JP3882860B2 - 注ぎ口付き脱酸素性容器及び液状又は半液状物質の充填方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、注ぎ口付き脱酸素性容器及び液状又は半液状物質の充填方法に関する。より詳しくは、酸素吸収樹脂層を備えた多層材からなる成型容器に注ぎ口を設けた注ぎ口付き脱酸素性容器、およびこの容器に酸素の影響を受け易い液状又は半液状物質を充填して良好に品質保持して保存することができる液状又は半液状物質の充填方法に関する。ここで、液状又は半液状物質とは、液体又はクリーム状、ペースト状、スラリー状などの半液体で流動性のある物質をいう。
【0002】
【従来の技術】
近年、液状又は半液状物質を充填する容器として、プラスチックフィルムやシートを成形したフレキシブルなプラスチック容器、例えば、ボトル、チューブ、袋等の様々な形態の容器が増えている。このようなプラスチック容器は、従来のガラス瓶や金属容器に比べて、生産コストがやすく、軽くて取扱い易く、また破損も少なく、特にフレキシブルな容器は、空容器が嵩張らず、内容物もほとんど残量がないように取り出すことができること等、利点が多い。
【0003】
通常、このようなプラスチック容器を利用する飲料、調味料、薬剤、化粧品、衛生用品等の液状又は半液状物質には酸素の影響を受けて品質劣化を起こし易いものが多い。ところがプラスチック容器はガスバリア性がかなり改良されているものの必ずしも万全でなく、酸素の影響を受け易いものの長期保存には適さず、完全なガスバリア性を要するものには、結局、金属やガラスの容器を用いざるを得なかった。また一般に、酸素の影響を受け易いものの品質保持に脱酸素剤が用いられ、固体物質の保存には脱酸素剤を包装容器に同封して系内の酸素を容易に除去することができる。しかしながら、通常の脱酸素剤は通気性小袋に充填したものであり、これを液状又は半液状物質に適用して液体に濡れると、単に脱酸素機能が低下するだけでなく、脱酸素剤成分の染み出しによる汚染という重大な問題が生じる。このために、通常の脱酸素剤は特別な使い方をしないかぎり液状または半液状物質には適用できない。
【0004】
例えば医療用輸液では、酸素透過性のプラスチック容器内に収納した輸液をさらにガスバリア性フィルムで外包装し、外包材と輸液を収納したプラスチック容器との間に脱酸素剤を挿入した形態をとる方法がある。また特開平5−319454には、2枚重ねのプラスチックフィルムで形成したバッグインボックス用の袋の2枚のフィルム間に脱酸素剤を配した液体用容器が提案されている。しかしいずれの方法も、脱酸素剤を隔離する樹脂層の酸素透過性が脱酸素剤による酸素吸収の律速となるために、酸素吸収が著しく遅いという問題がある。特に後者の場合、脱酸素剤が密着した2枚のフィルム間のごく一部に完全に閉じ込められてしまうために、脱酸素作用が袋全体になかなか及ばないという欠点がある。これら従来の脱酸素剤を使用する方法は、脱酸素性能に限界があり、対象物が限定されてしまう上、包装を二重に行わなければならず、煩雑でコストもかかり汎用的な技術とはいえない。
【0005】
脱酸素性材料を利用する技術としては、金属触媒を混合したプラスチックを用いてフィルム、シート等の包装材料やプラスチック容器自体に脱酸素機能を付与する技術が、特表平2−500846、特開平4−45152、特開平5−295171に提案されている。この技術はプラスチックの酸化分解を利用して酸素を吸収させるものであるが、これは材料のバリア性の向上に役立っても、脱酸素性能そのものは低い。また容器の液体へ適用には酸化分解の生成物の安全性や樹脂の分解による強度面の問題がある。
【0006】
また脱酸素剤を熱可塑性樹脂に配合した酸素吸収性樹脂を脱酸素性材料に用いる技術が開発されている。例えば、特公昭61−32348、特公昭62−1824には、脱酸素剤を配合した酸素吸収性樹脂組成物、この樹脂を多層化したプラスチックシートやフィルム、これらを成形した容器が知られている。酸素吸収性樹脂には鉄粉を主剤とする脱酸素剤が用いられることが多いが、酸素吸収性樹脂自体の脱酸素性能は低い。また特開平5−65176、特開平7−67594等には、酸素吸収性樹脂を備える多層プラスチック容器の改良が行われているが、これらの容器は脱酸素性能の点では、従来の脱酸素剤を用いた脱酸剤包装には到底及ばない。また特公平3−2751、特開平2−235621、特開平5−330567には、酸素吸収性樹脂の多層体を容器のキャップの内側に取り付けて液体容器に適用する例が知られる。しかし、これらの方法は、脱酸素性能の低いものをキャップという限られたスペースに設けたものであるために、その脱酸素効果には自ずから限界がある。例えば、脱酸素速度が遅いために、液中の溶解酸素に効果が及ぶ前に液体の劣化が始まってしまい、容器内の酸素を効果的に除去することができないという問題がある。
【0007】
このように従来技術では、酸素の影響をうけ品質劣化を来たし易い液状又は半液状物質を容器に充填し、容器内の酸素を効果的に吸収除去して品質を良好に保持することができる実用的なプラスチック容器、特に酸素吸収性樹脂を備えた多層プラスチック容器はないというのが実情であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、第一に、前記従来技術の脱酸素性能を備えたプラスチック容器の問題点を解決して、優れた脱酸素性能を有する多層材料で容器を構成するとともに、容器内容物の排出時に液状又は半液状物質が多層材料断面の酸素吸収性樹脂に接触して汚染されるることのない構造の容器とすることにより、脱酸素性能に優れかつ安全衛生性に問題のない容器を提供することを目的とする。
【0009】
通常、酸素吸収性樹脂層を備えた多層材料で構成される容器は内面に隔離膜として無孔樹脂層を備え、液状又は半液状物質の充填時や充填後容器内で内容物が酸素吸収性樹脂層に直接接触することはない。しかし、例えば、ブロー成形された多層ボトルの口部、積層材の袋や箱状容器の開封面等、容器物口部に容器部材の断面が露出していると、内容物の排出時に液状又は半液状物質が容器内面を伝って多層材料の断面を流れ、酸素吸収性樹脂の脱酸素剤組成物に触れ汚染が起こることが判明した。このような断面汚染の問題は、酸素吸収性樹脂層を備えた多層材料の容器を液状又は半液状物質に実際に使用して初めて経験される問題であり、いかに容器が脱酸素性能に優れようとも、汚染の恐れのある構造は非衛生的であり、実用性を失するので、是非解決されるべき問題である。
【0010】
第二に、上記構成の脱酸素性能を備えた容器に酸素の影響をうけ易い液状又は半液状物質を充填し、容器内の酸素を効率的に吸収して品質を良好に保持することができ、貯蔵、運搬を容易に可能とする、液状又は半液状物質の充填方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記従来技術の問題に鑑み鋭意研究した結果、酸素吸収性樹脂層に鉄粉主剤の粒状脱酸素剤組成物を配合し、脱酸素性能に優れた酸素吸収性樹脂層を備えた多層材料を用いて脱酸素性容器とし、この脱酸素性容器への液状又は半液状物質の充填方法を工夫することにより、きわめて効率的に容器内の酸素を吸収除去できることを見出した。また酸素吸収性樹脂層を備えた多層材料を用いて脱酸素性容器を形成するに際し、多層材料からなる容器本体に別材料の注ぎ口を設けることにより、多層材料の断面に内容物が触れることなく排出できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、20℃、100%RHにおける酸素透過係数が1.0cc・mm/m2・day ・atm 以下であるガスバリア層と熱可塑性樹脂中に脱酸素剤組成物を分散してなる酸素吸収樹脂層と酸素透過性樹脂層とを備えた多層材料を酸素透過性樹脂層を最内面にして成形した容器本体と注ぎ口とを備えてなる容器であり、注ぎ口の容器本体側の一端が容器本体の最内面に直接接着され液状又は半液状の内容物が多層材料の断面に接触することなく容器外に至る構造を有する注ぎ口付き脱酸素性容器に関する。
【0013】
また本発明は、上記注ぎ口付き脱酸素性容器において、酸素吸収樹脂層が鉄粉を主剤とする粒状脱酸素剤組成物を熱可塑性樹脂中に分散してなり、常温で酸素を吸収することができる樹脂組成物からなることを特徴とする容器である。
【0014】
また本発明の注ぎ口付き脱酸素性容器は、液状又は半液状物質を充填して密封する必要があり、注ぎ口が気密性を保持できる構造を有する容器である。注ぎ口の気密性の保持構造は特に限定されず、液状又は半液状物質を充填して気密性が保持できればよく、例えば、注ぎ口にシール可能なキャップを備えたもの、またプラスチックスの注ぎ口の開口端をそのままヒートシールして、内容物の排出に際しヒートシールした先端を切断または開封する構造のものであってもよい。
【0015】
また本発明の注ぎ口付き脱酸素性容器は、好ましくは袋状容器であり、具体的には、自立性を有する袋(スタンディングパウチ)、袋状容器をさらに剛性を有する箱に収容された形態の容器(バッグインボックス)、チューブ状容器などである。
【0016】
また本発明は、本発明の注ぎ口付き脱酸素性容器に液状または半液状物質を容器内の空間容積が充填容積の10%以下となるように充填し密封することを特徴とする充填方法を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の注ぎ口付き脱酸素性容器は、酸素吸収樹脂層を中間層とし、外層にガスバリア層を、内層に酸素透過性樹脂層を備えた多層材料をもって容器本体が形成され、この容器本体に密封可能な注ぎ口を設けた容器である。容器本体を形成する多層材料は脱酸素性能を有し、その層構成は、例えば、図1で示すことができる。注ぎ口付き脱酸素性容器は、具体的には、図2〜図6のごとき袋状容器が例示される。以下、注ぎ口付き脱酸素性容器を脱酸素性容器または容器と言うことがある。
【0018】
また本発明の方法においては、上記注ぎ口付き脱酸素性容器に液状又は半液状物質を容器内の空間容積が充填容積の10%以下でできるだけ少なくなるように充填し密封される。この充填方法によって、酸素の影響を受けて品質変化を起こし易い液状又は半液状物質は品質が良好に保持される。
【0019】
以下に本発明について詳しく説明する。
外層のガスバリア層は、20℃100%RHにおける酸素透過係数が1.0cc-mm/m2・ day ・ atm 以下でガスバリア性が必要である。ガスバリア層としては、アルミ箔、鉄箔等の金属箔、金属又は金属酸化物蒸着フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロンMXD6、塩化ビニリデン等のガスバリア性樹脂等が好適に用いられる。これらのガスバリア性材料は、用途、目的に応じ、適宜選択され、1種に限定することなく、多層にしてもよい。またガスバリア層の前後に他の樹脂層を設けても良い。
【0020】
中間層となる酸素吸収樹脂層は、熱可塑性樹脂中に脱酸素剤組成物を混練した樹脂組成物からなる。酸素吸収樹脂層は常温下でも確実に酸素を吸収除去できる性能を有し、内層を透過してくる容器内の酸素は無論のこと容器外から侵入する微量の酸素も除去できる必要がある。脱酸素剤組成物としては公知の脱酸素剤が使用できるが、特に酸素吸収能力および安全性の点から、鉄粉を主剤とする脱酸素剤組成物が好ましく、鉄粉とハロゲン化金属からなる組成物がより好ましい。特に鉄粉にハロゲン化金属を被覆して1粒子となった粒状組成物が好適に用いられる。ハロゲン化金属はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物が用いられ、ハロゲン化金属の配合量は、鉄粉100重量部当たり0.1〜10重量部が好ましい。
【0021】
粒状脱酸素剤組成物の粒径は平均10〜50μmが好ましい。その最大粒径も粒状脱酸素剤組成物の隣接層への突出の影響を考慮して制限される。特に隣接する酸素透過性樹脂層への突出は、脱酸素剤成分の溶出防止、加工性確保という酸素透過性樹脂層の設置意義を失するかりでなく、本発明の本来の目的を損なう恐れがあるために、粒状脱酸素剤組成物の最大粒径は酸素吸収樹脂層の厚みや加工法を慎重に考慮して選ぶ必要がある。
【0022】
酸素吸収層を形成する熱可塑性樹脂は、酸素透過性の大きい樹脂が好ましく、熱加工時に分解しにくい樹脂が用いられる。例えば、低密度、中密度、高密度の各種、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン各種共重合体、エチレン−αオレフィン各種共重合体等のポリオレフィン及びこれらの変性物が単独または混合で用いられる。粒状脱酸素剤組成物の配合量は、脱酸素性能と加工性を勘案して、熱可塑性樹脂100重量部当たり10〜120重量部の範囲で適宜選ばれる。酸素吸収層には脱酸素剤組成物以外にも保存性や加工性向上のためのアルカリ土類金属酸化物を加えることが好ましく、さらに臭気成分等のガス吸着剤、着色剤、フィラー等を加えることができる。
【0023】
酸素透過性樹脂層は酸素吸収層と隣接して容器の最内層を形成し、液状または半液状の内容物への酸素吸収層の脱酸素剤成分の溶出を防止する役割を果たす。特に酸素透過性樹脂層には、ヒートシール性等の加工性を確保しつつ、酸素吸収層との間の通気性を妨げないことが要求される。酸素透過性樹脂としては、酸素吸収層に用いられる前記の熱可塑性樹脂の他、これらの樹脂に、シール性やピール性を調整するためにエチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、アイオノマー等の樹脂を添加、あるいは多層化することができる。また酸素透過性樹脂層には、酸素吸収層と同様に各種添加剤を分散しても良いが、添加剤の溶出するものや異臭を伴うものは避けることが好ましい。
【0024】
上記のガスバリア層/酸素吸収樹脂層/酸素透過性樹脂層を備える多層材は、公知の各種成形加工技術を組み合わせ、例えば、次のような方法で、多層化して、多層フィルム又はシート(以下単に多層フィルムと呼ぶ)とすることができる。
【0025】
1)複数の押出し機と多層Tダイ設備を用い、酸素透過性樹脂層、酸素吸収樹脂層、ガスバリア性樹脂層を共押出しして多層フィルムが製造される。この場合、必要に応じ更に接着剤層、耐熱層等を加えて、多層共押出ししてもよい。また共押出しは必ずしも全層共押出しの必要はなく、一部を除いて共押出しした後、残余の層をラミネートする方法をとってもよい。
【0026】
2)複数の押出し機と多層サーキュラーダイを用い、共押出しによりチューブ状多層フィルムが製造される。
【0027】
3)フィルムラミネート設備を用い、押出しコーティング、ドライラミネート、押出しラミネート等の方法により、3層のうちフィルム化した層に他の層を形成することによって多層フィルムが製造される。
【0028】
前記多層材料で構成される脱酸素性容器は、例えば、袋状容器やボトル等のプラスチック成形容器であり、本発明の目的を達成するものであれば容器の形状は必ずしも制限されない。好ましくは、本発明の脱酸素性容器は袋状容器であり、例えば、4方シール袋、箱形に整形したガセット袋、底部材を有する自立型袋(スタンディングパウチ)、チューブ状容器などの袋状容器である。袋状容器は前記の多層フィルムをもって製袋することができ、また袋の一部に透明なガスバリア性フィルムを用いて袋内部の透視可能なものとすることができ、必ずしも袋全体に酸素吸収層を含む必要はない。また多層材料の各層は、完全に積層接着していなくてもよく、製袋した時点で所定の層構成を有する多層構造になっていればよい。
【0029】
本発明の脱酸素性容器は、前記袋状容器等の容器本体に内容物が多層材料の断面に接触することなく容器外に排出することができるように注ぎ口が設けられる。注ぎ口は、多層フィルムの最内面(酸素透過性樹脂層)に接着して設けることができるものであれば形状や材質に特に制限はない。注ぎ口の材質として、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の各種熱可塑性樹脂、アルミニウム、錫等の金属が挙げられるが、加工性、コスト等の面から、熱可塑性樹脂が好ましい。特に成形加工、多層フィルムの内層との接着、注ぎ口先端の密閉等、樹脂加工性の点から、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類が好適に使用される。なお、注ぎ口を構成する樹脂は、ガスバリア性樹脂が望ましいが、本発明では必ずしも酸素透過性の特に小さい樹脂を選択する必要はなく、注ぎ口の部材がポリオレフィン類であっても、注ぎ口は剛性を持たせるために厚みが厚く注ぎ口部の酸素透過量は少なく、容器本体の脱酸素能力で十分除去が可能である。また注ぎ口と容器本体との接着はヒートシール、超音波シール、高周波シール等の溶融シール法が好ましい。
【0030】
注ぎ口の取付の形態としては、例えば、図2、図3および図4の3態が挙げられる。図2:パイプ状の注ぎ口を袋状容器端部のシール部分に挟み込み接着する方法。図3:袋状容器の胴部の穴に鍔の付いた注ぎ口を取付けて鍔と袋のフィルムとをリング状にシールする方法。図4:筒状の袋端部に注ぎ口を挿入してシールする方法。
【0031】
脱酸素性容器の注ぎ口は、内容物を充填した後開封するまで酸素の漏れ込むことのないように密封する必要がある。注ぎ口の密閉は、単に液漏れを防ぐだけでなく、気体に対し完全な気密性が得られるものでなければならない。注ぎ口の密閉シール部は、容器内の酸素吸収による圧力減少(約−0.2atm)に耐える気密性をもつものが好ましく、フィルム袋の変形により圧力減少を吸収することができる場合はこの限りではない。注ぎ口の好ましい密閉形態として、次のような形態を挙げることができる。
【0032】
1)図2のごとく先端を溶封した注ぎ口。容器の成形時に注ぎ口の先端は開いていても閉じていてもよい。注ぎ口先端の開いた容器は内容物の充填後に溶封される。内容物は必ずしも注ぎ口から充填する必要はなく、注ぎ口先端を閉じた容器の場合は、例えば、袋の他端を開放しておき、ここから充填してシールするなどの方法をとることができる。内容物は、先端部を切断またはねじ切り開封することにより、注ぎ口から排出される。
【0033】
2)図3のごとく、注ぎ口先端にアルミ箔等を積層したガスバリア性フィルムを張り合わせてシールし、必要に応じて、保護キャップを組み合わせる。内容物の排出時は、ガスバリア性フィルムをはがして開封する。保護キャップは、一旦開封した後再封緘に使用して液体が漏れ出ないものがよい。
【0034】
3)図4のごとく、キャップによる密閉構造を備えた注ぎ口。密封には、ガスバリア性パッキングまたは塩化ビニル系、ゴム系シーリング材等の密封材を備えるキャップを用い、内容物の排出時は、キャップをとって開封する。
【0035】
4)注ぎ口先端が予め塞がれ、プルオープンタブのような易開封加工を施した注ぎ口を用いる。
【0036】
本発明においては、本発明の脱酸素性容器に液状又は半液状物質を容器内空間容積が充填容積の10%以下でできるだけ少なくなるように充填して密封する必要がある。容器内の空間容積をできるだけ少なくすることは、単に容器内の酸素量を減らす効果だけでなく、容器本体の酸素吸収層が脱酸素能を発揮して効率的に酸素を除去する上できわめて重要である。従来は容器内の空間部(ヘッドスペース)に脱酸素剤を配して空間部の酸素を吸収させる方法が一般的であり、液体に溶解した酸素もヘッドスペースを介して吸収させていた。ところが驚くべきことに本発明の脱酸素性容器の場合、液状又は半液状物質に接する容器本体の壁内面から溶存酸素を直接吸収するために、容器内空間があると溶解酸素が空間部に平衡拡散して再び液相を介して壁面から吸収するすることにもなり、空間部が大きいことは逆に酸素吸収に不利に作用するからである。
【0037】
本発明の脱酸素性容器は、液状又は半液状物質として、例えば、ジュース、酒、コーヒー、茶、ゼリー飲料、健康飲料等の飲料、調味液、ソース、醤油、ドレッシング、液体だし、マヨネーズ、味噌、すりおろし香辛料等の調味料、クリーム、餡、チョコレートペースト等の菓子材料、工業薬品や殺虫、殺菌剤等の薬剤、液体又は半液体の医薬品、液体又は半液体の化学品、化粧水、化粧クリーム、化粧乳液等の化粧品、洗剤、床用ワックス、シャンプー、水歯磨き、練り歯磨き等の衛生用品等の液体又は半液体の商品の包装容器に適する。
【0038】
【実施例】
以下に実施例に即し本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1
押し出しラミネーターを用い、延伸ポリプロピレンフィルム(25μm)の片面に、MI(メルトインデックス)12のポリプロピレン、塩化カルシウム2重量部をコーティングした鉄粉(平均粒径25μm、最大粒径45μm)、酸化カルシウム(平均粒径20μm、最大粒径60μm)および粉末活性炭(粒径30μ以下)を、それぞれ、50:46:2:2(重量%)の割合で混合した樹脂組成物と、白色酸化チタン顔料を10重量%含有するポリプロピレン(MI;10)とをこの順に押し出してラミネータトした。次に得られたフィルムの延伸ポリプロピレンフィルム側に、裏印刷を施したポリエステルフィルムをラミネートしたアルミ箔をドライラミネートして、多層フィルムを準備した。多層フィルムは、裏印刷ポリエステル(12μm)/アルミ箔(12μm)/ポりプロピレン(25μm)/粒状脱酸素剤組成物含有ポリプロピレン(60μm)/酸化チタン含有ポリプロピレン(50μm)の層構成を有する。
【0039】
上記の多層フィルムの裏印刷ポリエステルフィルム側が外面になるようにして、図5に示す注ぎ口付き袋(スタンディングパウチ)を作製した。まず多層フィルムから側面用フィルム(150mm×90mm)2枚、底面用フィルム(55mm×90mm)1枚を切り出した。得られた底面用フィルムを2つ折りにして両端を一部切り欠き、2枚の側面用フィルムの間に挟んで両者をヒートシールして接合することによって、上部が開口した袋(縦150mm×横90mm、底面幅55mm)を得た。得られた袋の開口部の内面に射出成形したポリプロピレン製注ぎ口の木の葉型フランジの側面をヒートシールすることによって、袋に注ぎ口を接合して注ぎ口付き袋を作製した。図5の注ぎ口のシールはバリアフィルムを貼り合わせヒートシールすることによって行われる。
【0040】
3個の注ぎ口付き袋(スタンディングパウチ)に注ぎ口からかぼちゃペースト100ccを、それぞれ、注入した後、袋内部の空間容積を次のごとく変え、注ぎ口にポリエステル/アルミ箔/易剥離性シーラントの構成のバリアフィルムをヒートシールして密封した。3個の袋の内部空間容積は、それぞれ、1ml以下、5mlおよび10mlとした。
【0041】
上記のかぼちゃペーストを充填密封した3個の袋を常温で1ヶ月間貯蔵した。1ヶ月後に袋の注ぎ口をシールしたバリアフィルムを手で剥がして内容物のかぼちゃペーストを袋から絞り出し、かぼちゃペーストの色調、風味を調べた。かぼちゃペーストの色調、風味は、何れも良好であり、空間容積を少なくしたもの程品質が良好に保持される傾向にあった。なお、容器内空間容積5ml、10mlとした2個の袋について、開封前にガスクロマトグラフィーにより袋内の酸素濃度を分析したところ、何れも酸素濃度0.1%以下であった。
【0042】
比較例1
実施例1の注ぎ口付き袋を用い、容器内空間容積を30mlおよび50mlとしてかぼちゃペーストを密封したこと以外は実施例1と同様にして、かぼちゃペーストの保存試験を行った。1ヶ月間の保存試験の結果、内部空間容積30mlおよび50mlとしたかぼちゃペーストはどちらも、色調が薄れ、風味の低下も認められた。なお、開封直前の袋内部の空間の酸素濃度は、どちらも0.1%以下であった。
【0043】
実施例2
2種2層共押し出しフィルム製造装置を用いて、ポリエチレン(MI;10)、塩化カルシウム2重量部をコーティングした鉄粉(平均粒径25μm、最大粒径45μm)および酸化カルシウム(平均粒径20μm、最大粒径60μm)を、58:40:2の重量比で混合した樹脂組成物(酸素吸収層)と、ポリエチレン(MI;8)とを共押し出しして、酸素吸収層(50μm)/ポリエチレン(40μm)の2層フィルムAを得た。このフィルムA、ナイロン6/ナイロンMXD6/ナイロン6/ポリエチレンからなるガスバリア性フィルムB(55μm)、およびポリエチレンフィルムC(30μm)の3種のフィルムを、それぞれ、50cm×60cmの大きさに切断した。50cm×60cmの大きさのフィルムA、BおよびCの3枚を、フィルムAとフィルムBとをポリエチレン側同志を重ね合わせ、さらにフィルムAの酸素吸収層側にフィルムCを重ね合わせ、B/A/Cの重ね合わせフィルムを2組準備した。またプラスチックを成形した直径80mmの鍔を有するねじ付き注ぎ口(外径40mm)を準備した。
【0044】
準備した2組の重ね合わせフィルムおよび鍔を有するねじ付き注ぎ口を用いて注ぎ口付き4方シール袋を作製した。まず1組の重ね合わせフィルムのほぼ中央部に直径60mmの穴を開け、その穴にねじ付き注ぎ口を鍔の上面がフィルムCに接するように通した後、中央部の穴を通した注ぎ口を中心にして外径75mm×内径70mm、幅5mmのリング状に超音波によりシールし、B/A/C/鍔上面を接着させた。次に、注ぎ口を接着した重ね合わせフィルムともう1組の重ね合わせフィルムとをC同士が接するように重ね、周縁の4辺を両面からヒートシールして、注ぎ口付き4方シール袋(片側B/A/C3枚重ね)を得た。
【0045】
上記の注ぎ口付き4方シール袋に注ぎ口から業務用濃縮スープ18リットルを充填し袋内の空間容積が0.4リットルとなるようにして、注ぎ口を塩化ビニル系シーリング剤を備えた金属キャップで密封した。濃縮スープを充填密封した袋を常温で2ヶ月間貯蔵した後、開栓して濃縮スープの外観及び風味を調べた。2ヶ月間保存した濃縮スープの外観及び風味は極めて良好であった。なお、濃縮スープを密封した袋内の空間内酸素濃度は、貯蔵1週間後に0.1%以下であり、また、2ヶ月後の開栓直前も0.1%以下であった。
【0046】
比較例2
実施例2の注ぎ口付き4方シール袋においてフィルムAは使用せず、片側フィルムB/フィルムC2枚重ねの注ぎ口付き4方シール袋を作製し、この注ぎ口付き4方シール袋に、実施例2と同様に、業務用濃縮スープを充填密封して2ヶ月間貯蔵した。2ヶ月間貯蔵した濃縮スープにはよどみが認められ、嗅ぐと酸化臭がした。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、酸素の影響をうけ品質劣化を起こし易く、完全ガスバリア性容器として金属缶やガラス瓶を用いざるを得なかった液体又は半液体の商品に本発明の容器が使用でき、フレキシブルなプラスチック容器がもつ多くの利点が享受できる。しかも、単にハイガスバリア性と言うだけでなく、従来の脱酸素性容器では考えられなかったレベルで積極的に容器内の酸素除去が可能であり、内容物の品質を長期間良好に保持することができる。さらに液状または半液状の内容物を排出する際に問題となる、脱酸素性容器本体の断面との接触が回避され、実質的に安全衛生に優れた保存方法が提供できる。この結果、本発明の注ぎ口付き脱酸素性容器を利用することにより、液体又は半液体の商品の長期間貯蔵が可能となり、より広範囲の地域により多くの良質な商品を経済的に供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 多層材料の断面図
【図2】 図2は注ぎ口付き脱酸素性容器の一態様(スタンディングパウチ)を示し、それぞれ、図2−1は容器の平面図を、図2−2は容器の断面図を示す。
【図3】 注ぎ口付き脱酸素性容器の別態様の断面図
【図4】 注ぎ口付き脱酸素性容器の別態様(チューブ状容器)の断面図
【図5】 注ぎ口付き脱酸素性容器の別態様(スタンディングパウチ)を示し、それぞれ、図5−1は容器の注ぎ口部の平面図を、図5−2は容器の断面図を示す。
【図6】 注ぎ口付き脱酸素性容器の別態様(バッグインボックス)の断面図
【符号の説明】
10 多層材料
11 ガスバリア層(外層)
12 接着層
13 酸素吸収樹脂層(中間層)
14 酸素透過性樹脂層(内層)
1 多層材料からなる容器本体
2 注ぎ口
2A 先端が閉鎖された注ぎ口
3 鍔部
4 密閉材;アルミ箔積層フィルム
5 密閉材を備えたキャップ
5A 保護キャップ
6 剛性を有する箱
Claims (3)
- 20℃、100%RHにおける酸素透過係数が1.0cc・mm/m2・day ・atm以下であるガスバリア層と、熱可塑性樹脂中に脱酸素剤組成物を分散してなる酸素吸収樹脂層と、酸素透過性樹脂層とを備えた多層材料を、酸素透過性樹脂層を最内面にして成形した容器本体に注ぎ口を備えてなる容器において、該注ぎ口の容器本体側の一端が該容器本体の最内面に直接接着されて液状又は半液状の内容物が多層材料の断面に接触することなく容器外に至る構造を有し、かつ、自立性を有する袋状容器であって、該容器に液状又は半液状物質を容器内空間容積が充填容積の10%以下となるように充填し密封することを特徴とする充填方法。
- 酸素吸収樹脂層が鉄粉を主剤とする粒状脱酸素剤組成物を熱可塑性樹脂中に分散してなり常温で酸素を吸収することができる樹脂組成物からなる請求項1記載の充填方法。
- 注ぎ口が気密性を保持できる構造を有する請求項1又は請求項2に記載の充填方法。
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