JP3879480B2 - 燃料電池システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、改質装置で製造された燃料ガスを燃料電池へ供給して発電を行う燃料電池システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、燃料電池に注目が集まっている。この燃料電池は、燃料の酸化により生じる化学的エネルギを、熱にすることなく直接電気エネルギに変換するものである。燃料電池の燃料としては、一般に水素が広く用いられている。燃料としての水素は、改質装置においてメタンやメタノール等の原燃料を改質することによって得る場合が多い。
【0003】
改質装置で製造された燃料ガスは、水素を主成分とするものであるが、微量の一酸化炭素を含んでいる。この一酸化炭素は、燃料電池における電極触媒の触媒毒となる。そして、一酸化炭素の毒作用によって電極触媒の触媒能が低下すると、燃料電池の出力電圧が低下してしまう。
【0004】
この問題に対しては、特開平8−180894号公報に開示されているように、燃料ガスに酸素を加えるという対策が講じられている。酸素を燃料ガスに混ぜて燃料電池へ供給すると、電極触媒上の一酸化炭素は、酸化されて電極触媒から取り除かれる。そして、電極触媒の触媒能が回復し、燃料電池の出力電圧を再び上昇する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の公報に開示されているシステムでは、燃料電池の出力電圧や出力電流を監視している。そして、出力電圧等が基準値を下回ると燃料ガスに対する酸素の添加を開始し、その後に出力電圧等が回復するまで酸素の混入を継続している。
【0006】
しかしながら、燃料電池の出力が低下する原因は、必ずしも電極触媒の被毒だけとは限らない。例えば、電池反応により生成したH2Oがガス拡散層内で凝縮し、これによって燃料ガスの流れが阻害されることもあり、このような場合にも燃料ガスの不足により出力が低下する。このため、燃料電池の出力低下に対して燃料ガスへ酸素を添加する対策を講じたとしても、出力低下の原因が電極触媒の被毒でなければ、いくら酸素を加えても燃料電池の出力を回復させることはできない。また、燃料ガスに酸素を添加すると、燃料ガス中の水素が酸化されてしまい、これによって燃料電池の発電効率が低下してしまう。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電極触媒の被毒に起因して燃料電池の出力が低下した場合にだけ被毒を解消するための動作を行い、燃料電池システムの信頼性を向上させることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明が講じた第1の解決手段は、 原燃料の改質により水素を含む燃料ガスを製造する改質装置(30)と、上記燃料ガスと酸素を含む酸化剤ガスとが供給される燃料電池(10)とを備える燃料電池システムを対象としている。そして、上記燃料電池(10)の出力電圧が低下した際に、その電圧低下の原因が一酸化炭素による電極触媒の被毒か否かを判定する判定手段(91)と、上記判定手段(91)が電圧低下の原因を電極触媒の被毒と判定したときには、該電極触媒の触媒能を回復させるために上記酸化剤ガスを上記燃料ガスに添加する回復手段(92)とを設けるものである。
【0009】
本発明が講じた第2の解決手段は、上記第1の解決手段において、判定手段(91)は、前回の判定時から所定時間が経過した場合、又は燃料電池(10)の出力電圧が所定の基準値以下となった場合に判定を行うように構成されるものである。
【0010】
本発明が講じた第3の解決手段は、上記第1又は第2の解決手段において、判定手段(91)は、所定量の酸化剤ガスを燃料ガスに添加する第1動作と、該第1動作の開始後における燃料電池(10)の出力電圧を検出する第2動作とを行い、該第2動作で検出される出力電圧の変化に基づいて判定を行うように構成されるものである。
【0011】
本発明が講じた第4の解決手段は、上記第3の解決手段において、判定手段(91)は、電圧低下の原因が電極触媒の被毒と判定した場合に、回復手段(92)が燃料ガスに添加する酸化剤ガスの流量を第2動作で検出された出力電圧の変化に基づいて決定するように構成されるものである。
【0012】
本発明が講じた第5の解決手段は、上記第1,第2,第3又は第4の解決手段において、回復手段(92)は、燃料ガスに対する酸化剤ガスの添加を開始した後における燃料電池(10)の出力電圧を検出し、該燃料電池(10)の出力電圧が上昇するにつれて上記燃料ガスに添加する酸化剤ガスの流量を削減するように構成されるものである。
【0013】
−作用−
上記第1の解決手段では、メタン等の原燃料が改質装置(30)へ供給される。改質装置(30)は、供給された原燃料を改質して燃料ガスを製造する。水素を主成分とする燃料ガスは、燃料電池(10)へ供給される。また、燃料電池(10)へは、酸素を含んだ空気等が、酸化剤ガスとして供給される。燃料電池(10)の単電池には、電解質を挟んで一対の電極が設けられている。そして、燃料電池(10)では、供給された燃料ガスと酸化剤ガスが各電極の電極触媒と接触し、燃料ガス中の水素と酸化剤ガス中の酸素とを利用して発電が行われる。
【0014】
燃料電池(10)へ供給される燃料ガスは、微量ではあるが一酸化炭素(CO)を含んでいる。この一酸化炭素は、電極触媒の触媒毒となる。このため、燃料ガスを供給して燃料電池(10)の運転を行うと、電極触媒が一酸化炭素によって被毒され、燃料電池(10)の出力電圧が次第に低下する。また、燃料電池(10)の出力電圧は、電極触媒の被毒以外の要因によっても低下する場合がある。
【0015】
そこで、本解決手段において、燃料電池(10)の出力電圧が低下したときには、その原因が電極触媒の被毒であるか否かを判定手段(91)が判定する。電圧低下の原因が電極触媒の被毒であると判定手段(91)によって判定されると、回復手段(92)が電極触媒の被毒を解消させるための動作を行う。つまり、電圧低下の原因が電極触媒の被毒である場合に限って、回復手段(92)が所定の動作を行う。
【0016】
回復手段(92)は、燃料電池(10)へ供給される燃料ガスに酸化剤ガスを添加する。被毒により活性の失われた電極触媒に酸化剤ガス中の酸素が接触すると、電極触媒上の一酸化炭素は、酸化され二酸化炭素となって電極触媒から取り除かれる。そして、電極触媒の触媒能が回復し、燃料電池(10)の出力電圧が上昇する。
【0017】
上記第2の解決手段では、所定の場合に判定手段(91)が判定を行う。つまり、判定手段(91)は、前回の判定時から所定時間が経過した第1の場合、又は燃料電池(10)の出力電圧が基準値以下となった第2の場合の何れかに判定を行う。尚、本解決手段では、経過時間と出力電圧の両方を監視して第1の場合又は第2の場合に判定手段(91)が判定を行うようにしてもよいが、経過時間だけを監視して第1の場合に判定手段(91)が判定を行ってもよいし、出力電圧だけを監視して第2の場合に判定手段(91)が判定を行ってもよい。
【0018】
ここで、運転中には常に燃料電池(10)へ燃料ガスが供給され、この燃料ガスに一酸化炭素が含まれている。このため、運転を継続すれば、電極触媒の被毒によって必然的に出力電圧が下がってゆく。従って、ある程度の時間に亘って燃料電池(10)の運転が継続していれば、出力電圧を計測するまでもなく、出力電圧がある程度低下していると考えて差し支えない。そこで、前回の判定時から所定時間が経過した場合には、出力電圧が低下しているとして判定手段(91)による判定を行ってもよい。
【0019】
上記第3の解決手段では、判定を行う際に判定手段(91)が第1動作と第2動作とを行う。第1動作では、燃料ガスに対して所定量の酸化剤ガスが添加される。第2動作では、第1動作の開始後における燃料電池(10)の出力電圧が検出される。
【0020】
電極触媒の被毒によって燃料電池(10)の出力電圧が低下しているのであれば、第1動作で添加された酸化剤ガス中の酸素によって電極触媒上の一酸化炭素が酸化され、電極触媒の触媒能が幾分回復して出力電圧が上昇する。従って、この場合、判定手段(91)は、電圧低下の原因が電極触媒の被毒であると判定する。
【0021】
一方、電極触媒の被毒以外の要因によって燃料電池(10)の出力電圧が低下しているのであれば、第1動作で酸化剤ガスを添加しても出力電圧は上昇せず、場合によっては酸化剤ガス中の酸素によって水素が酸化されることから出力電圧が一層低下してしまう。従って、この場合、判定手段(91)は、電圧低下の原因が電極触媒の被毒ではないと判定する。このように、判定手段(91)は、酸化剤ガスの添加後に燃料電池(10)の出力電圧が上昇するか否かで、電圧低下の原因が電極触媒の被毒であるかどうかを判断する。
【0022】
上記第4の解決手段において、判定手段(91)は、回復手段(92)が燃料ガスに添加する酸化剤ガスの流量を決定する。上述のように、燃料電池(10)の出力電圧が電極触媒の被毒によるものである場合、第1動作で酸化剤ガスを添加すると出力電圧が幾分回復する。その際、電極触媒における一酸化炭素の被覆率が多いほど、出力電圧の上昇速度が大きくなってゆく。つまり、第2動作において検出した出力電圧の変化を考慮すれば、電極触媒における一酸化炭素の被覆率を推測できる。そこで、判定手段(91)は、回復手段(92)が燃料ガスに添加する酸化剤ガスの流量を、第2動作において検出した出力電圧の変化に基づいて定める。
【0023】
上記第5の解決手段において、回復手段(92)は、燃料ガスに対する酸化剤ガスの添加量を燃料電池(10)の出力電圧に基づいて調節する。つまり、燃料ガスに酸化剤ガスを添加することで燃料電池(10)の出力電圧が回復してくるに従い、回復手段(92)は酸化剤ガスの流量を絞ってゆく。
【0024】
【発明の効果】
本発明では、燃料電池(10)の出力電圧が低下した際に、その原因が電極触媒の被毒である場合にだけ、酸化剤ガスを燃料ガスに添加している。従って、従来の燃料電池システムのように、出力電圧低下の原因が電極触媒の被毒ではないのにも拘わらず酸化剤ガスを燃料ガスに添加してしまうといった事態を回避できる。このため、本発明によれば、出力電圧の回復に必要な場合にだけ酸化剤ガスを燃料ガスに添加することができ、無駄な酸化剤ガスの添加によって燃料ガス中の水素が浪費されるのを防止できる。
【0025】
特に、上記第3の解決手段によれば、燃料電池(10)の出力電圧を検出するだけで、燃料電池(10)の出力電圧が低下した原因が電極触媒の被毒であるか否かを容易に判定することができる。従って、本解決手段によれば、燃料電池システムの構成を簡素に維持しつつ、判定手段(91)による判定を行うことができる。
【0026】
上記第4の解決手段によれば、判定手段(91)の第2動作で検出した燃料電池(10)の出力電圧の変化から電極触媒における一酸化炭素の被覆率を推測できるという点を利用し、電極触媒の被毒を解消するのに添加すべき酸化剤ガスの流量を定めることができる。従って、本解決手段によれば、被毒解消のために燃料ガスへ添加される酸化剤ガスの量を必要最小限に留めることができ、燃料ガス中の水素の浪費を確実に防止できる。
【0027】
上記第5の解決手段では、回復手段(92)が燃料ガスに酸化剤ガスを添加する場合、燃料電池(10)の出力電圧が回復するに従って、回復手段(92)は酸化剤ガスの流量を減らしてゆく。従って、本解決手段によれば、被毒解消のために燃料ガスへ添加される酸化剤ガスの量を必要最小限に留めることができ、燃料ガス中の水素の浪費を確実に防止できる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る燃料電池システムは、燃料電池(10)と改質装置(30)を備えている。また、この燃料電池システムは、水循環路(65)を備えており、いわゆるコジェネレーションシステムを構成している。
【0030】
上記燃料電池(10)は、固体高分子電解質型に構成されている。この燃料電池(10)において、フッ素系の高分子フィルムからなる電解質膜の両面に電極を形成することで、単電池が構成されている。単電池の電極は、白金の超微粒子をカーボンに担持させたものである。つまり、この単電池では、白金の超微粒子が電極触媒として電解質膜に設けられている。電解質膜表面の電極は、一方が水素極(アノード)となり、他方が酸素極(カソード)となる。上記燃料電池(10)は、バイポーラ板を介して単電池が積層されたスタック(集合電池)を構成している。尚、上述した燃料電池(10)の構造についは、図1において図示を省略する。
【0031】
上記燃料電池(10)では、バイポーラ板と電解質膜の酸素極とによって酸素極側ガス通路(11)が形成され、バイポーラ板と電解質膜の水素極とによって水素極側ガス通路(12)が形成されている。酸素極側ガス通路(11)には、その入口側に空気供給管(20)が接続され、その出口側に酸素極排気管(24)が接続されている。一方、水素極側ガス通路(12)には、その入口側に改質装置(30)が配管接続され、その出口側に水素極排気管(25)が接続されている。
【0032】
また、燃料電池(10)には、冷却水回路(60)が接続されている。この冷却水回路(60)は、冷却水が充填された閉回路であって、冷却水ポンプ(61)と第1熱交換器(71)とが接続されている。冷却水回路(60)で冷却水を循環させることによって、燃料電池(10)が所定の作動温度に保たれる。
【0033】
上記空気供給管(20)は、その始端が屋外に開口し、その終端が燃料電池(10)の酸素極側ガス通路(11)に接続されている。空気供給管(20)には、その始端から終端に向かって順に、ブロワ(23)と、ガス加熱器(52)と、第1加湿器(40)とが設けられている。
【0034】
また、空気供給管(20)には、第1分岐管(21)と第2分岐管(22)とが設けられている。第1分岐管(21)は、その始端がブロワ(23)とガス加熱器(52)の間に接続されている。一方、第2分岐管(22)は、その始端が第1加湿器(40)と燃料電池(10)の間に接続されている。
【0035】
上記第1加湿器(40)は、水蒸気透過膜(41)を備えている。水蒸気透過膜(41)は、水蒸気が透過可能な膜であって、例えばポリビニルアルコール膜や、アルグン酸膜等の親水性の膜により構成されている。尚、この水蒸気透過膜(41)としては、スルホン酸基を持つポリマー膜、例えばパーフルオロスルホン酸ポリマー膜を用いてもよい。
【0036】
上記第1加湿器(40)には、第1被加湿側通路(42)と第1排ガス通路(43)とが区画形成されている。第1被加湿側通路(42)と第1排ガス通路(43)は、上記水蒸気透過膜(41)によって仕切られている。第1被加湿側通路(42)には、空気供給管(20)が接続されており、酸化剤ガスとしての空気が導入される。第1排ガス通路(43)には、酸素極排気管(24)が接続されており、燃料電池(10)の酸素極側ガス通路(11)から電池排ガスとして排出された酸素極排ガスが導入される。
【0037】
上記改質装置(30)は、原燃料として供給された天然ガスから水素主体の燃料ガスを製造するように構成されている。この改質装置(30)には、ガスの流れに沿って順に、脱硫器(31)と、ガス加熱器(52)と、第2加湿器(45)と、本体部(32)とが設けられている。また、改質装置(30)における脱硫器(31)とガス加熱器(52)の間には、空気供給管(20)の第1分岐管(21)が接続されている。
【0038】
上記脱硫器(31)は、原燃料として供給された天然ガスから、硫黄分を吸着除去するように構成されている。
【0039】
上記第2加湿器(45)は、水蒸気透過膜(46)を備えている。この水蒸気透過膜(46)は、水蒸気が透過可能な膜であって、例えばポリビニルアルコール膜や、アルグン酸膜等の親水性の膜により構成されている。尚、この水蒸気透過膜(46)としては、スルホン酸基を持つポリマー膜、例えばパーフルオロスルホン酸ポリマー膜を用いてもよい。
【0040】
上記第2加湿器(45)には、第2被加湿側通路(47)と第2排ガス通路(48)とが区画形成されている。第2被加湿側通路(47)と第2排ガス通路(48)は、上記水蒸気透過膜(46)によって仕切られている。第2被加湿側通路(47)は、改質装置(30)におけるガス加熱器(52)と本体部(32)の間に設けられ、原料ガスが導入される。第2排ガス通路(48)には、水素極排気管(25)が接続されており、燃料電池(10)の水素極側ガス通路(12)から電池排ガスとして排出された水素極排ガスが導入される。
【0041】
上記本体部(32)には、ガスの流れに沿って順に、改質器(33)と、変成器(34)と、CO除去器(35)とが設けられている。また、本体部(32)における変成器(34)とCO除去器(35)の間には、空気供給管(20)の第2分岐管(22)が接続されている。
【0042】
上記改質器(33)は、部分酸化反応に対して活性を呈する触媒と、水蒸気改質反応に対して活性を呈する触媒とを備えている。改質器(33)では、部分酸化反応及び水蒸気改質反応によって、メタン(CH4)を主成分とする天然ガス(即ち、原料ガス)から水素を生成させる。その際、改質器(33)は、発熱反応である部分酸化反応の反応熱を、吸熱反応である水蒸気改質反応の反応熱として利用する。
【0043】
上記変成器(34)は、シフト反応(一酸化炭素変成反応)に活性を呈する触媒を備えている。変成器(34)では、シフト反応によって、ガス中の一酸化炭素が削減されると同時に水素が増加する。
【0044】
上記CO除去器(35)は、CO選択酸化反応に活性を呈する触媒を備えている。CO除去器(35)では、CO選択酸化反応によって、ガス中のCOが更に削減される。そして、CO除去器(35)から出た水素主体のガスが、燃料ガスとして燃料電池(10)の水素極側ガス通路(12)へ供給される。
【0045】
上記CO除去器(35)と燃料電池(10)を接続する配管には、空気導入管(81)の終端が接続されている。この空気導入管(81)の始端は、空気供給管(20)における第2分岐管(22)の下流側に接続されている。また、この空気導入管(81)には、調節弁(82)が設けられている。この調節弁(82)の開度を変更すると、空気導入管(81)を流れる空気の流量が変化する。
【0046】
上記本体部(32)には、更に熱回収部(27)が設けられている。この熱回収部(27)は、本体部(32)の改質器(33)、変成器(34)、及びCO除去器(35)の近傍に形成されたガスの通路であって、酸素極排気管(24)における第1加湿器(40)の下流側に配置されている。改質器(33)、変成器(34)、及びCO除去器(35)の排熱は、熱回収部(27)を流れる酸素極排ガスに回収される。
【0047】
上記改質装置(30)には、燃焼器(51)が設けられている。この燃焼器(51)には、酸素極排気管(24)の終端と、水素極排気管(25)の終端とが接続されている。この燃焼器(51)は、酸素極排ガス中に残存する酸素(O2)を利用して、水素極排ガス中に残存する水素(H2)を燃焼させるように構成されている。また、燃焼器(51)には、燃焼ガス管(26)の始端が接続されている。燃焼ガス管(26)は、その終端が屋外に開口する共に、その途中にガス加熱器(52)が設けられている。水素極排ガスの燃焼によって生成した高温の燃焼ガスは、この燃焼ガス管(26)を流れて屋外へ排出される。
【0048】
上記ガス加熱器(52)には、空気流路(53)と、原料ガス流路(54)と、燃焼ガス流路(55)とが区画形成されている。ガス加熱器(52)は、その空気流路(53)が空気供給管(20)に接続され、その原料ガス流路(54)が改質装置(30)における脱硫器(31)と第2加湿器(45)の間に接続され、その燃焼ガス流路(55)が燃焼ガス管(26)に接続されている。このガス加熱器(52)は、燃焼ガス流路(55)の燃焼ガスと空気流路(53)の空気とを熱交換させて酸化剤ガスとしての空気を加熱すると同時に、燃焼ガス流路(55)の燃焼ガスと原料ガス流路(54)の原料ガスとを熱交換させて原料ガスを加熱するように構成されている。
【0049】
上記水循環路(65)は、熱媒水が充填された閉回路である。この水循環路(65)には、熱媒水の循環方向において、循環ポンプ(66)と、第1熱交換器(71)と、第2熱交換器(74)と、貯湯タンク(67)とが順に設けられている。水循環路(65)を循環する熱媒水は、第1熱交換器(71)及び第2熱交換器(74)で加熱され、温水となって貯湯タンク(67)に蓄えられる。そして、貯湯タンク(67)の温水は、必要に応じて給湯に供される。
【0050】
上記第1熱交換器(71)には、冷却水流路(72)と水流路(73)とが区画形成されている。第1熱交換器(71)は、その冷却水流路(72)が冷却水回路(60)に接続され、その水流路(73)が水循環路(65)に接続されている。この第1熱交換器(71)は、冷却水流路(72)の冷却水と水流路(73)の熱媒水とを熱交換させるように構成されている。
【0051】
上記第2熱交換器(74)には、燃焼ガス流路(75)と水流路(76)とが区画形成されている。第2熱交換器(74)は、その燃焼ガス流路(75)が燃焼ガス管(26)に接続され、その水流路(76)が水循環路(65)に接続されている。この第2熱交換器(74)は、燃焼ガス流路(75)の燃焼ガスと水流路(76)の熱媒水とを熱交換させるように構成されている。
【0052】
本実施形態の燃料電池システムには、コントローラ(90)が設けられている。このコントローラ(90)は、被毒判定部(91)と被毒解消部(92)とを備えている。被毒判定部(91)は、燃料電池(10)の出力電圧低下の原因が電極触媒のCO被毒であるか否かを判定する判定手段を構成している。被毒解消部(92)は、燃料電池(10)の出力電圧低下が電極触媒のCO被毒によるものと被毒判定部(91)により判定された場合に、調節弁(82)を開いて燃料ガスに酸化剤ガス(空気)を添加し、電極触媒の触媒能を回復させる回復手段を構成している。
【0053】
−運転動作−
上記燃料電池システムの運転動作を説明する。
【0054】
ブロワ(23)を運転すると、空気供給管(20)に空気が取り込まれる。この空気は、その一部が第1分岐管(21)を通じて改質装置(30)へ送られ、残りが酸化剤ガスとしてガス加熱器(52)の空気流路(53)へ導入される。この酸化剤ガス(空気)は、空気流路(53)を流れる間に燃焼ガス流路(55)の燃焼ガスから吸熱する。
【0055】
ガス加熱器(52)において加熱された酸化剤ガスは、続いて第1加湿器(40)の第1被加湿側通路(42)へ流入する。一方、第1加湿器(40)の第1排ガス通路(43)には、酸素極排ガスが導入されている。そして、第1被加湿側通路(42)の酸化剤ガス(空気)には、水蒸気透過膜(41)を透過した酸素極排ガス中の水蒸気が供給される。つまり、この第1加湿器(40)では、燃料電池(10)から排出された水蒸気が酸化剤ガス(空気)に回収される。
【0056】
その際、第1被加湿側通路(42)へは、ガス加熱器(52)で予め加熱された酸化剤ガス(空気)が流入する。従って、この第1加湿器(40)において、第1排ガス通路(43)の酸素極排ガスが冷却されて水蒸気透過膜(41)の表面で結露が生じることはない。また、放熱によって第1被加湿側通路(42)の酸化剤ガスの温度が露点温度よりも低くなることはなく、第1被加湿側通路(42)の側においても水蒸気透過膜(41)の表面で結露が生じることはない。
【0057】
第1加湿器(40)において加湿された酸化剤ガス(空気)は、その一部が第2分岐管(22)を通じて改質装置(30)へ送られ、残りが燃料電池(10)の酸素極側ガス通路(11)へ導入される。このように、本実施形態では、酸素極側ガス通路(11)へ導入される酸化剤ガス(空気)を第1加湿器(40)で加湿しておくことで、燃料電池(10)における電解質膜の乾燥を防止している。
【0058】
改質装置(30)へは、原料ガスが供給される。この原料ガスには、メタンを主成分とする天然ガスが原燃料として含まれている。原料ガスは、先ず脱硫器(31)へ導入される。脱硫器(31)では、原料ガスに含まれる硫黄分が除去される。脱硫器(31)から出た原料ガスは、第1分岐管(21)からの空気が混入された後に、ガス加熱器(52)の原料ガス流路(54)へ導入される。この原料ガスは、原料ガス流路(54)を流れる間に燃焼ガス流路(55)の燃焼ガスから吸熱する。
【0059】
ガス加熱器(52)において加熱された原料ガスは、続いて第2加湿器(45)の第2被加湿側通路(47)へ流入する。一方、第2加湿器(45)の第2排ガス通路(48)には、水素極排ガスが導入されている。そして、第2被加湿側通路(47)の原料ガスには、水蒸気透過膜(46)を透過した水素極排ガス中の水蒸気が供給される。この第2加湿器(45)では、改質器(33)における水蒸気改質反応、及び変成器(34)におけるシフト反応に必要な量の水蒸気が、原料ガスに対して付与される。
【0060】
その際、第2被加湿側通路(47)へは、ガス加熱器(52)で予め加熱された原料ガスが流入する。従って、第2排ガス通路(48)の水素極排ガスが冷却されて、水蒸気透過膜(46)の表面で結露が生じることはない。また、放熱によって第2被加湿側通路(47)の原料ガスの温度が露点温度よりも低くなることはなく、第2被加湿側通路(47)の側においても水蒸気透過膜(46)の表面で結露が生じることはない。
【0061】
第2加湿器(45)で加湿された原料ガスは、改質器(33)へ導入される。つまり、改質器(33)に対しては、天然ガス、空気、及び水蒸気の混合物である原料ガスが供給される。改質器(33)では、メタン(CH4)の部分酸化反応と水蒸気改質反応とが行われ、水素(H2)と一酸化炭素(CO)が生成する。改質器(33)における部分酸化反応及び水蒸気改質反応の反応式は、次に示す通りである。
CH4+1/2O2 → CO+2H2 … 部分酸化反応
CH4+H2O → CO+3H2 … 水蒸気改質反応
【0062】
改質器(33)から流出した反応後のガスは、変成器(34)へ送られる。変成器(34)へ導入されるガスには、改質器(33)で生成した水素と一酸化炭素が含まれている。また、このガスには、第2加湿器(45)において供給されたものの水蒸気改質反応に用いられなかった水蒸気が残存している。変成器(34)では、シフト反応が行われ、一酸化炭素が減少すると同時に水素が増加する。シフト反応の反応式は、次の通りである。
CO+H2O → CO2+H2 … シフト反応
【0063】
変成器(34)から出たガスは、第2分岐管(22)からの空気と混合された後にCO除去器(35)へ導入される。ここで、変成器(34)からCO除去器(35)へ送られるガスは、水素が主成分となっているものの、未だに一酸化炭素を含んでいる。この一酸化炭素は、水素極の触媒毒となる。そこで、CO除去器(35)は、CO選択酸化反応によってガス中の一酸化炭素を更に削減する。CO選択酸化反応の反応式は、次の通りである。
CO+1/2O2 → CO2 … CO選択酸化反応
そして、CO除去器(35)で一酸化炭素を削減されたガスは、燃料ガスとして燃料電池(10)の水素極側ガス通路(12)へ供給される。
【0064】
その際、変成器(34)からCO除去器(35)へ向かって流れるガスには、第1加湿器(40)で加湿された酸化剤ガス(空気)が第2分岐管(22)を通じて供給される。この酸化剤ガス(空気)に含まれる水蒸気は、CO除去器(35)を通過し、燃料ガスの一成分として燃料電池(10)の水素極側ガス通路(12)へ供給される。これによって、燃料電池(10)の電解質膜が湿潤状態に保たれる。
【0065】
上述のように、燃料電池(10)には、水素極側ガス通路(12)へ燃料ガスが供給され、酸素極側ガス通路(11)へ酸化剤ガス(空気)が供給される。燃料電池(10)は、燃料ガス中の水素を燃料とし、酸化剤ガス(空気)中の酸素を酸化剤として発電を行う。具体的に、燃料電池(10)では、水素極及び酸素極の電極表面において下記の電池反応が行われる。
水素極:2H2 → 4H++4e-
酸素極:O2+4H++4e- → 2H2O
この電池反応により、燃料ガスに含まれる水素の燃焼反応の化学エネルギが電気エネルギに変換される。
【0066】
燃料電池(10)の酸素極側ガス通路(11)からは、電池排ガスとして酸素極排ガスが排出される。この酸素極排ガスには、電池反応に使われなかった余剰酸素が含まれている。また、酸素極排ガス中には、電池反応によって生じたH2Oが水蒸気の状態で存在している。この酸素極排ガスは、酸素極排気管(24)を通じて第1加湿器(40)の第1排ガス通路(43)へ導入される。上述のように、酸素極排ガス中の水蒸気は、水蒸気透過膜(41)を透過して第1被加湿側通路(42)の酸化剤ガス(空気)へ供給される。
【0067】
第1加湿器(40)において水蒸気を奪われた酸素極排ガスは、熱回収部(27)へ送られる。熱回収部(27)では、改質器(33)、変成器(34)、及びCO除去器(35)から放出された排熱を、酸素極排ガスが吸熱する。そして、酸素極排ガスは、熱回収部(27)で吸熱した後に燃焼器(51)へ導入される。つまり、本体部(32)の排熱が、燃焼器(51)へ供給される酸素極排ガスに回収される。
【0068】
一方、燃料電池(10)の水素極側ガス通路(12)からは、電池排ガスとして水素極排ガスが排出される。この水素極排ガスには、電池反応に使われなかった水素が残存している。また、水素極排ガス中には、電池反応によって生じたH2Oが水蒸気の状態で存在している。この水素極排ガスは、水素極排気管(25)を通じて第2加湿器(45)の第2排ガス通路(48)へ導入される。上述のように、水素極排ガス中の水蒸気は、水蒸気透過膜(46)を透過して第2被加湿側通路(47)の原料ガスへ供給される。第2加湿器(45)において水蒸気を奪われた水素極排ガスは、燃焼器(51)へ送り込まれる。
【0069】
燃焼器(51)は、酸素極排ガス中の酸素を利用して、水素極排ガス中の水素を燃焼させる。この水素極排ガスの燃焼によって、高温の燃焼ガスが生成する。この燃焼ガスは、燃焼ガス管(26)を流れて第2熱交換器(74)の燃焼ガス流路(75)へ導入される。第2熱交換器(74)では、燃焼ガス流路(75)の燃焼ガスが水流路(76)の熱媒水に対して放熱する。
【0070】
第2熱交換器(74)で放熱した燃焼ガスは、続いてガス加熱器(52)の燃焼ガス流路(55)へ導入される。ガス加熱器(52)では、燃焼ガス流路(55)の燃焼ガスが、空気流路(53)の酸化剤ガス(空気)及び原料ガス流路(54)の原料ガスに対して更に放熱する。その後、燃焼ガスは、燃焼ガス流路(55)から出て屋外へ排気される。
【0071】
冷却水ポンプ(61)を運転すると、冷却水回路(60)において冷却水が循環する。冷却水ポンプ(61)から吐出された冷却水は、燃料電池(10)へ送られて吸熱する。この冷却水の吸熱により、燃料電池(10)が所定の作動温度(例えば、85℃程度)に保たれる。燃料電池(10)で吸熱した冷却水は、第1熱交換器(71)の冷却水流路(72)へ導入される。この冷却水は、冷却水流路(72)を流れる間に水流路(73)の熱媒水に対して放熱する。第1熱交換器(71)において放熱した冷却水は、冷却水ポンプ(61)に吸入される。そして、冷却水ポンプ(61)が放熱後の冷却水を再び燃料電池(10)へ向けて送り出し、この循環が繰り返される。
【0072】
循環ポンプ(66)を運転すると、水循環路(65)において熱媒水が循環する。貯湯タンク(67)の底部から流出した熱媒水は、循環ポンプ(66)によって第1熱交換器(71)の水流路(73)へ送り込まれる。第1熱交換器(71)において、熱媒水は、水流路(73)を流れる間に冷却水流路(72)の冷却水から吸熱する。つまり、燃料電池(10)の排熱が、熱媒水に回収される。
【0073】
その後、熱媒水は、第2熱交換器(74)の水流路(76)へ導入される。第2熱交換器(74)において、熱媒水は、水流路(76)を流れる間に燃焼ガス流路(75)の燃焼ガスから吸熱する。つまり、水素極排ガス中に残存する水素の燃焼熱が、熱媒水に回収される。そして、第2熱交換器(74)から出た熱媒水は、貯湯タンク(67)へ送り返され、温水として貯留される。貯湯タンク(67)に温水として蓄えられた熱媒水は、給湯に利用される。
【0074】
−コントローラによる被毒解消動作−
燃料電池(10)の電極触媒のCO被毒を解消するための動作について、図2のフロー図を参照しながら説明する。また、以下の説明では、併せて図3,図4を適宜参照する。
【0075】
図2のフロー図において、ステップST10からステップST15までの動作がコントローラ(90)の被毒判定部(91)により行われ、残りのステップST15からステップST18までの動作がコントローラ(90)の被毒解消部(92)により行われる。
【0076】
ステップST10では、被毒判定部(91)が前回に所定の判定を行ってから一定時間(例えば1時間)が経過しているか否かを判断する。ステップST10において、一定時間が経過している場合には、ステップST12へ移る。
【0077】
一方、ステップST10において、一定時間が経過していない場合には、ステップST11へ移る。ステップST11では、燃料電池(10)の出力電圧Vが予め設定しておいた基準値V3以下となっているか否かを判断する。ステップST11において、V>V3である場合には再びステップST10へ戻り、V≦V3である場合にはステップST12へ移る。
【0078】
ここで、改質装置(30)から燃料電池(10)へ供給される燃料ガスには、常に微量の一酸化炭素が含まれている。このため、燃料電池(10)の運転を継続すると電極触媒のCO被毒が徐々に進行し、燃料電池(10)の出力電圧は次第に低下してゆく。つまり、被毒判定部(91)による前回の判定から一定時間が経過していれば、燃料電池(10)の出力電圧は既にある程度低下していると考えられる。そこで、被毒判定部(91)は、ステップST10の一定時間が経過しているという条件と、ステップST11のV≦V3となっているという条件の少なくとも一方が満たされた場合に、ステップST12以降の動作を行って所定の判定を行う。
【0079】
ステップST12では、被毒判定部(91)が第1動作を行う。つまり、ステップST12において、被毒判定部(91)は、調節弁(82)を短時間だけ開き、燃料ガスに対して少量の酸化剤ガス(空気)を添加する。例えば、図3では、時刻t2に燃料電池(10)の出力電圧Vが基準値V3まで低下する。そこで、被毒判定部(91)は、時刻t2から時刻t3に亘って調節弁(82)を開き、燃料ガスに対して少量の酸化剤ガス(空気)をパルス的に添加する。その後、被毒判定部(91)は、ステップST12からステップST13に移って動作を継続する。
【0080】
図3に示すように、時刻t3において調節弁(82)を閉鎖してからも、暫くの間は燃料電池(10)の出力電圧Vが低下し続ける。酸化剤ガスが燃料ガスと共に燃料電池(10)の水素極側ガス通路(12)へ流入すると、電極触媒上の一酸化炭素は、酸化剤ガス中の酸素によって酸化され、二酸化炭素となって電極触媒から取り除かれる。ここで、調節弁(82)の閉鎖後も出力電圧Vの低下が続くのは、燃料ガスに添加された酸化剤ガスが燃料電池(10)の電極触媒へ到達するまでにある程度の時間を要し、更には酸化剤ガスが電極触媒に到達してから酸化解離により電極触媒から一酸化炭素が除かれるまでにもある程度時間がかかるからである。
【0081】
このように電極触媒のCO被毒が解消されると、時刻t4からは燃料電池(10)の出力電圧Vが次第に上昇し始める。そして、時刻t5には、燃料電池(10)の出力電圧Vが電圧値V3に達する。ただし、時刻t2から時刻t3に亘って燃料ガスに添加された酸化剤ガスは少量である。このため、燃料電池(10)の出力電圧Vは、電圧値V3にまでは回復するもののそれ以上は上昇せず、本来の電圧値V0にまでは上昇しない。
【0082】
ステップST12で燃料ガスに酸化剤ガスを添加すると、上述のように燃料電池(10)の出力電圧Vが変化する。そこで、ステップST13において、被毒判定部(91)は、第2動作を行って燃料電池(10)の出力電圧Vを検出する。そして、被毒判定部(91)は、検出した出力電圧Vの変化を測定する。具体的には、燃料電池(10)の出力電圧Vが上昇し始める時刻t3から上昇が止まる時刻t4までの出力電圧Vの変化割合、即ちΔV/Δt=(V3−V2)/(t5−t4) を測定する。
【0083】
続いて、ステップST14へ移り、ΔV/Δtの値に基づいて燃料電池(10)の出力電圧低下が電極触媒のCO被毒によるものかどうかを判定する。つまり、電極触媒のCO被毒以外の原因によって燃料電池(10)の出力電圧Vが低下していたのであれば、ステップST12で燃料ガスに酸化剤ガスを添加しても出力電圧Vは回復せず、ΔV/Δtの値はゼロのままかあるいはゼロよりも小さくなる。そこで、ΔV/Δt≦0の場合、被毒判定部(91)は、出力電圧Vの低下の原因が電極触媒のCO被毒ではないと判断する。その後、コントローラ(90)は、被毒解消動作から抜け出し、燃料電池(10)の出力電圧Vの低下に対して他の対策を講じる。
【0084】
一方、電極触媒のCO被毒によって燃料電池(10)の出力電圧Vが低下していたのであれば、ステップST12で燃料ガスに酸化剤ガスを添加することによって出力電圧Vが回復するため、ΔV/Δtの値は必ずゼロよりも大きくなる。そこで、ΔV/Δt>0の場合、被毒判定部(91)は、出力電圧Vの低下の原因が電極触媒のCO被毒であると判断し、ステップST15へ移る。
【0085】
ステップST15において、被毒判定部(91)は、被毒解消部(92)が燃料ガスに酸化剤ガスを添加する際の酸化剤ガスの流量を決定する。図4に示すように、電極触媒のCO被覆率とΔV/Δtの値との間には相関関係がある。つまり、ΔV/Δtの値が大きく、ステップST12で酸化剤ガスを添加することによる出力電圧Vの上昇割合が大きいほど、電極触媒のCO被覆率は大きくなる。そして、電極触媒のCO被覆率が大きいほど、その被毒を解消するためには燃料ガスに添加される酸化剤ガスの流量を大きくする必要がある。そこで、被毒判定部(91)は、ステップST13で測定したΔV/Δtに基づき、被毒解消部(92)によって燃料ガスに添加される酸化剤ガスの流量を定める。
【0086】
続いてステップST16へ移り、被毒解消部(92)が調節弁(82)を開く。その際、被毒解消部(92)は、燃料ガスに供給される酸化剤ガスの流量が被毒判定部(91)により定められた値となるように、調節弁(82)を所定の開度にまで開く。調節弁(82)を開くと、酸化剤ガスは、空気導入管(81)を通じて燃料ガスに添加される。電極触媒上の一酸化炭素は、酸化剤ガス中の酸素により酸化されて電極触媒から取り除かれる。このようにして、電極触媒のCO被毒が解消されてゆく。
【0087】
その後、ステップST17へ移り、被毒解消部(92)は、燃料電池(10)の出力電圧Vを監視する。被毒解消部(92)は、この出力電圧Vが上昇するに従って調節弁(82)の開度を絞り、燃料ガスに添加される酸化剤ガスの流量を徐々に削減してゆく。被毒解消部(92)は、ステップST18において出力電圧Vが本来の電圧値V0に回復するまで酸化剤ガスの添加を継続する。そして、ステップST18においてV=V0となると、被毒解消部(92)は、調節弁(82)を閉鎖して被毒解消動作を終了する。
【0088】
−実施形態の効果−
本実施形態では、燃料電池(10)の出力電圧Vが低下した際に、その原因が電極触媒の被毒である場合にだけ、必要最小限の酸化剤ガスを燃料ガスに添加している。従って、従来の燃料電池システムのように、出力電圧低下の原因が電極触媒の被毒ではないにも拘わらず酸化剤ガスを燃料ガスに添加してしまうといった事態を回避できる。このため、本実施形態によれば、出力電圧Vの回復に必要な場合にだけ酸化剤ガスを燃料ガスに添加することができ、無駄な酸化剤ガスの添加によって燃料ガス中の水素が浪費されるのを防止できる。
【0089】
特に、本実施形態によれば、燃料電池(10)の出力電圧Vを検出するだけで、燃料電池(10)の出力電圧低下の原因が電極触媒の被毒であるか否かを容易に判定することができる。従って、本実施形態によれば、燃料電池システムの構成を簡素に維持しつつ、被毒判定部(91)による所定の判定を行うことができる。
【0090】
また、本実施形態によれば、被毒判定部(91)が検出した燃料電池の出力電圧Vの変化から電極触媒における一酸化炭素の被覆率(CO被覆率)を推測できるという点を利用し、電極触媒の被毒を解消するのに必要な酸化剤ガスの流量を定めることができる。従って、本実施形態によれば、被毒解消のために燃料ガスへ添加される酸化剤ガスの量を必要最小限に留めることができ、燃料ガス中の水素の浪費を確実に防止できる。
【0091】
また、本実施形態では、被毒解消部(92)が燃料ガスに酸化剤ガスを添加する場合、燃料電池(10)の出力電圧Vが回復するに従って、被毒解消部(92)は酸化剤ガスの流量を減らしてゆく。従って、本実施形態によれば、被毒解消のために燃料ガスへ添加される酸化剤ガスの量を必要最小限に留めることができ、燃料ガス中の水素の浪費を確実に防止できる。
【0092】
−実施形態の変形例−
本実施形態の被毒判定部(91)では、前回の判定から一定時間が経過しているか、燃料電池(10)の出力電圧Vが所定の基準値以下となっている場合に判定を行うようにしているが、これに代えて、次のようにしてもよい。
【0093】
つまり、前回の判定からの経過時間だけを監視し、前回の判定から一定時間が経過していれば、燃料電池(10)の出力電圧Vに拘わらず被毒判定部(91)が判定を行うようにしてもよい。また、これとは逆に、燃料電池(10)の出力電圧Vだけを監視し、出力電圧Vが所定の基準値以下となっていれば、前回の判定からの経過時間に拘わらず被毒判定部(91)が判定を行うようにしてもよい。
【0094】
また、本実施形態の被毒判定部(91)では、燃料ガスに酸化剤ガスを添加した後における燃料電池(10)の出力電圧Vを監視し、その変化割合ΔV/Δtの値に基づいて燃料電池(10)の出力電圧低下が電極触媒のCO被毒によるものかどうかを判定しているが、これに代えて、次のようにしてもよい。
【0095】
つまり、被毒判定部(91)では、酸化剤ガスの添加後における燃料電池(10)の出力電圧Vについて、ある時刻における出力電圧Vの微分値を測定し、その値に基づいて燃料電池(10)の出力電圧低下の原因を判断してもよい。また、被毒判定部(91)では、酸化剤ガスの添加後における燃料電池(10)の出力電圧Vについて、出力電圧Vの変化量の積算値を測定し、その値に基づいて燃料電池(10)の出力電圧低下の原因を判断してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
【図2】実施形態に係るコントローラにより行われる被毒解消動作を示すフロー図である。
【図3】燃料ガスに酸化剤ガス(空気)を添加した場合の燃料電池の出力電圧の変化を示す空気流量及び出力電圧と時間との関係図である。
【図4】電極触媒のCO被覆率と出力電圧の変化割合ΔV/Δtとの関係を示す関係図である。
【符号の説明】
(10) 燃料電池
(30) 改質装置
(91) 被毒判定部(判定手段)
(92) 被毒解消部(回復手段)
Claims (5)
- 原燃料の改質により水素を含む燃料ガスを製造する改質装置(30)と、上記燃料ガスと酸素を含む酸化剤ガスとが供給される燃料電池(10)とを備える燃料電池システムであって、
上記燃料電池(10)の出力電圧が低下した際に、その電圧低下の原因が一酸化炭素による電極触媒の被毒か否かを判定する判定手段(91)と、
上記判定手段(91)が電圧低下の原因を電極触媒の被毒と判定したときには、該電極触媒の触媒能を回復させるために上記酸化剤ガスを上記燃料ガスに添加する回復手段(92)と
を備えている燃料電池システム。 - 請求項1記載の燃料電池システムにおいて、
判定手段(91)は、前回の判定時から所定時間が経過した場合、又は燃料電池(10)の出力電圧が所定の基準値以下となった場合に判定を行うように構成されている燃料電池システム。 - 請求項1又は2記載の燃料電池システムにおいて、
判定手段(91)は、所定量の酸化剤ガスを燃料ガスに添加する第1動作と、該第1動作の開始後における燃料電池(10)の出力電圧を検出する第2動作とを行い、該第2動作で検出される出力電圧の変化に基づいて判定を行うように構成されている燃料電池システム。 - 請求項3記載の燃料電池システムにおいて、
判定手段(91)は、電圧低下の原因が電極触媒の被毒と判定した場合に、回復手段(92)が燃料ガスに添加する酸化剤ガスの流量を第2動作で検出された出力電圧の変化に基づいて決定するように構成されている燃料電池システム。 - 請求項1,2,3又は4記載の燃料電池システムにおいて、
回復手段(92)は、燃料ガスに対する酸化剤ガスの添加を開始した後における燃料電池(10)の出力電圧を検出し、該燃料電池(10)の出力電圧が上昇するにつれて上記燃料ガスに添加する酸化剤ガスの流量を削減するように構成されている燃料電池システム。
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