JP3745675B2 - 動圧軸受装置およびこの装置を備えたモータ、並びにこのモータを用いたディスク装置 - Google Patents

動圧軸受装置およびこの装置を備えたモータ、並びにこのモータを用いたディスク装置 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は動圧軸受装置およびこの装置を備えたモータ並びにこのモータを用いたディスク装置に関し、より詳細にはラジアル動圧発生溝とスラスト動圧発生溝との協動作用により軸受支持の一つを行わせる動圧軸受装置およびこの装置を備えたモータ並びにこのモータを用いたディスク装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7に、動圧軸受装置を備えたこれまでのモータM’の一実施形態を示す断面図を示す。ブラケット2は中心部に設けられた基部21と、この基部21の外周方向に設けられた周壁22と、この周壁22からさらに外方向に延設された鍔部23とからなり、これらが一体且つ同軸的に形成されている。
【0003】
基部21の中心部には環状突部24が形成され、そこに固定スリーブ体(スリーブ部材)12が例えば圧入により嵌合固定されている。この固定スリーブ体12の中心には軸線方向に管状部121が形成され、そしてその下端には内径が拡径された中内径部122とさらに内径が拡径された大内径部123が形成されている。
【0004】
回転軸体(軸部材)11は、軸部111と、軸部111の下端に形成されたスラストプレート部112とからなる。固定スリーブ体12の管状部121および中内径部122に、回転軸体11の軸部111およびスラストプレート部112を一定の間隙を介して挿入し、スラストプレート部112の外側に蓋をする形で、スラストブッシュ13を装着している。
【0005】
回転軸体11の上端は、略円筒状のロータハブ3の上面中央部に形成された孔部31に嵌合固定されている。ロータハブ3の内周面には、周方向に多極着磁されたロータマグネット32が全周にわたり配設されている。またロータマグネット32の径方向内方には、ロータマグネット32に対向してステータ4がブラケット2の基部21に形成された環状突部24に配設されている。ステータ4と環状突部24との固定は、圧入による嵌合固定の他、接着剤による固定でもよい。
【0006】
ロータハブ3の外周下側には鍔部33が形成され、ここにハードディスク(不図示)が装着される。具体的にはロータハブ3の外周部34により位置決めされて、鍔部33の上に複数のハードディスクが装着された後、クランプ部材などにより孔部35にネジ止めされて、ハードディスクはロータハブ3に対して保持固定される。
【0007】
回転軸体11の軸部111と固定スリーブ体12の内周面、およびスラストプレート部112とスラストブッシュ13の間には微小間隙が形成され、潤滑流体L(不図示)が保持されている。そして固定スリーブ体12の内周面の上部・下部の潤滑流体保持部分には、回転軸体11の回転にともない潤滑流体中に動圧を発生するヘリングボーン状の動圧発生溝Gr1,Gr2が形成されている。動圧発生溝Gr1,Gr2は、モータ回転時に回転軸体11を径方向に保持する支持力を発生する。またスラストプレート部112の上面およびスラストブッシュ13の上面にも、回転軸体11の回転にともない潤滑流体中に動圧を発生するヘリングボーン状の動圧発生溝Gs1,Gs2が形成されている。この動圧発生溝Gs1,Gs2は、モータ回転時に回転軸体11をスラスト方向に保持する支持力を発生する。
【0008】
このようなモータによって駆動するハードディスク駆動装置を、ノート型パソコン等の携帯用機器に搭載する場合、内蔵バッテリによる無充電での稼働時間をできるだけ長くすることが望まれる。しかし、従来の動圧軸受装置を搭載したモータでは、潤滑流体の粘性抵抗による損失が大きいためモータの消費電力量が多く、内蔵バッテリによる稼働時間を長時間化できなかった。また、潤滑流体に含まれる気泡を排出するために外部と挿通する孔を各動圧軸受部の間に設けなければならず、軸受装置の構造が複雑となり製造費の上昇を招いていた。
【0009】
そこで、ヘリングボーン状溝に比べて潤滑流体の粘性抵抗を小さくできるポンプイン型のスパイラル状溝をスラスト動圧発生溝として用いると同時に、このスラスト動圧発生溝に隣接して設けるラジアル動圧発生溝として、スラスト動圧発生溝の方向に潤滑流体を流動させる、軸線方向に不平衡なヘリングボーン状溝を用いる軸受装置が提案されている。
【0010】
この提案された軸受装置では、ヘリングボーン状溝がスラスト動圧発生溝に向かう方向に潤滑流体をポンピングすると共に、隣接するスパイラル状溝が径方向内方に潤滑流体をポンピングし、ラジアル動圧発生溝とこれに隣接するスラスト動圧発生溝との間で軸受の負荷を支持し得る潤滑流体の動圧を発生させる。このため、従来の軸受装置よりも潤滑流体の粘性抵抗を小さくできモータの消費電力量を低減できる。また、スパイラル状溝は動圧発生効率が高いためスラストプレート部を小径化でき、スラストプレート部の周速に比例する傾向がある、スラスト動圧発生溝における損失を一層減少させることができる。
【0011】
しかしながら、このような軸受装置において、生産工程における潤滑流体の注入量が不足していたり、あるいは長期間の使用による蒸散で軸受部に保持される潤滑流体量が不足すると、軸線方向に不平衡なヘリングボーン状溝の端部が空気に露出するおそれがある。
【0012】
前記ヘリングボーン状溝の溝部分と、溝が形成されていない丘部分とでは、軸部の外周面と固定スリーブ体の内周面との間隙寸法が回転方向に連続して矩形的に変化するため、ヘリングボーン状溝の端部が空気中に露出すると、潤滑流体と空気との界面がこの変化に同調して変動することになる。この潤滑流体と空気との界面の変動は表面張力波(リップル)と呼ばれる周波数成分を発生する。図8に軸線方向に不均衡なこれまでのヘリングボーン状溝を示し、図9にこのヘリングボーン状溝の端部の拡大図を示す。
【0013】
図8に示す軸線方向に不均衡なヘリングボーン状溝は、軸線方向に平衡なヘリングボーン状溝の一方側の端部を延長して形成されたものであり、このようなヘリングボーン状溝は各溝間距離が比較的長いため、図9に示すように、溝部と丘部においてリップルに大きな振動幅dが発生している。これは、、軸部の外周面と固定スリーブ体の内周面との間隙の狭い丘部では、潤滑流体の粘性抵抗により潤滑流体の引き込まれにくい一方、丘部より間隙の広い溝部では丘部より潤滑流体は引き込まれやすいからと考えられる。このように振動幅dが大きくなると、リップルによる振動周波数成分が大きくなって非繰り返し性振れ(NRRO; Non Repeatable Run-Out)が増加するので、モータの回転精度が損なわれる。
【0014】
また、振動幅dが大きくなると、溝部において潤滑流体と空気との界面がより軸受の内部側に引き込まれた際に侵入した空気が、丘部分で界面が軸受外側部に移動した後もそのまま溝部内に留まり、その後の回転で丘部と溝部とによって撹拌され潤滑流体中に溶け込む。潤滑流体中に溶け込んだ空気は、定常状態では問題となることはないが、温度上昇や気圧低下などの潤滑流体の外部環境の変化に呼応して体積膨張し、潤滑流体中に気泡として顕在化することとなる。このような気泡の顕在化が原因で潤滑流体の流出や散逸が生じ、モータの耐久性および信頼性を損なうこととなる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、潤滑流体と空気との界面におけるリップルの振動幅を小さくしてNRROを抑制し、モータの回転精度を向上させると共に、潤滑流体中への空気の巻き込みを防止する動圧軸受装置、及びこの装置を備えたモータ並びに該モータを用いたディスク装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、軸部と該軸部から径方向外方に突出するスラストプレート部とを有する軸部材と、前記軸部および前記スラストプレート部に対しそれぞれ微小間隙を有して嵌合する管状部およびスラスト支持部を有するスリーブ部材と、前記微小間隙に充填された潤滑流体とを備え、前記軸部および前記管状部の内周面の少なくとも一方にラジアル動圧発生溝を2つ以上設けるとともに、前記スラストプレート部の上下面およびこれに対向する前記スラスト支持部の少なくとも一方にスラスト動圧発生溝を設け、前記ラジアル動圧発生溝の一つを、一方側に前記潤滑流体と大気との界面が位置し、他方側に前記スラスト動圧発生溝の一つが位置するように形成するとともに、このラジアル動圧発生溝をそのスラスト動圧発生溝の方向に潤滑流体を流動させる軸線方向に不平衡なヘリングボーン状溝とし、このラジアル動圧発生溝に隣接して形成されたスラスト動圧発生溝を、径方向内方に潤滑流体を流動させるスパイラル状溝とした動圧軸受装置において、前記ヘリングボーン状溝の不平衡部の溝本数を平衡部の溝本数よりも多くしたことを特徴とする動圧軸受装置が提供される。
【0017】
ここで、潤滑流体の気液界面での空気の巻き込みを一層防止する観点から、ヘリングボーン状溝の不平衡部の溝本数を平衡部の溝本数の2〜5倍の範囲とするのが好ましく、ヘリングボーン溝の平衡部と不平衡部の軸線方向の長さ比を1/2〜2/1の範囲とするのが好ましい。
【0018】
また、ラジアル方向の軸受作用を効果的に行う観点から、前記一つのラジアル動圧発生溝以外のラジアル動圧発生溝は軸線方向に平衡なヘリングボーン溝であるのが好ましい。
【0019】
動圧軸受部分の損失を一層低減する観点から、ラジアル動圧発生溝に隣接して形成されたスラスト動圧発生溝以外のスラスト動圧発生溝は、径方向内方に潤滑流体を流動させるスパイラル状溝であるのが好ましい。
【0020】
そしてまた本発明によれば、前記のいずれかに記載の動圧軸受装置を備えたことを特徴とするモータが提供される。
【0021】
また本発明によれば、情報を記録できる円板状記録媒体が装着されるディスク装置において、ハウジングと、該ハウジング内部に固定され前記記録媒体を回転させるスピンドルモータと、前記記録媒体の所望の位置に情報を書き込み又は読み出すための情報アクセス手段とを有するディスク装置であって、前記スピンドルモータが上記記載のモータであることを特徴とするディスク装置が提供される。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、軸線方向に不均衡なヘリングボーン状溝の端部における、潤滑流体と空気との界面のリップルの振動幅を減少すべく鋭意検討したところ、ヘリングボーン状溝の溝間隔が大きいほどリップルの振動幅が大きくなるという知見を得て本発明をなすに至った。すなわち本発明の大きな特徴は、ヘリングボーン状溝の不平衡部の溝数を増やして溝端部における溝部と丘部との形成間隔を短くしたことにある。
【0023】
図2に、本発明の動圧軸受装置で用いる、軸線方向に不平衡なヘリングボーン状溝の一例を示す。このヘリングボーン状溝では、不平衡部の溝本数を平衡部の3倍にしている。すなわち、通常の不平衡なヘリングボーン状溝の不平衡部の溝間に2本の溝を付加形成したものである。このときのヘリングボーン状溝の上端部に形成される潤滑流体Lのリップルを図3に示す。図3のリップル振動幅dは、図9に示した従来のものに比べて、格段に小さくなっていることがわかる。
【0024】
不平衡部の溝本数に特に限定はないが、潤滑流体のリップルの振動幅を効果的に抑えるためには、平衡部の溝本数の2〜5倍の範囲が好ましい。不平衡部の溝本数が平衡部の溝本数の2倍よりも少ないと、潤滑流体のリップルの振動幅が充分に小さくならず、潤滑流体中に空気が取り込まれるおそれがある。一方、不平衡部の溝本数が平衡部の溝本数の5倍よりも多いと、このようなヘリングボーン溝の形成加工に多大の時間と労力、それに費用が必要となるからである。
【0025】
また、ヘリングボーン状溝の平衡部と不平衡部との軸線方向の長さ比は1/2〜2/1の範囲が好ましい。前記長さ比が1/2より小さいと、スラスト動圧発生溝方向への潤滑流体の流動量が多くなりすぎ、適切な軸受作用ができなくなるおそれがある。一方、前記長さ比が2/1よりも大きいと、潤滑流体のリップルの振動幅が充分に小さくならないおそれがあるからである。
【0026】
このようなヘリングボーン状溝の加工形成には従来公知の加工形成方法を用いることができるが、より微細な加工ができることから中でも電解加工が推奨される。
【0027】
図1に、本発明の動圧軸受装置の一例を示す縦断面図を示す。なお、図7と同じ部材および部分は同じ符号を付してある。回転軸体(軸部材)11は、軸部11と、軸部111の下端に径方向外方に同軸状に延出形成された環状板状のスラストプレート部112とからなる。軸部111の外周面の上下中間部には断面円弧状の環状円弧凹部113が形成されている。また、スラストプレート部112の側周面は断面V字状の環状V字凹部114が形成されている。なお、この図ではスラストプレート部112は軸部111と一体に形成されているが、スラストプレート部112を別体で形成して軸部111に結合してももちろん構わない。
【0028】
一方、スリーブ部材12は、管状部121および、管状部121の下方の内径が拡径された中内径部122とさらに内径が拡径された大内径部123を有する。このスリーブ部材12の管状部121に回転軸体11の軸部111、中内径部122にスラストプレート部112がそれぞれ微小間隙を有するように回転軸体11が嵌合され、そして中内径部122に蓋をする形で円板状のスラストブッシュ13が大内径部123に内嵌固定されている。ここでは中内径部122および大内径部123、スラストブッシュ13が本発明のスラスト支持部に相当する。
【0029】
スリーブ部材12における回転軸体11の環状円弧凹部113に対向する位置には、環状円弧凹部113からスリーブ部材12の外周面に至る、途中で一度拡径した通気孔124が穿設されている。また、スラストプレート部112の側周面に形成された環状V字凹部114に対向する位置にも、環状V字凹部114からスリーブ部材12の外周面に至る通気孔125が穿設されている。そしてスリーブ部材12の下部外周面には、通気孔125に連通するように軸線方向に外周溝126が形成されている。
【0030】
環状円弧凹部113の上・下側におけるスリーブ部材12の管状部121内周面には、それぞれ上ラジアル動圧発生溝Gr1及び下ラジアル動圧発生溝Gr2が形成されている。上ラジアル動圧発生溝Gr1は、溝の折曲位置を中心として軸線方向に対称な平衡なヘリングボーン状溝(図1には破線で模式的に示されている)であり、下ラジアル動圧発生溝Gr2は、溝の折曲位置を軸線方向下方に偏心させた軸線方向に不平衡なヘリングボーン状溝である。ここでは図2に示したヘリングボーン状溝を用いた。これらの溝による軸受作用および気泡抜きについては後述する。
【0031】
またスラストプレート部112の上下面には、それぞれ上スラスト動圧発生溝Gs1及び下スラスト動圧発生溝Gs2(図1には破線で模式的に示されている)が形成されている。これらのスラスト動圧発生溝Gs1,Gs2はどちらも径方向内方に潤滑流体Lをポンピングするスパイラル状溝である。図4に、スパイラル状溝が形成されたスラストプレート部112の底面図を示す。
【0032】
上ラジアル動圧発生溝Gr1の上側には、軸部111を漸次縮径してスリーブ部材12の管状部121内周面との間隙を漸次拡大させた間隙拡大部115が形成されている。そしてこの間隙拡大部115と環状円弧凹部113との間の領域に潤滑流体Lが充填、保持されている。すなわち、潤滑流体Lの表面張力の利用して上方界面は間隙拡大部115に位置させ、下面界面は環状円弧凹部113の上半部(通気孔124の開口部よりも上側)に位置させて、前記領域に潤滑流体Lを保持しているのである。
【0033】
同様に、下ラジアル動圧発生溝Gr2の上側に形成された間隙拡大部113の下半部(通気孔124の開口部よりも下側)と、上スラスト動圧発生溝Gs1の下側に形成された環状V字状凹部114の上半分(通気孔125の開口部よりも上側)との間の領域にもその表面張力を利用して潤滑流体Lが充填、保持されている。そしてまた、環状V字凹部114の下半分(通気孔125の開口部よりも下側)、すなわちスラストプレート部112の下半分とスラストブッシュ13との間の領域にも表面張力を利用して潤滑流体Lが充填、保持されている。
【0034】
次に、このような構造の動圧軸受装置における軸受作用について説明する。上ラジアル動圧発生溝Gr1から説明すると、上ラジアル動圧発生溝Gr1は軸線方向に平衡なヘリングボーン状溝であるから、回転軸体11が回転すると軸部111と管状部121との微小間隙に充填された潤滑流体Lは溝の上下方向から屈曲位置(中心位置)に向かって流動し、屈曲位置で最も高く、上下端で最も低い圧力分布を示す動圧が発生する。この発生した動圧により回転軸体のラジアル方向の軸受支持が行われる。
【0035】
下ラジアル動圧発生溝Gr2は溝の折曲位置を軸線方向下方に偏心させた不平衡なヘリングボーン状溝であるから、回転軸体11が回転すると潤滑流体Lに発生する動圧は、下ラジアル動圧発生溝Gr2の下端に近い位置に偏って最大となる。他方、上スラスト動圧発生溝Gs1はスパイラル状溝であって、径方向内方に潤滑流体Lを流動させるので、径方向内方に向かって圧力が高まった動圧が発生する。このような下ラジアル動圧発生溝Gr2と上スラスト動圧発生溝Gs1との協動作用により、ラジアル方向およびスラスト方向の軸受支持に必要な動圧が発生する。
【0036】
このとき、前記のように下ラジアル動圧発生溝Gr2の上端の溝部と丘部において、潤滑流体Lのリップルに振動が発生するが、不平衡部の溝本数を従来よりも増やし溝間隔を狭くしているのでその振動幅は小さく、潤滑流体中に空気が取り込まれることが抑えられている。また、下ラジアル動圧発生溝Gr2の不平衡部の溝本数が従来よりも多いので、従来の動圧軸受装置に比べてスラスト動圧発生溝方向への潤滑流体の押し込み圧が大きくなり、下ラジアル動圧発生溝Gr2と上スラスト動圧発生溝Gs1との協動作用による軸受の負荷容量が従来よりも増加している。
【0037】
下スラスト動圧発生溝Gs2はスパイラル状溝であって、径方向内方に潤滑流体Lを流動させる。下スラスト動圧発生溝Gs2の径方向内方側は閉じた空間であるので、スラストプレート部112の下面中心部において潤滑流体Lの圧力が最大となり、この動圧により回転軸体11のスラスト方向の軸受支持が行われる。
【0038】
ところで、潤滑流体L中に存在する気泡は原則として流体動圧の低い側に移動する。上ラジアル動圧発生溝Gr1では溝の上下端の流体動圧が最も低いので、潤滑流体中の気泡は上面界面から外部に抜ける、および下面界面から環状円弧凹部113に抜け、通気孔124を通って外部に抜ける。
【0039】
また下ラジアル動圧発生溝Gr2により発生する潤滑流体Lの動圧は、下ラジアル動圧発生溝Gr2の上端が最も低く、上スラスト動圧発生溝Gs1により発生する潤滑流体Lの動圧は、上スラスト動圧発生溝Gs1の径方向外方において最も低くなる。したがって、潤滑流体L中に存在する気泡は、下ラジアル動圧発生溝Gr2の上端へ移動し、潤滑流体Lの上側界面から環状円弧凹部113に抜け、スリーブ部材12内の通気孔124を通って外部に抜ける。あるいは上スラスト動圧発生溝Gs1の径方向外方に移動し、潤滑流体Lの下側界面から環状V字凹部114へ抜け、スリーブ部材12内の通気孔125及び外周溝126を通って外部に抜ける。
【0040】
さらに下スラスト動圧発生溝Gs2により発生する潤滑流体Lの動圧は、径方向外方が最も低いので、潤滑流体中の気泡は径方向外方に移動し潤滑流体Lの上側界面から環状V字凹部114に抜け、スリーブ部材12内の通気孔25及び外周溝126を通って外部に抜ける。
【0041】
このように、スリーブ部材12に設けた通気孔1124及び通気孔125を介して潤滑流体中の気泡は確実に外部に抜けるので、温度上昇や気圧低下などによる気泡膨張が原因で生じる潤滑流体の流出・散逸を防止できる。
【0042】
次に、本発明に係るモータについて説明する。本発明のモータの大きな特徴は前記説明した動圧軸受装置を搭載したことにある。本発明のモータMの一例を示す縦断面図を図5に示す。図1に示した動圧軸受装置1におけるスリーブ部材12の下部が、ブラケット2の基部21の中心部に形成された環状突部24に同軸状に内嵌固定されている。そして、回転軸体11の上端には、略円筒状状のロータハブ3がその中央に形成された孔部31において嵌合固定され、環状突部24に外嵌固定されたステータ4とロータハブ3の外周壁部に内嵌固定されたロータマグネット32が径方向に相対するものとすることにより軸回転型のモータMが構成されている。スリーブ部材12の外周部における通気孔124の開口部は、環状突部24の上方においてモータM内に通じ、またもう一つの通気孔125の開口部は、環状突部24の内壁面と外周溝126とで形成された通気路を通ってモータM内に通じ、そしてどちらもブラケット2とロータハブ3の間隙を通じて外気に通じている。
【0043】
ハードディスク(不図示)は、ロータハブ3の外周部34により位置決めされて、鍔部33の上に複数のハードディスクが装着される。そして、クランプ部材(不図示)などにより孔部35にネジ止めされて、ハードディスクはロータハブ3に対して保持固定される。
【0044】
本発明のディスク装置について以下説明する。図6に、一般的なディスク装置50の内部構成を模式図として示す。ハウジング51の内部は塵・埃などが極端に少ないクリーンな空間を形成しており、その内部に情報を記憶する円板状のディスク板53が装着されたモータ52が設置されている。加えてハウジング51の内部には、ディスク板53に対して情報を読み書きするヘッド移動機構が配置され、このヘッド移動機構はディスク板53上の情報を読み書きするヘッド56、このヘッド56を支えるアーム55,およびヘッド56並びにアーム55をディスク板53上の所要位置に移動させるアクチュエータ部54により構成される。
【0045】
【発明の効果】
本発明の動圧軸受装置では、スラスト動圧発生溝に隣接してラジアル動圧発生溝を設け、前記スラスト動圧発生溝としてポンプイン型のスパイラル状溝を用い、前記ラジアル動圧発生溝として、スラスト動圧発生溝の方向に潤滑流体を流動させる、軸線方向に不平衡で且つ不平衡部の溝本数を平衡部の溝本数よりも多くしたヘリングボーン状溝を用いるので、潤滑流体と空気との界面におけるリップルの振動幅を小さくできる。これによりNRROを抑制でき、モータの回転精度を向上させることができる共に、潤滑流体中への空気の巻き込みを防止できる。
【0046】
加えて、不平衡部の溝本数を増加したので、従来の動圧軸受装置に比べてスラスト動圧発生溝方向への潤滑流体の押し込み圧が大きくなり、前記スラスト動圧発生溝と前記ラジアル動圧発生溝との協動作用による軸受の負荷容量を拡大できる。
【0047】
また、本発明のモータ及びディスク装置では前記動圧軸受装置を用いるので前記と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の動圧軸受装置の一例を示す縦断面図である。
【図2】 本発明の動圧軸受装置に形成する、軸線方向に不均衡なヘリングボーン状溝の一例を示す図である。
【図3】 図2のヘリングボーン状溝の上端部における潤滑流体のリップルを示す図である。
【図4】 スパイラル状溝が形成されたスラストプレート部の底面図である。
【図5】 本発明のモータの一例を示す縦断面図である。
【図6】 本発明のディスク装置の一例を示す模式図である。
【図7】 従来のモータを示す縦断面図である。
【図8】 軸線方向に不均衡な従来のヘリングボーン状溝を示す図である。
【図9】 図8のヘリングボーン状溝の上端部における潤滑流体のリップルを示す図である。
【符号の説明】
1 動圧軸受装置
L 潤滑流体
M、M’ モータ
11 軸部材
12 スリーブ部材
111 軸部
112 スラストプレート部
121 管状部
r1 上ラジアル動圧発生溝
r2 下ラジアル動圧発生溝
s1 上スラスト動圧発生溝
s2 下スラスト動圧発生溝

Claims (7)

  1. 軸部と該軸部から径方向外方に突出するスラストプレート部とを有する軸部材と、前記軸部および前記スラストプレート部に対しそれぞれ微小間隙を有して嵌合する管状部およびスラスト支持部を有するスリーブ部材と、前記微小間隙に充填された潤滑流体とを備え、
    前記軸部および前記管状部の内周面の少なくとも一方にラジアル動圧発生溝を2つ以上設けるとともに、前記スラストプレート部の上下面およびこれに対向する前記スラスト支持部の少なくとも一方にスラスト動圧発生溝を設け、
    前記ラジアル動圧発生溝の一つを、一方側に前記潤滑流体と大気との界面が位置し、他方側に前記スラスト動圧発生溝の一つが位置するように形成するとともに、このラジアル動圧発生溝をそのスラスト動圧発生溝の方向に潤滑流体を流動させる軸線方向に不平衡なヘリングボーン状溝とし、このラジアル動圧発生溝に隣接して形成されたスラスト動圧発生溝を、径方向内方に潤滑流体を流動させるスパイラル状溝とした動圧軸受装置において、
    前記ヘリングボーン状溝の不平衡部の溝本数を平衡部の溝本数よりも多くしたことを特徴とする動圧軸受装置。
  2. 前記ヘリングボーン状溝の不平衡部の溝本数を平衡部の溝本数の2〜5倍の範囲とした請求項1記載の動圧軸受装置。
  3. 前記ヘリングボーン溝の平衡部と不平衡部の軸線方向の長さ比を1/2〜2/1の範囲とした請求項1又は2記載の動圧軸受装置。
  4. 前記一つのラジアル動圧発生溝以外のラジアル動圧発生溝が軸線方向に平衡なヘリングボーン溝である請求項1〜3のいずれかに記載の動圧軸受装置。
  5. 前記ラジアル動圧発生溝に隣接して形成されたスラスト動圧発生溝以外のスラスト動圧発生溝が、径方向内方に潤滑流体を流動させるスパイラル状溝である請求項1〜4のいずれかに記載の動圧軸受装置。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の動圧軸受装置を備えたことを特徴とするモータ。
  7. 情報を記録できる円板状記録媒体が装着されるディスク装置において、ハウジングと、該ハウジング内部に固定され前記記録媒体を回転させるスピンドルモータと、前記記録媒体の所望の位置に情報を書き込み又は読み出すための情報アクセス手段とを有するディスク装置であって、前記スピンドルモータが請求項6記載のモータであることを特徴とするディスク装置。
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