JP3880262B2 - 水不溶化再生コラーゲン繊維の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水不溶化再生コラーゲン繊維の製造方法に係り、より具体的には、コラーゲン本来の淡い色あいおよび結節強度を保持し、しかもコラーゲンの化学修飾可能なカルボキシル基を修飾することなくそのまま保持する水不溶化再生コラーゲン繊維を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
再生コラーゲン繊維は、蛋白繊維の中では絹と同様に高強度を発現することから、従来から様々な分野に応用されている。特に、再生コラーゲン繊維は、コラーゲン由来の特徴的な分子構造を保持した蛋白繊維であることから、天然の蛋白繊維でありきわめて複雑な微細構造を有している人毛と風合い・光沢・触感が近似している。そのため、頭髪や、毛皮用などの獣毛調繊維に用いる試みがなされている。
【0003】
再生コラーゲン繊維は、一般に動物の皮や骨を原料としており、これら原料をアルカリまたは酵素で処理して水に可溶なコラーゲンを得、これを無機塩水溶液中に押し出し紡糸して製造することができる。こうして得られる再生コラーゲン繊維はそのままでは水に溶解するため、耐水性を付与するために何らかの処理が施される。再生コラーゲン繊維を水不溶化する方法としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド化合物で処理する方法や、各種クロム塩、アルミニウム塩、ジルコニウム塩のような金属塩で処理する方法などが知られている。このうち、ホルムアルデヒド以外のアルデヒド化合物やクロム塩を用いた場合、得られた繊維に着色が生じ、白髪、金髪や各種色髪への展開に制限が生じる。また、ホルムアルデヒドを用いる場合、着色のない繊維は得られるが、美容特性上、満足できるものではなかった。
【0004】
近年、特開平4−352804号公報に、再生コラーゲンの無着色処理方法としてエポキシ化合物を用いた方法が提案されている。このうち、特に好ましいとされている多価アルコールのグリシジルエーテルを用いた場合、無着色で処理できるものの、結節強度の低下を起こし、植毛やミシン掛けなどの頭飾品製造工程上での問題が発生する傾向があった。また、前記金属塩で処理する方法の中には無着色処理できる方法があるものの、金属塩がコラーゲン中の反応性基であるカルボキシル基を封鎖してしまうために、コラーゲン中のカルボキシル基をさらに化学修飾してパーマネントウェーブなどの新たな機能を付与することができなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、コラーゲン本来の淡い色あいおよび結節強度を保持し得、しかもコラーゲンの化学修飾可能なカルボキシル基を修飾することなくそのまま保持し得る水不溶化再生コラーゲン繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、再生コラーゲン繊維を単官能エポキシ化合物(唯一つのエポキシ基を有する化合物)で処理することで、コラーゲン本来の淡色色調および高結節強度を保持したまま水不溶化再生コラーゲン繊維を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。特に、単官能エポキシ化合物としてエピハロヒドリンを用いた場合は、このエピハロヒドリンと硫黄化合物とで再生コラーゲンを処理することにより、パーマネントウェーブ処理を可能にすることができる水不溶化再生コラーゲン繊維を得ることができる。(ここで述べるパーマネントウェーブ処理とは、美容院や家庭などで薬剤による酸化還元反応によって毛髪に保持性のある任意の形状を付与することである。)
また、本発明による再生コラーゲン繊維の単官能エポキシ化合物による処理では、コラーゲンのカルボキシル基が修飾されずにそのまま保持されるので、このカルボキシル基に化学修飾を行い各種特性を付与することができる。この場合、化学修飾剤としてジスルフィド結合を有するジアミン化合物を用いることにより、パーマネントウェーブ処理可能な、淡色の水不溶化再生コラーゲン繊維を得ることができる。
【0007】
すなわち、本発明は、再生コラーゲン繊維を単官能エポキシ化合物を含む水不溶化剤で処理することを包含する水不溶化再生コラーゲン繊維の製造方法を提供する。
【0008】
本発明の好ましい態様において、単官能エポキシ化合物は、下記一般式(I):
【0009】
【化2】
【0010】
(式(I)において、Rは、R1−、R2−O−CH2−またはR2−COO−CH2−で表される置換基を示し、R1は炭素数2以上の炭化水素基またはCH2Cl、R2は炭素数4以上の炭化水素基を示す。)で表される。
【0011】
また、本発明は、エピハロヒドリンを含む水不溶化剤および硫黄化合物で処理することを包含する水不溶化再生コラーゲン繊維の製造方法を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、上記いずれかの方法で得られた水不溶化再生コラーゲンを下記一般式(II):
H2N(CH2)nSS(CH2)nNH2 (II)
(式(II)において、nは1〜4の整数を示す。)で表されるジスルフィド結合を有するジアミンもしくはその塩、および下記一般式(III):
H2NCH(OOR1)CH2SSCH2CH(OOR2)NH2 (III)
(式(III)において、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基またはベンジル基を示す。)で表されるジスルフィド結合を有するジアミンからなる群の中から選ばれた少なくとも1種のジアミン化合物と縮合剤の存在下にアミド化反応させることを包含する不溶化再生コラーゲン繊維の製造方法を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の再生コラーゲン繊維の原料としては、従来から使用されている動物の皮や骨を用いることができるが、床皮を用いるのが好ましい。床皮は、例えば牛などの動物の新鮮な生皮や塩漬けした生皮より得られる。こうした生皮から剥ぎ取られた床皮は、若干の肉質部分が網状に付着していたり、塩漬けの場合には塩分が残存していたりするため、これらを除去したのちに用いられる。この状態の床皮には、不溶性コラーゲンの他に、未だ、グリセライド、リン脂質、遊離脂肪酸などの脂質、糖タンパク質、アルブミンなどのコラーゲン以外のタンパク質など、不純物が存在している。これらの不純物は、繊維化するにあたっての紡糸安定性、繊維化したときの光沢や強伸度などの品質、臭気などに多大な影響を及ぼすため、例えば石灰漬にして脂肪分を加水分解し、コラーゲンを解きほぐしたのち、酸・アルカリ処理、酵素処理、溶媒処理などのように従来より一般に行われている皮革処理を施し、あらかじめこれらの不純物を除去しておくことが望ましい。
【0014】
次に不溶性コラーゲンの架橋しているペプチド部を切断するために可溶化処理が施される。かかる可溶化処理の方法としては公知の一般に採用されているアルカリ可溶化法や酵素可溶化法などを適用することができる。
【0015】
アルカリ可溶化法を適用した場合には、可溶化(再生)コラーゲンを例えば塩酸などの酸で中和することが望ましい。なお、従来より知られているアルカリ可溶化法の改善された方法として、特公昭46−15033号公報に記載された方法を採用してもよい。
【0016】
酵素可溶化法は、分子量が均一な再生コラーゲンを得ることができるという利点を有するものであり、本発明において好適に採用しうる方法である。かかる酵素可溶化法としては、例えば特公昭43−25829号公報や特公昭43−27513号公報などに記載された方法を採用することができる。本発明においては、前記アルカリ可溶化法および酵素可溶化法を併用してもよい。
【0017】
こうして可溶化処理を施したコラーゲンに、pHの調整、塩析、水洗や溶媒処理などの操作をさらに施した場合には、品質などに優れた再生コラーゲン繊維を得ることができるので、これらの処理を施すことが好ましい。
【0018】
次に、得られた可溶化コラーゲンは、例えば1〜15重量%、なかんずく2〜10重量%程度の所定濃度の原液を提供するように、塩酸、酢酸、乳酸などでpH2〜4.5に調整した酸性水溶液に溶解される。得られたコラーゲン水溶液には必要に応じて減圧攪拌下で脱泡を施したり、水不溶分である細かいごみを除去するために濾過をおこなってもよい。
【0019】
前記のようにして得られた可溶化コラーゲン水溶液には、さらに必要に応じて例えば機械的強度の向上、耐水・耐熱性の向上、光沢性の改良、紡糸性の改良、着色の防止、防腐などを目的として安定剤、水溶性高分子化合物などの添加剤が適量配合されてもよい。
【0020】
次に、可溶化コラーゲン水溶液を、例えば紡糸ノズルやスリットを通して吐出し、無機塩水溶液からなる凝固浴に浸漬することにより再生コラーゲン繊維が形成される。無機塩水溶液としては、例えば硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウムなどの水溶性無機塩の水溶液が用いられ、通常、該無機塩の濃度は10〜40重量%に調整される。
【0021】
前記無機塩水溶液のpHは、例えばホウ酸ナトリウムや酢酸ナトリウムなどの金属塩や塩酸、酢酸、水酸化ナトリウムなどを配合することにより、通常2〜13、好ましくは4〜12となるように調整されるのが望ましい。かかるpHは2未満である場合および13を越える場合、コラーゲンのペプチド結合が加水分解を受けやすくなり、目的とする繊維が得られにくくなる傾向がある。また無機塩水溶液の温度は特に限定しないが、通常35℃以下であることが望ましい。かかる温度が35℃より高い場合、可溶性コラーゲンが変性したり、紡糸した繊維の強度が低下し、安定した糸の製造が困難となる。無機塩水溶液の温度の下限は特に限定はなく、通常無機塩の溶解度に応じて適宜調整されればよい。しかしながら、通常、この温度は、15℃以上である。
【0022】
こうして得られた再生コラーゲン繊維には、必要により、高濃度の塩の水溶液、水溶性アルコール類等の有機溶媒やその水溶液等の処理剤でで処理しあるいはそれら処理剤中に保存することもできる。有機溶媒や水溶液でまたはその中で処理し保存した後、再生コラーゲン繊維を乾燥してもよい。また、乾燥後に他の有機溶媒や有機溶媒の水溶液のような処理剤で処理したり、その処理剤中に保存することもできる。
【0023】
本発明においては、以上のようにして得ることができる再生コラーゲン繊維を、単官能エポキシ化合物で処理して水不溶化再生コラーゲン繊維を製造する。本発明に用いられる単官能エポキシ化合物の具体例としては、例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、酸化イソブチレン、酸化オクテン、酸化スチレン、酸化メチルスチレン、エピブロモヒドリンやエピクロロヒドリンのようなエピハロヒドリン、グリシドールなどのオレフィン酸化物類、グリシジルメチルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、ノニルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、ペンタデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、ポリエチレンオキシドグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類、蟻酸グリシジルエステル、酢酸グリシジルエステル、アクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、安息香酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル類、グリシジルアミド類などが挙げられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。
【0024】
また、本発明において、上記単官能エポキシ化合物のうち、下記一般式(I)で表される単官能エポキシ化合物を用いて処理した場合、再生コラーゲン繊維の吸水率が低下し、湿潤時の触感が改善される傾向にあり、好ましい。
【0025】
【化3】
【0026】
(式(I)において、Rは、R1−、R2−O−CH2−またはR2−COO−CH2−で表される置換基を示し、R1は炭素数2以上の炭化水素基またはCH2Cl、R2は炭素数4以上の炭化水素基を示す。)R1で示される炭化水素基は、通常、50個以下の炭素原子を有し、R2で示される炭化水素基は、通常、50個以下の炭素原子を有する。
【0027】
さらに、式(I)中のRが炭素数2以上6以下の炭化水素基またはCH2Clである単官能エポキシ化合物、およびRがR2−O−CH2−またはR2−COO−CH2−であってかつR2が炭素数4以上6以下の炭化水素基である単官能エポキシ化合物を用いた場合、反応性が高く、より短時間での処理が可能になることや、水中での処理が比較的容易になることなどから、それら単官能エポキシ化合物は特に好ましく用いられる。
【0028】
使用する単官能エポキシ化合物の量は、再生コラーゲン繊維中のアミノ基の1当量当り0.1〜500当量、好ましくは0.5〜100当量、更に好ましくは1〜50当量である。単官能エポキシ化合物の量が0.1当量未満の場合、再生コラーゲン繊維の水に対する不溶化効果が十分でなく、逆に単官能エポキシ化合物の量が500当量を超える場合、不溶化効果は満足しうるものの、工業的な取扱い性や環境面で好ましくない傾向にある。
【0029】
単官能エポキシ化合物はそのままあるいは各種溶媒に溶解して用いることができる。溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類:ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン系有機溶媒:DMF,DMSOなどの中性有機溶媒等が挙げられ、これらの混合溶媒を用いてもよい。溶媒として水を用いる場合、必要に応じて硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウムなどの無機塩の水溶液を用いてもよく、通常これらの無機塩の濃度は10〜40重量%に調整される。また、水溶液のpHを、例えば、ホウ酸ナトリウムや酢酸ナトリウムなどの金属塩や塩酸、ホウ酸、酢酸、水酸化ナトリウムなどを配合することにより、調整してもよい。この場合、好ましいpHは6〜13、さらに好ましくはpH8〜12である。pHが6未満の場合は単官能エポキシ化合物のエポキシ基とコラーゲンのアミノ基との反応が遅くなり、水に対する不溶化が不十分となり得る。pHが13を越える場合も同様の傾向があるとともに、コラーゲンのペプチド結合が加水分解を受けやすくなり、目的とする繊維が得られにくい。また、かかるpHは時間とともに低下していく傾向にあるため、必要により緩衝剤を使用してもよい。
【0030】
再生コラーゲン繊維は、上記単官能エポキシ化合物またはその溶液からなる本発明の水不溶化剤に浸漬することによって処理することができる。処理温度は50℃以下であることが好ましい。処理温度が50℃を越える場合は、再生コラーゲン繊維が変性したり、得られる繊維の強度が低下し、安定的な糸の製造が困難になり得る。通常、処理温度は、15℃以上である。
【0031】
また、再生コラーゲン繊維と単官能エポキシ化合物を反応させる際に、触媒や反応助剤など、各種添加剤を共存させてもよい。例えば、触媒としてはアミン類やイミダゾール類などが挙げられる。具体的には、アミン類としてはトリエチルジアミン、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、N,N´−ジメチルピペラジン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの第3級アミン類;ピペラジン、モルフォリンなどの第2級アミン類;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩などが挙げられ、イミダゾール類としては2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−イソプロピルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。さらに、反応助剤としては、サリチル酸またはサリチル酸金属塩;チオシアン酸、チオシアン酸アンモニウムなどのチオシアン酸塩類;テトラメチルチウラムジサルファイド;チオユリア等が挙げられる。これら触媒は、単官能エポキシ化合物1当量に対して、1/100ないし1当量の割合で用い、反応助剤は触媒1当量に対して1/20ないし1当量の割合で用いるることが好ましい。
【0032】
単官能エポキシ化合物は、再生コラーゲン繊維のカルボキシル基よりもそのアミノ基に対して優先的に反応してアミド結合を形成し、再生コラーゲン繊維のカルボキシル基をほとんど修飾せず、そのまま残存させる。
【0033】
ところで、本発明の水不溶化剤が上記単官能エポキシ化合物のうちエピハロヒドリンである場合、再生コラーゲン繊維をこのエピハロヒドリンと硫黄化合物とで処理することにより、パーマネントウェーブ処理が可能な水不溶化再生コラーゲン繊維を得ことができる。エピハロヒドリンとしては、エピクロロヒドリンが好ましい。エピクロロヒドリンは、クロロメチルオキシラン、1−クロロ−2,3−エポキシプロパンとも呼ばれているが、いずれも同一の化合物のことを指している。
【0034】
上記エピハロヒドリンと硫黄化合物を用いた再生コラーゲン繊維の処理において、エピハロヒドリンがコラーゲン分子のアミノ基と硫黄化合物に反応することにより、再生コラーゲンにメルカプト基が導入できると考えられている(場合によってはBunte塩(−SSO3−を有する塩)を経由する場合もある)。すなわち、この方法を用いると、再生コラーゲン繊維のアミノ基にエピハロヒドリンを介してメルカプト基の導入が可能となり、パーマネントウェーブ処理が可能な淡色繊維にすることができる。この方法は、再生コラーゲン繊維をエピハロヒドリン中で浸漬処理した後、硫黄化合物中で浸漬処理することによって、あるいは再生コラーゲンをエピハロヒドリンと硫黄化合物とを含有する処理剤に浸漬することによって行うことができる。また、エピハロヒドリンと硫黄化合物を先に反応させ、その反応溶液中に再生コラーゲン繊維を浸漬することもできる。硫黄化合物中の浸漬処理の条件は、50℃以下、5分以上が好ましい。また、エピハロヒドリンと硫黄化合物を反応させた溶液中の処理条件も、50℃以下、5分以上が好ましい。これらの浸漬処理は、通常、0℃以上の温度で行われる。
【0035】
硫黄化合物としては、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化アンモニウムなどの水硫化物;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウムなどのチオ硫酸塩;システアミン、システインなどのメルカプト基を有するアミン類;シスタミン、シスチン、シスチンメチルエステル,シスチンエチルエステル,シスチンプロピルエステル,シスチンブチルエステル,シスチンベンジルエステルなどのジスルフィド結合を有するアミン類などが挙げられる。中でも、チオ硫酸塩が好ましい。また、本発明に使用される硫黄化合物としては、下記式(II)で示されるジアミンもしくはその塩および/または下記式(III)で表されるジアミンを用いることもできる。
【0036】
かかる硫黄化合物は、エピハロヒドリン1当量に対して、1/500以上の割合で用いることができ、好ましくは0.5ないし2当量の割合で使用される。
【0037】
さらに、本発明においては、必要により、再生コラーゲン繊維に水洗、オイリング、乾燥を施す。乾燥することにより繊維構造を強化し、触感・吸水性・こし等を改善できる場合がある。乾燥は好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下で行う。100℃を超える温度ではコラーゲンが変性してしまう恐れがあり、所期の効果を十分に得られにくい傾向にある。
【0038】
水洗を施すのは、塩による油剤の析出を防止したり、乾燥機内で乾燥時に再生コラーゲン繊維から塩が析出し、かかる塩によって再生コラーゲン繊維に切れが発生したり、生成した塩が乾燥機内で飛散し、乾燥機内の熱交換器に付着して伝熱係数が低下するのを防ぐためである。また、オイリングを施した場合には乾燥時における繊維の膠着防止や表面性の改善に効果がある。
【0039】
以上のようにして得られた水不溶化再生コラーゲン繊維は、淡色かつ結節強度に優れている。しかも、上にも述べたようにコラーゲン中のカルボキシル基がほぼ未修飾のまま残存しているため、このカルボキシル基に対して各種化学修飾や金属架橋の処理が可能であり、それにより各種物性の付与や染色を比較的容易に施すことができる。さらに、本発明の水不溶化再生コラーゲン繊維は、天然蛋白繊維の持つ風合い・光沢・触感を備えており、人毛、獣毛、特に金髪や各種色髪代換品として好適に使用することができる。
【0040】
本発明においては、この化学修飾のひとつの手法として、本発明の方法により製造された水不溶化再生コラーゲン繊維のカルボキシル基にジスルフィド結合を導入する方法を提供する。
【0041】
再生コラーゲンの有するカルボキシル基の修飾は、再生コラーゲン繊維と下記一般式(II)で表されるジスルフィド結合を有するジアミンもしくはその塩および下記一般式(III)で表されるジスルフィド結合を有するジアミンからなる群の中から選ばれた少なくとも1種のジアミン化合物とを縮合剤の存在下にアミド化反応させることで行われる:
H2N(CH2)nSS(CH2)nNH2 (II)
(式(II)において、nは1〜4の整数を示す。)
H2NCH(OOR1)CH2SSCH2CH(OOR2)NH2 (III)
(式(III)において、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基またはベンジル基を示す。)。このジアミン化合物とコラーゲンのカルボキシル基との反応には、縮合剤が必要である。
【0042】
一般式(II)のジアミンまたはその塩の具体例としては、シスタミン、シスタミン二塩酸塩、シスタミン硫酸塩を挙げることができる。また、一般式(III)のジアミンの具体例としては、D−シスチンメチルエステル,L−シスチンメチルエステル,D,L−シスチンメチルエステル混合物,D−シスチンエチルエステル,L−シスチンエチルエステル,D,L−シスチンエチルエステル混合物、D−シスチンプロピルエステル,L−シスチンプロピルエステル,D,L−シスチンプロピルエステル混合物、D−シスチンブチルエステル,L−シスチンブチルエステル,D,L−シスチンブチルエステル混合物、D−シスチンベンジルエステル,L−シスチンベンジルエステル,D,L−シスチンベンジルエステル混合物を挙げることができる。
【0043】
このアミド化反応は、再生コラーゲン繊維を一般式(II)で示されるジアミンもしくはその塩および/または一般式(III)で示されるジアミンと縮合剤とを溶解した反応溶媒に浸漬処理して行うことができる。その際、再生コラーゲン繊維中のカルボキシル基1当量に対して、ジアミンは、0.05当量以上、好ましくは0.5当量以上、さらに好ましくは1当量以上の割合で使用することが望ましい。また、再生コラーゲン繊維中のカルボキシル基1当量に対して、縮合剤は、0.05当量以上、好ましくは0.5当量以上、さらに好ましくは1当量以上の割合で使用することが望ましい。なお、本発明のジアミン化合物および縮合剤の濃度はそれぞれ10mM以上、処理温度は50℃以下、浸漬時間は5分間以上であることが望ましい。この浸漬処理温度は、通常0℃以上である。なお、水が溶媒の場合にはpH7.0〜3.0が好ましい。
【0044】
縮合剤としては、例えば1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドおよびその塩酸塩、1−ベンジル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドおよびその塩酸塩、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド・メソ−p−トルエンスルホネート、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのカルボジイミド類;1H−ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリピロロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスホネート、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスホネート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスホネート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロボレートなどのベンゾトリアゾール類;N,N’−カルボニルジイミダゾール、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノン、ジフェニルホスホリルアジドなどが挙げられる。これらの縮合剤は単独あるいは組み合わせて用いてもよい。また、反応を速め、副反応を抑制するために縮合剤とN−ヒドロキシスクシンイミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、3−ヒドロキシ−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1,2,3−ベンゾトリアジンなどを組み合わせて用いてもよい。
【0045】
アミド化反応の溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類:ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン系有機溶媒:DMF,DMSOなどの中性有機溶媒等が挙げられ、これらの混合溶媒を用いてもよい。
【0046】
こうして得られたジスルフィド結合を有する単官能エポキシ化合物処理水不溶化再生コラーゲン繊維は、酸化還元反応により任意に変形し、かつ形状の保持性を有している。しかも、淡色かつ天然蛋白繊維の持つ風合い・光沢・触感を失っておらず、パーマネントセットの可能な淡色繊維素材として人毛、獣毛、特に金髪や各種色髪の代換および改良品としてより好適に使用することができる。とくに、単官能エポキシ化合物としてエピハロヒドリンを使用し、これと硫黄化合物とで前処理した後、さらにコラーゲンのカルボキシル基にジスルフィド結合を導入した場合、より強いパーマネントセットが可能であるため、上記用途にさらに好適に使用することかできる。
【0047】
なお、再生コラーゲン繊維中のアミノ基およびカルボキシル基の量は、再生コラーゲン繊維を酸で加水分解し、そのアミノ酸組成を分析し、その分析結果から算出することができる。より具体的には、例えば、再生コラーゲン繊維約1mgを正確に秤量し、これに0.1mLの6N塩酸を添加し、真空封管中、110℃で22時間加熱して加水分解を行った後、乾固する。この乾固物を適宜稀釈し、例えば日立製作所製アミノ酸分析計835型を用いて、特殊アミノ酸分析/ニンヒドリン発色法によりアミノ酸組成を分析することができる。
【0048】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。以下のすべての例において、再生コラーゲン繊維の調製および水不溶化処理繊維に対する油剤処理は、以下のようにして行った。
【0049】
(A)再生コラーゲン繊維の調製
牛の床皮を原料とし、アルカリで可溶化した後、乳酸水溶液で溶解し、pH3.5、コラーゲン濃度6重量%に調整した原液を減圧下で攪拌脱泡処理し、ピストン式紡糸原液タンクに移送し、さらに減圧下で静置し、脱泡を行った。かかる原液をピストンで押し出した後、ギアポンプ定量送液し、孔径10μmの焼結フィルターで濾過後、孔径0.35mm、孔長0.5mm、孔数50の紡糸ノズルを通し、ホウ酸および水酸化ナトリウムでpH11に調整した硫酸ナトリウム20重量%を含有してなる25℃の凝固浴へ紡出速度4m/分で吐出した。
【0050】
(B)油剤処理
水不溶化処理再生コラーゲン繊維をアミノ変性シリコーンのエマルジョンおよびプルロニック型ポリエーテル系静電防止剤からなる油剤を満たした浴槽に浸漬して油剤を付着させた。
【0051】
実施例1〜13
(A)に記載の方法にて再生コラーゲン繊維を得た。
【0052】
次に、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール0.9重量%、サリチル酸0.09重量%、および、硫酸ナトリウム13重量%を含有した水溶液に、コラーゲン中のアミノ基1当量に対し42.6当量となるように下記表1に示した単官能エポキシ化合物を投入した後、上で得られた再生コラーゲン繊維を25℃で24時間浸漬した。
【0053】
得られた水不溶化コラーゲン繊維を1時間流水洗浄後、(B)に記載の方法にて油剤処理し、75℃の均熱風乾燥機を用いて緊張下で乾燥させた。
【0054】
実施例14〜16
(A)に記載の方法にて再生コラーゲン繊維を得た。
【0055】
次に、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール0.09重量%、サリチル酸0.009重量%、および、硫酸ナトリウム13重量%を含有した水溶液に、コラーゲン中のアミノ基1当量に対し10.7当量となるように下記表1に示した単官能エポキシ化合物を投入した後、上で得られた再生コラーゲン繊維を25℃で24時間浸漬した。
【0056】
得られた水不溶化コラーゲン繊維を1時間流水洗浄後、(B)に記載の方法にて油剤処理し、75℃の均熱風乾燥機を用いて緊張下で乾燥させた。
【0057】
実施例17
(A)に記載の方法にて再生コラーゲン繊維を得た。
【0058】
得られた再生コラーゲン繊維を、アセトン:水=1:1溶媒およびアセトンで順次洗浄した。その後、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール0.13重量%およびサリチル酸0.013重量%を含有したアセトン溶液に、コラーゲン中のアミノ基1当量に対し10.7当量となるようにクレジルグリシジルエーテルを投入した後、得られた再生コラーゲン繊維を25℃で24時間浸漬した。
【0059】
得られた水不溶化コラーゲン繊維をアセトン洗浄および1時間流水洗浄後、(B)に記載の方法にて油剤処理し、75℃の均熱風乾燥機を用いて緊張下で乾燥させた。
【0060】
比較例1
(A)に記載の方法にて再生コラーゲン繊維を得た。
【0061】
次に、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール0.9重量%、サリチル酸0.09重量%、および、硫酸ナトリウム13重量%を含有した水溶液に、コラーゲン中のアミノ基1当量に対し10.7当量となるようにポリグリセロールポリグリシジルエーテル(エポキシ当量168、商品名デナコールEX−512、ナガセ化成工業(株)製)を投入した後、上で得られた再生コラーゲン繊維を25℃で24時間浸漬した。
【0062】
得られた水不溶化コラーゲン繊維を1時間流水洗浄後、(B)に記載の方法にて油剤処理し、75℃の均熱風乾燥機を用いて緊張下で乾燥させた。
【0063】
実施例1〜17および比較例1で得られた再生コラーゲン繊維の物性を以下の方法により調べた。
【0064】
<繊度>
オートバイブロ式繊度測定器Denier Computer(登録商標)DC−77A(サーチ(株)製)を用いて温度20±2℃、相対湿度65±2%の雰囲気中で繊度(d)を測定し、これをデシテックス(dtex)単位に換算した。なお、この換算に際し、小数点第1位以下は四捨五入した。
【0065】
<結節強度>
温度20±2℃、相対湿度65±2%の雰囲気(以下、標準状態と記す)下にある単繊維2を、ハンドヘルドデジタルフォースゲージDFG−2K型(シンポ工業(株)製)に取り付けたリング1に図1のような形状で結び、Aを約50cm/秒の速度で引っ張り、切断時の強力(g)を測定し、これをセンチニュートン(cN)単位に換算した。なお、この換算に際し、小数点第1位以下は四捨五入した。
【0066】
<吸水率>
繊維を蒸留水(温度27±1℃)に20分間浸漬した後、表面付着水を拭き取ったあとの重量(Ww)(単位g)、その後105℃の均熱風乾燥機で乾燥させて恒量になったときの重量(Wd)(単位g)とし、次式により求めた。
【0067】
吸水率(%)={(Ww−Wd)/Wd}×100
実施例1〜17および比較例1の結果を下記表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1の結果から明らかなように、単官能エポキシ化合物で処理した繊維は、淡色であり、かつ多官能エポキシ化合物で処理した繊維にくらべ結節強度に優れていることがわかる。
【0070】
実施例18
(A)に記載の方法にて再生コラーゲン繊維を得た。
【0071】
次に、得られた再生コラーゲン繊維を、エピクロロヒドリン1.7重量%(コラーゲン1gに対し17mmol)と、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール0.09重量%、サリチル酸0.009重量%、および、硫酸ナトリウム13重量%を含有した水溶液中に、30℃で24時間浸漬した。
【0072】
得られた水不溶化再生コラーゲン繊維を1時間流水洗浄後、さらに、チオ硫酸ナトリウム8重量%(コラーゲン1gに対し22.6mmol)を含有した水溶液中に、30℃で24時間浸漬した。
【0073】
得られたコラーゲン繊維を1時間流水洗浄後、(B)に記載の方法にて油剤処理し、75℃の均熱風乾燥機を用いて緊張下で乾燥させた。
【0074】
実施例19
(A)に記載の方法にて再生コラーゲン繊維を得た。
【0075】
次に、得られた再生コラーゲン繊維を、エピクロロヒドリン1.7重量%(コラーゲン1gに対し17mmol)と、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール0.09重量%、サリチル酸0.009重量%、および、硫酸ナトリウム13重量%を含有した水溶液中に、30℃で24時間浸漬した。
【0076】
得られた水不溶化コラーゲン繊維を1時間流水洗浄後、さらに、70%水硫化ナトリウム6.5重量%(コラーゲン1gに対し水硫化ナトリウム36.4mmol)を含有した水溶液中に、30℃で24時間浸漬した。
【0077】
得られたコラーゲン繊維を1時間流水洗浄後、(B)に記載の方法にて油剤処理し、75℃の均熱風乾燥機を用いて緊張下で乾燥させた。
【0078】
実施例20
(A)に記載の方法にて再生コラーゲン繊維を得た。
【0079】
エピクロロヒドリン1.6重量%(コラーゲン1gに対し17mmol)と、チオ硫酸ナトリウム2.8重量%(コラーゲン1gに対し17.0mmol)、硫酸ナトリウム13重量%を含有した水溶液を30℃で30分間攪拌した。その反応溶液に2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール0.09重量%、サリチル酸0.009重量%となるように加えた後、上で得られた再生コラーゲン繊維を30℃で24時間浸漬した。
【0080】
得られた水不溶化コラーゲン繊維を1時間流水洗浄後、(B)に記載の方法にて油剤処理し、75℃の均熱風乾燥機を用いて緊張下で乾燥させた。
【0081】
実施例21
実施例1で得られた繊維を、シスタミン二塩酸塩1.6重量%およびN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド2.9重量%を含有したメタノール中に25℃で24時間浸漬した。その後、繊維をメタノールと水で洗浄した後、75℃の均熱風乾燥機を用いて緊張下で乾燥させた。
【0082】
実施例22
実施例2で得られた繊維を、シスタミン二塩酸塩1.6重量%およびN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド2.9重量%を含有したメタノール中に25℃で24時間浸漬した。その後、繊維をメタノールと水で洗浄した後、75℃の均熱風乾燥機を用いて緊張下で乾燥させた。
【0083】
実施例23
実施例3で得られた繊維を、シスタミン二塩酸塩1.6重量%およびN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド2.9重量%を含有したメタノール中に25℃で24時間浸漬した。その後、繊維をメタノールと水で洗浄した後、75℃の均熱風乾燥機を用いて緊張下で乾燥させた。
【0084】
比較例2
(A)に記載の方法で再生コラーゲン繊維を得た。
【0085】
この繊維をホルムアルデヒド1.0重量%および硫酸ナトリウム15重量%を含有した水溶液中(ホウ酸および水酸化ナトリウムでpH9に調整)に25℃で30分間浸漬した。次に、(B)に記載の方法で油剤処理した後、75℃の均熱風乾燥機を用いて緊張下で乾燥させた。
【0086】
比較例3
(A)に記載の方法にて再生コラーゲン繊維を得た。
【0087】
次に、得られた再生コラーゲン繊維を、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(商品名デナコールEX−512、ナガセ化成工業(株)製)9.0重量%、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール0.9重量%、サリチル酸0.09重量%、および、硫酸ナトリウム13重量%を含有した水溶液中に、30℃で24時間浸漬した。
【0088】
得られた水不溶化コラーゲン繊維を1時間流水洗浄後、(B)に記載の方法にて油剤処理し、75℃の均熱風乾燥機を用いて緊張下で乾燥させた。
【0089】
実施例18〜23および比較例2〜3で得られた再生コラーゲン繊維の物性を以下の方法により調べた。
【0090】
<硫黄含量>
繊維を試料燃焼装置QF−02型(三菱化成(株)製)を用いて完全燃焼させ、その燃焼ガスを0.3%過酸化水素水に吸収させた。その後、吸収水の硫酸イオン濃度をイオンクロマトグラフィーIC−7000SERIESII(YOKOGAWA(株)製)で測定してS含量を求めた。そして、SH基またはSS結合の硫黄含量は以下の計算により求めた。
【0091】
(SH基またはSS結合の硫黄含量)=(SH基またはSS結合を付与した繊維の測定値)−(SH基またはSS結合を付与していない繊維の測定値)
SH基および/またはSS結合を付与していない繊維の測定値はメチオニン残基を示している。
【0092】
<パーマネントウェーブ処理試験>
パーマネントウェーブ処理による効果の試験を以下のように行った。
【0093】
300〜350本の繊維を束にし、20cmに切り揃えた後、5号ロッドに巻きパーマネントウエーブ用第1液(チオグリコール酸モノエタノールアミンの6.5%水溶液を調整し、モノエタノールアミンでpH9.2〜9.6に調整したもの)中に40℃で15分間浸漬した。次いでパーマネントウェーブ用第2液(臭素酸ナトリウムの5%水溶液)中に40℃で15分間浸漬した。繊維をロッドから外しフリーの状態で水洗し、水中でのウェーブを観測し官能的に評価した。更に、繊維表面に付着した水分を取り除いた後、吊り下げた状態での繊維の長さを求めた。パーマネントウェーブ処理によって保持性のある形状が付与された場合は繊維の長さは20cmより短くなり、付与されない場合は20cmとなる。
【0094】
<評価基準>
パーマネントウェーブ処理の評価は水中観察と吊り下げたときの繊維の長さとによって行った。それぞれの判定の基準は表2および表3に示す通りである。
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
実施例18〜23および比較例2〜3、人毛についての試験結果を表4に示す。
【0098】
【表4】
【0099】
表4に示した結果から、エピクロロヒドリンと硫黄を含む化合物とで処理した再生コラーゲン繊維は、パーマネントウェーブ処理によりウェーブが発現することがわかる。またさらに、カルボキシル基にジスルフィド結合を導入する処理を併用することで、パーマネントウェーブ処理により、より強力なウェーブが発現することがわかる。
【0100】
実施例24〜40
実施例1〜17で得られた繊維を、シスタミン二塩酸塩1.6重量%およびN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド2.9重量%を含有したメタノール中に25℃で24時間浸漬した。その後、繊維をメタノールと水で洗浄した後、75℃の均熱風乾燥機を用いて緊張下で乾燥させた。
【0101】
比較例4
比較例1で得られた繊維を、シスタミン二塩酸塩1.6重量%およびN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド2.9重量%を含有したメタノール中に25℃で24時間浸漬した。その後、繊維をメタノールと水で洗浄した後、75℃の均熱風乾燥機を用いて緊張下で乾燥させた。
【0102】
実施例24〜40および比較例4の結果を表5に示す。
【0103】
【表5】
【0104】
表5の結果から、再生コラーゲン繊維を単官能エポキシ化合物で処理を施し、そのカルボキシル基に化学修飾しジスルフィド結合を導入した場合は、淡色かつ結節強度に優れたパーマネントウェーブ処理が可能な繊維が得られることがわかる。
【0105】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の方法により単官能エポキシ化合物で処理を施すことにより水不溶化処理された再生コラーゲン繊維は、コラーゲン本来の淡色色調および高結節強度を保持していることから、人毛、獣毛、ガット、特に、金髪人毛、薄色獣毛などの代換品として好適に使用できる。しかも、本発明の水不溶化再生コラーゲン繊維は、カルボキシル基に化学修飾を行いジスルフィド結合を導入することで、パーマネントウェーブ処理可能で、淡色かつ吸水性が改善された繊維にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】結節強度を測定するときの糸の結びと、引っ張る部分とを示す概略図。
【符号の説明】
1…リング
2…短繊維
A…引張る部分
Claims (5)
- 再生コラーゲン繊維を単官能エポキシ化合物を包含する水不溶化剤で処理することを包含する水不溶化再生コラーゲン繊維の製造方法。
- R1が炭素数2以上6以下の炭化水素基またはCH2Clであり、R2が炭素数4以上6以下の炭化水素基である請求項2に記載の方法。
- 再生コラーゲン繊維をエピハロヒドリンを包含する水不溶化剤および硫黄化合物で処理することを包含する水不溶化再生コラーゲン繊維の製造方法。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法で得られた水不溶化再生コラーゲンを下記一般式(II):
H2N(CH2)nSS(CH2)nNH2 (II)
(式中のnは1〜4の整数を示す。)で表されるジスルフィド結合を有するジアミンもしくはその塩、および下記一般式(III):
H2NCH(OOR1)CH2SSCH2CH(OOR2)NH2 (III)
(式中のR1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基またはベンジル基を示す。)で表されるジスルフィド結合を有するジアミンからなる群の中から選ばれた少なくとも1種のジアミン化合物と縮合剤の存在下にアミド化反応させることを包含する水不溶化再生コラーゲン繊維の製造方法。
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