JP3885977B2 - 生体試料を測定する方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は酵素反応を用いて被検液中のADPを測定する方法において、被検液を少なくともグルコース、ADP依存性ヘキソキナーゼ(ADP−HK)、酸化型NAD(P)〔酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(リン酸)〕類、グルコース−6−リン酸脱水素酵素(G6PDH)およびマグネシウムイオン、コバルトイオンおよびマンガンイオンからなる群より選ばれた1種または2種以上のイオン放出性塩類の存在下、15〜45℃の温度条件にて反応させ、被検液中のADPを反応によって生成されるAMPとともに、還元型NAD(P)〔還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(リン酸)〕類の生成量に基づいて測定する方法および生体試料中のADPを測定する測定用組成物に関し、臨床検査などの分野で用いられ、血清、血漿、尿、髄液などの被検液中のADPを還元型NAD(P)類の生成、増加量として簡便かつ正確に測定する目的である。
【0002】
【従来の技術】
従来、生体試料中のADPを測定する方法としては液体クロマトグラフィーを用いる方法が知られているが液体クロマトグラフィー法は操作性が煩雑であるという欠点を有している。
また、操作性に優れるADP測定の酵素法としては、ピルビン酸キナーゼ〔PK(EC 2.7.1.40)〕と乳酸脱水素酵素〔LDH(EC 1.2.3.3)〕を用いた還元型NADの減少法(反応式1)、ピルビン酸キナーゼとピルビン酸オキシダーゼを用いたオキシダーゼ法(反応式2)やピルビン酸キナーゼとピルビン酸脱炭酸酵素とアルデヒド脱水素酵素を用いた還元型NAD(P)の増加法(反応式3)が知られている(特開平7−8297号公報)。
これらの反応式を以下に示す。下記式中のPEPはホスホエノールピルビン酸、Piはリン酸、PDCはピルビン酸デカルボキシラーゼ、TPPはチアミンピロリン酸を示す。
【0003】
【化1】
【0004】
【化2】
【0005】
【化3】
【0006】
しかしながら、反応式1に示す還元型NAD(NADH+H+ ) の減少法においては、前もって所定量の還元型NADを反応液内に存在させ、反応の終了後、反応液内に残存する還元型NADの量を測定する減少法であるために、
(1)測定対象の成分が少ない場合には測定値が不正確である。
(2)測定できる成分の上限値が定量前に反応液内に存在させる還元型NADの量により制限される。
(3)還元型NADの量の測定に使用する分光光度計の機種に応じて、定量前に反応液内に存在させる還元型NADの量を変える必要がある。
(4)分析用試薬中に含有される還元型NADが不安定である。
等の問題点がある。
【0007】
また、反応式2に示すピルビン酸キナーゼとピルビン酸オキシダーゼを用いて生ずる過酸化水素の発色指示薬系を用いて測定するピルビン酸の定量法が広く利用されているが、(5)この方法は生体試料中の干渉物質(還元物質)(尿酸、アスコルビン酸等)や着色物質(ビリルビン、ヘモグロビン等)の影響を受けるので測定値の正確さにおいて必ずしも十分満足できる方法とはいえない。
【0008】
また、反応式3に示すピルビン酸キナーゼとピルビン酸脱炭酸酵素とアルデヒド脱水素酵素を用いた還元型NAD(P)の増加法は、ピルビン酸キナーゼの逆反応を利用するもので、(6)この逆反応における至適pHがpH7.5であり、またピルビン酸脱炭酸酵素の至適pHがpH6.0〜6.4であり、さらにアルデヒド脱水素酵素の至適pHがpH9.0であり、使用する三種類の酵素の至適pHが異なるために反応式3における反応の至適pHを決定することが困難であり、(7)またピルビン酸脱炭酸酵素のピルビン酸に対するKm値が3.6〜30mMとかなり大きな値であることから、基質である高価なホスホエノールピルビン酸を多く使用してピルビン酸を多く生成せしめる必要性があるとともに、(8)反応全体を短時間に終了させるためには非常に多くの酵素量を必要とする繁雑な手法にすぎなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
また、ADP−HKとしては、超高度好熱菌ピロコッカス・フリオサス・DSM3638(Pyrococcus furiosus DSM3638)菌株の菌体内に存在することが報告されている〔J.Biol.Chem.,269,17537−17541(1994)〕が、その理化学的性質の記載はほとんどなく、酵素も精製、単離されたものではなく、また該菌株の生育温度が90℃〜105℃であるため、その由来する酵素の至適温度が90℃以上であり、活性測定に用いているG6PDHは酵母由来でその熱安定性を考慮して、活性測定を50℃で行っているもので、ADP−HKの至適温度と異なる温度条件にて活性測定を行ったものにすぎず、ADP−HKの至適温度に照らして一般の生体成分の臨床診断の温度条件とは全く異なる測定条件であった。
【0010】
かつまた、50℃の反応温度で行うことに関して、臨床診断の分野では反応温度として50℃で行うと(1)組み合わせの酵素の失活によって正確に測定できず、(2)検体となる生体成分の熱変性がおこり、にごりが生じる等の欠点があった。
【0011】
まず、本発明者らはピロコッカス・フリオサス・DSM3638菌株を培養し、ADP−HKを精製し、該酵素の反応の至適温度を調べた結果、至適温度は80〜100℃であった。さらに、37℃における相対活性は100℃の10%程度であり、一般的にこのような性質の酵素を用いて37℃で酵素反応を行わせると正確な定量反応を行うことは不可能であると思われた。しかしながら、全く意外にも本発明者らは37℃で該酵素反応を用いた定量実験を実施して、該酵素反応37℃を含む生体成分の一般的定量における通常の反応温度条件である15〜45℃の温度条件にて生体成分などの被検液中のADPを還元型NAD(P)類の生成・増加量として簡便かつ高精度に測定することが可能であることを発見した。
【0012】
さらに、本発明者らは、下記酵素反応(反応式4、5)を用いて生体試料中のADPを測定する方法において、グルコース、ADP−HKおよび酸化型NAD(P)類、G6PDHおよびマグネシウムイオン、コバルトイオンまたはマンガンイオンの存在下、ADPの量にも基づく酸化型NAD(P)類を還元型NAD(P)類に還元する反応を行い、還元型NAD(P)類の生成量に基づいた生体中のADPの定量方法が極めて有用であり、かかる反応が生体試料中のADPに普遍的に利用できる酵素反応であることを見い出して、本発明を完成した。即ち、本発明は生体試料中のADPをグルコース、ADP−HKおよび酸化型NAD(P)類、G6PDHおよびマグネシウムイオン、コバルトイオンまたはマンガンイオンを用いてADPを還元型NAD(P)類の生成・増加量として測定できる方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記知見に基づいて完成されたもので、酵素反応を用いて被検液中のADPを測定する方法において、被検液を少なくともグルコース、ADP−HK、酸化型NAD(P)類、G6PDHおよびマグネシウムイオン、コバルトイオンおよびマンガンイオンからなる群より選ばれた1種または2種以上のイオン放出性塩類の存在下、15〜45℃の温度条件にて反応させ、被検液中のADPを反応によって生成されるAMPとともに、還元型NAD(P)類の生成量に基づいて測定する方法に関する。
【0014】
本発明で用いられる、グルコース、ADP−HKおよび酸化型NAD(P)類、G6PDHおよびマグネシウムイオン、コバルトイオンおよびマンガンイオンからなる群より選ばれた1種または2種以上のイオン放出性塩類の存在下、酸化型NAD(P)類から還元型NAD(P)類を生成する酵素反応は下記反応式4及び5で示される。
【0015】
【化4】
【0016】
【化5】
【0017】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明におけるADP−HKとしては、上記反応式4で示される少なくともグルコースを基質とし、ADPを消費してグルコース−6−リン酸およびAMPを生成するADP−HKであれば何ら限定されるものではなく、例えばADP−HKの生産菌としては超高度好熱菌ピロコッカス・フリオサス・DSM3638菌株がドイッチェ・ザンムルグ・フォン・マイクロオルガニスメン・ウント・チェルクツルレン・GmbH(DSM)に基準培養物として寄託され、DSMカタログ(1993)に記載されており、何人も入手可能であり、本菌株から得られた高度好熱性ADP−HKが好ましい。
【0018】
また、上記反応式5で示される酵素反応に用いられるG6PDHは市販されており(ベーリンガーマンハイム社:Leuconostoc mesentoroides由来、シグマ社:パン酵母、Bacillus stearothermophilus、Leuconostoc mesentoroides由来)、容易に入手可能である。
【0019】
上記ADP−HKが触媒する酵素反応(反応式4)に使用するイオン放出性塩類であるマグネシウムイオンの代わりにコバルトイオンまたはマンガンイオンを放出し得るいずれか1種または2種以上のイオン放出性塩類を用いればよく、その塩類としては塩化物、硫酸化物などが包含され、好適には塩化マグネシウム、塩化コバルト、塩化マンガンが挙げられるが、なんらこれらに限定されるものではない。
【0020】
酵素反応式5に示されるように、上記のG6PDHが触媒する酵素反応に使用される補酵素としての酸化型NAD(P)類にはこの他に酸化型チオ−NAD(P)、酸化型3−アセチルNAD(P)、酸化型デアミノNAD(P)などが包含されるが、なんらこれらに限定されるものではない。
【0021】
本発明において、酵素反応4および5で示される酵素反応のADP−HK、G6PDH、グルコース、酸化型NAD(P)類およびマグネシウムイオン、コバルトイオンまたはマンガンイオンの使用量としては酵素反応が円滑に進行する量であればよく、測定対象となる被検液中の物質の種類、被検液中の含量、共役させる酵素反応の種類、反応時間および温度などにより適宜調整されるが、ADP−HKおよびG6PDHの濃度は例えば0.1〜100U/ml程度、好ましくは1〜50U/ml程度である。グルコース、酸化型NAD(P)類の濃度は酵素反応を行うのに十分な濃度であればよく、グルコースは例えば0.5〜100mM程度、好ましくは1〜50mM程度、酸化型NAD(P)類は例えば0.5〜50mM程度、好ましくは、1〜10mM程度とされ、マグネシウムイオン、コバルトイオンまたはマンガンイオンの濃度としては例えば0.1〜50mM程度、好ましくは0.5〜10mM程度である。
【0022】
本発明の方法は、酵素反応系に悪影響を及ぼさない適当な緩衝液(例えば、トリス−塩酸緩衝液、リン酸緩衝液、モノまたはジエタノールアミン緩衝液、グッド緩衝液等)を用いて行われる。また、測定手法は特に限定されず、エンドポイント法、レートアッセイ法などの手法を適宜用いることができる。測定対象となる被検液としてはADPが存在または形成されたADPを含有する生体試料が挙げられ、例えば、血清、血漿、尿、髄液などが例示される。このような被検液としては通常5〜200μlを用いて上記反応系によって反応を行うもので、反応温度としては例えば15〜45℃、好ましくは20℃〜40℃の反応温度条件で行えばよく、また、反応時間はエンドポイント法では、1〜60分間、好ましくは1〜10分間、レートアッセイ法では反応が直線的に行われている時間内、好ましくは、2〜3分間を計って測定する。
【0023】
被検液中のADP量に相当する本発明の反応は、生成されるAMPとともに還元型NAD(P)類の生成を伴い、この還元型NAD(P)類の生成量は種々の方法により測定することができるが、通常、簡便かつ高精度で測定することのできる吸光度測定法により行われる。測定波長は還元型NAD(P)類の種類によって適宜選択され、還元型NAD(P)、還元型3−アセチル−NAD(P)、還元型デアミノ−NAD(P)などの場合には340nm、還元型チオ−NAD(P)の場合は405nmの波長が選択される。
【0024】
また、還元型NAD(P)類の生成量の測定法として、インドニトロテトラゾニウム(INT)やニトロブルーテトラゾニウム(NTB)等のテトラゾニウム塩を用いて電子受容体としてフェナジンメトサルフェート(PMS)やジアホラーゼ(EC 1.6.4.3)の作用によりホルマザン色素を形成せしめ、このホルマザン色素の呈色を測定する方法を用いてもよい。また、還元型NAD(P)Hの蛍光を測定してもよい。
【0025】
本発明における被検液中のADPの測定において、形成されたADPを被検液とする場合、各種生体試料中の酵素およびその基質による反応においてADPを形成する反応系であればなんら限定されるものではなく、例えばキナーゼ、シンセターゼ、ヒドロラーゼまたはカルボキシラーゼとその基質となる物質が当該キナーゼ、シンセターゼ、ヒドロラーゼおよびカルボキシラーゼの作用によってADPに導くものであればよい。
【0026】
また、これらの反応において、基質を定量する場合に、添加する酵素量は1〜100U/ml程度である。また、酵素活性を測定する場合の添加する基質は1〜100mM程度であるが、特に反応において阻害を受けない限りこれらより過剰量を使用することを除外するものではない。
またこれらの反応は、前記反応式4および5とともに同一反応系としてもよく、また別反応系としてもよいが好ましくは同一反応系となすことである。
以下、本発明の生体試料中のADPの測定方法を例をもって具体的に説明するが、本発明の方法はこれらに限定されるものでない。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
参考例1
<ADP−HKの酵素活性測定法>
測定試薬
50mM トリス−塩酸緩衝液(pH7.5)
20mM グルコース
2mM ADP
2mM MgCl2
5U/ml G6PDH
0.025% NBT(ニトロテトラゾニウムブルー)
1mM NADP
1% トリトンX−100
5U/ml ジアホラーゼ(NADPH)
【0029】
測定試薬1mlを37℃で1分間予備加温した後、0.02mlの酵素液を添加して10分間反応させる。反応後、0.1N塩酸を2ml添加して反応を停止させ、5分以内に層長1.0cmのセルを用いて、波長550nmにおける吸光度を測定する(As)。また、盲検として酵素液のかわりに蒸留水0.02mlを用いて同一の操作を行って吸光度を測定する(Ab)。この酵素使用の吸光度(As)と盲検の吸光度(Ab)の吸光度差(As−Ab)より酵素活性を求める。酵素活性1単位は37℃で1分間に1μモルの還元型NADPを生成させる酵素量とし、計算式は下記の通りである。
酵素活性(U/ml)=(As−Ab)×0.795×酵素の希釈倍率
【0030】
<ADP−HKの取得>
ピロコッカス・フリオサス・DSM3638の培養
培地組成
0.1% 酵母エキス
0.5% トリプトン
0.72% マルトース
2.39% NaCl
0.4% Na2 SO4
0.07% KCl
0.02% NaHCO3
0.01% KBr
0.03% H3 BO4
1.08% MgCl2
0.15% CaCl2
0.0025% SrCl2
0.025% NH4 Cl
0.014% K2 HPO4
0.1% CH3 COONa
0.0015% N(COOH)3
0.0005% MnSO4
0.0014% FeSO4
0.0002% NiCl2
0.0001% CoSO4
0.0001% ZnSO4
0.00001% CuSO4
0.000001% Na2 Wo4
0.000001% Na2 Mo4
0.1% システイン塩酸塩
【0031】
上記培地成分を含む液体培地(pH7.0)500mlを500ml容三角フラスコ10本に分注し、120℃、20分間、加熱滅菌した後、これにピロコッカス・フリオサス・DSM3638株の菌体懸濁液10mlを移植し、攪拌させながら、95℃で20時間培養し、種培養液とした。上記培地成分を含む液体培地200l/300l容タンクを滅菌した後、種培養液を移植し、攪拌させながら、95℃で15時間培養し、5mU/mlの培養液200lを得た。
【0032】
<ADP−HKの精製>
得られた培養液200lを遠心分離して、得られた菌体を0.9%のNaClを含む20mMのトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)で1回洗浄した。洗浄菌体を20mMのトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)に懸濁して2lに調整し、クボタ社製の超音波破砕機(INSONATOR、201M)を用いて180W、30分間処理して、菌体破砕液を得た。
【0033】
この破砕液を8000rpm、30分間遠心分離し、1.8l(酵素活性980U)の上清を得た。この上清を透析チューブを用いて10mMのトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)8lに対して5℃で一夜透析した後、10mMのトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)で緩衝化したDEAE−Sepharose FF(ファルマシア社製)200ml(2.6×38cm)のカラムに通し、0〜1モルのNaClのリニアグラジエントで溶出を行った。その結果、0.08〜0.1モルのNaCl濃度で活性画分(950U)が溶出された。
【0034】
この得られた活性画分に4MとなるようにNaClを溶解し、4MのNaClで緩衝化されたPhenyl−Sepharose FF(ファルマシア社製)200ml(2.6×38cm)のカラムに通し、4〜0MのNaClのリニアグラジエントにより溶出を行った。その結果、0.02から0.07モルのNaCl濃度で活性画分(900U)が得られた。
【0035】
この得られた活性画分を10mMトリス−塩酸(pH7.5)8lに5℃、一夜透析した後、10mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)で緩衝化したヒドロキシアパタイト(ペンタックス社製)100ml(2.6×19cm)のカラムに通し、0〜0.5Mのリン酸緩衝液(pH7.5)のリニアグラジエントにより溶出を行った。その結果、0.02〜0.03Mのリン酸緩衝液濃度で活性画分(850U)が溶出された。この酵素液を凍結乾燥して5mgのADP−HK酵素粉末(170U/mg)を得た。
【0036】
ADP−HKの理化学的性質は以下の通りであった。
ADP−HKの理化学的性質
(1)酵素作用
基質としてグルコースを用いた酵素作用を以下に示す。
【0037】
【化6】
【0038】
(2)分子量
トーソー社製TSK−G3000SWXL(0.75×30cm)を用いたゲル濾過法により測定したADP−HKの分子量は100,000±5,000であった。
(3)至適pHはpH6.0〜7.0(リン酸緩衝液)であった。
(4)至適温度は80〜100℃であることから高度好熱性酵素と認められた。
【0039】
実施例1
<37℃でマグネシウムイオンを用いたときのADPの定量>
測定試薬
50mM トリスー塩酸緩衝液(pH7.5)
20mM グルコース
5U/ml G6PDH
1mM NADP
2mM MgCl2
5U/ml ADP−HK
【0040】
測定方法
ADPを2.6mM、5.2mM、7.8mM、10.4mM、13mMの水溶液に調整し、ADPサンプルを作成した。測定試薬1mlにADPサンプル20μl加え、37℃、5分間加温後の340nmの吸光度を試薬ブランクを対照に測定した。測定結果は図1(横軸:最終濃度として表示)に示すようにADPが定量的に測定できた。
【0041】
実施例2
<37℃でコバルトイオンを用いたときのADPの定量>
測定試薬
50mM トリスー塩酸緩衝液(pH7.5)
20mM グルコース
5U/ml G6PDH
1mM NADP
2mM CoCl2
10U/ml ADP−HK
【0042】
測定方法
ADPを2.3mM、4.6mM、6.9mM、9.2mM、11.5mMの水溶液に調整し、ADPサンプルを作成した。測定試薬1mlにADPサンプル20μl加え、37℃、5分間加温後の340nmの吸光度を試薬ブランクを対照に測定した。測定結果は図2に示すようにADPが定量的に測定できた。
【0043】
実施例3
<37℃でマンガンイオンを用いたときのADPの定量>
測定試薬
50mM トリスー塩酸緩衝液(pH7.5)
20mM グルコース
5U/ml G6PDH
1mM NADP
2mM MnCl2
10U/ml ADP−HK
【0044】
測定方法
ADPを2.5mM、5.0mM、7.5mM、10.0mM、12.5mMの水溶液に調整し、ADPサンプルを作成した。測定試薬1mlにADPサンプル20μl加え、37℃、5分間加温後の340nmの吸光度を試薬ブランクを対照に測定した。測定結果は図3に示すようにADPが定量的に測定できた。
【0045】
実施例4
<20℃でマグネシウムイオンを用いたときのADPの定量>
測定試薬
50mM トリスー塩酸緩衝液(pH7.5)
20mM グルコース
5U/ml G6PDH
1mM NADP
2mM MgCl2
20U/ml ADP−HK
【0046】
測定方法
ADPを2.8mM、5.6mM、8.4mM、11.2mM、14mMの水溶液に調整し、ADPサンプルを作成した。測定試薬1mlにADPサンプル20μl加え、20℃、5分間加温後の340nmの吸光度を試薬ブランクを対照に測定した。測定結果は図4に示すようにADPが定量的に測定できた。
【0047】
実施例5
<40℃でマグネシウムイオンを用いたときのADPの定量>
測定試薬
50mM トリスー塩酸緩衝液(pH7.5)
20mM グルコース
5U/ml G6PDH
1mM NADP
2mM MgCl2
5U/ml ADP−HK
【0048】
測定方法
ADPを2.7mM、5.4mM、8.1mM、10.8mM、13.5mMの水溶液に調整し、ADPサンプルを作成した。測定試薬1mlにADPサンプル20μl加え、40℃、5分間加温後の340nmの吸光度を試薬ブランクを対照に測定した。測定結果は図5に示すようにADPが定量的に測定できた。
【0049】
参考例2
<50℃のときのADPの定量性>
測定試薬
50mM トリスー塩酸緩衝液(pH7.5)
20mM グルコース
0.5U/ml G6PDH
1mM NADP
2mM MgCl2
5U/ml ADP−HK
【0050】
測定方法
ADPを0、5mM、10mM、15mMの水溶液に調整し、ADPサンプルを作成した。測定試薬1mlを50℃で5分間予備加温した後、ADPサンプル20μl加え、50℃、5分間加温後の340nmの吸光度を試薬ブランクを対照に測定した。測定結果は図6に示すように50℃では定量的な測定はできなかった。
【0051】
【発明の効果】
以上のように本発明の測定方法は、還元型NAD(P)類の生成量に基づいてADPを測定するので測定限界が高く、また分子吸光係数が明確になっている還元型NAD(P)類を測定することから測定値の信頼性が高い。更に、本発明の測定方法は、被検液中の還元物質などの影響を受けないという利点を有する。従って、本発明によれば、生体試料中のADPを簡便にして高精度で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によって37℃でマグネシウムイオンを用いたときのADP測定の検量線を示すものである。
【図2】本発明によって37℃でコバルトイオンを用いたときのADP測定の検量線を示すものである。
【図3】本発明によって37℃でマンガンイオンを用いたときのADP測定の検量線を示すものである。
【図4】本発明によって20℃でマグネシウムイオンを用いたときのADP測定の検量線を示すものである。
【図5】本発明によって40℃でマグネシウムイオンを用いたときのADP測定の検量線を示すものである。
【図6】本発明の代わりに50℃にて反応したときのADP測定の定量曲線を示すものである。
Claims (4)
- 酵素反応を用いて被検液中のADPを測定する方法において、被検液を少なくともグルコース、ピロコッカス・フリオサス由来のADP依存性ヘキソキナーゼ、酸化型NAD(P)類、グルコース−6−リン酸脱水素酵素およびマグネシウムイオン、コバルトイオンおよびマンガンイオンからなる群より選ばれた1種または2種以上のイオン放出性塩類の存在下、20〜40℃の温度条件にて反応させ、被検液中のADPを反応によって生成されるAMPとともに、還元型NAD(P)類の生成量に基づいて測定する方法。但し、ピロコッカス・フリオサス由来のADP依存性ヘキソキナーゼは以下の理化学的性質を有する。
(1)酵素作用
基質としてグルコースを用いた酵素作用が以下の反応式のとおりである。
100,000±5,000(ゲル濾過法により測定)
(3)至適pH
pH6.0〜7.0
(4)至適温度
80〜100℃ - ADPが、存在または形成されたADPである請求項1に記載の測定する方法。
- ピロコッカス・フリオサス由来のADP依存性ヘキソキナーゼおよびグルコース−6−リン酸脱水素酵素が0.1〜100U/ml、グルコースが0.5〜100mM、酸化型NAD(P)が0.5〜50mM、イオン放出性塩類が0.1〜50mMの濃度である請求項1に記載の測定する方法。
- ピロコッカス・フリオサス由来のADP依存性ヘキソキナーゼおよびグルコース−6−リン酸脱水素酵素が0.1〜100U/ml、グルコースが0.5〜100mM、酸化型NAD(P)が0.5〜50mM、マグネシウムイオン、コバルトイオンおよびマンガンイオンからなる群より選ばれた1種または2種以上のイオン放出性塩類が0.1〜50mMの濃度である生体試料中のADP測定用組成物。
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JP32162396A JP3885977B2 (ja) | 1995-12-27 | 1996-12-02 | 生体試料を測定する方法 |
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