JP3885326B2 - 消臭性繊維 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた消臭性能を発揮させることができ、特にアルデヒドガス吸収性に優れた消臭性繊維に関する。
本発明の消臭性繊維は、複合繊維、織布、不織布等として各種繊維製品に利用することができ、衣料、シート、カバー、カーテン、絨毯等の各種繊維製品の原料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
近年、消費者の消臭に対するニーズが急速に高まっており、住宅や病院等のカーテン等の各種住宅設備、自動車のエアコン、電気製品のフィルターや衣服等に利用される繊維に消臭性を持たせる試みがなされている。
消臭対象として特に煙草臭が問題視され、煙草臭の臭気成分を除去し得る脱臭剤として、特開昭62−282926号公報及び特開昭62−282927号公報にて、ケイ酸マグネシウム質粘土鉱物からなる消臭剤が開示されている。
アミン化合物はアルデヒドガスと親和性が高く、アルデヒドガスを含有する排ガスをアミン化合物を溶解した液と接触させることにより、排ガス中のアルデヒドガスを除去できることが知られている(特開昭51-44587)。
また、アミン化合物を耐熱性の無機物に担持させたガス吸収剤が知られており、このガス吸収剤は樹脂や抄紙、フィルムへ添加する際の加熱処理に耐えうる特徴を有している。
例えば、活性炭にアンモニウム塩やアニリン等を担持させたり(特開昭53−29292、特開昭56−53744)、ケイ酸マグネシウム質粘土鉱物に分子内に第1級アミノ基を有する化合物を担持させたり(特開平9−28778)、層状燐酸塩(α燐酸ジルコニウム)の層間にポリアミン化合物を担持させたガス吸収剤が知られている(津波古ら PHARM.TECH.JAPAN Vol.12.No.12 P.P.77-87(1996))。
また、シリカにアミノアルコールを担持させた炭酸ガス吸収剤(特開昭53−23899)、シリカにポリアリルアミンを担持させた脱臭剤(特開昭63−141642)及びN原子1個当たりの分子量が110以下で、沸点が100℃以上であるアミン化合物及び水をシリカゲルに担持させた炭酸ガス吸収剤(特開平4−200742)が知られている。しかし、これらのガス吸収剤は、アルデヒドガスに対する吸収能が十分実用的水準にあるとは言い難く、これらを含有させた繊維の消臭性は不十分であるという問題がある。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の消臭性繊維の欠点を改良した、消臭性能に優れた消臭性繊維を提供することを課題とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の多孔質二酸化ケイ素に特定のポリアミン化合物を担持させたアルデヒドガス吸収剤を繊維に含有させることが極めて有効であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、比表面積が400〜900m2/gであり且つ平均細孔径が0.1〜10nmである多孔質二酸化ケイ素の1g当たり、下記式で表されるポリアミン化合物を0.02〜2.0mmol担持させたアルデヒドガス吸収剤を含有することを特徴とする消臭性繊維である。
【0005】
【化2】
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
○二酸化ケイ素
本発明における二酸化ケイ素は、比表面積が400〜900m2/gであり且つ平均細孔径が0.1〜10nmである多孔質二酸化ケイ素である。好ましい比表面積は、500〜900m2/gであり、好ましい平均細孔径は、2〜8nmである。
多孔質二酸化ケイ素の市販品として、シリカゲルやニップシール(微粒子含水二酸化ケイ素)等がある。
比表面積が小さ過ぎると、ポリアミン化合物とアルデヒドガスとの接触面積が減少し、ガス吸着量が損なわれる。また、比表面積が大きすぎるものは、ポリアミン化合物が多く吸着されすぎて、繊維等に添加して混練した際、加熱により変色を生じさせる原因となり易い。比表面積は、窒素吸着量から算出するBET法により、容易に測定できる。
また、平均細孔径が大きすぎると、比表面積が減り、ポリアミン化合物の担持量が少なくなり、アルデヒド類のガス吸着性能が低下する。平均細孔径が大きすぎるにも係らず比表面積を充分な大きさにしようとすると、多孔質体における空隙率が大きくなりすぎ、機械的強度が小さくなったり、ポリアミン化合物を担持する能力が弱くなり、僅かな加熱によりポリアミン化合物を放出してしまうという問題がある。一方、平均細孔径が小さすぎると、二酸化ケイ素の比表面積は増加するが、ポリアミン化合物が細孔内に入り難くなり、結果としてポリアミン化合物の担持量を増加できなくなり、ガス吸収能は減少する。平均細孔径(D)は、BET法により求めた細孔容積及び比表面積から下記式を用いて容易に算出される。
【0007】
【数1】
【0008】
本発明における二酸化ケイ素の好ましい含水率は0.5〜20重量%であり、より好ましくは、8〜15重量%である。
含水率が0.5重量%未満の場合、表面のシラノール基が少ないため、本発明におけるポリアミン化合物に対する担持力が小さい。逆に、含水率が20重量%より多いと、樹脂に混練した際、着色、発泡や劣化の原因となる。
二酸化ケイ素の含水率は、JIS K7120〜7122に準じて容易に測定できる。
【0009】
○ポリアミン化合物
本発明におけるポリアミン化合物は、分子内に第1級アミノ基を有しており、下記式で表わされる。
【0010】
【化3】
【0011】
上記のポリアミン化合物は、室温で液体であり、分解温度及び沸点が高く、アルデヒドガスとの反応性が高い第1級アミノ基を有する。
ポリアミン化合物の担持量は、上記多孔質二酸化ケイ素1g当たり0.02〜2.0mmolである。担持量が少な過ぎると、アルデヒドガスの吸収能が低下し、担持量が多過ぎると、繊維に混練する際、ポリアミン化合物が二酸化ケイ素から飛び出して、変色の原因になる上、ポリアミン化合物自身が悪臭となる。また、アルデヒド吸収量も減少する。ポリアミン化合物の担持量は、有機元素分析により検出される窒素含有率から容易に算出できる。
【0012】
本発明におけるアルデヒドガス吸収剤は、通常粉体状で得られ、好ましい平均粒径は0.01〜50μmであり、より好ましくは0.1〜20μmであり、さらに好ましくは0.1〜5μmである。平均粒径が0.01μm未満では取扱いが困難である、再凝集しやすいといった問題があり好ましくない。また、50μmより大きいと、繊維に紡糸する際に均一に分散させにくい、糸切れしやすいといった問題があり好ましくない。
【0013】
本発明における吸収剤は、特にアルデヒドガスに対して有効であり、アルデヒドガスとしては、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドなどがある。また、対象とするガスによって、その他の消臭剤と混合したり、併用することも当然可能である。
本発明で用いるアルデヒドガス吸収剤は、熱及び光の暴露に対して安定であり、200℃以上での加熱後であっても、構造及び組成が殆ど変化せず、紫外線の照射によっても何等変色を起こさない。又、液体状態にある水と接触させても骨格構造の変化がみられない。
【0014】
○ アルデヒドガス吸収剤の調製方法
本発明におけるアルデヒドガス吸収剤は、上記の二酸化ケイ素とポリアミン化合物を混合すれば、容易に得られる。ポリアミン化合物を水等で溶解した溶液を二酸化ケイ素と混合することにより均一にポリアミン化合物を担持できる。二酸化ケイ素に担持されなかった過剰のポリアミン化合物は、水等で洗浄することができる。得られた複合体を、例えば50℃〜120℃で乾燥し、粉砕することにより、本発明におけるアルデヒドガス吸収剤を得ることができる。
【0015】
○消臭性繊維
本発明の消臭性繊維は、上記のアルデヒドガス吸収剤を含有させた繊維である。
繊維としては、天然繊維及び合成繊維のいずれであっても良く、また、短繊維、長繊維、及び芯鞘構造をもった複合繊維等いずれであっても良い。
本発明におけるアルデヒドガス吸収剤は、耐熱性に優れ、200 ℃の高温においても消臭性能は失活しないので、アルデヒドガス吸収剤を繊維用樹脂に含有させる際にアルデヒドガス吸収剤が高温に晒されても問題がなく、繊維用樹脂として殆どの樹脂が使用可能である。
好ましい天然繊維の例として、パルプ、麻、綿、絹及び羊毛等があり、好ましい合成繊維の例として、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニリデン、ポリウレタン及びポリスチレン等がある。合成繊維の樹脂は、単独重合体であっても共重合体であっても良く、共重合体とする場合、その各単量体成分の重合割合は繊維に対する所望の特性に応じて任意に制御することができる。
【0016】
繊維にアルデヒドガス吸収剤を含有させる方法には特に制限はなく、例えば、アルデヒドガス吸収剤を予め配合した繊維用樹脂を用いて、溶融紡糸、乾式紡糸、湿式紡糸等の紡糸を行ったり、又アルデヒドガス吸収剤とバインダーを含有した水系或いは有機系懸濁液を、塗布やディッピング等の方法で繊維表面に付着させ、溶媒を除去することにより繊維表面にコーティングしたりすることができる。尚、必要に応じて、上記水系或いは有機系懸濁液に、アルデヒドガス吸収剤の分散性を向上させるために界面活性剤、分散剤等を添加しても良く、界面活性剤等はアニオン系、ノニオン系、カチオン系等いずれのものでも良い。また、繊維表面への付着力を増すためのバインダーは、溶媒を除去した後に付着力が出れば特に制限はない。
【0017】
繊維に含有させるアルデヒドガス吸収剤の割合は、特に限定されないが、天然繊維又は合成繊維用樹脂100 重量部(以下、単に部と略す)当たり好ましくは0.1 〜20部であり、より好ましくは0.5 〜10部である。
また、繊維には所望により、艶消し剤、着色剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、安定剤、難燃剤、抗菌防臭剤、防黴剤、芳香剤、赤外線吸収剤及び紫外線吸収剤等の各種添加剤を含有させることができ、その含有量は常法に従って適宜調整すれば良い。
【0018】
○用途
本発明におけるアルデヒドガス吸収剤は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等の悪臭に対するアルデヒドガス吸収効果に優れているので、活性炭等、従来の消臭剤が使用されている種々の分野で利用可能であり、このアルデヒドガス吸収剤を含有させた繊維において、アルデヒドガス吸収剤本来の優れたガス吸収特性を発揮させることができる。
本発明の消臭繊維は、例えば肌着、ストッキング、靴下、布団、布団カバー、座布団、毛布、じゅうたん、カーテン、ソファー、カーシート、エアーフィルター、マスク、ハンカチ、帽子、マフラー、ワイシャツ、敷布、枕カバー、作業着、テーブルクロス、暖簾、紙、段ボール、不織布、タオル、寝具、パジャマ等を始めとして、多くの繊維製品に使用できる。
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。
【0019】
【実施例及び比較例】
○アルデヒドガス吸収剤の調製
本発明におけるアルデヒドガス吸収剤を、以下の方法で得た。
二酸化ケイ素の粉体1gを所定量のポリアミン化合物に添加し、さらに純水を10g加えて十分撹拌する。40℃で2時間振とうする。その後、スラリーをブフナーロートで濾過し、純水で濾液の電気伝導度が20μS/cm以下になるまで洗浄する。洗浄した粉体を100℃で12時間乾燥して、アルデヒドガス吸収剤を得た。
上記のようにして本発明におけるアルデヒドガス吸収剤(A〜F)(下記表1)、及び従来のアルデヒドガス吸収剤(a〜h)を調製した(下記表2〜4)。
【0020】
(実施例1〜12及び比較例1〜18)
ポリエステル又はナイロンからなる繊維用樹脂100重量部当たり、アルデヒドガス吸収剤(A〜F)及びアルデヒドガス吸収剤(a〜h)を20重量部配合してマスターバッチを予め作製し、アルデヒドガス吸収剤の割合が全重量当たり2.5重量%となるよう、前記マスターバッチを同種の樹脂からなる繊維製品用樹脂に配合し、常法により溶融紡糸することにより、約2デニールの消臭性繊維を得た。またブランクとしてアルデヒドガス吸収剤を添加しない繊維を作製した(比較例17,18)。
【0021】
(実施例13〜18及び比較例19〜27)
アクリル系バインダー1.5重量%とアルデヒドガス吸収剤(A〜F)3重量%をポリエステル不織布に塗布し、120℃で乾燥後、180℃でキュア(しわ取り)し、消臭性不織布を得た(実施例13〜18)。また比較のために同様にアルデヒドガス吸収剤(a〜h)についても消臭性不織布を作製した(比較例19〜26)。またアルデヒドガス吸収剤を添加しない不織布を作製した(比較例27)。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
【表4】
【0026】
<実験>(消臭性能の評価試験)
上記のようにして得た消臭性繊維を長さ約10cmに切断したものを試料として以下の実験を実施した。
下記表5に示した2種のガスの各々について、試料0.5gを入れた容器(1リットル)にガスを注入した時から2時間後に、容器中のガス濃度を検知管(ガステック株式会社製)を用いて測定した。尚、容器にガスを注入した時のガス初期濃度は下記表5に示した通りである。
上記のようにして得られた消臭性試験の結果を下記表6に示した。
【0027】
【表5】
【0028】
【表6】
【0029】
【表7】
【0030】
【発明の効果】
本発明の消臭性繊維は、特にアルデヒドガスに対する吸収能に優れ、複合繊維、織布、不織布等の各種消臭性繊維製品の原料として使用することができる。
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