JP3882883B2 - モータの冷却装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の駆動源として使用されるモータの冷却装置に関するものである。
【0002】
【関連する背景技術】
例えば特開2000−9215号公報に記載のように、走行用の駆動源としてエンジンと共にモータを備えたハイブリッド車両等では、省スペース等の観点から、モータを変速機に一体化させたレイアウトを採用しているものがある。そして、この種のモータは運転時に発熱量が非常に多いことから、冷却のためにモータのハウジングの外周にウォータジャケットを形成して、その内部に冷却水を循環させて過熱を防止している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようにモータを変速機に一体化させた場合、モータ側のウォータジャケットは変速機と隣接することになり、結果として変速機に対しても冷却作用が奏される。よって、例えば極低温での冷態始動時等には、上記ウォータジャケットによる冷却作用で、変速機の温度上昇が緩慢となってしまい、変速機の本来の動作が望める通常の温度域に達するまでの期間が長引いてしまう。よって、それまでの間は、例えばバルブボディの切換動作やクラッチの係合動作が所期のタイミングで行われずにドライバビリティが悪化したり、低温のATF(オートマチック・トランスミッション・フルード)による粘性抵抗で燃費が悪化したりする等の不具合が避けられなかった。
【0004】
本発明の目的は、冷態始動時等に変速機に対する不適切な冷却を防止して、変速機を速やかに昇温させ、もって、低温時に発生する変速機の種々の不具合を早期に解消することができるモータの冷却装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明では、モータと変速機とが隣接して設置されると共に、モータの周囲に冷却液通路が形成され、冷却液通路を流れる冷却液の流量を変速機の温度に応じて制御する流量制御手段を備えた。
従って、冷却液通路を流れる冷却液によりモータが冷却されると共に、モータに隣接する変速機に対しても冷却作用を及ぼす。そして、この冷却液の流量が変速機に温度に応じて制御されることから、変速機を適切な温度に保つことに役立つ。よって、変速機の温度が低いときの不具合、例えばバルブボディの切換動作やクラッチの係合動作が所期のタイミングで行われずにドライバビリティが悪化したり、低温のATFによる粘性抵抗で燃費が悪化したりする等の不具合が抑制される。
【0006】
又、請求項2の発明では、流量制御手段を、変速機の温度が低いときに冷却液の流量を減少させるように構成した。従って、例えば極低温での冷態始動時等のように、変速機が冷えて本来の動作が望めないときには、冷却液の流量が減少されて冷却作用が低められ、変速機が速やかに昇温される。
又、請求項3の発明では、モータと変速機とが隣接して設置されると共に、モータの周囲に冷却液通路が形成されたモータの冷却装置において、冷却液通路を流れる冷却液の流量を調整する流量調整手段と、モータの温度を検出するモータ温度検出手段と、変速機の温度を検出する変速機温度検出手段と、モータ温度検出手段により検出されたモータ温度が第1の閾値より高いとき、若しくは変速機温度検出手段により検出された変速機温度が第2の閾値より高いときに、流量調整手段により冷却液の流量を増加側に制御し、モータ温度が第1の閾値より低く、且つ変速機温度が第2の閾値より低いときには、流量調整手段により冷却液の流量を減少側に制御する流量制御手段とを備えた。
従って、モータ温度検出手段により検出されたモータ温度が第1の閾値より高いとき、若しくは変速機温度検出手段により検出された変速機温度が第2の閾値より高いとき、即ち、モータまたは変速機が冷却を要するときには、流量調整手段により冷却液の流量が増加側に制御されて冷却が図られる一方、モータ温度が第1の閾値より低く、且つ変速機温度が第2の閾値より低いとき、即ち、モータは冷却する必要がなく、変速機は冷えて本来の動作が望めない状態にあるときには、流量調整手段により冷却液の流量が減少側に制御されるため、変速機が作動に伴う自己発熱やモータ側からの熱伝達により速やかに昇温される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をパラレル式ハイブリッド車両に搭載されるモータの冷却装置に具体化した一実施形態を説明する。
図1の全体構成図に示すように、本実施形態のハイブリッド車両は、走行用の駆動源としてエンジン1及びモータ(モータ/ジェネレータ)2を備えたパラレル式ハイブリッド車両として構成されており、エンジン1の出力軸1aとモータ2の回転軸2aとはクラッチ3を介して相互に接続されている。モータ2のハウジングは変速機4のハウジングに対して一体的に設けられ、図示はしないが、モータ2の回転軸2aは変速機4の入力軸と接続されている。変速機4の出力軸4aはクラッチ5を介してディファレンシャルギア6に接続され、ディファレンシャルギア6はドライブシャフト7を介して左右の駆動輪(前輪)8に接続されている。
【0008】
前記モータ2のハウジングの外周には、図示しないステータを取巻くように冷却液通路としてのウォータジャケット9が形成され、このウォータジャケット9の上部及び下部は、上側管路10及び下側管路11を介してクーラ(熱冷却器)12に接続されている。ウォータジャケット9、管路10,11及びクーラ12の内部には冷却水が充填されており、下側管路11に設けられた電動式のポンプ13により、冷却水はクーラ12側から下側管路11を経てウォータジャケット9側に案内され、その後に上側管路10を経てクーラ12側に案内され、この循環を繰り返す。そして、冷却水はウォータジャケット9内においてモータ2の熱を奪い、その熱をクーラ12内において走行風等を利用して放熱し、これによりモータ2の冷却作用を奏すると共に、このときの冷却水はウォータジャケット9に隣接する変速機4からも熱を奪い、変速機4に対しても冷却作用を及ぼす。
【0009】
一方、車室内には入出力装置、記憶装置(ROM、RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えたECU(電子コントロールユニット)21が設置されている。ECU21の入力側には、前記モータ2のステータに内蔵された温度センサ22(モータ温度検出手段)、及び前記変速機4内に設置された温度センサ23(変速機温度検出手段)等のセンサ類が接続され、これらのセンサ類からの検出情報が入力される。尚、変速機4の温度センサ23は、変速制御に利用される油温を検出するための既存のものである。ECU21の出力側には前記ポンプ13が接続され、ECU21によりポンプ13の回転速度が制御される。本実施形態では、このECU21により流量制御手段が構成され、ポンプ13により流量調整手段が構成されている。
【0010】
次に、以上のように構成されたハイブリッド車両用のモータの冷却装置により実施される冷却処理について説明する。
ECU21は温度センサ22,23により検出されたモータ温度Tmot(ステータ温度)及び変速機温度Tt/m(ATFの油温)に基づき、下表に従ってポンプ13の回転速度を制御して、ウォータジャケット9とクーラ12との間で循環する冷却水の流量を高低2段階(増加・減少)に調整する。
【0011】
【表1】
Figure 0003882883
【0012】
この制御により、以下に説明するようにモータ2及び変速機4の温度Tmot,Tt/mの適正化が図られる。
まず、モータ温度Tmot及び変速機温度Tt/mが共に高い場合には(Tmot≧Tmot0(第1の設定値),Tt/m≧Tt/m0(第2の設定値))、冷却水の流量が増加側に制御される。これにより、モータ2に対する冷却作用が高められて過熱が防止されると共に、変速機4への冷却作用も高められて過熱が防止される。
【0013】
又、変速機温度Tt/mが低い場合であってもモータ温度Tmotが高いときには(Tmot≧Tmot0,Tt/m<Tt/m0)、冷却水の流量が増加側に制御される。つまり、この冷却装置はモータ2の冷却を主目的とすることから、この場合には変速機4側の温度低下による多少の不具合は容認して、モータ2の過熱防止が優先される。
【0014】
又、モータ温度Tmotが低い場合であっても変速機温度Tt/mが高いときには(Tmot<Tmot0,Tt/m≧Tt/m0)、冷却水の流量が増加側に制御される。つまり、上記のようにモータ2の冷却が主目的であるものの、変速機4側の過熱も好ましくないことから、この場合には変速機4側の過熱防止が優先される。但し、この場合に必ずしも流量を増加させる必要はなく、逆に減少側に制御してもよい。
【0015】
一方、モータ温度Tmot及び変速機温度Tt/mが共に低い場合(Tmot<Tmot0,Tt/m<Tt/m0)には、冷却水の流量が減少側に制御される。このような状況は、例えば極低温での冷態始動時等に発生し、モータ2は冷却する必要がない一方、変速機4は冷えて本来の動作が望めない状態にある。ここで、上記冷却水の流量減少により、モータ2と共に変速機4に対する冷却作用が低められることから、結果として変速機4は、作動に伴う自己発熱やモータ2側からの熱伝達により速やかに昇温される。
【0016】
よって、変速機温度Tt/mが低いときの変速機4の不具合、例えばバルブボディの切換動作やクラッチの係合動作が所期のタイミングで行われずにドライバビリティが悪化したり、低温のATFによる粘性抵抗で燃費が悪化したりする等の不具合が発生する期間を短縮化し、もって、変速機4を早期に本来の動作状態とすることができる。
【0017】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ハイブリッド車両に搭載されるモータ2の冷却装置に具体化したが、モータ2と変速機4とが一体化した構成であれば、車両の種類はこれに限定されず、例えば電気自動車用のモータの冷却装置に具体化してもよい。
【0018】
又、上記実施形態では、冷却水の流量を高低2段階に調整可能とし、モータ温度Tmot及び変速機温度Tt/mが共に低い場合に、冷却水の流量を減少させるようにしたが、これに限定されることはなく、例えばモータ温度Tmotや変速機温度Tt/mに応じて冷却水の流量を無段階で調整してもよいし、上記のように冷却水の流量を減少させる代わりに、その循環を完全に遮断してもよい。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1,2の発明のモータの冷却装置によれば、冷態始動時等に変速機に対する不適切な冷却を防止して、変速機を速やかに昇温させ、もって、低温時に発生する変速機の種々の不具合を早期に解消することができる。
請求項3の発明のモータの冷却装置によれば、変速機温度と共にモータ温度も冷却液の流量制御に反映させていることから、変速機のみならずモータの温度も適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態のハイブリッド車両に搭載されるモータの冷却装置を示す全体構成図である。
【符号の説明】
2 モータ
4 変速機
9 ウォータジャケット(冷却液通路)
13 ポンプ(流量調整手段)
21 ECU(流量制御手段)
22 温度センサ(モータ温度検出手段)
23 温度センサ(変速機温度検出手段)

Claims (3)

  1. モータと変速機とが隣接して設置されると共に、該モータの周囲に冷却液通路が形成され、該冷却液通路を流れる冷却液の流量を上記変速機の温度に応じて制御する流量制御手段を備えたことを特徴とするモータの冷却装置。
  2. 上記流量制御手段は、上記変速機の温度が低いときに上記冷却液の流量を減少させることを特徴とする請求項1に記載のモータの冷却装置。
  3. モータと変速機とが隣接して設置されると共に、該モータの周囲に冷却液通路が形成されたモータの冷却装置において、
    上記冷却液通路を流れる冷却液の流量を調整する流量調整手段と、
    上記モータの温度を検出するモータ温度検出手段と、
    上記変速機の温度を検出する変速機温度検出手段と、
    上記モータ温度検出手段により検出されたモータ温度が第1の閾値より高いとき、若しくは上記変速機温度検出手段により検出された変速機温度が第2の閾値より高いときに、上記流量調整手段により上記冷却液の流量を増加側に制御し、上記モータ温度が第1の閾値より低く、且つ上記変速機温度が第2の閾値より低いときには、上記流量調整手段により冷却液の流量を減少側に制御する流量制御手段と
    を備えたことを特徴とするモータの冷却装置。
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