JP3885329B2 - フッ素系共重合体およびその製造方法 - Google Patents

フッ素系共重合体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は透明性、低反射率特性に優れた塗膜を形成することができる反射防止膜形成に優れたフッ素系共重合体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日のマルチメディアの発達は各種表示装置(ディスプレイ装置)の発展につながり、広く普及している。このような表示装置のうち、携帯用を中心に屋外使用されるものでは、その視認性向上がますます重要となってきている。更に大型表示装置においても、より見易くすることが市場拡大の重要な要素となりつつあり、そのまま技術課題となっている。
従来から表示装置の視認性向上の1手段として、低屈折率材料から構成される反射防止膜によって基板を被覆することが行われてきている。ここに、反射防止膜を形成する方法としては、例えばフッ素化合物の薄膜を蒸着により形成する方法が知られている。
然るに、近年における液晶表示を中心としたコストダウンのニーズに対応でき、且つ大型表示装置に対しても反射防止膜を形成できるような技術が必要となってきている。しかしながら、反射防止膜として従来の蒸着法を使用する場合には、大型基板に対し効率良く反射防止膜を形成することが困難であるし、且つコストも真空装置を必要とすることで下げることが困難であった。
このような事情に基づいて、屈折率の低いフッ素系ポリマーを有機溶剤に溶解して液状の組成物を調製し、これを基板表面に塗布することによって反射防止膜を形成する方法が検討され、例えば特開昭61-40845号報、特公平6-98703号報においては、基板表面にフッ素化アルキルシランの塗布が提案され、特開平6-115023号報には特定の構造を有する含フッ素重合体をコートする方法が提案されている。
また、特開昭56−28219には、含フッ素重合体とオルガノシロキサン重合体を反応させて得られるグラフト共重合体を得る方法が提案されている。さらに、特開昭62−280225には、両末端パーオキサイドあるいは、両末端I含有ポリシロキサンを用いてフッ素オレフィンを重合することによって得られるポリフルオロオレフィンセグメントAとポリシロキサンセグメントBとが連結部位を介して結合したABAトリブロック型のポリシロキサン−ポリフルオロオレフィンブロック共重合体が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のフッ素系材料を反射防止膜とした場合には、透明性に欠けていたり、基材との密着が十分ではなく、特に繰り返し擦ることで反射防止膜層が剥がれてしまうという問題を有している。また、これらの欠点を改良するため提案された前記特開昭56−28219、特開昭62−280225に記載のグラフトあるいはブロック共重合体は、反射防止膜とした場合、基材への塗布性が悪いため十分な反射防止効果が得られないという問題があった。
本発明は以上のような状況に鑑みなされたものである。本発明の目的は、透明性に優れ、且つ低屈折率で良好な反射防止効果を発揮することができるとともに、耐擦傷性に優れた反射防止膜を形成することができるフッ素系共重合体を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は(a)下記一般式1で表される構造単位(以下、「構造単位(a)」という)20〜70モル%、一般式1
Figure 0003885329
[式中、R1はフッ素原子、フロロアルキル基、−OR2で表される基(R2はアルキル基またはフロロアルキル基を示す)を示す]
(b)下記一般式2で表される構造単位(以下、「構造単位(b)」という)20〜70モル%および一般式2
Figure 0003885329
[式中、R3は水素原子またはメチル基を、R4はアルキル基、−(CH2)x−OR5で表される基(R5はアルキル基、ヒドロキシアルキル基、グリシジル基を、xは0または1の数を示す)、−OCOR5で表される基(R5は前記と同様)、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を示す]
(c)アゾ基含有ポリシロキサン化合物を共重合させて得られる構造単位であって、下記一般式3で表される構造単位の量に換算して(以下、「構造単位(c)」という)0.1〜10モル%からなり、一般式3
Figure 0003885329
[式中、R6およびR7は、同一でも異なっていても良く、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基を示す]、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算数平均分子量が5,000〜500,000であるフッ素系共重合体(以下、「フッ素系共重合体1a」という)、構造単位(a)20〜70モル%、構造単位(b)10〜70モル%および構造単位、(d)下記一般式4で表される構造単位(以下、「構造単位(d)」という)を−(OSiR15R17)y−の量に換算して0.1〜10モル%からなり、一般式4
Figure 0003885329
[式中、R10〜R13は水素原子、アルキル基またはシアノ基を示し、R14〜R17は水素原子またはアルキル基を示し、p、qは1〜6の数、s、tは0〜6の数、yは1〜200の数を示す。]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算数平均分子量が5,000〜500,000であるフッ素系共重合体(以下、「フッ素系共重合体1b」という)、構造単位(a)20〜70モル%、構造単位(b)10〜70モル%および構造単位(c)0.1〜10モル%、および(e)ノニオン性反応性乳化剤を共重合させて得られる下記一般式5で表される構造単位(以下、「構造単位(e)」という)0.1〜5モル%からなり、一般式5
Figure 0003885329
(式中、R8はポリエーテル構造を有する基を示す)ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算数平均分子量が5,000〜500,000であるフッ素系共重合体(以下、フッ素系共重合体2a)という)、構造単位(a)20〜70モル%、構造単位(b)10〜70モル%および構造単位(d)を−(OSiR15R17)y−の量に換算して0.1〜10モル%、および構造単位(e)0.1〜5モル%からなり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算数平均分子量が5,000〜500,000であるフッ素系共重合体(以下、「フッ素系共重合体2b」)という)、ならびにこれらの製造方法を提供するものである。
【0005】
本発明のフッ素系共重合体1aは、構造単位(a)20〜70モル%、好ましくは25〜60モル%、さらに好ましくは30〜55モル%、構造単位(b)10〜70モル%、好ましくは20〜60モル%、さらに好ましくは30〜60モル%、構造単位(c)0.1〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%、さらに好ましくは0.1〜3モル%からなる。本発明のフッ素系共重合体1bは、構造単位(a)20〜70モル%、好ましくは25〜60モル%、さらに好ましくは30〜55モル%、構造単位(b)20〜70モル%、好ましくは20〜60モル%、さらに好ましくは30〜60モル%、構造単位(d)を−(OSiR15R17)y−の量に換算して0.1〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%、さらに好ましくは0.1〜3モル%からなる。また、フッ素系共重合体2aは構造単位(a)20〜70モル%、好ましくは25〜60モル%、さらに好ましくは30〜55モル%、構造単位(b)10〜70モル%、好ましくは20〜60モル%、さらに好ましくは30〜60モル%、構造単位(c)0.1〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%、さらに好ましくは0.1〜3モル%、構造単位(e)0.1〜5モル%、好ましくは0.1〜3モル%、さらに好ましくは0.5〜3モル%からなる。また、フッ素系共重合体2bは構造単位(a)20〜70モル%、好ましくは25〜60モル%、さらに好ましくは30〜55モル%、構造単位(b)20〜70モル%、好ましくは20〜60モル%、さらに好ましくは30〜60モル%、構造単位(d)を−(OSiR15R17)y−の量に換算して0.1〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%、さらに好ましくは0.1〜3モル%、構造単位(e)0.1〜5モル%、好ましくは0.1〜3モル%、さらに好ましくは0.5〜3モル%からなる。フッ素系共重合体中1a、1b、2aおよび2bにおいて、構造単位(a)が20モル%未満では、得られるフッ素系共重合体中のフッ素含量が40重量%以下となり、本願が意図するところの光学的にフッ素含有材料の特徴である、低屈折率の発現が困難となる。一方、構造単位(a)が70モル%を越えると、得られる含フッ素共重合体の有機溶剤への溶解性が著しく低下するとともに、透明性、基材への密着性が低下する。また、構造単位(b)の割合が10モル%未満では、有機溶剤への溶解性に劣り、70モル%を越えると本願共重合体の特徴である、透明性、低反射率の光学特性が悪化する。
【0006】
さらに、構造単位(c)の割合が10モル%を越えると、または構造単位(d)を−(OSiR15R17)y−の量に換算して10モル%を超えると、含フッ素共重合体の透明性に劣り、コート材として使用する際に塗布時にハジキ等を発生し易くなる。
さらにまた、構造単位(e)の割合が10モル%を越えると、粘着性が出て取り扱いが困難なものとなり、コート材等で使用する場合には耐湿性の低下を伴う。
一般式1のR1において、フロロアルキル基としては、トリフロロメチル基、パーフロロエチル基、パーフロロプロピル基、パーフロロブチル基、パーフロロヘキシル基、パーフロロシクロヘキシル基などの炭素数1〜6のフロロアルキル基が挙げられ、R2においてアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などの炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、フロロアルキル基としてはR1と同様のものを挙げられる。
一般式2のR4においてアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ラウリル基などの炭素数1〜12のアルキル基が、アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられ、R5においてアルキル基としてはR4と同様のものを、ヒドロキシアルキル基としては、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、6−ヒドロキシヘキシル基が挙げられる。
一般式3のR6〜R7において、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数1〜3のアルキル基が、ハロゲン化アルキル基としてはトリフロロメチル基、パーフロロエチル基、パーフロロプロピル基、パーフロロブチル基などの炭素数1〜4のフロロアルキル基などが、アリール基としてはフェニル基、ベンジル基、ナフチル基などが挙げられる。
一般式4のR10〜R13において、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などの炭素数1〜12のアルキル基が、R14〜R17においてアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。
一般式5のR8において、乳化作用を有する基としては、疎水性基および親水性基の双方を有しかつ親水性基はポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなどのポリエーテル構造を有する基が好ましい。
【0007】
このような乳化作用を有する基としては下記一般式6で表される基を挙げることができる。
一般式6
Figure 0003885329
(式中、nは1〜20の数、mは0〜4の数、uは3〜50の数を示す)
本発明において、構造単位(a)、構造単位(b)および構造単位(c)はそれぞれ2種以上であってもよい。
また、本発明のフッ素系共重合体1aは、構造単位(a)および構造単位(b)がランダムに結合してなるブロックと、構造単位(c)からなるブロックとからなる。
また、本発明のフッ素系共重合体1bは、構造単位(a)および構造単位(b)がランダムに結合してなるブロックと、構造単位(d)からなるブロックとからなる。
本発明のフッ素系共重合体2aは構造単位(a)、構造単位(b)および構造単位(e)がランダムに結合してなるブロックと、構造単位(c)からなるブロックとからなる。
本発明のフッ素系共重合体2bは構造単位(a)、構造単位(b)および構造単位(e)がランダムに結合してなるブロックと、構造単位(d)からなるブロックとからなる。
本発明のフッ素系共重合体1a、1b、2aおよび2bは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で、テトラヒドロフラン(THF)を溶剤として測定し、ポリスチレン換算値として求められた数平均分子量が5000〜500000、好ましくは10000〜3000000、更に好ましくは10000〜100000である。
数平均分子量が前記範囲よりも小さいと得られる含フッ素共重合体の機械的強度が低下し、また前記範囲よりも大きいと溶液粘度が高くなり、薄膜コーティングが困難となる。
また本発明のフッ素系共重合体1a、1b、2aおよび2bのフッ素含量は30重量%以上、好ましくは40〜60重量%である。なお、フッ素含量はフッ素原子の重量を、アリザリンコンプレクソン法で測定したものである。
本発明のフッ素系共重合体1aおよび1bは(a)フッ素原子を含有するオレフィン単量体(以下、単に「(a)成分」ともいう。)、(b)ビニルエーテル単量体(以下、単に「(b)成分」ともいう。)および(c)成分であるアゾ基含有ポリシロキサン化合物(以下、単に「(c)成分」ともいう)を、フッ素系共重合体2aおよび2bではさらに(e)反応性乳化剤(以下、単に「(e)成分」ともいう)を共重合することにより製造することができる。
【0008】
フッ素系共重合体の製造に使用する(a)成分としては、少なくとも1個の重合性の不飽和二重結合基と少なくとも1個のフッ素原子を有する化合物を挙げることができ、具体的には、例えばテトラフロロエチレン、ヘキサフロロプロピレン、3,3,3−トリフロロプロピレン等のフロロオレフィン類;
一般式 CF2=CF−O−R2(R2は前記と同様である)で表されるアルキルパーフロロビニルエーテルもしくはアルコキシアルキルパーフロロビニルエーテル類;
パーフロロ(メチルビニルエーテル)、パーフロロ(エチルビニルエーテル)、パーフロロ(プロピルビニルエーテル)、パーフロロ(ブチルビニルエーテル)、パーフロロ(イソブチルビニルエーテル)等のパーフロロ(アルキルビニルエーテル)類;
パーフロロ(プロポキシプロピルビニルエーテル)等のパーフロロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)類などを挙げることができる。
これらのフッ素原子を含有する単量体は単独でも2種以上の併用であっても良い。特に、フッ素含有単量体として、ヘキサフロロプロピレンとパーフロロアルキルパーフロロビニルエーテル又はパーフロロアルコキシアルキルパーフロロビニルエーテルが好ましく、更にはこれらを組み合わせて使用することが好ましい。
(b)成分の具体例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテルもしくはシクロアルキルビニルエーテル類
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(n−プロポキシ)エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有単量体化合物等を挙げることができる。
【0009】
更には上記単量体の他に各種官能基を含有する単量体を共重合することにより官能基を有する含フッ素共重合体を得ることがができる。特に水酸基、エポキシ基が好ましい。
水酸基を含有する単量体として、例えば
2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類;
2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類;
アリルアルコール;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステル
等を挙げることができる。
またエポキシ基を含有する単量体としては、例えばビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジル、クロトン酸グリシジルエステル、マレイン酸メチルグリシジルエステル等を挙げることができる。
これらの他の単量体は、単独でも2種以上の併用であってもよい。
前記共重合可能な他の単量体のうち、本発明の含フッ素共重合体の重合反応における収率を高める点から、アルキルビニルエーテル類、シクロアルキルビニルエーテル類、カルボン酸ビニルエステル類が好適に使用される。
特に含フッ素共重合体中に共重合されるフッ素含量を高める点で、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等の低分子量単量体が好ましい。
【0010】
さらに、硬化性樹脂組成物の硬化後の塗膜の高硬度化、低屈折率化のためには、イソプロピルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、ピバリン酸ビニル等の分岐状単量体の使用が有効である。
本発明の含フッ素共重合体を構成する(c)成分であるアゾ基含有ポリシロキサン化合物は−N=N−で示される熱解裂容易なアゾ基を含有し、且つ前記一般式3で表されるポリシロキサンセグメントを有する化合物であり、例えば特開平6-93100号公報に記載の製造法により製造することができるものである。
このような化合物としては、下記一般式7で表される化合物を挙げることができる。
一般式7
Figure 0003885329
[式中、R10〜R13、R14〜R17、p、q、s、tおよびyは前記一般式4と同様であり、zは1〜20の数である。]
本発明において、一般式7で表される化合物としては、下記一般式8で表される化合物が好ましい。
一般式8
Figure 0003885329
さらに(e)成分としてはノニオン性反応性乳化剤を挙げることができる。反応性乳化剤を共重合させることにより、本願発明のフッ素系共重合体をコーティング材料として使用する際の塗布性を大幅に向上させることができる。
これらノニオン性反応性乳化剤としては例えば、下記一般式9で示される化合物を挙げることができる。
一般式9
Figure 0003885329
(式中、n、mおよびuは一般式6と同様である)
【0011】
本発明における(a)成分、(b)成分、(c)成分の好ましい組み合わせは、具体的に、例えば
フロロオレフィン/アルキルビニルエーテル/ポリジメチルシロキサン単位、
フロロオレフィン/パーフロロ(アルキルビニルエーテル)/アルキルビニルエーテル/ポリジメチルシロキサン単位、
フロロオレフィン/パーフロロ(アルコキシアルキル)ビニルエーテル/アルキルビニルエーテルル/ポリジメチルシロキサン単位、
フロロオレフィン/(パーフロロアルキル)ビニルエーテル/アルキルビニルエーテル/ポリジメチルシロキサン単位、
フロロオレフィン/(パーフロロアルコキシアルキル)ビニルエーテル/アルキルビニルエーテル/ポリジメチルシロキサン単位
であり、これらを光学的コート材料として用いる際には、塗布性からノニオン性反応性乳化剤を共重合させることが好ましい。
フロロオレフィン/アルキルビニルエーテル/水酸基あるいはエポキシ基含有ビニルエーテル/ポリジメチルシロキサン単位/ノニオン性反応性乳化剤、
フロロオレフィン/パーフロロ(アルキルビニルエーテル)/アルキルビニルエーテル/水酸基あるいはエポキシ基含有ビニルエーテル/ポリジメチルシロキサン単位/ノニオン性反応性乳化剤、
フロロオレフィン/パーフロロ(アルコキシアルキル)ビニルエーテル/アルキルビニルエーテル/水酸基あるいはエポキシ基含有ビニルエーテル/ポリジメチルシロキサン単位/ノニオン性反応性乳化剤、
フロロオレフィン/(パーフロロアルキル)ビニルエーテル/アルキルビニルエーテル/水酸基あるいはエポキシ基含有ビニルエーテル/ポリジメチルシロキサン単位/ノニオン性反応性乳化剤、
フロロオレフィン/(パーフロロアルコキシアルキル)ビニルエーテル/アルキルビニルエーテル/水酸基あるいはエポキシ基含有ビニルエーテル/ポリジメチルシロキサン単位/ノニオン性反応性乳化剤等を挙げることができる。
【0012】
本発明のフッ素系共重合体1a、1b、2aおよび2bを製造する重合様式としては、ラジカル重合開始剤の存在下、乳化、懸濁、塊状又は溶液重合法のいずれでもよく、回分式、半連続式又は連続式の操作等適宜選択できる。
なお、(c)成分のアゾ基含有ポリシロキサンはそれ自体が熱ラジカル発生剤であり、特定フッ素オレフィン系重合体の重合開始剤として使用できるが、他のラジカル開始剤も併用することもできる。
(a)成分〜(c)成分および必要に応じて(e)成分の使用割合は、目的とする共重合体の組成に応じて調整すればよい。従って、通常、(a)成分20〜70モル%、(b)成分10〜70モル%、(c)成分0.1〜10モル%、必要に応じて(e)成分0.1〜5モル%の割合で重合する。
【0013】
前記、併用することができるラジカル重合開始剤としては、例えばアセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;
メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;
ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;
tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル類;
アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;
パーフロロエチルアイオダイド、パーフロロプロピルアイオダイド、パーフロロブチルアイオダイド、(パーフロロブチル)エチルアイオダイド、パーフロロヘキシルアイオダイド、2−(パーフロロヘキシル)エチルアイオダイド、パーフロロヘプチルアイオダイド、パーフロロオクチルアイオダイド、2−(パーフロロオクチル)エチルアイオダイド、パーフロロデシルアイオダイド、2−(パーフロロデシル)エチルアイオダイド、ヘプタフロロ−2−ヨードプロパン、パーフロロ−3−メチルブチルアイオダイド、パーフロロ−5−メチルヘキシルアイオダイド、2−(パーフロロ−5−メチルヘキシル)エチルアイオダイド、パーフロロ−7−メチルオクチルアイオダイド、2−(パーフロロ−7−メチルオクチル)エチルアイオダイド、パーフロロ−9−メチルデシルアイオダイド、2−(パーフロロ−9−メチルデシル)エチルアイオダイド、2,2,3,3−テトラフロロプロピルアイオダイド、1H,1H,5H−オクタフロロペンチルアイオダイド、1H,1H,7H−ドデカフロロヘプチルアイオダイド、テトラフロロ−1,2−ジヨードエタン、オクタフロロ−1,4−ジヨードブタン、ドデカフロロ−1,6−ジヨードヘキサン等のヨウ素含有フッ素化合物を挙げることができる。
【0014】
前記ヨウ素含有フッ素化合物は単独、もしくは前記有機過酸化物、アゾ系化合物あるいは過硫酸塩と併用して用いることができる。また前記ラジカル重合開始剤には、必要に応じて亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等の無機還元剤、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリン等の有機還元剤を併用することができる。
本発明のフッ素系共重合体の重合は、溶剤を用いた溶剤系で反応させるのが好ましく、好ましい有機溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;
テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類
等が挙げられ、これらに必要に応じてアルコール類、脂肪族炭化水素類等を混合使用することもできる。
(a)〜(e)成分、重合開始剤、溶剤、その他添加剤等は、通常一括して仕込み、反応させる。
重合開始剤の使用割合は、通常総モノマー量の0.1〜5モル%、反応温度は50〜90℃、反応時間は、10〜30時間である。
本発明のフッ素系共重合体は、前記重合反応を行った反応溶液のまま、硬化性樹脂組成物に使用することができるが、重合反応後の後処理を行うことについて特に制約はない。
前記後処理としては、例えば重合反応溶液を、アルコール等の含フッ素共重合体の不溶化溶剤に滴下し、含フッ素共重合体を凝固させることによる精製方法に代表される、一般的な再沈殿処理を行うことができ、次いで、これを溶剤に再度溶解して含フッ素共重合体の溶液を調製することができる。
また重合終了後の重合反応溶液から残留モノマー除去し、そのまま含フッ素共重合体の溶液として使用することもできる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例により、さらに具体的に説明する。但し、本発明は、その要旨を越えない限りこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
【実施例】
実施例中の部及び%は特にことわらない限り、それぞれ重量部及び重量%を示す。
<実施例1>
<フッ素系共重合体の製造>
内容積2.0Lの電磁撹拌機付きステンレス製オートクレーブを窒素ガスで十分置換した後、酢酸エチル500g、パーフロロ(プロピルビニルエーテル)53.2g、エチルビニルエーテル(EVE)48.7g、ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)26.4g、ノニオン性反応性乳化剤としてアデカリアソープNE−30(旭電化工業株式会社製)20.0g、アゾ基含有ポリジメチルシロキサンとしてVPS−1001(和光純薬工業株式会社製)3.0g及び過酸化ラウロイル(LPO)1.0gを仕込み、ドライアイス−メタノールで−50℃まで冷却した後、再度窒素ガスで系内の酸素を除去した。
次いでヘキサフロロプロピレン(HFP)120gを仕込み、昇温を開始した。オートクレーブ内の温度が60℃に達した時点での圧力は6.1kgf/cm2を示した。その後、60℃で20時間撹拌下に反応を継続し、圧力が2.5kgf/cm2に低下した時点でオートクレーブを水冷し、反応を停止させた。室温に達した後、未反応モノマーを放出しオートクレーブを開放し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をメタノールに投入しポリマーを析出させた後、メタノールにて洗浄し、50℃にて真空乾燥を行い221gの含フッ素共重合体を得た。結果を表1に示す。
得られたポリマーをテトラヒドロフラン(THF)に0.5%溶液となるよう調製し、GPC測定を行った。得られたポリマーの数平均分子量は35000であった。さらにDSCによるガラス転移温度(Tg)、アリザリンコンプレクソン法によるフッ素含量を測定した。また、1H−NMR、13C−NMRの両NMR分析結果、元素分析結果並びにフッ素含量、さらには600℃における焼成後の残重量から無機シリカ分を測定し、これらからフッ素系共重合体を構成する各単量体成分の割合(モル比)を決定した。結果を表2に示す。
乾燥後のフッ素系共重合体の赤外チャートを図−1に示す。
<実施例2−7、比較例1−2>
各単量体の仕込み量を表1に示した割合に変更した以外は、実施例1と同様にしてフッ素系共重合体を合成した。結果を表2に示す。
【0016】
【表1】
Figure 0003885329
【0017】
【表2】
Figure 0003885329
【0018】
表中の略号は、下記内容を示す。
(a)成分
HFP : ヘキサフロロプロピレン
CTFE : クロロトリフロロエチレン
FPVE : パーフロロ(プロピルビニルエーテル)
(b)成分
EVE : エチルビニルエーテル
i−BVE : イソブチルビニルエーテル
CHVE : シクロヘキシルビニルエーテル
VAc : 酢酸ビニル
VPi : ピバリン酸ビニル
HBVE : ヒドロキシブチルビニルエーテル
GVE : グリシジルビニルエーテル
LPO 過酸化ラウロイル
(c)成分
VPS−0501:下記一般式 で表され、数平均分子量が3〜4万、ポリシロキサン部分の分子量が約5,000のアゾ基含有ポリジメチルシロキサン(和光純薬工業株式会社製)
VPS−1001:下記一般式 で表され、数平均分子量が7〜9万、ポリシロキサン部分の分子量が約10,000のアゾ基含有ポリジメチルシロキサン(和光純薬工業株式会社製)
Figure 0003885329
(e)成分
NE−10:下記一般式 で表され、nが9、mが1、uが10、zが6〜8であるノニオン性反応性乳化剤NE−10(旭電化工業株式会社製)
NE−30:下記一般式 で表され、nが9、mが1、uが30、zが7〜9であるノニオン性反応性乳化剤NE−30(旭電化工業株式会社製)
Figure 0003885329
【0019】
【発明の効果】
本発明の硬化性含フッ素共重合体を含有する硬化性樹脂組成物から形成される硬化塗膜は、優れた透明性、耐久性、低屈折率という特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における含フッ素共重合体の赤外スペクトルを示すチャートである。

Claims (3)

  1. (a)下記一般式1で表される構造単位20〜70モル%、一般式1
    Figure 0003885329
    [式中、R1はフッ素原子、フロロアルキル基、−OR2で表される基(R2はアルキル基またはフロロアルキル基を示す。)を示す]
    (b)下記一般式2で表される構造単位20〜70モル%および一般式2
    Figure 0003885329
    [式中、R3は水素原子またはメチル基を、R4はアルキル基、−(CH2)x−OR5で表される基(R5はアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはグリシジル基を、xは0または1の数を示す)、−OCOR5で表される基(R5はアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはグリシジル基を示す)、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を示す]
    (d)下記一般式4で表される構造単位を−(OSiR15R17)y−の量に換算して0.1〜10モル%からなり、一般式4
    Figure 0003885329
    [式中、R10〜R13は水素原子、アルキル基またはシアノ基を示し、R14〜R17は水素原子またはアルキル基を示し、p、qは1〜6の数、s、tは0〜6の数、yは1〜200の数を示す。]
    ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算数平均分子量が5,000〜500,000であるフッ素系共重合体。
  2. (a)下記一般式1で表される構造単位20〜70モル%、一般式1
    Figure 0003885329
    [式中、R1はフッ素原子、フロロアルキル基、−OR2で表される基(R2はアルキル基またはフロロアルキル基を示す)を示す]
    (b)下記一般式2で表される構造単位20〜70モル%、一般式2
    Figure 0003885329
    [式中、R3は水素原子またはメチル基を、R4はアルキル基、−(CH2)x−OR5で表される基(R5はアルキル基、ヒドロキシアルキル基、グリシジル基を、xは0または1の数を示す)、−OCOR5で表される基(R5は前記と同様)、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を示す]
    (c)アゾ基含有ポリシロキサン化合物を共重合させて得られる構造単位であって、下記一般式3で表される構造単位の量に換算して0.1〜10モル%および、一般式3
    Figure 0003885329
    [式中、R6およびR7は、同一でも異なっても良く、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基を示す]
    (e)ノニオン性反応性乳化剤を共重合させて得られる下記一般式5で表される構造単位0.1〜5モル%からなり、一般式5
    Figure 0003885329
    (式中、R8はポリエーテル構造を有する基を示す)
    ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算数平均分子量が5,000〜500,000であるフッ素系共重合体。
  3. (a)下記一般式1で表される構造単位20〜70モル%、一般式1
    Figure 0003885329
    [式中、R1はフッ素原子、フロロアルキル基、−OR2で表される基(R2はアルキル基またはフロロアルキル基を示す)を示す]
    (b)下記一般式2で表される構造単位20〜70モル%、一般式2
    Figure 0003885329
    [式中、R3は水素原子またはメチル基を、R4はアルキル基、−(CH2)x−OR5で表される基(R5はアルキル基、ヒドロキシアルキル基、グリシジル基を、xは0または1の数を示す)、−OCOR5で表される基(R5は前記と同様)、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を示す]
    (d)下記一般式4で表される構造単位を−(OSiR15R17)y−の量に換算して0.1〜10モル%および一般式4
    Figure 0003885329
    [式中、R10〜R13は水素原子、アルキル基またはシアノ基を示し、R14〜R17は水素原子またはアルキル基を示し、p、qは1〜6の数、s、tは0〜6の数、yは1〜200の数を示す。]
    (e)ノニオン性反応性乳化剤を共重合させて得られる下記一般式5で表される構造単位0.1〜5モル%からなり、一般式5
    Figure 0003885329
    (式中、R8はポリエーテル構造を有する基を示す)
    ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算数平均分子量が5,000〜500,000であるフッ素系共重合体。
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