削工具により切削加工を行った際の表面形状曲線を示すグラフである。 正常摩耗が生じた切削工具により切削加工を行った際の表面形状曲線を示すグラフである。 異常摩耗が生じた切削工具により切削加工を行った際の表面形状曲線を示すグラフである。 (A)は摩耗のない切削工具の表面形状曲線をフーリエ解析したスペクトルであり、(B)は正常摩耗が生じた切削工具の表面形状曲線をフーリエ解析したスペクトルであり、(C)は異常摩耗が生じた切削工具の表面形状曲線をフーリエ解析したスペクトルである。 図7(A)〜図7(C)の周波数レベルの合計値と、摩耗のない切削工具の表面形状曲線に対する、摩耗のない切削工具の表面形状曲線の相関係数、正常摩耗が生じた切削工具の表面形状曲線の相関係数、異常摩耗が生じた切削工具の表面形状曲線の相関係数をそれぞれ示す表である。 本発明の第2の実施例に係る摩耗のない切削工具と正常摩耗が生じた切削工具の切削深さを示すグラフである。 本発明の第2の実施例に係る摩耗のない切削工具と異常摩耗が生じた切削工具の切削深さを示すグラフである。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
図1〜図8に於いて、本発明の第1の実施例について説明する。
図1中、1は切削工具を示し、2は被加工物を示している。該被加工物2を回転軸3を中心に回転させつつ、前記切削工具1を所定の切込み深さD、所定の送りピッチ(送り位相)Pで前記回転軸3の軸心方向へと移動させることで、前記被加工物2の切削加工が行われる様になっている。
尚、以下の説明では、切込み深さは摩耗のない前記切削工具1を用いた際に設定通りの切込みの深さが得られる前記切削工具1の高さ方向の位置を示し、後述する切削深さは切込み深さを設定した際に実際に得られる切込みの深さを示している。即ち、前記切削工具1に摩耗がない状態では、切込み深さと切削深さは同じ値となり、該切削工具1に摩耗が生じた状態では、切込み深さと切削深さは異なった値となる。
切削加工が行われることで、前記被加工物2には前記切削工具1の刃先形状が送りピッチP毎に転写される。前記切削工具1に摩耗がない状態では、切削後の前記被加工物2には規則正しい表面形状が生じる。
図2は、切削加工装置4を示すブロック図である。該切削加工装置4は、CPU等を含む制御演算部5と、前記切削工具1や前記被加工物2を駆動して切削加工を行う切削加工部6と、前記被加工物2の表面形状を計測する表面形状計測部7と、前記切削工具1に摩耗や欠損が生じていないかを判断する判断部8と、記憶部9とを有している。
前記切削加工部6は、前記被加工物2を回転させ、更に、前記切削工具1を前記被加工物2に対して移動させ、前記被加工物2の切削加工を行う様になっている。又、前記表面形状計測部7は、例えばレーザセンサであり、前記被加工物2の加工面にレーザ光を照射した際の反射状態を検出し、該被加工物2の加工面の表面形状を計測可能となっている。
前記判断部8は、前記表面形状計測部7により計測された前記被加工物2の加工面の表面形状を基に、前記切削工具1の摩耗や欠損の限界、即ち該切削工具1の異常を検出し、該切削工具1の交換が必要であるかどうかを判断する様になっている。
又、前記記憶部9は、前記切削加工部6を駆動させ前記被加工物2の切削加工を行う為のシーケンスプログラムや、前記切削工具1の異常を判断する為の判断プログラム等のプログラムが格納されると共に、前記表面形状計測部7により計測された前記被加工物2の加工面の表面形状データ、前記判断部8が前記切削工具1の異常を判断する為の閾値等が予め設定され格納されている。
図3は、前記切削工具1の先端の刃先部11の拡大図である。実線は該刃先部11が摩耗していない状態の刃先形状を示し、破線は該刃先部11が正常に摩耗した状態の刃先形状を示し、2点鎖線は該刃先部11が一部欠損或は異常摩耗した状態の刃先形状を示している。
図4は、前記切削工具1の前記刃先部11が摩耗していない状態(図3中実線部)で、前記切削工具1により旋盤加工を行った際の、前記被加工物2の表面形状曲線12を切削深さと送り方向位置とで表したグラフである。該表面形状曲線12は、理論粗さ曲線とも呼ばれ、正常な切削加工が行われている場合、即ち前記刃先部11が摩耗していない状態で切削加工を行った場合では、刃先形状、送りピッチ、切込み深さで決定される。
図5は、前記切削工具1の前記刃先部11が正常に摩耗した状態(図3中破線部)で、前記切削工具1により旋盤加工を行った際の、前記被加工物2の表面形状曲線13を切削深さと送り方向位置とで表したグラフである。
図6は、前記切削工具1の前記刃先部11の一部が欠損或は異常摩耗した状態(図3中2点鎖線部)で、前記切削工具1により旋盤加工を行った際の、前記被加工物2の表面形状曲線14を切削深さと送り方向位置とで表したグラフである。
尚、図4〜図6に於いては、少なくとも前記切削工具1の高さ方向の位置(切込み深さD)、送り位相(送りピッチP)、切削深さ方向、送り方向の切削条件を一致させている。
又、図7(A)〜図7(C)は、図4〜図6に示される前記表面形状曲線12〜14をそれぞれフーリエ解析し、その解析結果を示したスペクトルである。尚、横軸は前記切削工具1の1ピッチ毎の送り目を基本周波数としてその高調波が現れたものであり、0〜5は便宜上付けられた倍数である。
上記した様に、図5に示される前記表面形状曲線13は、前記刃先部11が正常摩耗した前記切削工具1によるものであり、切削深さの変動が小さくなっている為、表面粗さは小さくなる。従って、前記被加工物2の表面形状の表面粗さを計測して閾値判定をしただけでは前記刃先部11の異常を判断することはできず、前記切削工具1の正常摩耗を検出することはできない。
更に、図7(A)に示される前記表面形状曲線12のフーリエ解析結果と、図7(C)に示される前記表面形状曲線14のフーリエ解析結果とを比較すると、周波数0〜周波数5のレベルの総和が等しいことがわかる(図8参照)。従って、周波数0〜周波数5の総和のパーシャルオーバーオール値も等しくなるので、周波数0〜周波数5に着目した場合には、前記切削工具1の欠損或は異常摩耗を検出することができない。
尚、図7(C)中、例えば周波数2付近の周波数帯域に着目し、パーシャルオーバーオール値を演算すれば、前記切削工具1の欠損或は異常摩耗の検出は可能である。然し乍ら、摩耗や欠損の形態によってどの周波数帯域に着目すべきかは当然変化するので、着目すべき周波数を特定するのは困難である。
本発明者は、正常摩耗や異常摩耗等、摩耗や欠損の形態に拘わらず、摩耗を生じた場合の前記表面形状曲線13,14と摩耗なしの前記表面形状曲線12との相関関係が変化することを見出した。従って、本実施例では、表面形状曲線の相関関係に着目し、前記表面形状曲線12に対する測定すべき前記切削工具1により切削したことで得られる表面形状曲線の相関係数を演算することで、前記切削工具1の摩耗を検出している。
以下、本実施例に於ける前記切削加工装置4により前記被加工物2に対して旋盤加工を行った際の、前記切削工具1の異常検出方法について説明する。
先ず、前記制御演算部5が前記切削加工部6を駆動させ、交換直後の摩耗のない前記切削工具1により、送りピッチP、切込み深さDで前記被加工物2の旋盤加工を行う。該被加工物2の加工を所定時間行うと、次に前記表面形状計測部7により、前記被加工物2の加工面の送り方向の表面形状が計測される。
計測された表面形状データは、前記切削工具1の交換直後の表面形状データとして前記記憶部9に格納されると共に、前記制御演算部5により前記切削工具1を交換した直後に切削した際の前記表面形状曲線12が作成され、前記記憶部9に格納される。
前記制御演算部5により前記表面形状曲線12が作成されると、再び前記制御演算部5が前記切削加工部6を駆動させ、前記切削工具1により前記被加工物2の加工を所定時間行う。所定時間経過後、再び前記表面形状計測部7により前記被加工物2の加工面の送り方向の表面形状が計測される。尚、該被加工物2を再度加工する時は、少なくとも送りピッチPや切込み深さD、切削深さ方向、送り方向の切削条件は、前記表面形状曲線12を作成した時と同じにする必要がある。
計測された表面形状データは、切削加工進行後の前記切削工具1の表面形状データとして前記記憶部9に格納されると共に、前記制御演算部5により切削加工進行後の表面形状曲線が作成され、前記記憶部9に格納される。
この時、前記切削工具1の前記刃先部11が正常摩耗していた場合には、例えば図5に示される様な前記表面形状曲線13が作成される。
該表面形状曲線13が作成されると、前記制御演算部5は、前記表面形状曲線12と前記表面形状曲線13の送り方向位置を揃えた後、前記表面形状曲線12(摩耗なし)に対する前記表面形状曲線13(正常摩耗)の相関係数を演算する。相関係数は以下の式で演算することができる。
Figure 2017030066
ここで、xiは前記表面形状曲線12の切削深さ、yiは前記表面形状曲線13の切削深さである。尚、相関係数を演算する為には、前記表面形状曲線12,13の送り方向位置を適切に揃えておく必要がある。揃える方法は色々あるが、例えば、前記制御演算部5が前記表面形状曲線13を送り方向に僅かにずらしながら相関係数を算出し、相関係数が最大となる位置が前記表面形状曲線12,13の送り方向位置が適切に揃った位置であり、その時の相関係数が所望の相関係数となる。
又、前記切削工具1の前記刃先部11が欠損或は異常摩耗していた場合には、例えば図6に示される様な前記表面形状曲線14が作成される。上記と同様、前記制御演算部5が前記表面形状曲線12(摩耗なし)に対する前記表面形状曲線14(欠損或は異常摩耗)の相関係数を演算する。
図8は、前記表面形状曲線12に対する該表面形状曲線12の相関係数、該表面形状曲線12に対する前記表面形状曲線13の相関係数、前記表面形状曲線12に対する前記表面形状曲線14の相関係数の演算結果をそれぞれ図示したものとなっている。
図8に示される様に、正常摩耗や欠損或は異常摩耗のいずれの場合であっても、前記表面形状曲線12に対する該表面形状曲線12の相関係数とは異なった値が得られることがわかる。
前記切削工具1を交換した直後に切削した際の前記表面形状曲線12と、切削加工進行後の表面形状曲線との相関係数が演算されると、前記判断部8により、前記記憶部9に予め格納された相関係数の閾値、例えば0.999を下回るかどうかが判断される。
前記判断部8により、演算された相関係数が閾値を下回っていないと判断されると、前記被加工物2に対する旋盤加工が続行され、相関係数が閾値を下回っていると判断されると、前記切削工具1に異常が生じているとして前記切削工具1の交換が行われる。
上述の様に、第1の実施例では、前記表面形状計測部7の計測により得られた、前記被加工物2の加工面の前記切削工具1を交換した直後に切削した際の前記表面形状曲線12と、切削加工進行後の表面形状曲線との相関関係に着目し、前記表面形状曲線12に対する相関係数と閾値とを比較して摩耗の程度を判断し、前記切削工具1の交換が必要かどうかを判断している。
従って、正常摩耗や欠損或は異常摩耗等の摩耗や欠損の形態に拘わらず、又、表面粗さが小さくなる場合や表面形状から求めたパーシャルオーバーオール値が変化しない場合に於いても、前記切削工具1の前記刃先部11の摩耗度合い(異常)を検出することができ、異常検出精度を向上させることができると共に、前記切削工具1の交換時期を判断することができる。
次に、図2、図4〜図6及び図9、図10に於いて、本発明の第2の実施例について説明する。図9は、少なくとも切削工具1(図1参照)の切込み深さ(高さ位置)Dと送りピッチ(送り位相)P、切削深さ方向、送り方向の切削条件を同等とし、図4に示される交換直後、即ち摩耗なしの前記切削工具1による切削深さと、図5に示される切削加工進行後、即ち正常摩耗が生じた前記切削工具1による切削深さをそれぞれプロットすると共に、近似直線15を描いたものである。
又、図10は、少なくとも前記切削工具1の切込み深さ(高さ位置)Dと送りピッチ(送り位相)P、切削深さ方向、送り方向の切削条件を同等とし、図4に示される交換直後、即ち摩耗なしの前記切削工具1による切削深さと、図6に示される切削加工進行後、即ち欠損或は異常摩耗が生じた前記切削工具1による切削深さをそれぞれプロットすると共に、近似直線16を描いたものである。
第2の実施例では、交換直後の摩耗のない前記切削工具1により旋盤加工が行われた被加工物2の加工面の送り方向の表面形状が表面形状計測部7により計測され、表面形状データとして記憶部9に格納されると共に、送りピッチP毎の切削深さが該記憶部9に格納される。
又、所定時間旋盤加工を行った後の、切削(旋盤)加工進行後の前記切削工具1により切削加工が行われた前記被加工物2の加工面の送り方向の表面形状が前記表面形状計測部7により計測され、表面形状データとして前記記憶部9に格納されると共に、送りピッチP毎の切削深さが該記憶部9に格納される。
次に、制御演算部5は、交換直後と切削加工進行後の送りピッチP毎の切削深さについて、送り方向位置と切削深さ方向位置を揃えた後、最小二乗法にて前記近似直線15,16を演算すると共に、決定係数R2 を演算する。
最後に、判断部8により、演算した前記近似直線15,16の傾きが予め設定された閾値、例えば0.9〜1.1の範囲にあるかどうかが比較されると共に、決定係数が予め設定された閾値、例えば0.9よりも小さいかどうかが判断される。
前記近似直線15,16の傾きが閾値の範囲内にあり、決定係数が閾値を上回っていると判断されると、前記切削工具1に異常が生じていないとして切削加工を続行する。又、少なくとも前記近似直線15,16の傾きが閾値の範囲外にあるか、決定係数が閾値を下回っているかのいずれかであると判断されると、前記切削工具1に異常が生じているとして該切削工具1の交換が行われる。
尚、本実施例では、近似直線は原点を通る直線となっており、以下の式で求めることができる。
y=f(x)=ax (式2)
Figure 2017030066
ここで、xiは、交換直後の摩耗のない前記切削工具1により切削加工が行われた際の切削深さのデータであり、yiは所定の時間切削加工した後の切削深さのデータである。尚、近似直線を作成する為には、それぞれの切削深さのデータの送り方向位置と切削深さ方向位置を揃えておく必要がある。送り方向位置は第1の実施例([0043])と同様の方法で揃えをすることができる。又、切削深さ方向位置は平均値が一致する様にする等の方法が好適である。
又、決定係数は以下の式で求めることができる。
Figure 2017030066
ここで、切削加工進行後の前記切削工具1の刃先部11が正常摩耗している状態(図5参照)では、図9に示される様に、決定係数は非常に高い結果となっているが、前記近似直線15の傾きは1を大きく下回る結果となっている。
又、切削加工進行後の前記切削工具1の前記刃先部11が欠損或は異常摩耗している状態(図6参照)では、図10に示される様に、前記近似直線16の傾きは1に非常に近い結果となっているが、決定係数は1を大きく下回る結果となっている。
更に、図示はしないが、切削加工進行後の前記切削工具1に正常摩耗や欠損或は異常摩耗の両方が生じている状態では、決定係数、近似直線の傾きが共に1を大きく下回る結果となる。
上記の結果より、前記切削工具1に生じた正常摩耗が大きくなる程、近似直線の傾きが小さくなり、前記切削工具1に生じた欠損或は異常摩耗が大きくなる程、決定係数が小さくなることがわかる。
上述の様に、第2の実施例では、交換直後の摩耗のない前記切削工具1による送りピッチP毎の切削深さと、切削加工進行後の該切削工具1による送りピッチP毎の切削深さについて、近似直線と決定係数を演算し、近似直線の傾きと決定係数とをそれぞれ閾値と比較して摩耗の程度を判断し、前記切削工具1の交換が必要かどうかを判断している。
従って、正常摩耗や欠損或は異常摩耗等の摩耗や欠損の形態に拘わらず、又表面粗さが小さくなる場合や表面形状から求めたパーシャルオーバーオール値が変化しない場合に於いても、前記切削工具1の前記刃先部11の摩耗度合い(異常)を検出することができると共に、摩耗や欠損の形態を検出することができ、異常検出精度をより向上させることができる。更に、検出結果を基に前記切削工具1の交換時期を判断できる。
尚、第1の実施例の相関係数と閾値との比較に加え、第2の実施例の近似直線の傾きと閾値との比較、決定係数と閾値との比較をそれぞれ行うことで、前記切削工具1の異常検出精度を更に向上させてもよい。
又、第1の実施例、第2の実施例では、旋盤加工を行った際の前記被加工物2の表面形状を基に、前記切削工具1の異常を検出しているが、フライス加工にも適用可能であるのは言う迄もない。
又、フライス加工の場合は、少なくとも軸方向切込み量(送りピッチP)、半径方向切込み量(切込み深さD)の切削条件を、摩耗のない前記切削工具1により前記被加工物2を加工する時と、切削加工進行後の前記切削工具1により前記被加工物2を加工する時とで同じにする必要がある。
1 切削工具 2 被加工物
4 切削加工装置 5 制御演算部
7 表面形状計測部 8 判断部
9 記憶部 12〜14 表面形状曲線
15,16 近似直線

Claims (4)

  1. 交換直後の切削工具により切削加工された被加工物の表面形状を計測する工程と、切削加工進行後の前記切削工具により切削加工された前記被加工物の表面形状を計測する工程と、2つの前記表面形状の送り方向位置を揃える工程と、該送り方向位置を揃えた2つの前記表面形状から相関係数を求める工程と、該相関係数と予め設定した相関係数の閾値とを比較して前記切削工具の異常を検出する工程とを有する切削工具の異常検出方法。
  2. 交換直後の切削工具により切削加工された被加工物の表面形状を計測する工程と、切削加工進行後の前記切削工具により切削加工された前記被加工物の表面形状を計測する工程と、2つの前記表面形状の送り方向位置と切削深さ方向位置を揃える工程と、前記送り方向位置と前記切削深さ方向位置を揃えた2つの前記表面形状から近似直線を演算して該近似直線の傾きと決定係数とを求める工程と、前記傾き及び前記決定係数と予め設定した閾値とをそれぞれ比較して前記切削工具の異常を検出する工程とを有する切削工具の異常検出方法。
  3. 被加工物を切削加工する切削工具と、交換直後の該切削工具による前記被加工物の加工面の表面形状と、切削加工進行後の前記切削工具による前記被加工物の加工面の表面形状とを計測する表面形状計測部と、該表面形状計測部で計測された2つの前記表面形状の送り方向位置を揃え、該送り方向位置を揃えた2つの前記表面形状から相関係数を演算する制御演算部と、前記相関係数の閾値が格納される記憶部と、前記相関係数と前記閾値とを比較して前記切削工具の異常を判断する判断部とを具備する切削加工装置。
  4. 被加工物を切削加工する切削工具と、交換直後の該切削工具による前記被加工物の加工面の表面形状と、切削加工進行後の前記切削工具による前記被加工物の加工面の表面形状とを計測する表面形状計測部と、該表面形状計測部で計測された2つの前記表面形状の送り方向位置と切削深さ方向位置を揃え、前記送り方向位置と前記切削深さ方向位置を揃えた2つの前記表面形状から近似直線を演算して該近似直線の傾きと決定係数とを演算する制御演算部と、前記傾きの閾値と前記決定係数の閾値がそれぞれ格納される記憶部と、前記傾きと前記決定係数とをそれぞれ前記閾値と比較して前記切削工具の異常を判断する判断部とを具備する切削加工装置。
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