JP3883479B2 - 含気複合油性菓子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、含気油性菓子をシェルとし、センターに可食物を有する含気複合油性菓子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
油性菓子でシェルを作る際、公知の方法として以下の2通りの方法がある。第一の方法は、油性菓子を融解状態でモールドに充填した後、モールドを反転させ、シェルとなり得る以外の油性菓子を、重力とモールドに与える振動或いは遠心力との作用によりモールドから除去した後、それを冷却固化させ、油性菓子のシェルを形成する方法である。この方法によれば、含気した生地は流動性に乏しいため、比重が1.0以下の含気した生地の場合、シェルとなり得る以外の生地を均一に除去することが難しく、特に比重が0.8以下の場合はシェルとなり得る以外の生地を振り落とすことは極めて難しく、工業的に安定にシェルを形成することは困難である。
【0003】
第二の方法として、同心円状に配置された2つのノズルのうち、外側に配置されたノズルからシェルとなる油性菓子を、また、内側に配置されたノズルからセンターとなる油性菓子、或いはその他可食物を排出し、それをモールドに充填し、シェルである油性菓子にセンターが内包されている菓子を製造することも行われている。
【0004】
この方法の場合、ノズルからのシェル生地の排出開始がセンター生地の排出開始よりも若干早く、またシェル生地の排出終了がセンター生地の排出終了よりも若干遅くなるよう各生地の排出タイミングが調整され、それによってセンターがシェルに内包される。そして、センターがシェルに内包された状態でモールドに排出された後、その状態を保ったままモールドの内面に沿って流動し、センターがシェルに内包された状態を保ったままモールドに完全に充填され、然る後に冷却固化され、シェルにセンターが内包された油性菓子が得られる。この場合、センターがシェルに内包された状態でモールドに排出された後、モールドの内面に沿って流動する際、シェル生地とセンター生地は、ほぼ同様の流動性を有することが必須条件である。
【0005】
以上述べたように、比重が1.0以下の含気油性菓子生地では、工業的に安定したシェルを作ることは極めて困難であった。また、比重が1.0以下の含気油性菓子生地をシェルとして、センターに可食物を有する含気複合油性菓子を作る場合、センターの可食物の流動性は、シェルである含気油性菓子生地に近いことが必要であった。
【0006】
また、センターにはノズルを通過しない固形物は使用できないなど、使用できるセンターは物性面で限定される。
また、含気油性菓子生地をピストンで注入する際、圧力で体積変化を起こすためセンター注入とのタイミングの設定が難しいという欠点があった。
また、比重0.4から1.0の含気油性菓子生地は、冷却固化後の収縮率が小さく、剥離性が高くないので、工業上安定的に剥離を行うのが困難であった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記のような課題について鋭意研究した結果、下記のような製造方法を提供することにより、発明を完成するにいたった。
第一の発明は、含気油性菓子生地を、油性菓子で薄層を形成したモールドに注入した後、冷却した押し型でプレスすることでダブルシェルを作り、該シェルの内側にセンターとして可食物を充填することを特徴とする含気複合油性菓子の製造方法を提供する。
【0008】
第二の発明は、含気油性菓子生地を加熱したモ−ルドに直接注入し、界面部分を融解させ、モールド内面との界面部分に薄層を形成させた後に、冷却した押し型でプレスすることでシェルを作り、該シェルの内側にセンターとして可食物を充填することを特徴とする含気複合油性菓子の製造方法を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において、油性菓子および含気油性菓子としては例えば、チョコレート、ホワイトチョコレートあるいはこれらのカカオバターの一部又は全部を他の植物油脂で代替した油性菓子が挙げられる。
本発明において、含気油性菓子生地の含気の方法は、通常の方法で行う。即ち、含気は、融解状の油性菓子生地を適宜調温し、それをモンドミックスのような密閉型エアミキサー或いはホバートミキサーのような開放型ミキサーにて空気或いは窒素等を油性菓子生地中に細かな気泡として分散させて行う。
【0010】
本発明において、上記含気油性菓子生地を、モールドに注入し、冷却した押し型でプレスすることでシェルを形成するが、この場合、押し型の温度は-20〜10℃がよい。押し型の温度が、10℃を超えると、プレスを行ってから含気した油性菓子が固化するまでに過度の時間を要し、生産能力が著しく低下するため好ましくなく、−20℃を下回ると、結露、霜付きが激しく安定した生産が不可能であり好ましくない。
【0011】
本発明において、押し型でプレスすることによってシェルを形成した後、シェル生地は流動性を消失しているが、必要に応じ更に冷却し、その後、モールド上面より突出した余分な含気油性菓子生地があれば、常法に従ってスクレープにて掻き取る。
【0012】
本発明において、上記の時点でシェルが形成され、該シェルの内側に常法により、センターとなる可食物を1種類ないしは複数種充填することができる。この可食物の種類は特に限定されるものではないが、特徴ある含気複合油性菓子を得るためには、可食物としては、例えば、シェルである油性菓子生地と物性、風味の異なる油性菓子、乳化物、ゼリー、シロップ、餡、ナッツ、パフ、焼き菓子、米菓などを用いるのが好ましい。シェル内部に可食物を充填した後、そのまま冷却、固化させてもよいが、必要に応じて、融解状の油性菓子生地にてボトムを形成し、シェル内部に充填した可食物が露出せず内包された状態にしてもよい。
【0013】
何故なら、シロップなどの室温にて流動性のある可食物や、乳化物、ゼリーなどの付着性の高い可食物の場合、それらが露出していない方が工業生産上取り扱いし易く、水分やアルコール分など揮発性物質の散逸が防止できるため保存性も高く、また手指への付着も少なく、生産者にとっても消費者にとっても好ましいからである。ボトムとなる油性菓子生地は、シェルである油性菓子生地と同じ組成、同じ比重の菓子生地でも良いがそれに限定されず、あらゆる種類の油性菓子生地が使用できる。
【0014】
含気油性菓子生地によりシェルが形成され、そのシェル内部に可食物が内包された含気複合油性菓子は、冷却、固化された後、モールドより剥離される。
【0015】
第一の発明において、モールドに油性菓子の薄層を形成する方法としては、以下の如き公知の方法がある。1)油性菓子生地を融解状態でモールドに充填した後、モールドを反転させ、薄層となり得る以外の油性菓子を、重力とモールドに与える振動或いは遠心力との作用によりモールドから除去した後、冷却固化させ、モールド内面に薄層を形成する方法、2)油性菓子生地を融解状態でモールドに充填した後、薄層となる油性菓子生地以外の油性菓子生地を吸引によって除去した後、冷却固化させモールド内面に薄層を形成する方法、3)融解状の油性菓子生地を空気や窒素気流などとともに細い穴から出すことで細かい霧状にしたものをモールド内壁に噴霧し、それを冷却固化させモールド内面に薄層を形成する方法、4)空気や窒素気流などを勢いよく噴出しているところに融解状の油性菓子生地を少量ずつ送り込むことで細かい霧状にしモールド内壁に噴霧し、それを冷却固化させモールド内面に薄層を形成する方法、5)油性菓子生地を融解状態でモールドに充填した後冷却した押し型で薄層を形成する方法が挙げられるが、このうち1つを適宜選択し使用することができる。
【0016】
第一の発明において、外層として用いる薄層の油性菓子は含気されていない油性菓子に限定され、薄層の厚さは特に限定されるものではないが、シェルである含気油性菓子生地の特長を活かし、本発明の効果を発揮するためには出来る限り薄い方が好ましく、剥離性と目的とする風味、食感によって適宜調整する。また、薄層を形成する油性菓子生地の種類も含気されていなければ特に限定されるものではなく、目的とする風味、食感によって適宜選択できる。
【0017】
第一の発明において、含気油性菓子生地は特に限定されないが、但し、比重は0.4〜1.0である。
第一の発明において、含気油性菓子生地を注入するとき、モールドの表面温度は特に限定されるものではないが、低過ぎると注入した含気油性菓子生地の固化が早くプレスによるシェル形成を行うまでの許容時間が短くなり、また、高過ぎるといったん形成された薄層が融解し剥離性向上効果が抑制されることもあり得るので、25〜32℃の範囲が最も適当である。
【0018】
第二の発明は、含気油性菓子生地がテンパー型油脂を主体としたテンパー型油性菓子生地の場合とノンテンパー型油脂を主体としたノンテンパー型油性菓子生地の場合に大別される。テンパー型油性菓子生地の場合には、更に、種結晶として高融点油脂結晶を添加する場合と添加せずに単に調温する場合の2つに分類される。
【0019】
第二の発明においてテンパー型油性菓子生地の場合で、かつ高融点油脂結晶を添加する場合、その高融点油脂結晶としては例えば、1,3−ジベヘニル−2−オレイルグリセロール(以下BOBという)が挙げられる。BOBを添加する場合、加熱したモールドの内面温度は25〜45℃がよい。
【0020】
この場合、25℃を下回るとモールド内面での薄層形成が十分でなくその結果収縮が十分でなく剥離が安定的に行われない。45℃を越える場合はBOBが融解または油性菓子生地の油相中に溶解し、結晶核としての機能を消失し、安定結晶が形成されず、冷却固化後の収縮が十分でなく、その結果剥離が安定的に行われず、また、粗大結晶が析出するためブルームと呼ばれる白化が起こり、商品価値を大きく損ねることとなる。
【0021】
添加するBOBの量は、結晶量として油性菓子生地に対し、0.5〜5重量%であり、0.5重量%を下回る場合は結晶核として十分に機能しなく好ましくなく、5重量%を越えた場合は、油性菓子生地の融点を上昇させ、口どけの劣化を招来し好ましくなく、またコスト的にも不利である。BOBを添加する際の油性菓子生地の品温は25℃〜37℃であり、25℃を下回ると添加後の結晶化が過度に早くその結果油性菓子生地の粘度上昇を招来し好ましくなく、37℃を越えるとBOBの融解、或いは油性菓子生地中の油脂相への溶解が起こり結晶核としての機能を消失し好ましくない。また、この場合、含気油性菓子生地の比重は0.7〜1.0がよい。
【0022】
第二の方法で含気油性菓子生地がテンパー型油脂を主体としたテンパー型油性菓子生地の場合で、高融点油脂結晶を添加しない場合は、モールドの表面温度が25〜32℃、菓子生地の比重は0.8〜1.0に限定される。何故ならば、高融点油脂結晶を含まない場合は、結晶核が油性菓子を構成する油脂の結晶であるので、それ自身の融点が当該高融点油脂結晶に比べて低く、モールド温度を上げることができず、結果的に比重も高融点油脂結晶の添加時ほど下げることはできない。モールドの温度が25℃を下回るとモールド内面での薄層形成が十分でなく、その結果収縮が十分でなく剥離が安定的に行われない。32℃を越えた場合、含気生地中の結晶核が融解によって消失し、安定結晶が形成されず冷却固化後の収縮が十分でなくその結果剥離が安定的に行われず、また粗大結晶が析出するためブルームと呼ばれる白化が起こり、商品価値を大きく損ねることとなる。
【0023】
第二の方法で含気油性菓子生地がノンテンパー型油脂を主体としたノンテンパー型油性菓子生地の場合、結晶核が全くない融解状態から直接冷却しても収縮率の大きい準安定形の結晶で固化するためモールド内面の温度範囲は25〜60℃となる。25℃を下回るとモールド内面での薄層形成が十分でなく、その結果収縮が十分でなく剥離が安定的に行われない。60℃を越えた場合、薄層の厚さが過度に厚くなったり、冷却に過度の時間を要し工業生産上好ましくない。また、この場合、含気油性菓子生地の比重は0.7〜1.0である。
【0024】
この第二の方法によれば、加熱されたモールドに直接含気油性菓子生地を注入した後、冷却した押し型でプレスすることでシェルを作り、そのシェルの内側に可食物を充填し、必要に応じボトムを形成し、冷却固化させ剥離させ含気複合油性菓子を得る。含気油性菓子生地をモールドに注入する以前に薄層を形成する工程が不要なので設備が簡便になるという利点があり、また、モールド内面に形成される含気油性菓子の薄層がごく薄いため、含気油性菓子の特長を阻害することがなく好ましい。
【0025】
【実施例】
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
製造例 1 チョコレート生地Aの製造
カカオマス(19.00重量部)、全粉乳(14.50重量部)、ココアバター(30.00重量部)、砂糖(35.95重量部)、乳化剤(0.5重量部)、香料(0.05重量部)を用い、常法により混合した。混合後、レファイナー(ビューラー社製)にて磨砕し、その後フリッセコンチェ(ビューラー社製)によりコンチングを行い、チョコレート生地Aを得た。
【0026】
製造例 2 チョコレート生地Bの製造
カカオマス(20.50重量部)、全粉乳(16.00重量部)、ココアバター(24.00重量部)、砂糖(38.95重量部)、乳化剤(0.5重量部)、香料(0.05重量部)を常法にて混合した。混合後、レファイナー(ビューラー社製)にて磨砕し、その後フリッセコンチェ(ビューラー社製)によりコンチングを行い、チョコレート生地Bを得た。
【0027】
製造例 3 含気チョコレート生地A1の製造
製造例1で得られたチョコレート生地Aに、エアミキサー(モンドミックス社製)にて窒素を注入し、撹拌と同時に含気を行って比重0.9の含気チョコレート生地A1を得た。
【0028】
製造例 4 O/W型の乳化物Cの製造
製造例1で得られたチョコレート生地A(58.0重量部)、乳脂含量45%の生クリーム(40.0重量部)、アルコール含量50%の洋酒(2.0重量部)を常法により、撹拌かつ混合し、O/W型の乳化物Cを得た。
【0029】
実施例 1
製造例2で得られたチョコレート生地Bをオートテンパリングマシーン(ATM:ゾーリッヒ社製)を用いテンパリングした後、モールドに注入し、その後モールドを反転し、モールドに振動を与え余分なチョコレート生地Bを除去した後15℃のクーラー内で3分間固化させ、モールド内面にチョコレート生地Bによる薄層を形成させた。
次に、前記モールドの表面温度を26℃に調温し、製造例3で得られた含気チョコレート生地A1を該モールドに注入し、タッピングマシーンにより振動を与え、含気チョコレート生地A1をモールド内面の該薄層に沿ってむらなく伸展させた。その後、0℃に冷却した押し型で該含気チョコレート生地A1をプレスし、15℃で5分間冷却固化し、モールド上面より突出した余分な含気チョコレート生地A1を掻き取った。上述した操作により、ダブルシェルを形成した。
形成されたシェルの中に、製造例4で得られたO/W型の乳化物Cを充填し、15℃のクーラー内で10分間冷却した後、製造例3で得られた含気チョコレート生地A1にてボトムを形成し、これを12℃のクーラー内で40分間冷却固化させ剥離を行い食感、口どけ、風味良好な含気複合油性菓子を得た。
【0030】
製造例 5 含気チョコレート生地A2の製造
製造例1で得られたチョコレート生地Aに、エアミキサー(モンドミックス社製)にて窒素を注入し、撹拌と同時に含気を行って比重0.7の含気チョコレート生地A2を得た。
【0031】
実施例 2
製造例2で得られたチョコレート生地Bを用いて、実施例1と同様にしてモールド内面にチョコレート生地Bによる薄層を形成させた。
次に、前記モールドの表面温度を26℃に調温し、製造例5によって得られた含気チョコレート生地A2を該モールドに注入し、-15℃に冷却した押し型で該含気チョコレート生地A2をプレスし、実施例1と同様にしてダブルシェルを形成させた。 更に、形成されたシェルの中に、製造例4で得られたO/W型の乳化物Cを充填し、15℃のクーラー内で10分間冷却した後、製造例5で得られた含気チョコレート生地A2にてボトムを形成し、これを12℃のクーラー内で40分間冷却固化させ剥離を行い食感、口どけ、風味良好な含気複合油性菓子を得た。
【0032】
製造例 6 含気チョコレート生地A3の製造
製造例1で得られたチョコレート生地Aに、エアミキサー(モンドミックス社製)にて窒素を注入し、撹拌と同時に含気を行って比重0.5の含気チョコレート生地A3を得た。
【0033】
実施例 3
製造例2で得られたチョコレート生地Bを用いて、実施例1と同様にしてモールド内面にチョコレート生地Bによる薄層を形成させた。
次に、前記モールドの表面温度を26℃に調温し、製造例6によって得られた含気チョコレート生地A3を該モールドに注入し、5℃に冷却した押し型で該含気チョコレート生地A3をプレスし、実施例1と同様にしてダブルシェルを形成させた。更に、形成されたシェルの中に、製造例4で得られたO/W型の乳化物Cを充填し、15℃のクーラー内で10分間冷却した後、製造例6で得られた含気チョコレート生地A3にてボトムを形成し、これを12℃のクーラー内で40分間冷却固化させ剥離を行い食感、口どけ、風味良好な含気複合油性菓子を得た。
【0034】
製造例 7 チョコレート生地Dの製造法
カカオマス(10.00重量部)、全粉乳(20.00重量部)、ココアバター(25.50重量部)、砂糖(43.95重量部)、乳化剤(0.50重量部)、香料(0.05重量部)を常法にて混合した。混合後、レファイナー(ビューラー社製)にて磨砕し、その後フリッセコンチェ(ビューラー社製)によりコンチングを行い、チョコレート生地Dを得た。
【0035】
製造例 8 含気チョコレート生地A4の製造
製造例1で得られたチョコレート生地Aに、エアミキサー(モンドミックス社製)にて窒素を注入し、撹拌と同時に含気を行って比重0.8の含気チョコレート生地A4を得た。
【0036】
実施例 4
製造例2で得られたチョコレート生地Bを用いて、実施例1と同様にしてモールド内面にチョコレート生地Bによる薄層を形成させた。次に、前記モールドの表面温度を26℃に調温し、製造例8によって得られた含気チョコレート生地A4を該モールドに注入し、0℃に冷却した押し型で該含気チョコレート生地A4をプレスし、実施例1と同様にしてダブルシェルを形成させた。
更に、形成されたシェルの中に、製造例4で得られたO/W型の乳化物Cを充填し、15℃のクーラー内で10分間冷却した後、製造例7で得られたチョコレート生地Dにてボトムを形成し、これを12℃のクーラー内で40分間冷却固化させ剥離を行い食感、口どけ、風味良好な含気複合油性菓子を得た。
【0037】
製造例 9 含気チョコレート生地A5の製造法
製造例1で得られたチョコレート生地Aを35℃に調温し、結晶BOB(商品名チョコシードB:不二製油社製)を結晶量として2重量%添加し、混合した後、エアミキサー(モンドミックス社製)にて窒素を注入し、撹拌と同時に含気を行って比重0.8の含気チョコレート生地A5を得た。
【0038】
製造例 10 O/W型の乳化物Eの製造方法
製造例1で得られたチョコレート生地A(53.0重量部)、乳脂含量45%の生クリーム(45.0重量部)、アルコール含量50%の洋酒(2.0重量部)を常法により、撹拌かつ混合し、O/W型の乳化物Eを得た。
【0039】
実施例 5
製造例9で得られた含気チョコレート生地A5を、表面温度を35℃に調温したモールドに注入し、タッピングマシーンにより振動を与え、該含気チョコレート生地A5をモールド内面に沿ってむらなく伸展させた。
その後、3℃に冷却した押し型でプレスした。15℃のクーラー内で5分冷却し、モールド上面より突出した余分の含気チョコレート生地A5を掻き取った。上記操作により、モールド内にシェルを形成させた。
形成されたシェルの中に、製造例10で得られたO/W型の乳化物Eを充填し、15℃のクーラー内で10分間冷却した後、製造例3で得られた含気チョコレート生地A1にてボトムを形成し、これを12℃のクーラー内で40分間冷却固化させ剥離を行い食感、口どけ、風味良好な含気複合油性菓子を得た。
【0040】
実施例 6
製造例9で得られた含気チョコレート生地A5を、表面温度を35℃に調温したモールドに注入し、タッピングマシーンにより振動を与え、該含気チョコレート生地A5をモールド内面に沿ってむらなく伸展させた。
その後、-5℃に冷却した押し型でプレスした。15℃のクーラー内で5分冷却し、モールド上面より突出した余分の含気チョコレート生地A5を掻き取った。上記操作により、モールド内にシェルを形成させた。
形成されたシェルの中に、製造例10で得られたO/W型の乳化物Eを充填し、15℃のクーラー内で10分間冷却した後、製造例9で得られた含気チョコレート生地A5にてボトムを形成し、これを12℃のクーラー内で40分間冷却固化させ剥離を行い食感、口どけ、風味良好な含気複合油性菓子を得た。
【0041】
製造例 11 含気チョコレート生地A6の製造方法
製造例1で得られたチョコレート生地Aを35℃に調温し、結晶BOBを結晶量として2重量%添加し、混合した後、エアミキサー(モンドミックス社製)にて窒素を注入し、撹拌と同時に含気を行って比重0.6の含気チョコレート生地A6を得た。
【0042】
実施例 7
製造例11で得られた含気チョコレート生地A6を、表面温度を35℃に調温したモールドに注入し、タッピングマシーンにより振動を与え、該含気チョコレート生地A6をモールド内面に沿ってむらなく伸展させた。
その後、-12℃に冷却した押し型でプレスした。15℃のクーラー内で5分間冷却し、モールド上面より突出した余分の含気チョコレート生地A6を掻き取った。上記操作により、モールド内にシェルを形成させた。
形成されたシェルの中に、製造例10で得られたO/W型の乳化物Eを充填し、15℃のクーラー内で10分間冷却した後、製造例11で得られた含気チョコレート生地A6にてボトムを形成し、これを12℃のクーラー内で40分間冷却固化させ剥離を行い食感、口どけ、風味良好な含気複合油性菓子を得た。
【0043】
実施例 8
製造例9で得られた含気チョコレート生地A5を、表面温度を35℃に調温したモールドに注入し、タッピングマシーンにより振動を与え、該含気チョコレート生地A5をモールド内面に沿ってむらなく伸展させた。
その後、3℃に冷却した押し型でプレスした。15℃のクーラー内で5分間冷却し、モールド上面より突出した余分の含気チョコレート生地A5を掻き取った。上記操作により、モールド内にシェルを形成させた。
形成されたシェルの中に、製造例10で得られたO/W型の乳化物Eを充填し、15℃のクーラー内で10分間冷却した後、製造例7で得られたチョコレート生地Dにてボトムを形成し、これを12℃のクーラー内で40分間冷却固化させ剥離を行い食感、口どけ、風味良好な含気複合油性菓子を得た。
【0044】
製造例 12 ファットクリームFの製造方法
テンパー型植物性油脂(商品名 メラノNEWSS7:不二製油社製 ココアバター代替脂:35.00重量部)、砂糖(36.45重量部)、全粉乳(23.00重量部)、凍結乾燥イチゴ(5.00重量部)、乳化剤(0.50重量部)、香料(0.05重量部)を常法により混合し、レファイナー(ビューラー社製)にてレファイニング、そしてフリッセコンチェ(ビューラー社製)によりコンチングを行って、苺風味のファットクリームFを得た。
【0045】
実施例 9
製造例9で得られた含気チョコレート生地A5を、表面温度を35℃に調温したモールドに注入し、タッピングマシーンにより振動を与え、該含気チョコレート生地A5をモールド内面に沿ってむらなく伸展させた。
その後、3℃に冷却した押し型でプレスした。15℃のクーラー内で5分間冷却し、モールド上面より突出した余分の含気チョコレート生地A5を掻き取った。上記操作により、モールド内にシェルを形成させた。
形成されたシェルの中に、製造例12で得られたファットクリームFを充填し、15℃のクーラー内で10分間冷却した後、製造例3で得られた含気チョコレート生地A1にてボトムを形成し、これを12℃のクーラー内で40分間冷却固化させ剥離を行い食感、口どけ、風味良好な含気複合油性菓子を得た。
【0046】
製造例 13 ファットクリームGの製造方法
ノンテンパー型植物性油脂(商品名 メラノSTS:不二製油社製 ココアバター代替脂:18.00重量部)、砂糖(33.45重量部)、全粉乳(18.00重量部)、アーモンドペースト(30.00重量部)、乳化剤(0.50重量部)、香料(0 .05重量部)を常法により混合し、レファイナー(ビューラー社製)にてレファイニング、そしてフリッセコンチェ(ビューラー社製)によりコンチングを行って、アーモンド風味のファットクリームGを得た。
【0047】
実施例 10
製造例9で得られた含気チョコレート生地A5を、表面温度を35℃に調温したモールドに注入し、タッピングマシーンにより振動を与え、該含気チョコレート生地A5をモールド内面に沿ってむらなく伸展させた。
その後、3℃に冷却した押し型でプレスした。15℃のクーラー内で5分冷却し、モールド上面より突出した余分の含気チョコレート生地A5を掻き取った。上記操作により、モールド内にシェルを形成させた。
形成されたシェルの中に、製造例13で得られたファットクリームGと適当量のホール状のアーモンドを充填し、15℃のクーラー内で10分間冷却した後、製造例3で得られた含気チョコレート生地A1にてボトムを形成し、これを12℃のクーラー内で40分間冷却固化させ剥離を行い食感、口どけ、風味良好な含気複合油性菓子を得た。
【0048】
実施例 11
製造例3で得られた含気チョコレート生地A1を、表面温度を30℃に調温したモールドに注入し、タッピングマシーンにより振動を与え、該含気チョコレート生地A1をモールド内面に沿ってむらなく伸展させた。
その後、5℃に冷却した押し型でプレスした。15℃のクーラー内で5分間冷却し、モールド上面より突出した余分の含気チョコレート生地A1を掻き取った。上記操作により、モールド内にシェルを形成させた。
形成されたシェルの中に、製造例10で得られたO/W型の乳化物Eを充填し、15℃のクーラー内で10分間冷却した後、製造例5で得られた含気チョコレート生地A2にてボトムを形成し、これを12℃のクーラー内で40分間冷却固化させ剥離を行い食感、口どけ、風味良好な含気複合油性菓子を得た。
【0049】
製造例 14 準チョコレート生地Hの製造方法
ノンテンパー型植物性油脂(商品名 メラノSTS:不二製油社製 ココアバター代替脂:35.45重量部)、砂糖(38.00重量部)、全粉乳(18.00重量部)、油分11%であるココアパウダー(8.00重量部)、乳化剤(0.50重量部)、香料(0.05重量部)を常法により混合し、レファイナー(ビューラー社製)にてレファイニング、そしてフリッセコンチェ(ビューラー社製)によりコンチングを行って、準チョコレート生地Hを得た。
【0050】
製造例 15 含気準チョコレート生地H1の製造方法
製造例14で得られた準チョコレート生地Hに、エアミキサー(モンドミックス社製)にて窒素を注入し、撹拌と同時に含気を行って比重0.7の含気準チョコレート生地H1を得た。
【0051】
実施例 12
製造例15で得られた含気準チョコレート生地H1を、表面温度を50℃に調温したモールドに注入し、タッピングマシーンにより振動を与え、該準含気チョコレート生地H1をモールド内面に沿ってむらなく伸展させた。
その後、5℃に冷却した押し型でプレスした。15℃のクーラー内で5分間冷却し、モールド上面より突出した余分の含気準チョコレート生地H1を掻き取った。上記操作により、モールド内にシェルを形成させた。
形成されたシェルの中に、製造例4で得られたO/W型の乳化物Cを充填し、15℃のクーラー内で10分間冷却した後、製造例15で得られた含気準チョコレート生地H1にてボトムを形成し、これを12℃のクーラー内で40分間冷却固化させ剥離を行い食感、口どけ、風味良好な含気複合油性菓子を得た。
【0052】
製造例 16 含気チョコレート生地A7の製造方法
製造例1で得られたチョコレート生地Aに、エアミキサー(モンドミックス社製)にて窒素を注入し、撹拌と同時に含気を行って比重1.1の含気チョコレート生地A7を得た。
【0053】
比較例 1
製造例2で得られたチョコレート生地Bをオートテンパリングマシーン(ATM:ゾーリッヒ社製)を用いテンパリングした後、モールドに注入し、その後モールドを反転し、モールドに振動を与え余分なチョコレート生地Bを除去した後15℃のクーラー内で3分間固化させ、モールド内面にチョコレート生地Bによる薄層を形成させた。
次に、表面温度26℃に調温した前記モールドに、製造例16で得られた含気チョコレート生地A7を注入し、タッピングマシーンにより振動を与え、含気チョコレート生地A7をモールド内面の該薄層に沿ってむらなく伸展させた。その後、0℃に冷却した押し型で該含気チョコレート生地A7をプレスし、15℃で5分間冷却固化し、モールド上面より突出した余分な含気チョコレート生地A7を掻き取った。上述した操作により、ダブルシェルを形成した。
形成されたシェルの中に、製造例4で得られたO/W型の乳化物Cを充填し、15℃のクーラー内で10分間冷却した後、製造例3で得られた含気チョコレート生地A1にてボトムを形成し、これを12℃のクーラー内で40分間冷却固化させ含気複合油性菓子を得た。得られた含気複合油性菓子の品質は、含気生地の特長である特徴ある食感、口どけを有しておらず、従来の技術によって得られる複合油性菓子、即ちシェルが含気チョコでない複合油性菓子と大差なかった。
【0054】
比較例 2
製造例2で得られたチョコレート生地Bをオートテンパリングマシーン(ATM:ゾーリッヒ社製)を用いテンパリングした後、モールドに注入し、その後モールドを反転し、モールドに振動を与え余分なチョコレート生地Bを除去した後15℃のクーラー内で3分間固化させ、モールド内面にチョコレート生地Bによる薄層を形成させた。
次に、表面温度26℃に調温した前記モールドに、製造例3で得られた含気チョコレート生地A1を注入し、タッピングマシーンにより振動を与え、含気チョコレート生地A1をモールド内面の該薄層に沿ってむらなく伸展させた。その後、15℃に冷却した押し型で該含気チョコレート生地A1をプレスしたが、シェルを形成するのに、過度に時間を要し、工業生産上好ましくなかった。
【0055】
比較例 3
製造例2で得られたチョコレート生地Bをオートテンパリングマシーン(ATM:ゾーリッヒ社製)を用いテンパリングした後、モールドに注入し、その後モールドを反転し、モールドに振動を与え余分なチョコレート生地Bを除去した後15℃のクーラー内で3分間固化させ、モールド内面にチョコレート生地Bによる薄層を形成させた。
次に、表面温度26℃に調温した前記モールドに、製造例3で得られた含気チョコレート生地A1を注入し、タッピングマシーンにより振動を与え、含気チョコレート生地A1をモールド内面に沿ってむらなく伸展させた。その後、-25℃に冷却した押し型で該含気チョコレート生地A1をプレスしたが、押し型に著しい結露と霜が発生し、工業生産上好ましくなかった。
【0056】
製造例 17 含気チョコレート生地A8の製造方法
製造例1で得られたチョコレート生地Aを35℃に調温し、結晶BOBを2重量%添加し、混合した後、エアミキサー(モンドミックス社製)にて窒素を注入し、撹拌と同時に含気を行って、比重0.5の含気チョコレート生地A8を得た。
【0057】
比較例 4
製造例17で得られた含気チョコレート生地A8を、表面温度を35℃に調温したモールドに注入し、タッピングマシーンにより振動を与え、該含気チョコレート生地A8をモールド内面に沿ってむらなく伸展させた。
その後、3℃に冷却した押し型でプレスした。15℃のクーラー内で5分間冷却し、モールド上面より突出した余分の含気チョコレート生地A8を掻き取った。上記操作により、モールド内にシェルを形成させた。
形成されたシェルの中に、製造例10で得られたO/W型の乳化物Eを充填し、15℃のクーラー内で10分間冷却した後、製造例3で得られた含気チョコレート生地A1にてボトムを形成し、これを12℃のクーラー内で40分間冷却固化させ剥離したが、全体の50%しか剥離しなかった。従って、本比較例の方法では、連続生産が不可能なため、工業的生産には好ましくないと判断される。
【0058】
実施例 13
製造例14で得られた準チョコレート生地Hを品温40℃の融解状態でモールドに注入し、その後モールドを反転し、モールドに振動を与え余分な準チョコレート生地Hを除去した後15℃のクーラー内で3分間固化させ、モールド内面にチョコレート生地Hによる薄層を形成させた。
次に、表面温度が26℃の前記モールドに、製造例3で得られた含気チョコレート生地A1を注入し、タッピングマシーンにより振動を与え、含気チョコレート生地A1をモールド内面の該薄層に沿ってむらなく伸展させた。その後、0℃に冷却した押し型で該含気チョコレート生地A1をプレスし、15℃で5分間冷却固化し、モールド上面より突出した余分な含気チョコレート生地A1を掻き取った。上述した操作により、ダブルシェルを形成した。
形成されたシェルの中に、製造例4で得られたO/W型の乳化物Cを充填し、15℃のクーラー内で10分間冷却した後、製造例3で得られた含気チョコレート生地A1にてボトムを形成し、これを12℃のクーラー内で40分間冷却固化させ剥離を行い食感、口どけ、風味良好な含気複合油性菓子を得た。
【0059】
実施例 14
製造例14で得られた準チョコレート生地Hを品温40℃の融解状態でモールドに注入し、その後モールドを反転し、モールドに振動を与え余分な準チョコレート生地Hを除去した後15℃のクーラー内で3分間固化させ、モールド内面にチョコレート生地Hによる薄層を形成させた。
次に、表面温度が26℃の前記モールドに、製造例15で得られた含気準チョコレート生地H1を、表面温度を50℃に調温したモールドに注入し、タッピングマシーンにより振動を与え、該準含気チョコレート生地H1をモールド内面の該薄層に沿ってむらなく伸展させた。
その後、5℃に冷却した押し型でプレスした。15℃のクーラー内で5分冷却し、モールド上面より突出した余分の含気準チョコレート生地H1を掻き取った。上記操作により、モールド内にシェルを形成させた。
形成されたシェルの中に、製造例4で得られたO/W型の乳化物Cを充填し、15℃のクーラー内で10分間冷却した後、製造例15で得られた含気準チョコレート生地H1にてボトムを形成し、これを12℃のクーラー内で40分間冷却固化させ剥離を行い食感、口どけ、風味良好な含気複合油性菓子を得た。
【0060】
【発明の効果】
本発明により、比重が0.4〜1.0である幅広い範囲の含気油性菓子生地で安定的にシェルを成型することが可能となり、更に、組合せる可食物を任意に選択でき、様々な種類の特徴ある食感で、口溶けがよく、風味のある含気複合油性菓子を提供することができる。
Claims (8)
- 比重が0.4〜1.0の含気油性菓子生地を、油性菓子で薄層を形成し、かつ表面温度が25〜32℃のモールドに注入した後、冷却した押し型でプレスすることでダブルシェルを作り、該シェルの内側にセンターとして可食物を充填することを特徴とする含気複合油性菓子の製造方法。
- 比重が0.7〜1.0の含気油性菓子生地を、表面温度を25〜60℃に加熱したモ−ルドに直接注入し、界面部分を融解させ、モールド内面との界面部分に薄層を形成させた後に、冷却した押し型でプレスすることでシェルを作り、該シェルの内側にセンターとして可食物を充填することを特徴とする含気複合油性菓子の製造方法。
- 含気油性菓子生地がテンパー型であって、かつ種結晶である高融点油脂結晶を添加する場合において、モールドの表面温度が25〜45℃であることを特徴とする請求項2に記載の含気複合油性菓子の製造方法。
- 含気油性菓子生地がテンパー型であって、かつ種結晶である高融点油脂結晶を添加しない場合において、該含気油性菓子生地の比重が0.8〜1.0であり、かつ、モールドの表面温度が25〜32℃であることを特徴とする請求項2に記載の含気複合油性菓子の製造方法。
- 含気油性菓子生地がノンテンパー型であることを特徴とする請求項2に記載の含気複合油性菓子の製造方法。
- テンパー型油性菓子生地に添加する高融点油脂結晶がBOBであることを特徴とする請求項3に記載の含気複合油性菓子の製造方法。
- BOBの添加する量が結晶量として0.5〜5重量%であることを特徴とする請求項6に記載の含気複合油性菓子の製造方法。
- 押し型温度が、−20℃〜10℃であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の含気複合油性菓子の製造方法。
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