JP4367594B2 - 反射防止シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、環状ポリオレフィン系樹脂からなるシートに、特定のフッ素系共重合体からなる反射防止膜が形成されている反射防止シート、詳しくは、透明性、耐熱性に優れ、反射率の低い反射防止シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
今日のマルチメディアの発達は、各種表示装置(ディスプレイ装置)の発展を強く促している。このような各種表示装置のうち、携帯用を中心に屋外使用されるものでは、その視認性向上がますます重要となってきている。さらに大型表示装置においても、より見易くすることが市場拡大の重要な要素となりつつあり、視認性が技術課題となっている。従来から表示装置の視認性向上の手段として、低屈折率材料から構成される反射防止膜によって基板を被覆することが行われてきている。そして、反射防止膜を形成する方法としては、例えばフッ素化合物の薄膜を蒸着により形成する方法が知られており、液晶表示を中心としたコストダウンのニーズに対応でき、且つ大型表示装置に対しても反射防止膜を形成できるような技術が必要となってきている。しかし、反射防止膜として従来の蒸着法を使用する場合には、大型基板に対し効率良く反射防止膜を形成することが困難であるし、かつコストも真空装置を必要とするため、下げることが困難であった。
【0003】
このような事情に基づいて、屈折率の低いフッ素系重合体を有機溶剤に溶解して液状の組成物を調整し、これを基板表面に塗布することによって反射防止膜を形成する方法が検討されている。例えば、特開昭64−1527号公報によって基板の表面化アルキルシランを塗布することが提案されており、特開平6−115023号公報には、特定の構造を有するフッ素系重合体を塗布する方法が提案されている。また、特開平8−100136号公報には、紫外線硬化型の含フッ素コート材を塗布する方法が提案されている。
しかしながら、従来のフッ素系材料をコートして形成される反射防止膜は、熱硬化型であるために硬化速度が低くて生産性に劣るという欠点を有する。また、紫外線硬化型フッ素系コート材は、得られる反射防止膜の密着性が充分でなく、反射防止膜層が剥がれ易いという問題を有していた。しかし、反射防止膜は、表示装置の最外層に位置されることが多く、強度、密着性に優れたものが要求される。さらに、自動車内部などの温度が上がる過酷な条件での使用を考慮すると、耐熱性に優れていることが望ましい。このように、透明性、耐熱性に優れ、反射率の低い反射防止シートは、今まで見当たらないのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題を背景になされたもので、透明性、耐熱性に優れ、反射率の低い反射防止シートを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、環状ポリオレフィン系樹脂からなるシートに、(a)一般式(1)で表される構造単位20〜70モル%、(b)一般式(3)で表される構造単位10〜70モル%、および(c)一般式(4)で表される構造単位0.1〜10モル%からなるフッ素系共重合体からなる反射防止膜を形成してなることを特徴とする反射防止シートに関する。
−(CF −CFR )− (1)
〔式中、R 1 はフッ素原子、フロロアルキル基、または−OR 2 で表される基(R 2 はアルキル基またはフロロアルキル基を示す)を示す。〕
−(CH −CR )− (3)
〔式中、R 3 は水素原子またはメチル基を、R 4 はアルキル基、−(CH 2 )x−OR 5 で表される基(R 5 はアルキル基、ヒドロキシアルキル基、グリシジル基を、xは0または1の数を示す)、−OCOR 5 で表される基(R 5
は前記と同様)、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を示す。〕
−(SiR )− (4)
〔式中、R 6 およびR 7 は、同一でも異なっても良く、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基を示す。〕
ここで、上記フッ素系共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算数平均分子量で、5,000〜500,000であることが好ましい。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の反射防止シートは、環状ポリオレフィン系樹脂からなるシート上に、上記特定のフッ素系共重合体からなる反射防止膜が形成されている。
本発明に用いられる環状ポリオレフィン樹脂として、下記(1)〜(6)に示す重合体を挙げることができる。
(1)下記一般式(2)で表される単量体(以下「特定単量体」ともいう)の開環重合体。
(2)特定単量体と共重合性単量体との開環共重合体。
(3)上記(1)または(2)の開環(共)重合体の水素添加(共)重合体。
(4)上記(1)または(2)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加した(共)重合体。
(5)特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体およびその水素添加(共)重合体。
(6)特定単量体、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体の付加型(共)重合体およびその水素添加共重合体。
【0007】
【化1】
Figure 0004367594
【0008】
(式中、R' 〜R""は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはその他の1価の有機基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R' とR" またはR"'とR""は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、R' またはR" とR"'またはR""とは互いに結合して、単環または多環構造を形成してもよい。vは0または正の整数であり、wは0または正の整数である。)
【0009】
上記環状ポリオレフィン系樹脂には、特定単量体の開環重合体が含まれる。
<特定単量体>
好ましい特定単量体としては、上記一般式(2)中、R' およびR"'が水素原子または炭素数1〜10、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2の炭化水素基であり、R" およびR""が水素原子または一価の有機基であって、R"およびR""の少なくとも一つは水素原子および炭化水素基以外の極性基を示し、vが0〜3の整数、wが0〜3の整数であり、v+wが0〜4、さらに好ましくは0〜2、特に好ましくは1であるものを挙げることができる。
上記特定単量体の極性基としては、エーテル基、アルキルエステル基や芳香族エステル基などのエステル基、カルボニル基、水酸基、アミノ基、アミド基、シアノ基、アシル基、シリルエーテル基、チオエーテル基、ハロゲン、などが挙げられる。これらの中では、エーテル基、アルキルエステル基や芳香族エステル基などのエステル基、カルボニル基、水酸基が好ましく、特にアルキルエステル基や芳香族エステル基などのエステル基が好ましい。
【0010】
また、特定単量体のうち、特に、R" およびR""の少なくとも一つの極性基が式−(CH2 )nCOOR""' で表される単量体は、得られる環状ポリオレフィン樹脂が高いガラス転移温度(高耐熱性)と低い吸湿性を有するものとなる点で好ましい。上記式−(CH2 )nCOOR""' で表される極性基において、R""' は炭素原子数1〜12、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2の炭化水素基、好ましくはアルキル基である。また、nは通常0〜5であるが、nの値が小さいものほど、得られる環状ポリオレフィン樹脂のガラス転移温度が高くなるので好ましい。さらに、nが0である特定単量体は、その合成が容易である点で好ましい。さらに、上記一般式(2)においてR' またはR"'がアルキル基であることが好ましく、当該アルキル基の炭素数は1〜4であることが好ましく、さらに好ましくは1〜2、特に好ましくは1のメチル基である。特に、このアルキル基が、上記の式−(CH2 )nCOOR""' で表される極性基が結合した炭素原子と同一の炭素原子に結合されていることが好ましい。また、一般式(2)においてvが1である特定単量体は、ガラス転移温度の高い環状ポリオレフィン系樹脂が得られる点で好ましい。
【0011】
上記一般式(2)で表わされる特定単量体の具体例としては、次のような化合物が挙げられる。
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[5.2.1.02,6 ]−8−デセン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]−4−ペンタデセン、
ペンタシクロ[7.4.0.12,5 .19,12.08,13]−3−ペンタデセン、
トリシクロ[4.4.0.12,5 ]−3−ウンデセン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17 ,10 ]−3−ドデセン、
ジメタノオクタヒドロナフタレン、
エチルテトラシクロドデセン、
6−エチリデン−2−テトラシクロドデセン、
トリメタノオクタヒドロナフタレン、
ペンタシクロ[8.4.0.12,5 .19,12.08,13]−3−ヘキサデセン、
ヘプタシクロ[8.7.0.13,6 .110,17 .112,15 .02,7 .011,16 ]−4−エイコセン、
ヘプタシクロ[8.8.0.14,7 .111,18 .113,16 .03,8 .012,17 ]−5−ヘンエイコセン、
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−iso−プロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12 ,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12 ,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロiso−プロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン
などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0012】
これらの特定単量体のうち、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、8−エチリデンテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ〔4.4.0.12 ,5 .17,10〕−3−ドデセン、ペンタシクロ〔7.4.0.12,5 .19,12.08,13〕−3−ペンタデセンは、最終的に得られる環状ポリオレフィン樹脂が耐熱性に優れたものとなる点で好ましく、特に、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセンは、コート材との密着性の面から最も好ましい。
【0013】
開環重合工程においては、上記の特定単量体を単独で開環重合させてもよいが、上記特定単量体と共重合性単量体とを開環共重合させてもよい。
<共重合性単量体>
この場合に使用される共重合性単量体の具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、トリシクロ[5.2.1.02,6 ]−3−デセン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどのシクロオレフィンを挙げることができる。シクロオレフィンの炭素数としては、4〜20が好ましく、さらに好ましくは5〜12である。これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0014】
<開環重合触媒>
本発明において、開環重合反応は、メタセシス触媒の存在下に行われる。
このメタセシス触媒は、(a)W、MoおよびReの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)デミングの周期律表IA族元素(例えば、Li,Na,Kなど)、IIA族元素(例えばMg、Caなど)、IIB族元素(例えば、Zn,Cd,Hgなど)、III A族元素(例えば、B,Alなど)、IVA族元素(例えば、Si,Sn,Pbなど)あるいはIVB族元素(例えば、Ti,Zrなど)の化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合あるいは当該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組合せからなる触媒である。
またこの場合に、触媒の活性を高めるために、後述の添加剤(c)が添加されたものであってもよい。
【0015】
(a)成分として適当なW、MoあるいはReの化合物の代表例としては、WCl6 ,MoCl5 ,ReOCl3 など特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
(b)成分の具体例としては、n−C49 Li、(C253 Al、(C252 AlCl、(C2 51.5 AlCl1.5 、(C25 )AlCl2、メチルアルモキサン、LiHなどの特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
【0016】
添加剤である(c)成分の代表例としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などが好適に用いることができるが、さらに特開平1−240517号公報に示される化合物を使用することができる。
【0017】
メタセシス触媒の使用量としては、上記(a)成分と特定単量体とのモル比で「(a)成分:特定単量体」が、通常、1:500〜1:50,000となる範囲、好ましくは1:1,000〜1:10,000となる範囲とされる。
(a)成分と(b)成分との割合は、金属原子比で「(a):(b)」が1:1〜1:50、好ましくは1:2〜1:30の範囲とされる。
(a)成分と(c)成分との割合は、モル比で「(c):(a)」が0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1の範囲とされる。
【0018】
<分子量調節剤>
得られる開環(共)重合体の分子量の調節は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができるが、本発明においては、分子量調節剤を反応系に共存させることにより調節することが好ましい。
ここに、好適な分子量調節剤としては、例えばエチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類およびスチレンを挙げることができ、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが特に好ましい。
これらの分子量調節剤は、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。
分子量調節剤の使用量としては、開環重合反応に供される特定単量体1モルに対して0.005〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルとされる。
【0019】
<開環重合反応用溶媒>
開環重合反応において用いられる溶媒(特定単量体、メタセシス触媒および分子量調節剤を溶解する溶媒)としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロモヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化アルカン、ハロゲン化アリールなどの化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル、ジメトキシエタンなどの飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類を挙げることができ、これらは単独であるいは混合して用いることができる。これらのうち、芳香族炭化水素が好ましい。
溶媒の使用量としては、「溶媒:特定単量体(重量比)」が、通常1:1〜10:1となる量とされ、好ましくは1:1〜5:1となる量とされる。
【0020】
上記のようにして得られた開環(共)重合体には、公知の酸化防止剤、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2′−ジオキシ−3,3′−ジ−t−ブチル−5,5′−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン;紫外線吸収剤、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどを添加することによって安定化することができる。また、加工性を向上させる目的で、滑剤などの添加剤を添加することもできる。
【0021】
以上のようにして得られる開環(共)重合体は、そのままフィルムとして使用することもできるが、さらに水素添加を行い、開環(共)重合体の水素添加物を使用することが好ましい。
<水素添加触媒>
水素添加反応は、通常の方法、すなわち、開環(共)重合体の溶液に水素添加触媒を添加し、これに常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを0〜200℃、好ましくは20〜180℃で作用させることによって行われる。
水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができる。この水素添加触媒としては、不均一系触媒および均一系触媒が公知である。
【0022】
不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属触媒物質を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。また、均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。触媒の形態は、粉末でも粒状でもよい。
これらの水素添加触媒は、「開環(共)重合体:水素添加触媒(重量比)」が、1:1×10-6〜1:2となる割合で使用される。
【0023】
このように、水素添加することにより得られる水素添加(共)重合体は、優れた熱安定性を有するものとなり、成形加工時や製品としての使用時の加熱によってはその特性が劣化することはない。ここで、水素添加率は、60MHz、 1H−NMRで測定した値が、通常、90%以上、好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上である。水素添加率が高いほど、熱や光に対する安定性が優れたものとなる。
なお、本発明の環状ポリオレフィン系樹脂として使用される水素添加(共)重合体は、該水素添加(共)重合体中に含まれるゲル含有量が1重量%以下であることが好ましく、さらに0.1重量%以下であることが特に好ましい。ゲル含有量が1重量%を超えると、フィルム成形においてフィッシュアイやダイラインなどの成形不良が発生しやすい。上記ゲル含有量とは、25℃の温度で、水素添加(共)重合体50gを1%濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解し、この溶液をあらかじめ重量を測定してある孔径0.5μmのメンブランフィルターを用いてろ過し、ろ過後のフィルターを乾燥後、その重量の増加量からゲル含有量を算出して得られるものをいう。
【0024】
また、本発明の環状ポリオレフィン系樹脂として、上記開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加した(共)重合体も使用できる。
<フリーデルクラフト反応による環化>
上記開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化する方法は特に限定されるものではないが、特開昭50−154399号公報に記載の酸性化合物を用いた公知の方法が採用できる。酸性化合物としては、具体的には、AlCl3 、BF3 、FeCl3 、Al2 3 、HCl、CH3 ClCOOH、ゼオライト、活性白土、などのルイス酸、ブレンステッド酸が用いられる。
環化された開環(共)重合体は、上記開環(共)重合体と同様に水素添加できる。
【0025】
さらに、上記環状ポリオレフィン樹脂として、特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体が挙げられる。
<飽和共重合体を構成する不飽和二重結合含有化合物>
特定単量体との共重合に供される不飽和二重結合含有化合物としては、例えばエチレン、プロピレン、ブテンなど炭素数2〜12、好ましくは2〜8のオレフィン系化合物を挙げることができる。
特定単量体/不飽和二重結合含有化合物の好ましい使用範囲は、重量比で90/10〜40/60であり、さらに好ましくは85/15〜50/50である。
【0026】
<飽和共重合体を得る際に使用する触媒>
特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との共重合反応に使用される触媒としては、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒が用いられる。バナジウム化合物としては、一般式VO(OR)a b またはV(OR)c d 〔ただし、Rは炭化水素基、Xはハロゲン原子であって、0≦a≦3、0≦b≦3、2≦a+b≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦(c+d)≦4〕で表されるバナジウム化合物、あるいはこれらの電子供与体付加物が用いられる。電子供与体としてはアルコール、フェノール類、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、有機酸または無機酸のエステル、エーテル、酸アミド、酸無水物、アルコキシシランなどの含酸素電子供与体、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアナートなどの含窒素電子供与体などが挙げられる。
有機アルミニウム化合物触媒成分としては、少なくとも1つのアルミニウム−炭素結合あるいはアルミニウム−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種が用いられる。
触媒成分の比率は、バナジウム原子に対するアルミニウム原子の比(Al/V)で2以上、好ましくは2〜50、特に好ましくは3〜20の範囲である。
【0027】
<飽和共重合体を得る際に使用する溶媒>
特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との共重合反応に使用される溶媒としては、上記開環重合反応に用いられる溶媒と同じものを使用することができ、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどのシクロアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素およびそのハロゲン誘導体を挙げることができ、これらのうち、トルエンが好ましい。
また、得られる飽和共重合体の分子量の調節は、通常、水素を用いて行われる。
【0028】
さらに、上記環状ポリオレフィン系樹脂として、上記特定単量体、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体の付加型(共)重合体およびその水素添加(共)重合体も使用できる。
<ビニル系環状炭化水素系単量体>
ビニル系環状炭化水素系単量体としては、例えば、4−ビニルシクロペンテン、2−メチルー4−イソプロペニルシクロペンテンなどのビニルシクロペンテン系単量体、4−ビニルシクロペンタン、4−イソプロペニルシクロペンタンなどのビニルシクロペンタン系単量体などのビニル化5員環炭化水素系単量体、4−ビニルシクロヘキセン、4−イソプロペニルシクロヘキセン、1−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセン、2−メチル−4−ビニルシクロヘキセン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセンなどのビニルシクロヘキセン系単量体、4−ビニルシクロヘキサン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキサンなどのビニルシクロヘキサン系単量体、スチレン、α―メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−フェニルスチレン、p−メトキシスチレンなどのスチレン系単量体、d−テルペン、1−テルペン、ジテルペン、d−リモネン、1−リモネン、ジペンテンなどのテルペン系単量体、4−ビニルシクロヘプテン、4−イソプロペニルシクロヘプテンなどのビニルシクロヘプテン系単量体、4−ビニルシクロヘプタン、4−イソプロペニルシクロヘプタンなどのビニルシクロヘプタン系単量体などが挙げられる。好ましくは、スチレン、α−メチルスチレンである。これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0029】
<シクロペンタジエン系単量体>
本発明の付加型(共)重合体の単量体に使用されるシクロペンタジエン系単量体としては、例えばシクロペンタジエン、1−メチルシクロペンタジエン、2−メチルシクロペンタジエン、2−エチルシクロペンタジエン、5−メチルシクロペンタジエン、5,5−メチルシクロペンタジエンなどが挙げられる。好ましくはシクロペンタジエンである。これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0030】
上記特定単量体、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体の付加型(共)重合体は、上記特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体と同様の付加重合法で得ることができる。
また、上記付加型(共)重合体の水素添加(共)重合体は、上記開環(共)重合体の水素添加(共)重合体と同様の水添法で得ることができる。
本発明の積層フィルム用樹脂としては、環状ポリオレフィン系樹脂の中でも、好ましくはノルボルネン系樹脂であり、具体的には、JSR(株)社製、商品名アートンが挙げられる。
【0031】
本発明で用いられる環状ポリオレフィン系樹脂の固有粘度は、クロロベンゼン中、30℃で測定される固有粘度〔η〕が好ましくは0.5〜2dl/g、さらに好ましくは0.6〜1.5dl/gである。固有粘度〔η〕が0.5dl/g未満では、機械的特性に劣り、耐衝撃性が低く、一方、2dl/gを超えると、成形加工性が劣る。重量平均分子量が上記範囲にあることによって、環状ポリオレフィン系樹脂の成形加工性、耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的特性などが良好となる。
また、環状ポリオレフィン系樹脂の曲げ弾性率は、ASTM D790試験法に準拠して測定した場合、好ましくは1.0×104 〜4.0×104 kgf/cm2 、さらに好ましくは2.5×104 〜3.5×104 kgf/cm2 、熱伝導率は、降温非定常法/熱線プローブ法で測定した場合、好ましくは常温で、0.05〜10W/mK、さらに好ましくは0.1〜0.5W/mKである。
【0032】
本発明に使用される環状ポリオレフィン系樹脂は、上記のような開環(共)重合体、水素添加(共)重合体、飽和共重合体、または付加型(共)重合体およびその水素添加(共)重合体より構成されるが、これに公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤などを添加してさらに安定化することができる。また、加工性を向上させるために、滑剤などの従来の樹脂加工において用いられる添加剤を添加することもできる。
【0033】
本発明において、環状ポリオレフィン系樹脂からなるシートの形成方法としては、環状ポリオレフィン系樹脂を溶液流延法または溶融成形法によりシートとし、これを延伸、表面プレス、ダイスに通すなどして、均一の厚みの樹脂フィルムを得る方法が挙げられる。溶液流延法の溶媒としては、トルエンなど、上記重合反応用溶媒として挙げられた溶媒を適宜使用できる。溶融成形法としては、T型ダイから押出成形する方法や、インフレーション法などの方法が用いられる。溶融成形法の場合、溶融温度は、好ましくは200〜350℃、さらに好ましくは250〜330℃、特に好ましくは280〜320℃である。
得られる樹脂フィルムの厚みは、好ましくは30〜2,000μm、さらに好ましくは50〜1,000μm、特に好ましくは80〜700μmである。30μm未満であると、シートの腰が弱く、機械的強度が低下するとともに、コート材ディップ時に、反りが発生するため好ましくない。一方、2,000μmを超えると、可撓性が低下して、加工時に割れが発生するなどして好ましくない。
本発明において、反射防止膜を形成する前に、アンカーコート剤のコーティングや、ケミカルエッチング処理、コロナ処理、プラズマ処理などの前処理を、あらかじめシート材に対し行ってもよい。
【0034】
本発明において、反射防止膜は、環状ポリオレフィン系樹脂からなるシート上に形成されている。反射防止膜の材料は、上記のフッ素系共重合体である。
かかるフッ素系共重合体を構成する上記一般式(1)で示されるフロロアルキル基を有するフッ素含有化合物としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフロロプロピレンなどのフロロオレフィン類、パーフロロ(メチルビニルエーテル)などのパーフロロ(アルキルビニルエーテル)類などが挙げられる。
【0035】
上記フッ素系共重合体は、(a)上記一般式(1)で表される構造単位(以下「構造単位(a)」という)20〜70モル%、(b)下記一般式(3)で表される構造単位(以下「構造単位(b)」という)10〜70モル%、
−(CF −CFR )− (1)
〔式中、R3は水素原子またはメチル基を、R4はアルキル基、−(CH2 )x−OR5で表される基(R5はアルキル基、ヒドロキシアルキル基、グリシジル基を、xは0または1の数を示す)、−OCOR5で表される基(R5は前記と同様)、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を示す〕、および
(c)下記一般式(4)で表されるアゾ基含有ポリシロキサン化合物に由来する構造単位(以下「構造単位(c)」という)0.1〜10モル%からなるフッ素系共重合体(以下「フッ素系共重合体1a」という)である。
−(SiR )− (4)
〔式中、R6およびR7は、同一でも異なっても良く、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基を示す。〕
【0038】
上記フッ素系共重合体1aは、構造単位(a)20〜70モル%、好ましくは25〜60モル%、さらに好ましくは30〜55モル%、構造単位(b)10〜70モル%、好ましくは20〜60モル%、さらに好ましくは30〜60モル%、構造単位(c)0.1〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%、さらに好ましくは0.1〜3モル%からなる。
【0039】
フッ素系共重合体中1aにおいて、構造単位(a)が20モル%未満では、得られるフッ素系共重合体中のフッ素含量が30重量%未満となり、目的とする低屈折率の発現が困難となる。一方、構造単位(a)が70モル%を越えると、得られるフッ素系共重合体の有機溶剤への溶解性が著しく低下するとともに、透明性、基材への密着性が低下する。また、構造単位(b)の割合が10モル%未満では、有機溶剤への溶解性に劣り、70モル%を越えると上記共重合体の特徴である、透明性、低反射率の光学特性が悪化する。さらに、構造単位(c)の割合が10モル%を越えると、フッ素系共重合体の透明性に劣り、反射防止膜材料として使用する際に塗布時にハジキなどを発生し易くなる。
【0040】
上記一般式(1)のR1 において、フロロアルキル基としては、トリフロロメチル基、パーフロロエチル基、パーフロロプロピル基、パーフロロブチル基、パーフロロヘキシル基、パーフロロシクロヘキシル基などの炭素数1〜6のフロロアルキル基が挙げられ、R2においてアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などの炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、フロロアルキル基としてはR1と同様のものを挙げられる。一般式(3)のR4においてアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ラウリル基などの炭素数1〜12のアルキル基が、アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられ、R5においてアルキル基としてはR4と同様のものを、ヒドロキシアルキル基としては、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、6−ヒドロキシヘキシル基が挙げられる。一般式(4)のR6〜R7において、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数1〜3のアルキル基が、ハロゲン化アルキル基としてはトリフロロメチル基、パーフロロエチル基、パーフロロプロピル基、パーフロロブチル基などの炭素数1〜4のフロロアルキル基などが、アリール基としてはフェニル基、ベンジル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0043】
上記フッ素系共重合体において、構造単位(a)、構造単位(b)および構造単位(c)はそれぞれ1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。また、上記フッ素系共重合体1aは、構造単位(a)および構造単位(b)がランダムに結合してなるブロックと、構造単位(c)からなるブロックとからなる。
【0044】
また、上記フッ素系共重合体1aは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で、テトラヒドロフラン(THF)を溶剤として測定し、ポリスチレン換算値として求められた数平均分子量が、好ましくは5,000〜5,000,000、さらに好ましくは10,000〜3,000,000、特に好ましくは10,000〜100,000である。数平均分子量が5,000未満であると得られるフッ素系共重合体の機械的強度が低下し、一方、5,000,000を超えると溶液粘度が高くなり、薄膜コーティングが困難となる。さらに、上記フッ素系共重合体1aのフッ素含量は、30重量%以上、好ましくは40〜60重量%である。なお、フッ素含量はフッ素原子の重量を、アリザリンコンプレクソン法で測定したものである。上記フッ素系共重合体1aは(a)フッ素原子を含有するオレフィン単量体(以下、単に「(a)成分」ともいう。)、(b)ビニルエーテル単量体(以下、単に「(b)成分」ともいう。)および(c)成分であるアゾ基含有ポリシロキサン化合物(以下、単に「(c)成分」ともいう)を共重合することにより製造することができる。
【0045】
フッ素系共重合体の製造に使用する(a)成分としては、少なくとも1個の重合性の不飽和二重結合基と少なくとも1個のフッ素原子を有する化合物を挙げることができ、具体的には、例えばテトラフロロエチレン、ヘキサフロロプロピレン、3,3,3−トリフロロプロピレンなどのフロロオレフィン類;一般式CF2 =CF−O−R2 (R2 は前記と同様である)で表されるアルキルパーフロロビニルエーテルもしくはアルコキシアルキルパーフロロビニルエーテル類;パーフロロ(メチルビニルエーテル)、パーフロロ(エチルビニルエーテル)、パーフロロ(プロピルビニルエーテル)、パーフロロ(ブチルビニルエーテル)、パーフロロ(イソブチルビニルエーテル)などのパーフロロ(アルキルビニルエーテル)類;パーフロロ(プロポキシプロピルビニルエーテル)などのパーフロロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)類などを挙げることができる。これらのフッ素原子を含有する単量体は単独でも2種以上の併用であっても良い。特に、フッ素含有単量体として、ヘキサフロロプロピレンとパーフロロアルキルパーフロロビニルエーテル又はパーフロロアルコキシアルキルパーフロロビニルエーテルが好ましく、さらにはこれらを組み合わせて使用することが好ましい。
【0046】
(b)成分の具体例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテルもしくはシクロアルキルビニルエーテル類酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ステアリン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(n−プロポキシ)エチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有単量体化合物などを挙げることができる。
【0047】
さらには、上記単量体の他に各種官能基を含有する単量体を共重合することにより、官能基を有するフッ素系共重合体を得ることができる。特に水酸基、エポキシ基が好ましい。水酸基を含有する単量体として、例えば2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテルなどの水酸基含有ビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルなどの水酸基含有アリルエーテル類;アリルアルコール;ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。またエポキシ基を含有する単量体としては、例えばビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジル、クロトン酸グリシジルエステル、マレイン酸メチルグリシジルエステルなどを挙げることができる。
これらの他の単量体は、単独でも2種以上の併用であってもよい。前記共重合可能な他の単量体のうち、上記フッ素系共重合体の重合反応における収率を高める点から、アルキルビニルエーテル類、シクロアルキルビニルエーテル類、カルボン酸ビニルエステル類が好適に使用される。特にフッ素系共重合体中に共重合されるフッ素含量を高める点で、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどの低分子量単量体が好ましい。
【0048】
さらに、反射防止膜の高硬度化、低屈折率化のためには、イソプロピルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、ピバリン酸ビニルなどの分岐状単量体の使用が有効である。
上記フッ素系共重合体を構成する(c)成分であるアゾ基含有ポリシロキサン化合物は−N=N−で示される熱解裂容易なアゾ基を含有し、且つ前記一般式(4)で表されるポリシロキサンセグメントを有する化合物であり、例えば特開平6−93100号公報に記載の製造法により製造することができるものである。このような化合物としては、下記一般式(8)で表される化合物を挙げることができる。
【0049】
【化4】
Figure 0004367594
【0050】
〔式中、R 10 〜R 13 は水素原子、アルキル基またはシアノ基を示し、R 14 〜R 17 は水素原子またはアルキル基を示し、p、qは1〜6の数、s、tは0〜6の数、zは1〜20の数である。〕
上記一般式(8)で表される化合物としては、例えば、下記一般式(9)で表される化合物が好ましい。
【0051】
【化5】
Figure 0004367594
【0052】
〔式中、yは1〜200の数を示し、zは1〜20の数である。〕
さらに(e)ノニオン性反応性乳化剤を共重合させることにより、上記フッ素系共重合体を反射防止膜材料として使用する際の塗布性を大幅に向上させることができる。これらノニオン性反応性乳化剤としては、例えば、下記一般式(10)で示される化合物を挙げることができる。
【0053】
【化6】
Figure 0004367594
【0054】
(式中、nは1〜20の数、mは0〜4の数、uは3〜50の数を示す)
上記(a)成分、(b)成分、(c)成分の好ましい組み合わせは、具体的に、例えばフロロオレフィン/アルキルビニルエーテル/ポリジメチルシロキサン単位、フロロオレフィン/パーフロロ(アルキルビニルエーテル)/アルキルビニルエーテル/ポリジメチルシロキサン単位、フロロオレフィン/パーフロロ(アルコキシアルキル)ビニルエーテル/アルキルビニルエーテルル/ポリジメチルシロキサン単位、フロロオレフィン/(パーフロロアルキル)ビニルエーテル/アルキルビニルエーテル/ポリジメチルシロキサン単位、フロロオレフィン/(パーフロロアルコキシアルキル)ビニルエーテル/アルキルビニルエーテル/ポリジメチルシロキサン単位であり、これらを反射防止膜材料として用いる際には、塗布性からノニオン性反応性乳化剤を共重合させることが好ましい。フロロオレフィン/アルキルビニルエーテル/水酸基あるいはエポキシ基含有ビニルエーテル/ポリジメチルシロキサン単位/ノニオン性反応性乳化剤、フロロオレフィン/パーフロロ(アルキルビニルエーテル)/アルキルビニルエーテル/水酸基あるいはエポキシ基含有ビニルエーテル/ポリジメチルシロキサン単位/ノニオン性反応性乳化剤、フロロオレフィン/パーフロロ(アルコキシアルキル)ビニルエーテル/アルキルビニルエーテル/水酸基あるいはエポキシ基含有ビニルエーテル/ポリジメチルシロキサン単位/ノニオン性反応性乳化剤、フロロオレフィン/(パーフロロアルキル)ビニルエーテル/アルキルビニルエーテル/水酸基あるいはエポキシ基含有ビニルエーテル/ポリジメチルシロキサン単位/ノニオン性反応性乳化剤、フロロオレフィン/(パーフロロアルコキシアルキル)ビニルエーテル/アルキルビニルエーテル/水酸基あるいはエポキシ基含有ビニルエーテル/ポリジメチルシロキサン単位/ノニオン性反応性乳化剤などを挙げることができる。
【0055】
上記フッ素系共重合体1aを製造する重合様式としては、ラジカル重合開始剤の存在下、乳化、懸濁、塊状又は溶液重合法のいずれでもよく、回分式、半連続式又は連続式の操作など適宜選択できる。なお、(c)成分のアゾ基含有ポリシロキサンは、それ自体が熱ラジカル発生剤であり、特定フッ素オレフィン系重合体の重合開始剤として使用できるが、他のラジカル開始剤も併用することもできる。(a)成分〜(c)成分および必要に応じて(e)成分の使用割合は、目的とする共重合体の組成に応じて調整すればよい。通常は、(a)成分20〜70モル%、(b)成分10〜70モル%、(c)成分0.1〜10モル%、必要に応じて(e)成分0.1〜5モル%の割合で重合する。
【0056】
上記併用することができるラジカル重合開始剤としては、例えばアセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類;tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリルなどのアゾ系化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;パーフロロエチルアイオダイド、パーフロロプロピルアイオダイド、パーフロロブチルアイオダイド、(パーフロロブチル)エチルアイオダイド、パーフロロヘキシルアイオダイド、2−(パーフロロヘキシル)エチルアイオダイド、パーフロロヘプチルアイオダイド、パーフロロオクチルアイオダイド、2−(パーフロロオクチル)エチルアイオダイド、パーフロロデシルアイオダイド、2−(パーフロロデシル)エチルアイオダイド、ヘプタフロロ−2−ヨードプロパン、パーフロロ−3−メチルブチルアイオダイド、パーフロロ−5−メチルヘキシルアイオダイド、2−(パーフロロ−5−メチルヘキシル)エチルアイオダイド、パーフロロ−7−メチルオクチルアイオダイド、2−(パーフロロ−7−メチルオクチル)エチルアイオダイド、パーフロロ−9−メチルデシルアイオダイド、2−(パーフロロ−9−メチルデシル)エチルアイオダイド、2,2,3,3−テトラフロロプロピルアイオダイド、1H,H,5H−オクタフロロペンチルアイオダイド、1H,1H,7H−ドデカフロロヘプチルアイオダイド、テトラフロロ−1,2−ジヨードエタン、オクタフロロ−1,4−ジヨードブタン、ドデカフロロ−1,6−ジヨードヘキサンなどのヨウ素含有フッ素化合物を挙げることができる。
【0057】
上記ヨウ素含有フッ素化合物は単独、もしくは前記有機過酸化物、アゾ系化合物あるいは過硫酸塩と併用して用いることができる。また前記ラジカル重合開始剤には、必要に応じて亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムなどの無機還元剤、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリンなどの有機還元剤を併用することができる。上記フッ素系共重合体の重合は、溶剤を用いた溶剤系で反応させるのが好ましく、好ましい有機溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられ、これらに必要に応じてアルコール類、脂肪族炭化水素類などを混合使用することもできる。
【0058】
上記(a)〜(e)成分、重合開始剤、溶剤、その他添加剤などは、通常一括して仕込み、反応させる。重合開始剤の使用割合は、通常総モノマー量の0.1〜5モル%、反応温度は50〜90℃、反応時間は、10〜30時間である。上記フッ素系共重合体は、前記重合反応を行った反応溶液のまま、反射防止膜材料に使用することができるが、重合反応後の後処理を行うことについて特に制約はない。前記後処理としては、例えば重合反応溶液を、アルコールなどのフッ素系共重合体の不溶化溶剤に滴加し、フッ素系共重合体を凝固させることによる精製方法に代表される、一般的な再沈処理を行うことができ、次いで、これを溶剤に再度溶解してフッ素系共重合体の溶液を調製することができる。また重合終了後の重合反応溶液から残留モノマー除去し、そのままフッ素系共重合体の溶液として使用することもできる。
【0059】
本発明において、フッ素系共重合体からなる反射防止膜の形成方法としては、例えば、フッ素系共重合体を有機溶媒に溶解し、その溶液をバーコーターなどを用いてキャスト法などにより、上記シート材上に塗布し、プレスを用いて加熱し、硬化させる方法が挙げられる。加熱条件としては、加熱温度は好ましくは80〜165℃、さらに好ましくは100〜150℃、加熱時間は好ましくは10分〜3時間、さらに好ましくは30分〜2時間である。
【0060】
得られる反射防止膜の厚みは、好ましくは5〜2,000nm、さらに好ましくは10〜1,000nm、特に好ましくは50〜200nmである。5nm未満であると、反射防止効果が発揮できず、一方、2,000nmを超えると、塗膜の厚みにムラが生じやすくなり、外観などが悪化するため好ましくない。
【0061】
本発明の反射防止シートの基材として環状ポリオレフィン系樹脂を使用することにより、良好な透明性、密着性を有するフィルムを得ることができるという効果が得られ、反射防止膜材料として、フッ素系共重合体を使用することにより、優れた透明性、耐久性、防汚性、撥水性、防湿性、耐候性、低屈折率を有する反射防止膜が得られる。従って、本発明の反射防止シートは、透明性、耐熱性に優れ、反射率が低く、各種表示装置の視認性向上のための基板被覆用として好適に使用することができる。
【0062】
なお、本発明において、反射防止膜は、透明であることが好ましい。ここで、透明性は、反射防止膜としたときに、その全光線透過率を多光源分光測色計を用いて測定した値である。この全光線透過率は、90%以上が好ましく、さらに好ましくは91%以上、特に好ましくは92%以上、最も好ましくは94%以上である。
【0063】
【実施例】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例中の部および%は、特に断らない限り重量部および重量%である。また、実施例中の各種の測定は、次のとおりである。
【0064】
固有粘度〔η〕
試料をクロロベンゼンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作り、ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、固有粘度〔η〕を求めた。
水素化率
水素添加単独重合体の場合には、60MHz、 1H−NMRを測定し、エステル基のメチル水素とオレフィン系水素のそれぞれの吸収強度の比、またはパラフィン系水素とオレフィン系水素のそれぞれの吸収強度の比から水素化率を測定した。また、水素添加共重合体の場合には、重合後の共重合体の 1H−NMR吸収と水素化後の水素添加共重合体のそれを比較して算出した。
ガラス転移温度(Tg)
セイコーインスツルメント(株)製走査熱量計(DSC)DSC−6200により、チッ素雰囲気下において、10℃/分の昇温速度で測定した。
【0065】
数平均分子量(Mn)
東ソー(株)製、HLC−8020型、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置で、東ソー(株)製、Hタイプカラムを用い、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として、40℃で測定した。得られた分子量は、標準ポリスチレン換算値である。
フィルムの厚み
ダイヤル式厚みゲージにより測定した。
【0066】
参考例1(環状ポリオレフィン系樹脂の製造)
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕ドデカ−3−エン100g、1,2−ジメトキシエタン60g、シクロヘキサン240g、1−ヘキセン9g、およびジエチルアルミニウムクロライド0.96モル/リットルのトルエン溶液3.4mlを、内容積1リットルのオートクレーブに加えた。
一方、別のフラスコに、六塩化タングステンの0.05モル/リットルの1,2−ジメトキシエタン溶液20mlとパラアルデヒドの0.1モル/リットルの1,2−ジメトキシエタン溶液10mlを混合した。
この混合溶液4.9mlを、上記オートクレーブ中の混合物に添加した。密栓後、混合物を80℃に加熱して2.5時間攪拌を行った。
得られた重合体溶液に、1,2−ジメトキシエタンとトルエンの2/8(重量比)の混合溶媒を加えて重合体/溶媒が1/10(重量比)にしたのち、トリエタノールアミン20gを加えて10分間攪拌した。
【0067】
この重合溶液に、メタノール500gを加えて30分間攪拌して静置した。2層に分離した上層を除き、再びメタノールを加えて攪拌、静置後、上層を除いた。同様の操作をさらに2回行い、得られた下層をシクロヘキサン、1,2−ジメトキシエタンで適宜希釈し、重合体濃度が10%のシクロヘキサン−1,2−ジメトキシエタン溶液を得た。
この溶液に20gのパラジウム/シリカマグネシア〔日揮化学(株)製、パラジウム量=5%〕を加えて、オートクレーブ中で水素圧40kg/cm2 として165℃で4時間反応させたのち、水添触媒をろ過によって取り除き、水素添加共重合体溶液を得た。
【0068】
また、この水素添加共重合体溶液に、酸化防止剤であるペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を、水素添加共重合体に対して0.1%加えてから、280℃で減圧下に脱溶媒を行った。
次いで、溶融した樹脂を、チッ素雰囲気下で押し出し機によりペレット化し、固有粘度〔η〕0.65dl/g(30℃、クロロベンゼン中)、水添率99.5%、ガラス転移温度168℃の熱可塑性樹脂(A−1)を得た。
【0069】
参考例2(フッ素系共重合体の製造)
内容積2. 0リットルの電磁撹拌機付きステンレス製オートクレーブを窒素ガスで系中を充分置換した後、(a)パーフロロ(プロピルビニルエーテル)53.2g、(b−1)エチルビニルエーテル(EVE)48.7g、(b−2)ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)26.4g、(e)ノニオン性反応性乳化剤としてアデカリアソープNE−30(旭電化工業株式会社製)20.0g、(c)アゾ基含有ポリジメチルシロキサンとしてVPS−1001(数平均分子量7〜9万、和光純薬工業株式会社製)3.0g、および過酸化ラウロイル(LPO)1.0gを仕込み、ドライアイス−メタノールで−50℃まで冷却した後、再度窒素ガスで系内の酸素を除去した。次いでヘキサフロロプロピレン(HFP)120gを仕込み、昇温を開始した。オートクレーブ内の温度が60℃に達した時点での圧力は6.1kgf/cm2 を示した。その後、60℃で20時間撹拌下に反応を継続し、圧力が2. 5kgf/cm2 に低下した時点でオートクレーブを水冷し、反応を停止させた。室温に達した後、未反応モノマーを放出しオートクレーブを開放し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をメタノールに投入しポリマーを析出させた後、メタノールにて洗浄し、50℃にて真空乾燥を行い220gのフッ素系共重合体を得た。
得られたフッ素系共重合体のテトラヒドロフラン(THF)0.5%溶液を調整し、GPC測定を行った。得られたポリマーの数平均分子量は35,000であった。
【0070】
実施例1
上記参考例1の粉末状樹脂(A−1)を30%濃度でトルエンに溶解し、ステンレスの無端ベルト上に流延し、トルエンを、常圧、120℃で揮発させ、乾燥後、188μm厚みのシート材を得た。得られたシート材の残留トルエン量をガスクロマトグラフィーにて測定したところ、0.6%であった。
上記参考例2のフッ素系共重合体を10%濃度でメチルイソブチルケトン(MIBK)に溶解し、バーコーターを用いてキャスト法により、上記シート材上に塗布し、プレスを用いて120℃、1時間加熱硬化し、100μmの反射防止膜を形成した。評価結果を表1に示す。
【0071】
屈折率の測定
上記参考例2のフッ素系共重合体のMIBK溶液をスピンコーターによりシリコーンウェハ上に、乾燥後の厚みが約0.1μmとなるように塗布し、120℃、1時間の加熱、硬化を行い試料膜を調製した。得られた試料膜について、エリプソメーターを用いて、25℃での波長539nmにおける屈折率(nD 25)を測定した。シート材の屈折率は、屈折率計〔カルニュー光学工業(株)製、KPR−200〕を用いて測定した。
鉛筆硬度の測定
JIS K5400に準拠して鉛筆硬度を測定した。
【0072】
密着性
シート材上に反射防止膜が形成された反射防止シートを30×30mmに切り出し、これに2mm間隔で、0.2mmの深さで縦横に5本ずつの切り込みをつけた。こうして作製した25枚のブロックに、ニチバン(株)製セロハンテープを張り、30×30mmの500gのおもりを伸せ、剥がした。これを5回繰り返し、最終的にシート材上に残った塗膜のブロックの個数を数えた。
透過率・反射率の測定
上記参考例2のフッ素系共重合体のMIBK溶液を、固形分4%になるまでブタノールにて希釈してワニスを調製した。このワニスを用いて厚さ3mmのシート材樹脂成形板にディップコートを引き上げ速度100mm/minで行い、ついで、120℃、1時間の加熱、硬化を行った。この硬化被膜が形成された樹脂成形板を60mmφ積分球付き分光光度計「U−3410型」〔日立製作所(株)製〕を用いて、反射防止シートの全光線透過率と反射率の測定を行った。
耐熱変形
180℃に設定した、ギアオーブン中に、反射防止シート(60×60mm)を48時間放置し、変形状況を目視にて確認した。
【0073】
比較例1
樹脂(A−1)の代わりに、ポリカーボネート〔帝人化成(株)製、パンライトAD5503〕(以下「樹脂B−1」という)を使用した以外は、実施例1と同様にして反射防止膜を形成した。評価結果を表1に示す。
比較例2
樹脂(A−1)の代わりに、ポリメチルメタクリレート樹脂〔クラレ(株)製、パラペットGF〕(以下「樹脂B−2」という)を使用した以外は、実施例1と同様にして反射防止膜を形成した。評価結果を表1に示す。
比較例3
樹脂(A−1)の代わりに、ポリエチレンテレフタレート〔東レ(株)製、ルミラー#50〕(以下「樹脂B−3」という)を使用した以外は、実施例1と同様にして反射防止膜を形成した。評価結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
|−−−−−−−−−|−−−−|−−−−|−−−−|−−−−|
| |実施例1|比較例1|比較例2|比較例3|
|−−−−−−−−−|−−−−|−−−−|−−−−|−−−−|
シート材 | | | | |
| 構成 |A−1 |B−1 |B−2 |B−3 |
| 屈折率(nD 25)| 1.511 | 1.591 | 1.489 | 1.576 |
反射防止膜 | | | | |
| 屈折率(nD 25)| 1.385 | 1.385 | 1.385 | 1.385 |
|−−−−−−−−−|−−−−|−−−−|−−−−|−−−−|
評価結果 | | | | |
|鉛筆強度 | 2H | 2H | 2H | 2H |
|密着性(個/25B) | 25 | 22 | 25 | 12 |
|透過率(%) | 95 | 91 | 94 | 88 |
|反射率(%) | 2.6 | 2.5 | 5.8 | 4.1 |
|耐熱変形 |変形無し|変形有り|変形顕著|変形有り|
|−−−−−−−−−|−−−−|−−−−|−−−−|−−−−|
【0075】
【発明の効果】
本発明の反射防止シートは、透明性、耐熱性に優れ、反射率が低く、各種表示装置の視認性向上のための基板被覆用として好適に使用することができる。

Claims (3)

  1. 環状ポリオレフィン系樹脂からなるシートに、(a)一般式(1)で表される構造単位20〜70モル%、(b)一般式(3)で表される構造単位10〜70モル%、および(c)一般式(4)で表される構造単位0.1〜10モル%からなるフッ素系共重合体からなる反射防止膜を形成してなることを特徴とする反射防止シート。
    −(CF −CFR )− (1)
    〔式中、R 1 はフッ素原子、フロロアルキル基、または−OR 2 で表される基(R 2 はアルキル基またはフロロアルキル基を示す)を示す。〕
    −(CH −CR )− (3)
    〔式中、R 3 は水素原子またはメチル基を、R 4 はアルキル基、−(CH 2 )x−OR 5 で表される基(R 5 はアルキル基、ヒドロキシアルキル基、グリシジル基を、xは0または1の数を示す)、−OCOR 5 で表される基(R 5 は上記と同様)、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を示す。〕
    −(SiR )− (4)
    〔式中、R 6 およびR 7 は、同一でも異なっても良く、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基を示す。〕
  2. 上記フッ素系共重合体の分子量が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算数平均分子量で、5,000〜500,000である請求項記載の反射防止シート。
  3. 550nmの波長の光線の透過率が90%以上である請求項1記載の反射防止シート。
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