JP3878838B2 - 動圧軸受及びこれを備えたスピンドルモータ並びにこのスピンドルモータを有するディスク駆動装置 - Google Patents
動圧軸受及びこれを備えたスピンドルモータ並びにこのスピンドルモータを有するディスク駆動装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は作動流体としてオイルを使用する動圧軸受及びこれを備えたスピンドルモータ並びにこのスピンドルモータを有するディスク駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードディスク等のディスク状記録媒体を回転駆動するために使用されるスピンドルモータは、ディスクの記憶容量の増大や記録ヘッドによるデータへのアクセス速度の向上にともない、これまでロータの回転を支持するための軸受手段として主に採用されてきたボールベアリングの限界性能近くにまで回転速度が高速化しつつあり、これに代わって回転時に動圧発生溝のポンピングアクションによってオイル等の作動流体に誘起される動圧を利用し、非接触状態でロータの回転を支持することが可能な動圧軸受が採用されるようになってきた。
【0003】
このような従来の流体動圧軸受を使用するスピンドルモータは、図5に示すとおり、ロータaと一体をなすシャフトbの外周面と、このシャフトbが回転自在に挿通されるスリーブcの内周面との間に、ヘリングボーン溝d1,d1を有する一対のラジアル動圧軸受部d,dが構成され、またシャフトaの一方の端部外周面から半径方向外方に突出するディスク状スラストプレートeの上面とスリーブbに形成された段部の平坦面との間並びにスラストプレートeの下面とスリーブbの一方の開口を閉塞するスラストブッシュfとの間に、ヘリングボーングルーブg1,g1を有する一対のスラスト動圧軸受部g,gが構成されている。
【0004】
シャフトbとスリーブcとの間には、一対のラジアル動圧軸受部d,dの間に、半径方向の隙間寸法がラジアル動圧軸受部d,d側からそれぞれテーパ状に拡大し、連通孔hを通じて外気に連通可能な空気が保持される気体介在部iが形成されており、この気体介在部によってオイルが分離されている。
【0005】
この連通孔hは、オイルの内圧と外気圧との圧力関係に応じてオイルの界面位置を調節するオイルバッファとしての機能と、オイル内で発生した気泡を排出する機能とを担っている。
【0006】
上記構成の動圧軸受へのオイルの注入は、連通孔hを通じて行われる。
【0007】
すなわち、シャフトb並びにスラストプレートeとスリーブc並びにスラストブッシュfとからなるベアリングアッセンブリを形成しておき、オイル注油機を用いて連通孔hを通じて気体介在部i内にオイルを注入する。
【0008】
この状態で一時放置すると、気体介在部i内に貯えられたオイルが毛細管力によってラジアル動圧軸受部d,d及びスラスト動圧軸受部g,gを構成する微小間隙内へと侵入する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法では、各軸受部にオイルが適切に分配されない懸念がある。
【0010】
つまり、加工誤差等によって、各ラジアル動圧軸受部d,dに隣接する気体介在部iのテーパ状部分の傾斜角が不均一に形成された場合、間隙の隙間寸法に影響される毛細管力も不均一となり、オイルはテーパ状部分の傾斜角が小さい方に偏って移動することとなるためである。
【0011】
特に、一対のラジアル動圧軸受部d,dのうち、スラストプレートeから遠い側のラジアル動圧軸受部は、スラスト動圧軸受部g,gに連続する他方のラジアル動圧軸受部よりもオイルの保持量が少ないことから、所定量のオイルが分配されない場合は、早期にオイルの不足が生じることとなる。
【0012】
また、スラストプレートeの周辺部分は構造が複雑であり、オイル内に気泡が残留する懸念がある。
【0013】
このようなオイル保持量の不均一や気泡の残留は、NRRO(非繰り返し性振れ成分)の悪化や振動の発生並びに軸受外部へのオイルの流出といった、軸受としての信頼性や耐久性を損なう問題が発生する原因となる。
【0014】
本発明は、複雑な製造工程を要することなく、所定の軸受部に所定量のオイルを注入することができると共に、微小間隙内へのオイル注入時にオイルと空気との交換を容易に行うことができる動圧軸受及びこれを備えたスピンドルモータ並びにこのスピンドルモータを有するディスク駆動装置を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、シャフトと、該シャフトの先端部外周面から半径方向外方に突設される円板状のスラストプレートと、前記シャフトが挿通される貫通孔並びに前記スラストプレートを収納する段部とを有する円筒状のスリーブと、該スリーブの貫通孔の一方開口を閉塞し前記スラストプレートと軸線方向に対向するキャップとを備えた動圧軸受であって、前記シャフト並びに前記スラストプレートと前記貫通孔及び前記段部並びに前記キャップとの間には、オイルが保持される微小間隙が規定され、前記シャフトと前記貫通孔との間には、一対のラジアル動圧軸受部が構成され、スラストプレートと前記段部との間には、一方のスラスト動圧軸受が前記ラジアル動圧軸受に隣接して構成され、前記スラストプレートと前記キャップとの間には、他方のスラスト動圧軸受が構成されており、前記一対のラジアル動圧軸受部間には、各ラジアル動圧軸受部から遠ざかるにしたがって前記シャフトと前記貫通孔との間に規定される前記微小間隙の半径方向の隙間寸法が拡大し、前記スラストプレートから遠い側に位置するラジアル動圧軸受部に隣接する側のテーパ長が軸方向に長く形成される一対のテーパ状空間を有し、且つ空気が保持される気体介在部が形成されており、前記気体介在部に保持される空気は、前記スリーブの外周面と前記一対のラジアル動圧軸受部のうち前記スラストプレートから遠い側に位置するラジアル動圧軸受部に隣接する前記テーパ状空間内とに開口する連通孔を通じて外気と連通され、前記スラストプレートから遠い側に位置するラジアル動圧軸受部へのオイル注入は、前記連通孔を通じて行われ、前記一対のラジアル動圧軸受部のうち前記スラストプレートに近接する側に位置するラジアル動圧軸受部と前記一方のスラスト動圧軸受部との間には、前記オイルが連続して保持されると共に、前記スリーブには、前記スラストプレートの外周面と半径方向に対向する前記段部の内周面と前記スリーブの外周面とに開口する第2の連通孔が複数形成され、前記一方のスラスト動圧軸受部と前記スラストプレートに近接する側に位置するラジアル動圧軸受部及び他方のスラスト動圧軸受部へのオイル注入は、前記第2の連通孔を通じて行われ、且つ前記第2の連通孔のうち、少なくとも一つは該オイル注入の際に空気抜きとして利用されることを特徴とする。これにより、スラストプレートから遠い側に位置するラジアル動圧軸受部にオイルを確実に所定量の注入することを可能とする。また前記スリーブには、前記スラストプレートの外周面と半径方向に対向する前記段部の内周面と前記スリーブの外周面とに開口する第2の連通孔が複数形成され、前記一方のスラスト動圧軸受部と前記スラストプレートに近接する側に位置するラジアル動圧軸受部及び他方のスラスト動圧軸受部へのオイル注入は、該第2の連通孔を通じて行われ且つ前記第2の連通孔のうち、少なくとも1つは該オイル注入の際に空気抜きとして利用されるので、微小間隙内へのオイルの注入量に応じて、これと同等の空気が空気抜きとして利用される第2の連通孔を通じて排出されるため、微小間隙内でのオイルと空気の交換が同時且つ円滑に行われ、スラストプレート周辺部分の微小間隙内に空気が残留する危険性が可及的に小さくなる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の動圧軸受であって、前記スラストプレートの外周面と前記段部の内周面との間には、半径方向の隙間寸法が前記一方及び他方のスラスト動圧軸受部から遠ざかるにしたがって拡大する一対のテーパ状空間を有し且つ空気が保持される第2の気体介在部が形成されており、前記第2の連通孔は該第2の気体介在部内に開口するので、各オイルの界面を同じ空気圧に晒すことで、安定した軸支持を行うことが可能となる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、ステータを保持するブラケットと、該ブラケットに対して相対回転するロータと、該ロータに固着され該ステータと協働して回転磁界を発生するロータマグネットと、該ロータの回転を支持する動圧軸受とを備えたスピンドルモータにおいて、前記動圧軸受は、請求項1および2のいずれかに記載した動圧軸受であるので、所望の軸受部に所定量のオイルを確実に注入されることとなる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、情報を記録できる円板状記録媒体が装着されるディスク駆動装置において、ハウジングと、該ハウジングの内部に固定され該記録媒体を回転させるスピンドルモータと、該記録媒体の所要の位置に情報を書き込み又は読み出すための情報アクセス手段とを有するディスク駆動装置であって、前記スピンドルモータは、請求項4に記載したスピンドルモータであるので、高い信頼性並びに耐久性が要求されるハードディスクを駆動するディスク駆動装置において好適に使用可能であるが、これに限定されず、ハードディスク等の固定式又はCD−ROM、DVD等の着脱式の記録媒体を駆動するディスク駆動装置においても同様に使用可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る動圧軸受及びこれを用いたスピンドルモータ並びにこのスピンドルモータを用いたディスク駆動装置の実施形態について図1乃至図4を参照して説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0022】
図1において、シャフト2とこのシャフト2の下端部の外周面から半径方向外方に同軸状に突出する円板状のスラストプレート4とが一体的に形成されている。シャフト2の上端部は、シャフト2の外径が上方に向かって漸次縮小するテーパ状の傾斜面を有する第1の環状溝2aが形成されている。シャフト2の外周面の軸線方向中間部にはシャフト2の軸線方向中央部方向に向かって傾斜する一対の傾斜面を有する第2の環状溝2bが形成されている。シャフト2のスラストプレート4側の端部とは反対側の端部は、カップ状のロータハブ6に取付けられる。ロータハブ6の内周面にはロータマグネット8が装着される。
【0023】
シャフト2は、固定の円筒状スリーブ10内に設けられた貫通孔内に挿通され、貫通孔の内周面とシャフト2の外周面との間には微小間隙が規定されている。貫通孔の一方の端部には、スラストプレート4と協働して後に詳述する上部スラスト動圧軸受部を構成する段部が設けられている。また、スリーブ10の貫通孔の段部が形成される側の開口は、スラストプレート4の下面と協働して後に詳述する下部スラスト動圧軸受部を構成するカウンタプレート12によって閉塞される。スラストプレート4の上下面と段部の下面並びに内周面、そしてカウンタプレート12の上面との間には、微小間隙が規定されている。スリーブ10の貫通孔の上方側開口は、シャフト2の第1の環状溝2aの傾斜面との間に規定されるテーパ状シールS1において外気に開放されている。また、スリーブ10の外周部はブラケット16に設けられた環状の円筒壁16a内に装着される。円筒壁16aの外周部にはステータ18が取付けられ、ロータマグネット8と半径方向に対向する。
【0024】
スリーブ10の貫通孔の内周面は、シャフト2の外周面に形成された第2の環状溝2bと半径方向に対向して、スリーブ10の貫通孔の内周面とシャフト2の外周面との間の半径方向の微小間隙が拡大する間隙拡大部20が規定されている。またスリーブ10には、間隙拡大部20を軸受外部に開放するために半径方向に延設される第1の連通孔10aが設けられている。間隙拡大部20には、第1の通気10aを通じて取り込まれた空気が保持されている。この間隙拡大部20部分の構成は後に詳述する。
【0025】
間隙拡大部20の軸線方向上下部には、シャフト2の外周面とスリーブ10の貫通孔の内周面との間に規定される微小間隙内にオイルが保持されて、それぞれ上部ラジアル動圧軸受部22と下部ラジアル動圧軸受部24とが構成されている。スリーブ10の貫通孔の内周面のシャフト2の外周面との間に上部ラジアル動圧軸受部22を規定する部分には、動圧発生溝22aとして中心位置(溝の曲折部分の位置)が上部ラジアル動圧軸受部22の軸線方向中間位置に位置するよう形成される軸線方向に対称な形状のヘリングボーン溝が設けられており、モータの回転時には、このヘリングボーン溝によって上部ラジアル動圧軸受部22に保持されたオイルにヘリングボーン溝の両端側(軸線方向上下部側)から溝の曲折部分に向かって作用する動圧が発生する。つまり、上部ラジアル動圧軸受部22では、軸線方向中間位置において圧力ピークが発生し、両端部において最も圧力が低くなるよう構成されている。
【0026】
また、スリーブ10の貫通孔の内周面のシャフト2の外周面との間に下部ラジアル動圧軸受部24を規定する部分には、動圧発生溝24aとして中心位置(溝の曲折部分の位置)が下部ラジアル動圧軸受部24の下方に偏倚して位置するよう形成される軸線方向に非対称な形状のヘリングボーン溝が設けられており、モータの回転時には、ヘリングボーン溝によって下部ラジアル動圧軸受部24に保持されたオイルにヘリングボーン溝の両端側(上下部側)から溝の曲折部分に向かって作用する動圧が発生する。つまり、下部ラジアル動圧軸受部24では、軸線方向下端部近傍において圧力ピークが発生し、上端部において最も圧力が低くなるよう構成されている。
【0027】
上部ラジアル動圧軸受部22の上側には第1のテーパ状シールS1が位置しており、スリーブ10の貫通孔の内周面とシャフト2の外周面との間の間隙の半径方向寸法が軸線方向上方に向かうにつれて漸次拡大する。また、上部ラジアル動圧軸受部22の下側と下部ラジアル動圧軸受部24の上側との間には、図2においてより詳細に図示されるとおり、シャフト2の外周面に一対の傾斜面2b1,2b2とこれら傾斜面2b1,2b2間に位置し、スリーブ10の貫通孔の内周面との間に規定される間隙の半径方向の隙間寸法が実質的に変化しない平坦面2b3とから構成される第2の環状溝2bが位置しており、第2の環状溝2bの一対の傾斜面2b1,2b2とスリーブ10の貫通孔の内周面との間に規定される間隙拡大部20は、平坦面2b3から軸線方向上下方向に向かって間隙寸法が漸次縮小し、それぞれ第2のテーパ状シールS2と第3のテーパ状シールS3とが規定される。上部ラジアル動圧軸受部22及び下部ラジアル動圧軸受部24に保持されるオイルと間隙拡大部20に保持される外気との気液界面は、第2のテーパ状シールS2及び第3のテーパ状シールS3において、オイルに作用する外気の表面張力等の圧力がバランスする位置に位置する。
【0028】
上部ラジアル動圧軸受部22に保持されるオイルが長期間にわたる使用によって減少した場合には、第1のテーパ状シールS1側のオイルと空気との気液界面と第2のテーパ状シールS2側のオイルと空気との気液界面とに作用する空気の表面張力による圧力が等しくなるよう作用し、これら気液界面がそれぞれ上部ラジアル動圧軸受部22側へ移動する。従って、第1及び第2のテーパ状シールS1,S2に保持されていたオイルが、上部ラジアル動圧軸受部22に補充される。
【0029】
スラストプレート4の上面とこれと軸線方向に対向するスリーブ10の段部の下面との間に規定される微小間隙内には、下部ラジアル動圧軸受部に連続してオイルが保持されると共に、スラストプレート4の上面に動圧発生用溝26aとしてポンプイン型のスパイラル溝が形成されて上部スラスト動圧軸受部26が構成される。
【0030】
また、スラストプレート4の下面とこれと軸線方向に対向するカウンタプレート12との間に規定される微小間隙内にはオイルが保持されると共に、スラストプレート4の下面には、動圧発生用溝28aとして、上部スラスト動圧軸受部26と同様にポンプイン型のスパイラル溝が形成されて下部スラスト動圧軸受部28が構成される。
【0031】
モータの回転時には、スパイラル溝によって、上部及び下部スラスト動圧軸受部26及び28に保持されたオイルに半径方向内方に向かって圧力が高くなるよう作用する動圧が発生する。
【0032】
上部スラスト動圧軸受部26に保持されるオイルには、モータの回転時にスパイラル溝によって半径方向内方に作用する動圧が発生するが、スラストプレート4の回転中心側にはシャフト2が位置するため、スパイラル溝によるオイルに対する半径方向内方への作用は、このシャフト2によって阻止される。しかしながら、上部スラスト動圧軸受部26に隣接する下部ラジアル動圧軸受部24には、軸線方向下端部近傍において圧力ピークが発生するよう軸線方向にアンバランスなヘリングボーン溝が形成されていると共に、下部ラジアル動圧軸受部24と上部スラスト動圧軸受部26との間には連続してオイルが保持されていることから、これら下部ラジアル動圧軸受部24と上部スラスト動圧軸受部26との境界部近傍において、オイルに作用する動圧の圧力ピークが発生する。従って、下部ラジアル動圧軸受部24と上部スラスト動圧軸受部26とは、協働して回転シャフト部12を支持するために必要な動圧を発生する。
【0033】
また、下部スラスト動圧軸受部28においては、スパイラル溝によるオイルに対する半径方向内方への作用によってシャフト2の軸芯近傍においてオイルに作用する動圧の圧力ピークが発生し、その分布形状は概ね軸心に関して対称である。
【0034】
上部及び下部スラスト動圧軸受部26,28に形成される動圧発生用溝26a,28aをスパイラル溝とすることで、オイルの粘性に起因する抵抗が小さくなると共に、スラスト動圧軸受部の動圧発生用溝をヘリングボーン溝とする場合に比べて、スラストプレート4を小径化することができるため、モータの回転時に生じる損失(回転負荷の増加)を抑制し、モータの消費電力を少なくすることができる。
【0035】
更に、図3においてより詳細に図示されるように、スラストプレート4の外周面には、上部スラスト動圧軸受部26を構成するスラストプレート4の上面側からスラストプレート4の厚み方向(軸線方向)中央部に向かってスリーブ10に設けられた段部の内周面との間に規定される半径方向の間隙の間隙寸法が拡大するテーパ状の傾斜面と下部スラスト動圧軸受部28を構成するスラストプレート4の下面側からスラストプレート4の厚み方向(軸線方向)中央部に向かってスリーブ10に設けられた段部の内周面との間に規定される半径方向の間隙の間隙寸法が拡大するテーパ状の傾斜面とから構成される断面形状が略V字状の第3の環状溝4aが設けられている。これら第3の環状溝4aを規定する一対の傾斜面は、それぞれスラストプレート4の上面及び下面側からスラストプレート4の厚み方向の略中央部に向かって実質的に同一の傾斜角をもって傾斜している。
【0036】
スリーブ10には、スリーブ10の段部の内周面及びスリーブ10の外周面に開口するよう半径方向に延設される複数の第2の連通孔10b1,10b2が設けられており、各第2の連通孔10b1,10b2は、ブラケット16に設けられた環状の円筒壁16aの内周面に全周にわたって形成された環状凹溝16a1によって連結されている。また、この環状凹溝16a1に連続するようにスリーブ10の外周面の一部には軸線方向の切欠き10cが設けられており、これら切欠き10c、環状凹溝16a1及び第2の連通孔10b1,10b2を通じて、第3の環状溝4aとスリーブ10に設けられた段部の内周面との間に規定される一対のテーパ状の空間内に外気が取り入れられ保持されている。上部スラスト動圧軸受部26及び下部スラスト動圧軸受部28に保持されるオイルと外気との気液界面は、この第3の環状溝4aとスリーブ10の段部の内周面との間に規定される一対のテーパ状の空間において、オイルに作用する外気の表面張力等の圧力がバランスする位置に形成される。すなわち、第3の環状溝4aとスリーブ10の段部の内周面との間に規定される一対のテーパ状の空間は、それぞれ第4のテーパ状シールS4及び第5のテーパ状シールS5とを規定する。
【0037】
上記のようにスラストプレート4の外周面に設けられた第3の環状溝4aは、実質的に同一の傾斜角を有する一対の傾斜面から構成されるので、第4及び第5のテーパ状シールS4,S5も実質的に同一のテーパ角及びシール長(シール機能を発揮する領域の寸法)を有している。また、上部スラスト動圧軸受部26に連続してオイルが保持される下部ラジアル動圧軸受部に保持されるオイルの端部である、第3のテーパ状シールS3は、第4並びに第5のテーパ状シールS4,S5内に保持されるオイルとオイルの内部圧力が等しくなるようバランス可能な形状を有する。従って、スラストプレート4の外周部に保持されるオイルは、スラストプレート4の厚み方向略中央部を介して実質的に均等となるよう分離されており、そのため下部ラジアル動圧軸受部22,上部スラスト動圧軸受部26並びに下部スラスト動圧軸受部28に保持されるオイルのバッファオイルとして機能するオイルの量にアンバランスが生じることはない。
【0038】
尚、上部ラジアル動圧軸受部22に保持されるオイルの気液界面が位置する第1のテーパ状シールS1及び第2のテーパ状シールS2の形状は、上部ラジアル動圧軸受部22に保持されるオイルの量を勘案し、下部ラジアル動圧軸受部24、上部及び下部スラスト動圧軸受部26,28における軸受部に保持されるオイルに対するバッファオイルが実質的に同等となるよう設定される。これにより、スピンドルモータにおける各軸受部で保持されるオイルの量に対するバッファオイルの量が実質的に等しくなり、蒸発等によってオイルが減少した場合の各軸受部間での減少率も実質的に等しくなる。よって、一部の軸受部のみバッファオイルとして機能する、テーパ状シール内に保持されるオイルの量が少なくなり、早期に枯渇するといった軸受としての耐久性及び信頼性を低下させる問題の発生が防止される。
【0039】
この場合のテーパ状シールを構成する各傾斜面の傾斜角は、軸受部の寸法、軸受を構成するシャフトやスリーブといった部材の材質、軸受部に保持されるオイルの量や粘性等を考慮し、適宜選択可能であるが、概ね5度乃至50度、好ましくは15度から40度の範囲に設定するのが良い。
【0040】
次に、図2及び図3を参照して上記構成のスピンドルモータにおける各動圧軸受部22,24,26及び28に対するオイル注入について説明する。
【0041】
まず、第1の連通孔10aは環状溝2bのうち上部ラジアル動圧軸受部22に隣接する傾斜面2b1に対向して開口しており、この第1の連通孔10aを通じて間隙拡大部20内の第2のテーパ状シールS2部分にオイルが注入される。第1の連通孔10aを通じて注入されたオイルは、一旦第2のテーパ状シールS2内に留まったのち、毛細管力によって上部ラジアル動圧軸受部22内に侵入し、上部ラジアル動圧軸受部22部分に規定される微小間隙内にあった空気と入れ替わり、第1のテーパ状シールS1に至る。その後、第1のテーパ状シールS1内の気液界面と第2のテーパ状シールS2内の気液界面とが同等の圧力バランスとなることで、オイルの移動が止まり、こうして一次注入が完了する。
【0042】
オイルの一次注入が完了すると第2の連通孔10b2を通じてスラストプレート4の外周部分にオイルが注入され、二次注入が行われる。スラストプレート4の外周部分に注入されたオイルは、毛細管現象によって下部ラジアル動圧軸受部24並びに上部スラスト動圧軸受部26側の微小間隙内及び下部スラスト動圧軸受部28側の微小間隙内へと侵入する。その際、オイル注入前に上部及び下部スラスト動圧軸受部26,28側の微小間隙内に存在していた空気は、第2の連通孔10b1を通じて外部に排出される。尚、オイルの一次注入と二次注入とを、同時に行うことも可能である。
【0043】
このように、一次注入、二次注入ともに、微小間隙内に存在していた空気の逃がしを確保した上でオイル注入が行われるので、オイルと空気との交換が円滑に行われ、微小間隙内に空気が残留する危険性が可及的に小さくなる。
【0044】
また、一次注入でのオイルの注入位置を第2のテーパ状シールS2内とすることで、注入したオイルが確実に上部ラジアル動圧軸受部22側の微小間隙内に侵入することとなるので、オイル注入量の制御も容易となる。
【0045】
上記一次注入並びに二次注入が完了すると、モータを所定の回転数で駆動し、初期エージングを行う。この初期エージング時に、オイルが動圧発生用溝22a,24a,26a及び28aによるポンピングで各軸受部に適切に配分されることとなるが、この時、モータを定常回転数よりも高い回転数で駆動することで、オイルと空気との置換をより確実且つ迅速に行うことが可能となる。この初期エージング工程が終了すると、動圧軸受部(ユニット)の組立が完了したこととなる。
【0046】
次に、図5おいて模式的に示す一般的なディスク駆動装置50の内部構成について説明する。図5において示すとおり、ハウジング51の内部は塵・埃等が極度に少ないクリーンな空間を形成しており、その内部に情報を記憶する円板状のディスク板53が装着されたスピンドルモータ52が設置されている。加えてハウジング51の内部には、ディスク板53に対して情報を読み書きするヘッド移動機構57が配置され、このヘッド移動機構57は、ディスク板53上の情報を読み書きするヘッド56、このヘッドを支えるアーム55及びヘッド56及びアーム55をディスク板53上の所要の位置に移動させるアクチュエータ部54により構成される。
【0047】
このようなディスク駆動装置50のスピンドルモータ52として図1において図示されるスピンドルモータを使用することで、高い回転精度並びに信頼性・耐久性を有するディスク駆動装置を得ることが可能になる。
【0048】
以上、本発明に従う動圧軸受及びこれを用いたスピンドルモータ並びにディスク駆動装置の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0049】
以上、本発明のスピンドルモータの実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0050】
例えば上記実施形態においては、スラストプレート4の外周部に形成される第4及び第5のテーパ状シールS4,S5に外気を取り込むために設けられた第2の連通孔10b1,10b2を回転軸芯に対して180度対向する位置に一対設けた構成を有しているが、第2の連通孔10b1,10b2は第4及び第5のテーパ状シールS4,S5に外気を取り込むことが可能となり且つオイルの二次注入時に空気の逃がしを確保することができるよう、少なくとも2つ形成されていればよく、また3つ以上形成することも可能である。
【0051】
また、環状溝2bは、平坦部2b3は必ずしも必要ではなく、一対の傾斜面2b1,2b2を直接連結した構成とすることも可能である。
【0052】
【発明の効果】
請求項1の発明では、毛細管力によって動圧軸受部にオイルを確実に注入することが可能となるので、オイルの注入に複雑な工程を要しない。
【0053】
請求項2の発明では、毛細管力を利用して各軸受部に対して所定量のオイルを確実に且つ気泡が残留することなく注入することができるので、NRROの悪化や振動の発生並びに軸受外部へのオイルの流出といった、軸受としての信頼性や耐久性を損なう問題の発生を防止することが可能となる。
【0054】
請求項3の発明では、請求項1および請求項2に係る動圧軸受を用いたスピンドルモータとすることで、所望の軸受部に所定量のオイルを確実に注入することが可能となる。
【0055】
請求項4の発明では、請求項3に係るスピンドルモータを用いたディスク駆動装置とすることで、ディスクの振れ回りによるディスクの記録面とヘッドとの接触破壊の発生及び軸受部から流出したオイルに起因する装置内の汚染とこれによるデータの読み書きエラーの発生を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る動圧軸受を用いたスピンドルモータを示す断面図である。
【図2】図1に図示されるスピンドルモータにおけるラジアル動圧軸受部間の構成を拡大して示す、拡大部分断面図である。
【図3】図1に図示されるスピンドルモータにおけるスラストプレートまわりの構成を拡大して示す、拡大部分断面図である。
【図4】ディスク駆動装置の一般的内部構成を模式的に示す断面図である。
【図5】従来の動圧軸受を用いたスピンドルモータを示す断面図である。
【符号の説明】
2 シャフト
10 スリーブ
10a,10b1,10b2 連通孔
22,24 ラジアル動圧軸受部
Claims (4)
- シャフトと、該シャフトの先端部外周面から半径方向外方に突設される円板状のスラストプレートと、前記シャフトが挿通される貫通孔並びに前記スラストプレートを収納する段部とを有する円筒状のスリーブと、該スリーブの貫通孔の一方開口を閉塞し前記スラストプレートと軸線方向に対向するキャップとを備えた動圧軸受であって、前記シャフト並びに前記スラストプレートと前記貫通孔及び前記段部並びに前記キャップとの間には、オイルが保持される微小間隙が規定され、前記シャフトと前記貫通孔との間には、一対のラジアル動圧軸受部が構成され、スラストプレートと前記段部との間には、一方のスラスト動圧軸受が前記ラジアル動圧軸受に隣接して構成され、前記スラストプレートと前記キャップとの間には、他方のスラスト動圧軸受が構成されており、前記一対のラジアル動圧軸受部間には、各ラジアル動圧軸受部から遠ざかるにしたがって前記シャフトと前記貫通孔との間に規定される前記微小間隙の半径方向の隙間寸法が拡大し、前記スラストプレートから遠い側に位置するラジアル動圧軸受部に隣接する側のテーパ長が軸方向に長く形成される一対のテーパ状空間を有し、且つ空気が保持される気体介在部が形成されており、前記気体介在部に保持される空気は、前記スリーブの外周面と前記一対のラジアル動圧軸受部のうち前記スラストプレートから遠い側に位置するラジアル動圧軸受部に隣接する前記テーパ状空間内とに開口する連通孔を通じて外気と連通され、前記スラストプレートから遠い側に位置するラジアル動圧軸受部へのオイル注入は、前記連通孔を通じて行われ、前記一対のラジアル動圧軸受部のうち前記スラストプレートに近接する側に位置するラジアル動圧軸受部と前記一方のスラスト動圧軸受部との間には、前記オイルが連続して保持されると共に、前記スリーブには、前記スラストプレートの外周面と半径方向に対向する前記段部の内周面と前記スリーブの外周面とに開口する第2の連通孔が複数形成され、前記一方のスラスト動圧軸受部と前記スラストプレートに近接する側に位置するラジアル動圧軸受部及び他方のスラスト動圧軸受部へのオイル注入は、前記第2の連通孔を通じて行われ、且つ前記第2の連通孔のうち、少なくとも一つは該オイル注入の際に空気抜きとして利用されることを特徴とする動圧軸受。
- 前記スラストプレートの外周面と前記段部の内周面との間には、半径方向の隙間寸法が前記一方及び他方のスラスト動圧軸受部から遠ざかるにしたがって拡大する一対のテーパ状空間を有し且つ空気が保持される第2の気体介在部が形成されており、前記第2の連通孔は該第2の気体介在部内に開口することにより一対のテーパ面に界面をそれぞれ有することを特徴とする請求項1に記載の動圧軸受。
- ステータを保持するブラケットと、該ブラケットに対して相対回転するロータと、該ロータに固着され該ステータと協働して回転磁界を発生するロータマグネットと、該ロータの回転を支持する動圧軸受とを備えたスピンドルモータにおいて、前記動圧軸受は、請求項1および2のいずれかに記載した動圧軸受であることを特徴とするスピンドルモータ。
- 情報を記録できる円板状記録媒体が装着されるディスク駆動装置において、ハウジングと、該ハウジングの内部に固定され該記録媒体を回転させるスピンドルモータと、該記録媒体の所要の位置に情報を書き込み又は読み出すための情報アクセス手段とを有するディスク駆動装置であって、前記スピンドルモータは、請求項3に記載したスピンドルモータであることを特徴とするディスク駆動装置。
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