JP3879364B2 - メタクリル酸メチル系樹脂粒子、その製造方法、それを用いた発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子および発泡体 - Google Patents

メタクリル酸メチル系樹脂粒子、その製造方法、それを用いた発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子および発泡体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、メタクリル酸メチル系樹脂粒子、その製造方法、それを用いた発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子および発泡体に関するものである。詳しくは、ポリエステル樹脂などを表面に硬化または貼合してなる複合材の芯材を構成するメタクリル酸メチル系樹脂発泡体と、その材料となる発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、メタクリル酸メチル系樹脂粒子およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
強度向上および軽量化を図る構造体として、芯材である発泡体の表面にポリエステル樹脂層を形成した複合材が開発され、使用されている。この発泡体の材料にはポリウレタンやポリ塩化ビニルが用いられているが、使用済みの発泡体を焼却処理するときに煤煙が発生するなどの環境問題への懸念より、これら材料を用いない発泡体の開発の要望が高まりつつある。
【0003】
メタクリル酸メチル系重合体は、燃焼時に煤煙が発生しにくいため、これを発泡体として使用できれば環境問題への対策となる。
【0004】
しかしながら、発泡体の表面へのポリエステル樹脂層の形成は、通常、不飽和ポリエステルとスチレンの混合物を塗布した後、硬化する方法で行われ、ポリエステル樹脂層の形成のときに発泡体の表面がスチレンに曝されるため、スチレンに溶解する従来のメタクリル酸メチル系重合体をそのまま適用することは困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、耐スチレン性に優れるメタクリル酸メチル系樹脂発泡体と、その材料となる発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、メタクリル酸メチル系樹脂粒子およびその製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明者らは、メタクリル酸メチル系樹脂発泡体の耐スチレン性を向上させる方法について検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、第1に、メタクリル酸メチル50〜97重量%、不飽和カルボン酸単量体および不飽和カルボン酸無水物単量体から選ばれるカルボン酸系単量体3〜20重量%、ならびにこれらと共重合可能な他の単官能性不飽和単量体0〜30重量%からなる単官能性単量体混合物と、前記単官能性単量体混合物に対して官能基換算で多官能性ビニル系単量体0〜0.2モル%とを含む単量体混合物を重合して得られる、還元粘度が0.5〜7dl/gであることを特徴とするメタクリル酸メチル系樹脂粒子を提供するものであり、
【0008】
第2に、前記のメタクリル酸メチル系樹脂粒子に発泡剤を含浸してなる発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を提供するものであり、
【0009】
第3に、水性媒体と、この水性媒体中の濃度が0.004〜0.1重量%となる量のけん化度75〜95%、粘度20〜110mPa・s(4重量%水溶液、20℃)の部分けん化ポリ酢酸ビニルからなる懸濁安定剤との存在下で、メタクリル酸メチル50〜97重量%、不飽和カルボン酸単量体および不飽和カルボン酸無水物単量体から選ばれるカルボン酸系単量体3〜20重量%、ならびにこれらと共重合可能な他の単官能性不飽和単量体0〜30重量%からなる単官能性単量体混合物と、前記単官能性単量体混合物に対して官能基換算で多官能性ビニル系単量体0〜0.2モル%とを含む単量体混合物を懸濁重合することを特徴とするメタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法を提供するものであり、
【0010】
第4に、前記のメタクリル酸メチル系樹脂粒子を発泡成形してなる発泡体を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のメタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造に用いられる単量体混合物はメタクリル酸メチルを主成分とし、カルボン酸系単量体を含むものである。この単量体混合物は、これらと共重合可能な他の単官能性単量体を含むことができ、また多官能性ビニル系単量体を含むこともできる。メタクリル酸メチルは、それを含む単官能性単量体の合計量を基準に、50重量%以上用いられ、その上限は97重量%までである。
【0012】
カルボン酸系単量体は不飽和カルボン酸単量体および不飽和カルボン酸無水物単量体から選ばれるものである。不飽和カルボン酸単量体は、分子内に重合性不飽和結合およびカルボキシル基を有する化合物であり、カルボキシル基は分子内に複数個あってもよい。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸などが挙げられ、好ましくはアクリル酸またはメタクリル酸である。不飽和カルボン酸無水物単量体は、分子内に重合性不飽和結合および複数のカルボキシル基を有する化合物が2個のカルボキシル基の間で酸無水物を形成したものである。具体的には、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物などが挙げられる。カルボン酸系単量体は、これらの中から選ばれる1種であってもよいし、不飽和カルボン酸単量体から選ばれる2種以上であってもよいし、また、不飽和カルボン酸無水物単量体から選ばれる2種以上であってもよい。さらには、不飽和カルボン酸単量体から選ばれる1種以上と不飽和カルボン酸無水物単量体から選ばれる1種以上とを組合せたものであってもよい。
【0013】
カルボン酸系単量体は、メタクリル酸メチルやカルボン酸系単量体を含む単官能性単量体の合計量を基準に3〜20重量%、好ましくは5〜15重量%用いられる。カルボン酸系単量体の量が3重量%より少ないと、単量体混合物を重合し発泡して得られる発泡体の耐スチレン性が低下することがあり、一方、20重量%より多いと、発泡倍率の高い発泡体を得ることが困難となる。発泡体の発泡倍率を高くできない原因としては、単量体混合物を重合して得られる樹脂粒子に発泡剤を含浸することが困難になることが考えられる。
【0014】
本発明のメタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造に用いられる単量体混合物は、メタクリル酸メチル、カルボン酸系単量体の他に、これらと共重合可能な他の単官能性不飽和単量体を含むことが好ましい。
【0015】
この共重合可能な単官能性不飽和単量体は、分子内に重合性不飽和結合を1個有する化合物であり、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルのようなアクリル酸エステル;メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ベンジルのようなメタクリル酸エステル;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸モノグリセロール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸モノグリセロールのようなヒドロキシル基含有のエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルのような窒素含有単量体;アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルのようなエポキシ基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレンのようなビニル芳香族単量体などが挙げられ、中でも、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルまたはビニル芳香族単量体の適用が好ましい。
【0016】
共重合可能な単官能性不飽和単量体は、メタクリル酸メチル、カルボン酸系単量体および他の単官能性不飽和単量体を含む単官能性単量体の合計量を基準に、通常、30重量%以下の割合で用いられる。共重合可能な単官能性不飽和単量体としてメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルを用いる場合、その量が30重量%以下であると単量体混合物を重合して得られる樹脂粒子の内部を可塑化して発泡を容易にする。一方、30重量%を超えると樹脂粒子の耐熱性が低下し、発泡成形後に収縮が生じて所望の形状の発泡体が得られないことがある。また、メタクリル酸メチル系樹脂の特性である耐候性、低燃焼熱性、耐熱性が損なわれることがある。
【0017】
本発明のメタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造に用いられる単量体混合物は、メタクリル酸メチル、カルボン酸系単量体の他に、多官能性ビニル系単量体を含むことが好ましい。
【0018】
この多官能性ビニル系単量体は、分子内に重合性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなエチレングリコールまたはそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートのような2価のアルコールをアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのような多価アルコールまたはこれら多価アルコール誘導体をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの;ジビニルベンゼンのようなアルケニル基を2個以上有するアリール化合物などが挙げられる。
【0019】
多官能性ビニル系単量体を多く用いるほど、単量体混合物を重合して得られる樹脂粒子の発泡性能は向上するが、あまり多くなると、発泡体の変形伸び性能に影響を及ぼすので、その量は通常、メタクリル酸メチル、カルボン酸系単量体および任意に用いられる共重合可能な他の単官能性不飽和単量体からなる単官能性単量体混合物に対して、多官能性ビニル系単量体が有するビニル基などの官能基換算で0.2モル%以下である。また、同じく単官能性単量体混合物の合計モル量を基準に、多官能性ビニル系単量体を0.05モル%以上用いるのが好ましい。
【0020】
本発明のメタクリル酸メチル系樹脂粒子は、上で述べた単量体混合物を重合して得られるものであって、還元粘度が0.5〜7dl/g、好ましくは0.7〜6dl/gである。還元粘度が0.5dl/gより低いと樹脂粒子を発泡成形して得られる発泡体は機械的強度が十分でなく、一方、7dl/gより高いと樹脂粒子の発泡性能が低下する。還元粘度は、メタクリル酸メチル系樹脂粒子にクロロホルム50重量%と酢酸50重量%との混合溶媒を添加して得られる濃度0.1g/dlである溶液につき、オストワルド粘度管を用いて25℃で測定した値である。
【0021】
このメタクリル酸メチル系樹脂粒子は、例えば、水性媒体と部分けん化ポリ酢酸ビニルからなる懸濁安定剤との存在下で前に述べた単量体混合物を懸濁重合する方法によって製造される。この部分けん化ポリ酢酸ビニルは、けん化度が75〜95%、4重量%水溶液としたときの20℃における粘度が20〜110mPa・sのものであり、これを水性媒体中の濃度が0.004〜0.1重量%となるように用いる。懸濁安定剤としての部分けん化ポリ酢酸ビニルの量が0.004重量%未満であると安定した重合が難しく、一方、0.1重量%を超えると得られる樹脂粒子の粒径が小さくなったり、形状が不均一になったりすることがある。粘度は懸濁安定剤である部分けん化ポリ酢酸ビニルの分子量を表す指標であり、部分けん化酢酸ビニルを水に溶解して得られる4%水溶液を20℃で測定することによって求められる。
【0022】
この部分けん化ポリ酢酸ビニルからなる懸濁安定剤は、その少なくとも一部を重合当初から存在させておく必要があるが、一部は重合途中で添加するのも有効である。例えば、重合率が40〜90%となった時点で、部分けん化ポリ酢酸ビニルからなる懸濁安定剤を少量添加するのが好ましい。重合途中で添加する懸濁安定剤は、水性媒体中で0.05重量%以下の量とするのが適当である。この重合は、水性媒体および懸濁安定剤に加えて、リン酸塩の共存下で行うのが好ましい。ここで用いるリン酸塩としては、リン酸2水素ナトリウム、リン酸2水素カリウムなどが挙げられる。リン酸塩は樹脂粒子の粒径を大きくする作用があるが、その量が多くなりすぎると重合が不安定になることがあるので、水性媒体中で5重量%以下の濃度とするのが好ましい。水性媒体と単量体混合物の重量比は通常1〜5、好ましくは1〜3の範囲である。重合温度は、用いる重合開始剤に応じて適宜選択すればよく、例えば60〜120℃である。
【0023】
また、重合は、連鎖移動剤や重合開始剤の共存下で行ってもよい。この連鎖移動剤としては、メタクリル酸メチルの重合に用いられる公知のものが適用でき、例えば、連鎖移動官能基を1つ有する単官能性の連鎖移動剤および連鎖移動官能基を2つ以上有する多官能性連鎖移動剤が挙げられる。単官能性連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類、チオグリコール酸エステル類などが挙げられ、多官能性連鎖移動剤としては、例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトールのような多価アルコールをチオグリコール酸または3−メルカプトプロピオン酸でエステル化したものなどが挙げられる。この連鎖移動剤の量は、通常、単官能性単量体混合物1モル当たり5×10-5モル〜5×10-3モルである。一方、重合開始剤としては、1分子中に1対のラジカルを発生させる単官能性重合開始剤や2対以上のラジカルを発生させる多官能性重合開始剤を適用することができ、単官能性重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートのようなアゾ化合物;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートのようなパーオキシエステル類;ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシドのようなジアシルパーオキシド類の有機過酸化物などが挙げられ、多官能性重合開始剤としては、例えば、2官能の1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペートなど、3官能のトリス−(t−ブチルパーキシ)トリアジンなど、4官能の2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンなどが挙げられる。
【0024】
本発明のメタクリル酸メチル系樹脂粒子は、前述したように、還元粘度が0.5〜7dl/g、好ましくは0.7〜6dl/gの範囲である。メタクリル酸メチル系樹脂粒子の還元粘度の調整は、例えば、多官能性ビニル系単量体、連鎖移動剤および重合開始剤の共存下で懸濁重合するに際して、多官能性ビニル系単量体や連鎖移動剤などの濃度を変えることによって行うことができる。この方法によれば、前記範囲内の任意の還元粘度のメタクリル酸メチル系樹脂粒子を容易に得ることができる。例えば、多官能性ビニル系単量体の濃度を高くすると還元粘度は高くなる傾向にあり、一方、連鎖移動剤の濃度を高くすると還元粘度は低くなる傾向にある。
【0025】
また、メタクリル酸メチル系樹脂粒子は平均粒子径が400μm以上であることが好ましい。メタクリル酸メチル系樹脂粒子の平均粒子径の調整は、例えば、多官能性ビニル系単量体、連鎖移動剤および重合開始剤などの共存下で懸濁重合するに際して、連鎖移動剤の濃度を変えることによって行うことができる。平均粒子径が400μm以上であるメタクリル酸メチル系樹脂粒子は、具体的には、メタクリル酸メチル、カルボン酸系単量体、これらと共重合可能な他の単官能性不飽和単量体および多官能性ビニル系単量体を含む単量体混合物を水性媒体、部分けん化ポリ酢酸ビニルからなる懸濁安定剤、リン酸塩、重合開始剤および連鎖移動剤の存在下、懸濁重合するに際して、連鎖移動剤の量をメタクリル酸メチル、カルボン酸系単量体およびこれらと共重合可能な他の単官能性不飽和単量体からなる単官能性単量体混合物1モル当り2.5×10-5〜5×10-3モルとし、多官能性ビニル系単量体の量を前記単官能性単量体混合物1モル当りその官能基数として2×10-3モル以下とすることによって製造することができる。
【0026】
本発明の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、例えば、メタクリル酸メチル系樹脂粒子を水性媒体中に懸濁させ発泡剤を圧入含浸させる方法、単量体混合物を懸濁重合してメタクリル酸メチル系樹脂粒子を製造するとき、重合過程で発泡剤を添加する方法、単量体混合物を懸濁重合してメタクリル酸メチル系樹脂粒子を製造するとき、重合終了後に発泡剤を添加する方法、または押出し機を用いてメタクリル酸メチル系樹脂粒子と発泡剤とを溶融混練する方法によって得ることができる。
【0027】
発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を製造するときに用いる発泡剤としては、沸点50℃未満の有機系化合物や無機系気体状化合物が挙げられ、例えば、プロパン、ブタン、ペンタンのような脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタンのような脂環族炭化水素、ジフルオロエタン、テトラフルオロエタンのようなフッ化炭化水素や二酸化炭素などが挙げられる。これらは単独または2種以上を併せて用いることができる。発泡剤の含有量は、通常、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子に対して3〜12重量%である。3重量%未満では発泡倍率が小さくなり、一方、12重量%を越えると発泡させ脱型するとき、金型内の圧力低下が緩慢になって、成形時間が長くなることがある。
【0028】
また、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を製造するとき、発泡助剤を含浸することが好ましい。発泡助剤としては、通常、沸点50℃以上の炭化水素類が適用でき、ヘキサンのような脂肪族炭化水素、シクロヘキサンのような脂環族炭化水素などが挙げられる。これらは単独または2種類以上を併せて用いることができる。発泡助剤の含有量は、通常、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子に対して2重量%以下である。2重量%を越えると発泡させ脱型するとき、金型内の圧力低下が緩慢になって、成形時間が長くなることがある。
【0029】
さらに、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を製造するとき、必要に応じて、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止などを含浸または混合することができる。例えば、可塑剤としてはトルエン、エチルベンゼン、キシレンのような芳香族炭化水素、またはジオクチルフタレート、ジオクチルアジペートのようなエステル類などを挙げることができ、その含有量は、通常、2重量%以下である。可塑剤の含有量が2重量%を越えると、発泡させ脱型するとき、金型内の圧力低下が緩慢になって、成形時間が長くなることがある。
【0030】
本発明の発泡体は、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を加熱して発泡させる方法の他に、例えば、発泡剤とメタクリル酸メチル系樹脂粒子を押出し機で溶融混練した後、水蒸気を用いて発泡成形する方法、メタクリル酸メチル系樹脂粒子を押出し機で溶融させ、発泡剤をシリンダー途中から直接圧注入し混練した後、水蒸気を用いて発泡成形する方法によって製造することができる。この発泡体は外観が良好であり、かつポリエステル樹脂を表面に硬化または貼合して複合体を作製するときにスチレンと接触しても溶解することがない。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
メタクリル酸メチル系樹脂の還元粘度(RV)は次式により定義され、その測定はオストワルド型粘度管を用いて25℃で行う。また、粘度測定のためのメタクリル酸メチル系樹脂溶液の濃度は、クロロホルム50重量%と酢酸50重量%との混合溶媒からなる溶液中0.1g/dlとする。
RV=1/C×(t−to)/to
t:メタクリル酸メチル系樹脂溶液の流出時間(秒)
to:混合溶媒の流出時間(秒)
C:メタクリル酸メチル系樹脂溶液の濃度(g/dl)
【0032】
実施例1、比較例1
攪拌機を備えた1リットルのオートクレーブに、メタクリル酸メチル(表1ではMMAと略称する。)、アクリル酸メチル(表1ではMAと略称する。)、メタクリル酸(表1ではMAAと略称する。)、ヘキサンジオールジアクリレート(表1ではHXAと略称する。)およびn−ドデシルメルカプタン(表1ではDDSHと略称する)を表1に示す量、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.03重量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.08重量部、イオン交換水200重量部、部分けん化ポリ酢酸ビニル(けん化度88%、4重量%水溶液の20℃における粘度90mPa・s)0.02重量部およびリン酸2水素ナトリウム2重量部を入れて混合しながら80℃まで加熱昇温した。この温度で重合を行い、80℃になってから80分後に、上で用いたのと同じ部分けん化ポリ酢酸ビニル0.03重量部を2%水溶液として添加し、n−ペンタン10重量部を圧入した後、そのままの温度で保持した。重合発熱ピークが現れてから90℃で60分、96℃で60分保持した後、重合物を洗浄、脱水し、次いで40℃の空気中で2日間乾燥して揮発成分を除去することによって、表1に示す還元粘度、平均粒子径を有する発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を得た。得られた発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子10gを沸騰している水を入れた蒸し器に入れ、3分間常圧発泡させ、その24時間後に発泡粒子の体積を測定することによって、この発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の発泡性を調べた。その結果を表1に示す。
【0033】
上で得られた発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を予備発泡し発泡倍率30倍の予備発泡粒子を得た。その24時間後、得られた予備発泡粒子を金型に入れ、金型に蒸気を吹き込んで20mm厚の平板状発泡成形体を得た。この平板状発泡成形体は良好な外観を有していた。次に、得られた平板状発泡成形体の一部を60℃のスチレンに10分間浸漬し、浸漬前の体積に対する浸漬後の体積の比率により耐スチレン性を判定した。判定は、この体積の比率が80%以上のときを○、30〜80%のときを△、溶解〜30%を×として行った。その結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
Figure 0003879364
【0035】
実施例2〜6、比較例2
攪拌機と冷却管とを備えた2リットルのセパラブルフラスコに、メタクリル酸メチル85重量部、アクリル酸メチル5重量部、メタクリル酸10重量部、ヘキサンジオールジアクリレート0.15重量部、n−ドデシルメルカプタン0.35重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.03重量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.08重量部、イオン交換水200重量部および表2の懸濁安定剤を入れて、攪拌回転数700rpmで混合しながら80℃まで加熱昇温した。この温度で重合を行い、80℃になってから80分後、表2に示す条件で安定剤を添加した。重合発熱ピークが現れてから90℃で60分、96℃で60分保持した後、重合物を洗浄、脱水、乾燥して、表2に示す平均粒子径を有するメタクリル酸メチル系樹脂粒子を得た。重合反応終了後に重合物の外観を観察することによって重合安定性を評価した。重合物が固結していないときを安定性良好(○)とし、固結したときを安定性不良(×)とした。その結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
Figure 0003879364
【0037】
【発明の効果】
本発明の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は十分な発泡性能を有し、外観が良好であり、かつポリエステル樹脂を表面に硬化または貼合して複合体を作製するときにスチレンと接触しても溶解することがない発泡体を提供することができる。また、本発明のメタクリル酸メチル系樹脂粒子およびその製造方法によれば、十分な発泡性能を有する発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の好適な材料を提供することができる。さらに、本発明の発泡体はスチレンと接触しても良好な外観を損なうことがないので、倉庫、タンク、プール、水槽などの建築構造材や船舶用構造材、冷蔵庫などの断熱材、レントゲン台やスポーツ用品の強度補強材に使用される複合材の芯材として有用である。

Claims (12)

  1. タクリル酸メチル50〜97重量%、不飽和カルボン酸単量体および不飽和カルボン酸無水物単量体から選ばれるカルボン酸系単量体3〜20重量%、ならびにこれらと共重合可能な他の単官能性不飽和単量体0〜30重量%からなる単官能性単量体混合物と、前記単官能性単量体混合物に対して官能基換算で多官能性ビニル系単量体0〜0.2モル%とを含む単量体混合物を重合して得られる、還元粘度が0.5〜7dl/gであることを特徴とするメタクリル酸メチル系樹脂粒子。
  2. 単量体混合物が、前記単官能性単量体混合物に対して、多官能性ビニル系単量体を官能基換算で0.05〜0.2モル%含む請求項記載のメタクリル酸メチル系樹脂粒子。
  3. 共重合可能な他の単官能性不飽和単量体がアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよびビニル芳香族単量体から選ばれる請求項1または2に記載のメタクリル酸メチル系樹脂粒子。
  4. カルボン酸系単量体がアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸およびフマール酸から選ばれる不飽和カルボン酸単量体である請求項1〜3のいずれか1項に記載のメタクリル酸メチル系樹脂粒子。
  5. カルボン酸系単量体がマレイン酸無水物およびイタコン酸無水物から選ばれる不飽和カルボン酸無水物単量体である請求項1〜3のいずれか1項に記載のメタクリル酸メチル系樹脂粒子。
  6. 平均粒子径が400μm以上である請求項1〜のいずれか1項に記載のメタクリル酸メチル系樹脂粒子。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載のメタクリル酸メチル系樹脂粒子に発泡剤を含浸してなる発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
  8. メタクリル酸メチル系樹脂粒子に発泡剤とともに、可塑剤および/または発泡助剤を含浸してなる請求項記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
  9. 水性媒体と、この水性媒体中の濃度が0.004〜0.1重量%となる量のけん化度75〜95%、粘度20〜110mPa・s(4重量%水溶液、20℃)の部分けん化ポリ酢酸ビニルからなる懸濁安定剤との存在下で、メタクリル酸メチル50〜97重量%、不飽和カルボン酸単量体および不飽和カルボン酸無水物単量体から選ばれるカルボン酸系単量体3〜20重量%、ならびにこれらと共重合可能な他の単官能性不飽和単量体0〜30重量%からなる単官能性単量体混合物と、前記単官能性単量体混合物に対して官能基換算で多官能性ビニル系単量体0〜0.2モル%とを含む単量体混合物を懸濁重合することを特徴とするメタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法。
  10. 単量体混合物を懸濁重合するに際して、重合途中で、部分けん化ポリ酢酸ビニルからなる懸濁安定剤を添加する請求項記載の方法。
  11. 懸濁重合をリン酸塩共存下でおこなう請求項または10に記載の方法。
  12. 請求項1〜のいずれか1項に記載のメタクリル酸メチル系樹脂粒子を発泡成形してなる発泡体。
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